(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024104903
(43)【公開日】2024-08-06
(54)【発明の名称】3D造形用レーザ光吸収率測定装置および方法
(51)【国際特許分類】
B22F 10/31 20210101AFI20240730BHJP
B22F 12/90 20210101ALI20240730BHJP
B22F 10/28 20210101ALI20240730BHJP
B22F 12/41 20210101ALI20240730BHJP
G01N 25/20 20060101ALI20240730BHJP
【FI】
B22F10/31
B22F12/90
B22F10/28
B22F12/41
G01N25/20 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023009334
(22)【出願日】2023-01-25
(71)【出願人】
【識別番号】301023238
【氏名又は名称】国立研究開発法人物質・材料研究機構
(72)【発明者】
【氏名】本田 博史
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 誠
【テーマコード(参考)】
2G040
4K018
【Fターム(参考)】
2G040AB12
2G040BA02
2G040BA08
2G040BA25
2G040CA02
2G040DA03
2G040DA13
2G040EA06
2G040EB02
2G040HA01
2G040ZA08
4K018AA06
4K018AA07
(57)【要約】
【課題】レーザ光に対する粉末等の材料による吸収率の温度依存性を測定できる3D造形用レーザ光吸収率測定装置を提供すること。
【解決手段】既存の積層造形装置内に窪み63aを付けた金属トレー63を設置すると共に、窪みに測定対象となる試料62を堆積させて、試料62の照射面に対してレーザ光を走査して照射するレーザ装置20と、レーザ光が照射される照射面の照射スポット部の試料温度を、窪みを付けた金属トレーの裏面に取り付けられた熱電対端子30によって測定する熱電対温度計測部42と、金属トレー63をレーザ光方向に昇降させて、レーザ光をデフォーカスするデフォーカス調整装置とを用いて、試料のレーザ光吸収率を測定する方法であって、レーザ装置の照射条件、照射スポット部における昇温温度並びに熱損失の理論的な関係を用いて、試料62又は金属トレー63の実レーザ光吸収率を算出する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
既存の積層造形装置内に、窪みを付けたトレーを設置すると共に、前記窪みに測定対象となる試料を堆積させてある前記トレーと、
前記試料の照射面に対してレーザ光を走査して照射するレーザ装置と、
前記レーザ光が照射される前記照射面の照射スポット部の実温度を、前記窪みを付けたトレーの裏面に取り付けられた熱電対によって測定する熱電対温度計と、
前記トレーを前記レーザ光方向に昇降させて、前記レーザ光をデフォーカスするトレー昇降装置、又は前記レーザ装置により照射されるレーザ光が集光される距離を調整する集光距離調整装置の少なくとも一方を設けてあるデフォーカス調整装置と、
を用いて、試料のレーザ光吸収率を測定する方法であって、
前記デフォーカス調整装置を構成する前記トレー昇降装置又は前記集光距離調整装置によって、前記試料の照射面に対してレーザ光をデフォーカス状態とするデフォーカス設定工程と、
前記熱電対温度計によって、前記レーザ光の照射前、照射中、及び照射後における前記照射スポット部の前記実温度を測定する試料温度測定工程と、
前記レーザ装置の照射条件及び前記レーザ光の前記照射スポット部への照射により前記熱電対温度計で測定する昇温温度、並びに前記熱電対温度計で測定した昇温温度による熱損失の理論的な関係を用いて、前記試料又は前記トレーの少なくとも一方の実レーザ光吸収率を算出する実吸収率算出工程と、
を備えるレーザ光吸収率測定方法。
【請求項2】
前記トレーの前記レーザ装置による加熱に際し、
前記トレーの前記レーザ装置による加熱又は冷却の少なくとも一方の応答時間に相当する時間を数値計算から求め、
過渡現象を含む時刻の温度履歴を解析から省いて、前記照射スポット部における昇温温度による熱損失の理論的な関係を算出し、
前記トレーの前記レーザ装置による加熱の非一様性からくる測定誤差を抑えて、前記試料の実レーザ光吸収率を算出する前記実吸収率算出工程と、
を備える請求項1に記載のレーザ光吸収率測定方法。
【請求項3】
前記実吸収率算出工程での前記試料の実レーザ光吸収率の算出は、次式を用いる請求項1又は2に記載のレーザ光吸収率測定方法。
【数1】
ここで、添え字1は試料を表し、添え字2はトレーを表す。mは質量、cは比熱、Tは温度、A(T)は吸収率の温度依存性を表すパラメータ、L(T)は熱損失の温度依存性を表すパラメータ、Eは照射間隔(ステップ間隔)内の照射エネルギー、Δtは時間的な照射間隔である。
【請求項4】
前記実吸収率算出工程での前記試料の実レーザ光吸収率の算出は、次式を用いる請求項1又は2に記載のレーザ光吸収率測定方法。
【数2】
ここで、添え字1は試料を表し、添え字2はトレーを表す。mは質量、cは比熱、Tは温度、A(T)は吸収率の温度依存性を表すパラメータ、L(T)は熱損失の温度依存性を表すパラメータ、Eは照射間隔(ステップ間隔)内の照射エネルギー、Δtは時間的な照射間隔であり、試料とトレー材料の比熱は許容誤差の範囲内で同じであるとする。
【請求項5】
前記実吸収率算出工程での前記試料の実レーザ光吸収率の算出は、次式を用いる請求項1又は2に記載のレーザ光吸収率測定方法。
【数3】
ここで、添え字1は試料を表し、添え字2はトレーを表す。mは質量、cは比熱、Tは温度、A(T)は吸収率の温度依存性を表すパラメータ、L(T)は熱損失の温度依存性を表すパラメータ、Eは照射間隔(ステップ間隔)内の照射エネルギー、Δtは時間的な照射間隔であり、試料の比熱は許容誤差の範囲内で一定値であるとする。
【請求項6】
前記実吸収率算出工程での前記試料の実レーザ光吸収率の算出は、次式を用いる請求項1又は2に記載のレーザ光吸収率測定方法。
【数4】
ここで、添え字2はトレーを表す。mは質量、cは比熱、Tは温度、A(T)は吸収率の温度依存性を表すパラメータ、L(T)は熱損失の温度依存性を表すパラメータ、Eは照射間隔(ステップ間隔)内の照射エネルギー、Δtは時間的な照射間隔であり、試料の熱容量はトレーの熱容量と比べ許容誤差の範囲内で無視できるとする。
【請求項7】
前記デフォーカス調整装置及びデフォーカス設定工程により、前記レーザ光をデフォーカスしつつ高速に走査することで、その積層造形環境下での前記試料のレーザ光吸収率をその温度依存性とともに測定する請求項1乃至6に記載のレーザ光吸収率測定方法。
【請求項8】
前記デフォーカス調整装置及びデフォーカス設定工程により、前記レーザ光をデフォーカスしつつ高速に走査することで、前記レーザ光が照射される前記照射面の照射スポット部では前記試料が溶融しない範囲で温度上昇する請求項1乃至7に記載のレーザ光吸収率測定方法。
【請求項9】
前記レーザ光をデフォーカスしつつ高速に走査することは、前記レーザ光が照射される前記照射面の照射スポット部の温度上昇が、前記試料と前記トレーの前記レーザ装置による加熱の一様性が許容限度内に抑えられるように、前記レーザ光の前記照射面上のストライプの間隔と長さ、並びに前記レーザ光のパワーと走査速度が定められる請求項7又は8に記載のレーザ光吸収率測定方法。
