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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024104861
(43)【公開日】2024-08-06
(54)【発明の名称】複合型不織布ワイパー
(51)【国際特許分類】
   D04H 5/00 20120101AFI20240730BHJP
   D04H 5/03 20120101ALI20240730BHJP
   A47L 13/16 20060101ALI20240730BHJP
【FI】
D04H5/00
D04H5/03
A47L13/16 A
A47L13/16 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023009258
(22)【出願日】2023-01-25
(71)【出願人】
【識別番号】000183462
【氏名又は名称】日本製紙クレシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】林 生弥
【テーマコード(参考)】
3B074
4L047
【Fターム(参考)】
3B074AA01
3B074AA02
3B074AA08
3B074AB01
3B074BB01
4L047AA08
4L047AA14
4L047AA17
4L047AA21
4L047AA23
4L047AB02
4L047AB03
4L047AB04
4L047AB06
4L047BA04
4L047BA08
4L047CA05
4L047CA19
4L047CB01
4L047CB07
4L047CC14
(57)【要約】
【課題】洗濯機等を使用し、消毒・洗浄工程を行っても、パルプ等の顕著な脱落が見られず、柔らかい触感、拭き心地が具備され、液体で湿潤された時も柔らかい触感で拭き取り作業を行うことができる、色付きの複合型不織布ワイパーを提供する。
【解決手段】有色のスパンボンド不織布の上にパルプ繊維ウェブを積層し一体化した、複合型不織布のワイパーであって、複合型不織布の坪量が70g/m以上140g/m以下、スパンボンド不織布の割合が10質量%以上30質量%以下、パルプ繊維ウェブの割合が70質量%以上90質量%以下であり、複合型不織布における、乾燥時の縦方向と横方向の引張強度の積の平方根が17.7N/25mm以上60.6N/25mm以下、湿潤時の縦方向と横方向の引張強度の積の平方根が16.7N/25mm以上58.7N/25mm以下である、複合型不織布ワイパーを提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有色のスパンボンド不織布の上にパルプ繊維ウェブを積層し一体化した、複合型不織布のワイパーであって、
前記複合型不織布の坪量が70g/m以上140g/m以下であり、
前記複合型不織布におけるスパンボンド不織布の割合が10質量%以上30質量%以下、パルプ繊維ウェブの割合が70質量%以上90質量%以下であり、
前記複合型不織布における、乾燥時の縦方向の引張強度と横方向の引張強度の積の平方根(GMT)が17.7N/25mm以上60.6N/25mm以下であり、
前記複合型不織布における、湿潤時の縦方向の引張強度と横方向の引張強度の積の平方根(GMT)が16.7N/25mm以上58.7N/25mm以下であり、
前記複合型不織布の吸水速度が5.0秒以下、単位面積当たりの吸水量(T.W.A.)が320g/m以上、水中攪拌試験による保形時間が6分以上であることを特徴とする、複合型不織布ワイパー。
【請求項2】
前記複合型不織布における、乾燥時の縦方向の引張強度が24.5N/25mm以上78.5N/25mm以下、乾燥時の横方向の引張強度が11.8N/25mm以上53.9N/25mm以下であり、
前記複合型不織布における、湿潤時の縦方向の引張強度が21.6N/25mm以上76.5N/25mm以下、湿潤時の横方向の引張強度が9.8N/25mm以上47.1N/25mm以下であることを特徴とする、請求項1に記載の複合型不織布ワイパー。
【請求項3】
