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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024104887
(43)【公開日】2024-08-06
(54)【発明の名称】口栓、及び口栓付きパウチ
(51)【国際特許分類】
   B65D 33/38 20060101AFI20240730BHJP
【FI】
B65D33/38
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023009305
(22)【出願日】2023-01-25
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100169063
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 洋平
(74)【代理人】
【識別番号】100130052
【弁理士】
【氏名又は名称】大阪 弘一
(72)【発明者】
【氏名】三宅 翔平
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 拓実
【テーマコード(参考)】
3E064
【Fターム(参考)】
3E064AB25
3E064BA24
3E064BA26
3E064BA27
3E064BA28
3E064BA30
3E064BA54
3E064BA55
3E064BB03
3E064BC18
3E064BC20
3E064EA30
3E064FA04
3E064HN05
3E064HN65
3E064HS04
(57)【要約】
【課題】溶着しやすい高密度ポリエチレン製の口栓及び当該口栓を備える口栓付きパウチを提供する。
【解決手段】パウチに用いられる高密度ポリエチレン製の口栓3は、示差走査熱量測定で得られるDSC曲線を微分したDDSC曲線における高温側微分ピークの頂点の温度が133.0℃以下であり、DSC曲線の吸熱ピークの頂点の温度で示される融点が、DDSC曲線における高温側微分ピークの頂点の温度以下である。口栓付きパウチ1は、第一胴フィルム4A及び第二胴フィルム4Bを有するパウチ本体2と、第一胴フィルム4Aと第二胴フィルム4Bとの間に配置されて第一胴フィルム4A及び第二胴フィルム4Bに溶着された上記の口栓3と、を備え、第一胴フィルム4A及び第二胴フィルム4Bのそれぞれは、ポリエチレンを含むシーラント層8を最内面に有する。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パウチに用いられる高密度ポリエチレン製の口栓であって、
示差走査熱量測定で得られるDSC曲線を微分したDDSC曲線における高温側微分ピークの頂点の温度が133.0℃以下であり、
前記DSC曲線の吸熱ピークの頂点の温度で示される融点が、前記DDSC曲線における前記高温側微分ピークの頂点の温度以下である、
口栓。
【請求項2】
一対のフィルムを有するパウチ本体と、
前記一対のフィルムの間に配置されて前記一対のフィルムに溶着された請求項1に記載の口栓と、を備え、
前記一対のフィルムのそれぞれは、ポリエチレンを含むシーラント層を最内面に有する、
口栓付きパウチ。
【請求項3】
前記口栓と前記シーラント層との間の示差走査熱量測定で得られるDSC曲線の吸熱ピークの頂点の温度で示される融点の差は、5.0℃以上である、
請求項2に記載の口栓付きパウチ。
【請求項4】
前記シーラント層の示差走査熱量測定で得られるDSC曲線の吸熱ピークの頂点の温度で示される融点は、125.0℃以下である、