【請求項10】
さらに、各走査線の間隔、その全走査線パターンを照射する回数やその全走査線パターン照射の時間間隔を変えることにより、加熱パターンも変えるレーザ光照射制御部を備える請求項1乃至9に記載のレーザ光吸収率測定方法。
【請求項11】
前記試料は、金属粉末、セラミックス粉末、又はプラスチック粉末である請求項1乃至10に記載のレーザ光吸収率測定方法。
【請求項12】
前記トレーは、金属トレー、セラミックス製トレー、炭素繊維強化セラミックス製トレー、ガラス繊維強化セラミックス製トレー、セラミックス繊維強化セラミックス製トレー、炭素繊維強化炭素複合材料製トレー、炭素繊維強化プラスチックトレー、若しくはガラス繊維強化プラスチックトレーの何れかである請求項1乃至11に記載のレーザ光吸収率測定方法。
【請求項13】
既存の積層造形装置内に、トレーを設置すると共に、前記トレーの照射面に対してレーザ光を走査して照射するレーザ装置と、
前記レーザ光が照射される前記照射面の照射スポット部の実温度を、前記トレーの裏面に取り付けられた熱電対によって測定する熱電対温度計と、
前記トレーを前記レーザ光方向に昇降させて、前記レーザ光をデフォーカスするトレー昇降装置、又は前記レーザ装置により照射されるレーザ光が集光される距離を調整する集光距離調整装置の少なくとも一方を設けてあるデフォーカス調整装置を用いて、前記トレーのレーザ光吸収率を測定する方法であって、
前記デフォーカス調整装置を構成する前記トレー昇降装置又は前記集光距離調整装置によって、前記トレーの照射面に対してレーザ光をデフォーカス状態とするデフォーカス設定工程と、
前記熱電対温度計によって、前記レーザ光の照射前、照射中、及び照射後における前記照射スポット部の前記実温度を測定する温度測定工程と、
前記レーザ装置の照射条件及び前記レーザ光の前記照射スポット部への照射により前記熱電対温度計で測定する昇温温度、並びに前記熱電対温度計で測定した昇温温度による熱損失の理論的な関係を用いて、前記トレーの実レーザ光吸収率を算出する実吸収率算出工程と、
を備えるレーザ光吸収率測定方法。
【請求項14】
既存の積層造形装置内に、窪みを付けたトレーを設置すると共に、前記窪みに測定対象となる試料を堆積させてある前記トレーと、
前記試料の照射面に対してレーザ光を走査して照射するレーザ装置と、
前記レーザ光が照射される前記照射面の照射スポット部の実温度を、窪みを付けたトレーの裏面に取り付けられた熱電対によって測定する熱電対温度計測部と、
前記トレーを前記レーザ光方向に昇降させて、前記レーザ光をデフォーカスするトレー昇降装置、又は前記レーザ装置により照射されるレーザ光が集光される距離を調整する集光距離調整装置の少なくとも一方を設けてあるデフォーカス調整装置と、
を用いて、試料のレーザ光吸収率を測定する装置であって、
前記デフォーカス調整装置は、前記トレー昇降装置又は前記集光距離調整装置によって、前記試料の照射面に対してレーザ光をデフォーカス状態とし、
前記熱電対温度計測部は、前記熱電対によって、前記レーザ光の照射前、照射中、及び照射後おける前記照射スポット部の前記実温度を測定すると共に、
前記レーザ装置の照射条件及び前記レーザ光の前記照射スポット部への照射により前記熱電対温度計測部で測定する昇温温度、並びに前記熱電対温度計測部で測定した昇温温度による熱損失の理論的な関係を用いて、前記試料又は前記トレーの少なくとも一方の実レーザ光吸収率を算出する実吸収率算出部、
を備えるレーザ光吸収率測定装置。
【請求項15】
前記試料は、金属粉末、セラミックス粉末、又はプラスチック粉末である請求項14に記載のレーザ光吸収率測定装置。
【請求項16】
前記トレーは、金属トレー、セラミックス製トレー、炭素繊維強化セラミックス製トレー、ガラス繊維強化セラミックス製トレー、セラミックス繊維強化セラミックス製トレー、炭素繊維強化炭素複合材料製トレー、炭素繊維強化プラスチックトレー、若しくはガラス繊維強化プラスチックトレーの何れかである請求項14又は15に記載のレーザ光吸収率測定装置。
【請求項17】
既存の積層造形装置内に、トレーを設置すると共に、前記トレーの照射面に対してレーザ光を走査して照射するレーザ装置と、
前記レーザ光が照射される前記照射面の照射スポット部の実温度を、前記トレーの裏面に取り付けられた熱電対によって測定する熱電対温度計測部と、
前記トレーを前記レーザ光方向に昇降させて、前記レーザ光をデフォーカスするトレー昇降装置、又は前記レーザ装置により照射されるレーザ光が集光される距離を調整する集光距離調整装置の少なくとも一方を設けてあるデフォーカス調整装置と、
を用いて、前記トレーのレーザ光吸収率を測定する装置であって、
前記デフォーカス調整装置を構成する前記トレー昇降装置又は前記集光距離調整装置によって、前記トレーの照射面に対してレーザ光をデフォーカス状態とし、
前記熱電対温度計測部は、前記熱電対によって、前記レーザ光の照射前、照射中、及び照射後おける前記照射スポット部の前記実温度を測定すると共に、
前記レーザ装置の照射条件及び前記レーザ光の前記照射スポット部への照射により前記熱電対温度計測部で測定する昇温温度、並びに前記熱電対温度計測部で測定した昇温温度による熱損失の理論的な関係を用いて、前記トレーの実レーザ光吸収率を算出する実吸収率算出部、
を備えるレーザ光吸収率測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉末床溶融結合法等に用いて好適な3D造形用レーザ光吸収率測定装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
材料による光の吸収率は、いくつかの典型的な材料については、理想的な表面状態に対し求められているが、その材料の種類は多くはなく、また、実際の材料の使用環境下ではその材料の表面状態は理想的なものとは異なり、光の吸収率も変化する可能性がある。さらには、その吸収率の材料の温度依存性については、ほとんど求められていないのが現状である。
【0003】
非特許文献1、2においては、積層造形装置を使わずに、専用の測定系を外部の環境で構築し、そこで使用しているレーザ波長に対する金属プレートおよび金属粉末の温度依存性を測定している。また、非特許文献3においては、特別に作成した積層造形装置を用い、造形過程中でのレーザ光の吸収率測定を行っている。
特許文献1においては、赤外線カメラ装置によって、レーザ光照射部位の昇温過程を測定することで、試料のレーザ光吸収率測定をする方法が提案されている。特許文献2においては、レーザ加工機等を構成する光学部品の吸収率測定方法として、短時間に複数回の温度を自動計測して、統計処理により温度上昇曲線を決定することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-207344号公報
【特許文献2】特開昭62-297745号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】A. Rubenchik, et al., “Direct measurements of temperature-dependent laser absorptivity of metal powders,” Appl. Opt. 54, 7230-7233 (2015).
