(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024104871
(43)【公開日】2024-08-06
(54)【発明の名称】車両駆動装置
(51)【国際特許分類】
H02M 7/48 20070101AFI20240730BHJP
【FI】
H02M7/48 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023009274
(22)【出願日】2023-01-25
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】小芦 英史
【テーマコード(参考)】
5H770
【Fターム(参考)】
5H770BA02
5H770HA02Y
5H770PA12
5H770PA42
5H770QA06
5H770QA08
5H770QA14
5H770QA22
5H770QA28
5H770QA31
(57)【要約】
【課題】インバータ装置を形成する複数のモジュールを軸まわりに配置する構成において、各相に係る電流センサに対する信頼性を高める。
【解決手段】回転電機と、回転電機の軸方向一方側にかつ軸まわりの円環状に配置されるインバータ装置を形成する複数のモジュールと、複数のモジュールと回転電機とをつなぐバスバーであって、複数相に係る相ごとに設けられるバスバーと、3相ごとのバスバーにそれぞれ対して設けられる電流センサとを備え、複数のモジュールは、複数相に係る相ごとに纏まりつつ、軸まわりに分散して配置され、相ごとのバスバー及び電流センサは、軸まわりの周方向で複数のモジュールのうちの相ごとの纏まりの間に、1組ずつ配置される、車両駆動装置が開示される。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸上に回転軸を有する回転電機と、
前記回転電機の軸方向一方側にかつ軸まわりの円環状に配置される複数のモジュールであって、前記回転電機に複数相の交流電力を供給するインバータ装置を形成する複数のモジュールと、
前記複数のモジュールと前記回転電機とをつなぐバスバーであって、前記複数相に係る相ごとに設けられるバスバーと、
相ごとの前記バスバーにそれぞれ対して設けられ、前記バスバーを流れる電流に応じた電気信号を生成する電流センサとを備え、
前記複数のモジュールは、前記複数相に係る相ごとに纏まりつつ、軸まわりに分散して配置され、
相ごとの前記バスバー及び前記電流センサは、軸まわりの周方向で前記複数のモジュールのうちの相ごとの纏まりの間に、相ごとに配置される、車両駆動装置。
【請求項2】
前記複数のモジュールのそれぞれは、パワースイッチング素子と、平滑コンデンサとを、前記パワースイッチング素子が前記平滑コンデンサの径方向内側に位置する態様で、含み、
相ごとの前記電流センサは、軸まわりの周方向で前記平滑コンデンサに重なる径方向位置に配置される、請求項1に記載の車両駆動装置。
【請求項3】
前記複数のモジュールは、前記複数相に係る相ごとに2つ以上設けられ、
軸まわりの周方向に沿った距離に関して、相間のモジュール間距離は、一の相内におけるモジュール間距離よりも長い、請求項1又は2に記載の車両駆動装置。
【請求項4】
冷却水が流れる冷却水路を形成する水路形成部材を更に備え、
前記冷却水路は、軸まわりの周方向で、前記複数のモジュールのうちの一の相に係る纏まりと、他の一の相に係る纏まりとの間を通って、径方向に延在する、請求項3に記載の車両駆動装置。
【請求項5】
一の相に係る前記電流センサは、軸方向に視て、前記冷却水路に重なる、請求項4に記載の車両駆動装置。
【請求項6】
相ごとの前記バスバーは、前記複数のモジュールの径方向内側で軸まわりに延在するとともに、軸まわりの周方向で前記複数のモジュールのうちの相ごとの纏まりの間を通って、径方向に延在する、請求項3に記載の車両駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インバータ装置を形成する複数のモジュールを、軸方向視で回転電機の中心軸まわりに配置する技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のような従来技術では、各相のバスバーを流れる電流を検出する電流センサが、複数のモジュールよりも径方向外側であって、軸まわりの周方向の1箇所に集約される傾向がある。このような配置では、他相からの外乱の影響を受けることで電流センサからのセンサ情報に対する信頼性が低下しやすい。
【0005】
そこで、1つの側面では、本開示は、インバータ装置を形成する複数のモジュールを軸まわりに配置する構成において、各相に係る電流センサに対する信頼性を高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
1つの側面では、軸上に回転軸を有する回転電機と、
前記回転電機の軸方向一方側にかつ軸まわりの円環状に配置される複数のモジュールであって、前記回転電機に複数相の交流電力を供給するインバータ装置を形成する複数のモジュールと、
前記複数のモジュールと前記回転電機とをつなぐバスバーであって、前記複数相に係る相ごとに設けられるバスバーと、
相ごとの前記バスバーにそれぞれ対して設けられ、前記バスバーを流れる電流に応じた電気信号を生成する電流センサとを備え、
前記複数のモジュールは、前記複数相に係る相ごとに纏まりつつ、軸まわりに分散して配置され、
相ごとの前記バスバー及び前記電流センサは、軸まわりの周方向で前記複数のモジュールのうちの相ごとの纏まりの間に、相ごとに配置される、車両駆動装置が提供される。
【発明の効果】
【0007】
1つの側面では、本開示によれば、インバータ装置を形成する複数のモジュールを軸まわりに配置する構成において、各相に係る電流センサに対する信頼性を高めることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本実施例による回転電機を含む電気回路の一例の概略図である。
【
