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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024104874
(43)【公開日】2024-08-06
(54)【発明の名称】ガイドワイヤ
(51)【国際特許分類】
   A61M 25/09 20060101AFI20240730BHJP
【FI】
A61M25/09 510
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023009278
(22)【出願日】2023-01-25
(71)【出願人】
【識別番号】390030731
【氏名又は名称】朝日インテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100160691
【弁理士】
【氏名又は名称】田邊 淳也
(72)【発明者】
【氏名】浅井 健児
【テーマコード(参考)】
4C267
【Fターム(参考)】
4C267AA29
4C267BB02
4C267BB07
4C267BB10
4C267BB11
4C267BB12
4C267BB13
4C267BB31
4C267BB40
4C267CC08
4C267EE03
4C267GG22
4C267HH02
4C267HH07
4C267HH17
(57)【要約】
【課題】本発明は、ガイドワイヤの柔軟性と曲げ強度の向上を図ることを目的とする。
【解決手段】コアシャフトを有するガイドワイヤであって、コアシャフトは、芯線と、芯線の外周を覆う外層と、を備え、コアシャフトの先端部に、コアシャフトの径方向内側に向かって窪む凹部が形成されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コアシャフトを有するガイドワイヤであって、
前記コアシャフトは、
芯線と、前記芯線の外周を覆う外層と、を備え、
前記コアシャフトの先端部に、前記コアシャフトの径方向内側に向かって窪む凹部が形成されている、
ガイドワイヤ。
【請求項2】
請求項1に記載のガイドワイヤであって、
前記凹部は、前記外層を貫通している、
ガイドワイヤ。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のガイドワイヤであって、
前記コアシャフトの先端部には、複数の前記凹部が形成されており、
前記コアシャフトの先端部の外周を、前記コアシャフトの径方向に沿った第1の方向から見たときの前記コアシャフトの外周に対する前記凹部の割合と、前記第1の方向と直交し、かつ、前記コアシャフトの径方向に沿った第2の方向から見たときの前記コアシャフトの外周に対する前記凹部の割合とが異なっている、
ガイドワイヤ。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載のガイドワイヤであって、
前記コアシャフトは、
軸方向において外径が略一定のストレート部と、
前記ストレート部の基端側に設けられ、外径が前記コアシャフトの先端側に向かって小さくなるテーパ部と、を備え、
前記ストレート部に前記凹部が形成されている、
ガイドワイヤ。
【請求項5】
請求項4に記載のガイドワイヤであって、
前記コアシャフトは、前記ストレート部のほか、前記テーパ部に前記凹部が形成されている、
ガイドワイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガイドワイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、血管や消化器官に挿入されて、人体の治療や診断に用いられるガイドワイヤが知られている。特許文献1には、金属芯と被覆材を備えたガイドワイヤが記載されている。特許文献2には、先端部に螺旋状の溝を備えたガイドワイヤが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-46179号公報