請求項2又は3に記載の口栓付きパウチ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パウチに用いられる口栓及び当該口栓を備えた口栓付きパウチに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液体等の内容物を収容する容器として、一対の樹脂製のフィルムに樹脂製の口栓(スパウト)が溶着された口栓付きパウチが用いられている。口栓付きパウチでは、フィルムを介して加熱したシールバーを口栓に押し付けてフィルムのシーラント層及び口栓を融解することで、フィルムが口栓に溶着されている。特許文献1には、このような口栓付きパウチの口栓として、所定の密度、融点等を有する高密度ポリエチレンを材料とした口栓が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許出願公開第2021/0269214号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、リサイクル性を向上するために包装資材のモノマテリアル化(単一素材化)が取り組まれている。そこで、本発明者は、高密度ポリエチレン製の口栓を作製し、この口栓とポリエチレン系のフィルムとの溶着性の評価を行ったところ、フィルムに溶着し難い口栓があるとの知見が得られた。
【0005】
そこで、本発明は、溶着しやすい高密度ポリエチレン製の口栓及び当該口栓を備える口栓付きパウチを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題について更に鋭意研究を行った結果、示差走査熱量測定で得られるDSC曲線の吸熱ピークの頂点の温度で示される融点が近接していても、融解温度域が広くなると、溶着しにくくなるとの知見を得た。詳しく説明すると、様々なメーカーから様々なグレードの高密度ポリエチレンが提供されており、これらの高密度ポリエチレンは、示差走査熱量測定で得られるDSC曲線の吸熱ピークの頂点の温度で示される融点が近接している。しかしながら、これらの高密度ポリエチレンは、DSC曲線の吸熱ピークの幅が異なっており、吸熱ピークの幅が高温側に広がっているほど、溶着しにくいものとなっていた。吸熱ピークの幅の違いは、ポリエチレンを製造する際の添加物、温度等の製造条件の違いにより分子鎖の長さ、結晶度等のバラツキが変わることに起因するものと考えられる。本発明は、上記知見に基づきなされたものである。
【0007】
[1] 本発明に係る口栓は、パウチに用いられる高密度ポリエチレン製の口栓であって、示差走査熱量測定で得られるDSC曲線を微分したDDSC曲線における高温側微分ピークの頂点の温度が133.0℃以下であり、DSC曲線の吸熱ピークの頂点の温度で示される融点が、DDSC曲線における高温側微分ピークの頂点の温度以下である。
【0008】
この口栓では、示差走査熱量測定で得られるDSC曲線の吸熱ピークの頂点の温度で示される融点がDDSC曲線における高温側微分ピークの頂点の温度以下であるため、ポリエチレン系のフィルムに溶着させる際に、当該フィルムが過加熱されて破断するのを抑制することができる。そして、当該DSC曲線を微分したDDSC曲線における高温側微分ピークの頂点の温度が133.0℃以下であるため、当該DSC曲線における吸熱ピークの幅が高温側に広がり過ぎていないものとなっている。このため、融解されやすくなってフィルムに溶着しやすいものとすることができる。
【0009】
[2] 本発明に係る口栓付きパウチは、一対のフィルムを有するパウチ本体と、一対のフィルムの間に配置されて一対のフィルムに溶着された[1]に記載の口栓と、を備え、一対のフィルムのそれぞれは、ポリエチレンを含むシーラント層を最内面に有する。
【0010】
この口栓付きパウチでは、上記の口栓が一対のフィルムに溶着されているため、口栓付きパウチの製造時において、口栓が融解しやすくなって一対のフィルムに溶着しやすくなる。これにより、口栓と一対のフィルムとの溶着強度が高いものとすることができる。そして、一対のフィルムのそれぞれがポリエチレンを含むシーラント層を有するため、包装容器全体としてポリエチレンを主材料とすることができる。しかも、リサイクルしやすい。
【0011】
[3] [2]に記載の口栓付きパウチにおいて、口栓とシーラント層との間の示差走査熱量測定で得られるDSC曲線の吸熱ピークの頂点の温度で示される融点の差は、5.0℃以上であってもよい。この口栓付きパウチでは、口栓とシーラント層との間のDSC曲線の吸熱ピークの頂点の温度で示される融点の差が5.0℃以上であることで、口栓付きパウチの製造時において、口栓を一対のフィルムに溶着する際の溶着温度マージンを十分に確保することができる。これにより、口栓付きパウチを容易に製造することができる。