図2】本実施例による回転電機を含む車両用駆動システムのスケルトン図である。
【
図3A】本実施例による車両駆動装置の要部を概略的に示す断面図である。
【
図3B】本実施例による車両駆動装置の要部を概略的に示す断面図である。
【
図4】本実施例によるモータ駆動装置をX1側から視た斜視図である。
【
図5】本実施例によるモータ駆動装置の各部品の説明図である。
【
図6】一の出力バスバーの単品状態の斜視図である。
【
図7】本実施例の車両駆動装置における回転電機1よりも軸方向外側の部分を軸方向視で示す平面図である。
【
図8】
図7に示す図から、電気系の構成要素を主に残して他を取り除いた平面図である。
【
図9】
図7のQ7部付近において、電流センサを通るXZ平面で切断した際の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照しながら各実施例について詳細に説明する。なお、図面の寸法比率はあくまでも一例であり、これに限定されるものではなく、また、図面内の形状等は、説明の都合上、部分的に誇張している場合がある。また、図面では、見易さのために、複数存在する同一属性の部位には、一部のみしか参照符号が付されていない場合がある。
【0010】
以下では、本実施例の車両駆動装置10の電気系(制御系)、及び、本実施例の車両駆動装置10を含む駆動システム全体を概説してから、本実施例の車両駆動装置10の詳細について説明する。
【0011】
[車両駆動装置の電気系]
図1は、回転電機1を含む電気回路200の一例の概略図である。
図1には、制御装置500についても併せて示される。
図1において、制御装置500に対応付けられた点線矢印は、情報(信号やデータ)のやり取りを表す。
【0012】
回転電機1は、制御装置500によるインバータINVの制御を介して駆動される。
図1に示す電気回路200では、回転電機1は、電源VaにインバータINVを介して電気的に接続される。なお、インバータINVは、例えば、相ごとに、電源Vaの高電位側Pと低電位側Nとにそれぞれパワースイッチング素子(例えばMOSFET:Metal-Oxide-Semiconductor Field Effect TransistorやIGBT:Insulated Gate Bipolar Transistor等)を備え、高電位側Pのパワースイッチング素子と低電位側Nのパワースイッチング素子とが上下アームを形成する。なお、インバータINVは、相ごとに、複数組の上下アームを備えてもよい。各パワースイッチング素子は、制御装置500による制御下で、所望の回転トルクが発生するようにPWM(Pulse Width Modulation)駆動されてよい。なお、電源Vaは、例えば比較的定格電圧の高いバッテリであり、例えばリチウムイオンバッテリや燃料電池等であってよい。
【0013】
本実施例では、
図1に示す電気回路200のように、電源Vaの高電位側Pと低電位側Nの間には、インバータINVに対して並列に、平滑コンデンサCが電気的に接続される。なお、平滑コンデンサCは、複数組、互いに並列に、電源Vaの高電位側Pと低電位側Nの間に電気的に接続されてもよい。また、電源VaとインバータINVとの間にDC/DCコンバータが設けられてもよい。
【0014】
[駆動システム全体]
図2は、回転電機1を含む車両用駆動システム100のスケルトン図である。
図2には、X方向と、X方向に沿ったX1側とX2側が定義されている。X方向は、第1軸A1の方向(以下、「軸方向」とも称する)に平行である。
【0015】
図2に示す例では、車両用駆動システム100は、車輪Wの駆動源となる回転電機1と、回転電機1と車輪Wとを結ぶ動力伝達経路に設けられた駆動伝達機構7と、を備える。駆動伝達機構7は、入力部材3と、カウンタギヤ機構4と、差動歯車機構5と、左右の出力部材61、62と、を備える。
【0016】
入力部材3は、入力軸31と、入力ギヤ32とを有する。入力軸31は、第1軸A1まわりに回転する回転部材である。入力ギヤ32は、回転電機1からの回転トルク(駆動力)をカウンタギヤ機構4に伝達するギヤである。入力ギヤ32は、入力部材3の入力軸31と一体的に回転するように、入力部材3の入力軸31に連結される。
【0017】
カウンタギヤ機構4は、動力伝達経路において、入力部材3と差動歯車機構5との間に配置される。カウンタギヤ機構4は、カウンタ軸41と、第1カウンタギヤ42と、第2カウンタギヤ43とを有する。
【0018】
カウンタ軸41は、第2軸A2まわりに回転する回転部材である。第2軸A2は、第1軸A1に平行に延在する。第1カウンタギヤ42は、カウンタギヤ機構4の入力要素である。第1カウンタギヤ42は、入力部材3の入力ギヤ32と噛み合う。第1カウンタギヤ42は、カウンタ軸41と一体的に回転するように、カウンタ軸41に連結される。
【0019】
第2カウンタギヤ43は、カウンタギヤ機構4の出力要素である。本実施例では、一例として、第2カウンタギヤ43は、第1カウンタギヤ42よりも小径に形成される。第2カウンタギヤ43は、カウンタ軸41と一体的に回転するように、カウンタ軸41に連結される。
【0020】
差動歯車機構5は、その回転軸心としての第3軸A3上に配置される。第3軸A3は、第1軸A1に平行に延在する。差動歯車機構5は、回転電機1の側から伝達される駆動力を、左右の出力部材61、62に分配する。差動歯車機構5は、差動入力ギヤ51を備え、差動入力ギヤ51は、カウンタギヤ機構4の第2カウンタギヤ43と噛み合う。また、差動歯車機構5は、差動ケース52を備え、差動ケース52内には、ピニオンシャフトや、ピニオンギヤ、左右のサイドギヤ等が収容される。左右のサイドギヤは、それぞれ、左右の出力部材61、62と一体的に回転するように連結される。
【0021】
左右の出力部材61、62のそれぞれは、左右の車輪Wに駆動連結される。左右の出力部材61、62のそれぞれは、差動歯車機構5によって分配された駆動力を車輪Wに伝達する。なお、左右の出力部材61、62は、2つ以上の部材により構成されてもよい。
【0022】
