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  • 特開-組立家屋 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024104893
(43)【公開日】2024-08-06
(54)【発明の名称】組立家屋
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/343 20060101AFI20240730BHJP
【FI】
E04B1/343 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023009320
(22)【出願日】2023-01-25
(71)【出願人】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山田 徹
(72)【発明者】
【氏名】菊田 大典
(72)【発明者】
【氏名】加藤 ひかる
(72)【発明者】
【氏名】杉原 岳
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 彰
(72)【発明者】
【氏名】瀧上 柾
(72)【発明者】
【氏名】亀田 孝彦
(72)【発明者】
【氏名】今村 蓮
(72)【発明者】
【氏名】貞広 修
(72)【発明者】
【氏名】谷口 尚範
(72)【発明者】
【氏名】和田 昌樹
(72)【発明者】
【氏名】井手 勇人
(72)【発明者】
【氏名】金坂 太一
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼村 和久
(72)【発明者】
【氏名】本多 清和
(57)【要約】
【課題】環境保全性に優れた組立家屋を提供する。
【解決手段】木質柱部材12と、木質梁部材14と、木質壁部材16とを用いて分解可能に組み立てられた組立家屋10であって、複数本の木質梁部材14を上下方向に積層配置してボルトで接合した重ね梁32と、木質壁部材16に接合される木質柱部材12とをボルトで接合するようにする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
木質柱部材と、木質梁部材と、木質壁部材とを用いて分解可能に組み立てられた組立家屋であって、
複数本の木質梁部材を上下方向に積層配置してボルトで接合した重ね梁と、木質壁部材に接合される木質柱部材とをボルトで接合したものであることを特徴とする組立家屋。
【請求項2】
木質柱部材の上端面と前記重ね梁の下面の間に配置される木質梁部材からなる桁梁と、木質柱部材と前記桁梁の入隅部に設けられた第一の金物と、木質柱部材と第一の金物を接合するボルトと、前記桁梁と第一の金物を接合するボルトと、前記重ね梁と前記桁梁の入隅部に設けられた第二の金物と、前記重ね梁と第二の金物を接合するボルトと、前記桁梁と第二の金物を接合するボルトとを有することを特徴とする請求項1に記載の組立家屋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組立家屋に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、建設工事を行う際に現場近くに設置する事務所などに用いる組立家屋が知られている(例えば、特許文献1、2を参照)。一方、CLT(Cross Laminated Timber:直交集成板)をパネルとして、床、壁、屋根などに使用して建築物を構築するCLTパネル工法が知られている(例えば、非特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-023420号公報
【特許文献2】特開2004-100452号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】「CLTを用いた建築物の設計施工マニュアル 2021年構造・材料増補版」、公益財団法人日本住宅・木材技術センター
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の組立家屋において、組立→解体→移動→転用→再生の循環システムを持ち、環境保全的な機能を有することが求められていた。そこで、本発明者は、上記のCLTパネル工法を利用して環境保全性に優れた組立家屋を施工することを見出し、以下の本発明に至った。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、環境保全性に優れた組立家屋を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る組立家屋は、木質柱部材と、木質梁部材と、木質壁部材とを用いて分解可能に組み立てられた組立家屋であって、複数本の木質梁部材を上下方向に積層配置してボルトで接合した重ね梁と、木質壁部材に接合される木質柱部材とをボルトで接合したものであることを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る他の組立家屋は、上述した発明において、木質柱部材の上端面と前記重ね梁の下面の間に配置される木質梁部材からなる桁梁と、木質柱部材と前記桁梁の入隅部に設けられた第一の金物と、木質柱部材と第一の金物を接合するボルトと、前記桁梁と第一の金物を接合するボルトと、前記重ね梁と前記桁梁の入隅部に設けられた第二の金物と、前記重ね梁と第二の金物を接合するボルトと、前記桁梁と第二の金物を接合するボルトとを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る組立家屋によれば、木質柱部材と、木質梁部材と、木質壁部材とを用いて分解可能に組み立てられた組立家屋であって、複数本の木質梁部材を上下方向に積層配置してボルトで接合した重ね梁と、木質壁部材に接合される木質柱部材とをボルトで接合したものであるので、環境保全性に優れた組立家屋を提供することができるという効果を奏する。