前記スパンボンド不織布における、乾燥時の縦方向の引張強度が9.8N/25mm以上34.3N/25mm以下、乾燥時の横方向の引張強度が4.9N/25mm以上21.6N/25mm以下であることを特徴とする、請求項1に記載の複合型不織布ワイパー。
【請求項4】
前記スパンボンド不織布は、紡糸された樹脂繊維を接続する複数の融着点を含み、前記融着点の1個当たりの面積が0.10mm以上0.50mm以下、前記スパンボンド不織布における前記融着点の面積率が7%以上20%以下、前記スパンボンド不織布における単位面積当たりの前記融着点の個数が10個/cm以上150個/cm以下であり、
前記スパンボンド不織布がナイロン、ビニロン、ポリエステル、アクリル、ポリエチレン、ポリプロピレン及びポリスチレンからなる群から選択された1種類以上の合成繊維を含み、
前記パルプ繊維ウェブがラジアータパイン、スラッシュパイン、サザンパイン、ロッジポールパイン、スプルース及びダグラスファーからなる群から選択された1種類以上の針葉樹晒クラフトパルプの繊維を含むことを特徴とする、請求項1に記載の複合型不織布ワイパー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、色付きの不織布を含む複合型不織布ワイパーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、食品の製造、加工、処理、調理用機械、装置、器具の表面又は作業者の手を清拭するときに、パルプ繊維ウェブを含む紙製のワイパーや、合成繊維を含む不織布のワイパーを使用することがある。
【0003】
一方で、水性、油性の液体の吸液性に富むパルプ繊維と、強度に優れる合成繊維を使ったスパンボンド不織布とを水流交絡し、強度と吸液性を両立させたシートを製造する技術が知られている。なお、パルプ繊維ウェブは一般的な湿式抄紙法、湿式抄紙で抄造したシートや、乾式エアレイドにて供給することができる。
【0004】
上記の技術を用いた複合型の不織布は、強度と吸液性、保液性を両立しており、食品の製造、加工、処理、調理用機械、装置、器具の表面又は作業者の手の清拭等、多種の場面で使用することができる。
【0005】
また、従来から食品の製造、加工、処理、調理用機械、装置、器具の表面あるいは作業者の手を清拭するときに、異物混入防止の観点から、カウンタークロス等の色付きワイパーを使用することがある。
【0006】
上記の技術で製造した複合型不織布を、色付きワイパーとするために着色をする際に、パルプ繊維かスパンボンド不織布に着色する方法があるが、色移行のしづらさの観点から、スパンボンド不織布に着色を行う技術が知られている。
このような複合型不織布の色付きワイパーは、食品関連だけではなく自転車や機械の拭き取り等、工業用途においても有色であることから嗜好があり、使用されている。
【0007】
そのような色付きの複合型不織布ワイパーの先行技術文献として、例えば、特許文献1には、合成樹脂繊維によるスパンボンド不織布とパルプ繊維とが絡合されたパルプ混合のスパンレース不織布であり、坪量が40~70g/mであり、スパンボンド不織布の目付量が10~25g/mであり、パルプ繊維の割合が60~80質量%、スパンボンド不織布の割合が20~40質量%であり、スパンボンド不織布を構成する合成樹脂繊維が、着色料が練りこまれて色付けされた着色繊維であり、かつ、パルプ繊維とスパンボンド不織布を構成する着色繊維の色が異なる不織布ダスターが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2019-063221号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
これらのワイパーは、昨今の衛生意識の高まりから使い捨てが推奨されているが、拭き取る汚れや対象によっては、いまだに消毒・洗浄工程を行い繰り返し使用するパターンも多い。
【0010】
しかし、パルプ繊維とスパンボンド不織布から作られる上記の複合型不織布は、漂白剤による消毒工程や洗濯機での洗浄工程を行うと、パルプ繊維の抜けが起こりやすく、繰り返しての使用が難しい。色付きのスパンボンド不織布では特に、パルプ繊維の抜けが目立ちやすく、外観が悪化する。
