IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社村田製作所の特許一覧

<>
  • 特開-携帯型低酸素呼吸器 図1
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024010492
(43)【公開日】2024-01-24
(54)【発明の名称】携帯型低酸素呼吸器
(51)【国際特許分類】
   A63B 26/00 20060101AFI20240117BHJP
   C01B 13/02 20060101ALI20240117BHJP
   A62B 7/00 20060101ALI20240117BHJP
   A63B 23/18 20060101ALI20240117BHJP
   B01D 53/22 20060101ALI20240117BHJP
   A61M 16/10 20060101ALI20240117BHJP
【FI】
A63B26/00
C01B13/02 A
A62B7/00
A63B23/18
B01D53/22
A61M16/10 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022111865
(22)【出願日】2022-07-12
(71)【出願人】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】木口 雄太
【テーマコード(参考)】
2E185
4D006
4G042
【Fターム(参考)】
2E185CA03
2E185CA10
2E185CB06
2E185CB09
4D006GA41
4D006HA21
4D006JA25A
4D006JA51Z
4D006JA53Z
4D006JA55Z
4D006JA68Z
4D006MA06
4D006PA01
4D006PB62
4D006PB63
4D006PC80
4G042BA28
4G042BC02
(57)【要約】
【課題】充分に小型化され、汎用性と利便性が高い携帯型低酸素呼吸器を提供する。
【解決手段】窒素と酸素を分離可能な気体分離膜41を含み、外気よりも酸素濃度が低い低酸素空気を必要な酸素濃度及び流量で供給できる気体分離膜モジュール40と、上記気体分離膜モジュール40と接続され、上記気体分離膜41の両側に圧力差を生じさせる空気ポンプ11と、上記空気ポンプ11に電力を供給する携帯型電源12と、を有し、低酸素空気を生成する低酸素空気発生機10と、上記低酸素空気発生機10に接続された気体輸送管21と、上記気体輸送管21に接続され、使用者に上記低酸素空気発生機10で生成された低酸素空気を供給する呼吸用マスク22と、を有する低酸素空気供給部20と、上記低酸素空気発生機10及び上記低酸素空気供給部20の少なくとも一方に取り付けられた固定用具30と、を備える、携帯型低酸素呼吸器100。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
窒素と酸素を分離可能な気体分離膜を含み、外気よりも酸素濃度が低い低酸素空気を必要な酸素濃度及び流量で供給できる気体分離膜モジュールと、前記気体分離膜モジュールと接続され、前記気体分離膜の両側に圧力差を生じさせる空気ポンプと、前記空気ポンプに電力を供給する携帯型電源と、を有し、低酸素空気を生成する低酸素空気発生機と、
前記低酸素空気発生機に接続された気体輸送管と、前記気体輸送管に接続され、使用者に前記低酸素空気発生機で生成された低酸素空気を供給する呼吸用マスクと、を有する低酸素空気供給部と、
前記低酸素空気発生機及び前記低酸素空気供給部の少なくとも一方に取り付けられた固定用具と、
を備える携帯型低酸素呼吸器。
【請求項2】
前記低酸素空気供給部は、使用者に前記低酸素空気発生機で生成された低酸素空気を送り出す送風機をさらに有する、請求項1に記載の携帯型低酸素呼吸器。
【請求項3】
