(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024104894
(43)【公開日】2024-08-06
(54)【発明の名称】インクジェットプリンタ
(51)【国際特許分類】
B41J 2/175 20060101AFI20240730BHJP
【FI】
B41J2/175 151
B41J2/175 119
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023009323
(22)【出願日】2023-01-25
(71)【出願人】
【識別番号】000116057
【氏名又は名称】ローランドディー.ジー.株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(72)【発明者】
【氏名】平出 智
(72)【発明者】
【氏名】富田 佑樹
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056KC02
2C056KC05
2C056KC06
(57)【要約】
【課題】インクカートリッジをインクカートリッジホルタに円滑に挿入でき、衝突による不具合や装填不良などの問題が発生しないインクジェットプリンタを提供すること。
【解決手段】インクの充填されたインクバッグが収容される矩形ボックス状のインクカートリッジ1と、該インクカートリッジ1が着脱可能に装填されるカートリッジホルダ10と、を備えるインクジェットプリンタにおいて、インクカートリッジ1のカートリッジホルダ10への着脱動作中にインクカートリッジ1の移動経路を形成するガイド手段(ガイド突起3)と、カートリッジホルダ10に設けられインクカートリッジ1の移動経路での着脱動作中に該インクカートリッジ1を左右方向及び上下方向に付勢する付勢手段(板バネ13、14)と、を有する。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクの充填されたインクバッグが収容される矩形ボックス状のインクカートリッジと、該インクカートリッジが挿入されて着脱可能に装填されるカートリッジホルダと、を備えるインクジェットプリンタにおいて、
前記インクカートリッジの外面又は前記カートリッジホルダの内面の前記挿入方向に沿って伸長する上面、両側面、下面の4面のうち隣り合う2つの面に、前記インクカートリッジの挿入位置を調整する挿入位置調整部材をそれぞれ設けたことを特徴とするインクジェットプリンタ。
【請求項2】
前記挿入位置調整部材は、
前記インクカートリッジの前記カートリッジホルダへの着脱動作中に前記インクカートリッジの移動経路を形成するガイド手段と、前記インクカートリッジの前記移動経路での着脱動作中に該インクカートリッジを左右方向に付勢する第1の付勢手段と、上下方向に付勢する第2の付勢手段と、ガイドリブのいずれかであることを特徴とする請求項1に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項3】
前記ガイド手段は、前記インクカートリッジの側壁外側面又は前記カートリッジホルダの内側面の何れか一方に形成されたガイド溝と、前記インクカートリッジの側壁外側面又は前記カートリッジホルダの前記内側面の何れか一方に対向する前記インクカートリッジの側壁外側面又は前記カートリッジホルダの前記内側面の他方に設けられ前記ガイド溝に嵌合するガイド突起と、で構成されることを特徴とする請求項2に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項4】
前記ガイド突起は、前記インクカートリッジの側壁外側面又は前記カートリッジホルダの前記内側面の上部位置と下部位置にそれぞれに設けられていることを特徴とする請求項3に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項5】
前記ガイド突起は、前記インクカートリッジの側壁外側面に設けられ、前記ガイド突起が形成された部分のインクカートリッジ側壁の壁厚が他の部分の厚さよりも薄く形成されたことを特徴とする請求項2または3に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項6】
