(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024104913
(43)【公開日】2024-08-06
(54)【発明の名称】ボールねじ及びブレーキ装置
(51)【国際特許分類】
F16H 25/24 20060101AFI20240730BHJP
F16H 25/20 20060101ALI20240730BHJP
F16H 25/22 20060101ALI20240730BHJP
F16D 65/18 20060101ALI20240730BHJP
B60T 13/74 20060101ALI20240730BHJP
F16D 121/24 20120101ALN20240730BHJP
F16D 125/40 20120101ALN20240730BHJP
【FI】
F16H25/24 K
F16H25/20 E
F16H25/22 B
F16D65/18
B60T13/74 G
F16D121:24
F16D125:40
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023009350
(22)【出願日】2023-01-25
(71)【出願人】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140442
【弁理士】
【氏名又は名称】柴山 健一
(72)【発明者】
【氏名】徐 慧
(72)【発明者】
【氏名】山田 和也
(72)【発明者】
【氏名】田中 一宇
【テーマコード(参考)】
3D048
3J058
3J062
【Fターム(参考)】
3D048BB41
3D048HH18
3D048HH58
3J058AA43
3J058AA48
3J058AA53
3J058AA63
3J058AA69
3J058AA78
3J058AA87
3J058BA37
3J058CC63
3J058DE01
3J058FA06
3J062AA01
3J062AB22
3J062AC07
3J062BA33
3J062CD05
3J062CD22
3J062CD72
(57)【要約】
【課題】放熱性に優れたボールねじ、及びそのようなボールねじを備えるブレーキ装置を提供する。
【解決手段】ボールねじ1は、外周面にねじ溝2aが形成されたねじ軸2と、内周面にねじ溝3aが形成されたナット3と、ねじ軸2のねじ溝2a及びナット3のねじ溝3aによって構成された転動路5に配置された複数のボール4と、ねじ軸2の中心線に平行なX軸方向における一方の側のねじ軸2の端部21に、ねじ軸2に対して回転不可能となるように取り付けられた押圧部材6と、を備える。押圧部材6には、一対のガイド溝7が設けられている。X軸方向における一方の側の押圧部材6の端面6aには、X軸方向に垂直な同一平面P上に頂部63aが位置するように複数の凸部63が設けられている。複数の凸部63のそれぞれの間の領域Rは、X軸方向に垂直なY軸方向において両側に開放されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周面にねじ溝が形成されたねじ軸と、
内周面にねじ溝が形成されたナットと、
前記ねじ軸の前記ねじ溝及び前記ナットの前記ねじ溝によって構成された転動路に配置された複数のボールと、
前記ねじ軸の中心線に平行な第1方向における一方の側の前記ねじ軸の端部に、前記ねじ軸に対して回転不可能となるように取り付けられた押圧部材と、を備え、
前記ねじ軸及び前記押圧部材の少なくとも一方には、回り止めが設けられており、
前記第1方向における前記一方の側の前記押圧部材の端面には、前記第1方向に垂直な同一平面上に頂部が位置するように複数の凸部が設けられており、
前記複数の凸部のそれぞれの間の領域は、前記第1方向に垂直な第2方向において両側に開放されている、ボールねじ。
【請求項2】
前記複数の凸部のそれぞれは、前記第2方向を接線方向として前記第1方向及び前記第2方向の両方向に垂直な第3方向に並んだ複数の同心円弧のそれぞれに沿って延在している、請求項1に記載のボールねじ。
【請求項3】
前記複数の凸部のそれぞれは、前記第2方向を延在方向として前記第1方向及び前記第2方向の両方向に垂直な第3方向に並んだ複数の直線のそれぞれに沿って延在している、請求項1に記載のボールねじ。
【請求項4】
前記頂部は、前記同一平面に含まれる面として形成されている、請求項1に記載のボールねじ。
【請求項5】
