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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024104870
(43)【公開日】2024-08-06
(54)【発明の名称】車両駆動装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20240730BHJP
【FI】
H02M7/48 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023009273
(22)【出願日】2023-01-25
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 良太
(72)【発明者】
【氏名】堀田 豊
【テーマコード(参考)】
5H770
【Fターム(参考)】
5H770BA02
5H770QA01
5H770QA06
5H770QA08
5H770QA22
5H770QA31
(57)【要約】
【課題】比較的距離が近い複数の貫通孔を有する場合でも、インバータ装置と制御基板とを電気的に接続する際の組み付け性を高める。
【解決手段】回転電機と、インバータ装置と、制御基板と、端子ガイド部材と、を備え、インバータ装置の複数の接続端子のうちの、第1接続端子は、第2接続端子よりも軸方向の長さが長く、制御基板は、第1接続端子が貫通する第1貫通孔と、第2接続端子が貫通する第2貫通孔とを含み、端子ガイド部材は、軸方向に視て第1貫通孔に重なりかつ第1接続端子が通る第1ガイド孔と、軸方向に視て第2貫通孔に重なりかつ第2接続端子が通る第2ガイド孔とを有し、第1ガイド孔は、第1孔寸法が軸方向でインバータ装置に近いほど第1孔寸法が大きくなるテーパ状の形態であり、第2ガイド孔は、第2孔寸法が、軸方向でインバータ装置に近い側の端部位置において、同端部位置での第1孔寸法よりも小さい、車両駆動装置が開示される。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸上に回転軸を有する回転電機と、
軸まわりに円環状に延在し、前記回転電機に複数相の交流電力を供給するインバータ装置であって、軸方向に延在する複数の接続端子を有するインバータ装置と、
軸まわりに、かつ、軸方向で前記インバータ装置と前記回転電機との間に、配置され、前記インバータ装置を制御する制御基板であって、前記複数の接続端子が通る複数の貫通孔を有し、前記複数の貫通孔を通る前記複数の接続端子に接合される制御基板と、
前記制御基板における軸方向で前記インバータ装置に対向する側に配置され、前記複数の接続端子のそれぞれを、前記複数の貫通孔のうちの対応する貫通孔へとガイド可能な複数のガイド孔を有する端子ガイド部材と、を備え、
前記複数の接続端子は、軸方向に交差する方向で互いに隣り合う第1接続端子及び第2接続端子を含み、
前記第1接続端子は、前記第2接続端子よりも軸方向の長さが長く、
前記複数の貫通孔は、前記第1接続端子が貫通する第1貫通孔と、前記第2接続端子が貫通する第2貫通孔とを含み、
前記複数のガイド孔は、軸方向に視て前記第1貫通孔に重なりかつ前記第1接続端子が通る第1ガイド孔と、軸方向に視て前記第2貫通孔に重なりかつ前記第2接続端子が通る第2ガイド孔とを含み、
前記第1ガイド孔は、軸方向に交差する方向の第1孔寸法が軸方向で前記インバータ装置に近いほど前記第1孔寸法が大きくなるテーパ状の形態であり、
前記第2ガイド孔は、軸方向に交差する方向の第2孔寸法が、軸方向で前記インバータ装置に近い側の端部位置において、同端部位置での前記第1孔寸法よりも小さい、車両駆動装置。
【請求項2】
前記第1接続端子及び前記第2接続端子は、軸方向に交差する方向で、一定距離だけ離間し、
前記一定距離は、軸方向で前記インバータ装置に近い側の端部位置での前記第1孔寸法と、同端部位置での前記第2孔寸法との合計の半分に対応する、請求項1に記載の車両駆動装置。
【請求項3】
前記第1接続端子及び前記第2接続端子を、前記一定距離だけ離して保持する保持部材を更に備える、請求項2に記載の車両駆動装置。
【請求項4】
前記第2ガイド孔は、軸方向の各位置で前記第2孔寸法が略一定であり、
前記第1孔寸法は、軸方向で前記インバータ装置から遠い側の端部位置において、前記第2孔寸法と略同じである、請求項1に記載の車両駆動装置。
【請求項5】
前記インバータ装置は、複数のモジュールにより形成され、
前記複数のモジュールは、前記複数相に係る相ごとに2つ以上ずつ纏まる態様で、軸まわりに配置され、
前記第1接続端子及び前記第2接続端子は、前記複数相に係る相ごとの2つ以上の前記モジュールのうちの、一の特定モジュールに設けられ、前記特定モジュールに含まれる半導体スイッチング素子の駆動用の端子であり、
前記複数の接続端子は、前記特定モジュールだけに設けられる状態監視用の第3接続端子を更に含む、請求項1から4のうちのいずれか1項に記載の車両駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
制御基板に形成された複数の貫通孔に、インバータ装置のパワーモジュールの複数の制御端子の端部を通すことで、制御基板とインバータ装置とを電気的に接続する技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-126137号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のような従来技術では、制御基板に形成される複数の貫通孔に、対応する各制御端子の端部を通す際の組み付け性(インバータ装置と制御基板とを電気的に接続する際の組み付け性)を高めることが難しい。この組み付け性は、比較的距離が近い(中心間のピッチが小さい)複数の貫通孔を有する場合に悪化しやすい。
【0005】
そこで、1つの側面では、本開示は、比較的距離が近い複数の貫通孔を有する場合でも、インバータ装置と制御基板とを電気的に接続する際の組み付け性を高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
1つの側面では、軸上に回転軸を有する回転電機と、
軸まわりに円環状に延在し、前記回転電機に複数相の交流電力を供給するインバータ装置であって、軸方向に延在する複数の接続端子を有するインバータ装置と、
