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  • 特開-Cバンド電磁波吸収体 図1
  • 特開-Cバンド電磁波吸収体 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024104865
(43)【公開日】2024-08-06
(54)【発明の名称】Cバンド電磁波吸収体
(51)【国際特許分類】
   H05K 9/00 20060101AFI20240730BHJP
   B32B 3/10 20060101ALI20240730BHJP
   B32B 7/025 20190101ALI20240730BHJP
   H01Q 17/00 20060101ALI20240730BHJP
【FI】
H05K9/00 M
B32B3/10
B32B7/025
H01Q17/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023009266
(22)【出願日】2023-01-25
(71)【出願人】
【識別番号】506083903
【氏名又は名称】株式会社新日本電波吸収体
(74)【代理人】
【識別番号】100166372
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 博明
(72)【発明者】
【氏名】荻野 哲
(72)【発明者】
【氏名】内田 利夫
【テーマコード(参考)】
4F100
5E321
5J020
【Fターム(参考)】
4F100AB01A
4F100AB31A
4F100AD11A
4F100AK03D
4F100AK07B
4F100AK12B
4F100AK15D
4F100AK17D
4F100AK25D
4F100AK45B
4F100AK51C
4F100AK74D
4F100BA04
4F100DC11C
4F100DC15B
4F100GB41
4F100JD08
4F100JG01A
4F100JG04C
4F100JG05B
4F100JG05D
4F100JK20D
4F100YY00B
4F100YY00C
5E321AA23
5E321BB21
5E321BB23
5E321BB25
5E321BB41
5E321BB53
5E321CC16
5E321GG11
5J020EA03
5J020EA07
5J020EA10
(57)【要約】
【課題】ETCなどで用いられる電磁波の周波数帯域であるCバンド電磁波吸収体を提供する。
【解決手段】Cバンド電磁波吸収体100は、表面抵抗値が1Ω以下の反射層10と、比誘電率に基づいて厚さが規定されるスペーサ20と、規則的な開口条件とされた開口率が10.0%~12.5%である開口部35が配列された抵抗層30と、スペーサ20及び抵抗層30を保護する保護層40と、を順次積層することによって製造する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面抵抗値が1Ω以下の反射層と、
比誘電率に基づいて厚さが規定されるスペーサと、
規則的な開口条件とされた開口率が10.0%~12.5%である開口部が配列された抵抗層と、
前記スペーサ及び前記抵抗層を保護する保護層と、
が順次積層されているCバンド電磁波吸収体。
【請求項2】
前記スペーサは、
比誘電率が1.0±0.5の場合に厚さが9.0mm~12.0mm、
比誘電率が2.0±0.5の場合に厚さが8.0mm~10.0mm、
比誘電率が3.0±0.5の場合に厚さが5.0mm~6.0mm、
である、請求項1記載のCバンド電磁波吸収体。
【請求項3】
前記開口部の配列は、格子状又は千鳥状である、請求項1記載のCバンド電磁波吸収体。
【請求項4】
前記反射層は、合金を含む金属、又は、カーボンナノチューブを含む炭素を含有する、請求項1記載のCバンド電磁波吸収体。
【請求項5】
前記抵抗層は、シート抵抗が300Ω/□~450Ω/□である、請求項1記載のCバンド電磁波吸収体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、Cバンド(6GHz帯(4GHz~8GHz、波長37mm~75mm)のセンチメートル波(SHF))電磁波吸収体に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、電磁波干渉型の電磁波吸収シートであって、所望する周波数帯域の電磁波を良好に吸収することができるとともに高い可撓性と透光性とを備えた、取り扱いの容易な電磁波吸収シートが開示されている。