そこで、以前から使用されている一般的なカウンタークロスのような、レーヨンやポリエステル系の繊維をスパンレースにて不織布化した製品を使うことが考えられるが、これらの不織布は、耐久強度は高いものの、柔らかさに劣り、触感及び使用感も優れない。
【0011】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、洗濯機等を使用し、消毒・洗浄工程を行っても、パルプ等の顕著な脱落が見られず、柔らかい触感、拭き心地が具備され、液体で湿潤された時も柔らかい触感で拭き取り作業を行うことができる、色付きの複合型不織布ワイパーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
発明者は鋭意検討を行い、有色のスパンボンド不織布の上にパルプ繊維ウェブを積層し一体化した、複合型不織布のワイパーにおいて、複合型不織布の坪量並びにスパンボンド不織布及びパルプ繊維ウェブのそれぞれの割合を所定の数値範囲内に調整し、かつ、複合型不織布の乾燥時の縦方向及び横方向の各引張強度の積の平方根、湿潤時の縦方向及び横方向の各引張強度の積の平方根、並びに複合型不織布の吸水速度、給水量及び水中攪拌試験による保形時間を、いずれも所定の数値範囲内に調整することで、洗濯機等を使用し、消毒・洗浄工程を行っても、パルプ等の顕著な脱落が見られず、柔らかい触感、拭き心地が具備され、液体で湿潤された時も柔らかい触感で拭き取り作業を行うことができる、色付きの複合型不織布ワイパーとすることができ、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、以下のものを提供する。
【0013】
(1)本発明の第1の態様は、有色のスパンボンド不織布の上にパルプ繊維ウェブを積層し一体化した、複合型不織布のワイパーであって、前記複合型不織布の坪量が70g/m以上140g/m以下であり、前記複合型不織布におけるスパンボンド不織布の割合が10質量%以上30質量%以下、パルプ繊維ウェブの割合が70質量%以上90質量%以下であり、前記複合型不織布における、乾燥時の縦方向の引張強度と横方向の引張強度の積の平方根(GMT)が17.7N/25mm以上60.6N/25mm以下であり、前記複合型不織布における、湿潤時の縦方向の引張強度と横方向の引張強度の積の平方根(GMT)が16.7N/25mm以上58.7N/25mm以下であり、前記複合型不織布の吸水速度が5.0秒以下、単位面積当たりの吸水量(T.W.A.)が320g/m以上、水中攪拌試験による保形時間が6分以上であることを特徴とする、複合型不織布ワイパーである。
【0014】
(2)本発明の第2の態様は、(1)に記載の複合型不織布ワイパーであって、前記複合型不織布における、乾燥時の縦方向の引張強度が24.5N/25mm以上78.5N/25mm以下、乾燥時の横方向の引張強度が11.8N/25mm以上53.9N/25mm以下であり、前記複合型不織布における、湿潤時の縦方向の引張強度が21.6N/25mm以上76.5N/25mm以下、湿潤時の横方向の引張強度が9.8N/25mm以上47.1N/25mm以下であることを特徴とするものである。
【0015】
(3)本発明の第3の態様は、(1)に記載の複合型不織布ワイパーであって、前記スパンボンド不織布における、乾燥時の縦方向の引張強度が9.8N/25mm以上34.3N/25mm以下、乾燥時の横方向の引張強度が4.9N/25mm以上21.6N/25mm以下であることを特徴とするものである。
【0016】
(4)本発明の第4の態様は、(1)に記載の複合型不織布ワイパーであって、前記スパンボンド不織布は、紡糸された樹脂繊維を接続する複数の融着点を含み、前記融着点の1個当たりの面積が0.10mm以上0.50mm以下、前記スパンボンド不織布における前記融着点の面積率が7%以上20%以下、前記スパンボンド不織布における単位面積当たりの前記融着点の個数が10個/cm以上150個/cm以下であり、前記スパンボンド不織布がナイロン、ビニロン、ポリエステル、アクリル、ポリエチレン、ポリプロピレン及びポリスチレンからなる群から選択された1種類以上の合成繊維を含み、前記パルプ繊維ウェブがラジアータパイン、スラッシュパイン、サザンパイン、ロッジポールパイン、スプルース及びダグラスファーからなる群から選択された1種類以上の針葉樹晒クラフトパルプの繊維を含むことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、洗濯機等を使用し、消毒・洗浄工程を行っても、パルプ等の顕著な脱落が見られず、柔らかい触感、拭き心地が具備され、液体で湿潤された時も柔らかい触感で拭き取り作業を行うことができる、色付きの複合型不織布ワイパーを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という。)