(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024104880
(43)【公開日】2024-08-06
(54)【発明の名称】被覆材付き板状体および被覆材付き板状体の被覆材分離方法
(51)【国際特許分類】
B29C 65/48 20060101AFI20240730BHJP
B29B 17/02 20060101ALI20240730BHJP
【FI】
B29C65/48
B29B17/02 ZAB
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023009287
(22)【出願日】2023-01-25
(71)【出願人】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】弁理士法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中嶌 亮
【テーマコード(参考)】
4F211
4F401
【Fターム(参考)】
4F211AA03
4F211AA07
4F211AA11
4F211AA15
4F211AD16
4F211AF01
4F211AF02
4F211AG03
4F211AH18
4F211AR13
4F211TA03
4F211TC01
4F211TD11
4F211TN42
4F401AA08
4F401AA10
4F401AA13
4F401AA26
4F401AC01
4F401AD01
4F401AD06
4F401AD09
4F401BA13
4F401CA31
4F401CA59
4F401CB03
(57)【要約】
【課題】リサイクル利用時に基材の回収率が高い被覆材付き板状体および被覆材付き板状体の被覆材分離方法を提供する。
【解決手段】板状をなす基材21と、前記基材21に対しその一面21A側を覆うように熱可塑性接着剤28を介して貼付された被覆材30とを備え、前記基材21と前記被覆材30との間に、マイクロ波を照射することで発熱し、前記熱可塑性接着剤28を昇温させるとともに軟化させるマイクロ波吸収材25が設けられている被覆材付き板状体11。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状をなす基材と、前記基材に対しその一面側を覆うように熱可塑性接着剤を介して貼付された被覆材とを備え、
前記基材と前記被覆材との間に、マイクロ波を照射することで発熱し、前記熱可塑性接着剤を昇温させるとともに軟化させるマイクロ波吸収材が設けられている被覆材付き板状体。
【請求項2】
前記マイクロ波吸収材は帯状をなし、前記基材と前記被覆材との間において縞状に配置されている請求項1に記載の被覆材付き板状体。
【請求項3】
前記マイクロ波吸収材は、前記基材のうち前記被覆材と対向する対向面に設けられた凹部に埋め込まれる形で設けられている請求項2に記載の被覆材付き板状体。
【請求項4】
前記基材のうち前記被覆材により覆われる面の反対面に、複数の前記マイクロ波吸収材の並び方向に延びる切欠きが設けられている請求項2または請求項3に記載の被覆材付き板状体。
【請求項5】
前記被覆材のうち少なくとも前記基材に対向する面は不織布により構成されている請求項1または請求項2記載の被覆材付き板状体。
【請求項6】
板状をなす基材と、前記基材に対しその一面側を覆うように熱可塑性接着剤を介して貼付された被覆材と、前記基材と前記被覆材との間に設けられたマイクロ波吸収材と、を備える被覆材付き板状体の前記基材から前記被覆材を分離する被覆材分離方法であって、
前記被覆材付き板状体にマイクロ波を照射することで前記マイクロ波吸収材を発熱させ、その熱により前記熱可塑性接着剤を昇温させるとともに軟化させることで、前記基材から前記被覆材を分離可能とする被覆材付き板状体の被覆材分離方法。
【請求項7】
前記マイクロ波吸収材は帯状をなし、前記基材と前記被覆材との間において縞状に配置されており、
