(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024104869
(43)【公開日】2024-08-06
(54)【発明の名称】車両駆動装置
(51)【国際特許分類】
H02M 7/48 20070101AFI20240730BHJP
【FI】
H02M7/48 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023009272
(22)【出願日】2023-01-25
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 良太
(72)【発明者】
【氏名】島野 薫
(72)【発明者】
【氏名】小嶋 有輝
【テーマコード(参考)】
5H770
【Fターム(参考)】
5H770BA02
5H770PA17
5H770PA21
5H770PA42
5H770QA06
5H770QA22
5H770QA31
(57)【要約】
【課題】インバータ装置に対する冷却性能を低減することなく又は高めつつ、ケースに形成する冷却水路の範囲を低減又は無くす。
【解決手段】軸上に回転軸を有する回転電機と、軸まわりに円環状に延在し、回転電機に複数相の交流電力を供給するインバータ装置と、冷却水が通る第1冷却水路を形成する水路形成部材とを備え、第1冷却水路は、軸方向でインバータ装置と回転電機との間に延在する、車両駆動装置が開示される。
【選択図】
図3A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸上に回転軸を有する回転電機と、
軸まわりに円環状に延在し、前記回転電機に複数相の交流電力を供給するインバータ装置と、
冷却水が通る第1冷却水路を形成する水路形成部材とを備え、
前記第1冷却水路は、軸方向で前記インバータ装置と前記回転電機との間に延在する、車両駆動装置。
【請求項2】
前記インバータ装置を制御する制御基板を更に備え、
前記制御基板は、軸まわりに、かつ、軸方向で前記インバータ装置と前記回転電機との間に、配置され、
前記第1冷却水路は、軸方向で前記インバータ装置と前記制御基板の間、又は、軸方向で前記制御基板と前記回転電機との間に、延在する、請求項1に記載の車両駆動装置。
【請求項3】
前記第1冷却水路は、軸方向に視て、前記インバータ装置に重なる、請求項1に記載の車両駆動装置。
【請求項4】
前記インバータ装置は、複数のモジュールにより形成され、
前記複数のモジュールのそれぞれは、パワースイッチング素子と、前記パワースイッチング素子が配置される放熱部材と、平滑コンデンサとを含み、
前記水路形成部材は、前記第1冷却水路に連通する第2冷却水路を更に形成し、
前記第2冷却水路は、前記放熱部材の内部を通る、請求項1に記載の車両駆動装置。
【請求項5】
前記第1冷却水路は、
一の前記第2冷却水路の入口側に接続される入口側水路部と、
前記一の第2冷却水路の出口側に一端が接続され、他の一の前記第2冷却水路の入口側に他端が接続される接続水路部と、
前記他の一の第2冷却水路の出口側に接続される出口側水路部とを含む、請求項4に記載の車両駆動装置。
【請求項6】
前記水路形成部材は、前記第1冷却水路に連通する第3冷却水路を更に形成し、
前記第3冷却水路は、軸方向に視て、径方向で前記インバータ装置と前記回転軸との間に、かつ、軸まわりに、延在する、請求項1から5のうちのいずれか1項に記載の車両駆動装置。
【請求項7】
前記水路形成部材は、前記第1冷却水路に連通する第3冷却水路を更に形成し、
前記第3冷却水路は、
前記入口側水路部に接続され、ウォーターポンプから吐出される冷却水を前記第1冷却水路へと供給する供給側水路と、
前記出口側水路部に接続され、前記第2冷却水路を通った冷却水を前記ウォーターポンプへと戻す排出側水路と、を含み、
前記供給側水路及び前記排出側水路は、ともに、軸方向に視て、径方向で前記インバータ装置と前記回転軸との間に、かつ、軸まわりに、延在する、請求項5に記載の車両駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
回転電機に対して軸方向に隣り合う態様で、軸まわりに円環状にインバータ装置を配置し、ケース(モータカバー)に、冷却水が通る冷却水路を形成して、インバータ装置を冷却する技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のような従来技術では、ケースに形成する冷却水路が複雑化しやすく、加工コストが増加するだけでなく、ケースを含む装置全体の軸方向の体格が増加しやすい。
【0005】
そこで、1つの側面では、本開示は、インバータ装置に対する冷却性能を低減することなく又は高めつつ、ケースに形成する冷却水路の範囲を低減又は無くすことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
1つの側面では、軸上に回転軸を有する回転電機と、
軸まわりに円環状に延在し、前記回転電機に複数相の交流電力を供給するインバータ装置と、
冷却水が通る第1冷却水路を形成する水路形成部材とを備え、
前記第1冷却水路は、軸方向で前記インバータ装置と前記回転電機との間に延在する、車両駆動装置が提供される。
【発明の効果】
【0007】
1つの側面では、本開示によれば、インバータ装置に対する冷却性能を低減することなく又は高めつつ、ケースに形成する冷却水路の範囲を低減又は無くすことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】回転電機を含む電気回路の一例の概略図である。
【
図2】回転電機を含む車両用駆動システムのスケルトン図である。
【
図4】本実施例による冷却系の全体を概略的に示す図である。
【
図5】
図4に示した冷却系の構造部分を示す斜視図であり、本実施例によるモータ駆動装置をX1側から視た斜視図である。
【
図6】冷却水路における冷却水の流れの説明図である。
【
図7】第2冷却水路の説明図であり、放熱部材を通る断面図である。
【
図8】第1変形例による車両駆動装置の要部の断面図であり、冷却水路の一部を通る断面図である。
【
図9】第2変形例による車両駆動装置の要部の断面図であり、冷却水路の一部を通る断面図である。