について詳細に説明する。以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨の範囲内で適宜に変形して実施できる。
【0019】
<複合型不織布ワイパー>
本実施形態に係る複合型不織布ワイパーは、有色のスパンボンド不織布の上にパルプ繊維ウェブを積層し一体化した、複合型不織布のワイパーである。
なお、スパンボンド不織布の色は、視認性の観点から青色であることが好ましい。
【0020】
スパンボンド不織布は、ナイロン、ビニロン、ポリエステル、アクリル、ポリエチレン、ポリプロピレン及びポリスチレンからなる群から選択された1種類以上の合成繊維を含むことが好ましいが、中でもポリプロピレンを含むことが好ましい。
【0021】
なお、スパンボンド不織布は紡糸された樹脂繊維を接続する複数の融着点を含むことが好ましい。また、融着点の1個当たりの面積が0.10mm以上0.50mm以下であることが好ましく、スパンボンド不織布における融着点の面積率が7%以上20%以下であることが好ましく、スパンボンド不織布における単位面積当たりの融着点の個数が10個/cm以上150個/cm以下であることが好ましい。融着点に関する面積、面積率、個数がいずれも上記の数値範囲内であることにより、洗濯機等を使用し、消毒・洗浄工程を行っても、パルプ等の顕著な脱落が少ない複合型不織布ワイパーとすることができる。
なお、融着点の形状は円形、楕円形、多角形等、一般的な形状であれば特に限定されない。
【0022】
パルプ繊維ウェブは、ラジアータパイン、スラッシュパイン、サザンパイン、ロッジポールパイン、スプルース及びダグラスファーからなる群から選択された1種類以上の針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)の繊維を含むことが好ましい。
なお、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)以外に、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)等、一般的なパルプ繊維も含んでいてもよいが、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)及び広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)を含むことが好ましい。また、パルプ繊維におけるNBKPとLBKPの含有割合は50:50以上100:0以下が好ましく、70:30以上100:0以下がより好ましく、90:10以上100:0以下が更に好ましく、100:0が最も好ましい。
【0023】
本実施形態に係る複合型不織布において、スパンボンド不織布の割合は10重量%以上30重量%以下、パルプ繊維ウェブの割合は70重量%以上90重量%以下である。それぞれの割合が上記の数値範囲内であることにより、吸水性能に優れ、乾燥時及び湿潤時のいずれにおいても柔らかい触感を維持できる複合型不織布ワイパーとすることができる。
なお、スパンボンド不織布の割合の下限値は、13重量%以上が好ましく、15重量%以上がより好ましい。また、上限値は、23重量%以下が好ましく、20重量%以下がより好ましい。また、パルプ繊維ウェブの割合の下限値は、77重量%以上が好ましく、80重量%以上がより好ましい。また、上限値は、87重量%以下が好ましく、85重量%以下がより好ましい。
【0024】
(物性)
本実施形態に係る複合型不織布の坪量は、70g/m以上140g/m以下である。複合型不織布の坪量が上記の数値範囲内であることにより、吸水性能に優れ、乾燥時及び湿潤時のいずれにおいても柔らかい触感を維持できる複合型不織布ワイパーとすることができる。