【特許文献2】特開2012-70980号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ガイドワイヤには、湾曲する血管内を進行するための柔軟性が求められる一方で、曲げ破壊に対しての強度(曲げ強度)が求められていた。
【0005】
本発明は、ガイドワイヤの柔軟性と曲げ強度の向上を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態として実現することが可能である。
【0007】
(1)本発明の一形態は、コアシャフトを有するガイドワイヤであって、コアシャフトは、芯線と、芯線の外周を覆う外層と、を備え、コアシャフトの先端部に、コアシャフトの径方向内側に向かって窪む凹部が形成されている。
【0008】
この構成によれば、ガイドワイヤが外層を備え、さらに外層に凹部が設けられていることにより、ガイドワイヤの柔軟性と曲げ強度の向上を図ることができる。
【0009】
(2)上記形態のガイドワイヤにおいて、凹部は、外層を貫通していてもよい。
【0010】
この構成によれば、凹部が外層を貫通することにより、よりガイドワイヤの柔軟性の向上を図ることができる。
【0011】
(3)上記形態のガイドワイヤにおいて、コアシャフトの先端部には、複数の凹部が形成されており、コアシャフトの先端部の外周を、コアシャフトの径方向に沿った第1の方向から見たときのコアシャフトの外周に対する凹部の割合と、第1の方向と直交し、かつ、コアシャフトの径方向に沿った第2の方向から見たときのコアシャフトの外周に対する凹部の割合とが異なっていてもよい。
【0012】
この構成によれば、第1の方向から見たときのコアシャフトの外周に対する凹部の割合と、第2の方向から見たときのコアシャフトの外周に対する凹部の割合が異なることで、コアシャフトが曲がりやすい方向を設定することができる。
【0013】
(4)上記形態のガイドワイヤにおいて、コアシャフトは、軸方向において外径が略一定のストレート部と、ストレート部の基端側に設けられ、外径がコアシャフトの先端側に向かって小さくなるテーパ部と、を備え、ストレート部に凹部が形成されていてもよい。
【0014】
この構成によれば、ストレート部に凹部が設けられることで、ガイドワイヤの先端部の柔軟性をより向上することができる。
【0015】
(5)上記形態のガイドワイヤにおいて、コアシャフトは、ストレート部のほか、テーパ部に凹部が形成されていてもよい。
【0016】
この構成によれば、テーパ部に凹部が設けられていることにより、ガイドワイヤの先端部の柔軟性をより向上することができる。
【0017】
なお、本発明は、種々の態様で実現することが可能であり、例えば、ガイドワイヤの製造方法、カテーテル、カテーテルの製造方法、内視鏡、ダイレータ、などの形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】第1実施形態のガイドワイヤの全体構成の縦断面を例示した説明図である。
図2】芯線と外層の斜視図を例示した説明図である。
図3】芯線と外層の縦断面を例示した説明図である。
図4図3のA-A断面を例示した説明図である。
図5図3のB-B断面を例示した説明図である。
図6図2の第1方向から観察されたコアシャフトの説明図である。
図7図2の第2方向から観察されたコアシャフトの説明図である。
図8】第2実施形態のガイドワイヤの芯線と外層の横断面を例示した説明図である。
図9】第3実施形態のガイドワイヤの芯線と外層の横断面を例示した説明図である。
図10】第4実施形態のガイドワイヤの先端部の縦断面を例示した説明図である。
図11】第5実施形態のガイドワイヤの先端部の縦断面を例示した説明図である。
図12】第6実施形態のガイドワイヤの芯線と外層を例示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態のガイドワイヤ1の全体構成の縦断面を例示した説明図である。図1から図7を用いてガイドワイヤ1について説明する。図1から図7で示されているガイドワイヤ1の各構成部材の大きさは例示であり、実際とは異なる尺度で表されている場合がある。以下では、ガイドワイヤ1の各構成部材の、先端側に位置する端部を「先端」と記載し、「先端」を含み先端から後端側に向かって中途まで延びる部位を「先端部」と記載する。同様に、各構成部材の、後端側に位置する端部を「後端」と記載し、「後端」を含み後端から先端側に向かって中途まで延びる部位を「後端部」と記載する。
