(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024104910
(43)【公開日】2024-08-06
(54)【発明の名称】電池
(51)【国際特許分類】
H01M 50/591 20210101AFI20240730BHJP
H01M 50/548 20210101ALI20240730BHJP
H01M 50/588 20210101ALI20240730BHJP
H01M 50/597 20210101ALI20240730BHJP
【FI】
H01M50/591
H01M50/548 201
H01M50/588
H01M50/597
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023009343
(22)【出願日】2023-01-25
(71)【出願人】
【識別番号】000237721
【氏名又は名称】FDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】都築 秀典
(72)【発明者】
【氏名】國谷 繁之
【テーマコード(参考)】
5H043
【Fターム(参考)】
5H043AA04
5H043AA17
5H043CA03
5H043DA05
5H043GA23
5H043GA28
5H043JA04D
5H043KA45D
5H043LA21D
(57)【要約】
【課題】電池本体の端面に設けられたシールが、電池が使用前であるか使用後であるかの判別以外の機能も発揮できる電池を提供すること。
【解決手段】実施形態の電池15は、負極端子11と負極端子11の周囲を囲む外周部13とが形成された端子面3aが一端1a側に設けられ、正極端子12が他端1b側に設けられた電池本体1と、負極端子11を覆う端子覆い部41と、外周部13の少なくとも一部を覆う外周覆い部42,43,44と、を有する絶縁性のシール4と、を備え、端子覆い部41と外周覆い部42,43,44とが分離可能とされている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
負極端子と前記負極端子の周囲を囲む外周部とが形成された端子面が一端側に設けられ、正極端子が他端側に設けられた電池本体と、
前記負極端子を覆う端子覆い部と、前記外周部の少なくとも一部を覆う外周覆い部と、を有する絶縁性のシールと、を備え、
前記端子覆い部と前記外周覆い部とが分離可能とされていることを特徴とする電池。
【請求項2】
前記電池本体は、前記一端側が開口とされた筒型の電池缶と、前記端子面を有して前記開口部分に設けられた負極部材と、を有し、
前記外周覆い部は、前記電池缶の前記一端側となる端面を覆う環状の短絡防止部を有することを特徴とする請求項1に記載の電池。
【請求項3】
前記短絡防止部は、前記電池缶と前記負極部材に跨って設けられていることを特徴とする請求項2に記載の電池。
【請求項4】
前記他端側から前記一端側に向けた方向を第1の方向とした場合に、
前記外周覆い部は、前記負極端子よりも第1の方向側に位置する部位を有する逆接続防止部を有することを特徴とする請求項1に記載の電池。
【請求項5】
前記逆接続防止部は、前記負極端子の周囲を囲む環状に形成されていることを特徴とする請求項4に記載の電池。
【請求項6】
前記逆接続防止部は、3つ以上の島状に形成されており、前記負極端子の周囲に互いに間隔を空けて同心円上に並べて配置されていることを特徴とする請求項4に記載の電池。
【請求項7】
前記電池本体は、前記一端側が開口とされた筒型の電池缶と、前記端子面を有して前記開口部分に設けられた負極部材と、を有し、
前記外周覆い部は、前記電池缶の前記一端側となる端面を覆う環状の短絡防止部と、前記電池缶の前記他端側から前記一端側に向けた方向を第1の方向とした場合に、前記短絡防止部よりも内側に設けられて、前記負極端子よりも第1の方向側に位置する部位を有する逆接続防止部と、を有することを特徴とする請求項1に記載の電池。
【請求項8】
前記逆接続防止部は、前記負極端子の周囲を囲む環状に形成されていることを特徴とする請求項7に記載の電池。
【請求項9】
前記逆接続防止部と前記短絡防止部との間には隙間が設けられており、
前記外周覆い部は、前記隙間を塞ぐ識別部を有することを特徴とする請求項8に記載の電池。
【請求項10】
前記識別部の縁には、切り欠きが形成されていることを特徴とする請求項9に記載の電池。
【請求項11】
前記逆接続防止部は、3つ以上の島状に形成されており、前記負極端子の周囲に互いに間隔を空けて同心円上に並べて配置されていることを特徴とする請求項7に記載の電池。
【請求項12】
