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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024104886
(43)【公開日】2024-08-06
(54)【発明の名称】コイル部品
(51)【国際特許分類】
   H01F 27/29 20060101AFI20240730BHJP
   H01F 17/04 20060101ALI20240730BHJP
【FI】
H01F27/29 123
H01F17/04 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023009302
(22)【出願日】2023-01-25
(71)【出願人】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110003915
【氏名又は名称】弁理士法人岡田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小野 晃太
(72)【発明者】
【氏名】松浦 耕平
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 智之
【テーマコード(参考)】
5E070
【Fターム(参考)】
5E070AA01
5E070AB10
5E070BA11
5E070CB12
5E070EA01
5E070EB04
(57)【要約】
【課題】信頼性の高いコイル部品を提供する。
【解決手段】この発明にかかるコイル部品10Aは、第1の磁性体層16a、第1の非磁性体層14および第2の磁性体層16bがこの順に積層された積層体12Aと、第1の非磁性体層14の内部に埋設されたコイル導体20と、少なくとも、第1の磁性体層16a、第1の非磁性体層14の積層方向に平行な外表面に設けられ、コイル導体20に電気的に接続された外部電極30とを備える。外部電極30は積層体側から順に下地電極層32、Niめっき層およびSnめっき層を含み、下地電極層32はガラスとAgとを有する。積層体12Aと下地電極層32との界面において、積層方向に垂直な断面をみたとき、積層体12Aとガラスとの接触領域でのAgが存在する領域と、ガラスが存在する領域とにわけた場合、ガラスが存在する領域であるガラス占有率は38%以上である。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の磁性体層、第1の非磁性体層および第2の磁性体層がこの順に積層された積層体と、
前記第1の非磁性体層の内部に埋設されたコイル導体と、
少なくとも、前記第1の磁性体層、前記第1の非磁性体層の積層方向に平行な外表面に設けられ、前記コイル導体に電気的に接続された外部電極と、
を備え、
前記外部電極は前記積層体側から順に下地電極層、Niめっき層およびSnめっき層を含み、
前記下地電極層はガラスとAgとを有し、
前記積層体と前記下地電極層との界面において、積層方向に垂直な断面をみたとき、前記積層体と前記ガラスとの接触領域でのAgが存在する領域と、ガラスが存在する領域とにわけた場合、ガラスが存在する領域であるガラス占有率は38%以上である、
コイル部品。
【請求項2】
第1の磁性体層、第1の非磁性体層および第2の磁性体層がこの順に積層された積層体と、
前記第1の非磁性体層の内部に埋設されたコイル導体と、
少なくとも、前記第1の磁性体層、前記第1の非磁性体層の積層方向に平行な外表面に設けられ、前記コイル導体に電気的に接続された外部電極と、
を備え、
前記外部電極は前記積層体側から順に下地電極層、Niめっき層およびSnめっき層を含み、
前記下地電極層はガラスとAgとを有し、
前記下地電極層とNiめっき層との界面において、Agとガラスと空隙の面積を100%としたとき、Ag面積率は11%以上23%以下である、
コイル部品。
【請求項3】
前記下地電極層と前記Niめっき層との界面において、Agとガラスと空隙の面積を100%としたとき、Ag面積率は11%以上23%以下である、請求項1に記載のコイル部品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイル部品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のコイル部品として、特許文献1に開示されるコイル部品は、第1~第4の絶縁層と、前記第1~第4の絶縁層に設けられた第1~第4の導体とを備え、前記第1の導体と第2の導体とを接続するとともに、前記第3の導体と第4の導体とを接続し、さらに前記第2の導体と第3の導体の形状を渦巻き状にするとともに、互いに対向させているコモンモードチョークコイルである。また、このコイル部品は、前記第1~第4の導体の上方および下方には、それぞれ少なくとも2つの磁性層と、この2つの磁性層間に設けられた2つの非磁性層を設け、そして前記非磁性層間にガラスを含有した低誘電率層を形成するとともに、前記第2の導体と第3の導体との間に位置する第3の絶縁層にガラスを含有した透磁率の低い材料により構成し、かつ前記磁性層と非磁性層をともにフェライトで構成した本体部を含む。
【0003】