【0020】
ガイドワイヤ1は、血管や消化器に挿入されて、主にカテーテルなどの他の医療機器を体内に挿入するために用いられる医療機器である。
【0021】
ガイドワイヤ1は、コアシャフト10と、コイル50と、固定部61と、固定部62と、を備えている。コアシャフト10は、芯線20と、外層30と、を有している。外層30は、芯線20の径方向内側に向かって窪む凹部40を有している。
【0022】
芯線20は、ガイドワイヤ1の長手方向に延びる線材である。芯線20は、外層30の内側に設けられており、外層30の先端から後端の間に延びている。
【0023】
芯線20の材料は特に限定されないが、例えば、ステンレス鋼(SUS302、SUS304、SUS316等)、Ni-Ti合金等の超弾性合金、ピアノ線、ニッケル-クロム系合金、コバルト合金、白金、金、タングステン、タンタル等を用いることができる。芯線20の材料には、タンタルを用いることが好ましい。
【0024】
外層30は、芯線20の外周を覆う筒形状の部材である。外層30の外径は、外層30の後端側から先端側に向かって徐々に小さくなっている。外層30には、先端側に、外径が外層30の軸方向において略一定であるストレート部31が設けられている。外層30には、ストレート部31よりも後端側に、外径が外層30の先端側に向かって小さくなるテーパ部32が設けられている。ストレート部31の後端とテーパ部32の先端は接続されている。ストレート部31およびテーパ部32は、芯線20の先端部の外周を覆っている。ストレート部31には、外層30の径方向内側に向かって窪む凹部40が設けられている。凹部40は、外層30の周方向に沿って延伸した溝形状を有しており、外層30の長手方向に沿って複数の凹部40が略等間隔に並んで形成されている。凹部40は、外層30の外周33の周方向における一方の側(第1領域S1)と他方の側(第2領域S2)にそれぞれ並んで形成されている。外層30の外周33の周方向における一方の側に略等間隔に並んでいる凹部40を「凹部41」とも呼び、他方の側に略等間隔に並んでいる凹部40を「凹部42」とも呼ぶ。コアシャフト10は、外層30によって曲げ強度が向上される一方で、外層30に凹部40が設けられていることにより、柔軟性の向上が図られている。凹部40の詳細については後述する。
【0025】
外層30の材料は特に限定されないが、例えば、ステンレス鋼(SUS302、SUS304、SUS316等)、Ni-Ti合金等の超弾性合金、ピアノ線、ニッケル-クロム系合金、コバルト合金、白金、金、タングステン、タンタル等を用いることができる。外層30の材料には、ステンレス鋼を用いることが好ましい。
【0026】
凹部40は、外層30の内側に芯線20を配置した部材を、部材の長軸を中心に回転させながら、外層30の外周33にレーザーを照射することにより形成することができる。凹部40をレーザーにより形成する場合は、芯線20の融点が外層30の融点よりも高い方が好ましい。また、コアシャフト10は、芯線20と外層30が圧延等により接合された、いわゆるクラッド材として形成されてもよい。
【0027】
コイル50は、コアシャフト10の長手方向に沿って螺旋状に巻かれた素線により形成された部材である。コイル50は、外層30の外周33の先端側の一部を覆っている。コイル50の先端部は、固定部61により芯線20および外層30の先端部に接続されている。コイル50の後端部は、固定部62により外層30の外周33に接続されている。
【0028】
<凹部40の詳細>