軸まわりに、かつ、軸方向で前記インバータ装置と前記回転電機との間に、配置され、前記インバータ装置を制御する制御基板であって、前記複数の接続端子が通る複数の貫通孔を有し、前記複数の貫通孔を通る前記複数の接続端子に接合される制御基板と、
前記制御基板における軸方向で前記インバータ装置に対向する側に配置され、前記複数の接続端子のそれぞれを、前記複数の貫通孔のうちの対応する貫通孔へとガイド可能な複数のガイド孔を有する端子ガイド部材と、を備え、
前記複数の接続端子は、軸方向に交差する方向で互いに隣り合う第1接続端子及び第2接続端子を含み、
前記第1接続端子は、前記第2接続端子よりも軸方向の長さが長く、
前記複数の貫通孔は、前記第1接続端子が貫通する第1貫通孔と、前記第2接続端子が貫通する第2貫通孔とを含み、
前記複数のガイド孔は、軸方向に視て前記第1貫通孔に重なりかつ前記第1接続端子が通る第1ガイド孔と、軸方向に視て前記第2貫通孔に重なりかつ前記第2接続端子が通る第2ガイド孔とを含み、
前記第1ガイド孔は、軸方向に交差する方向の第1孔寸法が軸方向で前記インバータ装置に近いほど前記第1孔寸法が大きくなるテーパ状の形態であり、
前記第2ガイド孔は、軸方向に交差する方向の第2孔寸法が、軸方向で前記インバータ装置に近い側の端部位置において、同端部位置での前記第1孔寸法よりも小さい、車両駆動装置が提供される。
【発明の効果】
【0007】
1つの側面では、本開示によれば、インバータ装置と制御基板とを電気的に接続する際の組み付け性を高めることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】回転電機を含む電気回路の一例の概略図である。
図2】回転電機を含む車両用駆動システムのスケルトン図である。
図3】本実施例による車両駆動装置の要部を概略的に示す断面図である。
図4】本実施例によるモータ駆動装置をX1側から視た平面図である。
図5】モータ駆動装置等が組み付けられたサブアセンブリ状態のカバー部材をX2側から視た平面図である。
図6】制御基板の単品状態を示す斜視図である。
図6A図6のQ6部の拡大図である。
図7】制御基板に接続されるインバータモジュール側の端子構造の一例を示す斜視図である。
図8】制御基板、端子ガイド部材、第1接続端子、及び第2接続端子の関係(組付け状態)を示す断面図である。
図9】入口側のガイド機能の説明図であり、制御基板とインバータモジュールとを電気的に接続する際の組み付け性の説明図である。
図10】比較例の場合の制御基板とインバータモジュールとを電気的に接続する際の組み付け性の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照しながら各実施例について詳細に説明する。なお、図面の寸法比率はあくまでも一例であり、これに限定されるものではなく、また、図面内の形状等は、説明の都合上、部分的に誇張している場合がある。また、図面では、見易さのために、複数存在する同一属性の部位には、一部のみしか参照符号が付されていない場合がある。
【0010】
[車両駆動装置の電気系]
図1は、本実施例の回転電機1を含む電気回路200の一例の概略図である。図1には、制御装置500についても併せて示される。図1において、制御装置500に対応付けられた点線矢印は、情報(信号やデータ)のやり取りを表す。
【0011】
回転電機1は、制御装置500によるインバータINVの制御を介して駆動される。図1に示す電気回路200では、回転電機1は、電源VaにインバータINVを介して電気的に接続される。なお、インバータINVは、例えば、相ごとに、電源Vaの高電位側Pと低電位側Nとにそれぞれパワースイッチング素子(例えばMOSFET:Metal-Oxide-Semiconductor Field Effect TransistorやIGBT:Insulated Gate Bipolar Transistor等)を備え、高電位側Pのパワースイッチング素子と低電位側Nのパワースイッチング素子とが上下アームを形成する。なお、インバータINVは、相ごとに、複数組の上下アームを備えてもよい。各パワースイッチング素子は、制御装置500による制御下で、所望の回転トルクが発生するようにPWM(Pulse Width Modulation)駆動されてよい。なお、電源Vaは、例えば比較的定格電圧の高いバッテリであり、例えばリチウムイオンバッテリや燃料電池等であってよい。
【0012】
本実施例では、図1に示す電気回路200のように、電源Vaの高電位側Pと低電位側Nの間には、インバータINVに対して並列に、平滑コンデンサCが電気的に接続される。なお、平滑コンデンサCは、複数組、互いに並列に、電源Vaの高電位側Pと低電位側Nの間に電気的に接続されてもよい。また、電源VaとインバータINVとの間にDC/DCコンバータが設けられてもよい。
【0013】
[駆動システム全体]
図2は、回転電機1を含む車両用駆動システム100のスケルトン図である。図2には、X方向と、X方向に沿ったX1側とX2側が定義されている。X方向は、第1軸A1の方向(以下、「軸方向」とも称する)に平行である。
【0014】
図2に示す例では、車両用駆動システム100は、車輪Wの駆動源となる回転電機1と、回転電機1と車輪Wとを結ぶ動力伝達経路に設けられた駆動伝達機構7と、を備える。駆動伝達機構7は、入力部材3と、カウンタギヤ機構4と、差動歯車機構5と、左右の出力部材61、62と、を備える。
【0015】
入力部材3は、入力軸31と、入力ギヤ32とを有する。入力軸31は、第1軸A1まわりに回転する回転部材である。入力ギヤ32は、回転電機1からの回転トルク(駆動力)をカウンタギヤ機構4に伝達するギヤである。入力ギヤ32は、入力部材3の入力軸31と一体的に回転するように、入力部材3の入力軸31に連結される。
【0016】
カウンタギヤ機構4は、動力伝達経路において、入力部材3と差動歯車機構5との間に配置される。カウンタギヤ機構4は、カウンタ軸41と、第1カウンタギヤ42と、第2カウンタギヤ43とを有する。
【0017】
カウンタ軸41は、第2軸A2まわりに回転する回転部材である。第2軸A2は、第1軸A1に平行に延在する。第1カウンタギヤ42は、カウンタギヤ機構4の入力要素である。第1カウンタギヤ42は、入力部材3の入力ギヤ32と噛み合う。第1カウンタギヤ42は、カウンタ軸41と一体的に回転するように、カウンタ軸41に連結される。