なお、本実施形態に係る複合型不織布の坪量は、下限値は好ましくは、80g/m以上であり、より好ましくは85g/m以上である。また、上限値は好ましくは125g/m以下であり、より好ましくは100g/m以下である。
【0025】
また、スパンボンド不織布の坪量は、下限値は好ましくは8.0g/m以上であり、より好ましくは、10.0g/m以上であり、更に好ましくは12.0g/m以上である。また、上限値は好ましくは35.0g/m以下であり、より好ましくは30.0g/m以下であり、更に好ましくは25.0g/m以下である。スパンボンド不織布の坪量が上記の数値範囲内であることにより、吸水性能に優れ、乾燥時及び湿潤時のいずれにおいても柔らかさを維持できる複合型不織布ワイパーとすることができる。
【0026】
さらに、パルプ繊維ウェブの坪量は、下限値は好ましくは50.0g/m以上であり、より好ましくは、55.0g/m以上であり、更に好ましくは65.0g/m以上である。また、上限値は好ましくは125.0g/m以下であり、より好ましくは110.0g/m以下であり、更に好ましくは100.0g/m以下である。坪量が上記の数値範囲内であることにより、吸水性能に優れ、乾燥時及び湿潤時のいずれにおいても柔らかさを維持できる複合型不織布ワイパーとすることができる。
なお、複合型不織布、スパンボンド不織布及びパルプ繊維ウェブの坪量は、いずれもJIS P 8124に準拠して測定される。また、スパンボンド不織布及びパルプ繊維ウェブの坪量は、積層し一体化する前に個別に測定される。
【0027】
本実施形態に係る複合型不織布における、乾燥時の縦方向の引張強度が24.5N/25mm以上78.5N/25mm以下であることが好ましい。乾燥時の縦方向の引張強度が上記の数値範囲内であることにより、吸水性能に優れ、拭き心地のよい複合型不織布ワイパーとすることができる。
なお、複合型不織布の乾燥時の縦方向の引張強度は、下限値がより好ましくは27.5N/25mm以上であり、更に好ましくは、29.4N/25mm以上である。また、上限値がより好ましくは73.5N/25mm以下であり、更に好ましくは39.2N/25mm以下である。
【0028】
同様に、複合型不織布における、乾燥時の横方向の引張強度が11.8N/25mm以上53.9N/25mm以下であることが好ましい。乾燥時の横方向の引張強度が上記の数値範囲内であることにより、吸水性能に優れ、拭き心地のよい複合型不織布ワイパーとすることができる。
なお、複合型不織布の乾燥時の横方向の引張強度は、下限値がより好ましくは13.7N/25mm以上であり、更に好ましくは14.7N/25mm以上である。また、上限値がより好ましくは49.0N/25mm以下であり、更に好ましくは29.4N/25mm以下である。
【0029】
また、複合型不織布における、乾燥時の縦方向の引張強度と横方向の引張強度の積の平方根(GMT)が17.7N/25mm以上60.6N/25mm以下である。乾燥時の縦方向の引張強度と横方向の引張強度の積の平方根(GMT)が上記の数値範囲内であることにより、洗濯機等を使用し、消毒・洗浄工程を行っても、パルプ等の顕著な脱落が少ない複合型不織布ワイパーとすることができる。
なお、複合型不織布の乾燥時の縦方向の引張強度と横方向の引張強度の積の平方根(GMT)は、下限値が好ましくは19.6N/25mm以上であり、より好ましくは、20.6N/25mm以上である。また、上限値が好ましくは57.8N/25mm以下であり、より好ましくは34.3N/25mm以下である。
【0030】
さらに、スパンボンド不織布における、乾燥時の縦方向の引張強度が9.8N/25mm以上34.3N/25mm以下であることが好ましい。スパンボンド不織布の乾燥時の縦方向の引張強度が上記の数値範囲内であることにより、吸水性能に優れ、拭き心地のよい複合型不織布ワイパーとすることができる。
なお、スパンボンド不織布の乾燥時の縦方向の引張強度は、下限値がより好ましくは11.8N/25mm以上であり、更に好ましくは、13.7N/25mm以上である。また、上限値がより好ましくは29.4N/25mm以下であり、更に好ましくは19.6N/25mm以下である。
【0031】