前記第1の付勢手段又は前記第2の付勢手段は、前記インクカートリッジ又は前記カートリッジホルダの何れか一方に設けられた板バネによって構成され、前記インクカートリッジの側壁外側面又は前記カートリッジホルダの前記内側面の他方には、前記板バネの幅方向中央部分に当接される突起が設けられたことを特徴とする請求項2に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項7】
前記第1の付勢手段又は前記第2の付勢手段は、前記インクカートリッジ又は前記カートリッジホルダの何れか一方に設けられた板バネによって構成され、前記インクカートリッジの側壁外側面又は前記カートリッジホルダの前記内側面の他方には、前記板バネに当接される突起が設けられ、
前記突起は、前記インクカートリッジの側壁外側面の上部位置と下部位置にそれぞれに設けられ、前記ガイド突起を挟んで設けられることを特徴とする請求項3に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項8】
前記ガイドリブは、前記インクカートリッジの上面部の該インクカートリッジの装填動作方向の前方側の部分又は前記カートリッジホルダの上側内面であって前記第2の付勢手段よりも該インクカートリッジの装填動作方向の後方側の部分に所定長さ前記装填動作方向に伸長する突起であることを特徴とする請求項2に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項9】
前記インクカートリッジの装着動作方向の前面部から上面部にかけて、該インクカートリッジにインクバッグの装着の有無を確認するため貫通形成された窓部を有し、前記ガイドリブは、前記窓部の両側に設けられる請求項8に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項10】
前記インクカートリッジの装着動作方向の前面部には、該インクカートリッジにインクバッグの装着の有無を確認するため貫通形成された窓部と、該インクカートリッジの前方への移動動作を規定位置で前記インクカートリッジホルダの内側面に当接されることで規制する規制用突起部が形成されたことを特徴とする請求項1に記載のインクジェットプリンタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットプリンタ、特に、インクの充填されたインクバッグが収容される矩形ボックス状のインクカートリッジと、該インクカートリッジが着脱可能に装填されるカートリッジホルダと、を備えるインクジェットプリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットプリンタは、インクカートリッジのインクバッグからインクの供給を受ける記録ヘッドを記録用紙の幅方向に往復移動させて印刷する装置であるが、大量の印刷を行うインクジェットプリンタにおいては、インクカートリッジが大型化し、この大型のインクカートリッジをキャリッジに搭載することが不可能になる。
【0003】
そこで、インクカートリッジをインクジェットプリンタの本体に着脱可能に装填し、このインクカートリッジからチューブを介して記録ヘッドにインクを供給する方式が採用されている。ここで、インクカートリッジは、矩形ボックス状に構成され、プリンタ本体側に設けられたカートリッジホルダに、例えば、手前側から奥側に挿入することによってプリンタ本体に装填される。この取扱者による装填動作は、手元の僅かな傾きなどによってカートリッジホルダへの衝突や装填不良などが生じるおそれが有る。
【0004】