【0018】
第2カウンタギヤ43は、カウンタギヤ機構4の出力要素である。本実施例では、一例として、第2カウンタギヤ43は、第1カウンタギヤ42よりも小径に形成される。第2カウンタギヤ43は、カウンタ軸41と一体的に回転するように、カウンタ軸41に連結される。
【0019】
差動歯車機構5は、その回転軸心としての第3軸A3上に配置される。第3軸A3は、第1軸A1に平行に延在する。差動歯車機構5は、回転電機1の側から伝達される駆動力を、左右の出力部材61、62に分配する。差動歯車機構5は、差動入力ギヤ51を備え、差動入力ギヤ51は、カウンタギヤ機構4の第2カウンタギヤ43と噛み合う。また、差動歯車機構5は、差動ケース52を備え、差動ケース52内には、ピニオンシャフトや、ピニオンギヤ、左右のサイドギヤ等が収容される。左右のサイドギヤは、それぞれ、左右の出力部材61、62と一体的に回転するように連結される。
【0020】
左右の出力部材61、62のそれぞれは、左右の車輪Wに駆動連結される。左右の出力部材61、62のそれぞれは、差動歯車機構5によって分配された駆動力を車輪Wに伝達する。なお、左右の出力部材61、62は、2つ以上の部材により構成されてもよい。
【0021】
このようにして回転電機1は、駆動伝達機構7を介して車輪Wを駆動する。ただし、他の実施例では、回転電機1は、ホイールインモータとして、車輪内に配置されてもよい。この場合、車両用駆動システム100は、駆動伝達機構7を含まない構成であってよい。また、他の実施例では、駆動伝達機構7の一部又は全部を共用化して複数の回転電機1が設けられてもよい。
【0022】
[車両駆動装置の詳細]
車両駆動装置10は、上述した回転電機1と、ケース2と、モータ駆動装置8とを含む。
【0023】
図3は、本実施例の車両駆動装置10の要部を概略的に示す断面図である。図3では、回転電機1の回転軸である第1軸A1を通る平面で切断された断面図で、回転電機1の軸方向一端側(X1側)の一部が示されている。図4は、本実施例によるモータ駆動装置8をX1側から視た平面図である。なお、図4では、モータ駆動装置8のうちの制御基板84の図示は省略されている。
【0024】
以下の説明において、特に言及しない限り、軸方向とは、回転電機1の回転軸である第1軸A1が延在する方向を指し、径方向とは、第1軸A1を中心とした径方向を指す。従って、径方向外側とは、第1軸A1から離れる側を指し、径方向内側とは、第1軸A1に向かう側を指す。また、周方向とは、第1軸A1まわりの回転方向に対応する。また、図3には、図2と同様、X方向と、X方向に沿ったX1側とX2側が定義されている。以下の説明において、X1側とX2側の各用語は、相対的な位置関係を表すために用いられる場合がある。
【0025】
車両駆動装置10は、車両用駆動システム100の一部として車両に搭載され、車両を前進又は後退させる駆動力を生成する。なお、車両は、任意の形態であり、例えば4輪の自動車であってもよいし、バス、トラック、二輪車や建設機械等であってもよい。なお、車両駆動装置10は、他の駆動源(例えば内燃機関)とともに車両に搭載されてもよい。
【0026】
回転電機1は、ロータ310及びステータ320を有する。回転電機1は、インナロータタイプであり、ステータ320がロータ310の径方向外側を囲繞するように設けられる。すなわち、ロータ310は、ステータ320の径方向内側に配置される。
【0027】
ロータ310は、ロータコア312と、シャフト部314とを備える。
【0028】
ロータコア312は、例えば円環状の磁性体の積層鋼板からなってよい。ロータコア312の内部には、永久磁石325が埋め込まれてよい。あるいは、永久磁石325は、ロータコア312の外周面に取り付けられてもよい。なお、永久磁石325の配列等は任意である。ロータコア312は、シャフト部314の外周面に固定され、シャフト部314と一体となって回転する。
【0029】
シャフト部314は、回転電機1の回転軸である第1軸A1を画成する。シャフト部314は、ロータコア312が固定される部分よりもX1側において、ケース2のカバー部材252(後述)にベアリング240を介して回転可能に支持される。なお、シャフト部314は、回転電機1の軸方向他端側(X2側)において、ベアリング240に対応するベアリング(図示せず)を介してケース2に回転可能に支持される。このようにして、シャフト部314が軸方向両端で回転可能にケース2に支持されてよい。
【0030】
シャフト部314は、例えば中空管の形態であり、中空内部314Aを有する。中空内部314Aは、シャフト部314の軸方向の全長にわたり延在してよい。中空内部314Aは、軸心油路として機能することができる。この場合、シャフト部314は、ステータ320のコイルエンド部322A等に油を吐出する油孔が形成されてよい。
【0031】
ステータ320は、ステータコア321と、ステータコイル322とを備える。
【0032】
ステータコア321は、例えば円環状の磁性体の積層鋼板からなってよい。ステータコア321の内周部には、径方向内側に突出するティース(図示せず)が放射状に形成される。
【0033】
ステータコイル322は、例えば断面平角状又は断面円形状の導体に絶縁被膜が付与された形態であってよい。ステータコイル322は、ステータコア321のティース(図示せず)まわりに巻装される。なお、ステータコイル322は、例えば、1つ以上の並列関係で、Y結線で電気的に接続されてもよいし、Δ結線で電気的に接続されてもよい。
【0034】
ステータコイル322は、ステータコア321のスロットから軸方向外側に突出する部分であるコイルエンド部322Aを有する。
【0035】
ケース2は、例えばアルミ等により形成されてよい。ケース2は、鋳造等により形成できる。ケース2は、モータケース250と、カバー部材252とを含む。ケース2は、回転電機1及びモータ駆動装置8を収容する。また、図2に示した車両用駆動システム100の場合、ケース2は、図2に模式的に示すように、駆動伝達機構7を更に収容してもよい。
【0036】
