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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024104889
(43)【公開日】2024-08-06
(54)【発明の名称】検知用ケーブル、及び検知システム
(51)【国際特許分類】
   G01B 7/16 20060101AFI20240730BHJP
   H02G 1/06 20060101ALI20240730BHJP
【FI】
G01B7/16 Z
H02G1/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023009307
(22)【出願日】2023-01-25
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】弁理士法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山下 真直
(72)【発明者】
【氏名】島田 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】中村 悠一
(72)【発明者】
【氏名】奥村 宗一郎
(72)【発明者】
【氏名】伊田 尚馬
(72)【発明者】
【氏名】岡山 直樹
(72)【発明者】
【氏名】大西 庸嵩
(72)【発明者】
【氏名】西岡 亮平
【テーマコード(参考)】
2F063
5G352
【Fターム(参考)】
2F063AA02
2F063AA25
2F063BA30
2F063BC08
2F063BD13
2F063CA34
2F063DA02
2F063DA05
2F063DA06
2F063DB04
2F063DC08
2F063DD06
2F063EC01
2F063KA03
2F063LA17
5G352CA08
5G352CH08
(57)【要約】
【課題】インピーダンス変化に基づく変形の検知を適切に行うことができる技術を提供する。
【解決手段】 本開示である検知用ケーブルは、内部導体線と、前記内部導体線の外周側に設けられた透液性絶縁層と、前記透液性絶縁層の外周側に設けられた透液性外部導体と、前記透液性外部導体の外周側に設けられた被覆層と、液体を内包しかつ少なくとも前記被覆層が変形したときに作用する圧力によって破壊される液体内包部と、を備える。前記液体内包部は、前記透液性外部導体の外周側に設けられている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部導体線と、
前記内部導体線の外周側に設けられた透液性絶縁層と、
前記透液性絶縁層の外周側に設けられた透液性外部導体と、
前記透液性外部導体の外周側に設けられた被覆層と、
液体を内包しかつ少なくとも前記被覆層が変形したときに作用する圧力によって破壊される液体内包部と、を備え、
前記液体内包部は、前記透液性外部導体の外周側に設けられている
検知用ケーブル。
【請求項2】
前記液体内包部は、前記被覆層に分散された複数のマイクロカプセルを含む
請求項1に記載の検知用ケーブル。
【請求項3】
前記液体内包部は、
前記液体を内包する複数のマイクロカプセルと、
前記複数のマイクロカプセルを前記透液性外部導体と前記被覆層との間で保持する透液性保持体と、を含む
請求項1に記載の検知用ケーブル。
【請求項4】
前記液体内包部は、前記透液性外部導体と前記被覆層との間に設けられ、前記液体を内包するフィルム包材を含む
請求項1に記載の検知用ケーブル。
【請求項5】
前記液体は、少なくとも、水、または、アルコールのいずれか1つを含む
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の検知用ケーブル。
【請求項6】
請求項1に記載の検知用ケーブルと、
前記検知用ケーブルのインピーダンス変化を検知する検知部と、を備える
検知システム。
【請求項7】
前記検知部は、
前記内部導体線の第1端部にパルス信号を与える信号源と、
前記内部導体線における前記第1端部と反対側の第2端部に接続された整合終端器と、
前記パルス信号に応じた反射信号の有無に基づいて前記検知用ケーブルのインピーダンス変化を検知する処理部と、を備える