そして、本体部の両側部には、第1~第4の外部電極が設けられており、かつこの第1~第4の外部電極は、第1~第4の導体の各一端部とそれぞれ接続されるように銀を印刷することによって形成されている。そしてまた、前記第1~第4の外部電極の表面には、ニッケルめっき層、すずめっき層がそれぞれ施されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008-159738号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、引用文献1に開示されるコモンモードチョークコイルは、本体部と外部電極の密着性が悪い。また、外部電極の表面に施されるニッケルめっき層との密着性も悪い。そのため、本体部と外部電極との界面や外部電極とニッケルめっき層との界面に隙間が生じ易い問題があった。
【0006】
さらに、その隙間から水分およびガスが浸入し、外部電極の銀と反応することでマイグレーションが生じ易い問題があった。
【0007】
それゆえに、この発明の主たる目的は、信頼性の高いコイル部品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明にかかるコイル部品は、第1の磁性体層、第1の非磁性体層および第2の磁性体層がこの順に積層された積層体と、第1の非磁性体層の内部に埋設されたコイル導体と、少なくとも、第1の磁性体層、第1の非磁性体層の積層方向に平行な外表面に設けられ、前記コイル導体に電気的に接続された外部電極と、を備え、外部電極は積層体側から順に下地電極層、Niめっき層およびSnめっき層を含み、下地電極層はガラスとAgとを有し、積層体と下地電極層との界面において、積層方向に垂直な断面をみたとき、積層体とガラスとの接触領域でのAgが存在する領域と、ガラスが存在する領域とにわけた場合、ガラスが存在する領域であるガラス占有率は38%以上である、コイル部品である。
【0009】
この発明にかかるコイル部品では、積層体と下地電極層との界面において、積層方向に垂直な断面をみたとき、積層体とガラスとの接触領域であるAgは存在する領域と、ガラスが存在する領域とにわけた場合、ガラスが存在する領域であるガラス占有率は38%以上であるので、積層体と下地電極層とが隙間なく密着することから、外部電極が積層体から剥がれることを防止することができる。そのため、積層体と下地電極層との間に水分やガスの浸入を防ぐことで、マイグレーションの発生を抑制することができる。
【0010】
また、この発明にかかるコイル部品は、第1の磁性体層、第1の非磁性体層および第2の磁性体層がこの順に積層された積層体と、第1の非磁性体層の内部に埋設されたコイル導体と、少なくとも、第1の磁性体層、第1の非磁性体層の積層方向に平行な外表面に設けられ、前記コイル導体に電気的に接続された外部電極と、を備え、外部電極は積層体側から順に下地電極層、Niめっき層およびSnめっき層を含み、下地電極層はガラスとAgとを有し、下地電極層とNiめっき層との界面において、Agとガラスと空隙の面積を100%としたとき、Ag面積率は11%以上23%以下である、コイル部品である。
【0011】
この発明にかかるコイル部品では、Niめっき層と接する下地電極層の表面において、Agが存在する面積と、ガラスが存在する面積と、空隙が存在する面積を100%としたとき、Ag面積率は11%以上23%以下であるので、下地電極層とNiめっき層とが隙間なく密着することから、Niめっき層が下地電極層から剥がれることを防止することができる。そのため、下地電極層とNiめっき層との間に水分やガスの浸入を防ぐことで、マイグレーションの発生を抑制することができる。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、信頼性の高いコイル部品を提供することができる。
【0013】
この発明の上述の目的、その他の目的、特徴および利点は、図面を参照して行う以下の発明を実施するための形態の説明から一層明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】この発明の第1の実施の形態にかかるコイル部品の実施の形態を模式的に示す外観斜視図である。
図2】この発明の第1の実施の形態にかかるコイル部品を示す図1の線II-II断面図である。
図3】この発明の第1の実施の形態にかかるコイル部品を示す図1の線III-III断面図である。
図4】この発明の第1の実施の形態にかかるコイル部品を構成する積層体の分解斜視図である。
図5】積層体と外部電極との界面部分を拡大断面図の模式図である。
図6】外部電極の下地電極層を露出させた表面を拡大した模式図である。
図7】この発明の第2の実施の形態にかかるコイル部品の実施の形態を模式的に示す外観斜視図である。
図8】この発明の第2の実施の形態にかかるコイル部品を示す図1の線VIII-VIII断面図である。
図9】この発明の第1の実施の形態にかかるコイル部品を示す図1の線IX-IX断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
1.コイル部品
以下、本発明の各実施の形態にかかるコイル部品について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0016】
A.第1の実施の形態
図1は、この発明の第1の実施の形態にかかるコイル部品の実施の形態を模式的に示す外観斜視図である。図2は、この発明の第1の実施の形態にかかるコイル部品を示す図1の線II-II断面図である。図3は、この発明の第1の実施の形態にかかるコイル部品を示す図1の線III-III断面図である。図4は、この発明の第1の実施の形態にかかるコイル部品を構成する積層体の分解斜視図である。