【0012】
[4] [2]又は[3]に記載の口栓付きパウチにおいて、シーラント層の示差走査熱量測定で得られるDSC曲線の吸熱ピークの頂点の温度で示される融点は、125.0℃以下であってもよい。この口栓付きパウチでは、シーラント層のDSC曲線の吸熱ピークの頂点の温度で示される融点が125.0℃以下であることで、口栓付きパウチの製造時において、口栓を一対のフィルムに溶着する際の溶着温度マージンを十分に確保することができる。これにより、口栓付きパウチを容易に製造することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、口栓がフィルムに溶着しやすいものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施形態に係る口栓付きパウチを示す正面図である。
図2】胴フィルムの一部を示す模式断面図である。
図3】口栓の示差走査熱量測定で得られるDSC曲線の一例を示す図である。
図4図3に示すDSC曲線を微分したDDSC曲線の一例を示す図である。
図5】実施例1、実施例2,及び比較例1のDSC曲線を示す図である。
図6図5に示すDSC曲線の一部を拡大した図である。
図7図5に示すDSC曲線を微分したDDSC曲線を示す図である。
図8】評価結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の説明において同一又は相当要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0016】
図1は、実施形態に係る口栓付きパウチを示す正面図である。図1に示す口栓付きパウチ1は、詰め替え用ボトル等の容器(不図示)に対する内容物の詰め替えや、飲料用包装、化粧品用包装等に用いられる。図1に示すように、実施形態に係る口栓付きパウチ1は、パウチ本体2と、口栓3と、を備える。なお、口栓3は、スパウト等とも呼ばれる。パウチ本体2は、互いに対向された樹脂製の一対のフィルムである第一胴フィルム4A及び第二胴フィルム4Bと、第一胴フィルム4Aと第二胴フィルム4Bとの間に折り込まれた樹脂製の折込フィルム5と、を備える。なお、パウチ本体2は、折込フィルム5を備えないものであってもよく、更に他のフィルムを備えるものであってもよい。
【0017】
そして、口栓付きパウチ1の内部に内容物を収容するための収容領域6を形成するように、第一胴フィルム4Aと第二胴フィルム4Bとが、その外縁部において互いにヒートシール(溶着)されているとともに、第一胴フィルム4A及び第二胴フィルム4Bと折込フィルム5とが、その外縁部において互いにヒートシールされている。また、第一胴フィルム4Aと第二胴フィルム4Bとの間に口栓3が配置されて、第一胴フィルム4Aの外縁部及び第二胴フィルム4Bの外縁部と口栓3とが、互いにヒートシールされている。なお、第一胴フィルム4Aと第二胴フィルム4Bとは、互いに同じ形状、構造等を有して口栓3とヒートシールされているため、以下では、特に分けて説明する場合を除き、第一胴フィルム4A及び第二胴フィルム4Bを胴フィルム4として纏めて説明する。
【0018】
図2は、胴フィルムの一部を示す模式断面図である。図2に示すように、胴フィルム4は、基材層7と、シーラント層8と、が積層された積層シートにより形成されている。シーラント層8は、胴フィルム4の最内面を形成する。すなわち、胴フィルム4は、シーラント層8を最内面に有する。なお、胴フィルム4を構成する積層シートは、基材層7及びシーラント層8以外の層を備えていてもよい。例えば、胴フィルム4を構成する積層シートは、基材層7とシーラント層8との間に配置されるバリア層を備えていてもよい。
【0019】