前記回り止めは、前記ねじ軸又は前記押圧部材に設けられている、請求項1に記載のボールねじ。
【請求項6】
請求項1に記載のボールねじと、
前記第2方向を接線方向として回転するブレーキディスクと、
前記第1方向において前記ブレーキディスクの両側に配置された一対のブレーキパッドと、
前記ナットを回転させる電動モータと、
少なくとも前記ボールねじを支持しており、前記回り止めと係合された支持部材と、を備え、
前記一対のブレーキパッドの一方は、前記ブレーキディスクと前記押圧部材との間に配置されている、ブレーキ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボールねじ及びブレーキ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ブレーキディスクと、ブレーキディスクの両側に配置された一対のブレーキパッドと、を備えるブレーキ装置であって、電動モータによってボールねじのナットが回転させられ、ボールねじのねじ軸に取り付けられた押圧部材(ピストン)によって一方のブレーキパッドがブレーキディスクに押し当てられるブレーキ装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したようなブレーキ装置では、ブレーキディスクとブレーキパッドとの間で発生した摩擦熱が、ボールねじ及び電動モータに伝導する。摩擦熱の伝導によってそれらの部品が高温になり過ぎると、グリース又は潤滑油の劣化による各部の焼付き、電動モータの磁石の減磁等、様々な不具合が発生するおそれがある。
【0005】
そこで、本発明は、放熱性に優れたボールねじ、及びそのようなボールねじを備えるブレーキ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のボールねじは、[1]「外周面にねじ溝が形成されたねじ軸と、内周面にねじ溝が形成されたナットと、前記ねじ軸の前記ねじ溝及び前記ナットの前記ねじ溝によって構成された転動路に配置された複数のボールと、前記ねじ軸の中心線に平行な第1方向における一方の側の前記ねじ軸の端部に、前記ねじ軸に対して回転不可能となるように取り付けられた押圧部材と、を備え、前記ねじ軸及び前記押圧部材の少なくとも一方には、回り止めが設けられており、前記第1方向における前記一方の側の前記押圧部材の端面には、前記第1方向に垂直な同一平面上に頂部が位置するように複数の凸部が設けられており、前記複数の凸部のそれぞれの間の領域は、前記第1方向に垂直な第2方向において両側に開放されている、ボールねじ」である。
【0007】
上記[1]に記載のボールねじでは、ねじ軸の中心線に平行な第1方向に垂直な同一平面上に頂部が位置するように、押圧部材の端面に複数の凸部が設けられており、複数の凸部のそれぞれの間の領域が、第1方向に垂直な第2方向において両側に開放されている。これにより、例えば、第2方向を接線方向として回転するブレーキディスクに、この押圧部材によってブレーキパッドが押し当てられる構成において、複数の凸部のそれぞれの間の領域を空気が流れやすくなる。しかも、ねじ軸に対して押圧部材が回転不可能となっており、ねじ軸及び押圧部材の少なくとも一方に回り止めが設けられているため、複数の凸部のそれぞれの間の領域が両側に開放されている第2方向が、例えば、回転するブレーキディスクの接線方向に一致した状態が維持される。よって、上記[1]に記載のボールねじによれば、優れた放熱性を得ることができる。
【0008】
本発明のボールねじは、[2]「前記複数の凸部のそれぞれは、前記第2方向を接線方向として前記第1方向及び前記第2方向の両方向に垂直な第3方向に並んだ複数の同心円弧のそれぞれに沿って延在している、上記[1]に記載のボールねじ」であってもよい。当該[2]に記載のボールねじによれば、押圧部材によるブレーキパッド等の部材の押圧を安定化しつつ、優れた放熱性を得ることができる。
【0009】
本発明のボールねじは、[3]「前記複数の凸部のそれぞれは、前記第2方向を延在方向として前記第1方向及び前記第2方向の両方向に垂直な第3方向に並んだ複数の直線のそれぞれに沿って延在している、上記[1]に記載のボールねじ」であってもよい。当該[3]に記載のボールねじによれば、押圧部材によるブレーキパッド等の部材の押圧を安定化しつつ、優れた放熱性を得ることができる。
【0010】
本発明のボールねじは、[4]「前記頂部は、前記同一平面に含まれる面として形成されている、上記[1]~[3]のいずれか一つに記載のボールねじ」。当該[4]に記載のボールねじによれば、押圧部材によるブレーキパッド等の部材の押圧を安定化することができる。