この電磁波吸収シートは、可撓性と透光性とを有し、いずれも透光性を有する、抵抗皮膜と、誘電体層と、電磁波遮蔽層とが積層して形成され、前記抵抗皮膜が、導電性有機高分子により形成され、前記電磁波遮蔽層の開口率が35%以上85%以下である、とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開2018/163584号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の[0003]段落には「…料金自動収受システム(ETC)などで、数ギガヘルツ(GHz)の周波数帯域を持つセンチメートル波、…を利用する技術の研究も進んでいる。」と記載されており、ETC(Electronic Toll Collection System)に好適な電磁波吸収シートを提供することも一応意識されているようである。
【0005】
しかし、特許文献1に記載されている発明は、60GHz~90GHzといったいわゆるEバンド電磁波吸収シートについての記載はあるものの([0091]、[0096]~[0098]、[0121]段落)、Cバンド電磁波吸収シートについての記載は皆無である。
【0006】
本発明は、特許文献1に記載されているEバンドとは異なるCバンドの電磁波を吸収対象とするCバンド電磁波吸収体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のCバンド電磁波吸収体は、
表面抵抗値が1Ω以下の反射層と、
比誘電率に基づいて厚さが規定されるスペーサと、
規則的な開口条件とされた開口率が10.0%~12.5%である開口部が配列された抵抗層と、
前記スペーサ及び前記抵抗層を保護する保護層と、
が順次積層されている。
【0008】
前記スペーサは、
比誘電率が1.0±0.5の場合に厚さが9.0mm~12.0mm、
比誘電率が2.0±0.5の場合に厚さが8.0mm~10.0mm、
比誘電率が3.0±0.5の場合に厚さが5.0mm~6.0mm、
とすることができる。
【0009】
前記開口部の配列は、格子状又は千鳥状とすることができる。
【0010】
前記反射層は、合金を含む金属、又は、カーボンナノチューブを含む炭素を含有する層を用いるとよい。
【0011】
前記抵抗層は、シート抵抗が300Ω/□~450Ω/□とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態の電磁波吸収体100の模式的な構成を示す分解斜視図である。
図2図1の変形例を示す分解斜視図である。
【符号の説明】
【0013】
10 反射層
20 スペーサ
30 抵抗層
40 保護層
100 電磁波吸収体
【発明の実施の形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態の電磁波吸収体について、図面を参照して説明する。
【0015】
(概要の説明)
図1は、本発明の実施形態の電磁波吸収体100の模式的な構成を示す分解斜視図である。図1には、以下説明する、反射層10と、スペーサ20と、抵抗層30と、保護層40とが、順次積層されている。なお、これら各部間に誘電体層を含めることもできる。また、これら各部は、例えば、接着剤によって相互に接続することができる。まず、電磁波吸収体100の概要について説明する。
【0016】
電磁波吸収体100は、Cバンドの電磁波を吸収対象とする。電磁波吸収体100は、λ/4型電磁波吸収体の基本原理を踏襲しつつも、電磁波吸収体100の総厚さを優先させ、スペーサ20の厚さを、その比誘電率に基づいてλ/4に相当する厚みの下限値程度としている。
【0017】
本実施形態の電磁波吸収体100は、以下説明するように薄型・軽量であるから、例えば、ETCのゲート近傍に、好適に設置することが可能である。なお、電磁波吸収体100は、これに限定されるものではないが、設置前の運搬時や風圧抵抗などを考慮すると、一例として50cm×50cm×10mm程度のサイズとし、それらを適切な枚数配置することが好ましい。
【0018】
電磁波吸収体100は、規則的な開口条件とされた開口率が10.0%~12.5%である開口部35が配列された抵抗層30を備え、抵抗層30における電磁波の反射率を低減させることによって、スペーサ20を薄くしても電磁波の吸収性能を向上させていることが特徴的である。
【0019】
なお、抵抗層30に開口部35を形成するのみならず、反射層10、スペーサ20、保護層40の少なくともいずれかにも開口部を形成してもよい。このことは、抵抗層30と少なくともこれに接するスペーサ20及び/又は保護層40とを積層した状態(スペーサ20を積層する場合には更に反射層10も積層してもよい)で、これらを一体としてパンチ加工等することで開口部35を形成してもよいことを意味する。
【0020】