基材層7は、胴フィルム4に所定の剛性を与えるとともに、気体及び液体の通過を阻止するバリア性を有する。基材層7の素材は、特に限定されるものではないが、例えば、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、又はポリプロピレン)、又はポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート)とすることができる。超低密度ポリエチレンの密度は、0.900g/cm未満である。低密度ポリエチレンの密度は、0.900g/cm以上0.925g/cm未満である。直鎖状低密度ポリエチレンの密度は、0.900g/cm以上0.925g/cm未満である。中密度ポリエチレンの密度は、0.925g/cm以上0.945g/cm未満である。高密度ポリエチレンの密度は、0.945g/cm以上、又は0.945g/cm以上0.980g/cm以下である。
【0020】
シーラント層8は、口栓3と溶着されるために溶融可能な層である。つまり、シーラント層8は、ヒートシール可能な層である。シーラント層8は、ポリエチレンを含む。シーラント層8に含まれるポリエチレンとしては、特に限定されるものではないが、例えば、超低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、又は高密度ポリエチレンとすることができる。また、シーラント層8は、ポリエチレン以外にも、ポリプロピレン、又はポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート)等を含んでもよい。
【0021】
口栓付きパウチ1の収容領域6に収容される内容物は、特に限定されるものではないが、液体であることが好ましい。内容物としては、例えば、液体洗剤、洗浄剤、薬品、化粧品、シャンプー、リンス等の日用品、液体調味料、スープ、ヨーグルト、清涼飲料、食用油等の食品、及び潤滑油、工業用油等の工業製品が挙げられる。なお、口栓付きパウチ1は、収容領域6に内容物が収容された内容物入り口栓付きパウチであってもよい。
【0022】
口栓3は、胴フィルム4に溶着されている。口栓3は、パウチ本体2に収容された内容物を流通させるための流路31と、パウチ本体2の外側に配置されて流路31の一部を形成する注出部32と、胴フィルム4に溶着されて流路31の他の一部を形成する溶着部33と、注出部32と溶着部33との間に位置するフランジ部34と、を有する。
【0023】
口栓3は、高密度ポリエチレン製である。高密度ポリエチレン製であるとは、口栓3を構成する材料として高密度ポリエチレンを主に含むことを意味し、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン等の他のポリマー、及び添加剤等を含んでもよい。口栓3における高密度ポリエチレンの重量割合は、例えば、80%以上、好ましくは90%以上、更に好ましくは95%以上である。
【0024】
本実施形態においては、口栓3の融点は、DSC曲線の吸熱ピークの頂点で示される温度である。つまり、示差走査熱量測定で得られるDSC曲線の吸熱ピークの頂点で示される温度を、口栓3の融点とする。吸熱ピークは、融解による吸熱のピークであり、融解ピークとも呼ばれる。口栓3の融点は、示差走査熱量測定(DSC)で得られるDSC曲線を微分したDDSC曲線における高温側微分ピークの頂点の温度以下である。つまり、DSC曲線の吸熱ピークの頂点で示される口栓3の融点は、DDSC曲線の高温側微分ピークの頂点の温度以下である。DDSC曲線における高温側微分ピークの頂点は、DDSC曲線における、DSC曲線の吸熱ピークの頂点の温度で示される融点よりも高温側の頂点である。
【0025】
図3は、口栓の示差走査熱量測定で得られるDSC曲線の一例を示す図である。図3では、縦軸において吸熱の熱流が上向きとなるように示している。図3に示す例では、DSC曲線の吸熱ピークの頂点P1で示される温度が、口栓3の融点となる。図3に示すように、DSC曲線では、吸熱ピークが所定の幅を有している。このため、口栓3を昇温させていくと、DSC曲線の吸熱ピークの頂点P1の温度で示される融点を超えた後も、暫くの間は融解し続ける成分が存在する。融点で口栓3が全て融解しないのは、口栓3を構成する高密度ポリエチレンにおいて、分子鎖の長さ、結晶度等にバラツキが生じているためであると考えられる。このような分子鎖の長さ、結晶度等のバラツキは、高密度ポリエチレンを製造する際の添加物、温度等の製造条件の違いによっても変わってくる。そして、吸熱ピークの幅が高温側に広がるほど、口栓3を融解するために必要な熱エネルギーが大きくなるため、口栓3が融解しにくくなって胴フィルム4に溶着しにくくなると考えられる。このため、口栓3を融解しやすくして胴フィルム4に溶着しやすくするためには、吸熱ピークの幅が高温側に広がり過ぎていないことが好ましいと考えられる。
