(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024104862
(43)【公開日】2024-08-06
(54)【発明の名称】レーザークリーニング装置、レーザークリーニングシステム、及びレーザークリーニング方法
(51)【国際特許分類】
B08B 7/00 20060101AFI20240730BHJP
B23K 26/082 20140101ALI20240730BHJP
B23K 26/361 20140101ALI20240730BHJP
【FI】
B08B7/00
B23K26/082
B23K26/361
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023009259
(22)【出願日】2023-01-25
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】形部 聖
(72)【発明者】
【氏名】呉屋 真之
【テーマコード(参考)】
3B116
4E168
【Fターム(参考)】
3B116AA02
3B116AB01
3B116BC01
4E168AD03
4E168CB04
4E168DA24
4E168DA26
4E168DA28
4E168EA15
4E168JA17
4E168JA25
(57)【要約】 (修正有)
【課題】さらに効率的かつ安定的に塗膜を除去することが可能なレーザークリーニング装置、レーザークリーニングシステム、及びレーザークリーニング方法を提供する。
【解決手段】レーザークリーニング装置は、基材91、基材91の表面に形成された下地92、及び下地92の表面に形成された塗膜93を有する対象物から少なくとも塗膜93をレーザーによって除去するレーザークリーニング装置であって、レーザーを生成する発振部10と、レーザーの光路上に配置され、レーザーの照射方向を変えることで塗膜の表面に沿って前記レーザーを走査方向に走査させる走査部20と、レーザーのビーム径、及び出力の少なくとも一方を変化させることが可能なレーザー調節部を有する制御装置30と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材、該基材の表面に形成された下地、及び該下地の表面に形成された塗膜を有する対象物から少なくとも前記塗膜をレーザーによって除去するレーザークリーニング装置であって、
レーザーを生成する発振部と、
前記レーザーの光路上に配置され、該レーザーの照射方向を変えることで前記塗膜の表面に沿って前記レーザーを走査方向に走査させる走査部と、
前記レーザーのビーム径、及び出力の少なくとも一方を変化させることが可能なレーザー調節部を有する制御装置と、
を備えるレーザークリーニング装置。
【請求項2】
前記下地は、前記塗膜よりも多い無機物成分を含む請求項1に記載のレーザークリーニング装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のレーザークリーニング装置と、
該レーザークリーニング装置が先端に取り付けられたアーム部を有する可動支持部と、
を備え、
前記アーム部は、前記走査方向に交差する方向に前記レーザークリーニング装置を進退動させることが可能なレーザークリーニングシステム。
【請求項4】
請求項1又は2に記載のレーザークリーニング装置を用いたレーザークリーニング方法であって、
前記塗膜の厚さ方向における少なくとも一部を除去することで粗加工を行うステップと、
前記粗加工を行うステップで残存した前記塗膜を前記下地に到達するまで除去することで仕上げ加工を行うステップと、
を含み、
前記粗加工を行うステップでは、前記仕上げ加工を行うステップよりも、前記レーザーのビーム径を小さくすることでエネルギー密度を高めるレーザークリーニング方法。
【請求項5】
前記仕上げ加工を行うステップでは、前記下地の除去深さと前記塗膜の除去深さとの差分が予め定められた基準値よりも大きくなるように、前記レーザーのビーム径を設定することでエネルギー密度を調節する請求項4に記載のレーザークリーニング方法。
【請求項6】
請求項3に記載のレーザークリーニングシステムを用いたレーザークリーニング方法であって、
前記レーザーによって前記走査方向に走査しながら前記アーム部によって前記走査方向に交差する方向の一方側に向かって前記レーザークリーニング装置を移動させることで第一領域の前記塗膜を除去するステップと、
前記アーム部によって前記走査方向に交差する方向の他方側に向かって前記レーザークリーニング装置を移動させることで第二領域の前記塗膜を除去するステップと、
を含み、
前記第二領域の前記走査方向における端部は、前記第一領域の前記走査方向における端部と重複しており、
前記レーザー調節部は、前記レーザーの照射点が前記走査方向における端部に到達したことを検知した場合に、前記レーザーの出力を下げる方向に調節するレーザークリーニング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、レーザークリーニング装置、レーザークリーニングシステム、及びレーザークリーニング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば金属で形成された基材の表面の塗膜を除去するための技術として、下記特許文献1に記載されたものが知られている。下記特許文献1に係る装置では、レーザーの熱によって塗膜を昇華させることで、当該塗膜を除去することが可能とされている。