【非特許文献2】A. M. Rubenchik, et al., “Temperature-dependent 780-nm laser absorption by engineering grade aluminum, titanium, and steel alloy surfaces,” Opt. Eng. 53, 122506 (2014).
【非特許文献3】J. Trapp, et al., “In situ absorptivity measurements of metallic powders during laser powder-bed fusion additive manufacturing,” Appl. Mater. Today 9, 341-349 (2017).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、非特許文献1、2では、積層造形を行う環境ではなく、別に外部で用意した専用の測定装置の環境下で吸収率の温度依存性を得ているため、使用レーザの波長や測定環境が実際の積層造形時のものとは異なるという課題がある。
また、非特許文献3では、特別に作成した積層造形装置の環境下での造形過程中のレーザ光の吸収率を得ているが、粉末が溶融しキーホールが発生したときの全体としての吸収率であり、また、吸収率の温度依存性は測定されていない。粉末が溶融していない条件での測定においても、その測定条件での全体としての吸収率であり、温度依存性は測定されていないという課題がある。
【0007】
特許文献1では、赤外線カメラ装置によって試料温度の非接触測定が提案されているが、金属粉末3Dプリンタに赤外線カメラ装置を外付けで装着しようとする場合に、必ずしも観測用窓が設けられているとは限らず、適用できる金属粉末3Dプリンタの種類が限定されていた。
特許文献2では、赤外透明材料の光学特性を測定する用途であるため、本発明の用途とする金属粉末3Dプリンタのようにレーザ光の照射が細いビーム径に収束された状態で、高速で往復走査している状況での試料のレーザ光の吸収率測定には、そのままでは適用できないという課題があった。
【0008】
本発明は、上記の課題を解決するもので、実際に使用されている材料および環境下でのレーザ光の吸収率を明らかにするため、積層造形が可能な装置を用い、当該装置で使用されているレーザ光に対する粉末等の材料による吸収率の温度依存性を測定できる3D造形用レーザ光吸収率測定装置および方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そこで、本発明者は、最近普及の進んでいるレーザ積層造形装置を活用し、その使用レーザ光に対する材料による吸収率の温度依存性の測定を、その積層造形装置で設定できる環境を、デフォーカス調整装置を用いて拡張すれば、より適切な測定環境下で実現することが出来るのではないかと考え、本発明の3D造形用レーザ光吸収率測定装置および方法を着想した。
【0010】
[1]本発明の3D造形用レーザ光吸収率測定方法は、例えば、
図1、
図6、
図7に示すように、既存の積層造形装置内に、窪み63aを付けたトレー63を設置すると共に、前記窪みに測定対象となる試料62を堆積させて、試料62の照射面に対してレーザ光を走査して照射するレーザ装置20と、前記レーザ光が照射される前記照射面の照射スポット部の実温度を、窪みを付けたトレー63の裏面に取り付けられた熱電対端子30によって測定する熱電対温度計測部42と、トレー63を前記レーザ光方向に昇降させて、前記レーザ光をデフォーカスするトレー昇降装置(46、64)、又はレーザ装置20により照射されるレーザ光が集光される距離を調整する集光距離調整装置(47、29)の少なくとも一方を設けてあるデフォーカス調整装置と、を用いて、試料のレーザ光吸収率を測定する方法であって、
前記デフォーカス調整装置を構成するトレー昇降装置(46、64)又は/及び集光距離調整装置(47、29)によって、試料62の照射面に対してレーザ光をデフォーカス状態とするデフォーカス設定工程(S200)と、熱電対温度計測部42によって、前記レーザ光の照射前、照射中、及び照射後における前記照射スポット部の前記実温度を測定する試料温度測定工程(S210)と、レーザ装置20の照射条件及び前記レーザ光の前記照射スポット部への照射により熱電対温度計測部42で測定する昇温温度、並びに熱電対温度計測部42で測定した昇温温度による熱損失の理論的な関係を用いて、試料62又はトレー63の少なくとも一方の実レーザ光吸収率を算出する実吸収率算出工程(S220)を備える。
【0011】
[2]本発明の3D造形用レーザ光吸収率測定方法[1]において、好ましくは、トレー63のレーザ装置20による加熱に際し、
トレー63のレーザ装置20による加熱又は冷却の少なくとも一方の応答時間に相当する時間を数値計算から求め、
過渡現象を含む時刻の温度履歴を解析から省いて、前記照射スポット部における昇温温度による熱損失の理論的な関係を算出し、
トレー63のレーザ装置20による加熱の非一様性からくる測定誤差を抑えて、試料62の実レーザ光吸収率を算出する前記実吸収率算出工程と、を備えるとよい。
[3]本発明の3D造形用レーザ光吸収率測定方法[1]又は[2]において、好ましくは、前記実吸収率算出工程での試料の実レーザ光吸収率の算出は、次式を用いるとよい。
【数1】
ここで、添え字1は試料を表し、添え字2はトレーを表す。mは質量、cは比熱、Tは温度、A(T)は吸収率の温度依存性を表すパラメータ、L(T)は熱損失の温度依存性を表すパラメータ、Eは照射間隔(ステップ間隔)内の照射エネルギーである。
[4]本発明の3D造形用レーザ光吸収率測定方法[1]又は[2]において、好ましくは、前記実吸収率算出工程での試料の実レーザ光吸収率の算出は、次式を用いるとよい。
【数2】
ここで、試料とトレー材料の比熱は許容誤差の範囲内で同じであるとする。
[5]本発明の3D造形用レーザ光吸収率測定方法[1]又は[2]において、好ましくは、前記実吸収率算出工程での試料62の実レーザ光吸収率の算出は次式を用いるとよい。
【数3】
ここで、試料の比熱は、許容誤差の範囲内で一定値であるとする。
[6]本発明の3D造形用レーザ光吸収率測定方法[1]又は[2]において、好ましくは、前記実吸収率算出工程での試料62の実レーザ光吸収率の算出は、次式を用いるとよい。
【数4】
ここで、試料の熱容量はトレーの熱容量と比べ、許容誤差の範囲内で無視できるとする。
【0012】
[7]本発明の3D造形用レーザ光吸収率測定方法[1]乃至[6]において、好ましくは、前記デフォーカス調整装置及びデフォーカス設定工程により、前記レーザ光をデフォーカスしつつ高速に走査することで、その積層造形環境下での試料62のレーザ光吸収率をその温度依存性とともに測定するとよい。
ここで、デフォーカスとは、レーザ光をフォーカスして試料の照射面に照射する場合に比較して、照射光の面積を拡大することをいう。レーザ光をフォーカスして試料の照射面に照射する場合は、照射面の照射スポット部の試料温度は試料の溶融温度を超えることになるのに対して、レーザ光をデフォーカスすることで、照射面の照射スポット部の試料に照射されるエネルギーが減少して、当該試料が溶融しない程度の温度上昇に抑えることが出来る。また、高速に走査とは、レーザ光を通常の速度で走査する場合に比較して、高速に走査することで照射面の照射スポット部の試料に照射されるエネルギーを減少させて、当該試料が溶融しない程度の温度上昇に抑えることをいう。レーザ光を通常の速度で走査する場合は、照射面の照射スポット部の試料温度は試料の溶融温度を超えることになる。