【
図10】第3変形例による車両駆動装置の要部の断面図であり、冷却水路の一部を通る断面図である。
【
図11】冷却水路における流路分岐部における圧力損失の低減方法の説明図である。
【
図12】冷却水路における流路分岐部における圧力損失の低減方法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照しながら各実施例について詳細に説明する。なお、図面の寸法比率はあくまでも一例であり、これに限定されるものではなく、また、図面内の形状等は、説明の都合上、部分的に誇張している場合がある。また、図面では、見易さのために、複数存在する同一属性の部位には、一部のみしか参照符号が付されていない場合がある。
【0010】
以下では、本実施例の車両駆動装置10の電気系(制御系)、及び、本実施例の車両駆動装置10を含む駆動システム全体を概説してから、本実施例の車両駆動装置10の詳細について説明する。
【0011】
[車両駆動装置の電気系]
図1は、回転電機1を含む電気回路200の一例の概略図である。
図1には、制御装置500についても併せて示される。
図1において、制御装置500に対応付けられた点線矢印は、情報(信号やデータ)のやり取りを表す。
【0012】
回転電機1は、制御装置500によるインバータINVの制御を介して駆動される。
図1に示す電気回路200では、回転電機1は、電源VaにインバータINVを介して電気的に接続される。なお、インバータINVは、例えば、相ごとに、電源Vaの高電位側Pと低電位側Nとにそれぞれパワースイッチング素子(例えばMOSFET:Metal-Oxide-Semiconductor Field Effect TransistorやIGBT:Insulated Gate Bipolar Transistor等)を備え、高電位側Pのパワースイッチング素子と低電位側Nのパワースイッチング素子とが上下アームを形成する。なお、インバータINVは、相ごとに、複数組の上下アームを備えてもよい。各パワースイッチング素子は、制御装置500による制御下で、所望の回転トルクが発生するようにPWM(Pulse Width Modulation)駆動されてよい。なお、電源Vaは、例えば比較的定格電圧の高いバッテリであり、例えばリチウムイオンバッテリや燃料電池等であってよい。
【0013】
本実施例では、
図1に示す電気回路200のように、電源Vaの高電位側Pと低電位側Nの間には、インバータINVに対して並列に、平滑コンデンサCが電気的に接続される。なお、平滑コンデンサCは、複数組、互いに並列に、電源Vaの高電位側Pと低電位側Nの間に電気的に接続されてもよい。また、電源VaとインバータINVとの間にDC/DCコンバータが設けられてもよい。
【0014】
[駆動システム全体]
図2は、回転電機1を含む車両用駆動システム100のスケルトン図である。
図2には、X方向と、X方向に沿ったX1側とX2側が定義されている。X方向は、第1軸A1の方向(以下、「軸方向」とも称する)に平行である。
【0015】
図2に示す例では、車両用駆動システム100は、車輪Wの駆動源となる回転電機1と、回転電機1と車輪Wとを結ぶ動力伝達経路に設けられた駆動伝達機構7と、を備える。駆動伝達機構7は、入力部材3と、カウンタギヤ機構4と、差動歯車機構5と、左右の出力部材61、62と、を備える。
【0016】
入力部材3は、入力軸31と、入力ギヤ32とを有する。入力軸31は、第1軸A1まわりに回転する回転部材である。入力ギヤ32は、回転電機1からの回転トルク(駆動力)をカウンタギヤ機構4に伝達するギヤである。入力ギヤ32は、入力部材3の入力軸31と一体的に回転するように、入力部材3の入力軸31に連結される。
【0017】
カウンタギヤ機構4は、動力伝達経路において、入力部材3と差動歯車機構5との間に配置される。カウンタギヤ機構4は、カウンタ軸41と、第1カウンタギヤ42と、第2カウンタギヤ43とを有する。
【0018】
カウンタ軸41は、第2軸A2まわりに回転する回転部材である。第2軸A2は、第1軸A1に平行に延在する。第1カウンタギヤ42は、カウンタギヤ機構4の入力要素である。第1カウンタギヤ42は、入力部材3の入力ギヤ32と噛み合う。第1カウンタギヤ42は、カウンタ軸41と一体的に回転するように、カウンタ軸41に連結される。
【0019】
第2カウンタギヤ43は、カウンタギヤ機構4の出力要素である。本実施例では、一例として、第2カウンタギヤ43は、第1カウンタギヤ42よりも小径に形成される。第2カウンタギヤ43は、カウンタ軸41と一体的に回転するように、カウンタ軸41に連結される。
【0020】
差動歯車機構5は、その回転軸心としての第3軸A3上に配置される。第3軸A3は、第1軸A1に平行に延在する。差動歯車機構5は、回転電機1の側から伝達される駆動力を、左右の出力部材61、62に分配する。差動歯車機構5は、差動入力ギヤ51を備え、差動入力ギヤ51は、カウンタギヤ機構4の第2カウンタギヤ43と噛み合う。また、差動歯車機構5は、差動ケース52を備え、差動ケース52内には、ピニオンシャフトや、ピニオンギヤ、左右のサイドギヤ等が収容される。左右のサイドギヤは、それぞれ、左右の出力部材61、62と一体的に回転するように連結される。
【0021】
左右の出力部材61、62のそれぞれは、左右の車輪Wに駆動連結される。左右の出力部材61、62のそれぞれは、差動歯車機構5によって分配された駆動力を車輪Wに伝達する。なお、左右の出力部材61、62は、2つ以上の部材により構成されてもよい。
【0022】
このようにして回転電機1は、駆動伝達機構7を介して車輪Wを駆動する。ただし、他の実施例では、回転電機1は、ホイールインモータとして、車輪内に配置されてもよい。この場合、車両用駆動システム100は、駆動伝達機構7を含まない構成であってよい。また、他の実施例では、駆動伝達機構7の一部又は全部を共用化する複数の回転電機1が設けられてもよい。
【0023】
[車両駆動装置の詳細]
図3A及び
図3Bは、本実施例の車両駆動装置10の要部の断面図であり、
図3Aは、冷却水路70の一部を通る断面図であり、
図3Bは、冷却水路70の他の一部を通る断面図である。
【0024】
車両駆動装置10は、上述した回転電機1と、ケース2と、モータ駆動装置8とを含む。
