(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024104924
(43)【公開日】2024-08-06
(54)【発明の名称】眼科装置、眼科装置の制御方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
A61B 3/103 20060101AFI20240730BHJP
【FI】
A61B3/103
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023009368
(22)【出願日】2023-01-25
(71)【出願人】
【識別番号】000220343
【氏名又は名称】株式会社トプコン
(74)【代理人】
【識別番号】100124626
【弁理士】
【氏名又は名称】榎並 智和
(72)【発明者】
【氏名】中西 啓
(72)【発明者】
【氏名】行森 隆史
【テーマコード(参考)】
4C316
【Fターム(参考)】
4C316AA03
4C316AA13
4C316AA24
4C316FA18
4C316FB21
4C316FB26
4C316FZ01
(57)【要約】
【課題】眼科装置の低コスト化のための新たな技術を提供する。
【解決手段】眼科装置は、取得部と、リング像中心位置特定部と、極座標変換部と、フィルタ処理部と、算出部とを含む。取得部は、被検眼にリング状の光を投影し、被検眼からの戻り光を受光することによりリング像を取得する。リング像中心位置特定部は、リング像の中心位置を特定する。極座標変換部は、中心位置を中心としてリング像を極座標変換する。フィルタ処理部は、極座標変換部により極座標変換されたリング像の極座標変換画像に対してノイズ低減処理を施す。算出部は、フィルタ処理部によりノイズ低減処理が施されたノイズ低減画像に基づいて被検眼の屈折力値を算出する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検眼にリング状の光を投影し、前記被検眼からの戻り光を受光することによりリング像を取得する取得部と、
前記リング像の中心位置を特定するリング像中心位置特定部と、
前記中心位置を中心として前記リング像を極座標変換する極座標変換部と、
前記極座標変換部により極座標変換された前記リング像の極座標変換画像に対してノイズ低減処理を施すフィルタ処理部と、
前記フィルタ処理部により前記ノイズ低減処理が施されたノイズ低減画像に基づいて前記被検眼の屈折力値を算出する算出部と、
を含む、眼科装置。
【請求項2】
前記ノイズ低減処理は、メディアンフィルタ処理を含む
ことを特徴とする請求項1に記載の眼科装置。
【請求項3】
前記フィルタ処理部は、前記中心位置を中心とする径方向に1画素を有し、前記中心位置を中心とする角度方向に第1画素数を有する画素ブロック毎に、前記極座標変換画像に対して1次元のメディアンフィルタ処理を施す
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の眼科装置。
【請求項4】
前記第1画素数は、前記リング像の径方向のリング幅、前記リング像の長径方向の外径、及び前記リング像の短径方向の外径に基づいて決定される
ことを特徴とする請求項3に記載の眼科装置。
【請求項5】
前記フィルタ処理部は、前記中心位置を中心とする径方向にリング幅に相当する画素数より大きい画素数を有し、前記中心位置を中心とする角度方向に第1画素数を有する画素ブロック毎に、前記極座標変換画像に対して2次元のメディアンフィルタ処理を施す
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の眼科装置。
【請求項6】
前記第1画素数は、前記リング像の径方向のリング幅、前記リング像の長径方向の外径、及び前記リング像の短径方向の外径に基づいて決定される
ことを特徴とする請求項5に記載の眼科装置。
【請求項7】
前記リング幅に相当する画素数をdとし、前記長径方向の外径に相当する画素数をLとし、前記短径方向の外径に相当する画素数をMとしたとき、前記第1画素数は、arccos(2d×(L-M))より大きい画素数である
ことを特徴とする請求項6に記載の眼科装置。
【請求項8】
前記リング像又は前記極座標変換画像に基づいて、前記リング像のリング幅を特定するリング幅特定部を含み、
前記フィルタ処理部は、前記リング幅特定部により特定された前記リング幅を用いて前記極座標変換画像に対してノイズ低減処理を施す
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の眼科装置。
【請求項9】
前記リング像又は前記極座標変換画像に基づいて前記リング像の長径方向の外径、及び前記リング像の短径方向の外径を特定する外径特定部を含み、
前記フィルタ処理部は、前記リング幅特定部により特定された前記リング幅と、前記外径特定部により特定された前記長径方向の外径、及び前記短径方向の外径とを用いて前記極座標変換画像に対してノイズ低減処理を施す
ことを特徴とする請求項8に記載の眼科装置。
【請求項10】
被検眼にリング状の光を投影し、前記被検眼からの戻り光を受光することによりリング像を取得する眼科装置の制御方法であって、