なお、保護層40にも開口部を設ける場合には、開口部の内壁に吸湿防止加工を施すことが一般的に必要となるという点で面倒ではあるが、電磁波吸収体100の対風圧性を高めることができるという利点がある。したがって、保護層40にも開口部を形成するか否かは、電磁波吸収体100の用途に応じて決定すればよい。
【0021】
(構成の説明)
つぎに、電磁波吸収体100を構成する、反射層10と、スペーサ20と、抵抗層30と、保護層40について、それぞれ説明する。なお、これらのいずれも透光性を有する材料や透光性を有していなくともメッシュ加工したものとすることも一法である。
【0022】
その場合、電磁波吸収体100を例えばトンネルの壁面上部などに敷設したレールに取付具を用いて取り付ける場合、そのままの状態で取付具の交換時期等を確認することができるという効果を奏する。
【0023】
反射層10は、保護層40側から入射する電磁波のうち、抵抗層30及びスペーサ20を透過した電磁波を反射するものである。反射層10は、スペーサ20の条件との関係にもよるが、その表面抵抗値が1Ω以下の材料を採用するとよい。この種の材料としては、例えば、合金を含む金属やカーボンナノチューブを含む炭素材を主成分とするものを採用可能である。なお、反射層10の材料がこれらのいずれの場合であっても、電磁波の吸収効果に顕著な差異は確認できなかった。
【0024】
また、反射層10の材料として湿気を吸収しやすいものを用いる場合や、反射層10にも開口部が形成される場合には、スペーサ20が水分によって電磁波の吸収量が変化するので、スペーサ20に水分が到達しないように、反射層10上にも保護層40を形成するとよい。
【0025】
なお、反射層10は、その厚さについて不問であるが、例えば0.01mm~6.0mmとすることができる。反射層10は、一例を挙げると、日本製鉄社製の0.6mm厚の高耐食めっき鋼板(ZAM(JISG3323 SGMCC-SAX K27)を用いることができる。また、反射層10は、例えば、スペーサ20が相対的に厚い場合には、めっき処理を施すことによって形成することもできる。
【0026】
スペーサ20は、抵抗層30を透過した電磁者を吸収する誘電体である。スペーサ20は、その比誘電率に基づいて厚さが規定されることが特徴的である。換言すると、スペーサ20は、薄型・軽量の電磁波吸収体100を実現するため、その厚さを最大でも15.0mm程度とすることが可能な比誘電率の材料を選定するとよく、具体的には、比誘電率は概ね1.5~7.0である。
【0027】
このような比誘電率の材料であってスペーサ20に用いることができるものとしては、例えば、エチレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ウレタン樹脂などが挙げられる。
【0028】
なお、スペーサ20は、カーボン素材を混合して、電磁波の吸収効率を高めたものであってもよい。また、スペーサ20は、独立発砲構造体であることが好ましいが、連続発砲構造体であってもよい。さらに、スペーサ20は、単層であっても複層であってもよい。市販品を用いる場合、所望の厚さのものがなければ、スライス加工してもよい。
【0029】
スペーサ20の比誘電率と厚さとの関係を例示すると、
1.比誘電率が1.0±0.5程度の場合(例えば、ポリスチレンフォーム)、厚さは9.0mm~12.0mmとすることができる。市販品としては、例えば、カネカ社製の「カネライト畳フォーム」を用いることができる。
2.比誘電率が2.0±0.5程度の場合(例えば、ポリプロピレン樹脂硬質発砲体)、厚さは8.0mm~10.0mmとすることができる。市販品としては、例えば、積水化学工業社製の「ゼットロン」を用いることができる。
3.比誘電率が3.0±0.5程度の場合(例えばポリカーボネート樹脂)、厚さは5.0mm~6.0mmとすることができる。市販品としては、例えば、住友ベークライト社製の「ポリカエース(ECK100UUクリア)」を用いることができる。
【0030】
抵抗層30は、電磁エネルギーを熱エネルギーに変換することによって、吸収対象の電磁波を吸収するものである。抵抗層30は、規則的な開口条件とされた開口率が10%~12.5%である開口部35が配列されている。図1では、開口部35は、同形同大の角形とであって、規則的に格子状に配列されている。ただし、開口部35は、例えば、格子状に千鳥状に配列されてもよいし、格子状にハニカム状に配置されてもよい。
【0031】
図2は、図1の変形例を示す分解斜視図である。図2に示す電磁波吸収体100は、抵抗層30における開口部35の形状を、角形ではなくて円形とした点が異なる。このように、開口部35は、規則的な開口条件とされている点が特徴的である。
【0032】