【0003】
ところで、近年では、航空機等を初めとして、CFRP(Carbon Fibre Reinforced Plastic)や、GFRP(Glass Fibre Reinforced Plastic)を基材として用いて、当該基材の表面に下地、及び塗膜を塗布する場合が多い。CFRPやGFRPは、金属に比べて融点が低いことが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、これらCFRPやGFRPを基材とする対象物に対してレーザーによる塗膜除去(クリーニング)を行う場合、レーザーの出力によっては、基材に損傷が及んでしまう可能性がある。このため、レーザーの出力やビーム径を精緻にコントロールしながらクリーニングを行うことが可能な技術に対する要請が高まっていた。
【0006】
本開示は上記課題を解決するためになされたものであって、さらに効率的かつ安定的に塗膜を除去することが可能なレーザークリーニング装置、レーザークリーニングシステム、及びレーザークリーニング方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本開示に係るレーザークリーニング装置は、基材、該基材の表面に形成された下地、及び該下地の表面に形成された塗膜を有する対象物から少なくとも前記塗膜をレーザーによって除去するレーザークリーニング装置であって、レーザーを生成する発振部と、前記レーザーの光路上に配置され、該レーザーの照射方向を変えることで前記塗膜の表面に沿って前記レーザーを走査方向に走査させる走査部と、前記レーザーのビーム径、及び出力の少なくとも一方を変化させることが可能なレーザー調節部を有する制御装置と、を備える。
【0008】
本開示に係るレーザークリーニングシステムは、上記のレーザークリーニング装置と、該レーザークリーニング装置が先端に取り付けられたアーム部を有する可動支持部と、
を備え、前記アーム部は、前記走査方向に交差する方向に前記レーザークリーニング装置を進退動させることが可能である。
【0009】
本開示に係るレーザークリーニング方法は、上記のレーザークリーニング装置を用いたレーザークリーニング方法であって、前記塗膜の少なくとも一部を除去することで粗加工を行うステップと、前記粗加工を行うステップで残存した前記塗膜を前記下地に到達するまで除去することで仕上げ加工を行うステップと、を含み、前記粗加工を行うステップでは、前記仕上げ加工を行うステップよりも、前記レーザーのビーム径を小さくすることでエネルギー密度を高める。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、さらに効率的かつ安定的に塗膜を除去することが可能なレーザークリーニング装置、レーザークリーニングシステム、及びレーザークリーニング方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本開示の第一実施形態に係るレーザークリーニング装置の構成を示す模式図である。
【
図2】本開示の第一実施形態に係る制御装置の機能ブロック図である。
【
図3】本開示の第一実施形態に係るレーザークリーニング方法の各ステップ、及び制御装置の処理フローを示すフローチャートである。
【
図4】エネルギー密度と、下地及び塗膜の除去深さの関係の一例を示すグラフである。
【
図5】本開示の第二実施形態に係るレーザークリーニングシステムの構成を示す模式図である。
【
図6】本開示の第二実施形態に係るレーザークリーニングシステムの動作状態を示す説明図である。
【
図7】本開示の第二実施形態に係る制御装置の構成を示す機能ブロック図である。
【
図8】本開示の第二実施形態に係るレーザークリーニング方法の各ステップ、及び制御装置の処理フローを示すフローチャートである。
【
図9】本開示の第二実施形態に係るレーザークリーニング方法におけるレーザーの走査位置と、レーザーの出力との関係を示す説明図である。
【
図10】本開示の各実施形態に係る制御装置のハードウェア構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<第一実施形態>
以下、本開示の第一実施形態に係るレーザークリーニング装置1、及びレーザークリーニング方法について、
図1から
図4を参照して説明する。
【0013】
(レーザークリーニング装置の構成)
図1に示すように、本実施形態に係るレーザークリーニング装置1は、対象物90の基材91の表面に形成された下地92、及び塗膜93のうち、主として塗膜93をレーザーLの熱によって昇華させて除去する装置である。基材91は、一例としてCFRPやGFRP等の繊維強化樹脂で形成されている。基材91の表面には、下地92としての塗料が塗布されている。下地92の表面にはさらに塗膜93が塗布されている。塗膜93は、下地92よりも大きい厚みを有している。下地92は、基材91の表面を保護するために塗布されており、塗膜93は主として外観上の色彩を与えるために設けられている。下地92、及び塗膜93ともに、有機溶剤に種々の無機物を混合させることで形成されている。下地92は、塗膜93よりも多くの無機物成分を含有している。したがって、下地92は、塗膜93に比べて、同じ入熱量のもとでも、より昇華しにくい性質を有している。