【0025】
車両駆動装置10は、車両用駆動システム100の一部として車両に搭載され、上述したように、車両を前進又は後退させる駆動力を生成する。なお、車両は、任意の形態であり、例えば4輪の自動車であってもよいし、バス、トラック、二輪車や建設機械等であってもよい。なお、車両駆動装置10は、他の駆動源(例えば内燃機関)とともに車両に搭載されてもよい。
【0026】
回転電機1は、ロータ310及びステータ320を有する。
図3A及び
図3Bには、回転電機1の軸方向一端側(X1側)の一部が示されている。回転電機1は、インナロータタイプであり、ステータ320がロータ310の径方向外側を囲繞するように設けられる。すなわち、ロータ310は、ステータ320の径方向内側に配置される。
【0027】
ロータ310は、ロータコア312と、シャフト部314とを備える。
【0028】
ロータコア312は、例えば円環状の磁性体の積層鋼板からなってよい。ロータコア312の内部には、永久磁石325が埋め込まれてよい。あるいは、永久磁石325は、ロータコア312の外周面に取り付けられてもよい。なお、永久磁石325の配列等は任意である。ロータコア312は、シャフト部314の外周面に固定され、シャフト部314と一体となって回転する。
【0029】
シャフト部314は、第1軸A1上に配置され、回転電機1の回転軸を第1軸A1上に画成する。シャフト部314は、ロータコア312が固定される部分よりもX1側において、ケース2のモータカバー252(後述)にベアリング240を介して回転可能に支持される。なお、シャフト部314は、回転電機1の軸方向他端側(X2側)において、ベアリング240に対応するベアリングを介してケース2に回転可能に支持される。このようにして、シャフト部314が軸方向両端で回転可能にケース2に支持されてよい。
【0030】
シャフト部314は、例えば中空管の形態であり、中空内部314Aを有する。中空内部314Aは、シャフト部314の軸方向の全長にわたり延在してよい。中空内部314Aは、軸心油路として機能することができる。この場合、シャフト部314は、ステータ320のコイルエンド部322A等に油を吐出する油孔が形成されてよい。
【0031】
ステータ320は、ステータコア321と、ステータコイル322とを備える。
【0032】
ステータコア321は、例えば円環状の磁性体の積層鋼板からなってよい。ステータコア321の内周部には、径方向内側に突出するティース(図示せず)が放射状に形成される。
【0033】
ステータコイル322は、例えば断面平角状又は断面円形状の導体に絶縁被膜が付与された形態であってよい。ステータコイル322は、ステータコア321のティース(図示せず)まわりに巻装される。なお、ステータコイル322は、例えば、1つ以上の並列関係で、Y結線で電気的に接続されてもよいし、Δ結線で電気的に接続されてもよい。
【0034】
ステータコイル322は、ステータコア321のスロットから軸方向外側に突出する部分であるコイルエンド部322Aを有する。以下の説明において、コイルエンド部322Aとは、特に言及しない限り、ステータコイル322の一部であって、ステータコア321の軸方向両側のそれぞれで周方向に沿って延在する部分のうちの、リード側である軸方向一端側(X1側)に沿って延在する部分を指す。
【0035】
ケース2は、例えばアルミ等により形成されてよい。ケース2は、例えば鋳造等により形成できる。ケース2は、複数のケース部材やカバー部材の組み合わせにより形成されてよい。この場合、ケース2は、一体的に結合される各部材を含み、当該各部材の形状や材質等は任意である。本実施例では、ケース2は、モータケース250と、モータカバー252とを含む。ケース2は、回転電機1及びモータ駆動装置8を収容する。また、
図2に示した車両用駆動システム100の場合、ケース2は、
図2に模式的に示すように、駆動伝達機構7を更に収容してもよい。
【0036】
モータケース250は、回転電機1を収容するモータ収容室SP1を形成する。なお、モータ収容室SP1は、回転電機1(及び/又は駆動伝達機構7)を冷却及び/又は潤滑するための油を含む油密空間であってよい。モータケース250は、回転電機1の径方向外側を囲繞する周壁部を有する形態である。モータケース250は、複数の部材を結合して実現されてもよい。また、モータケース250は、軸方向他端側(X2側)で、駆動伝達機構7を収容する他のケース部材に一体化されてよい。
【0037】
モータカバー252は、比較的高い伝熱性を有する材料(例えばアルミ)により形成される。モータカバー252は、モータケース250の軸方向一端側(X1側)に結合される。モータカバー252は、モータ収容室SP1における軸方向一端側(X1側)を覆うカバーの形態であり、回転電機1に軸方向に対向する。この場合、モータカバー252は、モータケース250の軸方向一端側(X1側)の開口部を完全に又は略完全に閉塞する態様で覆ってもよい。
【0038】
モータカバー252は、モータ駆動装置8を収容するインバータ収容室SP2を形成する。なお、インバータ収容室SP2の一部は、モータケース250により形成されてもよいし、逆に、モータ収容室SP1の一部は、モータカバー252により形成されてもよい。
【0039】
モータカバー252は、モータ駆動装置8を支持する。例えばモータ駆動装置8は、後述するモジュールの形態で、モータカバー252に取り付けられてもよい。これにより、モータカバー252にモータ駆動装置8の一部又は全体を組み付けてから、モータカバー252とモータケース250とを結合でき、モータ駆動装置8の組み付け性が向上する。
【0040】
モータカバー252には、ロータ310を回転可能に支持するベアリング240が設けられる。すなわち、モータカバー252は、ベアリング240を支持するベアリング支持部2524を有する。なお、ベアリング支持部2524とは、モータカバー252のうちの、ベアリング240が設けられる軸方向範囲の部分全体を指す。
【0041】
ベアリング240は、
図3A及び