【0017】
コイル部品10Aは、いわゆるコモンモードチョークコイルである。コイル部品10Aは、積層体12Aと積層体12Aの表面に配置される外部電極30とを有する。
【0018】
(a)積層体
積層体12Aは、第1の非磁性体層14と、第1の非磁性体層14の一方の主面側に配置される第1の磁性体層16aと、第1の非磁性体層14の他方の主面側に配置される第2の磁性体層16bとを有する。すなわち、積層体12は、第1の非磁性体層14を、第1の磁性体層16aおよび第2の磁性体層16bで挟んだ構造である。第1の非磁性体層14の内部にはコイル導体20が配置される。
【0019】
積層体12Aは、外観形状が略直方体であり、高さ(積層)方向xに相対する第1の主面12aおよび第2の主面12bと、高さ方向xに直交する幅方向yに相対する第1の側面12cおよび第2の側面12dと、高さ方向xおよび幅方向yに直交する長さ方向zに相対する第1の端面12eおよび第2の端面12fとを有する。積層体12Aの寸法は、特に限定されない。
【0020】
(b)非磁性体層
第1の非磁性体層14を構成するガラス材料は、例えば、少なくともK、BおよびSiを含むガラス材料である。ガラス材料は、K、BおよびSiに加え、これら以外の元素を含んでいてもよく、例えばAl、Bi、Li、Ca、Zn、Mg等を含んでいてもよい。
【0021】
例えば、ガラス材料は、KをK2Oに換算して0.5質量%以上5質量%以下、BをB23に換算して10質量%以上25質量%以下、SiをSiO2に換算して70質量%以上85質量%以下、AlをAl23に換算して0質量%以上5質量%以下含む、SiO2-B23-K2O系ガラスまたはSiO2-B23-K2O-Al23系ガラスである。
【0022】
第1の非磁性体層14は、ガラス材料に加え、フィラーを含んでいてもよい。非磁性体層中のフィラーの含有量は、例えば0質量%以上40質量%以下、好ましくは0.5質量%以上40質量%以下であり、例えば10質量%以上、20質量%以上、30質量%以上、または34質量%以上であり、40質量%以下または38質量%以下である。
【0023】
フィラーとしては、例えば石英(Si23)およびアルミナ(Al23)が挙げられる。
【0024】
好ましい態様において、第1の非磁性体層14は、ガラス層全体に対して、ガラス材料を60質量%以上66質量%以下、Si23を34質量%以上37質量%以下、およびAl23を0.5質量%以上4質量%以下含みうる。
【0025】
第1の非磁性体層14の厚みは、例えば、80μm以上170μm以下であることが好ましい。
【0026】
(c)磁性体層
第1の磁性体層16aおよび第2の磁性体層16bを構成するフェライト材料は、同じであっても、異なっていてもよい。好ましい態様において、第1の磁性体層16aおよび第2の磁性体層16bを構成するフェライト材料は、同じである。
【0027】
フェライト材料は、主成分として、Fe、Zn、CuおよびNiを含むフェライト材料でありうる。フェライト材料は、上記主成分の他に、さらに微量の添加物(不可避不純物を含む)を含んでいてもよい。
【0028】
フェライト材料において、Fe含有量は、Fe23に換算して、40.0モル%以上49.5モル%以下(主成分合計基準、以下も同様)であり、好ましくは45.0モル%以上48.0モル%以下でありうる。
【0029】
フェライト材料において、Zn含有量は、ZnOに換算して、5.0モル%以上35.0モル%以下(主成分合計基準、以下も同様)であり、好ましくは10.0モル%以上30.0モル%以下でありうる。
【0030】
フェライト材料において、Cu含有量は、CuOに換算して、4.0モル%以上12.0モル%以下(主成分合計基準、以下も同様)であり、好ましくは7.0モル%以上10.0モル%以下である。
【0031】
フェライト材料において、Ni含有量は、特に限定されず、上述した他の主成分であるFe、ZnおよびCuの残部、例えば9.0モル%以上45.0モル%以下としうる。
【0032】
上述した添加物としては、例えばBi、Sn、Mn、Co、Si等が挙げられるが、これに限定されるものではない。Bi、Sn、Mn、CoおよびSiの含有量(添加量)は、主成分(Fe(Fe23換算)、Zn(ZnO換算)、Cu(CuO換算)およびNi(NiO換算))の合計100質量部に対して、それぞれ、Bi23、SnO2、Mn34、Co34およびSiO2に換算して、0.1質量部以上1質量部以下とすることが好ましい。
【0033】
第1の磁性体層16aおよび第2の磁性体層16bの厚みは、例えば、130μm以上240μm以下であることが好ましい。
【0034】
(c)コイル導体
コイル部品10Aは、内部導体としてコイル導体20を備える。コイル導体20は、第1のコイル導体20aおよび第2のコイル導体20bの2つのコイルを備える。なお、本開示にかかるコイル部品は2つのコイルを備える構成に限定されるものではなく、コイルを1つのみ備えていてもよく、3以上のコイルを備えていてもよい。2つのコイルを備える構成に限定される場合は、コイル部品10Aは、コモンモードチョークコイルとして用いられることが好ましい。
【0035】