このようにして回転電機1は、駆動伝達機構7を介して車輪Wを駆動する。ただし、他の実施例では、回転電機1は、ホイールインモータとして、車輪内に配置されてもよい。この場合、車両用駆動システム100は、駆動伝達機構7を含まない構成であってよい。また、他の実施例では、駆動伝達機構7の一部又は全部を共用化する複数の回転電機1が設けられてもよい。
【0023】
[車両駆動装置の詳細]
図3A及び
図3Bは、本実施例の車両駆動装置10の要部の断面図であり、
図3Aは、油路2530を通る断面図であり、
図3Bは、冷却水路2528を通る断面図である。
【0024】
車両駆動装置10は、上述した回転電機1と、ケース2と、モータ駆動装置8とを含む。
【0025】
車両駆動装置10は、車両用駆動システム100の一部として車両に搭載され、上述したように、車両を前進又は後退させる駆動力を生成する。なお、車両は、任意の形態であり、例えば4輪の自動車であってもよいし、バス、トラック、二輪車や建設機械等であってもよい。なお、車両駆動装置10は、他の駆動源(例えば内燃機関)とともに車両に搭載されてもよい。
【0026】
回転電機1は、ロータ310及びステータ320を有する。
図3A及び
図3Bには、回転電機1の軸方向一端側(X1側)の一部が示されている。回転電機1は、インナロータタイプであり、ステータ320がロータ310の径方向外側を囲繞するように設けられる。すなわち、ロータ310は、ステータ320の径方向内側に配置される。
【0027】
ロータ310は、ロータコア312と、シャフト部314とを備える。
【0028】
ロータコア312は、例えば円環状の磁性体の積層鋼板からなってよい。ロータコア312の内部には、永久磁石325が埋め込まれてよい。あるいは、永久磁石325は、ロータコア312の外周面に取り付けられてもよい。なお、永久磁石325の配列等は任意である。ロータコア312は、シャフト部314の外周面に固定され、シャフト部314と一体となって回転する。
【0029】
シャフト部314は、第1軸A1上に配置され、回転電機1の回転軸を第1軸A1上に画成する。シャフト部314は、ロータコア312が固定される部分よりもX1側において、ケース2のカバー部材252(後述)にベアリング240を介して回転可能に支持される。なお、シャフト部314は、回転電機1の軸方向他端側(X2側)において、ベアリング240に対応するベアリングを介してケース2に回転可能に支持される。このようにして、シャフト部314が軸方向両端で回転可能にケース2に支持されてよい。
【0030】
シャフト部314は、例えば中空管の形態であり、中空内部314Aを有する。中空内部314Aは、シャフト部314の軸方向の全長にわたり延在してよい。中空内部314Aは、軸心油路として機能することができる。この場合、シャフト部314は、ステータ320のコイルエンド部322A等に油を吐出する油孔が形成されてよい。
【0031】
ステータ320は、ステータコア321と、ステータコイル322とを備える。
【0032】
ステータコア321は、例えば円環状の磁性体の積層鋼板からなってよい。ステータコア321の内周部には、径方向内側に突出するティース(図示せず)が放射状に形成される。
【0033】
ステータコイル322は、例えば断面平角状又は断面円形状の導体に絶縁被膜が付与された形態であってよい。ステータコイル322は、ステータコア321のティース(図示せず)まわりに巻装される。なお、ステータコイル322は、例えば、1つ以上の並列関係で、Y結線で電気的に接続されてもよいし、Δ結線で電気的に接続されてもよい。
【0034】
ステータコイル322は、ステータコア321のスロットから軸方向外側に突出する部分であるコイルエンド部322Aを有する。以下の説明において、コイルエンド部322Aとは、特に言及しない限り、ステータコイル322の一部であって、ステータコア321の軸方向両側のそれぞれで周方向に沿って延在する部分のうちの、リード側である軸方向一端側(X1側)で沿って延在する部分を指す。
【0035】
ケース2は、例えばアルミ等により形成されてよい。ケース2は、例えば鋳造等により形成できる。ケース2は、モータケース250と、カバー部材252とを含む。ケース2は、回転電機1及びモータ駆動装置8を収容する。また、
図2に示した車両用駆動システム100の場合、ケース2は、
図2に模式的に示すように、駆動伝達機構7を更に収容してもよい。
【0036】
モータケース250は、回転電機1を収容するモータ収容室SP1を形成する。なお、モータ収容室SP1は、回転電機1(及び/又は駆動伝達機構7)を冷却及び/又は潤滑するための油を含む油密空間であってよい。モータケース250は、回転電機1の径方向外側を囲繞する周壁部を有する形態である。モータケース250は、複数の部材を結合して実現されてもよい。また、モータケース250は、軸方向他端側(X2側)で、駆動伝達機構7を収容する他のケース部材に一体化されてよい。
【0037】
カバー部材252は、比較的高い伝熱性を有する材料(例えばアルミ)により形成される。カバー部材252は、モータケース250の軸方向一端側(X1側)に結合される。カバー部材252は、モータ収容室SP1における軸方向一端側(X1側)を覆うカバーの形態であり、回転電機1に軸方向に対向する。この場合、カバー部材252は、モータケース250の軸方向一端側(X1側)の開口部を完全に又は略完全に閉塞する態様で覆ってもよい。
【0038】
カバー部材252は、モータ駆動装置8を収容するインバータ収容室SP2を形成する。なお、インバータ収容室SP2の一部は、モータケース250により形成されてもよいし、逆に、モータ収容室SP1の一部は、カバー部材252により形成されてもよい。
【0039】
カバー部材252は、モータ駆動装置8を支持する。例えばモータ駆動装置8は、後述するモジュールの形態で、カバー部材252に取り付けられてもよい。これにより、カバー部材252にモータ駆動装置8の一部又は全体を組み付けてから、カバー部材252とモータケース250とを結合でき、モータ駆動装置8の組み付け性が向上する。