上記問題に鑑み、例えば特文献1には、インクカートリッジの装着方向の安定性を高めることによって、該インクカートリッジの装着の容易性と的確性の向上を図る構成が提案されている。具体的には、カートリッジ装着部の誤挿入防止部に係合する誤挿入防止用上面凸部と、装着時の装着方向と交差する交差方向に当該インクカートリッジが傾くことを規制する規制用前方上面凸部とをインクカートリッジに設け、規制用前方上面凸部を装着方向先端と誤挿入防止用上面凸部との間に配置する構成が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示されている誤挿入防止用上面凸部及び規制用上面凸部だけでは、インクカートリッジをカートリッジホルダにスムーズに挿入することは難しいという問題があった。すなわち、規制用上面凸部によって、装填動作中におけるインクカートリッジの左右の傾きを規制しても、同時に上下方向の傾きを的確に規制することは難しく、衝突による不具合や装填不良などの問題が発生する可能性が有り、インクカートリッジの挿入の円滑化は達成されていなかった。
【0007】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたもので、その目的は、インクカートリッジをインクカートリッジホルタに円滑に挿入でき、衝突による不具合や装填不良などの問題が発生しないインクジェットプリンタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るインクジェットプリンタは、
インクの充填されたインクバッグが収容される矩形ボックス状のインクカートリッジと、該インクカートリッジが挿入されて着脱可能に装填されるカートリッジホルダと、を備えるインクジェットプリンタにおいて、
前記インクカートリッジの外面又は前記カートリッジホルダの内面の前記挿入方向に沿って伸長する上面、両側面、下面の4面のうち隣り合う2つの面に、前記インクカートリッジの挿入位置を調整する挿入位置調整部材をそれぞれ設けたことを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、インクカートリッジは、挿入位置調整部材によって着脱動作の際の移動経路が決められ、且つ左右及び上下方向の位置調整が行われる。これによりカートリッジホルダに対して適正な移動が確保され、着脱動作の的確性が確保される。したがって、インクカートリッジの着脱時における衝突や装填不良の発生が解消される。
【発明の効果】
【0010】
本発明のインクジェットプリンタによれば、インクカートリッジはカートリッジホルダに対して適正な移動が確保され、インクカートリッジの着脱時における衝突や装填不良の発生が解消される。したがって、インクジェットプリンタのインクカートリッジの交換が容易となり、インクジェットプリンタの稼働率の向上に貢献することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明のインクジェットプリンタの一実施の形態に係り、インクカートリッジの斜視図である。
【
図2】
図1のインクカートリッジをカートリッジホルダに装着する前の状態を示す斜視図である。
【
図3】
図1のインクカートリッジをカートリッジホルダに装着している状態を示す斜視図である。
【
図4】
図1のインクカートリッジのガイドリブの説明図である。
【
図5】
図4において、
図3の矢視A方向と反対方向から見た図である。
【
図6】
図1のガイドリブの作用を説明する図である。
【
図10】
図10(a)は
図9の板バネの模式図であり、
図10(b)は突起と板バネの関係を示す断面図であり、
図10(c)はインクカートリッジの板バネによる傷つきの様子を示す部分断面図である。
【
図11】板バネと突起部のその他の実施の形態を示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に本発明のインクジェットプリンタの一実施の形態について添付図面に基づいて詳細に説明する。インクジェットプリンタは、インクの充填されたインクバッグが収容される矩形ボックス状のインクカートリッジと、該インクカートリッジが着脱可能に装填されるカートリッジホルダとを備える。
【0013】
図1は本実施の形態に係るインクカートリッジ1の斜視図であり、図示したインクカートリッジ1は、高さに対して幅が狭い長尺の矩形ボックス状に構成されており、幅方向に2分割された分割構造を有しており、その内部には着脱可能なインクバッグ(図示していない)が収容されている。なお、プリンタ本体(図示していない)に装着される前のインクカートリッジ1に収容されたインクバッグには、プリンタ本体の記録ヘッドに供給されるインクが充填されているが、インクとしては、マゼンタ、イエロー、シアン及びブラックの4色に加えて、ホワイト、オレンジ、レッド、グロス及びプライマなどが用意されている。さらには、インクカートリッジに洗浄液を収容してヘッドのノズル面を払拭するワイパーに塗布してクリーニングに使用することもある。ここで、以下の説明においては、