図2は、芯線20と外層30の斜視図を例示した説明図である。上述のように、凹部40は、外層30の長手方向に沿って複数形成されており、各凹部40は、外層30の外周33の周方向に沿って形成されている。本実施形態では、図2図4図5に示すように、外層30の外周33を周方向の4つの領域(第1領域S1、第2領域S2、第3領域S3、第4領域S4)に分けて説明する。各領域S1~S4は、外周33の周方向に並んでおり、それぞれ、外層30の長手方向に延設している。領域S1~S4は、外周33の周方向において、第1領域S1、第3領域S3、第2領域S2、第4領域S4の順に並んでいる。第1領域S1と第2領域S2は、互いに接しておらず、それぞれ、第3領域S3と第4領域S4に接している。第3領域S3と第4領域S4は、互いに接しておらず、ぞれぞれ、第1領域S1と第2領域S2に接している。凹部40のうち、凹部41は、第1領域S1において、外層30の長手方向に沿って複数が略等間隔かつ互いに平行に並んで形成されている。各凹部41は、第1領域S1から第3領域S3および第4領域S4にわたって形成され、両端部410が第3領域S3と第4領域S4にそれぞれ位置している。凹部40のうち、凹部42は、第2領域S2において、外層30の長手方向に沿って複数が略等間隔かつ互いに平行に並んで形成されている。各凹部42は、第2領域S2から第3領域S3および第4領域S4にわたって形成され、両端部420が第3領域S3と第4領域S4にそれぞれ位置している。
【0029】
凹部41と凹部42は、第3領域S3と第4領域S4において、コアシャフト10の長手方向に沿って交互に形成されている。言い換えると、外層30の長手方向において、隣接する凹部41の間に、凹部42が形成されている。第1領域S1では、凹部41のみが設けられており、第2領域S2では、凹部42のみが設けられている。このことから、第3領域S3と第4領域S4を構成するコアシャフト10は、第1領域S1および第2領域S2を構成するコアシャフト10と比較して、凹部40が占める割合が多く、外層30の体積が小さい。第3領域S3や第4領域S4に含まれる外層30の体積が、第1領域S1や第2領域S2に含まれる外層30の体積よりも小さいため、コアシャフト10の先端部は、第3領域S3や第4領域S4が位置する方向に曲がりやすい。また一方で、本実施形態においては、第1領域S1と第2領域S2に含まれる外層30の体積が、第3領域S3や第4領域S4に含まれる外層30の体積よりも大きいため、コアシャフト10の長軸方向の引張強度の向上を図ることができる。
【0030】
第1領域S1において、隣接する凹部41の間の距離(外層30の長手方向の最短距離)を「距離L1」と呼び、第2領域S2において、隣接する凹部42の間の距離を「距離L2」と呼ぶ。凹部41は、外層30の長手方向において、等間隔で互いに平行となるように形成されている。つまり、隣接する凹部41の間の距離L1は、略同一である。凹部42は、外層30の長手方向において、等間隔で互いに平行となるように形成されている。つまり、隣接する凹部42の間の距離L2は、略同一である。また、第3領域S3と第4領域S4において、、隣接する凹部41と凹部42の間の距離を「距離L3」と呼ぶ。外層30の長手方向において、隣接する凹部41と凹部42は等間隔に形成されている。つまり、隣接するそれぞれの凹部41と凹部42の距離L3は略同一である。
【0031】
第1領域S1を正面から見た方向であって、外層30のコアシャフト10の径方向に沿った方向を「第1方向V1」と呼び、第3領域S1を正面から見た方向であって、コアシャフト10の径方向に沿い、かつ、第1方向V1に直交する方向を「第2方向V2」と呼ぶ。第1方向V1から観察されたコアシャフト10の説明図を図6に例示し、第2方向V2から観察されたコアシャフト10の説明図を図7に例示する。図6および図7については後述する。
【0032】
図3は、芯線20と外層30の縦断面を例示した説明図である。本実施形態において、凹部(41、42)は、外層30を貫通するスリットである。凹部41の、外層30の外周33および内周34の間に延びる側壁を「側壁411」と呼び、凹部42の、外層30の外周33および内周34の間に延びる側壁を「側壁421」と呼ぶ。側壁(411、421)は、芯線20の軸C1に対して略垂直に形成されている。凹部41の、外層30の径方向における距離を「深さT1」と呼び、凹部42の、外層30の径方向における距離を「深さT2」と呼ぶ。凹部41の深さT1および凹部42の深さT2は、外層30の肉厚と略同一である。また、凹部41の、外層30の長手方向における長さを「幅W1」と呼び、凹部42の、外層30の長手方向における長さを「幅W2」と呼ぶ。凹部41の幅W1は、深さT1よりも小さく、凹部42の幅W2は、深さT2よりも小さい。