請求項6に記載の検知システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、検知用ケーブル、及び検知システムに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両やロボットには、電力や信号を伝送するためのケーブルが多数用いられる。
これらケーブルの中には、実際の使用環境下において振動等によって想定外の曲げ変形が生じるものがある。
このような変形はケーブルの寿命に影響を与えることがある。このため、実際の使用環境下においてケーブルに生じる変形を把握する必要がある。
【0003】
実際の使用環境下においてケーブルに生じる変形を検知するために、例えば、特許文献1に示すような光ファイバを用いたセンサケーブル(検知用ケーブル)を利用することが考えられる。
このセンサケーブルを用いれば、当該センサケーブルに生じる歪を外部から検知することができる。
よって、検知対象のケーブル(対象ケーブル)に沿ってセンサケーブルを延設したり、対象ケーブルの代わりにセンサケーブルを実際の使用環境下又はそれに類似する環境下に配索したりすることで、センサケーブルを対象ケーブルの使用環境と同じ環境下に配索し、センサケーブルに生じる歪みを検知する。
これによって、実際の使用環境下において対象ケーブルに生じる歪み(曲げ変形)を把握することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002-267425号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記光ファイバを用いたセンサケーブルは、高価であり、コスト面で不利である。
そこで、電線をセンサケーブルとして用いることが考えられる。電線に曲げ変形が生じると、その変形部分のインピーダンスが変化する。よって、電線のインピーダンス変化を検知すれば、電線及び検知対象の変形を検知することができる。
【0006】
しかし、曲げ変形に応じた電線のインピーダンス変化は微少であることから検知が困難であり、インピーダンス変化に基づく電線の変形の検知を適切に行うことができないという問題を有していた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示である検知用ケーブルは、内部導体線と、前記内部導体線の外周側に設けられた透液性絶縁層と、前記透液性絶縁層の外周側に設けられた透液性外部導体と、前記透液性外部導体の外周側に設けられた被覆層と、液体を内包しかつ少なくとも前記被覆層が変形したときに作用する圧力によって破壊される液体内包部と、を備える。前記液体内包部は、前記透液性外部導体の外周側に設けられている。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、インピーダンス変化に基づく変形の検知を適切に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、検知システムの一例を示すブロック図である。
図2図2は、第1実施形態の検知用ケーブルの斜視断面図である。
図3図3は、図2に示す断面部分の拡大図である。
図4図4は、検知処理の一例を示すフローチャートである。
図5図5は、第2実施形態の検知用ケーブルの部分断面図である。
図6図6は、第3実施形態の検知用ケーブルの部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
最初に実施形態の内容を列記して説明する。
[実施形態の概要]
【0011】
(1)本開示である検知用ケーブルは、内部導体線と、前記内部導体線の外周側に設けられた透液性絶縁層と、前記透液性絶縁層の外周側に設けられた透液性外部導体と、前記透液性外部導体の外周側に設けられた被覆層と、液体を内包しかつ少なくとも前記被覆層が変形したときに作用する圧力によって破壊される液体内包部と、を備える。前記液体内包部は、前記透液性外部導体の外周側に設けられている。
【0012】
上記構成によれば、透液性外部導体の外周側に、液体内包部を備えるので、検知用ケーブルに曲げ変形や圧縮変形が生じ、少なくとも被覆層が変形すると、その変形部分に作用する圧力によって液体内包部が破壊され、内部の液体が放出される。放出された液体は、透液性外部導体を通過し、透液性絶縁層に到達する。さらに、液体は、透液性絶縁層に浸潤する。
よって、透液性絶縁層の誘電率が顕著に上昇し、検知用ケーブルの変形部分におけるインピーダンスを大きく変化させる。