図1の矢印方向をそれぞれ「前後」方向、「左右」方向、「上下」方向とする。
【0014】
インクカートリッジ1は、プリンタ本体側に設けられた
図2及び
図3に示す矩形枠状(四角筒状)のカートリッジホルダ10に、インクカートリッジ1の前面部から
図2及び
図3の矢印方向(挿入方向)に挿入されて装填される。なお、図面においては、1つのインクカートリッジ1とカートリッジホルダ10を図示しているが、実際には、前述のように4色(マゼンタ、イエロー、シアン及びブラック)以上のインクに対応して、インクカートリッジ1とカートリッジホルダ10は、各色ごと設けられている。但し、以下においては、各1つのインクカートリッジ1とカートリッジホルダ10についてのみ説明する。
【0015】
本実施の形態において、挿入位置調整部材は、付勢手段、ガイド手段、ガイドリブを纏めた名称であり、付勢手段は板バネにより構成されている。
【0016】
図1に示すように、インクカートリッジ1の上面部の前方側の部分には、所定長さ挿入動作方向に伸長するガイドリブ2が設けられている。本実施の形態では、インクカートリッジ1の幅方向両端部(左右両端部)に、2つのガイドリブ2が互いに平行に立設されている。
【0017】
図4は、インクカートリッジ1をカートリッジホルダ10に挿入する様子を示す。
図5は、インクカートリッジ1及びカートリッジホルダ10を挿入方向から見た図である。2つのガイドリブ2、2の間隔よりも小さな幅を有する第2の付勢手段である板バネ13がカートリッジホルダ10の上面部内側面に設けられており、板バネ13の先端部13aはV字状に屈曲している。インクカートリッジ1の挿入時は、このガイドリブ2、2の間に板ばね13を位置させ、板バネ13の先端部13aをインクカートリッジ1の上面部に当接させながらカートリッジホルダ10に挿入することで、インクカートリッジ1のカートリッジホルダ10内における位置調整が行われる。
【0018】
図6に示す様に、インクカートリッジ1がカートリッジホルダ10に斜めに挿入した場合は、ガイドリブ2、2がカートリッジホルダ10の上面部内部に当たり、インクカートリッジ1の過度な傾きを防いで、インクカートリッジ1のスムーズな挿入が可能なように導いている。また、ガイドリブ2、2があることで、インクカートリッジ1の前面側に貫通形成された窓部20に板バネ13の先端が干渉してインクカートリッジ1の挿入を妨げることを防ぐことができる。なお、ガイドリブ2、2は、カートリッジホルダ10に設けられてもよい。その場合、ガイドリブ2、2は、板バネ13の先端がインクカートリッジ1の前面側の窓部に干渉しないようにするため及び挿入時の姿勢を調整するために板バネ13よりも後ろ側に設けることが望ましい。
【0019】
また、第2の付勢手段である板バネ13は、インクカートリッジ1の上面部に設けられてもよい。
【0020】
次に、ガイド手段の構成について説明する。
図1に示すように、インクカートリッジ1の側壁1Aの外側面に、前後方向に沿って互いに平行に延びる一対のガイド突起3が一体に突設されている。これらのガイド突起3は、
図7に示すように、カートリッジホルダ10の側壁10Aの外側面の上記ガイド突起3に対応する高さ位置に沿って、前後方向(
図7の紙面垂直方向)に形成された直線状の一対のガイド溝11にそれぞれ係合する。ここで、各ガイド溝11は、上下一対のガイドレール12の間にそれぞれ形成されている。
【0021】
すなわち、インクカートリッジ1側に突設された上下一対のガイド突起3と、カートリッジホルダ10側に形成された上下一対のガイド溝11とは、インクカートリッジ1をカートリッジホルダ10に装填及びカートリッジホルダ10から取り外す際に該インクカートリッジ1をカートリッジホルダ10に対して前後方向にスライドさせるときに、当該インクカートリッジ1をカートリッジホルダ10に対して着脱方向を規制しながらガイドする作用を有している。なお、カートリッジホルダ10側に突設された上下一対のガイド突起3と、インクカートリッジ1側に形成された上下一対のガイド溝11としてもよい。