【0011】
本発明のボールねじは、[5]「前記回り止めは、前記ねじ軸又は前記押圧部材に設けられている、上記[1]~[4]のいずれか一つに記載のボールねじ」であってもよい。当該[5]に記載のボールねじによれば、例えば、回り止めがねじ軸及び押圧部材の両方に設けられている場合に比べ、構造を単純化することができる。
【0012】
本発明のブレーキ装置は、[6]「上記[1]~[5]のいずれか一つに記載のボールねじと、前記第2方向を接線方向として回転するブレーキディスクと、前記第1方向において前記ブレーキディスクの両側に配置された一対のブレーキパッドと、前記ナットを回転させる電動モータと、少なくとも前記ボールねじを支持しており、前記回り止めと係合された支持部材と、を備え、前記一対のブレーキパッドの一方は、前記ブレーキディスクと前記押圧部材との間に配置されている、ブレーキ装置」である。
【0013】
上記[6]に記載のブレーキ装置では、ブレーキディスクとブレーキパッドとの間で発生した摩擦熱がボールねじの押圧部材において放熱されやすくなる。よって、上記[6]に記載のブレーキ装置によれば、各部品が高温になり過ぎることに起因して不具合が発生するのを抑制することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、放熱性に優れたボールねじ、及びそのようなボールねじを備えるブレーキ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図2】
図1に示されるII-II線に沿ってのボールねじの断面図である。
【
図3】
図1に示されるボールねじの一部分の斜視図である。
【
図5】
図1に示されるボールねじを備えるブレーキ装置の断面図である。
【
図9】変形例のボールねじを備えるブレーキ装置の断面図である。
【
図10】変形例のボールねじを備えるブレーキ装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図において同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。本明細書における表現である「同心」、「等しい」には、「完全に同心」、「完全に等しい」だけでなく、一定の誤差範囲内での「実質的に同心」、「実質的に等しい」も含まれる。
[ボールねじの構成]
【0017】
図1及び
図2に示されるように、ボールねじ1は、ねじ軸2と、ナット3と、複数のボール4と、を備えている。以下、ねじ軸2の中心線に平行な第1方向をX軸方向といい、第1方向に垂直な第2方向をY軸方向といい、第1方向及び第2方向の両方向に垂直な第3方向をZ軸方向という。また、ねじ軸2の中心線に平行な方向を軸方向といい、ねじ軸2の中心線に垂直な方向を径方向といい、ねじ軸2の中心線に平行な方向から見た場合にねじ軸2の中心線を中心とする円周に沿った方向を周方向という。なお、X軸方向と軸方向とは、同一の方向である。
【0018】
ナット3は、ねじ軸2と同一の中心線を有する筒状の部材である。ナット3は、第1部分31、第2部分32、拡径部分33及び縮径部分34を含んでいる。第1部分31は、X軸方向における一方の側(
図2では左側)のナット3の端部を含む部分である。第2部分32は、第1部分31に対してX軸方向における他方の側(
図2では右側)に位置する部分である。第1部分31及び第2部分32のそれぞれの形状は、例えば、円筒状である。拡径部分33は、X軸方向おいて第1部分31と第2部分32との間に位置する部分である。拡径部分33の外径は、第1部分31及び第2部分32のそれぞれの外径よりも大きい。拡径部分33の外周面には、周方向に延在する軌道面33aが形成されている。縮径部分34は、第2部分32に対してX軸方向における他方の側に位置する部分であって、X軸方向における他方の側のナット3の端部を含む部分である。縮径部分34の外径は、第2部分32の外径よりも小さい。一例として、第1部分31、第2部分32、拡径部分33及び縮径部分34は、一体で形成されている。
【0019】