前記熱可塑性接着剤が軟化した状態で、前記マイクロ波吸収材を前記基材と前記被覆材との間から引き抜く請求項6に記載の被覆材付き板状体の被覆材分離方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示される技術は、被覆材付き板状体および被覆材付き板状体の被覆材分離方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば板状をなす乗物用内装部材に表皮を貼り合わせることが行われている。例えば特許文献1には、基材の表面に表皮を接着剤により貼り合わせた車両用の成形天井が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年では様々な製品の構成部材をリサイクルすることが求められている。特許文献1に記載の成形天井は、基材を同一樹脂材料からなる表裏面のソリッド層とその中側のフォーム層とで構成し、表皮を基材から引き剥がす際に脆弱なフォーム層の一部を破壊することで、表皮を基材からソリッド層とともに引き剥がす構成とされている。このような構成により、基材から完全に接着剤および表皮を分離し、不純物のない基材を回収できるとしている。
【0005】
しかし上述した従来の構成では、表皮を剥離する際に基材の一部(ソリッド層およびフォーム層の一部)が表皮とともに剥離され、リサイクルできる基材の量が減少するため、基材を無駄なくリサイクルしたいという要望がある。また、基材の構成が、同一樹脂からなるフォーム層およびソリッド層からなるものに限定され、その他構成の基材には適用できないという問題がある。
【0006】
本明細書に開示される技術は上記のような事情に鑑みてなされたものであって、リサイクル利用時に基材の回収率が高い被覆材付き板状体および被覆材付き板状体の被覆材分離方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記事情に鑑みて完成された本明細書に開示の技術は、板状をなす基材と、前記基材に対しその一面側を覆うように熱可塑性接着剤を介して貼付された被覆材とを備え、前記基材と前記被覆材との間に、マイクロ波を照射することで発熱し、前記熱可塑性接着剤を昇温させるとともに軟化させるマイクロ波吸収材が設けられている被覆材付き板状体である。
【0008】
上記構成によれば、被覆材付き板状体にマイクロ波を照射するだけで、基材と被覆材とを容易に分離することができる。つまり、マイクロ波が照射されると、マイクロ波吸収材がマイクロ波を吸収し、発熱する。そして、マイクロ波吸収材の発熱により熱可塑性接着剤が昇温して軟化し、その接着性が低下する。もって、基材と被覆材とを容易に分離することが可能となり、リサイクル利用時の基材の回収率を向上させることができる。また、リサイクル可能とすることで、焼却処理時に発生する二酸化炭素を大幅に減少させることができるとともに、廃棄物処理費用も抑制することができる。
【0009】
また、マイクロ波吸収材を利用して熱可塑性接着剤を軟化させることができるから、熱可塑性接着材を軟化させるために被覆材付き板状体全体を加熱する構成と比較して、短時間で基材と被覆材との界面を局所的に昇温させることが可能となり、効率性に優れる。
【0010】
さらに、マイクロ波吸収材に含まれる発熱物質に高強度材を用いる場合には、マイクロ波吸収材自体が補強材としても機能するため、被覆材付き板状体の剛性が向上する。
【0011】
前記マイクロ波吸収材は帯状をなし、前記基材と前記被覆材との間において縞状に配置されていてもよい。
【0012】
上記構成によれば、マイクロ波の照射により熱可塑性接着剤が軟化した状態において、基材と被覆材とを分離する前に、基材と被覆材との間からマイクロ波吸収材を引き抜くことができる。これにより、基材と被覆材との間の接着面積が減少し、もって、両者の分離がより容易になる。
【0013】
前記マイクロ波吸収材は、前記基材のうち前記被覆材と対向する対向面に設けられた凹部に埋め込まれる形で設けられていてもよい。
【0014】
上記構成によれば、被覆材付き板状体の使用時に、被覆材の表面にマイクロ波吸収材による影響が及ぶことを抑制し、被覆材の表面を美しく保つことができる。また、マイクロ波吸収材を引き抜いた際に、基材と表皮材との間の接着面積を確実に減少させることができる。