抵抗層30は、柔軟性、密着性、耐水性、水蒸気透過性などの少なくとも幾つかを有する樹脂(例えば、ウレタン樹脂)を母材とし、その一次粒径が例えば15μm以下の黒鉛を主成分として含有する樹脂とすることができる。抵抗層30は、その厚みが例えば3μm~100μmであり、そのシート抵抗が300Ω/□~450Ω/□であるものを用いることができる。なお、母材は、市販品としては、例えば、宇部宇部興産社製のアクリルウレタン樹脂「UW-1013D-C1」を用いることができる。
【0033】
保護層40は、抵抗層30及びスペーサ20を保護するものであり、これらを外気とりわけ湿気等から保護する。保護層40は、その比誘電率が例えば3.5以下のものを選定している。保護層40としては、この比誘電率を満足することを条件とした、アクリル樹脂、アクリロニトリル・エチレン-プロピレンゴム・スチレン樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリテトラフルオロエチレン樹脂などとすることができる。保護層40は、その厚さを、例えば、1.0mm~3.5mmとすることができる。
【0034】
(減衰性能の説明)
つぎに、電磁波吸収体100の実施例として、以下の各条件のものを用いて製造した。
反射層10:既述の「ZAM」(全実施例)、
スペーサ20:既述の「ゼットロン」(実施例1~15)及び既述の「ポリカエース(ECK100UUクリア)」(実施例16~17)を採用し、厚さは実施例毎に適宜変更した、
抵抗層30:既述の「UW-1013D-C1」を母材とし、平均一次粒径が5.0μmの黒鉛を15.0wt%混合させ、黒鉛層厚を約20±5μm、表面抵抗率を約377±50Ω/□としたシートに対して、開口部35の開口条件(大きさ及び形状・ピッチ・配列)を実施例毎に適宜変更した。
保護層40:住友ベークライト社製の「ポリカエース(ECK100GUUクリアシルク調マット:2mm厚)」。
【0035】
そして、各実施例の電磁波吸収体100に対して、2種類の入射角(10°・45°)に設定したCバンドの電磁波としてETCで用いられる電磁波の周波数帯である5.8GHzを、保護層40側から照射して、反射層10側での電磁波吸収量を計測した。
【0036】
表1は、実施例1~実施例17の電磁波吸収体100に対して、5.8GHzの電磁波を照射した場合のそれぞれの電磁波吸収量の測定結果を示すものである。
【0037】
【表1】
【0038】
実施例1~実施例17の電磁波吸収体100は、いずれも、入射角が10°の場合に20dB以上であって、かつ、入射角が45°の場合に10dB以上であることがわかる。ただし、スペーサ20の厚さが同じ場合であっても、抵抗層30の開口部35の開口条件によって電磁波吸収量は異なるので、その用途で必要とされる電磁波吸収量に応じて電磁波吸収体100の可変パラメータを決定すればよいことがわかる。
【0039】
なお、スペーサ20の材料として既述の「ゼットロン」すなわちポリプロピレン樹脂硬質発砲体を用いた場合には、厚さが6.0mm以下及び12.0mm以上の場合には、表1内のいずれの開口条件の抵抗層30を用いた場合にも、それらの一部しか電磁波吸収量が、入射角が10°の場合に20dB以上であって、かつ、入射角が45°の場合に10dB以上とはならなかったので、スペーサ20の厚さは約8.0mm~約10.0mmの範囲に収まるようにすると良さそうであるということがわかった。
【0040】
また、スペーサ20の材料として既述の「ポリカエース(ECK100UUクリア)」すなわちポリカーボネート樹脂を用いた場合には、厚さが4.0mm以下及び7.0mm以上の場合には、表1内のいずれの開口条件の抵抗層30を用いた場合にも、それらの一部しか電磁波吸収量が、入射角が10°の場合に20dB以上であって、かつ、入射角が45°の場合に10dB以上とはならなかったので、スペーサ20の厚さは約5.0mm~約6.0mmの範囲に収まるようにすると良さそうであるということがわかった。
【0041】
以上述べたように、本発明の電磁波吸収体によれば、所定の入射角で入射されるCバンドの電磁波を高吸収することができる。なお、各実施例で説明した条件は例示であって、特許請求の範囲で規定される発明の精神を逸脱しない限り、各実施例の各部位の条件を変更したものも本発明の技術的範囲に属することは言うまでもない。
【0042】
すなわち、例えば、スペーサ20の材料として厚さが6.0mm以下及び12.0mm以上のポリプロピレン樹脂硬質発砲体を用いた場合、或いは、例えばスペーサ20の材料として厚さが4.0mm以下及び7.0mm以上のポリカーボネート樹脂を用いた場合でも、当業者であれば、抵抗層30の比誘電率・厚さ・開口部35の開口条件、或いは、保護層40の比誘電率・厚さを変更しても、所望の電磁波吸収量が得られる電磁波吸収体を製造することができると理解でき、このような電磁波吸収体も、本発明の技術的範囲に属する。

図1
図2