X軸方向におけるねじ軸2の長さは、X軸方向におけるナット3の長さよりも短い。ねじ軸2は、X軸方向におけるナット3の中心に対してX軸方向における一方の側に片寄った状態で、径方向におけるナット3の内側に配置されている。ねじ軸2の外周面には、ねじ溝2aが形成されている。ねじ溝2aは、螺旋状に延在している。ナット3の内周面である第1部分31の内周面には、ねじ溝3aが形成されている。ねじ溝3aは、ねじ溝2aと同一のピッチで螺旋状に延在している。ねじ軸2のねじ溝2a及びナット3のねじ溝3aは、転動路5を構成している。複数のボール4は、転動路5に配置されている。複数のボール4は、転動路5において無限循環する。
【0020】
本実施形態では、ナット3の内周面に複数の循環溝3bが形成されている。各循環溝3bは、ねじ溝3aのうちの複数の部分(例えば、略1ピッチ分の長さを有する部分)のそれぞれにおいて、当該部分の一端と他端とを繋いでいる。複数の循環溝3bは、軸方向(すなわち、X軸方向)から見た場合に、周方向において互いに異なる位置に等角度間隔で配置されている。各循環溝3bは、各循環溝3bを通るボール4がねじ軸2の外周面のねじ山を超え得る深さを有している。複数のボール4は、各循環溝3bによって一端と他端とが繋がれた部分ごとに、転動路5において無限循環する。なお、ナット3のうち各循環溝3bを有する部分は、コマとして別体で設けられていてもよい。
【0021】
複数のボール4の循環方式は、転動路5において複数のボール4を無限循環させることができるものであれば、上述したものに限定されない。例えば、複数のボール4の循環路として、転動路5の一端と他端とを繋ぐ孔が、ナット3に形成されたものであってもよい。或いは、複数のボール4の循環路として、転動路5の一端と他端とを繋ぐチューブが、ナット3と別体で設けられたものであってもよい。また、複数の循環溝は、ねじ軸2に形成されていてもよい。その場合にも、ねじ軸2のうち各循環溝を有する部分は、コマとして別体で設けられていてもよい。後述するように、ボールねじ1がブレーキ装置10に適用される場合、ボール4とナット3のねじ溝3aとの接触楕円に比べ、ボール4とねじ軸2のねじ溝2aとの接触楕円が大きくなる可能性がある。そのような構成では、ボール4がねじ軸2のねじ溝2aの溝肩に乗り上げるのを防止するために、ナット3のねじ溝3aの深さに比べ、ねじ軸2のねじ溝2aの深さを大きくする場合がある。したがって、ボール4を軌道溝から循環部に掬い出すときの移動量が小さくなるねじ軸2側での循環方式の方がナット3側での循環方式よりも好ましい場合もある。
【0022】
図3に示されるように、ナット3には、ストッパ35が設けられている。ストッパ35は、X軸方向における一方の側のナット3の端面3cからX軸方向における一方の側に突出している。ストッパ35は、第1部分31と一体で形成されている。X軸方向における一方の側のねじ軸2の端部21には、ねじ軸2に対して回転不可能となるように係合部材22が取り付けられている。係合部材22は、爪22aを含んでいる。爪22aは、ねじ軸2の端部21から径方向における外側に突出している。ボールねじ1では、ねじ軸2がX軸方向における他方の側に移動するようにナット3が回転した際に爪22aがストッパ35に当接することにより、X軸方向における他方の側へのねじ軸2の移動が機械的に停止させられる。
【0023】
図1及び
図2に示されるように、ボールねじ1は、押圧部材6を更に備えている。押圧部材6は、筒部61及び蓋部62を含んでいる。径方向における筒部61の内側には、ナット3の第1部分31が配置されている。筒部61の形状は、例えば、円筒状である。蓋部62は、X軸方向における一方の側の筒部61の開口を覆っている。蓋部62の形状は、例えば、円板状である。X軸方向における一方の側の蓋部62の端面62aには、凹部62bが形成されている。凹部62bの形状は、例えば、円柱状である。一例として、筒部61及び蓋部62は、一体で形成されている。なお、蓋部62の端面62aは、X軸方向における一方の側の押圧部材6の端面6aである。
【0024】
押圧部材6は、ねじ軸2に対して回転不可能となるようにねじ軸2の端部21に取り付けられている。より具体的には、ねじ軸2及び押圧部材6が相対回転不可能となるように、スプライン、二面幅、圧入、ローレット等の公知の手段によって、押圧部材6の蓋部62にねじ軸2の端部21が結合されている。押圧部材6には、一対のガイド溝7が設けられている。より具体的には、一対のガイド溝7は、押圧部材6の筒部61の外周面に形成されている。各ガイド溝7は、X軸方向に延在している。一例として、一対のガイド溝7は、Z軸方向における両側に位置しており、各ガイド溝7は、X軸方向おける他方の側の筒部61の端部に至っている。一対のガイド溝7は、ねじ軸2及び押圧部材6を回転不可能とし且つねじ軸2及び押圧部材6をX軸方向に移動可能とするための回り止めとして機能する。