[8]本発明の3D造形用レーザ光吸収率測定方法[1]乃至[7]において、好ましくは、前記デフォーカス調整装置及びデフォーカス設定工程により、前記レーザ光をデフォーカスしつつ高速に走査することで、前記レーザ光が照射される前記照射面の照射スポット部では試料62が溶融しない範囲で温度上昇するとよい。
[9]本発明の3D造形用レーザ光吸収率測定方法[7]又は[8]において、好ましくは、レーザ光をデフォーカスしつつ高速に走査することは、前記レーザ光が照射される前記照射面の照射スポット部の温度上昇が、試料62とトレー63のレーザ装置20による加熱の一様性が許容限度内に抑えられるように、前記レーザ光の前記照射面上のストライプの間隔と長さ、並びに前記レーザ光のパワーと走査速度が定められるとよい。
[10]本発明の3D造形用レーザ光吸収率測定方法[1]乃至[9]において、好ましくは、さらに、各走査線の間隔、その全走査線パターンを照射する回数やその全走査線パターン照射の時間間隔を変えることにより、加熱パターンも変えるレーザ光照射制御部を備えるとよい。
[11]本発明の3D造形用レーザ光吸収率測定方法[1]乃至[10]において、好ましくは、試料は、金属粉末、セラミックス粉末、又はプラスチック粉末であるとよい。
[12]本発明の3D造形用レーザ光吸収率測定方法[1]乃至[11]において、好ましくは、前記トレーは、金属トレー、セラミックス製トレー、炭素繊維強化セラミックス製トレー、ガラス繊維強化セラミックス製トレー、セラミックス繊維強化セラミックス製トレー、炭素繊維強化炭素複合材料(C/Cコンポジット:Carbon Fiber Reinforced Carbon Composite)製トレー、炭素繊維強化プラスチックトレー、若しくはガラス繊維強化プラスチックトレーの何れかであるとよい。
【0013】
[13]本発明の3D造形用レーザ光吸収率測定方法は、例えば、
図1、
図6に示すように、既存の積層造形装置内に、トレー63を設置すると共に、トレー63の照射面に対してレーザ光を走査して照射するレーザ装置20と、前記レーザ光が照射される前記照射面の照射スポット部の実温度を、トレー63の裏面に取り付けられた熱電対端子30によって測定する熱電対温度計測部42と、トレー63を前記レーザ光方向に昇降させて、前記レーザ光をデフォーカスするトレー昇降装置(46、64)、又はレーザ装置20により照射されるレーザ光が集光される距離を調整する集光距離調整装置(47、29)の少なくとも一方を設けてあるデフォーカス調整装置を用いて、トレー63のレーザ光吸収率を測定する方法であって、
前記デフォーカス調整装置を構成するトレー昇降装置(46、64)又は集光距離調整装置(47、29)によって、トレー63の照射面に対してレーザ光をデフォーカス状態とするデフォーカス設定工程と、熱電対温度計測部42によって、前記レーザ光の照射前、照射中、及び照射後における前記照射スポット部の前記実温度を測定する温度測定工程と、レーザ装置20の照射条件及び前記レーザ光の前記照射スポット部への照射により熱電対温度計測部42で測定する昇温温度、並びに熱電対温度計測部42で測定した昇温温度による熱損失の理論的な関係を用いて、トレー63の実レーザ光吸収率を算出する実吸収率算出工程を備える。
【0014】
[14]本発明の3D造形用レーザ光吸収率測定装置は、例えば、
図1、
図6に示すように、既存の積層造形装置内に、窪み63aを付けたトレー63を設置すると共に、前記窪みに測定対象となる試料62を堆積させて、試料62の照射面に対してレーザ光を走査して照射するレーザ装置20と、前記レーザ光が照射される前記照射面の照射スポット部の実温度を、窪みを付けたトレーの裏面に取り付けられた熱電対端子30によって測定する熱電対温度計測部42と、トレー63を前記レーザ光方向に昇降させて、前記レーザ光をデフォーカスするトレー昇降装置(46、64)、又はレーザ装置20により照射されるレーザ光が集光される距離を調整する集光距離調整装置(47、29)の少なくとも一方を設けてあるデフォーカス調整装置を用いて、試料のレーザ光吸収率を測定する装置であって、
前記デフォーカス調整装置を構成するトレー昇降装置(46、64)又は/及び集光距離調整装置(47、29)によって、試料62の照射面に対してレーザ光をデフォーカス状態とし、熱電対温度計測部42は、熱電対端子30によって、前記レーザ光の照射前、照射中、及び照射後における前記照射スポット部の前記実温度を測定すると共に、レーザ装置20の照射条件、前記レーザ光の前記照射スポット部への照射により昇温する、熱電対温度計測部42で測定される昇温温度、並びに熱電対温度計測部42で測定された昇温温度による熱損失の理論的な関係を用いて、試料62又はトレー63の少なくとも一方の実レーザ光吸収率を算出する実吸収率算出部45を備える。
[15]本発明の3D造形用レーザ光吸収率測定装置[14]において、好ましくは、試料は、金属粉末、セラミックス粉末、又はプラスチック粉末であるとよい。
[16]本発明の3D造形用レーザ光吸収率測定装置[14]において、好ましくは、前記トレーは、金属トレー、セラミックス製トレー、炭素繊維強化セラミックス製トレー、ガラス繊維強化セラミックス製トレー、セラミックス繊維強化セラミックス製トレー、炭素繊維強化炭素複合材料(C/Cコンポジット:Carbon Fiber Reinforced Carbon Composite)製トレー、炭素繊維強化プラスチックトレー、若しくはガラス繊維強化プラスチックトレーの何れかであるとよい。
[17]本発明の3D造形用レーザ光吸収率測定装置は、既存の積層造形装置内に、トレー63を設置すると共に、トレー63の照射面に対してレーザ光を走査して照射するレーザ装置20と、前記レーザ光が照射される前記照射面の照射スポット部の実温度を、トレー63の裏面に取り付けられた熱電対端子30によって測定する熱電対温度計測部42と、トレー63を前記レーザ光方向に昇降させて、前記レーザ光をデフォーカスするトレー昇降装置(46、64)、又はレーザ装置20により照射されるレーザ光が集光される距離を調整する集光距離調整装置(47、29)の少なくとも一方を設けてあるデフォーカス調整装置を用いて、トレー63のレーザ光吸収率を測定する装置であって、
前記デフォーカス調整装置を構成するトレー昇降装置(46、64)又は集光距離調整装置(47、29)によって、トレー63の照射面に対してレーザ光をデフォーカス状態とし、熱電対温度計測部42は、熱電対端子30によって、前記レーザ光の照射前、照射中、及び照射後における前記照射スポット部の前記実温度を測定すると共に、レーザ装置20の照射条件、前記レーザ光の前記照射スポット部への照射により昇温する、熱電対温度計測部42で測定される昇温温度、並びに熱電対温度計測部42で測定された昇温温度による熱損失の理論的な関係を用いて、トレー63の実レーザ光吸収率を算出する実吸収率算出部45を備える。
【発明の効果】
【0015】
本発明の3D造形用レーザ光吸収率測定装置は、各種粉末を使用する積層造形において、その積層造形装置の使用環境を、デフォーカス調整装置を用いて拡張することで、3D造形用材料のレーザ光吸収率測定のより適切な測定環境が実現することが出来る。その測定値は積層造形物を製作する際の最適パラメータの決定のための数値計算等への使用や造形物作成のための積層条件の絞り込み、積層造形効率や造形物の諸特性の向上などに活用できる。