【0014】
レーザークリーニング装置1は、発振部10と、走査部20と、制御装置30と、を備えている。発振部10は、レーザーLを発生させる光源である。発振部10から発せられるレーザーLとしては、YAGレーザーやファイバーレーザー、半導体レーザーが一例として挙げられる。
【0015】
発振部10から照射されたレーザーLの光路上には、走査部20が設けられている。走査部20は、レーザーLの照射角度を時々刻々と変化させることで、当該レーザーLによって上述の対象物90の表面(塗膜93)を走査させる。走査部20として具体的には、ガルバノミラーが用いられる。詳しくは図示しないが、ガルバノミラーは、入射してくるレーザーLに対して角度を自在に変化させることが可能なミラーを有する。ミラーの角度に応じて反射光としてのレーザーLの出射方向が種々に変化する。つまり、ミラーの角度変化に合わせて、レーザーLは対象物90の表面を往復する。このレーザーLが走査する方向を以下では単に「走査方向D」と呼ぶことがある。
【0016】
(制御装置の構成)
制御装置30は、上記の発振部10、及び走査部20の動作状態をコントロールするための装置である。
図2に示すように、制御装置30は、レーザー調節部31と、エネルギー密度取得部32と、記憶部33と、を有する。レーザー調節部31は、発振部10から発せられるレーザーLの出力を変化させることが可能であるとともに、レーザーLのビーム径をコントロールすることが可能に構成されている。
【0017】
エネルギー密度取得部32は、記憶部33に予め格納されたテーブル(表)を参照して、レーザーLの出力とエネルギー密度との関係、又はレーザーLの出力とエネルギー密度との関係から、最適なエネルギー密度を取得する。また、エネルギー密度取得部32は、取得されたエネルギー密度に基づく出力、又はビーム径の値をレーザー調節部31に電気信号として送信する。レーザー調節部31は、この信号に基づいて、上記の最適なエネルギー密度に対応する出力、又はビーム径を帯びたレーザーLを発するための信号を発振部10に送信する。
【0018】
(レーザークリーニング方法、及び制御装置の処理フロー)
次いで、
図3と
図4を参照して、上記のレーザークリーニング装置1を用いたレーザークリーニング方法、及び制御装置30の処理フローについて説明する。
【0019】
図3に示すように、この方法、及び処理フローは、ビーム径を決定するステップS1と、粗加工を行うステップS2と、ビーム径を変更するステップS3と、仕上げ加工を行うステップS4と、を含む。
【0020】
ステップS1では、まず、レーザーLのビーム径を、後述する仕上げ加工のステップS4におけるビーム径よりも相対的に小さくなるように調節する。つまり、同一の出力のもとでは、ビーム径が小さいことによってエネルギー密度が高い状態となっている。この調節は、レーザー調節部31によって行われる。このようにエネルギー密度が高いことによって、上述した塗膜93に対する除去深さが比較的に大きく確保される。ステップS2では、このエネルギー密度の高いレーザーLによって塗膜93の表面から入熱を行うことで、当該塗膜93の大部分を昇華させる。なお、この粗加工が完了した後では、下地92の表面には、わずかな厚さの塗膜93が残存している状態となっている。
【0021】
ステップS2で粗加工が完了した後にステップS3を実行する。ステップS3では、レーザー調節部31によってビーム径を大きくなる方向に変更する。つまり、上記のステップS2で用いたレーザーLよりも、このステップS3で用いられるレーザーLではエネルギー密度が低くなっている。エネルギー密度が低いことによって、塗膜93に対する除去深さが比較的に小さくなる。ステップS4では、この状態のレーザーLを用いて、下地92の表面に残存した塗膜93を昇華させて除去することで仕上げ加工を行う。これにより、塗膜93は全て除去された状態となる。なお、基材91の表面に入熱による影響が及ばない限りにおいて、仕上げ加工を行うに際して、下地92のごく一部も同時に昇華させてしまってもよい。
【0022】
ここで、ステップS4の仕上げ加工について、さらに詳述する。
図4に示すように、下地92と塗膜93との間では、上述した無機物成分の含有量の差に基づいて、除去深さに違いが生じることが知られている。即ち、エネルギー密度を上げるにつれて、塗膜93では有機成分の昇華に伴って相対的に大きな除去深さを得ることができる。他方で、下地92は無機物成分が多いことから、エネルギー密度が上昇しても、除去深さの増加率は塗膜93に比べて緩やかである。この差分を利用して、ステップS4では、最適なエネルギー密度を設定することが望ましい。つまり、