【0025】
X軸方向における一方の側の押圧部材6の端面6aである蓋部62の端面62aには、複数の凸部63が設けられている。複数の凸部63は、蓋部62と一体で形成されている。各凸部63の頂部63aは、X軸方向に垂直な同一平面P上に位置している。各凸部63の頂部63aは、同一平面Pに含まれる面として形成されている。
【0026】
図4に示されるように、複数の凸部63のそれぞれの間の領域R(すなわち、隣り合う凸部63の間の領域R)は、Y軸方向において両側に開放されている。本実施形態では、X軸方向から見た場合に凹部62bを包囲する端面62aにおいて、各凸部63が、Y軸方向を接線方向としてZ軸方向に並んだ複数の同心円弧のそれぞれに沿って延在している。複数の凸部63は、同心円弧の径方向において等間隔で配置されている。複数の凸部63のそれぞれの間の領域R(凹部62bに対応する領域を含む)のうち連続している部分については、X軸方向から見た場合に、Y軸方向における両側の当該部分の端部が端面62aの外縁に至っている。Z軸方向において隣り合う凸部63の間の領域Rについては、Y軸方向に沿って見通すことが可能である。つまり、Z軸方向において隣り合う凸部63の間の領域Rには、Y軸方向に平行な直線を通すことが可能である。なお、本実施形態では、各ガイド溝7が延在している方向(すなわち、X軸方向)が、各凸部63が延在している円弧の接線方向(すなわち、Y軸方向)と直交している。
[ブレーキ装置の構成]
【0027】
図5に示されるように、ブレーキ装置10は、上述したボールねじ1と、ブレーキディスク11と、一対のブレーキパッド12,13と、電動モータ14と、支持部材15と、を備えている。ブレーキ装置10は、例えば、車両において車輪の制動に利用される電動ブレーキである。
【0028】
ブレーキディスク11は、Y軸方向を接線方向として回転する。X軸方向から見た場合にボールねじ1の押圧部材6と重なるブレーキディスク11の各部分の回転半径は、押圧部材6の端面6aにおいて各凸部63が延在している各同心円弧の半径に略等しい(
図4参照)。ブレーキディスク11は、例えば、車輪の車軸に固定されている。
【0029】
一対のブレーキパッド12,13は、X軸方向においてブレーキディスク11の両側に配置されている。ブレーキパッド12は、ブレーキディスク11と押圧部材6との間に配置されている。ブレーキパッド13は、ブレーキディスク11に対して押圧部材6とは反対側に配置されている。
【0030】
電動モータ14は、ボールねじ1のナット3を回転させる。支持部材15は、ナット3が回転可能となるようにボールねじ1を支持している。より具体的には、ナット3の拡径部分33及び軌道面33aは、ナット3と支持部材15との間に配置された軸受16の内輪を構成している。ナット3の縮径部分34には、ナット3と支持部材15との間に配置された軸受17の内輪が嵌め合わされている。ナット3の第2部分32には、電動モータ14のロータ141が取り付けられている。ロータ141対して径方向における外側には、支持部材15に取り付けられたステータ142が配置されている。
【0031】
支持部材15は、ねじ軸2及び押圧部材6が回転不可能となり且つねじ軸2及び押圧部材6がX軸方向に移動可能となるようにボールねじ1を支持している。より具体的には、支持部材15には、Z軸方向における両側から一対のガイド溝7に配置された一対の突起151が設けられている。つまり。支持部材15は、一対のガイド溝7と係合されている。突起151は、支持部材15と一体で形成されていてもよいし、支持部材15と別体で形成されていてもよい。なお、押圧部材6と支持部材15との間に、筒状且つ蛇腹状のシール部材18が掛け渡されることにより、押圧部材6と支持部材15との間の隙間が外部からシールされている。
【0032】
本実施形態では、支持部材15は、ボールねじ1に加え、一対のブレーキパッド12,13、及び電動モータ14を支持している。ブレーキパッド12は、X軸方向に移動可能となるように、支持部材15によって支持されている。ブレーキパッド13は、支持部材15に固定されている。
【0033】
以上のように構成されたブレーキ装置10では、電動モータ14によってナット3が回転させられると、ねじ軸2及び押圧部材6が回転不可能な状態でX軸方向における一方の側に移動させられる。これにより、ブレーキパッド12がブレーキディスク11に押し当てられると共に、ブレーキディスク11がブレーキパッド13に押し当てられる。このようにして、ブレーキ装置10は、制動力を発生させる。