この結果、検知用ケーブルが変形したときのインピーダンス変化の検知が容易となり、検知用ケーブルのインピーダンス変化に基づく、検知用ケーブルの変形の検知を適切に行うことができる。
【0013】
(2)上記(1)の検知用ケーブルにおいて、前記液体内包部は、前記被覆層に分散された複数のマイクロカプセルを含むことが好ましい。
この場合、被覆層に液体内包部である複数のマイクロカプセルを保持させることができ、複数のマイクロカプセルを保持するための部材を新たに追加する必要がない。
【0014】
(3)上記(1)のケーブルにおいて、前記液体内包部は、前記液体を内包する複数のマイクロカプセルと、前記複数のマイクロカプセルを前記透液性外部導体と前記被覆層との間で保持する透液性保持体と、を含むことが好ましい。
この場合、透液性外部導体と前記被覆層との間にマイクロカプセルが集中して配置されるので、検知用ケーブルが変形し被覆層が変形したときに、より多数のマイクロカプセルが破壊される。この結果、検知用ケーブルの変形部分におけるインピーダンスをより大きく変化させることができる。
【0015】
(4)また、上記(1)のケーブルにおいて、前記液体内包部は、前記透液性外部導体と前記被覆層との間に設けられ、前記液体を内包するフィルム包材を含んでいてもよい。
【0016】
(5)また、上記(1)から(4)の少なくともいずれかのケーブルにおいて、前記液体は、少なくとも、水、または、アルコールのいずれか1つを含むことが好ましい。
これら液体は、樹脂等の絶縁体と比較して、誘電率が顕著に大きい。このため、検知用ケーブルの変形部分におけるインピーダンスをより大きく変化させることができる。
【0017】
(6)また、他の観点からみた本開示は、検知システムである。この検知システムは、上記(1)の検知用ケーブルと、前記検知用ケーブルのインピーダンス変化を検知する検知部と、を備える。
この構成によれば、検知用ケーブルが変形したときのインピーダンス変化の検知が容易となり、インピーダンス変化に基づく、検知用ケーブルの変形の検知を適切に行うことができる。
【0018】
(7)上記(6)の検知システムにおいて、前記検知部は、前記内部導体線の第1端部にパルス信号を与える信号源と、前記内部導体線における前記第1端部と反対側の第2端部に接続された整合終端器と、前記パルス信号に応じた反射信号の有無に基づいて前記検知用ケーブルのインピーダンス変化を検知する処理部と、を備えていてもよい。
この場合、簡易な構成で検知用ケーブルのインピーダンス変化を検知することができる。
【0019】
[実施形態の詳細]
以下、好ましい実施形態について図面を参照しつつ説明する。
なお、以下に記載する各実施形態の少なくとも一部を任意に組み合わせてもよい。
【0020】
〔検知システムについて〕
図1は、検知システムの一例を示すブロック図である。
図1中、検知システム1は、検知対象となる対象ケーブルの曲げ変形を検知するためのシステムである。
対象ケーブルは、例えば、自動車等の車両やロボット等において電力や信号を伝送するためのケーブルである。
【0021】
検知システム1は、検知用ケーブル2と、検知ユニット4と、を含む。
検知用ケーブル2は、対象ケーブルに沿って延設されたり、対象ケーブルに代えて当該対象ケーブルの使用環境下に配索されたりする。よって、検知用ケーブル2は、対象ケーブルの使用環境と同じ環境下に配索される。
対象ケーブルと同じ環境下に配索されることで、検知用ケーブル2には、対象ケーブルと同様の変形が生じる。検知システム1は、検知用ケーブル2に生じる対象ケーブルと同様の変形を検知することができる。
【0022】
検知用ケーブル2は、被覆電線であり、内部導体線と、前記内部導体の外周側に設けられた絶縁体と、絶縁体の外周側に設けられた外部導体と、を含む。つまり、検知用ケーブル2は、同軸ケーブルを構成する。検知用ケーブル2については、後に説明する。
検知ユニット4は、検知用ケーブル2の第1端部2a及び第2端部2bに接続されている。第1端部2aは、検知用ケーブル2の両端のうちの一方の端部である。第2端部2bは、第1端部2aの反対側の端部である。
【0023】
検知ユニット4は、検知用ケーブル2のインピーダンス変化を検知する機能を有する。検知ユニット4は、終端器3と、信号源6と、サーキュレータ8と、処理装置10と、を有する。
信号源6は、検知用ケーブル2の第1端部2aに与えるパルス信号を出力する。