【0040】
カバー部材252には、ロータ310を回転可能に支持するベアリング240が設けられる。すなわち、カバー部材252は、ベアリング240を支持するベアリング支持部2524を有する。なお、ベアリング支持部2524とは、カバー部材252のうちの、ベアリング240が設けられる軸方向範囲の部分全体を指す。
【0041】
ベアリング240は、
図3A及び
図3Bに示すように、シャフト部314のX1側の端部における径方向外側に設けられる。具体的には、ベアリング240は、アウタレースの径方向外側がカバー部材252に支持され、インナレースの径方向内側がシャフト部314の外周面に支持される。なお、変形例では、逆に、ベアリング240は、インナレースの径方向内側がカバー部材252に支持され、アウタレースの径方向外側がシャフト部314の内周面に支持されてもよい。
【0042】
カバー部材252は、
図3A及び
図3Bに示すように、第1軸A1を中心とした円形状の底部2521と、底部2521の外周縁から軸方向他端側(X2側)へと突出する周壁部2522とを含み、底部2521と周壁部2522とが、インバータ収容室SP2を画成する。底部2521における軸方向他端側(X2側)の中央部(第1軸A1を中心とした部分)には、ベアリング支持部2524が設定される。
【0043】
インバータ収容室SP2は、空間であってもよいが、好ましくは、比較的高い伝熱性を有するフィラーを含む樹脂により封止される。すなわち、カバー部材252は、好ましくは、伝熱性のモールド樹脂部2523を有する。この場合、モールド樹脂部2523は、後述するモータ駆動装置8を封止して支持する機能と、モータ収容室SP1内の油に対してモータ駆動装置8を保護する機能と、モータ駆動装置8からの熱をカバー部材252に伝達する機能を有することができる。なお、
図3A及び
図3Bでは、モールド樹脂部2523内に封止される要素(後述するインバータモジュール90等)の一部が透視で示されている。モールド樹脂部2523の形成範囲は、
図3A等に示す範囲に限られず、底部2521側から、よりX1側までしか延在しなくてもよいし、よりX2側まで延在してもよい。
【0044】
ここで、
図3A及び
図3Bを参照して、本実施例に適用可能な冷却構造の一例について説明する。以下では、径方向、軸方向及び周方向の各用語は、特に言及しない限り、第1軸A1に関する各方向である。すなわち、軸方向は、第1軸A1に平行な方向(第1軸A1と同軸の線に沿った方向を含む)であり、径方向は、第1軸A1を通りかつ第1軸A1に直交する方向であり、周方向は、第1軸A1に直交する任意の平面内における第1軸A1まわりの方向である。また、軸まわりとは、第1軸A1まわりを指す。
【0045】
図3A及び
図3Bに示す例では、冷却構造は、カバー部材252にそれぞれ形成される冷却水路2528及び油路2530(以下、「カバー油路2530」と称する)と、軸心油路を形成する中空内部314Aと、中空内部314Aに油を供給する軸心供給用の管状部材180と、上掛け油路を形成する管状部材181とを含む。
【0046】
冷却水路2528には、冷却水が流される。なお、冷却水は、例えばLLC(Long Life Coolant)を含む水であってよい。この場合、冷却水路2528を流れる冷却水は、車両に搭載されるラジエーター(図示せず)で放熱されることで、比較的低温に維持できる。
【0047】
冷却水路2528は、軸方向に視て任意の形態であってよく、例えば、円環状の形態であってもよいし、螺旋状の形態であってもよいし、径方向外側と内側に蛇行しながら周方向に沿って延在する形態であってもよい。なお、カバー部材252を中子等を用いて製造する場合は、冷却水路2528の形状等の自由度を高めることができる。
【0048】
カバー油路2530には、油が流れる。カバー油路2530には、図示しないオイルポンプから油が供給される。オイルポンプは、例えば駆動伝達機構7に連動する機械式であってよいし、電動式であってもよい。
【0049】
カバー油路2530は、径方向に視て、冷却水路2528とオーバラップしてもよい。この場合、カバー油路2530と冷却水路2528とが径方向に視てオーバラップしない場合に比べて、カバー部材252の厚み(軸方向の底部2521の厚み)の低減を図り、車両駆動装置10の軸方向の体格の低減を図ることができる。
【0050】
カバー油路2530に供給される油は、カバー油路2530を通ってから、管状部材180に供給される。管状部材180は、中空の管状の形態であり、内部が流路を形成する。管状部材180は、第1軸A1と同心状に、軸方向に延在し、軸方向の両端が開口されてよい。管状部材180は、
図3Aに示すように、X1側でカバー油路2530(軸心側の出口部25302)に接続され、中空内部314A内までX2側に軸方向に延在し、X2側の端部の開口が中空内部314Aに連通する。
【0051】
管状部材180に供給される油は、軸心油路(中空内部314A)に供給される。中空内部314Aに供給された油は、ロータ310の回転時の遠心力の作用により、シャフト部314の内周面を伝って流れ、ロータコア312及びそれに伴い永久磁石325を径方向内側から冷却する。また、シャフト部314に径方向の油孔を形成して、径方向内側からコイルエンド部322A(図示しないX2側のコイルエンド部322Aも同様、以下同様)に向けて油を吐出することも可能である。この場合、コイルエンド部322Aを径方向内側から冷却できる。
【0052】
また、カバー油路2530に供給される油は、カバー油路2530を通ってから、管状部材181に供給される。管状部材181は、中空の管状の形態であり、内部が流路を形成する。管状部材181は、軸方向に視てステータ320よりも径方向外側において、軸方向に延在し、軸方向の両端が開口されてよい。
【0053】
管状部材181に供給された油は、重力の作用により、管状部材181に形成される径方向の油孔1810を介して、ステータ320に落下する。ステータ320に落下した油は、ステータ320の外周面等を伝って下方へと流れる。これにより、ステータ320を径方向外側から冷却できる。