第1のコイル導体20aおよび第2のコイル導体20bcを含むコイル導体20は、積層体12Aの第1の非磁性体層14の内部に配置される。第1のコイル導体20aおよび第2のコイル導体20bは、積層体12Aの積層方向に順に設けられて、コモンモードチョークコイルを構成する。第1のコイル導体20aおよび第2のコイル導体20bを含むコイル導体20は、例えばAg、Cu等の導電性材料で構成される。当該導電性材料は、好ましくはAgである。
【0036】
第1のコイル導体20aおよび第2のコイル導体20bは、上方からみて同一方向に螺旋状に巻き回されたスパイラルパターンを有する。第1のコイル導体20aおよび第2のコイル導体20bを含むコイル導体20は、その両端において、積層体12Aの表面に引き出されて外部電極のいずれか1つと接続される。
【0037】
具体的には、第1のコイル導体20aの螺旋状の外周側の一端は、積層体12Aの第1の側面12cに引き出された第1の引出部22aを有し、第1のコイル導体20aの螺旋状の中心の他端は第1のランド部24aを有する。第1のコイル導体20aの第1のランド部24aは、第1の非磁性体層14の内部に設けられた第1のビア導体26aを介して第1の引出導体部28aに電気的に接続される。第1の引出導体部28aは積層体12Aの第2の側面12dに引き出される。
【0038】
同様に、第2のコイル導体20bの螺旋状の外周側の一端は、積層体12Aの第1の側面12cに引き出された第2の引出部22bを有し、第2のコイル導体20bの螺旋状の中心の他端は第2のランド部24bを有する。第2のコイル導体20bの第2のランド部24bは、第1の非磁性体層14の内部に設けられた第2のビア導体26bを介して第2の引出導体部28bに電気的に接続される。第2の引出導体部28bは積層体12Aの第2の側面12dに引き出される。
【0039】
(d)外部電極
図1に示すコイル部品10Aは、外部電極30を含む。外部電極30は、積層体12Aの表面に、第1の磁性体層16a、第1の非磁性体層14および第2の磁性体層16bにわたって配置される。外部電極30は、積層体12Aの表面に引き出されるコイル導体20に電気的に接続される。すなわち、外部電極30は、積層体12Aの表面において、積層方向xに延びるように配置される。
外部電極30は、第1の外部電極30a、第2の外部電極30b、第3の外部電極30cおよび第4の外部電極30dを備える。
【0040】
第1の外部電極30aは、第1の下地電極層32aと、第1の下地電極層32aの表面に配置される第1のめっき層34aとを含む。第2の外部電極30bは、第2の下地電極層32bと、第2の下地電極層32bの表面に配置される第2のめっき層34bとを含む。第3の外部電極30cは、第3の下地電極層32cと、第3の下地電極層32cの表面に配置される第3のめっき層34cとを含む。第4の外部電極30dは、第4の下地電極層32dと、第4の下地電極層32dの表面に配置される第4のめっき層34dとを含む。
【0041】
第1の外部電極30aは、積層体12Aの第1の側面12cから延伸して第1の主面12aの一部および第2の主面12bの一部にも配置される。第1の外部電極30aは、積層体12Aの第1の側面12cに引き出される第1のコイル導体20aの第1の引出部22aに電気的に接続される。また、第2の外部電極30bは、積層体12Aの第2の側面12dから延伸して第1の主面12aの一部および第2の主面12bの一部にも配置される。第2の外部電極30bは、積層体12Aの第2の側面12dに引き出される第1の引出導体部28aに電気的に接続される。
【0042】
第3の外部電極30cは、積層体12Aの第1の側面12cから延伸して第1の主面12aの一部および第2の主面12bの一部にも配置される。第3の外部電極30cは、積層体12Aの第1の側面12cに引き出される第2のコイル導体20bの第2の引出部22bに電気的に接続される。また、第4の外部電極30dは、積層体12Aの第2の側面12dから延伸して第1の主面12aの一部および第2の主面12bの一部にも配置される。第4の外部電極30dは、積層体12Aの第2の側面12dに引き出される第2の引出導体部28bに電気的に接続される。
【0043】
下地電極層32は、第1の下地電極層32a、第2の下地電極層32b、第3の下地電極層32cおよび第4の下地電極層32dを有する。
【0044】
第1の下地電極層32aは、第1の側面12cの表面に配置されている。また、第1の下地電極層32aは、第1の側面12cから延伸して第1の主面12aの一部および第2の主面12bの一部にも配置される。この場合、第1の下地電極層32aは、第1のコイル導体20aの第1の引出部22aと電気的に接続される。
第2の下地電極層32bは、第2の側面12dの表面に配置されている。また、第2の下地電極層32bは、第2の側面12dから延伸して第1の主面12aの一部および第2の主面12bの一部にも配置される。この場合、第2の下地電極層32bは、第1の引出導体部28aと電気的に接続される。
【0045】
第3の下地電極層32cは、第1の側面12cの表面に配置されている。また、第3の下地電極層32cは、第1の側面12cから延伸して第1の主面12aの一部および第2の主面12bの一部にも配置される。この場合、第3の下地電極層32cは、第2のコイル導体20bの第2の引出部22bと電気的に接続される。