既存の積層造形装置に用いられているレーザ光およびレーザ光の走査システムを活用し、レーザをデフォーカスしつつ高速に走査することで、その積層造形環境下での粉末等の材料のレーザ吸収率をその温度依存性とともに測定でき、3D造形用レーザ光吸収率測定装置が最小限度の追加コストで構築できる。
【0016】
請求項13に記載する本発明の3D造形用レーザ光吸収率測定方法や、請求項17に記載する3D造形用レーザ光吸収率測定装置によれば、試料を載荷していない、トレーのみでの吸収率の温度依存性についても測定できる。そして、この測定値は、そのトレーと同じ材質の材料のレーザ溶接やレーザ表面改質等に対し、数値計算等への使用や加工条件の絞り込みなどに活用できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の一実施例である、3D造形用レーザ光吸収率測定装置の機能ブロック図である。
【
図2】粉末床溶融結合法に用いる金属粉末3Dプリンタの一実施例を示す、全体の機能ブロック図である。
【
図3】金属粉末3Dプリンタの動作の一例を説明するフローチャートである。
【
図4】金属粉末試料のレーザ光照射範囲の一実施例を示す要部構成図で、(A)は斜視図、(B)は要部断面図を表している。
【
図5】レーザ光吸収率の算定式を説明する図で、ステップ状加熱過程からの吸収率の算定式を説明する図である。
【
図6】本発明の変形実施形態である、3D造形用レーザ光吸収率測定装置の機能ブロック図である。
【
図7】本発明の3D造形用レーザ光吸収率測定方法の実施形態である、3D造形用レーザ光吸収率測定装置の動作の一例を説明するフローチャートである。
【
図8A】トレー単体の場合における、あるデフォーカス状態でのステップ状加熱での、吸収率A(T)を求めた図である。
【
図8B】チタン合金(Ti-6Al-4V)粉末の場合における、あるデフォーカス状態でのステップ状加熱での、吸収率A(T)を求めた図である。
【
図9A】インコネル(登録商標)738LC粉末の場合における、あるデフォーカス状態でのステップ状加熱での、吸収率A(T)を求めた図である。
【
図9B】インコネル(登録商標)718粉末の場合における、あるデフォーカス状態でのステップ状加熱での、吸収率A(T)を求めた図である。
【
図10A】トレー単体の場合における、あるデフォーカス状態での連続的加熱での、吸収率A(T)を求めた図である。
【
図10B】チタン合金(Ti-6Al-4V)粉末の場合における、あるデフォーカス状態での連続的加熱での、吸収率A(T)を求めた図である。
【
図11A】インコネル(登録商標)738LC粉末の場合における、あるデフォーカス状態での連続的加熱での、吸収率A(T)を求めた図である。
【
図11B】インコネル(登録商標)718粉末の場合における、あるデフォーカス状態での連続的加熱での、吸収率A(T)を求めた図である。
【
図12】あるデフォーカス状態でのトレー単体を模擬した数値計算による一回目のステップ状加熱過程での温度分布の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を用いて本発明を説明する。
図1は、本発明の実施に用いられる3D造形用レーザ光吸収率測定装置の機能ブロック図である。本発明の3D造形用レーザ光吸収率測定装置は、金属粉末積層造形装置を用いて、金属粉末等の材料による吸収率の温度依存性を測定する方法である。
図1に示すレーザ光吸収率測定装置10は、金属粉末試料62にレーザ光L1を照射することによって金属粉末試料62のレーザ光吸収率(実レーザ光吸収率A(T))を測定する装置である。このとき、金属粉末試料62は、レーザ照射によって3D造形を行なう金属部材と同じ材質、形状及び仕様であることが好ましい。本実施形態においては、金属トレー63及び金属粉末試料62は、レーザ加工が可能な材料であればよく、例えばチタン合金(Ti-6Al-4V)、ハステロイ(登録商標)のようなニッケル基超合金、およびSUS316のようなステンレス鋼等がよい。金属トレー63は、中央部にトレー凹部63aを有しており、このトレー凹部63aに金属粉末試料62が散布される。
【0019】
また、金属粉末試料62の照射面62aは、レーザ光L1の照射前において、粉体状態であるものとする。このため、照射面62aでは、金属トレー63の研磨された鏡面状態の場合よりもレーザ光L1が吸収されやすくなる。これにより、照射したレーザ光L1を照射面62aに吸収させ、昇温させることによって金属粉末試料62の実レーザ光吸収率A(T)を求める本発明にとって精度のよい結果を得やすくなる。なお、実レーザ光吸収率A(T)の詳細については、後述する。
金属トレー昇降装置64は、金属トレー63をレーザ光方向に昇降させるもので、昇降する範囲は、例えば20~200mm程度とする。金属トレー昇降装置64は、金属トレー63をレーザ光方向に昇降させることで、レーザ光をデフォーカスするデフォーカス機能部として設けられている。金属トレー係合部65は、金属トレー昇降装置64の昇降する部位に設けられたもので、金属トレー63と係合している。
【0020】
図1に示すように、レーザ光吸収率測定装置10は、レーザ装置20と、熱電対端子30と、制御部40と、を備える。レーザ装置20は、レーザ発振器21、レーザヘッド22、及び筐体23を備える。レーザヘッド22は、筐体23内に配置される。
【0021】
本実施形態において、レーザ発振器21は、ファイバーレーザの発振器である。レーザ発振器21が発振するレーザ光L1の波長は、1070nm(1.07μm)前後である。また、レーザ発振器21は、制御部40の制御によって出力の変更が可能となっている。
【0022】
なお、レーザ発振器21は、ファイバーレーザの発振器に限らず、半導体レーザ、YAGレーザ、CO2レーザの発振器であってもよい。レーザ光の波長は3D造形では金属に関しては青色のものも使われてきており(樹脂では紫外線)、例えば各レーザ光の波長は0.4μm~1.2μmの範囲にあることが好ましい。レーザ発振器21は、レーザ発振器21から発振されたレーザ光L1をレーザヘッド22に伝送する機構25を備える。
【0023】
図に示すように、筐体23内に配置されるレーザヘッド22は、金属粉末試料62の照射面62aから距離Xを隔て、且つ金属粉末試料62の照射面62aに対向して配置される。
レーザヘッド22は、Z軸レンズ24、偏向鏡26、及び偏向制御装置28を有している。偏向鏡26は、レーザ光L1の進行方向を変換する。本実施形態において、偏向鏡26は、偏向制御装置28からの偏向制御信号によって、金属粉末試料62の照射面62aの所望の位置に、レーザ光L1を照射しており、例えば所定の周期と空間間隔でスキャンしている。レーザ光L1は、偏向鏡26によって偏向光線として金属粉末試料62の平面に偏向され、Z軸レンズ24により集光される。Z軸レンズ24は2枚のレンズで構成され、集光距離を変えるもので、例えば2枚のレンズ(平凹と両凸)で構成されている。