【0015】
前記基材のうち前記被覆材により覆われる面の反対面に、複数の前記マイクロ波吸収材の並び方向に延びる切欠きが設けられていてもよい。
【0016】
上記構成によれば、切欠きを利用して基材の一部を除去することにより、マイクロ波吸収材を露出させることができるから、基材と被覆材との間からマイクロ波吸収材を引き抜く際に引き抜き作業が容易になる。
【0017】
前記被覆材のうち少なくとも前記基材に対向する面は不織布により構成されていてもよい。
【0018】
上記構成によれば、熱可塑性接着剤が被覆材側に浸み込み易く、被覆材を基材から分離する際に基材側に熱可塑性接着剤が残留することを抑制できる。
【0019】
また、本明細書に開示される他の技術は、板状をなす基材と、前記基材に対しその一面側を覆うように熱可塑性接着剤を介して貼付された被覆材と、前記基材と前記被覆材との間に設けられたマイクロ波吸収材と、を備える被覆材付き板状体の前記基材から前記被覆材を分離する分離方法であって、前記被覆材付き板状体にマイクロ波を照射することで前記マイクロ波吸収材を発熱させ、その熱により前記熱可塑性接着剤を昇温させるとともに軟化させることで、前記基材から前記被覆材を分離可能とするものである。
【0020】
また、前記マイクロ波吸収材は帯状をなし、前記基材と前記被覆材との間において縞状に配置されており、前記熱可塑性接着剤が軟化した状態で、前記マイクロ波吸収材を前記基材と前記被覆材との間から引き抜いてもよい。
【発明の効果】
【0021】
本明細書に開示する技術によれば、リサイクル利用時に基材の回収率が高い被覆材付き板状体および被覆材付き板状体の被覆材分離方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図6】トリムボードを射出成形する工程を示す模式図
【
図7】トリムボードにマイクロ波を照射する状態を示す断面図
【
図8】トリムボードからマイクロ波吸収材を引き抜いた状態を示す断面図
【
図9】基材から表皮材を引き剥がす状態を示す断面図
【
図10】基材から表皮材を引き剥がした状態を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0023】
一実施形態を
図1から
図10によって説明する。本実施形態では、車両用のドアトリム10を構成するトリムボード(被覆材付き板状体の一例)11について、その構成と製造方法、および分離方法について例示する。
【0024】
図1に示すように、ドアトリム10は、自動車等の車両用ドアの車室内面を構成するものであって、略平板状のトリムボード11を主体として構成されている。このトリムボード11は、複数のトリムボード部材が互いに組み付けられることで構成されている。
【0025】
トリムボード11は、例えばポリプロピレンやABS等の合成樹脂材料などによって形成された板状の基材21と、基材21の車室内面21Aを覆う表皮材(被覆材の一例)30と、を備えている(
図2参照)。なお、基材21は合成樹脂材料に限定されず、例えば、木質系材料(ケナフ等の靭皮植物繊維など)と合成樹脂とを混合したもの等であってもよい。
【0026】
表皮材30は、
図2に示すように、素材の異なる3種のシートが積層された積層シートから構成されている。具体的には、表皮材30は、オレフィン系エラストマー、ポリ塩化ビニル等の合成樹脂材料や本革等からなる表面層31と、連続気泡を含むスポンジ状のウレタンフォーム等からなるクッション層32と、例えば不織布からなる裏基布33とがこの順に一体に積層された積層シートによって構成されている。この積層シートからなる表皮材30は、基材21に対して一度の貼着作業で済むため、トリムボード製造時のサイクルタイムの短縮を図ることができる。表皮材30は可撓性を有しており、例えばオス引き真空成形法によって基材21の車室内面21Aに倣う形に成形され、接着剤28を介して基材21に貼り付けられている。
【0027】
本実施形態では、熱可塑性樹脂からなる接着剤28を使用している。具体的には、接着剤28に用いられる熱可塑性樹脂としては、例えば、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)及び低密度ポリエチレン(LDPE)等のポリオレフィン系樹脂等を挙げることができる。