図3Bに示すように、シャフト部314のX1側の端部における径方向外側に設けられる。具体的には、ベアリング240は、アウタレースの径方向外側がモータカバー252に支持され、インナレースの径方向内側がシャフト部314の外周面に支持される。なお、変形例では、逆に、ベアリング240は、インナレースの径方向内側がモータカバー252に支持され、アウタレースの径方向外側がシャフト部314の内周面に支持されてもよい。
【0042】
モータカバー252は、
図3A及び
図3Bに示すように、第1軸A1を中心とした円形状の底部2521と、底部2521の外周縁から軸方向他端側(X2側)へと突出する周壁部2522とを含み、底部2521と周壁部2522とが、インバータ収容室SP2を画成する。底部2521における軸方向他端側(X2側)の中央部(第1軸A1を中心とした部分)には、ベアリング支持部2524が設定される。
【0043】
インバータ収容室SP2は、空間であってもよいが、好ましくは、比較的高い伝熱性を有するフィラーを含む樹脂により封止される。すなわち、モータカバー252は、好ましくは、伝熱性のモールド樹脂部2523を有する。この場合、モールド樹脂部2523は、後述するモータ駆動装置8を封止して支持する機能と、モータ収容室SP1内の油に対してモータ駆動装置8を保護する機能と、モータ駆動装置8からの熱を冷却水路70(後述)内の冷却水へと伝達する機能を有することができる。なお、
図3A及び
図3Bでは、モールド樹脂部2523内に封止される要素(後述するインバータモジュール90等)の一部が透視で示されている。また、
図3A及び
図3Bでは、モールド樹脂部2523は、制御基板84を封止していないが、制御基板84のX1側又は両側に延在してもよい。
【0044】
モータ駆動装置8は、パワーモジュール80と、コンデンサモジュール82と、制御基板84とを含む。
【0045】
本実施例では、パワーモジュール80及びコンデンサモジュール82は、後出の
図5に示すように、複数の組(
図5に示す例では、12組)をなして、周方向に沿って配置される。パワーモジュール80及びコンデンサモジュール82の組の数は、回転電機1の仕様に応じて変化させる。基本的には、パワーモジュール80及びコンデンサモジュール82の組の数が増加すると、回転電機1の出力が大きくなる。従って、回転電機1の設計の際に、パワーモジュール80及びコンデンサモジュール82の組の数が異なる複数のバリエーションを設定できる。
【0046】
パワーモジュール80及びコンデンサモジュール82は、好ましくは、複数の組のそれぞれにおいて、一体化された組立体の形態である。すなわち、各組のパワーモジュール80及びコンデンサモジュール82は、一体化されたインバータモジュール90(
図3A及び
図3B参照)を形成する。
【0047】
インバータモジュール90のそれぞれにおいて、パワーモジュール80は同じ構成を有し、コンデンサモジュール82は同じ構成(電気的特性や形状等)を有する。これにより、インバータモジュール90ごとの交換や整備も可能であり、汎用性を高めることができる。本実施例では、インバータモジュール90のそれぞれにおいて、パワーモジュール80は、サブモジュール800と、放熱部材810とを含む(
図3A及び
図3B参照)。
【0048】
サブモジュール800のそれぞれは、インバータINV(
図1参照)における一の相に係る上下アームを形成する。なお、サブモジュール800のそれぞれは、配線部88のバスバー886を介して電源Va等に電気的に接続されてよい。
【0049】
放熱部材810は、比較的高い伝熱性を有する材料(例えばアルミ)により形成される。本実施例では、放熱部材810は、中実のブロックの形態である。これにより、放熱部材810の熱容量を効率的に高めることができる。
【0050】
制御基板84は、制御装置500(
図1参照)の一部又は全体を形成する。制御基板84は、平らな形態であり、例えば多層プリント基板により形成されてもよい。制御基板84は、基板表面に対する法線方向が軸方向に沿う向きに配置される。これにより、制御基板84を軸方向の僅かな隙間を利用して配置できる。例えば、本実施例では、制御基板84は、
図3A及び
図3Bに示すように、軸方向で回転電機1とインバータモジュール90との間に配置されてよい。より詳細には、制御基板84は、軸方向で回転電機1のコイルエンド部322Aとパワーモジュール80及びコンデンサモジュール82との間に配置されてよい。これにより、デッドスペースになりやすいスペースを利用した効率的な配置を実現できる。また、制御基板84は、軸方向に視て、コイルエンド部322Aにオーバラップする径方向位置まで径方向外側に延在できるので、制御基板84の面積(回路部形成範囲)の最大化を図ることができる。
【0051】
制御基板84は、第1軸A1を中心とした円環状の形態である。この場合、周方向に沿って配置された複数のパワーモジュール80のいずれに対してもその近傍に制御基板84を配置できる。これにより、パワーモジュール80のサブモジュール800を形成する各パワー半導体チップ(例えばパワースイッチング素子のゲート端子)と制御基板84の駆動回路(図示せず)との間の電気的な接続(図示せず)が容易となる。
【0052】
次に、
図3A及び
図3Bとともに、
図4以降を参照しつつ、本実施例による車両駆動装置10に適用可能な冷却系700の一例について説明する。
【0053】
図4は、本実施例による冷却系700の全体を概略的に示す図である。
【0054】
図4では、ウォーターポンプ790から吐出された冷却水は、ラジエータ792を通る。なお、冷却水は、例えばLLC(Long Life Coolant)を含む水であってよい。ラジエータ792では冷却水は外気と熱交換を行うことで冷却される。ラジエータ792を介して冷却された冷却水は、流路728を通って、入口側水路部712に向かって流れる(矢印R350参照)。入口側水路部712に導入された冷却水は、入口側水路部712を流れつつ(矢印R352参照)、複数のモジュール冷却流路330に分配される(矢印R354参照)。複数のモジュール冷却流路330を流れる冷却水は、後述するように、インバータモジュール90のパワーモジュール80等を冷却する。各モジュール冷却流路330を通った冷却水は、共通の出口側水路部716に導入(収集)され、共通の出口側水路部716を流れる(矢印R356参照)。そして、その後、各種冷却に供された冷却水は、流路729を通って、ウォーターポンプ790の吸引側へと戻される(矢印R358参照)。このようにして、冷却水は、インバータモジュール90を冷却しつつ、循環する。なお、