サーキュレータ8は、信号源6から出力されるパルス信号を検知用ケーブル2の第1端部2aに与える。また、サーキュレータ8は、検知用ケーブル2の第1端部2aからの出力を処理装置10へ与える。
【0024】
処理装置10は、処理部10aと、記憶部10bと、出力部10cと、を備えるコンピュータ等によって構成される。
処理部10aは、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、量子プロセッサ等、コンピュータの制御に適合する種々のプロセッサである。
【0025】
記憶部10bは、例えば、フラッシュメモリ、ハードディスク、ROM(Read Only Memory)等である。
記憶部10bには、処理部10aに実行させるためのコンピュータプログラムや、必要な情報が記憶されている。処理部10aは、記憶部10bのようなコンピュータ読み取り可能な非一過性の記録媒体に記憶されたコンピュータプログラムを実行することで、処理装置10が有する各種処理機能を実現する。
また、処理部10aは、検知用ケーブル2のインピーダンス変化を検知する検知処理を行う機能を有する。検知処理については、後に説明する。
【0026】
出力部10cは、処理部10aによる処理に関する各種情報を、外部へ向けて出力する機能を有する。出力部10cは、無線通信装置を含んでいてもよい。この場合、出力部10cは、無線通信によって、各種情報を出力する。また、出力部10cは、モニタや、インジケータ、スピーカを含んでいてもよい。この場合、出力部10cは、これらデバイスによって、各種情報を出力する。
【0027】
検知ユニット4に含まれる各部が行う動作や処理については、後に説明する。
【0028】
〔第1実施形態の検知用ケーブル2について〕
図2は、第1実施形態の検知用ケーブル2の斜視断面図である。図2では、長手方向に沿って検知用ケーブル2の周方向の一部を切り欠いて示している。
検知用ケーブル2は、内部導体線20と、透液性絶縁層22と、透液性外部導体24と、被覆層26と、液体内包部28と、を備える。
内部導体線20は、検知用ケーブル2の径方向中心に位置する。内部導体線20、透液性絶縁層22、透液性外部導体24、及び、被覆層26は、検知用ケーブル2の径方向中心から径方向外側へ向かって順番に積層されている。
【0029】
内部導体線20は、銅、アルミニウム等の導体によって形成された線状の部材である。内部導体線20は、単一の素線であってもよいし、複数の素線を撚り合わせた撚線であってもよい。
【0030】
透液性絶縁層22は、内部導体線20の外周側に設けられている。透液性絶縁層22は、内部導体線20と、透液性外部導体24と、の間に介在している。透液性絶縁層22は、内部導体線20と、透液性外部導体24と、を絶縁する。
透液性絶縁層22は、透液性を有する絶縁体によって形成される。透液性絶縁層22は、例えば、発泡ポリエチレン等の絶縁体によって形成されている。発泡ポリエチレンは、互いに繋がる複数の気泡を有しており、この複数の気泡によって透液性を有する。
【0031】
透液性外部導体24は、透液性絶縁層22の外周側に設けられている。透液性外部導体24は、透液性絶縁層22と、被覆層26と、の間に介在している。透液性外部導体24は接地される。
透液性外部導体24は、網組によって構成される。網組は、銅、アルミニウム等の導体の細線を網状に編むことで得られる構造体である。透液性外部導体24は、網組体を筒状にすることで得られる。透液性外部導体24は、網組によって構成されることにより、透液性を有する。
【0032】
被覆層26は、透液性外部導体24の外周側に設けられている。被覆層26は、透液性外部導体24の外周面に沿って設けられている。被覆層26は、上述の各部を覆っている。これにより、検知用ケーブル2を構成する各部を外部環境から保護する。
被覆層26は、例えば、ポリ塩化ビニル等によって形成される。
【0033】
液体内包部28は、透液性外部導体24の外周側に設けられる部材である。液体内包部28は、液体を内包しかつ少なくとも被覆層26が変形したときに作用する圧力によって破壊される部材である。
本実施形態の液体内包部28は、複数のマイクロカプセル30を含む。複数のマイクロカプセル30は、被覆層26に一様に分散されている。
【0034】
図3は、図2に示す断面部分の拡大図である。図3において、紙面左右方向が、検知用ケーブル2の長手方向に沿っている。