図4中のエネルギー密度Fで示すように、塗膜93の除去深さと下地92の除去深さの差分が大きくなるエネルギー密度を選定することが望ましい。より具体的には、除去深さの差分が、予め定められた基準値よりも大きくなるようなエネルギー密度を選定することが望ましい。このような特性のレーザーLを仕上げ加工(ステップS4)で用いることによって、塗膜93を完全に除去しつつも、下地92の除去深さを最小限に抑えることが可能となる。
【0023】
(作用効果)
ここで、上述したCFRPやGFRPを基材91とする対象物90に対してレーザーLによる塗膜93除去(クリーニング)を行う場合、レーザーLの出力やビーム径によっては、基材91に損傷が及んでしまう可能性がある。特にこれらの指標が過度に高い場合には、入熱量が過大となって、塗膜93のみならず、下地92、及び基材91にまで熱の影響が及んでしまう可能性がある。このため、レーザーLの出力やビーム径を精緻にコントロールしながらクリーニングを行うことが可能な技術に対する要請が高まっていた。そこで、本実施形態では、上述の構成、及び方法を採用している。
【0024】
上記構成によれば、レーザー調節部31が、レーザーLのビーム径、及び出力の少なくとも一方を変化させることで、塗膜93に対する除去深さを自在にコントロールすることが可能となる。このため、レーザーLの熱による影響を基材91に与えることなく、塗膜93を除去することができる。特に、予め設定されたエネルギー密度の条件を満たすようにビーム径、及び出力が決定されることから、塗膜93のみに効率的に入熱を加えて、効率的にクリーニングを進めることが可能となる。
【0025】
さらに、上記構成によれば、下地92が塗膜93よりも多い無機物成分を含むことから、レーザーLによる熱に曝されても昇華しにくい。このため、万一レーザーLが下地92に到達した場合であっても、当該下地92によって基材91が保護される。これにより、基材91に熱の影響が及ぶ可能性をさらに低減することができる。言い換えると、下地92と塗膜93との間における昇華温度の差に基づいてレーザーLのエネルギー密度が決定される。さらに、この決定されたエネルギー密度となるように、ビーム径、及び出力が決定される。これにより、対象物90における下地92と塗膜93の厚さや含有成分に応じて、適切なレーザーLの性状を選択することが可能となる。これにより、レーザークリーニング装置1の汎用性を向上させることができる。
【0026】
また、上記方法によれば、始めに粗加工を行うことで塗膜93の厚さ方向における少なくとも一部が除去される。この際、レーザーLのビーム径が相対的に小さく絞られていることからエネルギー密度が高くなり、短時間で所望の厚さまで塗膜93を除去することができる。他方で、仕上げ加工では、レーザーLのビーム径を粗加工の際よりも大きくすることによってエネルギー密度が低くなる。このため、残存する薄い塗膜93を除去するに当たって、レーザーLの熱による下地92への影響を最小限に抑えることができる。これにより、短時間のうちに、下地92を極力残しつつ、塗膜93を最大限除去することが可能となる。その結果、全体として作業時間が短縮され、後続の作業へのリーディングタイムを削減することができる。
【0027】
ここで、下地92と塗膜93との間では、無機物の含有量の差から、同一のエネルギー密度のレーザーLを照射した場合における除去深さに違いが生じる。上記方法では、下地92の除去深さと塗膜93の除去深さの差分が基準値よりも大きくなるようなエネルギー密度のもとでレーザークリーニングが行われる。このため、下地92を極力残しつつ、塗膜93を最大限除去することが可能となる。このため、一度レーザーLのエネルギー密度を決定すれば、下地92への影響を過度に考慮することなく、塗膜93のみを選択的に除去することが可能となる。その結果、さらに効率的にレーザークリーニングを進めることができる。
【0028】
以上、本開示の第一実施形態について説明した。なお、本開示の要旨を逸脱しない限りにおいて、上記の構成や方法に種々の変更を施すことが可能である。
【0029】
<第二実施形態>
次に、本開示の第二実施形態に係るレーザークリーニングシステム2、及びこれを用いたレーザークリーニング方法について、
図5から
図9を参照して説明する。
【0030】
(レーザークリーニングシステムの構成)
図5に示すように、このレーザークリーニングシステム2は、第一実施形態で説明したレーザークリーニング装置1と、可動支持部40と、制御装置30と、を備えている。
【0031】
可動支持部40は、アーム部41と、レール42と、駆動装置43と、を有する。アーム部41は、レーザークリーニング装置1が先端に取り付けられた棒状をなしている。アーム部41の基端は、レール42に嵌合している。レール42は、レーザークリーニング装置1によるレーザーLの走査方向Dに交差(直交する)移動方向Xに延びている。つまり、アーム部41は、レール42に案内されることによって移動方向X両側に進退動可能である。アーム部41は、駆動装置43が発生させた駆動力によって進退動する。駆動装置43として具体的には、ボールネジを用いた機構や、その他のアクチュエータが用いられる。この可動支持部40によって移動方向Xに進退動しながら、レーザークリーニング装置1から発せられたレーザーLが走査方向Dに対象物90の表面を走査することで、塗膜93の除去が行われる。より具体的には