第4の下地電極層32dは、第2の側面12dの表面に配置されている。また、第4の下地電極層32dは、第2の側面12dから延伸して第1の主面12aの一部および第2の主面12bの一部にも配置される。この場合、第4の下地電極層32dは、第2の引出導体部28bと電気的に接続される。
【0046】
下地電極層32は、ガラス成分と金属成分を含む。下地電極層のガラス成分は、B、Si、Ba、Mg、Al、Li等から選ばれる少なくとも1つを含む。下地電極層の金属成分は、Agである。下地電極層は、金属成分を含む導電性ペーストを積層体12Aに塗布して焼付けたものである。
【0047】
下地電極層32の厚みは、例えば、3μm以上20μm以下であることが好ましい。
【0048】
積層体12Aと下地電極層32との界面において、積層方向に垂直な断面をみたとき、積層体12Aとガラスとの接触領域であるAgは存在する領域と、ガラスが存在する領域とにわけた場合、ガラスが存在する領域であるガラス占有率は38%以上である。
【0049】
なお、ガラス占有率は、以下の方法により測定され、以下に示される式(1)にて定義される。図5は、積層体と外部電極との界面部分を拡大断面図の模式図である。図5に示すように、コイル部品10AをLW方向から研磨し、露出した外部電極断面の端部を走査型電子顕微鏡(SEM)により撮像し、画像解析ソフト(例えば、GIMP:Spencer Kimball, Peter Mattis and the GIMP Development Team製)により、以下のように測定した。すなわち、積層体12Aと下地電極層32との界面において、前述の露出断面(積層方向に垂直な断面)におけるAgが存在する領域を長さの和(ΣLg=Lg1+Lg2+Lg3+Lg4+…)としてそれぞれ測定され、ガラスが存在する領域を長さの和(ΣLAg=LAg1+LAg2+LAg3+LAg4+…)としてそれぞれ算出される。そして、ガラス占有率(%)は、

ガラス占有率=ΣLg/(ΣLAg+ΣLg)×100 (%) (1)

により定義される。
【0050】
第1のめっき層34aは、第1の下地電極層32aを覆うように配置されている。具体的には、第1のめっき層34aは、第1の側面12cに配置される第1の下地電極層32aを覆うように配置され、さらに第1の側面12cから延伸して、第1の主面12aおよび第2の主面12bに配置される第1の下地電極層32aの表面を覆うように配置される。
第2のめっき層34bは、第2の下地電極層32bを覆うように配置されている。具体的には、第2のめっき層34bは、第2の側面12dに配置される第2の下地電極層32bを覆うように配置され、さらに第2の側面12dから延伸して、第1の主面12aおよび第2の主面12bに配置される第2の下地電極層32bの表面を覆うように配置される。
【0051】
第3のめっき層34cは、第3の下地電極層32cを覆うように配置されている。具体的には、第3のめっき層34cは、第1の側面12cに配置される第3の下地電極層32cを覆うように配置され、さらに第1の側面12cから延伸して、第1の主面12aおよび第2の主面12bに配置される第3の下地電極層32cの表面を覆うように配置される。
第4のめっき層34dは、第4の下地電極層32dを覆うように配置されている。具体的には、第4のめっき層34dは、第2の側面12dに配置される第4の下地電極層32dを覆うように配置され、さらに第2の側面12dから延伸して、第1の主面12aおよび第2の主面12bに配置される第4の下地電極層32dの表面を覆うように配置される。
【0052】
第1のめっき層34a、第2のめっき層34b、第3のめっき層34cおよび第4のめっき層34dは、複数層に形成されてもよい。
【0053】
第1のめっき層34aは、第1のNiめっき層36aと第1のNiめっき層36aの表面に第1のSnめっき層38aとの2層構造である。第2のめっき層34bは、第2のNiめっき層36bと第2のNiめっき層36bの表面に第2のSnめっき層38bとの2層構造である。
【0054】
第3のめっき層34cは、第3のNiめっき層36cと第3のNiめっき層36cの表面に第3のSnめっき層38cとの2層構造である。第4のめっき層34dは、第4のNiめっき層36dと第4のNiめっき層36dの表面に第4のSnめっき層38dとの2層構造である。
【0055】
第1のNiめっき層36aないし第4のNiめっき層36dの厚みは、例えば、2μm以上8μm以下であることが好ましい。
第1のSnめっき層38aないし第4のSnめっき層38dの厚みは、例えば、2μm以上8μm以下であることが好ましい。
【0056】
Niめっき層は、コイル部品10Aを実装する際に、下地電極層32が半田によって浸食されることを防止することができ、Snめっき層は、コイル部品10Aを実装する際の半田の濡れ性を向上させ、コイル部品10Aを実装基板に容易に実装させることができる。このように、めっき層を複数層により形成することで、コイル部品10Aの信頼性や実装性を効率的により向上させることができる。
【0057】
Niめっき層と接する下地電極層の表面において、Agが存在する面積SAgと、ガラスが存在する面積Sgと、空隙が存在する面積Spを100%としたとき、Ag面積率は11%以上23%以下である。
【0058】