同様に、スパンボンド不織布における、乾燥時の横方向の引張強度が4.9N/25mm以上21.6N/25mm以下であることが好ましい。スパンボンド不織布の乾燥時の横方向の引張強度が上記の数値範囲内であることにより、吸水性能に優れ、拭き心地のよい複合型不織布ワイパーとすることができる。
なお、スパンボンド不織布の乾燥時の横方向の引張強度は、下限値がより好ましくは5.9N/25mm以上であり、更に好ましくは6.9N/25mm以上である。また、上限値がより好ましくは17.7N/25mm以下であり、更に好ましくは14.7N/25mm以下である。
【0032】
また、本実施形態に係る複合型不織布における、湿潤時の縦方向の引張強度が21.6N/25mm以上76.5N/25mm以下であることが好ましい。湿潤時の縦方向の引張強度が上記の数値範囲内であることにより、吸水性能に優れ、拭き心地のよい複合型不織布ワイパーとすることができる。
なお、複合型不織布の湿潤時の縦方向の引張強度は、下限値がより好ましくは24.5N/25mm以上であり、更に好ましくは、27.5N/25mm以上である。また、上限値がより好ましくは68.6N/25mm以下であり、更に好ましくは49.0N/25mm以下である。
【0033】
同様に、複合型不織布における、湿潤時の横方向の引張強度が9.8N/25mm以上47.1N/25mm以下であることが好ましい。湿潤時の横方向の引張強度が上記の数値範囲内であることにより、吸水性能に優れ、拭き心地のよい複合型不織布ワイパーとすることができる。
なお、複合型不織布の湿潤時の横方向の引張強度は、下限値がより好ましくは11.8N/25mm以上であり、更に好ましくは14.7N/25mm以上である。また、上限値がより好ましくは44.1N/25mm以下であり、更に好ましくは24.5N/25mm以下である。
【0034】
同様に、複合型不織布における、湿潤時の縦方向の引張強度と横方向の引張強度の積の平方根(GMT)が16.7N/25mm以上58.7N/25mm以下である。湿潤時の縦方向の引張強度と横方向の引張強度の積の平方根(GMT)が上記の数値範囲内であることにより、洗濯機等を使用し、消毒・洗浄工程を行っても、パルプ等の顕著な脱落が少ない複合型不織布ワイパーとすることができる。
なお、複合型不織布の湿潤時の縦方向の引張強度と横方向の引張強度の積の平方根(GMT)は、下限値が好ましくは17.7N/25mm以上であり、より好ましくは、18.6N/25mm以上である。また、上限値が好ましくは55.8N/25mm以下であり、より好ましくは32.4N/25mm以下である。
【0035】
なお、複合型不織布及びスパンボンド不織布の各方向の引張強度は、乾燥状態又は湿潤状態の不織布の幅を25mmの短冊状に切断し、引張試験機を用いて、縦方向(MD:製造時の送り方向)と横方向(CD:MDに対して直角な幅方向)での強度を測定する。そして、測定した各方向の引張強度から積の平方根(GMT)を算出する。また、スパンボンド不織布の引張強度は、積層し一体化する前に個別に測定される。
【0036】
そして、複合型不織布の厚みは0.35mm以上であることが好ましく、0.45mm以上であることがより好ましく、0.50mm以上であることが更に好ましい。厚みが上記の数値範囲内であることにより、吸水性能に優れ、乾燥時及び湿潤時のいずれにおいても柔らかい触感を維持できる複合型不織布ワイパーとすることができる。
厚さはピーコック紙厚計にて、37.85gf/mにて測定する。
【0037】
(吸水性能)
複合型不織布の吸水速度は5.0秒以下であり、3.5秒以下であることが好ましく、2.5秒以下であることがより好ましい。吸水速度が上記の数値範囲内であることにより、吸水性能に優れる複合型不織布ワイパーとすることができる。
吸水速度は点滴吸水度とも呼ばれ、吸液性、保液性の指標である。測定方法としては、JIS L 1907に規定される滴下法に準拠し、0.1mLの水滴が試験片の表面に達したときから、試験片の鏡面反射が消えるまでの時間(秒)を測定する。
【0038】
さらに、複合型不織布の単位面積当たりの吸水量(T.W.A.:Total Water Absorbance)が320g/m以上であり、350g/m以上であることが好ましく、380g/m以上であることがより好ましい。吸水量が上記の数値範囲内であることにより、吸水性能に優れる複合型不織布ワイパーとすることができる。