図4では、ウォーターポンプ790は、出口側水路部716とラジエータ792の間に配置されているが、出口側水路部716をラジエータ792に接続し、ウォーターポンプ790をラジエータ792と入口側水路部712の間に配置してもよい。
【0055】
図5は、
図4に示した冷却系700の構造部分(水路形成部材750)を示す斜視図であり、本実施例によるモータ駆動装置8をX1側から視た斜視図である。
図6は、冷却水路70における冷却水の流れの説明図であり、水路形成部材750(冷却水路70の外殻)を概略的に示す図である。
図7は、第2冷却水路72の説明図であり、放熱部材810を通る断面図である。
【0056】
以下では、径方向、軸方向及び周方向の各用語は、特に言及しない限り、第1軸A1に関する各方向である。すなわち、軸方向は、第1軸A1に平行な方向(第1軸A1と同軸の線に沿った方向を含む)であり、径方向は、第1軸A1を通りかつ第1軸A1に直交する方向であり、周方向は、第1軸A1に直交する任意の平面内における第1軸A1まわりの方向である。また、軸まわりとは、第1軸A1まわりを指す。
【0057】
また、以下では、上流側及び下流側とは、
図4に示した冷却系700における冷却水の流れ(
図6も参照)に沿った方向を基準とする。具体的には、上流側とは、ウォーターポンプ790の吐出側に近い側を指し、下流側とは、
図4に示した冷却系700において、ウォーターポンプ790の吸引側に近い側を指す。
【0058】
本実施例による水路形成部材750は、
図4に示した冷却系700を形成する各種冷却水路のうちの、車両駆動装置10における冷却水路70を形成する。水路形成部材750は、複数の部材の組み合わせにより形成されてもよい。水路形成部材750は、後述するようにパイプ(管状部材)の形態であってもよい。また、水路形成部材750の一部は、ケース2自体により実現されてもよい。ただし、本実施例によれば、後述する構成を有することで、冷却水路70のうちの、ケース2に形成する水路部分を低減又は無くすことができる。
【0059】
本実施例では、冷却水路70は、第1冷却水路71と、第2冷却水路72と、第3冷却水路73とを含む。
【0060】
第1冷却水路71は、後述する第2冷却水路72とともに、
図4に示したモジュール冷却流路330を形成する。第1冷却水路71は、軸方向でインバータモジュール90と回転電機1との間に延在する。本実施例では、第1冷却水路71は、軸方向でインバータモジュール90と制御基板84の間に延在する。これにより、第1冷却水路71内を流れる冷却水によりインバータモジュール90及び制御基板84を効果的に冷却できる。なお、第1冷却水路71は、モールド樹脂部2523を介してインバータモジュール90に熱的に接続されてもよい。
【0061】
第1冷却水路71は、軸方向に視て、インバータモジュール90に重なる。本実施例では、第1冷却水路71は、軸方向に視て、インバータモジュール90のパワーモジュール80に重なる。これにより、第1冷却水路71内を流れる冷却水によりパワーモジュール80を効果的に冷却できる。
【0062】
本実施例では、第1冷却水路71は、周方向で隣り合う2つのインバータモジュール90ごとに1つずつ、設けられる。例えば、12組のインバータモジュール90が設けられる場合、6つの第1冷却水路71が設けられる。これにより、インバータモジュール90ごとに設けられる場合に比べて効率的な構成を実現できる。この場合、相ごとに、2つの第1冷却水路71が設けられてよい。各第1冷却水路71は、実質的に同じであってよく、以下では、特に言及しない限り、任意の一の第1冷却水路71について説明する。また、以下では、対応する2つのインバータモジュール90とは、説明対象の一の第1冷却水路71が設けられる2つのインバータモジュール90を指す。
【0063】
本実施例では、第1冷却水路71は、入口側水路部712と、接続水路部714と、出口側水路部716とを含む。
【0064】
入口側水路部712は、後述する第3冷却水路73の供給側水路731から後述する第2冷却水路72へと冷却水を導入するための流路を形成する。すなわち、入口側水路部712は、一端が供給側水路731に接続され、他端が第2冷却水路72に接続される。入口側水路部712は、径方向に延在し、径方向内側で供給側水路731に接続され、径方向外側で第2冷却水路72に接続される。
【0065】
接続水路部714は、対応する2つのインバータモジュール90間を接続する流路である。すなわち、接続水路部714は、一のインバータモジュール90に係る第2冷却水路72と他の一のインバータモジュール90に係る第2冷却水路72との間に配置される。接続水路部714は、対応する2つのインバータモジュール90に係る周方向範囲において周方向に延在してよい。
【0066】
出口側水路部716は、後述する第2冷却水路72からの冷却水を、後述する第3冷却水路73の排出側水路732に導入するための流路を形成する。すなわち、出口側水路部716は、一端が第2冷却水路72に接続され、他端が排出側水路732に接続される。出口側水路部716は、径方向に延在し、径方向外側で第2冷却水路72に接続され、径方向内側で排出側水路732に接続される。
【0067】
第2冷却水路72は、上述したように、第1冷却水路71とともに、
図4に示したモジュール冷却流路330を形成する。第2冷却水路72は、第1冷却水路71に連通する。
【0068】
第2冷却水路72は、インバータモジュール90に設けられる。本実施例では、第2冷却水路72は、インバータモジュール90ごとに設けられる。具体的には、一の第1冷却水路71に対応して設けられる2つの第2冷却水路72は、対応する2つのインバータモジュール90のうちの、上流側のインバータモジュール90に設けられる上流側の第2冷却水路72と、下流側のインバータモジュール90に設けられる下流側の第2冷却水路72とからなる。
【0069】
第2冷却水路72は、インバータモジュール90に接触する態様で配置されてもよいが、好ましくは、インバータモジュール90内を通る。本実施例では、第2冷却水路72は、