前記端子覆い部の縁には、切り欠きが形成されていることを特徴とする請求項1から11のいずれか1つに記載の電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、電池に関する。
【背景技術】
【0002】
電池には、柱体状の電池本体の一端と他端とに電極端子が設けられたものがある。このような電池では、電極端子をシールで塞いで、電池の使用時にシールを剥がすようにしたものがある(例えば、特許文献1)。電池を使用するためにはシールを剥がす必要があるため、シールの有無によって電池が使用前であるか使用後であるか判別可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来技術では、電極端子を塞ぐシールは、電池が使用前であるか使用後であるか判別するために設けられているに過ぎなかった。
【0005】
開示の技術では、電池本体の端面に設けられたシールが、電池が使用前であるか使用後であるかの判別以外の機能も発揮できる電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願の開示する電池の一態様は、負極端子と負極端子の周囲を囲む外周部とが形成された端子面が一端側に設けられ、正極端子が他端側に設けられた電池本体と、負極端子を覆う端子覆い部と、外周部の少なくとも一部を覆う外周覆い部と、を有する絶縁性のシールと、を備え、端子覆い部と外周覆い部とが分離可能とされている。
【発明の効果】
【0007】
本願の開示する電池の一態様によれば、電池本体の端面に設けられたシールが、電池が使用前であるか使用後であるかの判別以外の機能も発揮できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施の形態1の電池の側面図である。
【
図2】
図2は、
図1に示すII-II線に沿って電池を切断した断面図である。
【
図3】
図3は、実施の形態1における負極部材を端子面側から見た図である。
【
図4】
図4は、実施の形態1の電池を
図1に示す矢印Bに沿って見た図である。
【
図5】
図5は、
図2に示した断面のうち負極部材部分を拡大した部分拡大断面図である。
【
図6】
図6は、実施の形態1の電池の負極端子同士が近接された状態を示す図である。
【
図7】
図7は、実施の形態1の電池の変形例を示す図であって、負極部材部分を拡大した部分拡大断面図である。
【
図8】
図8は、実施の形態2の電池が備えるシールを
図1に示す矢印Bに沿って見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本願の開示する電池の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施の形態によって、本願の開示する電池が限定されるものではない。
【0010】
(実施の形態1)
<電池の構成>
図1は、実施の形態1の電池の側面図である。
図2は、
図1に示すII-II線に沿って電池を切断した断面図である。
【0011】
電池15は、電池本体1とシール4とを備える。電池本体1は、一端1a側に負極端子11が設けられ、他端1b側に正極端子12が設けられた柱体状の形状をなしている。本実施の形態1では、電池本体1は軸10を中心軸とする円柱形状となっている。なお、電池本体1の形状は円柱形状に限られず、多角柱形状であってもよい。また、以下の説明において、一端および他端の用語は、電池本体1の一端1aおよび他端1bを意味するものとする。また、他端1b側から一端1a側に向かう方向を第1の方向とし、一端1a側から他端1b側に向かう方向を第2の方向とする。
【0012】
電池本体1は、電池缶2と、負極部材3と、を備える。電池缶2は、軸10を中心とする円筒型の部材であり、電池本体1のおおよその外殻をなす。電池缶2の一端1a側には開口2aが形成されている。電池缶2の他端1b側は底部2bによって塞がれている。上述した正極端子12は、電池缶2の底部2bから第2の方向に向けて突出するように形成されている。
【0013】
負極部材3は、電池缶2の開口2a部分に設けられている。換言すると、負極部材3は、電池本体1の一端1a側に設けられているとも言える。負極部材3は、負極端子11と負極端子11の外周を囲む外周部13とが形成された端子面3aを有する。
【0014】
図3は、実施の形態1における負極部材を端子面側から見た図である。負極端子11は、端子面3aの中央部分に設けられる。負極端子11は、電池本体1同士を直列に接続させた場合に、他の電池本体の正極端子12が接触する部分である。外周部13は、負極端子11の外周を囲む環状に形成されている。負極部材3は、端子面3aを外側に向けて設けられている。