【0028】
本実施形態において、基材21と表皮材30との間には、マイクロ波吸収材25が設けられている。マイクロ波吸収材25は、マイクロ波が照射された際にマイクロ波に感応して熱を発する物質を含むものであって、特に本実施形態におけるマイクロ波吸収材25は、マイクロ波を照射することで、上述した接着剤28を昇温させるとともに軟化させ、基材21と表皮材30とを分離可能とする温度まで、より好ましくは分離可能とする温度より高い温度まで発熱可能な物質を含むものである。なお、軟化とは、溶融した状態を含む場合がある。本実施形態では、発熱物質としてのカーボンファイバーが樹脂バインダーとしてのポリプロピレン中に分散されたマイクロ波吸収材25を使用している。
【0029】
本実施形態では、マイクロ波吸収材25は、基材21の車室内面21A側において基材21に食い込む形で縞状に配置されている。より詳細には、
図3および
図4に示すように、基材21の車室内面21Aには溝状に窪む複数の凹部22が等間隔に並んで設けられており、複数の長尺な帯状のマイクロ波吸収材25がこれらの凹部22内に個々に収容される形で埋め込まれている。またマイクロ波吸収材25の車室内面25Aと基材21の凹部22以外の車室内面21Aとは、面一とされている(
図4参照)。このように一面側にマイクロ波吸収材25が一体に設けられた基材21を、以下、マイクロ波吸収材付き基材20と称することとする。マイクロ波吸収材付き基材20と表皮材30とは、上述した熱可塑性樹脂からなる接着剤28により接着されている。
【0030】
次に、トリムボード11の製造方法について説明する。まず、基材21が成形される。基材21は、ポリプロピレン等の合成樹脂材料、あるいは、合成樹脂材料に繊維(ケナフ等の靭皮植物繊維など)を混合した材料等で、例えば射出成形によって成形される。具体的には、
図6に示すように、上型41と下型45とからなる一対の成形型40を互いに近接させ、型閉じする。そして、上型41と下型45との間に設けられた成形空間に対し、上型41に設けられた射出装置43から合成樹脂材料を射出する。射出された合成樹脂材料は、成形空間を充満することで、基材21が成形される。なお、基材21の意匠面側(車室内面21A側)は、下型45の成形面46によって成形される。
【0031】
本実施形態においては、基材21の射出成形を行う際に、マイクロ波吸収材25をインサート成形する。つまり、
図6に示すように、長尺な帯状のマイクロ波吸収材25を下型45の成形面46の所定の位置に縞状に設置した状態で型閉じし、上型41から溶融樹脂を型内に充填させることで、基材21の射出成形を行う。これにより、上述したようにマイクロ波吸収材25が基材21に埋め込まれた形態のマイクロ波吸収材付き基材20が得られる(
図4参照)。
【0032】
次に、上述したように作製されたマイクロ波吸収材付き基材20のうちマイクロ波吸収材25が設けられた面(車室内面21Aおよび25A)全体に、上述した熱可塑性の接着剤28を塗布する。接着剤28は、例えば、スプレーにより塗布することができる。
【0033】
そしてその後、接着剤28を介して表皮材30をマイクロ波吸収材付き基材20に貼付する。この時、表皮材30の裏基布33とマイクロ波吸収材25とが対向するように、表皮材30及びマイクロ波吸収材付き基材20の向きを整える。このようにして、マイクロ波吸収材付き基材20に接着剤28を介して表皮材30が貼付されたトリムボード11が完成する。
【0034】
次に、表皮材30を基材21から分離する分離方法について説明する。基材21から表皮材30を分離する際には、まず、トリムボード11に対して表皮材30側からマイクロ波を照射する(
図7参照)。すると、マイクロ波吸収材25がマイクロ波を吸収し、発熱する。そしてこの熱により、マイクロ波吸収材25と表皮材30との間に設けられた接着剤28が軟化あるいは溶融し、接着性能が低下した状態となる。具体的には、基材21と表皮材30とが分離可能な程度に接着性が低下した状態となる。なおマイクロ波は、基材21の車室外面21B側から照射してもよい。