なお、Z軸レンズ24を用いたビーム集光機構に代わる例としては、Fθレンズ、テレセントリックレンズ、アキシコンレンズなど、又はこれらを任意に組み合わせたものが挙げられる。ビーム集光機構には、AODシステム、ズームレンズ、電動可変ビームエキスパンダ、可変形状ミラー、可変半径ミラー、可変焦点モアレレンズ、電動アイリス絞り、電動アパーチャホイールなど、又はこれらを任意に組み合わせたものが付随していてもよい。
【0024】
次に、熱電対端子30について説明する。熱電対端子30は、金属トレー63の底面に装着されるもので、金属トレー63の底面の熱電対端子装着部位の温度に対応する起電力を生成する。熱電対端子30は、二種類の異なる金属導体で構成された温度センサで、ゼーベック効果により、2種類の金属の接合部(測温接点)の温度と計測器側接点(基準接点)の温度差Tによる電圧を発生する。熱電対を使用して温度を計測する場合、計測器でこの電圧を測定し、次の2種類の測定方法がある。
第1は、基準接点を0℃(冷接点補償)にして温度を直読する方法である。
第2は、基準接点の気温を測り(基準接点補償)、温度差に加算する方法である。
二種類の異なる金属導体としては、例えば、+極側が白金ロジウム合金、-極側が白金であり、例えば0~+1100℃の範囲の測定できる。また、+極側がニッケルおよびクロムを主とした合金、-極側がニッケルおよびアルミニウムを主とした合金であり、例えば-200~+1200℃の範囲の測定できる。
【0025】
制御部40は、レーザ光照射制御部41と、熱電対温度計測部42と、金属トレー位置制御部43と、金属粉末供給制御部44と、実吸収率算出部45と、金属トレー高さ制御部46を備える。
レーザ光照射制御部41は、レーザ装置20のレーザ発振器21に電気的に接続され、レーザ光L1の照射のON/OFFによって照射時間を制御するとともに、レーザ光L1の照射出力Pを制御し、さらにZ軸レンズ24へ集光に関する信号、偏向制御装置28へスキャン制御信号を送る。レーザ光照射制御部41は、さらに、レーザ光L1をデフォーカスしつつ高速に走査する制御信号を出力して、レーザ光L1が照射される照射面の照射スポット部の温度上昇が、金属粉末試料62と金属トレー63のレーザ装置20による加熱の一様性が許容限度内に抑えられるように、レーザ光L1の照射面上のストライプの間隔と長さ、並びにレーザ光L1のパワーと走査速度とを制御する。
熱電対温度計測部42は、熱電対端子30と電気的に接続され、熱電対端子30の二種類の異なる金属導体の発生電圧から、熱電対端子30の温度(実温度)データに変換する。
【0026】
金属トレー位置制御部43は、金属トレー63の前後方向、幅方向、および高さ方向の三次元的な位置を制御している。
金属粉末供給制御部44は、図示しないホッパーに貯蔵された金属粉末を、金属トレー63に設けられた窪みとしてのトレー凹部63aに供給することを制御している。
実吸収率算出部45は、金属トレー63の底面に装着された熱電対端子30の装着部位での温度に応じた、金属粉末試料62のレーザ光実吸収率を算出する。
金属トレー高さ制御部46は、金属トレー昇降装置64に制御信号を送り、金属トレー63をレーザ光方向に昇降させて、レーザ光をデフォーカスするもので、デフォーカス制御部として動作する。金属トレー高さ制御部46と金属トレー昇降装置64は、デフォーカス調整装置として動作する。
【0027】
本発明の3D造形用レーザ光吸収率測定装置に用いられる金属粉末積層造形装置には、例えば、ドイツ連邦共和国、リューベック(Lubeck)市に所在するSLMソリューション社製のSLM280を用いることができる。
[レーザ金属粉末積層造形装置の概要]
図2は、粉末床溶融結合法に用いる金属粉末3Dプリンタの一実施例を示す、全体機能ブロック図である。
図2を参照して、積層造形装置100は、例えば、レーザ積層造形装置である。積層造形装置100は、レーザ装置110と、ガルバノミラー120と、制御装置130と、チャンバ200とを備える。
【0028】
レーザ装置110は、レーザ光を出射する。レーザ装置110はたとえば、ファイバーレーザやCO2レーザ等である。レーザ装置110には、レンズ系(図示せず)を設けてもよい。レンズ系は、レーザ装置110からレーザ光を受け、レーザ光を収束してレーザ112を形成する。ガルバノミラー120は、レーザ112の照射操作を行う。つまり、ガルバノミラー120により、レーザ112が照射される位置が調整される。
【0029】
チャンバ200は、層形成室210と、造形テーブル230と、粉末供給室220と、リコータ250とを備える。レーザ112の照射操作の際に、金属粉末粒子140が酸化されるのを防止するため、チャンバ200内は不活性ガス(アルゴン、窒素等)を充填された状態を維持するか、或いは真空状態に維持される。
【0030】
層形成室210は、上端に開口を有する筐体状である。造形テーブル230は、層形成室210に収納され、上下方向に昇降可能に支持される。造形テーブル230は、図示しないモータにより昇降する。
【0031】
粉末供給室220は、層形成室210の隣に配置される。粉末供給室220は筐体状であり、上下方向に昇降可能なピストン240を内部に備える。ピストン240上には、金属粉末粒子140が積層されている。金属粉末粒子140は、造形物の原料となる。ピストン240が上昇することにより、粉末供給室220の上部開口から金属粉末粒子140の層が排出される。金属粉末粒子140は、例えば、耐熱性の高いニッケル基超合金、コバルト基超合金、鉄基超合金の金属粉末で、商品名として、例えばハステロイがある。なお、金属粉末粒子140に代えて、Al2O3等に代表されるセラミックスを金属粉末粒子140と共に用いてもよく、またセラミックス粒子のような無機粉末粒子を単体で用いてもよい。
【0032】
リコータ250は、粉末供給室220の上部開口の近傍に配置される。リコータ250は、図示しないモータにより特定方向(水平方向)に移動し、粉末供給室220及び層形成室210の間を往復する。
図2では、リコータ250は、X方向に往復移動する。
リコータ250は、X方向に移動することにより、粉末供給室220から排出された金属粉末粒子140の層を水平方向に移動させて層形成室210に供給する。層形成室210の造形テーブル230上に堆積された金属粉末粒子140により、造形テーブル230上に金属粉末粒子140からなる金属粉末層260が形成される。リコータ250がX方向に移動することにより、金属粉末粒子140が水平方向に移動し、金属粉末層260の表面を平坦に整える。
【0033】
制御装置130は、図示しない中央演算処理装置(CPU)と、メモリと、ハードディスクドライブ(HDD)等の記憶装置とを備える。記憶装置には、周知のCAD(Computer Aided Design)アプリケーションとCAM(Computer Aided Manufacturing)アプリケーションとが格納される。制御装置130は、CADアプリケーションを利用して、製造したい造形物の3次元形状データを作成する。
【0034】
制御装置130はさらに、CAMアプリケーションを利用して、3次元データに基づいて、加工条件データを作成する。積層造形法では、レーザ112により形成される複数の造形物部が積層されて造形物が形成される。加工条件データは、各造形物部が形成されるときの加工条件を含む。つまり、加工条件データは、各造形物部ごとに作成される。制御装置130は、加工条件データに基づいてレーザ装置110、レンズ系及びガルバノミラー120を制御して、レーザ112の出力、走査速度、走査間隔及び照射位置を調整する。