【0054】
管状部材181の油孔1810は、例えば、コイルエンド部322Aに径方向で対向する油孔1810Aを含んでよい。これにより、コイルエンド部322Aを径方向外側から冷却できる。
【0055】
また、管状部材181の油孔1810は、ステータコア321の外周面に径方向で対向する油孔1810Bを含んでよい。これにより、ステータコア321(及びステータコイル322)を径方向外側から冷却できる。
【0056】
なお、ここでは、一例として、
図3A及び
図3Bを参照して特定の冷却構造に付いて説明したが、冷却構造の構成の詳細は任意である。例えば、管状部材180及び/又は管状部材181等は省略されてもよい。あるいは、油冷自体が省略されてもよい。
【0057】
本実施例では、モータ駆動装置8は、パワーモジュール80と、コンデンサモジュール82と、制御基板84と、配線部88とを含む。
【0058】
図4は、本実施例によるモータ駆動装置8をX1側から視た斜視図である。
図5は、本実施例によるモータ駆動装置8の各部品の説明図である。
図6は、一の出力バスバー887の単品状態の斜視図である。
図7は、本実施例の車両駆動装置10における回転電機1よりもX1側(X方向負側)の部分を軸方向視で示す平面図である。なお、
図4及び
図5では、制御基板84及び配線部88の一部の図示は省略されている。
図4等では、右手座標系で直交する3軸(X軸、Y軸、Z軸)が示されている。X軸は、
図2等で定義したX軸と同じであり、
図4等の3軸表記のX軸の負側が、
図2等で定義したX軸のX1側に対応する。
【0059】
本実施例では、パワーモジュール80及びコンデンサモジュール82は、
図4及び
図5に示すように、複数の組(
図4及び
図5に示す例では、12組)をなして、周方向に沿って配置される。パワーモジュール80及びコンデンサモジュール82の組の数は、回転電機1の仕様に応じて変化されてよい。基本的には、パワーモジュール80及びコンデンサモジュール82の組の数が増加すると、回転電機1の出力が高くなる。従って、回転電機1の設計の際に、パワーモジュール80及びコンデンサモジュール82の組の数(及びそれに伴い回転電機1の出力)が異なる複数のバリエーションを設定できる。
【0060】
パワーモジュール80及びコンデンサモジュール82は、組ごとに、軸まわりに環状に配置される。パワーモジュール80及びコンデンサモジュール82の各組は、好ましくは、相ごとに纏まりつつ、軸まわりに環状に分散して配置される。この際、パワーモジュール80及びコンデンサモジュール82の各組は、例えば、等ピッチで配置されてもよい。図示の例では、パワーモジュール80及びコンデンサモジュール82の組数は12組であり、12組は、30度ピッチで配置される。これにより、パワーモジュール80及びコンデンサモジュール82からの熱に起因した周方向に沿った温度分布を均一化できる。
【0061】
ただし、本実施例では、より好ましい例として、パワーモジュール80及びコンデンサモジュール82の各組は、相ごとの纏まり間の周方向の間隔(以下、「相間のモジュール間距離Δ1」と称する)が比較的広くなる態様で、配置される。すなわち、本実施例では、相間のモジュール間距離Δ1は、同一相内のパワーモジュール80及びコンデンサモジュール82の各組の周方向の間隔Δ2(以下、「相内のモジュール間距離Δ2」と称する)よりも有意に長い。この場合、比較的広い相間のモジュール間距離Δ1を利用して、後述するように電流センサ9の好ましい配置や冷却水路2528の形成等を実現できる。なお、相内のモジュール間距離Δ2は、各相において同一(一定)であってよい。
【0062】
以下では、相ごとのパワーモジュール80及びコンデンサモジュール82の各組の纏まりの間であって、相間のモジュール間距離Δ1に係る周方向の間を、「相間モジュール間スペースS10」とも称する。なお、相間モジュール間スペースS10は、相ごとのパワーモジュール80及びコンデンサモジュール82の各組の纏まりが、3相分の3つあるため、周方向の120度間隔で3つ形成される。
【0063】
パワーモジュール80及びコンデンサモジュール82は、好ましくは、複数の組のそれぞれにおいて、一体化された組立体の形態である。すなわち、各組のパワーモジュール80及びコンデンサモジュール82は、一体化されたインバータモジュール90を形成する。
【0064】
インバータモジュール90のそれぞれにおいて、パワーモジュール80は同じ構成を有し、コンデンサモジュール82は同じ構成(電気的特性や形状等)を有する。これにより、インバータモジュール90ごとの交換や整備も可能であり、汎用性を高めることができる。本実施例では、インバータモジュール90のそれぞれにおいて、パワーモジュール80は、サブモジュール800と、放熱部材810とを含む。この場合、インバータモジュール90のそれぞれにおいて、サブモジュール800は同じ構成(電気的特性や形状等)を有し、放熱部材810は同じ構成(材料や形状等)を有する。これにより、複数のインバータモジュール90を周方向に沿って配置する際、どのインバータモジュール90を、どの周方向の位置に配置するかを考慮する必要性がなくなり、組付け性が良好となる。
【0065】
なお、本実施例では、上述したように、12個のインバータモジュール90のうちのU相用の4つのインバータモジュール90は、周方向に隣接して一塊で配置され、V相用の4つのインバータモジュール90は、周方向に隣接して一塊で配置され、W相用の4つのインバータモジュール90は、周方向に隣接して一塊で配置される。
【0066】
サブモジュール800のそれぞれは、インバータINV(
図1参照)における一の相に係る上下アームを形成する。これにより、上下アームごとにサブモジュール化が可能となり、配線効率が向上する。具体的には、12組のうちの、4組におけるパワーモジュール80において、サブモジュール800のそれぞれは、U相に係る上下アームを形成し、他の4組におけるパワーモジュール80において、サブモジュール800のそれぞれは、V相に係る上下アームを形成し、更なる他の4組におけるパワーモジュール80において、サブモジュール800のそれぞれは、W相に係る上下アームを形成する。