[作用及び効果]
【0034】
ボールねじ1では、ねじ軸2の中心線に垂直な同一平面P上に頂部63aが位置するように、押圧部材6の端面6aに複数の凸部63が設けられており、複数の凸部63のそれぞれの間の領域Rが、ねじ軸2の中心線に垂直なY軸方向において両側に開放されている。これにより、Y軸方向を接線方向として回転するブレーキディスク11に、押圧部材6によってブレーキパッド12が押し当てられる構成において、複数の凸部63のそれぞれの間の領域Rを空気が流れやすくなり、その結果、各凸部63が放熱フィンとして機能する。しかも、ねじ軸2に対して押圧部材6が回転不可能となっており、押圧部材6に一対のガイド溝7が設けられているため、複数の凸部63のそれぞれの間の領域Rが両側に開放されているY軸方向が、回転するブレーキディスク11の接線方向に一致した状態が維持される。よって、ボールねじ1によれば、優れた放熱性を得ることができる。
【0035】
ボールねじ1では、各凸部63が、Y軸方向を接線方向としてZ軸方向に並んだ複数の同心円弧のそれぞれに沿って延在している。これにより、押圧部材6によるブレーキパッド12の押圧を安定化しつつ、優れた放熱性を得ることができる。
【0036】
ボールねじ1では、頂部63aが、同一平面Pに含まれる面として形成されている。これにより、押圧部材6によるブレーキパッド12の押圧を安定化することができる。
【0037】
ボールねじ1では、一対のガイド溝7が押圧部材6のみに設けられている。これにより、例えば、一対のガイド溝7がねじ軸2及び押圧部材6の両方に設けられている場合に比べ、構造を単純化することができる。
【0038】
ブレーキ装置10では、ブレーキディスク11と各ブレーキパッド12,13との間で発生した摩擦熱がボールねじ1の押圧部材6において放熱されやすくなる。よって、ブレーキ装置10によれば、各部品が高温になり過ぎることに起因して不具合が発生するのを抑制することができる。
[変形例]
【0039】
本発明は、上述した実施形態に限定されない。例えば、押圧部材6において、複数の凸部63の配置、各凸部63の形状等は、複数の凸部63のそれぞれの間の領域RがY軸方向において両側に開放されるように構成されていれば、上述したものに限定されない。
【0040】
図6の(a)に示される例では、X軸方向から見た場合に凹部62bを包囲する端面62aにおいて、各凸部63が、Y軸方向を延在方向としてZ軸方向に並んだ複数の直線のそれぞれに沿って延在している。
図6の(a)に示される例では、複数の凸部63が、Z軸方向において等間隔で配置されている。
図6の(b)に示される例では、X軸方向から見た場合に凹部62bを包囲する端面62aにおいて、複数の凸部63が、Y軸方向を行方向とし且つZ軸方向を列方向としてマトリックス状に並んでいる。
図6の(b)に示される例では、複数の凸部63が、Y軸方向及びZ軸方向のそれぞれにおいて等間隔で配置されている。
図6の(b)に示される例では、各凸部63の形状は、四角柱状である。
【0041】
図6の(a)及び(b)に示されるいずれの例によっても、押圧部材6によるブレーキパッド12の押圧を安定化しつつ、優れた放熱性を得ることができる。また、
図6の(a)及び(b)に示されるいずれの例においても、複数の凸部63がY軸方向及びZ軸方向のそれぞれの方向に関して線対称に形成されているため、押圧部材6の製造を容易化することができる。
【0042】
また、
図7の(a)、(b)及び(c)に示されるように、押圧部材6の端面6aである蓋部62の端面62aに凹部が形成されていなくてもよい。
図7の(a)に示される例では、凹部が形成されていない端面62aにおいて、各凸部63が、Y軸方向を接線方向としてZ軸方向に並んだ複数の同心円弧のそれぞれに沿って延在している。
図7の(b)に示される例では、凹部が形成されていない端面62aにおいて、各凸部63が、Y軸方向を延在方向としてZ軸方向に並んだ複数の直線のそれぞれに沿って延在している。
図7の(c)に示される例では、凹部が形成されていない端面62aにおいて、複数の凸部63が、Y軸方向を行方向とし且つZ軸方向を列方向としてマトリックス状に並んでいる。特に
図8に示される例では、4つの凸部63が、Y軸方向を行方向とし且つZ軸方向を列方向としてマトリックス状に並んでいる。
【0043】
図7の(a)、(b)及び(c)並びに