【0010】
また、本発明に係る他の組立家屋によれば、木質柱部材の上端面と前記重ね梁の下面の間に配置される木質梁部材からなる桁梁と、木質柱部材と前記桁梁の入隅部に設けられた第一の金物と、木質柱部材と第一の金物を接合するボルトと、前記桁梁と第一の金物を接合するボルトと、前記重ね梁と前記桁梁の入隅部に設けられた第二の金物と、前記重ね梁と第二の金物を接合するボルトと、前記桁梁と第二の金物を接合するボルトとを有するので、重ね梁と木質柱部材とを桁梁、金物およびボルトを介して強固に接合することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本発明に係る組立家屋の実施の形態を示す斜視図であり、(1)は外観図、(2)は分解図、(3)は屋内状況図である。
図2図2は、本実施の形態の組立家屋の断面図であり、(1)は平断面図、(2)は立断面図である。
図3図3は、本実施の形態の組立家屋の要部拡大図であり、(1)は部分解斜視図、(2)はD-D線に沿った断面図、(3)はE-E線に沿った断面図である。
図4図4は、本実施の形態の組立家屋の要部分解斜視図である。
図5図5は、図4の断面図であり、(1)はA-A線に沿った断面図、(2)はB-B線に沿った断面図、(3)はC-C線に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明に係る組立家屋の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0013】
図1に示すように、本発明の実施の形態に係る組立家屋10は、角材からなる木質柱部材12および木質梁部材14と、パネル材からなる木質壁部材16と、方杖18と、床材20と、天井材22と、枠材24と、屋根材26と、建具28を用いて分解可能に組み立てられるものである。
【0014】
この組立家屋10は、図2に示すように、ラーメン構造と壁式構造を組み合わせて構築される。より具体的には、図3に示すように、木質梁部材14を上下方向に3段積層配置してボルト30で接合した重ね梁32と、木質壁部材16の両側部に配置した木質柱部材12の上端とを図示しない桁梁を介してボルト30で接合した構造を有している。重ね梁32の各段の木質梁部材14は、梁軸方向に突き合わせ配置するが、端部の位置が上下に隣接する段で揃わないように配置することが好ましい。なお、図の例では、重ね梁32の中段において、2本の木質梁部材14を梁軸方向に突き合わせ配置するとともに、突き合わせた端部の直下および直上に同じ長さの木質梁部材14の中央が位置するように配置し、その両端側に短い長さの木質梁部材14を配置した場合を示している。木質柱部材12と木質壁部材16はボルトやビス等で接合する。図1に示すように、重ね梁32のスパン中央と梁端側には、重ね梁32と直交する方向に小梁34を設ける。小梁34についても木質梁部材14を3段積層した重ね梁で構成する。
【0015】
木質柱部材12および木質梁部材14は、例えば、一般に流通する角材(例えば、縦120×横120×長さ2730mmなど)のみで構成することができる。また、木質壁部材16は、一般に流通するパネル材(例えば、幅910×高さ2730×厚さ36mmのJパネルやCLTパネルなど)のみで構成することができる。このような部材を用いれば、組立、解体、移動、転用が容易である。なお、木質壁部材16の外表面には、屋外用の高耐候性木材塗料を塗布することが好ましい。
【0016】
方杖18は、木質柱部材12と重ね梁32の接合部に取り付けられる略三角形板状のパネル材であり、例えば、CLTなどで構成することができる。床材20は、例えば、JパネルやCLTパネルなどの市販の構造用合板で構成される。図2に示すように、床材20は、H型鋼からなる土台36上の大引38の上にボルトで固定される。天井材22は、重ね梁32の上面にボルトで固定されるパネル材であり、例えば、Jパネルなどの市販の構造用合板で構成される。枠材24は、屋根材26を下側から支持するとともに、天井材22に固定される枠体であり、例えば、アルミニウムなどで構成される。屋根材26は、例えば、ガラス繊維にフッ素樹脂をコーティングした膜材で構成される。建具28は、市販の引き戸や窓などで構成され、木質壁部材16の間に配置される。
【0017】
図4は、接合部の分解斜視図である。この図に示すように、木質梁部材14と木質梁部材14、木質梁部材14と木質柱部材12など、木質の部材どうしが上下方向に接する面の一部には、円形の切り込み部40が形成されており、双方の切り込み部40を跨るように環状の埋め込みジベル42が埋め込まれる。木質の部材同士は、ボルトだけでなく、この埋め込みジベル42によっても接合する。
【0018】
図4および図5(1)に示すように、木質壁部材16の屋内側の両側部には、木質柱部材12が配置される。木質壁部材16の屋内側には、ウレタンフォームなどの断熱材44と、合板などの壁材46が配置される。断熱材44は木質壁部材16と木質柱部材12に囲まれた空間48に配置される。壁材46は空間48を挟んだ屋内側に配置され、木質柱部材12の側部に固定される。空間48内の木質柱部材12の上側と下側にはホールダウン金物50、52が配置される。木質柱部材12の下側は、図5(1)、(3)に示すように、ホールダウン金物52の底部に通されたボルト54およびナット56を介して大引38に固定される。