【0067】
また、インバータモジュール90のそれぞれにおいて、サブモジュール800は、対のパワー半導体チップ801、802を有する。具体的には、対のパワー半導体チップ801、802は、高電位側Pの上アームを形成するパワー半導体チップ801と、低電位側Nの下アームを形成するパワー半導体チップ802とからなる。パワー半導体チップ801、802は、それぞれ、上述したパワースイッチング素子を含む。
【0068】
パワー半導体チップ801及びパワー半導体チップ802は、
図5に示すように、好ましくは、放熱部材810と一体化される。これにより、上述したパワーモジュール80が放熱部材810を一体的に含むことになり、放熱部材810を介して対のパワー半導体チップ801、802の熱を効率的に放熱できる。また、対のパワー半導体チップ801、802及び放熱部材810をそれぞれ別々にカバー部材252又はコンデンサモジュール82に組み付ける場合に比べて、組み付け性を高めることができる。
【0069】
また、パワー半導体チップ801及びパワー半導体チップ802は、
図5に示すように、樹脂モールド部805とともに、配線部88の一部としてバスバー881、882、883、884を有する。パワー半導体チップ801と一体化されるバスバー881は、パワー半導体チップ801とコンデンサモジュール82(例えば
図5のコンデンサバスバー821)とを電気的に接続する。また、パワー半導体チップ801と一体化されるバスバー883は、パワー半導体チップ801と、回転電機1における対応する相のステータコイル322とを電気的に接続する。同様に、パワー半導体チップ802と一体化されるバスバー882は、パワー半導体チップ802とコンデンサモジュール82(例えば
図5のコンデンサバスバー822)とを電気的に接続する。また、パワー半導体チップ802と一体化されるバスバー884は、パワー半導体チップ802と、回転電機1における対応する相のステータコイル322とを電気的に接続する。本実施例では、バスバー883及びバスバー884は、接続バスバー885を介して、出力バスバー887(
図4及び
図6等参照)の一端に接続される。出力バスバー887の他端は、回転電機1における対応する相のステータコイル322に電気的に接続される。
【0070】
本実施例では、対のパワー半導体チップ801、802は、放熱部材810の周方向の側面に接合される。この際、パワー半導体チップ801は、放熱部材810の周方向一方側の側面(表面)に接合され、パワー半導体チップ802は、放熱部材810の周方向他方側の側面(表面)に接合される。なお、接合方法は任意であり、比較的高い伝熱性の接着材料等が利用されてもよい。これにより、放熱部材810は、対のパワー半導体チップ801、802から周方向の側面を介して効率的に熱を受けることができる。また、周方向で隣り合う放熱部材810の間のスペースを効率的に利用して、対のパワー半導体チップ801、802を配置できる。
【0071】
放熱部材810は、比較的高い伝熱性を有する材料(例えばアルミ)により形成される。放熱部材810は、サブモジュール800からの熱を効率的に受け、受けた熱をカバー部材252(及び冷却水路2528内の冷却水)に効率的に伝達する機能を有する。
【0072】
放熱部材810は、好ましくは、
図4及び
図5に示すように、軸方向に視て、径方向内側に向かうほど周方向幅が小さくなる形態である。すなわち、放熱部材810は、好ましくは、対のパワー半導体チップ801、802が接合される周方向の側面間の距離L1が、径方向で第1軸A1に近い側の方が第1軸A1よりも遠い側よりも小さい。これにより、放熱部材810をコンデンサモジュール82よりも径方向内側に配置しつつ、パワーモジュール80及びコンデンサモジュール82の組数(すなわちインバータモジュール90の数)を比較的大きくした場合でも、放熱部材810のレイアウトを比較的容易に成立させることができる。
【0073】
なお、放熱部材810には、冷却水路2528に連通する流路が形成されてもよい。あるいは、放熱部材810は、中空の形態であり、内部に冷却水路2528に連通する管状部材が通されてもよい。
【0074】
コンデンサモジュール82は、平滑コンデンサC(
図1参照)を形成するモジュールの形態である。コンデンサモジュール82は、平滑コンデンサCを形成するコンデンサ素子や配線部88のコンデンサバスバー821、822を樹脂により封止した形態であってよい。なお、コンデンサバスバー821、822は、それぞれ、封止樹脂部から露出した各端部が、コンデンサ素子の高電位側端子と、コンデンサ素子の低電位側端子とを形成する。コンデンサバスバー821、822は、サブモジュール800に接続されるとともに、電源用バスバー886(
図3A及び
図3B参照)に接続される。
【0075】
インバータモジュール90のそれぞれにおいて、コンデンサモジュール82は、対応する組のサブモジュール800の高電位側Pと低電位側Nとの間に並列に電気的に接続される平滑コンデンサC(
図1参照)を形成する。
【0076】
本実施例では、コンデンサモジュール82は、パワーモジュール80の径方向外側に配置される。これにより、コンデンサモジュール82がパワーモジュール80の径方向内側に配置される場合に比べて、配置できる周方向範囲が広くなり、コンデンサモジュール82の体格を大きくしやすくなる。例えば、パワーモジュール80及びコンデンサモジュール82の組数を比較的大きくした場合でも、比較的大きな体格のコンデンサモジュール82を実現できる。この結果、回転電機1の高出力化に対応することが容易となる。
【0077】
また、本実施例では、コンデンサモジュール82の軸方向の延在範囲は、
図3A及び
図3Bに示すように、パワーモジュール80の軸方向の延在範囲とオーバラップする。特に、本実施例では、パワーモジュール80のサブモジュール800は、径方向に視て、コンデンサモジュール82とオーバラップする。これにより、車両駆動装置10の軸方向の体格の最小化を図りつつ、軸方向でカバー部材252と回転電機1との間にコンデンサモジュール82及びサブモジュール800を配置できる。