【0022】
更に、
図8に詳細に示すように、ガイド手段を構成する上下一対のガイド突起3(
図8には、一方のみ図示)は、インクカートリッジ1の側壁1Aの外側面に水平に突設されているが、側壁1Aのガイド突起3が突設された部分の内側面には凹部1aが形成されている。したがって、側壁1Aのガイド突起3が突設された部分の厚さtは、他の部分の厚さTよりも薄く設定されている(t<T)。なお、
図8には一方(上側)のガイド突起3の部分の構成のみを示すが、他方(下側)のガイド突起3の部分も
図8に示す構成と同様に構成されている。
【0023】
この構成により、ガイド突起3が形成された部分のインクカートリッジ1の側壁1Aの壁厚が他の部分の壁厚よりも薄いため、ガイド突起3が基端部を中心として弾性変形し易くなる。したがって、インクカートリッジの装着動作時にガイド突起3に大きな外力が加わっても、ガイド突起3が基端部を中心として弾性変形するために基端部への応力集中が緩和され、ガイド突起3が基端部から折損するという不具合の発生が防がれる。この結果、インクカートリッジ1の耐久性が高められる。
【0024】
次に付勢手段について説明する。本実施の形態に係るインクカートリッジ1においては、
図1に示すように、側壁1Aの上下一対のガイド突起3よりも上下方向において外側、つまり、インクカートリッジ1の側壁1Aの上下端付近には、装着方向前後方向に沿って互いに平行に延びる上下一対の突起4が一体に突設されている。他方、
図2及び
図7に示すように、カートリッジホルダ10の側壁10Aの内側面の上下(インクカートリッジ1の上下一対の突起4に対応する高さ位置)には、板バネ14のV字状の先端部14aがそれぞれ位置している。ここで、第1の付勢手段である板バネ14は、
図3に示すように、カートリッジホルダ10の側壁10Aの上下にそれぞれ前後に亘って計4つ取り付けられており、そのV字状に屈曲する先端部14aがカートリッジホルダ1の側壁10Aに形成された計4つの矩形窓10aから該カートリッジホルダ1の内部に突出している。そして、
図2及び
図7に示すように、計4つの板バネ14の各先端部14aがインクカートリッジ1の側壁1Aの上下に突設された一対の各突起4にそれぞれ当接している。
【0025】
インクカートリッジ1側に突設された上下一対の突起4と、これらの突起4にそれぞれ当接するカートリッジホルダ10側の計4つの板バネ14とは、インクカートリッジ1をカートリッジホルダ10に前方へと挿入してこれを装填し、或いはインクカートリッジ1を後方にスライドさせてカートリッジホルダ10から引き出す際に、インクカートリッジ1を左右方向(本実施形態では、右方向)に付勢して安定な装着動作を可能にしている。
なお、カートリッジホルダ10側に突設された上下一対の突起4と、これらの突起4にそれぞれ当接するインクカートリッジ1側の計4つの板バネ14としてもよい。
【0026】
なお、インクカートリッジ1のカートリッジホルダ10から引き出すのは、例えば、インクバッグの交換時であり、前述のようにインクカートリッジ1は幅方向に2分割可能であり、この開動作を容易にするためにインクカートリッジ1の側壁1Aの前面部付近には手掛け用凹部24が形成されている。
【0027】
ここで、
図9に詳細に示すように、第1の付勢手段である板バネ14の先端部14aは、インクカートリッジ1側の上下一対の突起4(
図9には、一方のみ図示)の中央部分に当接する。
【0028】
図10(a)は、板バネ14の概念図を示す。突起4に当接する板バネ14の先端部14aは、誇張して示せば図示したように波打っている。
図10(b)に示す様に、本実施の形態では突起4の中央部分に当接する板バネ14の幅Bを突起4の幅bよりも大きく設定している(b<B)。なお、
図9、
図10には一方(上側)の板バネ13と突起4の部分の構成のみを示しているが、他方(下側)の板バネ13と突起4の部分も
図9に示す構成と同様に構成されている。この構成により、