図7に示すように、対応するインバータモジュール90のうちの放熱部材810を通る。具体的には、放熱部材810は、内部に第2冷却水路72を形成する流路部811を有する。この場合、放熱部材810内の流路部は、空洞部の形態であってもよいし、加工孔であってもよいし、管状部材が内蔵又は挿通される形態であってもよい。これにより、第2冷却水路72内を流れる冷却水により放熱部材810を効果的に冷却でき、その結果、放熱部材810を介してパワーモジュール80を効果的に冷却できる。
【0070】
第3冷却水路73は、第1冷却水路71に連通する。第3冷却水路73は、軸方向に視て、径方向でインバータモジュール90と第1軸A1との間に、かつ、軸まわりに、延在する。すなわち、第3冷却水路73は、軸方向に視て、円環状の形態であり、径方向でインバータモジュール90とシャフト部314との間に、周方向に延在する。これにより、デッドスペースとなりやすい、径方向でインバータモジュール90とシャフト部314との間の空間、を利用して、第3冷却水路73を効率的に配置できる。なお、本実施例では、第3冷却水路73は、周方向で連続する円環状の形態であるが、周方向の一部が分断された円環状の形態であってよい。例えば、第3冷却水路73は、相ごとに円弧状の形態を有し、全体として円環状の形態を有してもよい。
【0071】
第3冷却水路73は、供給側水路731と、排出側水路732とを含む。供給側水路731及び排出側水路732は、ともに、軸方向に視て、径方向でインバータモジュール90とシャフト部314との間に、かつ、軸まわりに、延在する。
【0072】
供給側水路731は、
図4を参照して上述したように、ウォーターポンプ790から吐出される冷却水を第1冷却水路71へと供給する。排出側水路732は、第2冷却水路72からの冷却水をウォーターポンプ790の吸引側へと戻す。本実施例では、供給側水路731は、
図5に示すように、排出側水路732よりもX2側かつ径方向内側に延在する。すなわち、供給側水路731は、排出側水路732よりも軸方向で制御基板84に近い側で、周方向に延在する。これにより、供給側水路731を流れる冷却水により制御基板84を効果的に冷却できる。なお、供給側水路731が排出側水路732よりも上流側であるがゆえに、供給側水路731を流れる冷却水は、排出側水路732を流れる冷却水よりも低温となる傾向がある。
【0073】
供給側水路731には、
図5に示すように、周方向に沿った複数の位置(本実施例では、6つの位置)で、6つの第1冷却水路71の入口側水路部712が接続される。この際、6つの第1冷却水路71の入口側水路部712は、それぞれの径方向内側端部が供給側水路731に径方向に接続されてよい。また、供給側水路731には、周方向に沿った複数の位置(本実施例では、2つの位置)で、ウォーターポンプ790の吐出側(
図4の流路728参照)に接続される導入管部7310を有してよい。なお、導入管部7310は、
図3Aに示すように、モータカバー252を貫通する態様で、軸方向に延在してもよい。なお、導入管部7310の一部は、モータカバー252に形成されてもよい。
【0074】
排出側水路732には、
図5に示すように、周方向に沿った複数の位置(本実施例では、6つの位置)で、6つの第1冷却水路71の出口側水路部716が接続される。この際、6つの第1冷却水路71の出口側水路部716は、それぞれの径方向内側端部が排出側水路732に径方向に接続されてよい。また、排出側水路732には、周方向に沿った複数の位置(本実施例では、2つの位置)で、ウォーターポンプ790の吸引側(
図4の流路729参照)に接続される排出管部7320を有してよい。なお、排出管部7320は、
図3Bに示すように、モータカバー252を貫通する態様で、軸方向に延在してもよい。なお、排出管部7320の一部は、モータカバー252に形成されてもよい。
【0075】
なお、第3冷却水路73は、一部(例えば導入管部7310や排出管部7320等)を除いて、第1冷却水路71と同様、軸方向で、軸方向でインバータモジュール90と回転電機1との間に延在してもよい。
【0076】
ここで、
図6を参照して、本実施例により冷却水路70を通る冷却水の流れを概説する。なお、
図6には、各部を通る冷却水の流れが、矢印R41からR45で模式的に示されている。
【0077】
ウォーターポンプ790からの冷却水は、矢印R41に示すように、第3冷却水路73の導入管部7310から第3冷却水路73の供給側水路731に導入される。第3冷却水路73の供給側水路731に導入された冷却水は、供給側水路731の円環状部分を流れつつ、周方向の複数の位置(本実施例では、6つの位置)で、第1冷却水路71の入口側水路部712へと分配される。
【0078】
それぞれの入口側水路部712を流れる冷却水は、矢印R42に示すように、上流側のインバータモジュール90に係る放熱部材810内の第2冷却水路72(
図6では図示せず、
図7参照)を通り、放熱部材810から熱を奪う。これにより、上流側のインバータモジュール90(特にパワーモジュール80)が冷却される。
【0079】
このようにして、上流側のインバータモジュール90に係る第2冷却水路72を通った冷却水は、矢印R43に示すように、第1冷却水路71の接続水路部714を介して、下流側のインバータモジュール90に係る第2冷却水路72へと導入される。下流側のインバータモジュール90に係る第2冷却水路72を流れる冷却水は、矢印R44に示すように、下流側のインバータモジュール90に係る放熱部材810内の第2冷却水路72(
図6では図示せず)を通り、放熱部材810から熱を奪う。これにより、下流側のインバータモジュール90(特にパワーモジュール80)が冷却される。
【0080】
このようにして、下流側のインバータモジュール90に係る第2冷却水路72を通った冷却水は、矢印R45に示すように、第1冷却水路71の出口側水路部716を介して、第3冷却水路73の排出側水路732に排出(収集)される。そして、排出管部7320を介してウォーターポンプ790の吸引側へと戻される。
【0081】
このようにして本実施例によれば、水路形成部材750を用いて、ケース2に流路部を実質的に形成することなく、冷却水路70を形成できる。これにより、ケース2に流路部を形成する場合に生じる不都合(例えば加工コストや、軸方向の体格増加)を防止できる。
【0082】