複合型不織布の吸水量(T.W.A.)の測定方法は、まずワイパー(複合型不織布)を76mm×76mmの正方形に切断して試料を作製し、試料の乾燥重量を測定する。次に、この試料を蒸留水中に2分間浸漬した後、水蒸気飽和状態の容器中で、試料の1つの角部を上側の頂部とし、この頂部と隣接する2つの角部とを支持して展伸した状態で吊るし、30分放置して水切り後の重量を測定する。最後に、得られた測定値から、試料1m当たりの保水量=吸水量(g/m)を求める。
【0039】
そして、複合型不織布の水中攪拌試験による保形時間が6分以上であり、8分以上であることが好ましく、10分以上であることがより好ましい。保形時間が上記の数値範囲内であることにより、吸水性能に優れる複合型不織布ワイパーとすることができる。
水中攪拌試験とは、水が入ったビーカーに複合型不織布を入れてアジテーターで攪拌し、1分ごとに攪拌を止め、複合型不織布の状態を目視観察し、パルプ抜け、破れ等の発生の有無を目視確認する試験である。具体的には、ビーカーの水量は750mLとして、試験片は50mm×50mmの複合型不織布を5枚投入し、評価は5枚中の最も外観に変化があったもので行う。また、攪拌翼は50φ、4枚羽のプロペラ型とし、アジテーターはスリーワンモーター BL3000を用いて、回転数は1200rpmとする。そして、評価基準として、試験片に5mm×5mm以上のパルプ抜け、破れが発生したとき、試験は終了とする。
【0040】
<複合型不織布ワイパーの製造方法>
本実施形態に係る複合型不織布ワイパーの製造方法としては、特に制限はなく、公知の不織布ワイパーの製造方法により製造することができる。
そのような製造方法としては、例えば、(1)複合型不織布の製造、(2)裁断、(3)包装、といった手順が挙げられるが、その他の手順が追加されてもかまわない。
【0041】
なお、(1)の複合型不織布の製造において、有色のスパンボンド不織布の上にパルプ繊維ウェブを積層した後に一体化する方式は、スパンレース方式等の一般的な方式であってもよいが、吸水性能及び耐摩耗性の観点から、水流交絡であることが好ましい。水流交絡による一体化の工程に関しては、例えば、特許第6758116号公報に詳細に記載されている。
また、(1)の複合型不織布の製造において、フォーミングセクションはエアレイド方式が好ましく、ドライヤーセクションはスルーエアードライヤーが好ましい。エアレイド方式は、湿式(パルプ繊維シート)に比べ、パルプ間の結合が少ないため、水流交絡処理やスパンレース処理でパルプ繊維が散らばり、スパンボンド層が表面に露出しやすいため、色の表裏差を小さくすることができる。
【0042】
さらに、(1)の複合型不織布の製造において、パルプ等の脱落を抑止するために、湿潤紙力剤及びアニオン系水溶性高分子を含む薬液をパルプ繊維ウェブ側に添加することが好ましい。
具体的には、添加する薬液は、湿潤紙力剤及びアニオン系水溶性高分子を含み、また、湿潤紙力剤はポリアミドエピクロロヒドリン(PAE)を、アニオン系水溶性高分子は、カルボキシメチルセルロース(CMC)をそれぞれ含有することが好ましい。薬液が湿潤紙力剤、特にポリアミドエピクロロヒドリン(PAE)とアニオン系水溶性高分子、特にカルボキシメチルセルロース(CMC)を含有することで、複合型不織布ワイパーを用いた、特に湿潤時の拭き取りにおいて、パルプ等の脱落を効果的に抑制することができる。
【0043】
湿潤紙力剤としては、ポリアミドエピクロロヒドリン系(PAE)以外に、ポリアクリルアミド系(PAM)、ポリアミドエポキシ系及びポリアミドポリアミン系等を含有してもよく、アニオン系水溶性高分子は、カルボキシメチルセルロース(CMC)以外にポリアクリルアミド系(PAM)等を含有していてもよい。ポリアミドエピクロロヒドリン系の湿潤紙力剤としては、例えば星光PMC社製の紙力剤WS4030、WS4038、WS4027等を用いることができ、カルボキシメチルセルロース(CMC)としては、日本製紙社製のサンローズ等を用いることができる。
【0044】