【0019】
図4および図5(2)および(3)に示すように、木質柱部材12の上端面と重ね梁32の下面の間には、木質梁部材14からなる桁梁58が設けられる。ホールダウン金物50は、木質柱部材12の上側の両側面に配置された方杖18と桁梁58によって形成される両側の入隅部に配置される第一の金物である。ホールダウン金物50は、周知のL字状断面の金物であり、L字状の板の各面に設けられた複数のボルト穴と、L字状の板を繋ぐ三角形状のリブを有している。ホールダウン金物50は、側部に通されたボルト60およびナット62によって方杖18を貫通して木質柱部材12に固定される。
【0020】
一方、重ね梁32と桁梁58の上面側に配置された板材64によって形成される両側の入隅部には、ホールダウン金物66(第二の金物)が配置される。ホールダウン金物66は、側部に通されたボルト68およびナット70によって重ね梁32の中段の木質梁部材14に固定されるとともに、桁梁58の下側のホールダウン金物50の上部から通されたボルト72およびナット74によって桁梁58に固定される。これにより、重ね梁32と木質柱部材12とを桁梁58、ホールダウン金物50、66および各ボルトを介して強固に接合することができる。
【0021】
なお、重ね梁32の最上段の木質梁部材14の上面には、天井材22がボルト76で固定される。天井材22の上面には、ウレタンフォームなどの断熱材78が設けられる。重ね梁32の屋外側の端部の一部には、面戸パネル80が設けられる。面戸パネル80は、木質壁部材16と同様の部材で構成される。
【0022】
図4および図5(3)に示すように、大引38は、木質梁部材14と同じ部材を上下2段に積層して構成され、互いにボルト82およびナット84で固定される。下側の大引38は、上面の凹部から土台36の上フランジに対して通されたボルト86およびナット88で固定される。上側の大引38と木質柱部材12によって形成される両側の入隅部には、ホールダウン金物52が配置される。ホールダウン金物52は、側部に通されたボルト90およびナット92によって木質柱部材12に固定されるとともに、下側の大引38の下面からホールダウン金物52の底部に通されたボルト54およびナット56によって大引38に固定される。
【0023】
以上のように構成した組立家屋10によれば、木質の部材と、ホールダウン金物と、ボルトで構成されることから、簡易に組み立てることができる。ホールダウン金物とボルトのみで接合していることから、容易に解体することができる。柱、梁、壁などの主要な構造部材は、木質柱部材12、木質梁部材14、木質壁部材16としてモジュール化されているので、他の建設地点に容易に転用することができる。木質柱部材12、木質梁部材14、木質壁部材16として、一般に流通する部材を用いれば、運搬車両に積載して容易に搬送移動可能である。また、木質の部材は、他の用途に再利用可能である。したがって、本実施の形態によれば、環境保全性に優れた組立家屋を提供することができる。
【0024】
なお、本実施の形態の組立家屋10と同規模の鉄骨プレハブ家屋を比較した場合、本実施の形態の組立家屋10は、鉄骨プレハブ家屋に比べて、部材輸送時の二酸化炭素排出量、材料製造時の炭素放出量が少なくなるメリットがあると考えられる。
【0025】
以上説明したように、本発明に係る組立家屋によれば、木質柱部材と、木質梁部材と、木質壁部材とを用いて分解可能に組み立てられた組立家屋であって、複数本の木質梁部材を上下方向に積層配置してボルトで接合した重ね梁と、木質壁部材に接合される木質柱部材とをボルトで接合したものであるので、環境保全性に優れた組立家屋を提供することができる。
【0026】
また、本発明に係る他の組立家屋によれば、木質柱部材の上端面と前記重ね梁の下面の間に配置される木質梁部材からなる桁梁と、木質柱部材と前記桁梁の入隅部に設けられた第一の金物と、木質柱部材と第一の金物を接合するボルトと、前記桁梁と第一の金物を接合するボルトと、前記重ね梁と前記桁梁の入隅部に設けられた第二の金物と、前記重ね梁と第二の金物を接合するボルトと、前記桁梁と第二の金物を接合するボルトとを有するので、重ね梁と木質柱部材とを桁梁、金物およびボルトを介して強固に接合することができる。
【0027】
なお、2015年9月の国連サミットにおいて採択された17の国際目標として「持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals:SDGs)」がある。本実施の形態に係る組立家屋は、このSDGsの17の目標のうち、例えば「11.住み続けられるまちづくりを」の目標などの達成に貢献し得る。
【産業上の利用可能性】
【0028】
以上のように、本発明に係る組立家屋は、建設現場事務所などとして仮設される家屋に有用であり、特に、環境保全性を確保するのに適している。
【符号の説明】
【0029】
10 組立家屋
12 木質柱部材
14 木質梁部材
16 木質壁部材
18 方杖
20 床材
22 天井材
24 枠材
26 屋根材
28 建具
30,54,60,68,72,76,82,86,90 ボルト
32 重ね梁
34 小梁
36 土台
38 大引
40 切り込み部
42 埋め込みジベル
44,78 断熱材
46 壁材
48 空間
50 ホールダウン金物(第一の金物)
52 ホールダウン金物
56,62,70、74,84,88,92 ナット
58 桁梁
64 板材
66 ホールダウン金物(第二の金物)
80 面戸パネル
図1
図2
図3
図4
図5