モータケース250は、回転電機1を収容するモータ収容室SP1を形成する。なお、モータ収容室SP1は、回転電機1(及び/又は駆動伝達機構7)を冷却及び/又は潤滑するための油を含む油密空間であってよい。モータケース250は、回転電機1の径方向外側を囲繞する周壁部を有する形態である。モータケース250は、複数の部材を結合して実現されてもよい。また、モータケース250は、軸方向他端側(X2側)で、駆動伝達機構7を収容する他のケース部材に一体化されてよい。
【0037】
カバー部材252は、モータケース250の軸方向一端側(X1側)に結合される。カバー部材252は、モータ収容室SP1における軸方向一端側(X1側)を覆うカバーの形態である。この場合、カバー部材252は、モータケース250の軸方向一端側(X1側)の開口部を完全に又は略完全に閉塞する態様で覆ってもよい。
【0038】
カバー部材252は、モータ駆動装置8を収容するインバータ収容室SP2を形成する。なお、インバータ収容室SP2の一部は、モータケース250により形成されてもよいし、逆に、モータ収容室SP1の一部は、カバー部材252により形成されてもよい。
【0039】
カバー部材252は、モータ駆動装置8を支持する。例えばモータ駆動装置8は、後述するモジュールの形態で、カバー部材252に取り付けられてもよい。これにより、カバー部材252にモータ駆動装置8の一部又は全体を組み付けてから、カバー部材252とモータケース250とを結合でき、モータ駆動装置8の組み付け性が向上する。
【0040】
カバー部材252には、ロータ310を回転可能に支持するベアリング240が設けられる。すなわち、カバー部材252は、ベアリング240を支持するベアリング支持部2524を有する。なお、ベアリング支持部2524とは、カバー部材252のうちの、ベアリング240が設けられる軸方向範囲の部分全体を指す。
【0041】
ベアリング240は、図3に示すように、シャフト部314のX1側の端部における径方向外側に設けられる。具体的には、ベアリング240は、アウタレースの径方向外側がカバー部材252に支持され、インナレースの径方向内側がシャフト部314の外周面に支持される。なお、変形例では、逆に、ベアリング240は、インナレースの径方向内側がカバー部材252に支持され、アウタレースの径方向外側がシャフト部314の内周面に支持されてもよい。
【0042】
本実施例では、カバー部材252は、図3に示すように、第1軸A1を中心とした円環状の底部2521と、底部2521の外周縁から軸方向他端側(X2側)へと突出する周壁部2522とを含み、底部2521と周壁部2522とが、インバータ収容室SP2を画成する。底部2521における軸方向他端側(X2側)の中央部(第1軸A1を中心とした部分)には、軸方向他端側(X2側)に突出する円筒状部位25211が形成され、円筒状部位25211にベアリング支持部2524が設定される。なお、円筒状部位25211は、第1軸A1を中心として同芯に形成される。
【0043】
インバータ収容室SP2は、空間であってもよいが、好ましくは、比較的高い伝熱性を有するフィラーを含む樹脂により封止される。この場合、樹脂モールド部は、カバー部材252に後述するモータ駆動装置8を固定する機能も果たしてよい。
【0044】
カバー部材252は、好ましくは、比較的高い伝熱性を有する材料(例えばアルミ)により形成され、内部に冷却水路2528を有する。冷却水路2528には、水が冷却水として流れる。なお、水は、例えばLLC(Long Life Coolant)を含む水であってよい。この場合、冷却水路2528を流れる冷却水は、車両に搭載されるラジエーター(図示せず)で放熱されることで、比較的低温に維持できる。カバー部材252の冷却水路2528に冷却水が流れると、カバー部材252の熱が冷却水に奪われることで、カバー部材252が冷却される。これにより、カバー部材252は、軸方向に隣接して配置されるモータ駆動装置8を冷却する機能を有することができる。すなわち、モータ駆動装置8からの熱は、カバー部材252を介して冷却水により奪われ、モータ駆動装置8の冷却が促進される。なお、変形例では、冷却水に代えて、他の冷媒(例えば油)が利用されてもよいし、空冷式であってもよい。
【0045】
冷却水路2528は、軸方向に視て任意の形態であってよく、例えば、円環状の形態であってもよいし、螺旋状の形態であってもよいし、径方向外側と内側に蛇行しながら周方向に沿って延在する形態であってもよい。冷却水路2528には、フィン等が形成されてもよい。なお、カバー部材252を中子等を用いて製造する場合は、冷却水路2528の形状等の自由度を高めることができる。
【0046】
モータ駆動装置8は、パワーモジュール80と、コンデンサモジュール82と、制御基板84とを含む。
【0047】
本実施例では、パワーモジュール80及びコンデンサモジュール82は、図4に示すように、複数の組(図4に示す例では、12組)をなして、周方向に沿って配置される。パワーモジュール80及びコンデンサモジュール82の組の数は、回転電機1の仕様に応じて変化させる。基本的には、パワーモジュール80及びコンデンサモジュール82の組の数が増加すると、回転電機1の出力が大きくなる。従って、回転電機1の設計の際に、パワーモジュール80及びコンデンサモジュール82の組の数が異なる複数のバリエーションを設定できる。
【0048】
パワーモジュール80及びコンデンサモジュール82は、好ましくは、複数の組のそれぞれにおいて、一体化された組立体の形態である。すなわち、各組のパワーモジュール80及びコンデンサモジュール82は、一体化されたインバータモジュール89を形成する。
【0049】
インバータモジュール89のそれぞれにおいて、パワーモジュール80は基本的に同じ構成を有し、コンデンサモジュール82は同じ構成(電気的特性や形状等)を有する。これにより、インバータモジュール89ごとの交換や整備も可能であり、汎用性を高めることができる。ただし、本実施例では、各相のうちの1つのパワーモジュール80は、後述する第3接続端子8003(図7参照)を有するものとする。本実施例では、インバータモジュール89のそれぞれにおいて、パワーモジュール80は、サブモジュール800と、放熱部材810とを含む。
【0050】