なお、Ag面積率は、以下の方法により測定され、以下に示される式(2)により定義される。図6は、外部電極の下地電極層を露出させた表面を拡大した模式図である。Niめっき層を研磨して下地電極層を露出し、SEMで撮像し、Agが存在する領域である明色部と、ガラスが存在する領域である中間色部と、空隙が存在する領域である暗色部とに三値化する。そして、Agが存在する領域である明色部の合計面積(ΣSAg)と、ガラスが存在する領域の合計面積(ΣSg)と、空隙が存在する領域の合計面積(ΣSp)との各合計面積を算出する。そして、Ag面積率(%)は、

Ag面積率=ΣSAg/(ΣSAg+ΣSg+ΣSp)×100 (%) (2)

により定義される。
【0059】
図1に示すコイル部品10Aによれば、積層体12Aと下地電極層32との界面において、積層方向に垂直な断面をみたとき、積層体12Aとガラスとの接触領域であるAgは存在する領域と、ガラスが存在する領域とにわけた場合、ガラスが存在する領域であるガラス占有率は38%以上であるので、積層体12Aと下地電極層32とが隙間なく密着することから、外部電極30が積層体12Aから剥がれることを防止することができる。そのため、積層体12Aと下地電極層32との間に水分やガスの浸入を防ぐことで、マイグレーションの発生を抑制することができる。
【0060】
また、図1に示すコイル部品10Aによれば、Niめっき層と接する下地電極層の表面において、Agが存在する面積SAgと、ガラスが存在する面積Sgと、空隙が存在する面積Spを100%としたとき、Ag面積率は11%以上23%以下であるので、下地電極層32とNiめっき層とが隙間なく密着することから、Niめっき層が下地電極層32から剥がれることを防止することができる。そのため、下地電極層32とNiめっき層との間に水分やガスの浸入を防ぐことで、マイグレーションの発生を抑制することができる。
【0061】
B.第2の実施の形態
続いて、第2の実施の形態にかかるコイル部品10Bについて説明する。
【0062】
図7は、この発明の第2の実施の形態にかかるコイル部品の実施の形態を模式的に示す外観斜視図である。図8は、この発明の第2の実施の形態にかかるコイル部品を示す図1の線VIII-VIII断面図である。図9は、この発明の第1の実施の形態にかかるコイル部品を示す図1の線IX-IX断面図である。
【0063】
第2の実施の形態は、第1の実施の形態とは、積層体12Bが第2の非磁性体層18aおよび第3の非磁性体層18bをさらに含む点で相違する。この相違する構成のみを以下に説明する。なお、第2の実施の形態において、第1の実施の形態と同一の符号は第1の実施の形態と同じ構成を指すので、その説明は省略する。
【0064】
図7に示すように、第2の実施の形態にかかるコイル部品10Bにおいて、素体2は、第1の磁性体層16aの上に積層された第2の非磁性体層18aと、第2の磁性体層16bの下に積層された第3の非磁性体層18bとをさらに含んでよい。この場合、外部電極30は、第2の非磁性体層18a、第1の磁性体層16a、第1の非磁性体層14、第2の磁性体層16bおよび第3の非磁性体層18bの表面にわたって存在する。第2の非磁性体層18aおよび第3の非磁性体層18bは、ガラスおよび/またはガラスとフェライトの複合材料を含むことが好ましい。外部電極がガラスを含み、かつ第2の非磁性体層18aおよび第3の非磁性体層18bが、ガラスおよび/またはガラスとフェライトの複合材料を含む場合、外部電極30に含まれるガラス成分と、第2の非磁性体層18aおよび第3の非磁性体層18bに含まれるガラス成分との相互作用により、外部電極30と積層体12Bとの固着力がさらに向上しうる。
【0065】
第2の非磁性体層18aおよび第3の非磁性体層18bに含まれうるガラスおよび/またはガラスとフェライトの複合材料は、第1の非磁性体層14に含まれうるものと同様のものであってよい。第2の非磁性体層18aおよび第3の非磁性体層18bは、第1の非磁性体層14と同様の組成を有してよく、互いに異なる組成を有してもよい。また、第2の非磁性体層18aと第3の非磁性体層18bとは同様の組成を有してよく、互いに異なる組成を有してもよい。
【0066】
このコイル部品10Bでは、上述のコイル部品10Aと同様の効果を奏する。
【0067】
2.コイル部品の製造方法
【0068】
次に、主として、コイル部品10Aの製造方法について説明する。
【0069】
(a)ガラスセラミックシートの製造工程
2O,B23,SiO2,Al23を所定の比率になるように秤量し、白金製のるつぼに入れ、焼成炉で1500℃以上1600℃以下の温度に昇温し、溶融する。この溶融物を急冷することでガラス材料を得る。
【0070】
得られたガラス材料をD50(体積基準の累積百分率50%相当粒径)が1μm以上3μm以下程度となるように粉砕してガラス粉末を得る。そして、D50が0.5μm以上2.0μm以下のアルミナ粉末と石英粉末を準備し、得られたガラス粉末に添加し、PSZメディアとともにボールミルに入れ、さらにポリビニルブチラール系等の有機バインダ、エタノール、トルエン等の有機溶剤、および可塑剤を入れ、混合する。
【0071】
次に、ドクターブレード法等で、膜厚が20μm以上30μm以下のシート状に成形加工し、これを矩形状に打ち抜き、ガラスセラミックシートを得る。
【0072】
具体的には、ガラス組成は、例えば、少なくともK、B、Siを含有し、KをK2Oに換算して0.5質量%以上5質量%以下、BをB23に換算して10質量%以上25質量%以下、SiをSiO2に換算して70質量%以上85質量%以下、AlをAl23に換算して0質量%以上5質量%以下からなるガラス材料が用いられる。