【0033】
図4は、図3のA-A断面を例示した説明図である。図4においては、凹部41の、外層30の周方向における長さを、「周方向長さCL1」と呼ぶ。凹部41の周方向長さCL1は、外層30の外周33の周方向長さの半分よりも大きい。言い換えれば、凹部41の一方の端部410と芯線20の軸C1とを結ぶ線と、凹部41の他方の端部410と芯線20の軸C1とを結ぶ線と、がなす角αが180°<α<360°となっている。
【0034】
図5は、図3のB-B断面を例示した説明図である。図5においては、凹部42の、外層30の周方向における長さを、「周方向長さCL2」と呼ぶ。凹部42の周方向長さCL2は、外層30の外周の周方向長さの半分よりも大きい。言い換えれば、凹部42の一方の端部420と芯線20の軸C1とを結ぶ線と、凹部42の他方の端部420と芯線20の軸C1とを結ぶ線と、がなす角βが180°<β<360°となっている。
【0035】
上述のように、凹部41の周方向長さCL1(図4)と、凹部42の周方向長さCL2(図5)は、外層30の外周33の周方向の長さの半分の長さよりも大きい。これにより、上述のように、凹部41と凹部42の両方が設けられた第3領域S3と第4領域S4が形成されている。
【0036】
図6は、図2の第1方向V1から観察されたコアシャフト10の説明図である。第1方向V1からコアシャフト10を観察すると、芯線20(図1)と、凹部40(41、42)と、外層30の外周33とが観察されるが、図6においては芯線20の記載は省略されている。第1方向V1から観察されたコアシャフト10における、凹部40(41、42)の見かけの面積を「面積As1」と呼び、第1方向V1における外層30の外周33の投影面積を、「面積Ac1」と呼ぶ。図6中には、凹部41の面積As1の一部と、外層30の面積Ac1の一部が示されている。ここで、第1方向V1から観察されたコアシャフト10の外周の見かけの面積を、凹部40(41、42)の面積As1の合計「As1t」と、外層30の投影面積Ac1の合計「Ac1t」と、の合計(As1t+Ac1t)とする。この場合、第1方向V1から観察されたコアシャフト10の外周に対する凹部41の割合R1は、
R1=As1t/(As1t+Ac1t)
により表すことができる。
【0037】
図7は、図2の第2方向V2から観察されたコアシャフト10の説明図である。第2方向V2からコアシャフト10を観察すると、芯線20(図1)と、凹部40(41、42)、と外層30の外周33とが観察されるが、図7においては芯線20の記載は省略されている。第2方向V2から観察されたコアシャフト10における、凹部40(41、42)の見かけの面積を「面積As2」と呼び、外層30の外周33の投影面積を、「面積Ac2」と呼ぶ。図7中には、凹部40(41、42)の面積As2の一部と、外層30の面積Ac2の一部が示されている。ここで、第2方向V2から観察されたコアシャフト10の外周の見かけの面積を、凹部40(41、42)の面積As2の合計「As2t」と、外層30の投影面積Ac2の合計「Ac2t」と、の合計(As2t+Ac2t)とする。この場合、第2方向V2から観察されたコアシャフト10の外周に対する凹部40(41、42)の割合R2は、
R2=(As2t)/(As2t+Ac2t)
により表すことができる。
【0038】
割合R1と割合R2は異なる。つまり、R1≠R2である。具体的には、割合R2は、割合R1よりも大きい。これにより、コアシャフト10の先端部は、第2方向V2に沿う方向に曲がりやすい。
【0039】
以上説明した本実施形態のガイドワイヤ1によれば、芯線20の外周を外層30により覆うことで、コアシャフト10の曲げ強度の向上を図ることができる。さらに、外層30に凹部40を設けることで、曲げ強度を維持しつつ、コアシャフト10の柔軟性の向上を図ることができる。これらにより、先端部の柔軟性と曲げ強度が良好なガイドワイヤ1を提供することができる。ガイドワイヤ1は、柔軟性が良好であることで、湾曲する血管内を容易に進むことができ、さらに、曲げ強度が良好なことで、湾曲する血管に挿入された場合においても、曲げ破壊によってガイドワイヤ1が破損する可能性を低減することができる。
【0040】