図3中、複数のマイクロカプセル30は、それぞれ、カプセル壁32と、液体34と、を有する。液体34は、カプセル壁32に内包される。本実施形態において液体34は、水である。
カプセル壁32は、外部から所定の圧力が加わると壊れる性質を有する。カプセル壁32が壊れる所定の圧力は、カプセル壁32の素材や製造条件等によって適宜調整される。本実施形態における所定の圧力は、検知用ケーブル2に曲げ変形や圧縮変形が生じることで被覆層26が変形したときにマイクロカプセル30に作用する圧力である。
カプセル壁32の素材としては、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、メラミン樹脂、及び、尿素樹脂等が挙げられる。さらに、マイクロカプセル30の製法としては、界面重合法、コアセルベーション法、in-situ重合法、及び、滴下法等が挙げられる。
【0035】
複数のマイクロカプセル30が分散された被覆層26を形成するために、以下のような方法を採用することができる。
まず、溶融したポリ塩化ビニルに所定の割合でマイクロカプセル30を混合し、溶融混合物を得る。
次いで、被覆層26のみを持たない検知用ケーブル2の中間製品を用意する。この中間製品は被覆層26を持たないので、外面には透液性外部導体24が露出する。この中間製品の外面である透液性外部導体24の表面に、前記溶融混合物を塗布する。例えば、前記溶融混合物を貯留した液槽に前記中間製品を浸漬することで、前記中間製品の外面に前記溶融混合物を塗布する。
前記中間製品の外面に前記溶融混合物を塗布した後、冷却することで前記溶融混合物を硬化させる。これにより、複数のマイクロカプセル30が分散された被覆層26を形成することができる。
【0036】
図3中、被覆層26に分散している複数のマイクロカプセル30の中には、内面26aに露出するマイクロカプセル30Aが一定の割合で存在する。内面26aは、被覆層26において透液性外部導体24に面する面である。
【0037】
ここで、検知用ケーブル2に曲げ変形が生じたり、検知用ケーブル2が径方向に沿って圧縮されることで圧縮変形が生じたりすると、検知用ケーブル2を構成する各部にも変形が生じる。
検知用ケーブル2に曲げ変形や圧縮変形が生じ、少なくとも被覆層26が変形すると、その変形部分に作用する圧力によって変形部分に存在するマイクロカプセル30(カプセル壁32)が破壊される。
【0038】
内面26aに露出するマイクロカプセル30Aが破壊されると、マイクロカプセル30Aに内包されていた液体34が被覆層26よりも内側へ放出される。放出された液体34は、透液性外部導体24を通過し、透液性絶縁層22に到達する。さらに、液体34は、透液性絶縁層22に部分的に浸潤する。
【0039】
本実施形態の液体34は水である。水の誘電率は80、透液性絶縁層22を構成するポリエチレンの誘電率は2.3~2.4である。このように、水の誘電率はポリエチレンの誘電率と比較して非常に大きい値である。
よって、透液性絶縁層22のうち液体34に浸潤された部分の誘電率は顕著に上昇し、検知用ケーブル2の変形部分におけるインピーダンスを大きく変化させる。
この結果、検知ユニット4による、検知用ケーブル2が変形したときのインピーダンス変化の検知が容易となる。
【0040】
また、本実施形態では、マイクロカプセル30が被覆層26に分散されているので、被覆層26に液体内包部28である複数のマイクロカプセル30を保持させることができ、複数のマイクロカプセル30を保持するための部材を新たに追加する必要がない。
【0041】
〔検知ユニット4について〕
上述したように、検知ユニット4は、検知用ケーブル2のインピーダンス変化を検知する機能を有する。
図1に示すように、検知ユニット4は、検知用ケーブル2に含まれる内部導体線20の第1端部20aに接続される。内部導体線20の第1端部20aは、第1端部2a側に位置する内部導体線20の端部である。
【0042】
検知ユニット4の信号源6は、サーキュレータ8を介して第1端部20aに接続される。
検知ユニット4の処理装置10は、サーキュレータ8を介して第1端部20aに接続される。処理装置10は、第1端部20aからの出力を受け付ける機能を有する。
終端器3は、内部導体線20の第2端部20bに接続される。内部導体線20の第2端部20bは、第2端部2b側に位置する内部導体線20の端部である。
終端器3のインピーダンスは、使用され変形する前の検知用ケーブル2の特性インピーダンスと等価である。よって、検知用ケーブル2は整合終端される。