【0073】
また、ガラスセラミックシートは、ガラス材料を60質量%以上66質量%以下、フィラーとして石英(SiO2)を34質量%以上37質量%以下、アルミナを0.5質量%以上4質量%以下含む誘電体ガラス材料が用いられる。
【0074】
(b)フェライトシートの製造工程
Fe23、ZnO、CuO、NiOを所定の比率になるように秤量し、ボールミルに、秤量物を、純水、分散剤、PSZメディアとともに入れ、混合および粉砕する。得られたスラリーを乾燥し、700℃以上800℃以下の温度で2時間以上3時間以下の条件で仮焼する。
【0075】
得られた仮焼粉末と、ポリビニルブチラール系等の有機バインダ、エタノール、トルエンの有機溶剤を、PSZメディアとともにボールミルに投入し、混合粉砕する。得られた混合物を、ドクターブレード法で、所定の厚みのシートに成形加工して、所定の大きさに打ち抜いてフェライトシートを作製する。
【0076】
具体的には、例えば、Fe23が40mol%以上49.5mol%以下、ZnOが5mol%以上35mol%以下、CuOが6mol%以上12mol%以下、NiOが8mol%以上40mol%以下の範囲である。そして、所定の比率になるように秤量し、必要に応じて添加物(Mn34,Co34,SnO2,Bi23,SiO2など)を添加する。また、不可避不純物が含有しても良い。これらを湿式で混合、粉砕し、乾燥後に700℃以上800℃以下の温度で仮焼する。
【0077】
(c)ビア穴あけ加工およびコイル導体を印刷する工程
続いて、コイル導体のパターンをガラスセラミックシートに印刷するために、Agを主成分とした導電性ペーストを準備する。ガラスセラミックシートに、レーザー照射を行い所定箇所にビアホールを形成する。そして、コイル導体用の導電性ペーストをガラスセラミックシートにスクリーン印刷することで、ビアホールに導電性ペーストを充填するとともに、各コイル導体のパターンを形成する。
【0078】
(d)積層シートを製造する工程
上述したガラスセラミックシートを図4の順番で積み重ね、その上下に所定枚数の導体パターンが形成されていないガラスセラミックシートを積み重ねることで、コイル導体が内部に配置される第1の非磁性体層が得られる。さらに、その上下に所定枚数のフェライトシートを積み重ねて、第1の磁性体層および第2の磁性体層が得られる。このようにして、図1に示されるコイル部品10Aを製造するための積層シートが得られる。
さらに、その上下に所定枚数のガラスセラミックシートを配置して、図7に示されるコイル部品10Bを製造するための積層シートが得られる。
【0079】
(e)圧着する工程
積み重られた積層シートを温度が80℃、圧力が100MPaの条件でWip(温間等方圧プレス)処理して、積層ブロックが得られる。
【0080】
(f)カットする工程
圧着する工程で得られた積層ブロックがダイサー等で切断され、個片化された積層チップが得られる。
【0081】
(g)焼成する工程
次に、個変化された積層チップが焼成炉で860℃以上920℃以下の温度で、1時間以上2時間以下で焼成される。
【0082】
(h)バレル研磨する工程
焼成した積層チップ(積層体)をメディアとともに、回転バレル機に入れ、回転することで積層体の稜線や角部に丸みを形成する。
【0083】
(i)外部電極の下地電極層を形成する工程
バレル後、積層体の側面でコイル導体が引き出された箇所、4ヶ所にAgとガラスを含んだ導電性ペーストが塗布され、約800℃の温度で焼付けされ、下地電極層が形成される。導電性ペーストに含まれるガラス成分の含有量は、6質量%以上18質量%以下である。本発明にかかるガラス占有率、およびAg面積率は、導電性ペーストに含まれるガラス成分の含有率ならびに当該導電性ペーストの焼付け温度および焼付け時間を調整することにより実現される。
【0084】
(j)外部電極のめっき層を形成する工程
次に、下地電極層の表面にめっき層が形成される。電解めっきにより、下地電極層の上にNiめっき層、Snめっき層を順次形成され、外部電極30が形成される。
【0085】
上述のようにして、コイル部品10Aが製造される。
【0086】
3.実験例
上述した製造方法にしたがって、試料であるコイル部品を作製し、ガラス占有率に対する剥がれの有無の確認と、Ag面積率に対するマイグレーション判定の各評価を行った。それぞれの評価方法は後述される。
【0087】
(a)各実験例の試料の仕様
実験例として、図1ないし図3に示す構造とし、以下の仕様のコイル部品を準備した。
【0088】
試料番号1-1ないし試料番号1-13の各試料は、導電性ペーストに含まれるガラス成分の含有量を変化させて、表1に示すガラス占有率(%)となるように調整した。
【0089】
試料番号2-1ないし試料番号2-5の各試料は、導電性ペーストに含まれるガラス成分の含有量を変化させて、表2に示すAg面積率(%)となるように調整した。
【0090】
(b)ガラス占有率の算出方法
各試料であるコイル部品を垂直に立てて、必要に応じて試料の周囲を樹脂で固めた。そして、研磨機で資料の積層方向に第1の磁性体層の略中央部まで研磨を行った。得られた断面のうち、外部電極と第1の磁性体層との界面の中央にて10000倍で走査型電子顕微鏡(SEM)により写真を撮影した。各試料は3個ずつ準備し、その3個のうちのガラス占有率の最小値を各試料のガラス占有率とした。