図10(b)に示す様に、波打った板バネ14の先端部14aのエッジは、突起4に高さが有るため、インクカートリッジの側壁1Aに接触することがない。これにより、インクカートリッジ1の板バネ14による損傷を防止することができる。なお、上述した突起4が無い場合は、板バネ14のエッジが側壁1Aに接触し、
図10(c)に示す様に、インクカートリッジ1に傷が付き、外観が損なわれたり、摩耗粉が発生してカートリッジやカートリッジホルダ周辺を汚したりする恐れがある。
【0029】
図11は、インクカートリッジ1側の突起4のその他の実施の形態を示す。インクカートリッジ1の側壁1Aに溝22を形成し、その溝22内に突起4を形成した。このような構成によってもインクカートリッジ1の着脱時に板バネ14のエッジがインクカートリッジ1の側壁1Aに接触することがなく、インクカートリッジ1の側壁1Aが損傷し外観が損なわれるという不具合の発生が防止される。
【0030】
次に、インクカートリッジ1をプリンタ本体側のカートリッジホルダ10に対して装填する方法について説明する。
【0031】
インクカートリッジ1をプリンタ本体側のカートリッジホルダ10に装填するには、
図3に示すように、インクカートリッジ1の前面部をカートリッジホルダ10の内部に差し込む。このとき、
図4、
図7に示すように、インクカートリッジ1の上面部の前方側方向に設けられたガイドリブ2、2間に板バネ13の先端部13aが来るように位置決めし、インクカートリッジ1に突設された上下一対のガイド突起3をカートリッジホルダ10側の上下一対のガイド溝11に嵌め込む。そして、この状態からインクカートリッジ1を手前側(後方)から奥側(前方)に向かって
図3の矢印方向にカートリッジホルダ10内に押し込むことによって、該インクカートリッジ1がカートリッジホルダ10に装填されるが、このとき、
図9に示すように、インクカートリッジ1に突設された上下一対の突起4にカートリッジホルダ10側の計4つの板バネ14のV字状の先端部14aがそれぞれ当接する。
【0032】
したがって、上述のようにインクカートリッジ1をカートリッジホルダ10に挿入してこれを装填する際には、ガイド手段を構成するインクカートリッジ1側の上下一対のガイド突起3がカートリッジホルダ10側の上下一対のガイド溝11にそれぞれ係合してインクカートリッジ1をカートリッジホルダ10に対して挿入方向を規制しながらガイドする。また、カートリッジホルダ10側の計4つの板バネ14のV字状の各先端部14aがインクカートリッジ1側の上下一対の突起4にそれぞれ当接してインクカートリッジ1を右方へと付勢してカートリッジホルダ10に対して位置決めしている。同時に、カートリッジホルダ10の上面部内側面に設けられた板バネ13がインクカートリッジ1を下方へと付勢して、カートリッジホルダ10に対して位置決めしている。したがって、インクカートリッジ1が上下及び左右にガタつくことなくスムーズにカートリッジホルダ10に装填される。なお、インクを補充するなどのためにインクカートリッジ1をカートリッジホルダ10から取り外すには、以上とは逆の手順でインクカートリッジ1をカートリッジホルダ10から手前側に引き出せば、該インクカートリッジ1をガタつきなくスムーズにカートリッジホルダ10から取り外すことができる。
【0033】
ここで、インクカートリッジ1の装着動作方向の前面部に設けられた規制用突起部18について説明する。まず、インクカートリッジ1には、インクバッグの装着の有無を確認するため貫通形成された窓部20が形成されている。この窓部20によりインクバッグの装着の有無を確認することができる。具体的には、インクバッグをインクカートリッジ1に装着すると、窓部20は硬質の部材で塞がれ、インクカートリッジ1をカートリッジホルダ10に装着すると、プリンタ本体側の検出器が上記硬質の部材に接触することでインクバックの有無を検出することができる。
【0034】
インクバッグをインクカートリッジ1に未装着のまま、インクカートリッジ1をカートリッジホルダ10に装着すると、プリンタ本体側の検出器が窓部20から進入する。規制用突起部18は、インクカートリッジ1の前方への移動動作を規定位置で規制するので、インクバッグが未装着の場合に窓部20からインクバッグの有無を確認する検出器が入り込みインクカートリッジ1及び検出器が損傷することを防止することができる。