【0043】
信号源6は、所定の間隔で継続的にパルス信号を出力する。
信号源6が出力したパルス信号は、サーキュレータ8を介して検知用ケーブル2の第1端部20aへ与えられる。
第1端部20aへ与えられたパルス信号は、第1端部20aから第2端部20bへ亘って検知用ケーブル2を伝搬する。
検知用ケーブル2の第2端部20bは終端器3によって整合終端されている。よって、パルス信号が第2端部20b側に伝搬したとしても、パルス信号に応じた反射信号は生じない。
【0044】
ここで、検知用ケーブル2に曲げ変形や圧縮変形といった変形が生じると、検知用ケーブル2の変形部分に存在するマイクロカプセル30が破壊されて液体34が放出され、検知用ケーブル2の変形部分におけるインピーダンスを大きく変化させる。
このため、検知用ケーブル2と、終端器3との間で特性インピーダンスの不整合が生じ、検知用ケーブル2において、パルス信号に応じた反射信号が生じる。
このため、第1端部20aにおける出力には、検知用ケーブル2において生じた反射信号が含まれる。
反射信号を含んだ第1端部20aにおける出力は、サーキュレータ8を介して処理装置10へ与えられる。
【0045】
上述したように、処理装置10の処理部10aは、検知用ケーブル2のインピーダンス変化を検知する検知処理を行う機能を有する。
また、処理部10aは、信号源6を制御する機能も有する。
【0046】
図4は、検知処理の一例を示すフローチャートである。
処理部10aは、まず、信号源6にパルス信号の出力を開始させる(ステップS1)。これにより、信号源6は、所定の間隔で継続的にパルス信号を出力する。パルス信号は、検知用ケーブル2に与えられる。
【0047】
次いで、処理部10aは、第1端部20aからの出力に反射信号が含まれているか否かを判定する(ステップS2)。
検知用ケーブル2からの反射信号が含まれていないと判定する場合、処理部10aは、ステップS2へ戻る。よって、処理部10aは、反射信号が含まれていると判定するまで、ステップS2を繰り返す。
検知用ケーブル2からの反射信号が含まれていると判定する場合、処理部10aは、ステップS3へ進み、出力部10cを通じて反射信号が生じている旨の出力を行い(ステップS3)、ステップS2へ戻る。
【0048】
上述のように、検知用ケーブル2からの出力に反射信号が含まれている場合、検知用ケーブル2のインピーダンスに変化が生じており、検知用ケーブル2に曲げ変形や圧縮変形といった変形が生じていることを示している。
よって、処理部10aは、パルス信号に応じた反射信号の有無に基づいて検知用ケーブル2のインピーダンス変化を検知することができる。
処理部10aは、反射信号が有る旨を出力部10cから出力することで、検知システム1のオペレータ等に、検知用ケーブル2にインピーダンス変化が生じており、検知用ケーブル2に変形が生じていることを認識させることができる。
【0049】
本実施形態によれば、被覆層26に分散させた複数のマイクロカプセル30によって、検知用ケーブル2の変形部分におけるインピーダンスを大きく変化させることができる。この結果、検知用ケーブル2が変形したときのインピーダンス変化の検知が容易となり、インピーダンス変化に基づく、検知用ケーブルの変形の検知を適切に行うことができる。
また、本実施形態では、信号源6、終端器3、及び処理装置10といった簡易な構成で検知用ケーブル2のインピーダンス変化を検知することができる。
【0050】
〔第2実施形態の検知用ケーブル2について〕
図5は、第2実施形態の検知用ケーブル2の部分断面図である。図5において紙面左右方向が検知用ケーブル2の長手方向に沿っている。
【0051】
本実施形態は、複数のマイクロカプセル30が、透液性外部導体24と、被覆層26と、の間に層状に設けられている点において第1実施形態と相違する。
【0052】
本実施形態の液体内包部28は、複数のマイクロカプセル30と、透液性保持体36と、を含む。
複数のマイクロカプセル30は、第1実施形態と同様の構成である。すなわち、複数のマイクロカプセル30は、それぞれ、カプセル壁32と、液体34と、を有する。液体34は、カプセル壁32に内包される。本実施形態において液体34は、水である。
【0053】
透液性保持体36は、透液性外部導体24と被覆層26との間に設けられた層状の部材である。透液性保持体36は、複数のマイクロカプセル30を透液性外部導体24と被覆層26との間で保持する。