特に、本実施例によれば、上述したように、第3冷却水路73の供給側水路731及び排出側水路732は、円環状の形態であり、径方向でインバータモジュール90とシャフト部314との間のスペースを利用して配置可能である。これにより、車両駆動装置10の体格低減を図ることができる。
【0083】
また、本実施例によれば、第3冷却水路73の供給側水路731は、軸方向で制御基板84の近傍に配置できるので、供給側水路731を流れる冷却水により制御基板84上の電子部品を効果的に冷却できる。また、供給側水路731は、円環状の形態であるので、周方向に沿った各位置で制御基板84を冷却できる。
【0084】
また、本実施例によれば、第3冷却水路73の供給側水路731は、円環状の形態であるので、周方向に沿って配置される複数のインバータモジュール90へと冷却水を効率的に供給できる。すなわち、供給側水路731には、
図5に示すように、周方向に沿った複数の位置(本実施例では、6つの位置)で、6つの第1冷却水路71を接続できる。これにより、各第1冷却水路71には、略同一温度の冷却水を供給できるので、第2冷却水路72による複数のインバータモジュール90に対する冷却能力の均一化を図ることができる。
【0085】
また、本実施例によれば、各第1冷却水路71は、上述したように、軸方向で制御基板84の近傍に配置できるので、各第1冷却水路71を流れる冷却水により制御基板84上の電子部品を効果的に冷却できる。各第1冷却水路71は、第3冷却水路73の供給側水路731とは異なる径方向位置に延在するので、第3冷却水路73と協動して、制御基板84を全体にわたって冷却できる。
【0086】
次に、
図8以降を参照して、本実施例に対する変形例について説明する。以下では、上述した実施例と同様であってよい構成要素については、同一の参照符号を付して、説明を省略する場合がある。
【0087】
図8は、第1変形例による車両駆動装置10Aの要部の断面図であり、冷却水路70Aの一部を通る断面図である。
【0088】
本変形例による車両駆動装置10Aは、上述した実施例による車両駆動装置10に対して、冷却水路70が冷却水路70Aにより置換された点が異なる。
【0089】
冷却水路70Aは、上述した実施例による冷却水路70に対して、第1冷却水路71が、第1冷却水路71Aで置換された点が異なる。
【0090】
第1冷却水路71Aは、上述した実施例による第1冷却水路71に対して、軸方向でコンデンサモジュール82と制御基板84との間に、円環状の流路715Aを更に有する点が異なる。円環状の流路715Aは、上述したウォーターポンプ790の吐出側と吸引側との間に配置されてよい。例えば、円環状の流路715Aは、供給側水路731に接続されるとともに、排出側水路732に接続されてよい。この際、円環状の流路715Aは、第2冷却水路72の下流側に接続されてもよいし、第2冷却水路72とは別に並列に、供給側水路731に接続されてもよい。
【0091】
円環状の流路715Aは、軸方向に視て、コンデンサモジュール82に重なる。円環状の流路715Aは、
図8の断面視で模式的に示すように、同心状に2本配置されてもよい。これにより、円環状の流路715Aを通る冷却水によりコンデンサモジュール82を効果的に冷却できる。なお、円環状の流路715Aは、モールド樹脂部2523を介してコンデンサモジュール82に熱的に接続されてもよいし、コンデンサモジュール82内に延在する流路を更に含んでもよい。
【0092】
円環状の流路715Aは、好ましくは、軸方向で制御基板84の近傍に配置される。これにより、円環状の流路715Aを通る冷却水により制御基板84上の電子部品を効果的に冷却できる。
【0093】
このような変形例によっても、上述した実施例と同様の効果を得ることができる。また、本変形例によれば、円環状の流路715Aを有することで、コンデンサモジュール82に対する冷却能力を効果的に高めることができる。
【0094】
なお、
図8に示す例では、円環状の流路715Aは、コンデンサモジュール82に対してわずかに離れて配置されているが、コンデンサモジュール82に接触して配置されてもよい。また、2本の円環状の流路715Aに代えて、1本の円環状の流路が利用されてもよいし、径方向に蛇行しつつ周方向に延在する流路が利用されてもよい。また、円環状の流路715Aに代えて、2つのインバータモジュール90ごとに設けられる流路であって、軸方向に視てコンデンサモジュール82に重なる流路が利用されてもよい。
【0095】
図9は、第2変形例による車両駆動装置10Bの要部の断面図であり、冷却水路70Bの一部を通る断面図である。
【0096】
冷却水路70Bは、上述した実施例による冷却水路70に対して、第1冷却水路71が、第1冷却水路71Bで置換された点が異なる。
【0097】
第1冷却水路71Bは、上述した実施例による第1冷却水路71に対して、制御基板84Bと回転電機1の間に、円環状の流路715Bを更に有する点が異なる。円環状の流路715Bは、上述したウォーターポンプ790の吐出側と吸引側との間に配置されてよい。例えば、円環状の流路715Bは、供給側水路731に接続されるとともに、排出側水路732に接続されてよい。この際、円環状の流路715Bは、第2冷却水路72の下流側に接続されてもよいし、第2冷却水路72とは別に並列に、供給側水路731に接続されてもよい。
【0098】
円環状の流路715Bは、好ましくは、軸方向に視て、コンデンサモジュール82に重なる。円環状の流路715Bは、
図9の断面視で模式的に示すように、同心状に2本配置されてもよい。これにより、円環状の流路715Bを通る冷却水によりコンデンサモジュール82を効果的に冷却できる。
【0099】
また、円環状の流路715Bは、コイルエンド部322Aの近傍に延在してもよい。これにより、高温化しやすいコイルエンド部322Aを、円環状の流路715Bを通る冷却水により効果的に冷却できる。なお、円環状の流路715Bは、軸方向に視て、コイルエンド部322Aに重なる態様で設けられてもよい。
【0100】
また、円環状の流路715Bは、好ましくは、軸方向で制御基板84Bの近傍に配置される。これにより、円環状の流路715Bを通る冷却水により制御基板84B上の電子部品を効果的に冷却できる。なお、本変形例では、制御基板84Bには、円環状の流路715Bと、供給側水路731及び排出側水路732とを接続するための流路部が通る軸方向の貫通孔845Bが形成されてよい。