本実施例では、12個のインバータモジュール89のうちのU相用の4つのインバータモジュール89は、周方向に隣接して一塊で配置され、V相用の4つのインバータモジュール89は、周方向に隣接して一塊で配置され、W相用の4つのインバータモジュール89は、周方向に隣接して一塊で配置されてもよい。ただし、変形例では、異なる態様で配置されてもよく、例えば、U相用のインバータモジュール89と、V相用のインバータモジュール89と、W相用のインバータモジュール89とが、周方向に沿って1つずつ又は2つずつ周期的に配置されてもよい。
【0051】
サブモジュール800のそれぞれは、インバータINV(図1参照)における一の相に係る上下アームを形成する。図4に示す例では、サブモジュール800のそれぞれは高圧系接続端子を形成するバスバー883、884を介して、中継バスバー889に接続される。なお、図4に示す例では、上下アームのパワー半導体チップ801、802を放熱部材810の異なる側面(周方向の側面)に配置することで、径方向内側においてバスバー883、884及び中継バスバー889を介して上下アームのパワー半導体チップ801、802を効率的に互いに対して電気的に接続できる。なお、中継バスバー889は、相ごとに、回転電機1とパワーモジュール80(上下アームの中点)とを電気的に接続するためのバスバーである。
【0052】
放熱部材810は、比較的高い伝熱性を有する材料(例えばアルミ)により形成される。本実施例では、放熱部材810は、中実のブロックの形態である。これにより、放熱部材810の熱容量を効率的に高めることができる。なお、放熱部材810には、冷却水路2528と連通する冷却水路(図示せず)が形成されてもよい。
【0053】
制御基板84は、制御装置500(図1参照)の一部又は全体を形成する。制御基板84は、例えば多層プリント基板により形成されてもよい。制御基板84は、基板表面に対する法線方向が軸方向に沿う向きに配置される。これにより、制御基板84を軸方向の僅かな隙間を利用して配置できる。例えば、本実施例では、制御基板84は、図3に示すように、軸方向で回転電機1とインバータモジュール89との間に配置されてよい。より詳細には、制御基板84は、軸方向で回転電機1のコイルエンド部322Aとパワーモジュール80及びコンデンサモジュール82との間に配置されてよい。これにより、デッドスペースになりやすいスペースを利用した効率的な配置を実現できる。また、制御基板84は、軸方向に視て、コイルエンド部322Aにオーバラップする径方向位置まで径方向外側に延在できるので、制御基板84の面積(回路部形成範囲)の最大化を図ることができる。
【0054】
制御基板84は、好ましくは、ロータ310のシャフト部314(図3も参照)が通る中央孔84aを有する円環状の形態である。この場合、周方向に沿って配置された複数のパワーモジュール80のいずれに対してもその近傍に制御基板84を配置できる。これにより、パワーモジュール80のサブモジュール800を形成する各パワー半導体チップ801、802(例えばパワースイッチング素子のゲート端子)と制御基板84の駆動回路(図示せず)との間の電気的な接続(図5以降を参照して後述)が容易となる。
【0055】
このようにして、本実施例によれば、カバー部材252と回転電機1との間にモータ駆動装置8が配置されるので、モータ駆動装置がモータケースの外部に搭載される比較例(図示せず)に比べて、車両駆動装置10全体としての体格を低減できる。
【0056】
次に、図5以降を参照して、上述した実施例における更なる特徴的な構成について説明する。モータ駆動装置8等が組み付けられたサブアセンブリ状態のカバー部材252をX2側から視た平面図である。なお、図5では、モータ駆動装置8のインバータモジュール89は制御基板84よりもX1側に位置するため、制御基板84により隠れている。図6は、制御基板84の単品状態を示す斜視図である。図6Aは、図6のQ6部の拡大図である。図7は、制御基板84に接続されるインバータモジュール89側の端子構造の一例を示す斜視図である。図8は、制御基板84、端子ガイド部材70、第1接続端子8001、及び第2接続端子8002の関係(組付け状態)を示す断面図である。なお、図8には、図7では図示を省略している保持部材8010が併せて図示されている。
【0057】
制御基板84は、図5に示すように、第1軸A1まわりに延在する円環状の形態である。制御基板84は、軸方向に垂直な面内に延在する。制御基板84は、上述したように軸方向に視て、モータ駆動装置8のコンデンサモジュール82とオーバラップするほど比較的大きい外径を有してよい。制御基板84は、カバー部材252に締結具BT1により固定されてよい。
【0058】
制御基板84には、低圧系の回路と高圧系の回路が形成されてもよい。なお、低圧系とは、電源Vaに係る電圧よりも有意に低い電圧(例えば電源Vaとは別の図示しない鉛バッテリからの電圧であって、15V以下を扱う系)を指す。また、以下では、説明上、駆動用の電圧は、低圧系とする。高圧系とは、電源Vaに係る高電圧を扱う系をさす。また、制御基板84には、高圧系の電子部品として、パワー半導体チップ801、802を駆動するための駆動回路等が実装されてもよい。また、制御基板84には、低圧系の電子部品として、制御装置500を実現するマイコン(マイクロコンピュータの略)や電源回路(図示せず)等が設けられてもよい。なお、制御基板84には、モータ収容室SP1内の油を循環させる電動オイルポンプを駆動制御するための電子部品が実装されてもよい。
【0059】
本実施例では、制御基板84には、低圧系の回路に電気的に接続される複数の接続端子用の貫通孔845が複数形成される。貫通孔845は、スルーホールないしビアの形態であってよい。
【0060】
複数の接続端子用の貫通孔845は、サブモジュール800(図4参照)からの接続端子8001、8002(図7参照)用の貫通孔8451、8452を含む。貫通孔8451には、接続端子8001の先端部(X2側の端部)が挿通され、半田等により接合される。貫通孔8452には、接続端子8002の先端部(X2側の端部)が挿通され、半田等により接合される。サブモジュール800からの接続端子8001、8002は、パワー半導体チップ801、802の駆動用の端部(端子)を形成してよい。本実施例では、サブモジュール800からの接続端子8001、8002は、パワー半導体チップ801、802に対して、対で設けられる。以下では、2本のそれぞれを区別する場合、「第1接続端子8001」及び「第2接続端子8002」という用語を用いる。なお、第1接続端子8001及び第2接続端子8002は、互いに端子ピッチL1(図8参照)だけ離れて延在してよい。端子ピッチL1は、信号線同士の距離(ピッチ)を短くすることによるインダクタンスの低減を図るために、可能な限りに短く設定されてよい。端子ピッチL1は、軸方向に直角に交差する方向であって、第1接続端子8001及び第2接続端子8002を通る線分方向(以下、「基準方向」)に沿った距離(第1接続端子8001及び第2接続端子8002の各中心線間の距離)である。なお、基準方向は、対の第1接続端子8001及び第2接続端子8002の隣り合う方向に対応し、対の第1接続端子8001及び第2接続端子8002ごとに異なりうる。