【0026】
図4は、図3に示すDSC曲線を微分したDDSC曲線の一例を示す図である。図3及び図4に示すように、口栓3の、示差走査熱量測定で得られるDSC曲線を微分したDDSC曲線(微分DSC曲線)における高温側微分ピークの頂点P2の温度は、133.0℃以下となっている。つまり、口栓3が融解しやすく胴フィルム4に溶着しやすいものとするために、吸熱ピークの幅が高温側に広がり過ぎていないものとなっている。なお、図3では、縦軸において吸熱の熱流が上向きとなるように示しているため、図4では、高温側微分ピークが下向きピークとして現れている。このため、本実施形態においては、高温側微分ピークを下向きピークともいう。上述したように、DDSC曲線における下向きピークの頂点P2は、DDSC曲線における、DSC曲線の吸熱ピークの頂点P1の温度で示される融点よりも高温側の頂点である。また、DDSC曲線はDSC曲線の傾きを示すことから、DDSC曲線の下向きピークの頂点P2は、DSC曲線における、吸熱ピークの頂点P1の温度で示される融点よりも高温側の変曲点に対応する。このため、口栓3がDDSC曲線の下向きピークの頂点まで昇温されたときには、融解が相当程度進行したものと考えられる。
【0027】
口栓3のDDSC曲線における下向きピークの頂点の温度は、133.0℃以下であり、131.0℃以下であってもよい。なお、口栓3のDDSC曲線における下向きピークの頂点の下限温度は、特に限定されるものではないが、例えば、125.0℃以上であってもよく、128.0℃以上であってもよい。
【0028】
口栓3の融点は、DDSC曲線の下向きピークの頂点の温度以下であれば、特に限定されるものではない。口栓3の融点は、DDSC曲線の下向きピークの頂点の温度により変わり得るが、例えば、133.0℃以下であってもよく、130.0℃以下であってもよく、129.0℃以下であってもよく、128.0℃以下であってもよい。なお、口栓3の融点の下限は、特に限定されるものではないが、例えば、125.0℃以上であってもよく、127.0℃以上であってもよい。
【0029】
口栓3とシーラント層8との間の示差走査熱量測定で得られるDSC曲線の吸熱ピークの頂点の温度で示される融点の差は、特に限定されるものではないが、5.0℃以上であってもよく、10.0℃以上であってもよく、30.0℃以上であってもよい。なお、口栓3とシーラント層8との間のDSC曲線の吸熱ピークの頂点の温度で示される融点の差の上限温度は、特に限定されるものではないが、例えば、70.0℃以下であってもよく、50.0℃以下であってもよい。
【0030】
シーラント層8の融点は、特に限定されるものではないが、例えば、125.0℃以下であってもよく、120.0℃以下であってもよく、100.0℃以下であってもよい。なお、当該融点の下限は、特に限定されるものではないが、例えば、80.0℃以上であってもよく、90.0℃以上であってもよい。シーラント層8の融点は、口栓3の融点と同様に、示差走査熱量測定で得られるDSC曲線の吸熱ピークの頂点の温度で示される融点である。
【0031】
口栓3の190.0℃、2.16kgにおけるメルトフローレート(MFR)は、特に限定されるものではないが、例えば、1.5g/10分以上25g/10分以下であってもよく、2.2g/10分以上11g/10分以下であってもよい。口栓3のMFRは、ASTM D1238若しくはJIS K6922-2の方法又はそれに準拠した方法により測定することができる。
【0032】
口栓3の密度は、特に限定されるものではないが、例えば、0.951g/cm以上0.964g/cm以下であってもよい。口栓3の密度は、ASTM D 792若しくはJIS K6922-1若しくは2の方法又はそれに準拠した方法により測定することができる。口栓3の密度は、例えば、電子天秤(XS205 Dual Range,メトラー・トレド社製)により測定することができる。電子天秤により測定する場合、口栓3の密度は、JIS K7112のA法(水中置換法)に準拠した方法により測定することができる。