【0035】
この状態において、基材21と表皮材30との間に介在しているマイクロ波吸収材25をトリムボード11の端から引き抜く(
図8参照)。なお、基材21には、
図3および
図5に示すように、その一端部付近において複数本の凹部22の並び方向(
図3の左右方向)に沿って延びるとともに凹部22の底部まで到達する断面V字形状の切欠き23が、車室外面21B側から切り欠く形で設けられている。マイクロ波吸収材25を引き抜く際には、この切欠き23を利用して基材21の端部を除去し、マイクロ波吸収材25の端部を露出させることにより、マイクロ波吸収材25を掴むことが可能となる。またこの時マイクロ波吸収材25の車室内面25Aを覆っている接着剤28は、上述したように軟化あるいは溶融した状態とされ、接着性が低下しているから、マイクロ波吸収材25の引き抜きが可能な状態とされている。
【0036】
マイクロ波吸収材25がトリムボード11から引き抜かれることにより、表皮材30の基材21側に対する接着面積が減少し、表皮材30の基材21からの剥離がより容易な状態となる。もって、例えば
図9に示すように、端から表皮材30を容易に引き剥がすことができる。
【0037】
なおこの時、表皮材30のうち基材21側に配置された裏基布33は不織布により構成されているから、接着剤28は裏基布33に浸み込んだ状態とされており、大半が表皮材30とともに基材21から引き剥がされる。基材21に残留した接着剤28は、その後基材21の表面を研磨したり接着剤除去剤を使用することにより、容易に除去することができる。
【0038】
次に、作用効果について説明する。本実施形態のトリムボード11は、板状をなす基材21と、基材21に対しその一面側を覆うように熱可塑性の接着剤28を介して貼付された表皮材30とを備え、基材21と表皮材30との間に、マイクロ波を照射することで発熱し、接着剤28を昇温させるとともに軟化させるマイクロ波吸収材25が設けられている。
【0039】
上記構成によれば、トリムボード11にマイクロ波を照射するだけで、基材21と表皮材30とを容易に分離することができる。つまり、マイクロ波が照射されると、マイクロ波吸収材25がマイクロ波を吸収し、発熱する。そして、マイクロ波吸収材の発熱により接着剤28が昇温して軟化し、その接着性が低下する。もって、基材21と表皮材30とを容易に分離することが可能となり、リサイクル利用時の基材21の回収率を向上させることができる。また、リサイクル可能とすることで、焼却処理時に発生する二酸化炭素を大幅に減少させることができるとともに、廃棄物処理費用も抑制することができる。
【0040】
また、マイクロ波吸収材25を利用して接着剤28を軟化させることができるから、接着材28を軟化させるためにトリムボード11全体を加熱する構成と比較して、短時間で基材21と表皮材30との界面を局所的に昇温させることが可能となり、効率性に優れる。
【0041】
さらに、マイクロ波吸収材25に含まれる発熱物質(本実施形態ではカーボンファイバー)に高強度材を用いる場合には、マイクロ波吸収材25自体が補強材としても機能するため、トリムボード11の剛性が向上する。
【0042】
また、マイクロ波吸収材25は帯状をなし、基材21と表皮材30との間において縞状に配置されている。
【0043】
上記構成によれば、マイクロ波の照射により接着剤28が軟化あるいは溶融した状態において、基材21と表皮材30とを分離する前に、基材21と表皮材30との間からマイクロ波吸収材を引き抜くことができる。これにより、基材21と表皮材30との間の接着面積が減少し、もって、両者の分離がより容易になる。
【0044】
また、マイクロ波吸収材25は、基材21のうち表皮材と対向する車室内面21Aに設けられた凹部22に埋め込まれる形で設けられている。
【0045】
上記構成によれば、トリムボード11の使用時に、表皮材30の表面にマイクロ波吸収材25が浮き出るような影響が及ぶことを抑制し、表皮材30の表面を美しく保つことができる。また、マイクロ波吸収材25を引き抜いた際に、基材21と表皮材30との間の接着面積を確実に減少させることができる。