【0061】
なお、端子ピッチL1は、接続端子8001、8002の軸方向の延在範囲の全体にわたって一定であってもよいし、接続端子8001、8002の軸方向の延在範囲の一部にわたって一定であってもよい。
【0062】
対の接続端子8001、8002は、好ましくは、図8に示すように、端子ピッチL1だけ離して保持する保持部材8010により保持される。これにより、対の接続端子8001、8002が、比較的長くなる場合も、対の接続端子8001、8002間の中心間距離を、端子ピッチL1の正規値(ノミナル値)に精度良く維持できる。保持部材8010は、好ましくは、対の接続端子8001、8002の自由端に近い側に配置される。この場合、対の接続端子8001、8002の自由端側においても、対の接続端子8001、8002間の中心間距離を、端子ピッチL1の正規値に精度良く維持でき、後述する制御基板84に対する組み付け性が向上する。なお、これに対応して、制御基板84における貫通孔8451、8452も、互いに対して、端子ピッチL1に対応した距離だけ離間して形成される。この場合、一の対の第1接続端子8001及び第2接続端子8002に対して設けられる貫通孔8451、8452は、当該一の対の第1接続端子8001及び第2接続端子8002に係る基準方向に沿って、端子ピッチL1の正規値に対応した距離だけ、離間する。すなわち、貫通孔8451、8452の中心間距離(各中心線CT1、CT2間の距離)は、対応する基準方向に沿って、端子ピッチL1の正規値に対応した距離に一致する。
【0063】
また、本実施例では、第1接続端子8001は、図7に示すように、第2接続端子8002よりも軸方向の長さが長い。第1接続端子8001と第2接続端子8002の間の軸方向の長さの相違は、例えば、後述する端子ガイド部材70の軸方向の寸法(又は後述する第2ガイド孔72のテーパ状部分の軸方向寸法)程度であってよい。この長さの相違に係る技術的意義は後述する。
【0064】
また、複数の接続端子用の貫通孔845は、更に、サブモジュール800(図4参照)からの接続端子8003(図7参照)(以下、区別のため、「第3接続端子8003」とも称する)用の貫通孔8453を含む。貫通孔8453には、第3接続端子8003の先端部(X2側の端部)が挿通され、半田等により接合される。第3接続端子8003は、相ごとの状態監視用の端子であり、短絡検知用の端子や、サーミスタのような温度センサから引き出される端子を形成してもよい。本実施例では、第3接続端子8003は、各相のサブモジュール800に対して、相ごとに1つずつ設けられてもよい。例えば、U相のサブモジュール800が3つある場合、第3接続端子8003は、3つのサブモジュール800のうちの1つに対してだけ設けられてもよい。以下、このようにして、3つのサブモジュール800のうちの第3接続端子8003が設けられるサブモジュール800を、「特定のサブモジュール800」とも称する。
【0065】
また、複数の接続端子用の貫通孔845は、更に、1つ以上の貫通孔8454(以下、区別のため、「他の貫通孔8454」とも称する)を含んでよい。他の貫通孔8454には、任意の低圧系の電子部品から配線に係る接続端子用であってよい。他の貫通孔8454に係る低圧系の電子部品は、制御基板84上に実装されてもよいし、軸方向で制御基板84とカバー部材252の間に配置されてもよい。本実施例では、他の貫通孔8454に係る低圧系の電子部品は、回転電機1の各相の電流を検出する電流センサ(図示せず)を含む。電流センサ(図示せず)は、例えば、各中継バスバー889を流れる電流を検出する態様で、中継バスバー889に対応付けて設けられてよい。
【0066】
また、複数の接続端子用の貫通孔845は、更に、外部コネクタ(図示せず)との接続用の貫通孔8455を含んでよい。
【0067】
本実施例では、制御基板84における軸方向でインバータモジュール89に対向する側(すなわちX1側)に端子ガイド部材70が設けられる。図7及び図8には、端子ガイド部材70が示されている。
【0068】
端子ガイド部材70は、図7に示すように、2種類設定されてもよい。この場合、区別する場合、「第1ガイド部材70A」及び「第2ガイド部材70B」の用語を用いる。第1ガイド部材70Aは、上述した対の第1接続端子8001及び第2接続端子8002を貫通孔8451及び貫通孔8452へとそれぞれガイドするように構成される。第2ガイド部材70Bは、上述した対の第1接続端子8001及び第2接続端子8002に加えて、第3接続端子8003を貫通孔8453へとガイドするように構成される。以下では、主に、第1ガイド部材70Aについて端子ガイド部材70として説明するが、第2ガイド部材70Bについても同様であってよい。
【0069】
端子ガイド部材70は、制御基板84のX1側表面に取り付く突起部74を有する。突起部74は、図7及び図8に示すように、周方向両側の端部付近に設けられてもよい。突起部74は、制御基板84に設けられる嵌合穴847に嵌合(圧入)されてもよい。なお、端子ガイド部材70は、制御基板84とインバータモジュール89との間の電気的な接続のための組み付け作業前に、嵌合穴847と突起部74との嵌合を介して、制御基板84に取り付けられる。例えば、端子ガイド部材70は、制御基板84の組み付けの際には、制御基板84に取り付けられた状態(サブアセンブリ状態)とされてよい。
【0070】
端子ガイド部材70は、第1接続端子8001が通る第1ガイド孔71と、第2接続端子8002が通る第2ガイド孔72とを含む。なお、第2ガイド部材70Bの場合、第1ガイド孔71及び第2ガイド孔72に加えて、第3接続端子8003が通る第3ガイド孔73を有する。
【0071】