図6に示すように、レーザーLがパルス状に対象物90に向かって照射されながら走査方向Dに当該レーザーLが走査し、かつ可動支持部40によってレーザークリーニング装置1が移動方向Xに移動する。
【0032】
ここで、比較的に大型の対象物90の塗膜93を除去する例について考える。対象物90が大型であると、レーザーLの走査範囲を超えて広い面積に塗膜93が存在している場合がある。このため、
図5に示すように、対象物90の表面を複数(一例として2つ)の領域に分けてレーザーLによる走査を行う。ここでは、対象物90の表面に、第一領域51と、第二領域52とを設定する。塗膜93の残存を回避するために、第一領域51と第二領域52とは、走査方向Dにおいて互いにわずかに重複している。つまり、この重複領域53では、第一領域51を走査するレーザーLと第二領域52を走査するレーザーLとが重畳されることとなる。
【0033】
(制御装置の構成)
図7に示すように、制御装置30は、上述したレーザー調節部31、エネルギー密度取得部32、及び記憶部33に加えて、駆動信号生成部34と、角度取得部35と、判定部36と、を有する。
【0034】
駆動信号生成部34は、上記のアーム部41を駆動するための信号を生成して、駆動装置43に送信する。アーム部41は、この信号に基づいて、予め設定された移動速度で移動方向Xに移動する。この時、レーザークリーニング装置1からレーザーLが発せられることで、当該レーザーLが対象物90の表面を走査方向Dに往復する。つまり、レーザーLの走査による往復が所定の回数だけ完了するたびに、アーム部41が移動方向Xに単位長さだけ移動する。この動作を繰り返すことによって第一領域51の塗膜93の除去が完了する。なお、この塗膜93の除去を行うに際しては、上述の第一実施形態で説明した粗加工と仕上げ加工をそれぞれ行うことが望ましい。
【0035】
角度取得部35は、レーザークリーニング装置1の走査部20のミラーの角度、即ち、レーザーLの照射角度を取得する。例えば、ミラーにロータリエンコーダを併設して、当該ミラーの角度を取得する例が考えられる。角度取得部35は、取得した照射角度の値を電気信号として判定部36に送信する。判定部36は、入力された照射角度の値から、レーザーLの照射点が第一領域51、及び第二領域52の端部(即ち、走査方向Dにおける端部)に到達したか否かを判定する。言い換えると、判定部36は、レーザーLの照射点が、上述した重複領域53に到達したか否かを判定する。レーザーLの照射点が重複領域53に達したと判定された場合、レーザー調節部31は、レーザーLの出力を小さくなる方向に調節する。したがって、
図9に示すように、重複領域53では、レーザーLが重畳される一方で、2回分の照射による入熱量の合計は、重複領域53以外の他の領域における入熱量と同等となる。より具体的には、重複領域53におけるレーザーLの出力は、他の領域におけるレーザーLの出力の半分とすることが望ましい。
【0036】
(レーザークリーニング方法、及び制御装置の処理フロー)
次いで、本実施形態に係るレーザークリーニング方法、及び制御装置30の処理フローについて、
図8を参照して説明する。
【0037】
この方法、及び処理フローは、ビーム径を決定するステップS11と、第一領域51の往路を走査するステップS12と、照射点が端部に到達したか否かを判定するステップS13と、ステップS13で端部に到達したと判定された場合にレーザーLの出力を低減するステップS14と、第一領域51の復路を走査するステップS15と、第一領域51の走査が完了したか否かを判定するステップS16と、第二領域52を同様に走査するステップS17と、を含む。
【0038】
ステップS11では、上記第一実施形態のレーザークリーニング方法におけるステップS1と同様に、レーザー調節部31がレーザーLの出力、及びビーム径を決定する。このステップS11では、粗加工、又は仕上げ加工のいずれかを行うかによって、適切な出力、及びビーム径が適宜決定される。
【0039】
続くステップS12では、第一領域51を走査方向Dの一方側から他方側に向かってレーザーLが走査する。つまり、レーザーLが第一領域51を往復する場合における往路をレーザーLが走査する。その後、ステップS13で、レーザーLの照射点が第一領域51の端部に到達したか否かを判定部36が判定する。つまり、レーザーLの照射点が、上述の重複領域53に到達したか否かが判定される。ステップS13でNoと判定された場合、再びステップS12とステップS13を繰り返して実行する。ステップS13でYesと判定された場合、ステップS14でレーザー調節部31がレーザーLの出力を低減させる。具体的には、レーザーLの出力をステップS11で決定した値から半分程度にまで下げることが望ましい。この状態で、重複領域53をレーザーLが走査する。重複領域53の走査が完了したら、ステップS15で、走査方向Dの他方側から一方側に向かってレーザーLを走査させる。つまり、走査方向Dにおける復路をレーザーLが走査する。この時、レーザーLの出力は、ステップS11で決定された値に戻る。
【0040】