図8に示されるいずれの例においても、複数の凸部63のそれぞれの間の領域Rのうち連続している部分については、X軸方向から見た場合に、Y軸方向における両側の当該部分の端部が端面62aの外縁に至っている。また、
図7の(a)、(b)及び(c)に示されるいずれの例においても、Z軸方向において隣り合う凸部63の間の領域Rについては、Y軸方向に沿って見通すことが可能である。
【0044】
また、ナット3は、筒状の部材であれば、第1部分31、第2部分32、拡径部分33及び縮径部分34を含むものに限定されない。また、押圧部材6は、X軸方向における一方の側の端面6aを有する部材であれば、筒部61及び蓋部62を含むものに限定されない。また、複数の凸部63は、押圧部材6と別体で形成されており、押圧部材6の端面6aに固定されたものであってもよい。また、各凸部63の頂部63aは、同一平面P上に位置している点又は線として形成されたものであってもよい。
【0045】
また、ねじ軸2及び押圧部材6を回転不可能とし且つねじ軸2及び押圧部材6をX軸方向に移動可能とするための回り止めは、そのような機能を有し且つ複数の凸部63と所定の位置関係を有するものであれば、上述したものに限定されない。例えば、上述した実施形態では、一対のガイド溝7が押圧部材6に設けられていたが、一つのガイド溝7又は三つ以上のガイド溝7が押圧部材6に設けられていてもよい。つまり、少なくとも一つのガイド溝7が押圧部材6に設けられていればよい。また、回り止めとして、径方向における外側に突出するように少なくとも一つの突起が押圧部材6に設けられていてもよい。その場合、押圧部材6に設けられた少なくとも一つの突起が、X軸方向に延在するように支持部材15に設けられたガイド溝に配置される。押圧部材6に設けられた少なくとも一つの突起は、押圧部材6と一体で形成されていてもよいし、押圧部材6と別体で形成されていてもよい。
【0046】
また、ねじ軸2及び押圧部材6を回転不可能とし且つねじ軸2及び押圧部材6をX軸方向に移動可能とするための回り止めは、ねじ軸2及び押圧部材6の少なくとも一方に設けられていればよい。ただし、回り止めがねじ軸2又は押圧部材6に設けられている場合には、例えば、回り止めがねじ軸2及び押圧部材6の両方に設けられている場合に比べ、構造を単純化することができる。
【0047】
図9に示される例は、回り止めがねじ軸2のみに設けられた例である。
図9に示される例では、X軸方向に延在しており且つX軸方向における他方の側に開口している偏心穴8が、回り止めとしてねじ軸2に設けられている。偏心穴8の中心線は、ねじ軸2の中心線からずれている。
図9に示される例では、X軸方向に延在するように支持部材15に設けられたロッド15aが、偏心穴8内に配置されている。これにより、ねじ軸2及び押圧部材6が回転不可能なり且つねじ軸2及び押圧部材6がX軸方向に移動可能となっている。
【0048】
図10に示される例は、回り止めが押圧部材6のみに設けられた例である。
図10に示される例では、X軸方向における他方の側に開口している凹部9が、回り止めとして押圧部材6の端面6aに設けられている。凹部9の中心線は、ねじ軸2の中心線からずれている。
図10に示される例では、X軸方向における他方の側に突出するようにブレーキパッド12に設けられた凸部12aが、凹部9に配置されている。これにより、ねじ軸2及び押圧部材6が回転不可能なり且つねじ軸2及び押圧部材6がX軸方向に移動可能となっている。
【0049】
また、
図9及び
図10に示されるように、ブレーキ装置10は、電動モータ14とボールねじ1とに接続された減速機19を更に備えていてもよい。一例として、減速機19は、電動モータ14の出力軸に取り付けられた歯車19aと、ボールねじ1のナット3の第2部分32に設けられた歯車32aとが噛み合うことにより、構成されている。なお、減速機19は、遊星歯車機構を有するものであってもよい。その場合、ボールねじ1のナット3及び電動モータ14の出力軸は、同軸上に配置される。また、ボールねじ1は、ブレーキ装置10以外の装置に適用されてもよい。
【符号の説明】
【0050】
1…ボールねじ、2…ねじ軸、2a…ねじ溝、3…ナット、3a…ねじ溝、4…ボール、5…転動路、6…押圧部材、6a…端面、7…ガイド溝(回り止め)、8…偏心穴(回り止め)、9…凹部(回り止め)、10…ブレーキ装置、11…ブレーキディスク、12,13…ブレーキパッド、14…電動モータ、15…支持部材、21…端部、63…凸部、63a…頂部、P…平面、R…領域。