前記気体分離膜が、複合化されたマトリックス膜からなる、請求項1又は2に記載の携帯型低酸素呼吸器。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯型低酸素呼吸器に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、低酸素空気供給装置についての文献であり、当該装置は、空気を原料とし、外気よりも酸素濃度が低い低酸素原料空気と外気よりも酸素濃度の高い高酸素原料空気を生成する原料空気生成装置と、低酸素原料空気と高酸素原料空気を混合して、外気よりも酸素濃度が低い低酸素混合空気を生成する混合部と、を構成要素としている。
【0003】
特許文献2は、トレーニング装置についての文献であり、当該装置は、使用者のトレーニングによって生じる運動力を回転運動に変換する運動力変換手段と、運動力変換手段に連繋されて変換された回転運動によって駆動する空気ポンプと、空気ポンプの吸引又は加圧力を用い空気を酸素分離膜に通過させることによってその空気の酸素濃度を調整する酸素濃度調整手段と、酸素濃度を調整した空気をトレーニング中の使用者に供給する酸素調整空気供給手段と、を構成要素としている。
【0004】
特許文献3は、低酸素呼吸器についての文献であり、当該呼吸器は、使用者の呼気を貯蔵して外気を混合させる貯蔵タンクと外気を導入する機能を有する調整タンクを流体連結し、呼気弁を有する呼気口を有する呼吸用マスクと、呼吸口と吸気口がそれぞれ独立して可撓性を有する配管部材で貯蔵タンクに接続されていることを構成要素としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2020-131121号公報
【特許文献2】特開2003-265645号公報
【特許文献3】特開2013-132382号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
低酸素トレーニングはスポーツ選手や一般市民の体力や持久力の向上や健康増進、高地への環境適応のために行われるトレーニング手法である。低酸素環境を作り出すためには、低酸素にする空間や低酸素空気発生装置を用意する必要があり、一般には専用の施設にてトレーニングを実施する必要がある。したがって、この手法によるトレーニングを一般市民をはじめとする幅広いユーザーに適用するためには、低酸素空気発生装置を小型化して、場所を選ばず設置できることが望まれる。
【0007】
特許文献1には、気体分離膜を有した低酸素空気供給装置が開示されている。配管の工夫によって小型化を図っているものの、場所を選ばず設置できるほど充分に小型化を図れているものではない。
【0008】
特許文献2には、気体分離膜へ空気を送る動力として使用者の運動力を利用することで、すぐに使用でき低コストで利用できるトレーニング装置が開示されている。動力として使用者の運動力を利用するため、酸素濃度調整手段等はトレーニング装置に内蔵できる程度に小型化できているものの、そのトレーニング装置を利用したトレーニングのみにしか利用できない。
【0009】
また、特許文献3には、使用者の呼気を貯蔵して外気を混合する貯蔵タンクと外気を導入する機能を有する調整タンクを流体連結した低酸素供給装置が開示されている。動力電源を必要としないため充分な小型化が図れているものの、貯蔵タンクに呼気中の二酸化炭素を減ずる二酸化炭素吸収装置を取り付けているため、1時間の使用のたびに二酸化炭素吸収材を交換する必要があり、利便性に課題がある。
【0010】
本発明は、上記の問題を解決するためになされたものであり、充分に小型化され、汎用性と利便性が高い携帯型低酸素呼吸器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の携帯型低酸素呼吸器は、窒素と酸素を分離可能な気体分離膜を含み、外気よりも酸素濃度が低い低酸素空気を必要な酸素濃度及び流量で供給できる気体分離膜モジュールと、上記気体分離膜モジュールと接続され、上記気体分離膜の両側に圧力差を生じさせる空気ポンプと、上記空気ポンプに電力を供給する携帯型電源と、を有し、低酸素空気を生成する低酸素空気発生機と、上記低酸素空気発生機に接続された気体輸送管と、上記気体輸送管に接続され、使用者に上記低酸素空気発生機で生成された低酸素空気を供給する呼吸用マスクと、を有する低酸素空気供給部と、上記低酸素空気発生機及び上記低酸素空気供給部の少なくとも一方に取り付けられた固定用具と、を備える。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、充分に小型化され、汎用性と利便性が高い携帯型低酸素呼吸器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本発明の実施形態に係る携帯型低酸素呼吸器の一例を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の基板について説明する。