【0033】
口栓3の引張降伏応力は、特に限定されるものではないが、例えば、30MPa未満であってもよい。なお、当該引張降伏応力の下限は、特に限定されるものではないが、例えば、18MPa以上であってもよい。口栓3の引張降伏応力は、ASTM D638の方法若しくはJIS K6922-2の方法又はそれに準拠した方法により測定することができる。
【0034】
口栓3の引張破壊呼びひずみは、特に限定されるものではないが、例えば、15%以上であってもよく、75%以上であってもよく、135%以上であってもよい。なお、口栓3の引張破壊呼びひずみの上限は、特に限定されるものではないが、例えば、160%以下であってもよく、145%以下であってもよい。口栓3の引張破壊呼びひずみは、JIS K6922-2の方法又はそれに準拠した方法により測定することができる。
【0035】
口栓3のビカット軟化点は、特に限定されるものではないが、例えば、75℃超であってもよく(75℃より高くてもよく)、100℃以上であってもよく、120℃以上であってもよい。なお、口栓3のビカット軟化点の上限は、特に限定されるものではないが、例えば、140℃以下であってもよく、135℃以下であってもよい。口栓3のビカット軟化点は、ASTM D1525の方法若しくはJIS K7206又はそれに準拠した方法により測定することができる。
【0036】
以上説明したように、本実施形態に係る口栓3では、示差走査熱量測定で得られるDSC曲線の吸熱ピークの頂点の温度で示される融点がDDSC曲線における高温側微分ピークの頂点の温度以下であるため、ポリエチレン系の胴フィルム4に溶着させる際に、当該胴フィルム4が過加熱されて破断するのを抑制することができる。そして、当該DSC曲線を微分したDDSC曲線における下向きピーク(高温側微分ピーク)の頂点の温度が133.0℃以下、又は131.0℃以下であるため、当該DSC曲線における吸熱ピークの幅が高温側に広がり過ぎないようになっている。このため、融解されやすくなって胴フィルム4に溶着しやすいものとすることができる。
【0037】
また、この口栓3では、DSC曲線の吸熱ピークの頂点の温度で示される融点が130.0℃以下、129.0℃以下、又は128.0℃以下であることで、胴フィルム4がポリエチレン系である場合に、口栓3と胴フィルム4との融点の差が小さくなるため、胴フィルム4に溶着しやすいものとすることができる。
【0038】
本実施形態に係る口栓付きパウチ1では、上記の口栓3が胴フィルム4に溶着されているため、口栓付きパウチ1の製造時において、口栓3が融解しやすくなって胴フィルム4に溶着しやすくなる。これにより、口栓3と胴フィルム4との溶着強度が高いものとすることができる。しかも、一対のフィルムのそれぞれがポリエチレンを含むシーラント層を有するため、包装容器全体としてポリエチレンを主材料とすることができる。このため、リサイクルしやすい。
【0039】
また、この口栓付きパウチ1では、口栓3と胴フィルム4のシーラント層8との間のDSC曲線の吸熱ピークの頂点の温度で示される融点の差が5.0℃以上、10.0℃以上、又は30.0℃以上であることで、口栓付きパウチ1の製造時において、口栓3を胴フィルム4に溶着する際の溶着温度マージンを十分に確保することができる。これにより、口栓付きパウチ1を容易に製造することができる。
【0040】
また、この口栓付きパウチ1では、シーラント層8のDSC曲線の吸熱ピークの頂点の温度で示される融点が125.0℃以下、120.0℃以下、又は100.0℃以下であることで、口栓付きパウチ1の製造時において、口栓3を胴フィルム4に溶着する際の溶着温度マージンを十分に確保することができる。これにより、口栓付きパウチ1を容易に製造することができる。
【0041】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限られるものではなく、各請求項に記載した要旨を変更しない範囲で変形し、又は他のものに適用してもよい。
【実施例0042】