【0035】
[製造プロセスの詳細]
図3は、金属粉末3Dプリンタの動作の一例を説明するフローチャートである。金属粉末積層造形装置では、造形対象物を
図3に示すようなフローチャートに従い、次の工程で製造する。
金属粉末積層造形装置の事前準備工程として、真空ポンプを用いて、チャンバ200を真空に引く。チャンバ200内が真空になった後、チャンバ200内に不活性ガス(アルゴン、窒素等)を供給する。なお、真空に引かなくても、不活性ガスを流しながらチャンバ200内を置換してもよく、また、層形成室210の造形テーブル230は予熱されていてもよい。
【0036】
次に、金属粒子を含む粉末材料の薄層である金属粉末層260を形成する(S100)。次に、前記薄層にレーザ光を選択的に照射して、前記粉末材料に含まれる金属粒子が焼結または溶融結合してなる造形物層を形成する(S110)。前記薄層を形成する工程と前記造形物層を形成する工程とをこの順に複数回繰り返し、前記造形物層を積層する(S120)。
このようにして、目的とする立体造形物の形状をえる(S140)。
【0037】
図4は、金属粉末試料のレーザ光照射範囲の一実施例を示す要部構成図で、(A)は斜視図、(B)は要部断面図を表している。
金属粉末試料62は、水平な金属トレー63に設けられたトレー凹部63aに散布されている。金属トレー63は、金属粉末積層造形装置に設けられている。金属トレー63は、外形寸法が10mmx10mmx1mmで、トレー凹部63aは外形寸法が9mmx9mmx0.1mmになっている。レーザ光L1はデフォーカスされたもので、照射スポット部の径は金属粉末試料62面上で、例えば2.2mm程度になっている。レーザ光照射される範囲は金属粉末試料の散布された範囲内になっており、レーザ光照射のストライプ1本当たりの長さやストライプの間隔、ストライプ本数は金属粉末試料の散布された範囲内に収まるよう調整されている。
【0038】
金属トレー63には、チタン合金(Ti-6Al-4V)が用いられ、金属トレー63の質量は0.4083gであった。金属粉末試料62には、チタン合金(Ti-6Al-4V)、インコネル(登録商標)738LC、インコネル(登録商標)718が用いられ、金属トレー63と金属粉末試料62の合計質量はそれぞれ、0.4242g、0.4415g、0.4356gであった。
レーザ光照射のパワーは50W~70W、走査速度は20m/秒であった。
【0039】
一次元の熱伝導を想定すると、金属トレー63と金属粉末試料62を一体として計算される温度上昇率は次式で表される。
【数5】
ここで、添え字1は金属粉末試料を表し、添え字2は金属トレーを表す。mは質量、cは比熱、Tは温度、A(T)は吸収率の温度依存性を表すパラメータ、Pはレーザ光照射パワー、L(T)は熱損失の温度依存性を表すパラメータである。
【0040】
図5は、レーザ光吸収率の算定式を説明する図で、ステップ状加熱過程からの吸収率の算定式を説明する図である。金属粉末積層造形装置によるレーザ光照射は、ラスタースキャン方式に類似した走査線走査方式で行われており、レーザ光照射は走査線の往路と復路でオンとなり、それらの間の方向転換のときにオフになっている。
一回のステップ状加熱過程の温度上昇をΔT、一回のステップ状加熱過程の時間間隔Δtとすると、上記(1)式は差分を用いて、次のように表される。
【数6】
ここで、PΔtは一回のステップ状加熱過程のレーザ光照射エネルギー、Δtは時間的な照射間隔である。すると、(2)式は次のように表される。
【数7】
ここで、Eは照射間隔(ステップ間隔)内の照射エネルギーである。レーザ光照射は、走査に合わせてオンオフを繰り返しているため、オンの時だけを積算する。
【0041】
上記(3)式を変形して、吸収率の温度依存性を表すパラメータA(T)は次式で表される。なお、熱損失の温度依存性を表すパラメータL(T)に関しては、温度依存性を考慮したものとすると共に、金属粉末試料と金属トレーの質量を峻別する場合を示している。
【数8】
今回は、金属トレー63の材料の比熱は、金属粉末試料62の比熱とほぼ同じなので、上記(4)式を変形して、次式が得られる。
【数9】
金属粉末試料の比熱は、許容誤差の範囲内で一定値であるとすると、上記(4)式を変形して、次式が得られる。
【数10】
さらに、金属粉末試料の熱容量は金属トレーの熱容量と比べ、許容誤差の範囲内で無視できるとすると、上記(6)式を変形して、次式が得られる。
【数11】
【0042】
図6は、本発明の変形実施形態である、3D造形用レーザ光吸収率測定装置の機能ブロック図である。なお、
図6において、前記
図1と同一作用をするものには同一符号を付して、説明を省略する。
焦点距離可変レンズ29は、レーザ装置20により照射されるレーザ光が集光される距離を調整するもので、デフォーカス機能部として設けられている。
なお、焦点距離可変レンズ29はレーザ発振器21から試料62までのレーザ光L1の進路上に設けられれば良く、例えば
図6の場合には、図示されている位置に限定されるものではなく、伝送機構25とZ軸レンズ24の間、あるいは、Z軸レンズ24と偏向鏡26の間の位置に設けても良い。
集光距離制御部47は、デフォーカス制御部として設けられるもので、焦点距離可変レンズ29に対して制御信号を送ることで、レーザ装置20により照射されるレーザ光が集光される距離を調整する。焦点距離可変レンズ29と集光距離制御部47は、集光距離調整装置として動作する。
なお、デフォーカス調整装置として、集光距離調整装置を設けている場合には、金属トレー高さ制御部46と金属トレー昇降装置64を省略しても良い。
【0043】
図7は本発明の3D造形用レーザ光吸収率測定方法の実施形態である、
図1又は
図6で示す3D造形用レーザ光吸収率測定装置の動作の一例を説明するフローチャートである。
デフォーカス設定工程(S200)では、デフォーカス調整装置を構成する金属トレー昇降装置(46、64)又は集光距離調整装置(47、29)によって、試料62の照射面に対してレーザ光をデフォーカス状態とする。
試料温度測定工程(S210)では、熱電対温度計測部42によって、レーザ装置20により照射されるレーザ光の照射前、照射中、及び照射後における金属粉末試料62の照射面62aにおける照射スポット部の実温度を測定する。
実吸収率算出工程(S220)では、レーザ装置20の照射条件及びレーザ光の金属粉末試料62の照射面62aにおける照射スポット部への照射により熱電対温度計測部42で測定する昇温温度、並びに熱電対温度計測部42で測定した昇温温度による熱損失の理論的な関係を用いて、試料62又は金属トレー63の少なくとも一方の実レーザ光吸収率を算出する。
【0044】
図8Aは、トレー単体の場合における、あるデフォーカス状態でのステップ状加熱での、吸収率A(T)を求めた図である。ここでは、金属トレー高さ制御部46による、金属トレー昇降装置64の昇降量を90mmとしている。
各ステップ状加熱過程の条件として、レーザ光照射のパワーは50W~70W、ストライプ本数が161本と401本の場合を示している。ストライプ状パターンの走査回数は10回、この場合のパターン走査の時間間隔は約1秒である。また、解析においては過渡現象を含む時刻の温度履歴は除外している。解析対象温度は、レーザ光照射のパワーは50W、ストライプ本数が161本の場合に、60℃から80℃であった。レーザ光照射のパワーは70W、ストライプ本数が401本の場合に、120℃から170℃であった。他のステップ状加熱過程の条件では、解析対象温度はその中間でレーザ光照射の総照射パワーに応じたものになっている。解析対象温度の60℃から170℃の範囲で、吸収率A(T)は0.36~0.42の範囲にある。