これらステップS12からステップS15までを、ステップS16で第一領域51全体の走査が完了したと判定されるまで繰り返して実行する。ステップS16における判定は、作業者が目視で行ってもよいし、別途設けられた撮像装置等によって自律的に行ってもよい。ステップS16でYesと判定された後に、さらにステップS17で第二領域52の走査を実行する。なお、ステップS17では、上述したステップS12からステップS15までの各ステップと同様の工程を実行することとなる。以上により、本実施形態に係るレーザークリーニング方法の全工程が完了する。
【0041】
(作用効果)
大型の対象物90にレーザークリーニングを施す際には、レーザーLによる走査が必要となる面積が増加することから、レーザークリーニング装置1を移動させるための機構が必要となる。そこで、本実施形態では上述の構成、及び方法を採用している。
【0042】
上記構成によれば、可動支持部40のアーム部41によってレーザークリーニング装置1を進退動させることで、走査方向D、及び当該走査方向Dに交差する移動方向Xからなる面に沿って広い範囲をレーザーLによってクリーニングすることが可能となる。これにより、クリーニングに要する時間を短縮することができる。また、クリーニング装置を手動で移動させる場合に比べて、移動速度や移動距離をさらに精緻にコントロールすることができる。これにより、クリーニングの精度を向上させ、より良好な仕上がりを得ることが可能となる。
【0043】
ここで、レーザークリーニングシステム2によって、走査方向Dから互いに隣接する複数の領域にクリーニングを施す場合、これら領域同士の端部がわずかでも重複していると、レーザーLの出力が重畳されてしまい、塗膜93に過度の入熱が行われてしまう可能性がある。特に、上述の重複領域53が形成されている場合にはこの傾向が顕著である。このように塗膜93に過度の入熱が行われると、塗膜93のみならず下地92にも熱の影響が及んでしまう可能性がある。しかしながら、上記構成によれば、レーザーLの照射点が走査方向Dの端部に達した際に、レーザー調節部31がレーザーLの出力を下げる方向に調節する。このため、上記のようにレーザーLが重畳されてしまっても、合計となる入熱量は他の領域と同等に抑えることができる。これにより、下地92、又は基材91に影響を与えることなく、安定的に塗膜93を除去することが可能となる。その結果、クリーニング後の対象物90の仕上がりを均一なものとすることができる。したがって、次工程で再度塗膜93を形成する際に、より良好な外観を得ることができる。
【0044】
特に、各領域の端部に達したか否かが、レーザーLの照射角度に基づいて判定部36によって自動的に判定されるため、作業者が目視で同様の工程を実行する場合に比べて、より精緻かつ効率的にクリーニングを進めることが可能となる。また、このような構成、及び方法によれば、領域の数を増減することによって、対象物90の大きさに制限されることなく種々の形状、大きさを有する対象物90のレーザークリーニングを行うことができる。これにより、レーザークリーニングシステム2の汎用性をさらに高めることができる。
【0045】
(その他の実施形態)
以上、本開示の実施の形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施の形態に限られるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【0046】
例えば、上記実施形態では、対象物90の基材91としてCFRPやGFRP等の繊維強化樹脂を用いた例について説明した。しかしながら、基材91の種類はこれら繊維強化樹脂に限定されず、各種の金属材料はもとより、セラミックス、又は木材等も基材91として用いることが可能である。このように基材91の種類が多岐にわたる場合であっても、制御装置30によってレーザーLの特性を自在に変化させることで入熱量を適正にコントロールして、塗膜93のみを選択的に除去することができる。
【0047】
また、上記実施形態において、レーザー調節部31は、レーザーLの出力、及びビーム径を調節するものとして説明した。しかしながら、入熱量の管理という観点からは、出力、及びビーム径の両方を必ずしも変化させる必要はない。つまり、レーザー調節部31は、レーザーLの出力、及びビーム径の少なくとも一方を調節することが可能であればよい。
【0048】
さらに、上記の第二実施形態では、レーザークリーニングシステム2によるクリーニングを行うに際して、対象物90の表面を第一領域51と第二領域52の二つの領域に分ける例について説明した。しかしながら、領域の数は2つに限定されず、3つ以上であってもよい。つまり、領域に数は、対象物90の寸法体格に応じて適宜決定されてよい。
【0049】
また、対象物90の表面形状は特に限定されず、平板上であってもよいし、曲面状をなしていてもよい。なお、曲面状をなしている場合には、第二実施形態で説明した可動支持部40を二軸で可動する方式に変更することが望ましい。これにより、曲面のアールに追従させてレーザーLを走査させることが可能となる。
【0050】
加えて、可動支持部40によるアーム部41の移動速度は、一定であってもよいし、表面形状や凹凸に応じて、適宜変化させてもよい。特に、塗膜93の厚みが不均一である場合には、厚みに応じてレーザーLの照射時間をコントロールする必要があることから、アーム部41の移動速度を変化させて照射時間を適切に変化させることが望ましい。これにより、クリーニング後の対象物90の均一な仕上がりを得ることが可能となる。