第1ガイド孔71及び第2ガイド孔72は、ともに、断面(X方向に垂直な平面で切断した際の断面)が円形であってよい。第1ガイド孔71は、制御基板84における貫通孔8451に軸方向に対向する。すなわち、第1ガイド孔71は、軸方向に視て、制御基板84における貫通孔8451に重なる。同様に、第2ガイド孔72は、軸方向に視て、制御基板84における貫通孔8452に重なる。この場合、第1ガイド孔71、第2ガイド孔72の各中心線は、貫通孔8451、8452の各中心線CT1、CT2と一致する。また、同様に、第2ガイド部材70Bの場合、更に、第3ガイド孔73は、軸方向に視て、制御基板84における貫通孔8453に重なる。
【0072】
本実施例では、第1ガイド孔71は、対応する基準方向の第1孔寸法φ1が、軸方向でインバータモジュール89に近いほど大きくなるテーパ状の形態である。なお、対応する基準方向の第1孔寸法φ1とは、対応する対の第1接続端子8001及び第2接続端子8002に係る基準方向に沿った孔寸法(X方向に垂直な平面で切断した際の断面での寸法)であり、断面形状が円形である場合は、単に当該円形の直径に対応する。以下、このような第1ガイド孔71を、テーパ状の第1ガイド孔71とも称する。第1ガイド孔71のテーパ状の形態は、対応する貫通孔8451の中心線CT1に関して回転対称な断面を有する形態であってよい。この場合、対応する貫通孔8451の中心線CT1に対して任意の方向に第1接続端子8001がずれた場合でも、後述する入口側のガイド機能(位置ズレを修正する機能)を同様に実現できる。
【0073】
また、本実施例では、第2ガイド孔72は、対応する基準方向の第2孔寸法φ2が、軸方向でインバータモジュール89に近い側の端部位置において、同端部位置での第1孔寸法φ1よりも小さい。すなわち、第2ガイド孔72は、第1ガイド孔71と同じ軸方向位置でX1側に開口し、第2ガイド孔72のX1側の開口寸法は、第1ガイド孔71のX1側の開口寸法よりも小さい。なお、対応する基準方向の第2孔寸法φ2とは、第1孔寸法φ1と同様に、対応する対の第1接続端子8001及び第2接続端子8002に係る基準方向に沿った孔寸法(X方向に垂直な平面で切断した際の断面での寸法)であり、断面形状が円形である場合は、単に当該円形の直径に対応する。
【0074】
本実施例では、第2ガイド孔72は、軸方向の各位置で第2孔寸法φ2が略一定である。なお、略一定とは、製造誤差等のような誤差に起因した微差を無視する概念である。第2孔寸法φ2は、第2接続端子8002の線径に対して最小限のクリアランスを有するように設定されてもよい。ただし、変形例では、第2ガイド孔72は、第1ガイド孔71よりも傾斜角が有意に小さい態様で、同様のテーパ状の形態を有してもよい。
【0075】
また、本実施例では、第2ガイド孔72は、第1ガイド孔71と略同じ軸方向位置でX2側に開口し、第2ガイド孔72のX2側の開口寸法は、第1ガイド孔71のX2側の開口寸法と略同じである。すなわち、第1ガイド孔71のX2側の開口寸法は、第2孔寸法φ2と略同じである。なお、略同じとは、製造誤差等のような誤差に起因した微差を無視する概念である。
【0076】
このようにして本実施例では、対の接続端子8001、8002をガイドする対の第1ガイド孔71及び第2ガイド孔72は、互いに同じ孔寸法を有するのではなく、互いに異なる孔寸法を有する。具体的には、対の第1ガイド孔71及び第2ガイド孔72は、第1ガイド孔71だけがテーパ状の形態を有し、実質的に単独で入口側のガイド機能を果たすことができる。
【0077】
このような本実施例の対の第1ガイド孔71及び第2ガイド孔72によれば、軸方向の長さの異なる対の接続端子8001、8002と相まって、図9を参照して後述するように、入口側のガイド機能を効率的に実現できる。
【0078】
図9は、入口側のガイド機能の説明図であり、制御基板84とインバータモジュール89とを電気的に接続する際の組み付け性の説明図である。図10は、比較例の場合の制御基板84とインバータモジュール89’とを電気的に接続する際の組み付け性の説明図である。
【0079】
図9に示す状態は、モータ駆動装置8に対して制御基板84を組み付ける際の途中の状態に対応する。なお、制御基板84は、カバー部材252に組み付けられたモータ駆動装置8に対して組み付けられてもよいし、モータ駆動装置8に組み付けられてからモータ駆動装置8とともにカバー部材252に組み付けられてもよい。
【0080】
図9に示す例では、制御基板84の対の第1ガイド孔71及び第2ガイド孔72に対して、対の接続端子8001、8002の位置ズレが生じている。なお、位置ズレとは、正規の位置(貫通孔8451、8452又は第1ガイド孔71、第2ガイド孔72の各中心線CT1、CT2)に対する接続端子8001、8002の中心線のズレを表す。この位置ズレは、対の接続端子8001、8002のうちの長い方の第1接続端子8001と、テーパ状の第1ガイド孔71の組み合わせにより、修正(矯正)される。具体的には、第1接続端子8001がテーパ状の第1ガイド孔71の内周面に当たりながら軸方向に相対的に移動されると(矢印R90参照)、テーパ状の第1ガイド孔71の内周面に第1接続端子8001が沿う態様で、対の接続端子8001、8002の位置が修正される(矢印R91参照)。これにより、第2接続端子8002が第2ガイド孔72のX1側の開口に至る前までには、第2接続端子8002が第2ガイド孔72に対して位置合わせされる。この結果、出口側(貫通孔8451、8452)のガイド機能が、対の第1ガイド孔71及び第2ガイド孔72により実現される。すなわち、制御基板84が対の接続端子8001、8002に対してそのまま軸方向に相対的に移動されると(矢印R90参照)、対の接続端子8001、8002が対の第1ガイド孔71及び第2ガイド孔72をそれぞれ通って制御基板84の貫通孔8451、8452内へと導かれる。このようにして本実施例によれば、位置ズレに対してロバストな組み付けを実現できる。
【0081】
ここで、第1ガイド孔71のX1側の端部位置での第1孔寸法φ1又はその半分(=φ1/2)は、上述した位置ズレを修正可能な位置ズレの最大量を規定するパラメータである。この点、本実施例では、図8に示すように、端子ピッチL1は、第1ガイド孔71のX1側の端部位置での第1孔寸法φ1と同端部位置での第2孔寸法φ2の合計の半分に対応する。すなわち、第1ガイド孔71及び第2ガイド孔72は、X1側の端部位置が同じでありかつそれぞれのX1側の開口が基準方向で実質的に連続する。従って、本実施例によれば、同じ端子ピッチL1の条件下で、修正可能な位置ズレ(基準方向での位置ズレ)の上限値(=φ1/2)に関して、当該上限値の最大化を図ることができる。