しかしながら、本発明は、以下の構成に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において適宜変更して適用することができる。なお、以下において記載する個々の望ましい構成を2つ以上組み合わせたものもまた本発明である。
【0015】
図1は、本発明の実施形態に係る携帯型低酸素呼吸器の一例を模式的に示す図である。
【0016】
図1に示す携帯型低酸素呼吸器100は、低酸素空気発生機10と、低酸素空気供給部20と、固定用具30と、を備えている。
【0017】
低酸素空気発生機10は、気体分離膜モジュール40、空気ポンプ11及び携帯型電源12を有し、外気よりも酸素濃度が低い低酸素空気を生成する。
【0018】
気体分離膜モジュール40は、窒素と酸素を分離可能な気体分離膜41を含み、低酸素空気を必要な酸素濃度及び流量で供給することができる。気体分離膜モジュール40は、原料となる空気を気体分離膜41に透過させることで低酸素空気を得るためのモジュールである。
【0019】
ここで、気体分離膜モジュール40によって供給される低酸素空気の必要な酸素濃度及び流量は、特に限定されず、適宜設定可能であるが、必要な酸素濃度は、5体積%以上、21体積%以下であることが好ましく、10体積%以上、20体積%以下であることがより好ましく、必要な流量は、毎分2L以上、毎分250L以下であることが好ましく、毎分10L以上、毎分200L以下であることがより好ましい。
【0020】
気体分離膜モジュール40は、気体分離膜41を収納する筐体42を有し、筐体42には、空気ポンプ11から例えば圧縮された外気が供給される外気入口42aと、気体分離膜41を透過しなかった低酸素空気が排出される低酸素空気出口42bと、気体分離膜41を透過した外気よりも酸素濃度が高い高酸素空気が排出される高酸素空気出口42cと、が設けられている。
【0021】
特に気体分離膜モジュール40を携帯に適するように充分に小型化かつ軽量化するために、気体分離膜41としては、高い酸素分離比及び透過量を有する気体分離膜が好ましい。具体的には、例えば、酸素と窒素の膜材への溶解度の差と膜中の拡散係数の差を利用して分離する溶解拡散機構、酸素と窒素のガス分子のサイズや形状の違いを利用して分離する分子ふるい機構、酸素と選択的かつ可逆的に反応する物質(キャリア)を膜中に組み込むことによって分離を促進する促進輸送機構等を用いて優れた分離性能を示す分離膜や、複合化されたマトリックス膜(Mixed Matrix Membranes)のようなものを用いるのが望ましい。このマトリックス膜は、上記機構を発現する各種材料の特長を生かしつつ生産性、加工性及びコスト面での欠点を補うように複合化される。
【0022】
空気ポンプ11は、気体分離膜モジュール40と接続され、気体分離膜41の両側に圧力差を生じさせる。ここでは、図1に示すように、空気ポンプ11は、気体分離膜41の両側に圧力差を発生させるために供給側を加圧するためのエアコンプレッサーを含んでいる。なお、空気ポンプ11は、透過側を減圧するための真空ポンプを含んでいてもよく、エアコンプレッサー及び真空ポンプの少なくとも一方を含んでいてもよい。
【0023】
携帯型電源12は、空気ポンプ11に電力を供給するものであり、例えば、リチウムイオン電池等の二次電池を含んでいる。
【0024】
低酸素空気供給部20は、低酸素空気発生機10に接続された気体輸送管21と、気体輸送管21に接続され、使用者に低酸素空気発生機10で生成された低酸素空気を供給する呼吸用マスク22と、を有している。