【0101】
このような変形例によっても、上述した実施例と同様の効果を得ることができる。また、本変形例によれば、冷却水路70Bを通る冷却水により、コイルエンド部322Aを効果的に冷却できる。なお、この場合、コイルエンド部322Aに対する油冷構造(例えば、径方向内外から油をコイルエンド部322Aに供給する構造)が不要化されてもよい。
【0102】
図10は、第3変形例による車両駆動装置10Cの要部の断面図であり、冷却水路70Cの一部を通る断面図である。
【0103】
冷却水路70Cは、上述した実施例による冷却水路70に対して、第1冷却水路71が、第1冷却水路71Cで置換され、かつ、第3冷却水路73が第3冷却水路73Cで置換された点が異なる。
【0104】
第1冷却水路71Cは、上述した実施例による第1冷却水路71に対して、制御基板84CのX2側に延在する点が異なる。すなわち、第1冷却水路71Cは、軸方向で制御基板84Cと回転電機1との間に配置される。なお、
図10には、第1冷却水路71Cのうちの、接続水路部714Cが図示されている。
【0105】
第3冷却水路73Cは、上述した実施例による第3冷却水路73に対して、供給側水路731が供給側水路731Cで置換された点が異なる。供給側水路731Cは、上述した実施例による供給側水路731に対して、制御基板84CのX2側に延在する点が異なる。すなわち、供給側水路731Cは、第1冷却水路71Cと同様、軸方向で制御基板84Cと回転電機1との間に配置される。
【0106】
なお、本変形例では、制御基板84Cには、ウォーターポンプ790からの流路728と、第3冷却水路73Cの供給側水路731Cとを接続するための導入管部7310Cが通る軸方向の貫通孔8450Cが形成されてよい。また、制御基板84Cには、第1冷却水路71Cの接続水路部714Cと各第2冷却水路72とを接続するための流路部(図示せず)が通る軸方向の貫通孔8452Cが形成されてよい。また、制御基板84Cには、インバータモジュール90を通る第2冷却水路72と、第1冷却水路71の入口側水路部712や出口側水路部716(ともに図示せず)とを接続するための流路部(図示せず)が通る軸方向の貫通孔8454Cが形成されてよい。
【0107】
次に、
図11及び
図12を参照して、上述した実施例による冷却水路70(及び上述した各変形例)における流路分岐部に適用可能な圧力損失低減構造について説明する。
【0108】
図11及び
図12は、冷却水路70における流路分岐部79における圧力損失の低減方法の説明図であり、冷却水路70における流路分岐部79を概略的に示す断面図である。
図11及び
図12のそれぞれにおいて、矢印(3つ)は、冷却水の流れ方向を模式的に示している。
【0109】
本実施例による冷却水路70は、
図11に示すように、流路分岐部79を有する。流路分岐部79は、例えば、第3冷却水路73の供給側水路731と第1冷却水路71の入口側水路部712との接続部分(
図6参照)であってもよい。また、流路分岐部79は、第1冷却水路71の出口側水路部716と第3冷却水路73の排出側水路732との接続部分(
図6参照)であってもよい。あるいは、流路分岐部79は、第2冷却水路72と第1冷却水路71との間の接続部分であってもよい。
【0110】
流路分岐部79では、各管路が90度に近い角度で交差するため(
図11のQ8部参照)、圧力損失が大きくなりやすい。
【0111】
従って、流路分岐部79では、好ましくは、
図12に示すように、分岐前の流れが当たる側の正面部分(
図12のQ9部参照)が、流れ方向に対向する側に凹む形態を有する。この場合、分岐前の流れが、
図12に示す左右方向に傾斜した傾斜面に沿って、左右方向に流れやすくなる。すなわち、かかる流路分岐部79に起因した圧力損失を低減できる。その結果、必要な冷却水の循環を実現するためのウォーターポンプ790の出力の低減を図ることができる。
【0112】
なお、
図12において、更に、流路分岐部79を形成する角部には、角Rが付与されてもよい。また、流路分岐部79における凹む形態の部分(Q9部)にも、角Rが付与されてよい。
【0113】
以上、各実施例について詳述したが、特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された範囲内において、種々の変形及び変更が可能である。また、前述した実施例の構成要素を全部又は複数を組み合わせることも可能である。
【0114】
例えば、上述した実施例では、制御基板84は、軸方向でインバータモジュール90と回転電機1との間に配置されているが、これに限られない。例えば、制御基板84は、軸方向でインバータモジュール90とモータカバー252の間に配置されてもよい。
【0115】
また、上述した実施例では、一の入口側水路部712、一の接続水路部714及び一の出口側水路部716からなる一の第1冷却水路71は、接続水路部714を有することで、周方向で隣り合う2つのインバータモジュール90に対して、1つずつ効率的に設けられるが、これに限られない。例えば、接続水路部714を省略し、一のインバータモジュール90に対して第1冷却水路(入口側水路部712及び出口側水路部716)が1つずつ設けられてもよい。また、第1冷却水路は、2つ以上の接続水路部714を有することで、周方向で隣り合う3つ以上のインバータモジュール90に対して、1つずつ設けられてもよい。
【符号の説明】
【0116】
10、10A、10B、10C・・・車両駆動装置、1・・・回転電機、314・・・シャフト部(回転軸)、750・・・水路形成部材、71、71A、71B、71C・・・第1冷却水路、712・・・入口側水路部、714、714C・・・接続水路部、716・・・出口側水路部、72・・・第2冷却水路、73、73C・・・第3冷却水路、731、731C・・・供給側水路、732・・・排出側水路、800・・・サブモジュール(パワースイッチング素子)、82・・・コンデンサモジュール(平滑コンデンサ)、90・・・インバータモジュール(インバータ装置、モジュール)、810・・・放熱部材、84、84B、84C・・・制御基板、790・・・ウォーターポンプ