【0091】
(c)隙間の有無の確認
各試料であるコイル部品を準備し、積層体と外部電極との間を10000倍で走査型電子顕微鏡(SEM)により写真を撮影した。得られた写真に対して目視にて判断した。目視による判断の結果、隙間が確認された場合は「有」とし、隙間が確認されなかった場合は「無」とした。
【0092】
(d)Ag面積率の測定方法
まず、各試料であるコイル部品を垂直に立てた。このとき、積層方向は研磨面と平行となった。めっき層を研磨することでめっき層を除去し、下地電極層の一部を露出させた。そして、露出された下地電極層のSEMによる撮像範囲のすべてが下地電極層になったときに研磨を終了した。続いて、露出された下地電極層の研磨面を10000倍でSEMにより写真を撮影し、画像解析ソフトを用いてAg面積率を算出した。画像解析ソフトは、旭化成エンジニアリング株式会社製のA像くん(登録商標)を用いた。各試料は3個ずつ準備し、その3個のうちのAg面積率の最小値を各試料のAg面積率とした。マイグレーションにより析出したAg(デンドライト状のAg)の伸び量が250μm以下であった場合は「G」とし、マイグレーションにより析出したAg(デンドライト状のAg)の伸び量が250μmを超えた場合は「NG」とした。
【0093】
(d)結果
表1は、各試料番号の試料に対するガラス占有率と隙間の有無を確認した結果を示す。また、表2は、各試料番号の試料に対するAg面積率とマイグレーションの発生の結果を示す。
【0094】
【表1】
【0095】
【表2】
【0096】
表1によれば、試料番号1-1ないし試料番号1-3、試料番号1-5ないし試料番号1-7ならびに試料番号1-10ないし試料番号1-13の各試料のガラス占有率が38%以上であるので、積層体と下地電極層とが隙間なく密着することから、積層体と下地電極層との間に水分やガスの浸入が防止されたと考えられ、積層体と外部電極との界面において隙間の発生が確認されなかった。
【0097】
一方、試料番号1-4、試料番号1-8および試料番号1-9の各試料のガラス占有率は38%より小さいため、積層体と外部電極との固着力が低下し、積層体と外部電極との界面において隙間の発生が確認された。
【0098】
また、表2によれば、試料番号2-1ないし試料番号2-4の各試料のAg面積率は11%以上23%以下であるので、下地電極層とNiめっき層とが隙間なく密着することから、下地電極層とNiめっき層との間に水分やガスの浸入が抑制されたと考えられ、マイグレーションにより析出したAgの伸び量が250μm以下であった。
一方、試料番号2-5の試料では、下地電極層とNiめっき層とが隙間が生じたことから、マイグレーションにより析出したAgの伸び量が250μmより長かった。
【0099】
以上の結果から、積層体と外部電極との界面において、前記積層体と前記ガラスとの接触領域でのAgが存在する領域と、ガラスが存在する領域とにわけた場合、ガラスが存在する領域であるガラス占有率は38%以上であることで、積層体と下地電極層とが隙間なく密着することから、積層体と下地電極層との間に水分やガスの浸入が防止されたと考えられ、コイル部品の信頼性が向上することが確認された。
また、下地電極層とNiめっき層との界面において、Agとガラスと空隙の面積を100%としたとき、Ag面積率は11%以上23%以下であることで、下地電極層とNiめっき層とが隙間なく密着することから、マイグレーションにより析出したAgの伸びが抑制され、コイル部品の信頼性が向上することが確認された。
【0100】
なお、以上のように、本発明の実施の形態は、前記記載で開示されているが、本発明は、これに限定されるものではない。
すなわち、本発明の技術的思想及び目的の範囲から逸脱することなく、以上説明した実施の形態に対し、機序、形状、材質、数量、位置又は配置等に関して、様々の変更を加えることができるものであり、それらは、本発明に含まれるものである。
【符号の説明】
【0101】
10A、10B コイル部品
12A、12B 積層体
12a 第1の主面
12b 第2の主面
12c 第1の側面
12d 第2の側面
12e 第1の端面
12f 第2の端面
14 第1の非磁性体層
16a 第1の磁性体層
16b 第2の磁性体層
18a 第2の非磁性体層
18b 第3の非磁性体層
20 コイル導体
20a 第1のコイル導体
20b 第2のコイル導体
22a 第1の引出部
22b 第2の引出部
24a 第1のランド部
24b 第2のランド部
26a 第1のビア導体
26b 第2のビア導体
28a 第1の引出導体部
28b 第2の引出導体部
30 外部電極
30a 第1の外部電極
30b 第2の外部電極
30c 第3の外部電極
30d 第4の外部電極
32a 第1の下地電極層
32b 第2の下地電極層
32c 第3の下地電極層
32d 第4の下地電極層
34a 第1のめっき層
34b 第2のめっき層
34c 第3のめっき層
34d 第4のめっき層
36a 第1のNiめっき層
36b 第2のNiめっき層
36c 第3のNiめっき層
36d 第4のNiめっき層
38a 第1のSnめっき層
38b 第2のSnめっき層
38c 第3のSnめっき層
38d 第4のSnめっき層
x 高さ方向(積層方向)
y 幅方向
z 長さ方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9