【0078】
制御基板84は、制御装置500(
図1参照)の一部又は全体を形成する。制御基板84は、例えば多層プリント基板により形成されてもよい。制御基板84は、カバー部材252に固定されてよい。制御基板84は、基板表面に対する法線方向が軸方向に沿う向きに配置される。これにより、制御基板84を軸方向の僅かな隙間を利用して配置できる。例えば、本実施例では、制御基板84は、
図3A及び
図3Bに示すように、軸方向で回転電機1とパワーモジュール80との間に配置されてよい。より詳細には、制御基板84は、軸方向で回転電機1のコイルエンド部322Aとパワーモジュール80との間に配置されてよい。これにより、デッドスペースになりやすいスペースを利用した効率的な配置を実現できる。また、制御基板84は、軸方向に視て、コイルエンド部322Aにオーバラップする径方向位置まで径方向外側に延在できるので、制御基板84の面積(回路部形成範囲)の最大化を図ることができる。なお、制御基板84には、コネクタCN(
図7参照)を介して外部のECU(Electronic Control Unit)等が接続されてよい。
【0079】
配線部88は、上述したコンデンサバスバー821、822と、上述したバスバー881、882、883、884と、電源用バスバー886(
図3A等参照)と、出力バスバー887とを含む。
【0080】
電源用バスバー886は、例えば円環状の形態であってよく、第1軸A1まわりに延在する。本実施例では、電源用バスバー886は、軸方向でカバー部材252とサブモジュール800の間において、サブモジュール800に対してX1側から隣接する態様で周方向に延在する。これにより、電源用バスバー886をカバー部材252(及び冷却水路2528内の冷却水)により効率的に冷却できる。
【0081】
電源用バスバー886は、
図7に示すように、電源側の電源コネクタCN0への接続のための部位8861が、径方向に延在してよい。この場合、部位8861は、相間モジュール間スペースS10(すなわち相ごとのインバータモジュール90に係る纏まりの間)を通って、径方向に延在する。
【0082】
出力バスバー887は、相ごとに設けられる。出力バスバー887は、各パワーモジュール80と回転電機1とをつなぐバスバーである。
図6に示すように、出力バスバー887は、円弧状の部位8871と、直線状の部位8872と、引き出し部位8873とを含む。
【0083】
出力バスバー887は、円弧状の部位8871が、例えば
図4に示すように、各インバータモジュール90の径方向内側で軸まわりに配置されてよい。この際、一の相に係る出力バスバー887は、同相に係るインバータモジュール90の纏まりの周方向の延在範囲に対応した周方向範囲(従って、約120度の周方向範囲)に延在する。このようにして3つの出力バスバー887に係る円弧状の部位8871は、互いに周方向でオーバラップしない態様で、軸まわりに円環状に配置される。この場合、出力バスバー887に係る円弧状の部位8871は、各インバータモジュール90の径方向内側で、上述した接続バスバー885に径方向に当接することで、対応するインバータモジュール90のパワーモジュール80に電気的に接続できる。
【0084】
また、出力バスバー887は、直線状の部位8872が、相間モジュール間スペースS10(すなわち相ごとのインバータモジュール90に係る纏まりの間)を通って、径方向に延在する。なお、上述したように、相間モジュール間スペースS10は、3つあり、従って、3本の出力バスバー887に係る直線状の部位8872は、
図8に良く示すように、1本ずつ、3つのいずれかの1つの相間モジュール間スペースS10を通って径方向に延在できる。
【0085】
このような構成によれば、相ごとの出力バスバー887は、円弧状の部位8871と直線状の部位8872とで、同じ形状を有することができる。これにより、部品の共通化によるコスト低減を図ることができる。
【0086】
なお、
図4等では図示しないが、相ごとの出力バスバー887は、直線状の部位8872の径方向外側端部が、引き出し部位8873を介して、回転電機1における対応する相のステータコイル322に電気的に接続される。この際、引き出し部位8873についても相ごとに同じ形状とされてもよい。この場合、相ごとの出力バスバー887は、相ごとに一ピースとして同じ形状を有することができ、部品の共通化によるコスト低減を図ることができる。
【0087】
次に、
図8以降を参照して、電流センサ9の好ましい配置等について説明する。
【0088】
図8は、
図7に示す図から、電気系の構成要素を主に残して他を取り除いた平面図である。
図9は、
図7のQ7部付近において、電流センサ9を通るXZ平面で切断した際の断面図である。
【0089】
電流センサ9は、相ごとに設けられる。電流センサ9は、相ごとの出力バスバー887を流れる電流に応じた電気信号を生成する。なお、電流センサ9は、磁気コアを有さないコアレスタイプであってもよいし、そうでなくてもよい。なお、電流センサ9は、制御基板84(
図9では図示せず)に固定されてよい。この場合、電流センサ9からのセンサ情報を制御基板84上のプリント配線等を利用して容易に伝達できる。
【0090】
電流センサ9は、出力バスバー887の直線状の部位8872と同様、相間モジュール間スペースS10(すなわち相ごとのインバータモジュール90に係る纏まりの間)に配置される。この際、相ごとの電流センサ9は、1つずつ、3つのいずれかの1つの相間モジュール間スペースS10に配置される。
【0091】