次に、本発明の実施例について説明する。但し、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0043】
以下の材料を使用して積層体を作製した。
・基材層…未延伸HDPEフィルム(厚さ:35μm、密度:0.948g/cm3、融点:135℃)
・接着剤層…ウレタン系接着剤
・第一のシール層…低温シール性LLDPE(密度:0.916g/cm3、MFR:4.0g/10分、融点:102℃)
・第二のシール層…密着防止VLDPE(密度:0.913g/cm3、MFR:10.0g/10分、融点:104℃)
支持フィルムの表面上に第一のシール層(厚さ:80μm)を設けた。この第一のシール層の表面上に第二のシール層(厚さ:20μm)を設けることによって、二層構造のシーラント層を得た。このシーラント層と基材層とを接着剤層(厚さ:1~2μm)を介して貼り合わせることによって実施例1に係る積層体を得た。なお、基材層とシーラント層と貼り合わせた後、上記支持フィルムは剥がした。
【0044】
密度が0.955g/cm、MFRが2.3g/10分の高密度ポリエチレンにより実施例1の口栓を作製した。また、高密度ポリエチレン製の口栓を、実施例2の口栓として用いた。また、密度が0.953g/cm、MFRが2.1g/10分の高密度ポリエチレンにより比較例1の口栓を作製した。
【0045】
各口栓の融点を測定した。融点の測定では、示差走査熱量計(DSC8000,PerkinElmer社製)を用いて各口栓の示差走査熱量を2回測定した。1回目の示差走査熱量測定では、口栓の作製時の熱履歴が残っている可能性があることから、2回目の示差走査熱量測定で得られたDSC曲線の吸熱ピークの頂点の温度を、各口栓の融点とした。2回目の示差走査熱量測定で得られたDSC曲線を図5及び図6に示す。図5及び図6に示すように、実施例1の口栓の融点は、128.2℃であった。実施例2の口栓の融点は、127.6℃であった。比較例1の口栓の融点は、129.7℃であった。
【0046】
更に、各口栓について、2回目の示差走査熱量測定で得られたDSC曲線を微分したDDSC曲線を作成し、作成したDDSC曲線における下向きピークの頂点の温度を調べた。2回目の示差走査熱量測定で得られたDSC曲線を微分したDDSC曲線を図7に示す。図7に示すように、実施例1の口栓のDDSC曲線における下向きピークの頂点の温度は、132.8℃であった。実施例2の口栓の、DDSC曲線における下向きピークの頂点の温度は、130.1℃であった。比較例1の口栓の、DDSC曲線における下向きピークの頂点の温度は、133.7℃であった。
【0047】
(溶着性評価)
作製した積層体に各口栓を溶着し、その溶着性について評価した。溶着性の評価では、容易に溶着できた場合をAとし、容易に溶着できなかった場合をBとし、溶着できなかった場合をCとした。評価結果を図8に示す。
【0048】
図8は、評価結果を示す図である。図8に示すように、何れの口栓も積層体に溶着できた。その理由としては、何れの口栓も、融点が130.0℃以下であったため、ポリエチレン系の積層体に溶着させることができたものと考えられる。また、実施例1及び実施例2の口栓は、積層体に容易に溶着できたが、比較例1の口栓は、積層体に容易に溶着できなかった。その理由としては、比較例1の口栓は、DDSC曲線における下向きピークの頂点の温度が133.0℃超で、DSC曲線における吸熱ピークの幅が高温側に広がり過ぎていたため、融解しにくくなって積層体に溶着しにくかったものと考えられる。一方、実施例1及び2の口栓は、DDSC曲線における下向きピークの頂点の温度が133.0℃以下で、DSC曲線における吸熱ピークの幅が高温側に広がり過ぎていなかったため、融解しやすく積層体に溶着しやすかったものと考えられる。
【符号の説明】
【0049】
1…口栓付きパウチ、2…パウチ本体、3…口栓、4…胴フィルム、4A…第一胴フィルム、4B…第二胴フィルム、5…折込フィルム、6…収容領域、7…基材層、8…シーラント層、31…流路、32…注出部、33…溶着部、34…フランジ部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8