凹部40は、外層30を貫通している。これにより、コアシャフト10の柔軟性をより向上することができる。
【0041】
凹部40は、ストレート部31に設けられている。これにより、ガイドワイヤ1の先端側の柔軟性をより向上することができる。
【0042】
<第2実施形態>
図8は、第2実施形態のガイドワイヤ1Bの芯線20と外層30Bの横断面を例示した説明図である。ガイドワイヤ1Bは、第1実施形態のガイドワイヤ1と比較して、凹部41Bの周方向長さCL1bが異なる。ガイドワイヤ1Bの構成のうち、ガイドワイヤ1と共通する部分については説明を省略する。
【0043】
本実施形態においては、凹部41Bの周方向長さCL1bは、外層30Bの外周33の周方向長さの半分と略同一である。すなわち、凹部41Bの一方の端部410と芯線20の軸C1とを結ぶ線と、凹部41Bの他方の端部410と芯線20の軸C1とを結ぶ線と、がなす角α2が、α2≒180°となっている。また、図示されていないが、凹部42Bの周方向長さも、外層30Bの外周33の周方向長さの半分と略同一である。すなわち、凹部42Bの一方の端部420と芯線20の軸C1とを結ぶ線と、凹部42Bの他方の端部420と芯線20の軸C1とを結ぶ線と、がなす角βが、β≒180°となっている。これにより、外層30の長手方向において、凹部41Bと凹部42Bの両方が設けられた領域(第3領域S3および第4領域S4)は、コアシャフト10の長手方向に沿う直線状となる。ガイドワイヤ1Bにおいても、先端部の柔軟性と曲げ強度が良好なガイドワイヤ1Bを提供することができる。なお、角α2と角βは、0°<α<180°かつ0°<β<180°であってもよい。この場合、外層30の長手方向において、凹部41Bと凹部42Bの両方が設けられた領域(第3領域S3および第4領域S4)は存在せず、代わりに、凹部41Bと凹部42Bの両方とも存在しない領域(第5領域および第6領域)が存在する。この場合であっても、コアシャフト10の先端部を、第1方向V1で曲げたときと第2方向V2で曲げたときとで、コアシャフト10の曲がりやすさが異なる構成とすることができる。
【0044】
<第3実施形態>
図9は、第3実施形態のガイドワイヤ1Cの芯線20と外層30Cの横断面を例示した説明図である。ガイドワイヤ1Cは、第1実施形態のガイドワイヤ1と比較して、凹部(43、44、45、46)が、外層30Cの長手方向に沿って直線状に設けられている点で異なる。ガイドワイヤ1Cの構成のうち、ガイドワイヤ1と共通する部分については説明を省略する。
【0045】
外層30Cには、四つの凹部(43、44、45、46)が設けられている。それぞれの凹部(43、44、45、46)は、外層30Cの長手方向に沿って直線状に設けられている。外層30Cの横断面において、凹部43と凹部45は、芯線20の軸C1に対して180度対向した位置に設けられており、凹部44と凹部46は、芯線20の軸C1に対して180度対向した位置に設けられている。ガイドワイヤ1Cにおいても、先端部の柔軟性と曲げ強度が良好なガイドワイヤ1Cを提供することができる。
【0046】
<第4実施形態>
図10は、第4実施形態のガイドワイヤ1Dの先端部の縦断面を例示した説明図である。ガイドワイヤ1Dは、第1実施形態のガイドワイヤ1と比較して、凹部40Dが、外層30Dのテーパ部32Dに設けられている点で異なる。ガイドワイヤ1Dの構成のうち、ガイドワイヤ1と共通する部分については説明を省略する。
【0047】
凹部40Dは、ストレート部31およびテーパ部32Dに設けられている。これによって、テーパ部32Dを含めたガイドワイヤ1Dの先端部の柔軟性の向上を図ることができる。ガイドワイヤ1Dにおいても、先端部の柔軟性と曲げ強度が良好なガイドワイヤ1Dを提供することができる。
【0048】
<第5実施形態>
図11は、第5実施形態のガイドワイヤ1Eの先端部の縦断面を例示した説明図である。ガイドワイヤ1Eは、第1実施形態のガイドワイヤ1と比較して、ストレート部31Eの先端側に設けられた凹部(41E、42E)の数が、ストレート部31Eの後端側に設けられた凹部(41E、42E)の数よりも多いという点で異なる。ガイドワイヤ1Eの構成のうち、ガイドワイヤ1と共通する部分については説明を省略する。