【0082】
なお、第2ガイド部材70Bの場合も、上述した第1ガイド部材70Aの場合と同様に、第2ガイド孔72により第2接続端子8002の位置ズレ(及びそれに伴い制御基板84に対する第1接続端子8001及び第3接続端子8003の位置ズレ)が修正可能である。その結果、第2ガイド部材70Bの場合も、第3接続端子8003を第3ガイド孔73を介して制御基板84の貫通孔8453へ通すことが容易となる。
【0083】
ここで、図10に示す比較例と対比して、本実施例の更なる効果について説明する。
【0084】
図10に示す比較例による構造は、本実施例に対して、端子ガイド部材70が端子ガイド部材70’に置換され、第1接続端子8001が第1接続端子8001’に置換された点が異なる。
【0085】
比較例による端子ガイド部材70’は、本実施例による端子ガイド部材70に対して、第1ガイド孔71が第1ガイド孔71’で置換され、かつ、第2ガイド孔72が第2ガイド孔72’で置換された点が異なる。
【0086】
第1ガイド孔71’及び第2ガイド孔72’は、中心線CTに関して互いに対称の形態であり、それぞれテーパ状の形態を有する。なお、中心線CTは、第1接続端子8001’と第2接続端子8002に平行な線であって、第1接続端子8001’と第2接続端子8002の中間(基準方向の中間)を通る線に対応する。
【0087】
第1接続端子8001’は、第2接続端子8002と軸方向の長さが同じである点が、本実施例による第1接続端子8001と異なる。第1接続端子8001’と第2接続端子8002とは、本実施例と同様に、端子ピッチL1だけ離間する。
【0088】
比較例によれば、第1ガイド孔71’及び第2ガイド孔72’のそれぞれがテーパ状であるので、第1接続端子8001’と第2接続端子8002のそれぞれに対して位置ズレを修正する機能を有する。しかしながら、比較例では、端子ピッチL1が比較的小さい場合に、中心線CT側かつ第1ガイド孔71’のX1側の端部での離間距離であって、第1接続端子8001’と第1ガイド孔71’の間の離間距離Δ1が、比較的小さくなるという問題がある。これは、第2接続端子8002と第2ガイド孔72’との間の関係も同様である。このため、比較例では、基準方向に沿った位置ズレに対して良好な組み付け性を実現できないおそれがある。
【0089】
これに対して、本実施例によれば、上述したように、第2ガイド孔72だけがテーパ状に形成されるので、端子ピッチL1が比較的小さい場合でも、修正可能な位置ズレの上限値(=φ1/2)を比較的大きく設定できる。従って、本実施例によれば、比較例とは異なり、基準方向に沿った位置ズレに対しても良好な組み付け性を実現できる。
【0090】
換言すると、本実施例によれば、比較的短い端子ピッチL1を実現しつつ、基準方向に沿った位置ズレに対しても良好な組み付け性を実現できる。ここで、端子ピッチL1が比較的短い場合、上述したように、インダクタンスを低減でき、耐ノイズ性を高めることができる。また、第1接続端子8001(又は第2接続端子8002)が高電位側P(図1参照)の端子である場合、第3接続端子8003に対して必要な絶縁距離を確保しやすい点で有利となる。例えば、第2接続端子8002が上アームのスイッチング素子の高電位側Pの端子(例えばMOSFETのドレイン端子)と等電位である場合、第2接続端子8002と第3接続端子8003との間の距離L3(図7参照)を、比較的大きくすることが有用となる。この場合、例えば、第3接続端子8003及び第1接続端子8001の位置が決まっている場合に、端子ピッチL1の最小化を図ることで、距離L3の最大化を図ることができる。
【0091】
以上、各実施例について詳述したが、特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された範囲内において、種々の変形及び変更が可能である。また、前述した実施例の構成要素を全部又は複数を組み合わせることも可能である。
【0092】
例えば、上述した実施例では、すべてのパワー半導体チップ801、802が上述した対の第1接続端子8001及び第2接続端子8002を有し、それに対応して対ごとに端子ガイド部材70が設けられるが、これに限られない。例えば、相ごとに、特定のサブモジュール800に係るパワー半導体チップ801、802だけが、上述した対の第1接続端子8001及び第2接続端子8002を有してもよい。この場合、他のサブモジュール800に係るパワー半導体チップ801、802は、図10に示す比較例のような第1接続端子8001’及び第2接続端子8002を有してもよい。これは、相ごとの各サブモジュール800間では、特定のサブモジュール800に対して比較的高い位置精度を出すことが容易であるためである。
【0093】
また、上述した実施例では、第1接続端子8001及び第2接続端子8002のうちの、第3接続端子8003から遠い側の第1接続端子8001が第2接続端子8002よりも軸方向に長い構成であるが、逆であってもよい。すなわち、第1接続端子8001及び第2接続端子8002のうちの、第3接続端子8003から近い側の第2接続端子8002が第1接続端子8001よりも軸方向に長い構成であってよい。この場合、それに対応して、端子ガイド部材70の構成は、第1ガイド孔71と第2ガイド孔72とが逆の構成とされてよい。
【符号の説明】
【0094】
10・・・車両駆動装置、1・・・回転電機、70 端子ガイド部材、71・・・第1ガイド孔、72・・・第2ガイド孔、89・・・インバータモジュール(インバータ装置)、84・・・制御基板、800・・・サブモジュール(モジュール)、801、802・・・パワー半導体チップ(半導体スイッチング素子)、8001・・・第1接続端子、8002・・・第2接続端子、8003・・・第3接続端子、8451・・・貫通孔(第1貫通孔)、8452・・・貫通孔(第2貫通孔)、8010・・・保持部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図6A
図7
図8
図9
図10