【0051】
なお、本開示の実施形態における制御装置30の処理は、適切な処理が行われる範囲において、処理の順番が入れ替わってもよい。
【0052】
本開示の実施形態における記憶部33、その他の記憶装置のそれぞれは、適切な情報の送受信が行われる範囲においてどこに備えられていてもよい。また、記憶部33、その他の記憶装置のそれぞれは、適切な情報の送受信が行われる範囲において複数存在しデータを分散して記憶していてもよい。
【0053】
上述した制御装置30による処理の過程は、プログラムの形式でコンピュータ200が読み取り可能な記録媒体に記憶されており、このプログラムをコンピュータ200が読み出して実行することによって、上記処理が行われる。コンピュータ200の具体例を以下に示す。
【0054】
図10に示すように、コンピュータ200は、CPU101と、メインメモリ102と、ストレージ103と、インターフェース104と、を備える。
例えば、上述の制御装置30はコンピュータ200に実装される。そして、上述した各処理部の動作は、プログラムの形式でストレージ103に記憶されている。CPU101は、プログラムをストレージ103から読み出してメインメモリ102に展開し、当該プログラムに従って上記処理を実行する。また、CPU101は、プログラムに従って、上述した記憶部33に対応する記憶領域をメインメモリ102に確保する。
【0055】
ストレージ103の例としては、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)、DVD-ROM(Digital Versatile Disc Read Only Memory)、半導体メモリ等が挙げられる。ストレージ103は、コンピュータ200のバスに直接接続された内部メディアであってもよいし、インターフェース104または通信回線を介してコンピュータ200に接続される外部メディアであってもよい。また、このプログラムが通信回線によってコンピュータ200に配信される場合、配信を受けたコンピュータ200が当該プログラムをメインメモリ102に展開し、上記処理を実行してもよい。なお、ストレージ103は、一時的でない有形の記憶媒体である。
【0056】
また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現してもよい。さらに、上記プログラムは、前述した機能をコンピュータ200にすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるファイル、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【0057】
なお、上記構成に加えて、または上記構成に代えてPLD(Programmable Logic Device)などのカスタムLSI(Large Scale Integrated Circuit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、GPU(Graphics Processing Unit)、及びこれらに類する処理装置を備えてもよい。PLDの例としては、PAL(Programmable Array Logic)、GAL(Generic Array Logic)、CPLD(Complex Programmable Logic Device)、FPGA(Field Programmable Gate Array)が挙げられる。この場合、プロセッサによって実現される機能の一部または全部が当該集積回路によって実現されてよい。
【0058】
<付記>
各実施形態に記載のレーザークリーニング装置1、レーザークリーニングシステム2、及びレーザークリーニング方法は、例えば以下のように把握される。
【0059】
(1)第1の態様に係るレーザークリーニング装置1は、基材91、該基材91の表面に形成された下地92、及び該下地92の表面に形成された塗膜93を有する対象物90から少なくとも前記塗膜93をレーザーLによって除去するレーザークリーニング装置1であって、レーザーLを生成する発振部10と、前記レーザーLの光路上に配置され、該レーザーLの照射方向を変えることで前記塗膜93の表面に沿って前記レーザーLを走査方向Dに走査させる走査部20と、前記レーザーLのビーム径、及び出力の少なくとも一方を変化させることが可能なレーザー調節部31を有する制御装置30と、を備える。
【0060】
上記構成によれば、レーザー調節部31が、レーザーLのビーム径、及び出力の少なくとも一方を変化させることで、塗膜93に対する除去深さを自在にコントロールすることが可能となる。このため、レーザーLの熱による影響を基材91に与えることなく、塗膜93を除去することができる。
【0061】
(2)第2の態様に係るレーザークリーニング装置1は、(1)のレーザークリーニング装置1であって、前記下地92は、前記塗膜93よりも多い無機物成分を含む。
【0062】