【0015】
図2に示すように、負極部材3は電池缶2と接触しておらず、電池缶2と負極部材3との間は絶縁されている。電池缶2の内部には、正極材料、負極材料、ガスケット部材等が設けられているが、詳細な説明および図示は省略する。なお、負極部材3は、開口2aを塞ぐガスケット部材によって支持されている。
【0016】
図4は、実施の形態1の電池を
図1に示す矢印Bに沿って見た図である。
図1および
図2にも示したように、電池15の一端1a側にはシール4が剥離可能に貼り付けられている。
図4に示すように、シール4は、軸10を中心とした同心円状に形成された切れ目によって複数の領域に分割されている。より具体的には、シール4は、上述した切れ目によって、端子覆い部41、逆接続防止部42、識別部43、短絡防止部44に分割されている。逆接続防止部42、識別部43、および短絡防止部44は正極端子12の外周を覆う外周覆い部である。
【0017】
シール4は、電池本体1に貼り付けられる前は、端子覆い部41、逆接続防止部42、識別部43、短絡防止部44が台紙上で一体になっており、一度の貼り付け作業でまとめて電池本体1に貼り付けられるようになっている。
【0018】
端子覆い部41は、電池本体1の負極端子11を覆う。
【0019】
図5は、
図2に示した断面のうち負極部材部分を拡大した部分拡大断面図である。
図5では、端子覆い部41と識別部43とを剥がした状態を示している。
【0020】
逆接続防止部42は、端子覆い部41の周囲を囲む環状に形成されている。逆接続防止部42の天面42aは、負極端子11よりも第1の方向側に位置する部位である。また、逆接続防止部42の天面42aと負極端子11部分における端子面3aとの距離D2は、正極端子12の突出量D1(
図1を参照)よりも小さくなっている。
【0021】
識別部43は、逆接続防止部42の周囲を囲む環状に形成されている。識別部43は、逆接防止部42と短絡防止部44との間の隙間を塞ぐように設けられている。識別部43は、隣接する逆接続防止部42および短絡防止部44を残して識別部43のみを剥がすことができるようになっている。
【0022】
短絡防止部44は、識別部43の周囲を囲む環状に形成されている。短絡防止部44は、電池缶2の一端1a側となる端面を覆っている。
【0023】
<効果>
以上説明したように、電池15は、電池缶2を一端1a側から覆う絶縁性のシール4を備えている。また、シール4は、負極端子11を覆う端子覆い部41と、外周部13の少なくとも一部を覆う外周覆い部(逆接続防止部42、識別部43、短絡防止部44)とを有し、端子覆い部41と外周覆い部とが分離可能とされている。
【0024】
端子覆い部41に覆われた領域は、複数の電池本体1を直列に接続させて使用する場合に他の電池本体1の正極端子12が接触する領域、または電池本体1が用いられる機器の接点が接触する領域である。そのため、電池本体1の使用を開始するときには端子覆い部41を剥がす必要がある。したがって、電池15では、端子覆い部41の有無によって電池本体1が使用前であるか使用後であるかを判別可能となる。
【0025】
また、シール4の一部である端子覆い部41を剥がしても、外周覆い部を電池15に貼り付けたままにできる。貼り付けたままとされた外周覆い部によって、下記の効果を得ることができる。
【0026】
図6は、実施の形態1の電池の負極端子同士が近接された状態を示す図である。複数の電池本体1が直列に接続されて使用されることがある。直列に接続される複数の電池本体1のうちの1つの電池本体1が逆向きに接続されると、負極端子11同士が接続された状態、いわゆる逆接続と呼ばれる状態となる場合がある。一般的に、電池本体1が逆接続されることは好ましくない。本実施の形態1では、
図6に示すように、電池本体1の負極端子11同士の間に逆接続防止部42が挟まれるため、負極端子11同士が接続して逆接続となってしまうことがない。また、逆接続防止部42の天面42aと負極端子11部分における端子面3aとの距離D2が、正極端子12の突出量D1よりも小さくなっているので、正極端子12が負極端子11に接触する前に逆接続防止部42が他の電池本体の底部2bに接触してしまうことがない。したがって、逆接続防止部42が、正極端子12が負極端子11に接触する際の障害とならずに済む。
【0027】