【0046】
また、基材21のうち表皮材30により覆われる車室内面21Aの反対の車室外面21Bに、複数のマイクロ波吸収材25の並び方向に延びる切欠き23が設けられている。
【0047】
上記構成によれば、切欠き23を利用して基材21の一部を除去することにより、マイクロ波吸収材25を露出させることができるから、基材21と表皮材30との間からマイクロ波吸収材25を引き抜く際に引き抜き作業が容易になる。
【0048】
また、表皮材30のうち基材21に対向する面(裏基布33)は不織布により構成されている。
【0049】
上記構成によれば、接着剤28が表皮材30側に浸み込み易く、表皮材30を基材21から分離する際に基材21側に接着剤28が残留することを抑制できる。
【0050】
また、本実施形態は、板状をなす基材21と、基材21に対し車室内面21Aを覆うように熱可塑性の接着剤28を介して貼付された表皮材30と、基材21と表皮材30との間に設けられたマイクロ波吸収材25と、を備えるトリムボード11の基材21から表皮材30を分離する分離方法であって、トリムボード11にマイクロ波を照射することでマイクロ波吸収材25を発熱させ、その熱により熱可塑性の接着剤28を昇温させるとともに軟化あるいは溶融させることで、基材21から表皮材30を分離可能とするものである。
【0051】
また、マイクロ波吸収材25は帯状をなし、基材21と表皮材30との間において縞状に配置されており、接着剤28が軟化した状態で、マイクロ波吸収材25を基材21と表皮材30との間から引き抜く。
【0052】
<他の実施形態>
本明細書に開示される技術は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も技術的範囲に含まれる。
【0053】
(1)上記実施形態では、マイクロ波吸収材25としてカーボンファイバーがポリプロピレン中に分散されたものを例示したが、マイクロ波吸収材はこれに限るものではなく、マイクロ波により基材と被覆材とが分離可能な程度に接着剤を軟化させることができる温度まで発熱するものであればよい。
【0054】
(2)上記実施形態では、基材21と表皮材30との間に帯状のマイクロ波吸収材25が縞状に配置される形態を示したが、マイクロ波吸収材は、基材全体を覆うことが可能なシート状としたり、複数の島状に配置する等、上記実施形態に限るものでない。
【0055】
(3)また、マイクロ波吸収材25が縞状に配置される場合でも、基材21の凹部22に埋め込まれる形態に限らず、平坦な基材の表面に配置される構成としてもよい。
【0056】
(4)上記実施形態では、基材21と表皮材30とを分離させる前にマイクロ波吸収材25を引き抜く形態を示したが、マイクロ波吸収材を引き抜かず、残留させた状態で、基材と被覆材とを分離させてもよい。
【0057】
(5)さらに、マイクロ波吸収材は、基材および被覆材の間において、基材側でなく被覆材側に接して設ける形態としたり、接着剤中に浮いた形で設ける形態とすることもできる。
【0058】
(6)基材21に設けた切欠き23は省略してもよい。
【0059】
(7)上記実施形態では、基材21として合成樹脂材料を使用した場合の構成および製造方法について例示したが、基材としてケナフ等の繊維を混合する場合には、例えばプレボードをプレス成形することによってトリムボードを作製することができる。
【0060】
(8)上記実施形態では、表皮材30が3層構造である形態を示したが、表皮材の構成は上記実施形態に限るものでなく、任意に変更可能である。また、表皮材のうち基材に対向する面が不織布により構成されていない形態も技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0061】
11:トリムボード(被覆材付き板状体)、20:マイクロ波吸収材付き基材、21:基材、21A:車室内面(対向面)、21B:車室外面(反対面)、22:凹部、23:切欠き、25:マイクロ波吸収材、28:接着剤(熱可塑性接着剤)、30:表皮材(被覆材)、31:表面層、32:クッション層、33:裏基布(不織布)