以上より、本実施形態に係る発明によれば、洗濯機等を使用し、消毒・洗浄工程を行っても、パルプ等の顕著な脱落が見られず、柔らかい触感、拭き心地が具備され、液体で湿潤された時も柔らかい触感で拭き取り作業を行うことができる、色付きの複合型不織布ワイパーを提供することができる。
【実施例0045】
以下の実施例及び比較例により本発明を更に詳しく説明するが、本発明は以下の実施例により何ら限定されるものではない。
【0046】
表1に示す各条件において、実施例1~5及び比較例1~7のそれぞれの複合型不織布ワイパーを作製した後、以下の評価を行った。なお、いずれの実施例及び比較例も、合成繊維としてポリプロピレンを含むスパンボンド不織布の上に、パルプ繊維ウェブを積層して、水流交絡により一体化した複合型不織布を原反とした。また、スパンボンド不織布の色は青色とした(表1における「SB」はスパンボンド不織布を指す)。
【0047】
1.使用感(拭き取りやすさ)
ワイパーで汚れ等の対象物を拭き取った時の拭き取り易さを5段階で官能評価した。
各評価は、使用上柔軟性、吸水性能ともに問題がなく、拭き心地が良いもの「3」、これよりやや優れているものを「4」、優れているものを「5」、これよりやや劣るものを「2」、劣るものを「1」とした。
【0048】
2.吸水性能
乾燥した状態で水分を拭き取った時の、ワイパーの吸水性能を5段階で官能評価した。
各評価は、使用上で吸水性能(吸水速度、吸水量)が問題ないものを「3」、これよりやや優れているものを「4」、優れているものを「5」、これよりやや劣るものを「2」、劣るものを「1」とした。
【0049】
3.柔らかさ
乾燥した状態で拭き取りを行った時の、ワイパーの柔らかさを5段階で官能評価した。
各評価は、使用上柔らかさが問題ないものを「3」、これよりやや優れているものを「4」、優れているものを「5」、これよりやや劣るものを「2」、劣るものを「1」とした。
【0050】
4.コシ
乾燥した状態で拭き取りを行った時の、ワイパーのコシを5段階で官能評価した。
各評価は、使用上コシが問題ないものを「3」、これよりやや優れているものを「4」、優れているものを「5」、これよりやや劣るものを「2」、劣るものを「1」とした。
【0051】
5.湿潤時の柔らかさ
ワイパーを水に浸して湿潤させ、水拭きを行った時の柔らかさを5段階で官能評価した。
各評価は、使用上で柔らかさが問題ないものを「3」、これよりやや優れているものを「4」、優れているものを「5」、これよりやや劣るものを「2」、劣るものを「1」とした。
【0052】
6.洗濯耐久性
洗濯機にてワイパーを選択し、表面が劣化するまでの耐久回数を評価した。洗濯機は東芝 AW-GN5GC(W)を用いて洗濯を行い、ワイパー表面に明らかなパルプ抜けや破れが表れた時の洗濯回数を5段階で官能評価した。
各評価は、3回目終了時に違いが表れたものを「3」、4回目終了時に違いが表れたものを「4」、違いが表れたのが5回目以上であったものを「5」、2回目終了時に違いが表れたものを「2」、1回目終了時に違いが表れたものを「1」とした。
【0053】
7.色移行性(熱湯100℃)
ワイパーを熱湯に10分間浸漬し、熱湯の色に変色があるかを確認した。
各評価は、熱湯に色が移行していないものを「〇」、熱湯に色が移行しているものを「×」とした。
【0054】
8.色移行性(70%エタノール)
ワイパーを濾紙に挟み、70%エタノールに浸漬した。浸漬したものを取り出し、24時間大気中に放置した。
各評価は、濾紙に色が移行していないものを「○」、濾紙に色が移行しているものを「×」とした。
【0055】
9.色移行性(穀物酢)
ワイパーを濾紙に挟み、穀物酢に浸漬した。浸漬したものを取り出し、24時間大気中に放置した。
各評価は、濾紙に色が移行していないものを「○」、濾紙に色が移行しているものを「×」とした。
【0056】
表1に、実施例1~5及び比較例1~7の条件及び評価結果を示す。各評価が3以上又は○である場合は、製品として可である。
【表1】
【0057】
以上より、本実施例によれば洗濯機等を使用し、消毒・洗浄工程を行っても、パルプ等の顕著な脱落が見られず、柔らかい触感、拭き心地が具備され、液体で湿潤された時も柔らかい触感で拭き取り作業を行うことができる、色付きの複合型不織布ワイパーが得られることが確認された。