【0035】
本実施の形態のインクジェットプリンタによれば、インクカートリッジ1は、ガイド手段(ガイド突起3)によって装着動作の際の移動経路が決められ、且つ付勢手段である板バネ13によって左右及び上下方向の位置調整が行われる。これによりカートリッジホルダ10に対して適正な移動が確保され、装着動作の的確性が確保される。したがって、インクカートリッジの着脱時における衝突や装填不良の発生が解消される。
【0036】
また、ガイド手段は、カートリッジホルダ1の内側面に形成されたガイド溝11と、この内側面に対向するインクカートリッジ1の側壁1Aの外側面に設けられ、ガイド溝11に嵌合するガイド突起と3で構成さし、ガイド突起3は、インクカートリッジ1の側壁1Aの外側面の上部位置と下部位置にそれぞれに設け、ガイド突起3が形成された部分のインクカートリッジ側壁1Aの壁厚を他の部分の厚さよりも薄く形成したので、インクカートリッジ1の着脱時にガイド突起3に大きな外力が加わっても、該ガイド突起3が薄肉部全体として弾性変形するために基端部への応力集中が緩和され、ガイド突起3が基端部から折損するという不具合の発生が防がれる。この結果、インクカートリッジ1の耐久性が高められる。
【0037】
また、付勢手段は、カートリッジホルダ10に設けられた板バネ13、14によって構成され、インクカートリッジ1の側壁1Aの外側面には、板バネ14の幅方向中央部分に当接される突起4が設けたので、インクカートリッジ1の板バネ14による損傷を防止することができる。
【0038】
また、インクカートリッジ1の上面部には、該インクカートリッジ1の装填動作方向の前方側の部分に所定長さ装填動作方向に伸長する突起であるガイドリブ2を有するようにしたので、インクカートリッジ1が上下方向斜めの状態で、インクカートリッジホルダ10に挿入された場合、ガイドリブ2がカートリッジホルダ10の内側面に当たり、インクカートリッジ1の過度な傾きを防いで、スムーズな挿入が可能なように導くことが可能となる。
【0039】
また、インクカートリッジ1の装着動作方向の前面部には、該インクカートリッジ1にインクバッグの装着の有無を確認するため貫通形成された窓部20と、該インクカートリッジ1の前方への移動動作を規定位置でカートリッジホルダ10の内側面に当接されることで規制する規制用突起部18が形成されたので、インクカートリッジ1にインクバッグの装着の有無を窓部20から確認することが可能であり、規制用突起部18により、インクカートリッジ1の前方への移動動作を規定位置で規制することで、インクバックが未装着の場合に窓部20からインクバックの有無を確認する検出器が入り込みインクカートリッジ1及び検出器が損傷することを防止することができる。
【0040】
なお、上記の実施の形態では、幅の一番小さい面を上面、下面としているが、一番広い面を上面、下面としてもよい (※実施例を90度倒した状態)。そのとき、挿入位置調整部材(第1の付勢手段、第2の付勢手段、ガイド手段、ガイドリブ)を設ける位置は、それぞれインクカートリッジ1、カートリッジホルダ10のどちらでもよく、設ける面も側面、上面(又は下面)のいずれでもよい。また、それぞれの面に設ける組み合わせもインクカートリッジ1のカートリッジホルダ10への挿入がスムーズにできればどのような組み合わせでもよい。
なお、本発明は、上記の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。例えば、付勢手段の板バネ13、14は、先端部13a、14aをV字状に折り曲げたが、半円状等であっても良い。
【符号の説明】
【0041】
1 インクカートリッジ
1A インクカートリッジの側壁
1a 側壁の凹部
2 ガイドリブ
3 ガイド突起
4 突起
10 カートリッジホルダ
10a 側壁の矩形窓
11 ガイド溝
12 ガイドレール
13 板バネ(第2の付勢手段)
14 板バネ(第1の付勢手段)
13a、14a 板バネの先端部
18 規制用突起
20 窓部
22 溝
24 手掛け用凹部
B 板バネの幅
b 突起の幅
t 側壁のガイド突起が形成された部分の厚さ
T 側壁のガイド突起の他の部分の厚さ