【0049】
凹部(41E、42E)は、外層30Eのストレート部31Eに設けられており、ストレート部31Eの後端側から先端側に向かって、凹部(41E、42E)の数が多くなるように形成されている。ストレート部31Eの先端側に設けられた凹部41Eの距離L1eの方が、ストレート部31Eの後端側に設けられた凹部41Eの距離L1eよりも小さい。また、ストレート部31Eの先端側に設けられた凹部42Eの距離L2eの方が、ストレート部31Eの後端側に設けられた凹部42Eの距離L2eよりも小さい。また、ストレート部31Eの先端側において隣接する凹部41Eと凹部42Eの距離L3eの方が、ストレート部31Eの後端側において隣接する凹部41Eと凹部42Eの距離L3eよりも小さい。凹部(41E、42E)がストレート部31Eの先端側ほど多く設けられていることにより、ストレート部31Eの先端側の体積は、ストレート部31Eの後端側の体積よりも小さい。これにより、ガイドワイヤ1Eは、より先端側が柔軟な構成となっている。ガイドワイヤ1Eにおいても、先端部の柔軟性と曲げ強度が良好なガイドワイヤ1Eを提供することができる。
【0050】
本実施形態において示されるように、距離L1e、距離L2e、距離L3eは、外層30の長手方向において一定でなくてもよい。例えば、ストレート部31Eの後端側に設けられた凹部41Eの距離L1eの方が、ストレート部31Eの先端側に設けられた凹部41Eの距離L1eより小さくてもよい。
【0051】
<第6実施形態>
図12は、第6実施形態のガイドワイヤ1Fの芯線20と外層30Fを例示した説明図である。ガイドワイヤ1Fは、第1実施形態のガイドワイヤ1と比較して、凹部(41F、42F)が、外層30Fを貫通してない点で異なる。ガイドワイヤ1Fの構成のうち、ガイドワイヤ1と共通する部分については説明を省略する。
【0052】
凹部41Fおよび凹部42Fは、外層30Fを貫通していない。つまり、凹部41の深さT1fおよび凹部42の深さT2fは、外層30Fの肉厚よりも小さい。ガイドワイヤ1Fにおいても、先端部の柔軟性と曲げ強度が良好なガイドワイヤ1Fを提供することができる。
【0053】
<変形例>
本発明は上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0054】
<変形例1>
第1実施形態から第6実施形態のガイドワイヤ(1、1B、1C、1D、1E、1F)において、芯線20の外径は、芯線20の長手方向に沿って略一定である。しかし、芯線20の外径は、芯線20の長手方向に沿って略一定でなくてもよく、例えば、芯線20の外径は、芯線20の先端側から後端側に向かって大きくなってもよい。
【0055】
<変形例2>
第1実施形態から第6実施形態のガイドワイヤ(1、1B、1C、1D、1E、1F)において、芯線20の外周は、外層(30、30B、30C、30D、30E、30F)により覆われているが、芯線20の一部が外層(30、30B、30C、30D、30E、30F)により覆われていなくてもよい。例えば、芯線20の後端部の外周が外層(30、30B、30C、30D、30E、30F)に覆われていなくてもよい。
【0056】
<変形例3>
第1実施形態から第6実施形態のガイドワイヤ(1、1B、1C、1D、1E、1F)は、外層(30、30B、30C、30D、30E、30F)の外周を覆う樹脂製の薄膜を有していてもよい。
【符号の説明】
【0057】
1…ガイドワイヤ
10…コアシャフト
20…芯線
30…外層
31…ストレート部
32…テーパ部
40…凹部
41…凹部
42…凹部
410…凹部の端部
411…凹部の側壁
420…凹部の端部
421…凹部の側壁
50…コイル
60…固定部
61…固定部
C1…芯線の軸
CL1…凹部の周方向の長さ
CL2…凹部の周方向の長さ
L1…隣接する凹部の距離
L2…隣接する凹部の距離
L3…隣接する凹部の距離
V1…コアシャフトの径方向に沿う方向
V2…コアシャフトの径方向に沿う方向
S1…第1領域
S2…第2領域
S3…第3領域
S4…第4領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12