なお、識別部43が電池本体1に貼り付けられたままとなっているか剥がされているか、すなわち識別部43の有無は、電池本体1の使用の可否に直接的な影響はない。しかしながら、隣接する逆接続防止部42および短絡防止部44を残して識別部43のみを剥がすことができるようになっているので、電池本体1の状態を示す指標として利用することが可能となる。上述したように電池本体1が使用の前後であるか否かは端子覆い部41の有無によって判別可能となっている。そのため、端子覆い部41の有無によって電池本体1が使用前であるか使用後であるかを判別することは可能である。しかしながら、電池本体1の残量がない状態、すなわち電池本体1が使用済みであるか否かまでは判別することができない。そこで、例えば、電池本体1の使用者が、電池本体1が使用済みとなった場合に識別部43を剥がすというルールを設定すれば、識別部43の有無によって電池本体1が使用済みであるか否かを判別することが可能となる。
【0028】
電池缶2は、正極端子12部分だけでなく、電池缶2全体が正極となっている。したがって、電池缶2の一端1a側となる端面も正極となっている。そのため、電池缶2の一端1a側となる端面と、負極部材3とに導電性の部材が接触すると、電池本体1の正極と負極とが短絡されてしまう。本実施の形態1では、電池缶2の一端1a側となる端面が、絶縁性の短絡防止部44に覆われているので、電池缶2の一端1a側となる端面に導電性の部材が接触しにくくなっている。これにより、電池缶2の一端1a側となる端面と負極部材3とに導電性の部材が接触して電池本体1の正極と負極とが短絡されてしまうことを防ぐことができる。なお、短絡防止部44は、電池缶2の一端1a側となる端面と負極部材3とに跨って設けられていてもよい。端面と負極部材3とに跨って設けられることで、短絡防止部44の接着面が増え、短絡防止部44が剥がれにくくなる。これにより、より確実に電池本体1の正極と負極とが短絡されてしまうことを防ぐことができる。
【0029】
また、電池缶2の周囲は外装ラベルで覆われている場合があり、電池缶2の一端1a側の端面も外装ラベルに覆われている場合がある。この場合、外装ラベルによって短絡の防止が図られているものの、外装ラベルが傷ついて電池缶2の一端1a側の端面が露出すると短絡の可能性がでる。一方、本実施の形態では、外装ラベル上にさらに短絡防止部44が設けられるので、電池缶2の一端1a側の端面がより強固に保護されており、より確実に短絡を防止することができる。
【0030】
なお、本実施の形態1は、電池缶2に正極端子12が形成された構成例、例えばアルカリ乾電池で採用される構成に適用した例を挙げて説明しているが、電池缶2に負極端子12が形成された構成例、例えばマンガン乾電池やニッケル水素電池に採用される構成例にも適用可能である。この場合、負極端子と外周部が形成された端子面は電池缶の底部に形成されることになり、負極端子の周囲に正極となる部分はなく、端子面側での短絡の危険性はほとんどない。このような場合であっても、シール4の外周領域が負極端子よりも突出する部分を有することで、他の乾電池との逆接続を防止することが可能となる。
【0031】
また、電池本体1の使用直前または使用後に剥がすことが想定されている端子覆い部41と識別部43の縁には切欠16が形成されている。切欠16が形成されることで、切り欠き16に差し込んだ爪や先端の尖った道具を端子覆い部41および識別部43の縁に引っ掛けて剥がしやすくすることができる。
【0032】
図7は、実施の形態1の電池の変形例を示す図であって、負極部材部分を拡大した部分拡大断面図である。変形例では負極端子11が電池缶2の一端1a側の端面よりも第1の方向側に突出している。このような場合であっても、識別部43の一部が負極部材3に貼り付けられることで、意図しない剥がれ落ちを防ぐことができる。
【0033】
(実施の形態2)
図8は、実施の形態2の電池が備えるシールを
図1に示す矢印Bに沿って見た図である。なお、実施の形態1と同様の構成については詳細な説明を省略する。実施の形態2にかかる電池では、シール104の外周覆い部は逆接続防止部142と短絡防止部144とを有している。
【0034】
逆接続防止部142は、3つの島状に形成されており、負極端子11の周囲に互いに間隔を空けて同心円上に並べて配置されている。なお、逆接続防止部142は、実施の形態1と同様に、負極端子11よりも第1の方向側に位置し、逆接続防止部142の天面の高さは、正極端子の突出量よりも小さくなっている。このように、逆接続防止部142を環状ではなく島状に設けた場合であっても、負極端子11同士が接触することを防止することができる。なお、逆接続防止部142の数は、3つに限られず、4つ以上設けられていてもよい。
【符号の説明】
【0035】
1 電池本体
1a 一端
1b 他端
2 電池缶
2a 開口
2b 底部
3 負極部材
3a 端子面
4 シール
10 軸
11 負極端子
12 正極端子
13 外周部
15 電池
41,141 端子覆い部
42,142 逆接続防止部
42a 天面
43 識別部
44,144 短絡防止部