上記構成によれば、下地92が塗膜93よりも多い無機物成分を含むことから、レーザーLによる熱に曝されても昇華しにくい。このため、万一レーザーLが下地92に到達した場合であっても、当該下地92によって基材91が保護される。これにより、基材91に熱の影響が及ぶ可能性をさらに低減することができる。
【0063】
(3)第3の態様に係るレーザークリーニングシステム2は、(1)又は(2)のレーザークリーニング装置1と、該レーザークリーニング装置1が先端に取り付けられたアーム部41を有する可動支持部40と、を備え、前記アーム部41は、前記走査方向Dに交差する方向に前記レーザークリーニング装置1を進退動させることが可能である。
【0064】
上記構成によれば、アーム部41によってレーザークリーニング装置1を進退動させることで、走査方向D、及び当該走査方向Dに交差する方向からなる面に沿って広い範囲をレーザーLによってクリーニングすることが可能となる。これにより、クリーニングに要する時間を短縮することができる。
【0065】
(4)第4の態様に係るレーザークリーニング方法は、(1)又は(2)のレーザークリーニング装置1を用いたレーザークリーニング方法であって、前記塗膜93の厚さ方向における少なくとも一部を除去することで粗加工を行うステップと、前記粗加工を行うステップで残存した前記塗膜93を前記下地92に到達するまで除去することで仕上げ加工を行うステップと、を含み、前記粗加工を行うステップでは、前記仕上げ加工を行うステップよりも、前記レーザーLのビーム径を小さくすることでエネルギー密度を高める。
【0066】
上記方法によれば、始めに粗加工を行うことで塗膜93の厚さ方向における少なくとも一部が除去される。この際、レーザーLのビーム径が相対的に小さく絞られていることからエネルギー密度が高くなり、短時間で所望の厚さまで塗膜93を除去することができる。他方で、仕上げ加工では、レーザーLのビーム径を粗加工の際よりも大きくすることによってエネルギー密度が低くなる。このため、残存する薄い塗膜93を除去するに当たって、レーザーLの熱による下地92への影響を最小限に抑えることができる。これにより、短時間のうちに、下地92を極力残しつつ、塗膜93を最大限除去することが可能となる。
【0067】
(5)第5の態様に係るレーザークリーニング方法は、(4)のレーザークリーニング方法であって、前記仕上げ加工を行うステップでは、前記下地92の除去深さと前記塗膜93の除去深さとの差分が予め定められた基準値よりも大きくなるように、前記レーザーLのビーム径を設定することでエネルギー密度を調節する。
【0068】
ここで、下地92と塗膜93との間では、無機物の含有量の差から、同一のエネルギー密度のレーザーLを照射した場合における除去深さに違いが生じる。上記方法では、下地92の除去深さと塗膜93の除去深さの差分が基準値よりも大きくなるようなエネルギー密度のもとでレーザークリーニングが行われる。このため、下地92を極力残しつつ、塗膜93を最大限除去することが可能となり、さらに効率的にレーザークリーニングを進めることができる。
【0069】
(6)第7の態様に係るレーザークリーニング方法は、(3)のレーザークリーニングシステム2を用いたレーザークリーニング方法であって、前記レーザーLによって前記走査方向Dに走査しながら前記アーム部41によって前記走査方向Dに交差する方向の一方側に向かって前記レーザークリーニング装置1を移動させることで第一領域51の前記塗膜93を除去するステップと、前記アーム部41によって前記走査方向Dに交差する方向の他方側に向かって前記レーザークリーニング装置1を移動させることで第二領域52の前記塗膜93を除去するステップと、を含み、前記第二領域52の前記走査方向Dにおける端部は、前記第一領域51の前記走査方向Dにおける端部と重複しており、前記レーザー調節部31は、前記レーザーLの照射点が前記走査方向Dにおける端部に到達したことを検知した場合に、前記レーザーLの出力を下げる方向に調節する。
【0070】
ここで、レーザークリーニングシステム2によって、走査方向Dから互いに隣接する複数の領域(第一領域51、及び第二領域52)にクリーニングを施す場合、これら領域同士の端部がわずかでも重複している場合、レーザーLの出力が重畳されてしまい、塗膜93に過度の入熱が行われてしまう可能性がある。しかしながら、上記構成によれば、レーザーLの照射点が走査方向Dの端部に達した際に、レーザー調節部31がレーザーLの出力を下げる方向に調節する。このため、上記のようにレーザーLが重畳されてしまっても、合計となる入熱量は他の領域と同等に抑えることができる。これにより、基材91に影響を与えることなく、安定的に塗膜93を除去することが可能となる。
【符号の説明】
【0071】
1…レーザークリーニング装置 2…レーザークリーニングシステム 10…発振部 20…走査部 30…制御装置 31…レーザー調節部 32…エネルギー密度取得部 33…記憶部 34…駆動信号生成部 35…角度取得部 36…判定部 40…可動支持部 41…アーム部 42…レール 43…駆動装置 51…第一領域 52…第二領域 53…重複領域 90…対象物 91…基材 92…下地 93…塗膜 101…CPU 102…メインメモリ 103…ストレージ 104…インターフェース 200…コンピュータ D…走査方向 L…レーザー X…移動方向