透液性保持体36は、例えば、樹脂繊維を層状に形成した部材であり、透液性を有する。透液性保持体36は、樹脂繊維の隙間に複数のマイクロカプセル30を保持する。
この樹脂繊維としては、ナイロンや、ポリエステルが挙げられる。
【0054】
本実施形態では、透液性外部導体24と被覆層26との間にマイクロカプセル30が集中して配置されるので、検知用ケーブル2が変形し被覆層26が変形したときに、より多数のマイクロカプセル30が破壊される。この結果、検知用ケーブル2の変形部分におけるインピーダンスをより大きく変化させることができる。
【0055】
〔第3実施形態の検知用ケーブル2について〕
図6は、第3実施形態の検知用ケーブル2の部分断面図である。図6において紙面左右方向が検知用ケーブル2の長手方向に沿っている。
【0056】
本実施形態は、液体内包部28が、液体34を内包するフィルム包材40を含んでいる点において第1実施形態と相違する。
【0057】
フィルム包材40は、透液性外部導体24と、被覆層26と、の間に設けられている。フィルム包材40は、外側フィルム部42と、内側フィルム部44とを含む。フィルム包材40は、外側フィルム部42と、内側フィルム部44との間に液体34を内包する空間を有する。
外側フィルム部42及び内側フィルム部44の素材としては、マイクロカプセル30のカプセル壁32と同様の素材を用いることができる。
フィルム包材40(外側フィルム部42、内側フィルム部44)は、マイクロカプセル30と同様、検知用ケーブル2に曲げ変形や圧縮変形が生じ、少なくとも被覆層26が変形すると、その変形部分に作用する圧力によって破壊される。
フィルム包材40が破壊されると、フィルム包材40に内包されていた液体34が被覆層26よりも内側へ放出される。よって、透液性絶縁層22は、液体34によって部分的に浸潤される。
よって、本実施形態においても、検知用ケーブル2に変形が生じたときに、検知用ケーブル2のインピーダンスを部分的に大きく変化させることができる。
この結果、検知ユニット4による、検知用ケーブル2が変形したときのインピーダンス変化の検知が容易となる。
【0058】
〔その他〕
なお、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。
例えば、上記各実施形態では、液体34が水である場合を例示した。しかし、液体34としてアルコールを用いることができる。例えば、エチルアルコールの誘電率は24、メチルアルコールの誘電率は33であり、これらの誘電率もポリエチレンの誘電率と比較して非常に大きい値である。よって、これらアルコールを液体34と用いることで、上記各実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0059】
また、上記各実施形態では、対象ケーブルが自動車等の車両やロボット等において電力や信号を伝送するためのケーブルとし、検知用ケーブル2によって対象ケーブルの変形を検知する場合を例示した。
しかし、検知用ケーブル2は、対象ケーブルの変形を検知するだけではなく、例えば、物体を吊り下げるためのケーブルとして用いてもよい。この場合、物体を吊り下げる検知用ケーブル2に変形が生じたときに、その変形を検知することができる。
このため、物体の吊り下げに支障を来す程度に検知用ケーブル2に変形が生じた場合には、それを検知することができる。また、物体の窃盗を目的として検知用ケーブル2を切断しようとしたときに、検知用ケーブル2に圧縮変形が生じた場合に、それを検知することができる。
【0060】
本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味、及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0061】
1 検知システム
2 検知用ケーブル
2a 第1端部
2b 第2端部
3 終端器
4 検知ユニット
6 信号源
8 サーキュレータ
10 処理装置
10a 処理部
10b 記憶部
10c 出力部
20 内部導体線
20a 第1端部
20b 第2端部
22 透液性絶縁層
24 透液性外部導体
26 被覆層
26a 内面
28 液体内包部
30、30A マイクロカプセル
32 カプセル壁
34 液体
36 透液性保持体
40 フィルム包材
42 外側フィルム部
44 内側フィルム部
図1
図2
図3
図4
図5
図6