【0045】
図8Bは、チタン合金(Ti-6Al-4V)粉末の場合における、あるデフォーカス状態でのステップ状加熱での、吸収率A(T)を求めた図である。
金属トレーにチタン合金(Ti-6Al-4V)粉末を搭載したものの解析対象温度は、レーザ光照射のパワーは50W、ストライプ本数が161本の場合に、70℃から110℃であった。レーザ光照射のパワーは70W、ストライプ本数が401本の場合に、150℃から240℃であった。他のステップ状加熱過程の条件では、解析対象温度はその中間でレーザ光照射の総照射パワーに応じたものになっている。解析対象温度の70℃から240℃の範囲で、吸収率A(T)は0.56~0.63の範囲にある。
【0046】
図9Aは、インコネル(登録商標)738LC粉末の場合における、あるデフォーカス状態でのステップ状加熱での、吸収率A(T)を求めた図である。
金属トレーにインコネル738LC粉末を搭載したものの解析対象温度は、レーザ光照射のパワーは50W、ストライプ本数が161本の場合に、70℃から100℃であった。レーザ光照射のパワーは70W、ストライプ本数が401本の場合に、150℃から240℃であった。他のステップ状加熱過程の条件では、解析対象温度はその中間でレーザ光照射の総照射パワーに応じたものになっている。解析対象温度の70℃から240℃の範囲で、吸収率A(T)は0.57~0.65の範囲にある。
【0047】
図9Bは、インコネル(登録商標)718粉末の場合における、あるデフォーカス状態でのステップ状加熱での、吸収率A(T)を求めた図である。
金属トレーにインコネル718粉末を搭載したものの解析対象温度は、金属トレーにインコネル738LC粉末を搭載したものの解析対象温度とほぼ同じであり、吸収率A(T)は0.56~0.65の範囲にある。
【0048】
図10Aは、トレー単体の場合における、あるデフォーカス状態での連続的加熱での、吸収率A(T)を求めた図である。
各連続的加熱過程の条件として、レーザ光照射のパワーは50W~70W、ストライプ本数が17本と41本の場合を示している。連続的加熱では、ストライプ本数17本に対して走査回数として1000回、ストライプ本数41本に対して走査回数として400回として、レーザ光照射の総パワー量をほぼ等しくしている。また、解析においては過渡現象を含む時刻の温度履歴は除外している。
解析対象温度は110℃から380℃の範囲にあり、吸収率A(T)は0.35~0.43の範囲にある。
【0049】
図10Bは、チタン合金(Ti-6Al-4V)粉末の場合における、あるデフォーカス状態での連続的加熱での、吸収率A(T)を求めた図である。各連続的加熱過程の条件は、トレー単体の場合と金属トレーにチタン合金(Ti-6Al-4V)粉末を搭載したものとで等しくしてある。
解析対象温度は140℃から560℃の範囲にあり、吸収率A(T)は0.58~0.67の範囲にある。
【0050】
図11Aは、インコネル738LC粉末の場合における、あるデフォーカス状態での連続的加熱での、吸収率A(T)を求めた図である。各連続的加熱過程の条件は、トレー単体の場合と金属トレーにインコネル738LC粉末を搭載したものとで等しくしてある。
解析対象温度は140℃から510℃の範囲にあり、吸収率A(T)は0.57~0.65の範囲にある。
【0051】
図11Bは、インコネル718粉末の場合における、あるデフォーカス状態での連続的加熱での、吸収率A(T)を求めた図である。各連続的加熱過程の条件は、トレー単体の場合と金属トレーにインコネル718粉末を搭載したものとで等しくしてある。
解析対象温度は130℃から510℃の範囲にあり、吸収率A(T)は0.56~0.66の範囲にある。
【0052】
図12は、あるデフォーカス状態でのトレー単体を模擬した数値計算による一回目のステップ状加熱過程での温度分布の説明図で、(A)はトレー表面とトレー底面のストライプと直交する方向の温度分布、(B)は照射レーザ光の強度分布、(C)はトレーを模擬した全体温度分布図、(D)は全体温度分布図(C)の温度スケールを示している。
温度分布が主にストライプと直交する方向に非一様であるため、照射レーザ光の吸収が起こっている部位と、熱電対による測定にはズレが生じている。
【0053】
なお、上記の実施の形態においては、金属トレー63の中央部にトレー凹部63aを設けて、このトレー凹部63aに金属粉末試料62が堆積される場合を示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、トレーのみを用いてトレーの材料のレーザ光吸収率測定を行うようにしてもよい。この場合、金属粉末試料を用いる必要はない。
また、上記の実施の形態においては、金属粉末試料のレーザ光吸収率測定をする場合を示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、試料となる粉末の材料は、3D造形に用いられるセラミックスやプラスチック等の材料であってもよい。
また、上記の実施の形態においては、金属トレーの場合を示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、吸収率の算出にはトレーの比熱(の温度依存性)などが分かっていれば、必ずしも金属である必要はなく、例えばセラミックス製や炭素繊維・ガラス繊維・セラミックス繊維強化セラミックス製や炭素繊維強化炭素複合材料(C/Cコンポジット:Carbon Fiber Reinforced Carbon Composite)製や炭素繊維・ガラス繊維強化プラスチックなどの耐熱材料製でもよい。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明の3D造形用レーザ光吸収率測定装置および方法は、最近普及の進んでいるレーザ積層造形装置を活用し、その使用レーザ光に対する3D造形用材料による吸収率の温度依存性の測定を、その積層造形装置で設定できる環境を、デフォーカス調整装置を用いて拡張することで、3D造形用材料のレーザ光吸収率測定のより適切な測定環境下で実現することが出来る。
【符号の説明】
【0055】
10・・・レーザ光吸収率測定装置、
20・・・レーザ装置、
29・・・焦点距離可変レンズ(デフォーカス機能部)
30・・・熱電対端子、
40・・・制御部、
41・・・レーザ光照射制御部、
42・・・熱電対温度計測部、
43・・・トレー位置制御部、
44・・・金属粉末供給制御部、
45・・・実吸収率算出部、
46・・・トレー高さ制御部(デフォーカス制御部)、
47・・・集光距離制御部(デフォーカス制御部)、
62・・・金属粉末試料(試料)、
62a・・・照射面、
63・・・トレー(金属トレー)、
63a・・・トレー凹部(窪み)、
64・・・トレー昇降装置(デフォーカス機能部)
65・・・トレー係合部
c(T)・・・比熱、
m・・・質量、
A(T)・・・吸収率の温度依存性を表すパラメータ、
L(T)・・・熱損失の温度依存性を表すパラメータ
L1・・・レーザ光、
P・・・レーザ光照射パワー、
E・・・照射間隔(ステップ間隔)内の照射エネルギー、
T・・・温度、
Δt・・・時間的な照射間隔