【0025】
気体輸送管21は、低酸素空気発生機10で発生した低酸素空気を使用者に送るための取り回しし易い柔らかい材質のホースであり、気体輸送管21の一方の端部は、気体分離膜モジュール40の筐体42の低酸素空気出口42bに接続されている。
【0026】
呼吸用マスク22は、人体に低酸素空気を供給するための柔らかく顔に密着できるようなマスクである。呼吸用マスク22には、気体輸送管21の他方の端部が接続され、気体輸送管21によって送られてきた低酸素空気を使用者に供給するための吹き出し口22aが設けられており、供給した低酸素空気が使用者の口と鼻に届きやすくなるように吹き出し口22aの向きが調整されている。また、呼吸用マスク22には、使用者が吐き出した呼気を排出するための呼気排出口22bが設けられている。
【0027】
低酸素空気供給部20は、使用者に低酸素空気発生機10で生成された低酸素空気を送り出す送風機をさらに有することが好ましい。
【0028】
固定用具30は、低酸素空気発生機10及び低酸素空気供給部20の少なくとも一方に取り付けられている。したがって、固定用具30としての肩紐やベルトを利用して身体に携帯型低酸素呼吸器100を背負ったり、各種フィットネス機器等の併用する器械に固定する等、使用形態に合わせて携帯型低酸素呼吸器100を設置することが可能となる。各種フィットネス機器としては、例えば、トレッドミルや自転車やローイングマシーンやエアロバイク(登録商標)等が挙げられる。
【0029】
本実施形態によれば、充分に小型化され、汎用性と利便性が高い携帯型低酸素呼吸器を実現できる。
【0030】
より詳細には、窒素と酸素を分離可能な気体分離膜等を有する充分に小型化かつ軽量化が可能な低酸素空気発生機10を、呼吸用マスク22とダクト等の気体輸送管21とを有する低酸素空気供給部20と接続し、低酸素空気発生機10及び低酸素空気供給部20を、肩紐やベルト等の固定用具30を用いてトレーニング内容に合わせて着用したり、トレーニング装置に取り付けたりすることで、特定の用途や場所で使用する必要性がなくなる。
【0031】
また、気体分離膜41を通して新しい低酸素空気が常に供給され、使用者が吐き出した呼気は、呼吸用マスク22や気体輸送管21等の低酸素空気供給部20内と低酸素空気発生機10内に留まることがなく、呼吸器外部に排出されるため、二酸化炭素吸収装置を必要とせず連続使用が可能である。
【0032】
なお、上記実施形態では、人が携帯型低酸素呼吸器を使用する場合について説明したが、本発明において「使用者」とは、人に特に限定されず、例えば、競走馬等の動物であってもよい。
【0033】
本明細書には、以下の内容が開示されている。
【0034】
<1>
窒素と酸素を分離可能な気体分離膜を含み、外気よりも酸素濃度が低い低酸素空気を必要な酸素濃度及び流量で供給できる気体分離膜モジュールと、前記気体分離膜モジュールと接続され、前記気体分離膜の両側に圧力差を生じさせる空気ポンプと、前記空気ポンプに電力を供給する携帯型電源と、を有し、低酸素空気を生成する低酸素空気発生機と、
前記低酸素空気発生機に接続された気体輸送管と、前記気体輸送管に接続され、使用者に前記低酸素空気発生機で生成された低酸素空気を供給する呼吸用マスクと、を有する低酸素空気供給部と、
前記低酸素空気発生機及び前記低酸素空気供給部の少なくとも一方に取り付けられた固定用具と、
を備える携帯型低酸素呼吸器。
【0035】
<2>
前記低酸素空気供給部は、使用者に前記低酸素空気発生機で生成された低酸素空気を送り出す送風機をさらに有する、<1>に記載の携帯型低酸素呼吸器。
【0036】
<3>
前記気体分離膜が、複合化されたマトリックス膜からなる、<1>又は<2>に記載の携帯型低酸素呼吸器。
【符号の説明】
【0037】
10 低酸素空気発生機
11 空気ポンプ
12 携帯型電源
20 低酸素空気供給部
21 気体輸送管
22 呼吸用マスク
22a 吹き出し口
22b 呼気排出口
30 固定用具
40 気体分離膜モジュール
41 気体分離膜
42 筐体
42a 外気入口
42b 低酸素空気出口
42c 高酸素空気出口
100 携帯型低酸素呼吸器

図1