このようにして本実施例では、相ごとの出力バスバー887及び電流センサ9は、3つのいずれかの1つの相間モジュール間スペースS10に、1組ずつ配置される。これにより、相間モジュール間スペースS10を利用した効率的な電流センサ9の配置を実現できる。また、各相の電流センサ9は、相間モジュール間スペースS10間が周方向で120度ピッチに配置されることから、120度ピッチで軸まわりに配置される。これにより、各相の電流センサ9及び出力バスバー887を周方向で互いに離して配置できる。その結果、各相の電流センサ9が同一の周方向範囲に集約される場合に生じうる不都合(すなわち他相からの外乱の影響を受けることに起因した、電流センサ9からのセンサ情報に対する信頼性の低下)を防止できる。また、相ごとの出力バスバー887が周方向に近接して配置される場合の不都合(例えば電気的な絶縁性を確保するためのスペース等の確保)を低減できる。
【0092】
本実施例において、各電流センサ9は、好ましくは、軸まわりの周方向でコンデンサモジュール82(平滑コンデンサC)に重なる径方向位置に配置される。すなわち、電流センサ9の径方向の延在範囲は、コンデンサモジュール82の径方向の延在範囲に重なる。これにより、各電流センサ9がパワーモジュール80に重なる径方向位置に配置される場合(図示せず)に比べて、各電流センサ9に対して付与されうるパワーモジュール80からの影響を低減できる。すなわち、パワーモジュール80からのスイッチングノイズ等の影響を受け難い位置に各電流センサ9を配置できる。このような観点から、各電流センサ9は、パワーモジュール80の最外径位置よりも径方向外側、かつ、コンデンサモジュール82の最外径位置よりも径方向内側に、その全体が位置するように、相間モジュール間スペースS10に配置されてよい。
【0093】
また、本実施例において、3つの電流センサ9のうちの少なくとも1つは、好ましくは、
図9に示すように、軸方向に視て、冷却水路2528に重なる。これにより、軸方向に視て冷却水路2528に重なる電流センサ9を、冷却水路2528内の冷却水により冷却できる。また、3相の出力バスバー887のうちの、冷却水路2528に重なる電流センサ9が設けられる出力バスバー887を、冷却水路2528内の冷却水により冷却できる。この際、冷却水路2528における電流センサ9に重なる水路部は、
図9に示すように、他の水路部よりもY方向正側に延在してよい。この場合、電流センサ9及び出力バスバー887を効率的に冷却できる。
【0094】
なお、冷却水路2528における電流センサ9に重なる水路部は、軸方向に視て、相間モジュール間スペースS10に対して周方向に交差してもよいし、相間モジュール間スペースS10と同様に径方向に延在してもよい。いずれの場合も、電流センサ9とともに、上述した電源用バスバー886の部位8861等も、冷却水路2528における電流センサ9に重なる水路部内の冷却水により効率的に冷却できる。なお、
図9に示す例では、電流センサ9は、電源用バスバー886の部位8861を通ってカバー部材252に取り付けられている。この場合、比較的高温化しやすい電源用バスバー886を、電流センサ9よりも優先的に冷却できる。
【0095】
以上、各実施例について詳述したが、特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された範囲内において、種々の変形及び変更が可能である。また、前述した実施例の構成要素を全部又は複数を組み合わせることも可能である。
【0096】
例えば、上述した実施例では、冷却水路2528は、カバー部材252に形成されるが、冷却水路2528の一部又は全部は、カバー部材252とは異なる部材に形成されてもよい。例えば、冷却水路2528の一部又は全部は、モータケース250内に延在されてよい管状パイプにより形成されてもよい。
【符号の説明】
【0097】
10・・・車両駆動装置、1・・・回転電機、887・・・出力バスバー(バスバー)、9・・・電流センサ、90・・・インバータモジュール(インバータ装置、モジュール)、252・・・カバー部材(水路形成部材)、2528・・・冷却水路、801、802・・・パワー半導体チップ(パワースイッチング素子)、C・・・平滑コンデンサ、A1・・・第1軸(軸)
【手続補正書】
【提出日】2024-01-15
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸上に回転軸を有する回転電機と、
前記回転電機の軸方向一方側にかつ軸を中心とした円環状に配置される複数のモジュールであって、前記回転電機に複数相の交流電力を供給するインバータ装置を形成し、相ごとに2つ以上設けられる複数のモジュールと、
前記複数のモジュールと前記回転電機とをつなぐバスバーであって、前記複数相の相ごとに1つ以上設けられる複数のバスバーと、
相ごとの前記バスバーにそれぞれ対して設けられ、前記バスバーを流れる電流に応じた電気信号を生成する電流センサとを備え、
前記複数のモジュールは、同じ相が周方向に隣接して配置されることで単相モジュール群を構成し、
相ごとの前記バスバー及び前記電流センサは、複数の前記単相モジュール群の周方向の隙間である複数の相間モジュール間スペースのうちの、それぞれ異なる前記相間モジュール間スペースに配置される、車両駆動装置。
【請求項2】
前記複数のモジュールのそれぞれは、パワースイッチング素子と、平滑コンデンサとを、前記パワースイッチング素子が前記平滑コンデンサの径方向内側に位置する態様で、含み、
相ごとの前記電流センサは、前記平滑コンデンサに重なる径方向位置に配置される、請求項1に記載の車両駆動装置。
【請求項3】
軸を中心とした周方向に沿った距離に関して、前記相間モジュール間スペースの距離は、同じ相内におけるモジュール間距離よりも長い、請求項1又は2に記載の車両駆動装置。
【請求項4】
冷却水が流れる冷却水路を形成する水路形成部材を更に備え、
前記冷却水路は、複数の前記相間モジュール間スペースのうちの1つの前記相間モジュール間スペースに対して軸方向に視て重なる周方向範囲を通って、径方向に延在する、請求項3に記載の車両駆動装置。
【請求項5】
一の相に係る前記電流センサは、軸方向に視て、前記冷却水路に重なる、請求項4に記載の車両駆動装置。
【請求項6】
相ごとの前記バスバーは、前記複数のモジュールの径方向内側で軸を中心とした周方向に延在する、請求項3に記載の車両駆動装置。