前記リング像の中心位置を特定するリング像中心位置特定ステップと、
前記中心位置を中心として前記リング像を極座標変換する極座標変換ステップと、
前記極座標変換ステップにおいて極座標変換された前記リング像の極座標変換画像に対してノイズ低減処理を施すフィルタ処理ステップと、
前記フィルタ処理ステップにおいて前記ノイズ低減処理が施されたノイズ低減画像に基づいて前記被検眼の屈折力値を算出する算出ステップと、
を含む、眼科装置の制御方法。
【請求項11】
前記ノイズ低減処理は、メディアンフィルタ処理を含む
ことを特徴とする請求項10に記載の眼科装置の制御方法。
【請求項12】
前記フィルタ処理ステップは、前記中心位置を中心とする径方向に1画素を有し、前記中心位置を中心とする角度方向に第1画素数を有する画素ブロック毎に、前記極座標変換画像に対して1次元のメディアンフィルタ処理を施す
ことを特徴とする請求項10又は請求項11に記載の眼科装置の制御方法。
【請求項13】
前記第1画素数は、前記リング像の径方向のリング幅、前記リング像の長径方向の外径、及び前記リング像の短径方向の外径に基づいて決定される
ことを特徴とする請求項12に記載の眼科装置の制御方法。
【請求項14】
前記フィルタ処理ステップは、前記中心位置を中心とする径方向にリング幅に相当する画素数より大きい画素数を有し、前記中心位置を中心とする角度方向に第1画素数を有する画素ブロック毎に、前記極座標変換画像に対して2次元のメディアンフィルタ処理を施す
ことを特徴とする請求項10又は請求項11に記載の眼科装置の制御方法。
【請求項15】
前記第1画素数は、前記リング像の径方向のリング幅、前記リング像の長径方向の外径、及び前記リング像の短径方向の外径に基づいて決定される
ことを特徴とする請求項14に記載の眼科装置の制御方法。
【請求項16】
前記リング幅に相当する画素数をdとし、前記長径方向の外径に相当する画素数をLとし、前記短径方向の外径に相当する画素数をMとしたとき、前記第1画素数は、arccos(2d×(L-M))より大きい画素数である
ことを特徴とする請求項15に記載の眼科装置の制御方法。
【請求項17】
前記リング像又は前記極座標変換画像に基づいて、前記リング像のリング幅を特定するリング幅特定ステップを含み、
前記フィルタ処理ステップは、前記リング幅特定ステップにおいて特定された前記リング幅を用いて前記極座標変換画像に対してノイズ低減処理を施す
ことを特徴とする請求項10又は請求項11に記載の眼科装置の制御方法。
【請求項18】
前記リング像又は前記極座標変換画像に基づいて前記リング像の長径方向の外径、及び前記リング像の短径方向の外径を特定する外径特定ステップを含み、
前記フィルタ処理ステップは、前記リング幅特定ステップにおいて特定された前記リング幅と前記外径特定ステップにおいて特定された前記長径方向の外径、及び前記短径方向の外径とを用いて前記極座標変換画像に対してノイズ低減処理を施す
ことを特徴とする請求項17に記載の眼科装置の制御方法。
【請求項19】
コンピュータに、請求項10又は請求項11に記載の眼科装置の制御方法の各ステップを実行させることを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、眼科装置、眼科装置の制御方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、被検眼の屈折力測定が可能な眼科装置が知られている。この種の眼科装置は、被検眼の眼底にリング状の光を投影し、被検眼からの戻り光を受光することによって得られたリング像を特定し、特定されたリング像を解析することで屈折力値を算出することが可能である。
【0003】
被検眼からの戻り光の受光結果に基づいて形成されるリング像にはノイズ成分が含まれ、リング像の解析結果の精度を低下させる。例えば、特許文献1、特許文献2、及び特許文献3には、ロータリープリズムを用いて光学的にリング像のノイズを低減する手法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10-014876号公報
【特許文献2】国際公開第2003/022138号
【特許文献3】特開2004-081725号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ロータリープリズムを不要にできれば、眼科装置の構成及び駆動制御が簡素化される。それにより、眼科装置の低コスト化を実現できる可能性がある。
【0006】
本発明は、このような事情を鑑みてなされたものであり、その目的は、眼科装置の低コスト化のための新たな技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態の1つの態様は、被検眼にリング状の光を投影し、前記被検眼からの戻り光を受光することによりリング像を取得する取得部と、前記リング像の中心位置を特定するリング像中心位置特定部と、前記中心位置を中心として前記リング像を極座標変換する極座標変換部と前記極座標変換部により極座標変換された前記リング像の極座標変換画像に対してノイズ低減処理を施すフィルタ処理部と、前記フィルタ処理部により前記ノイズ低減処理が施されたノイズ低減画像に基づいて前記被検眼の屈折力値を算出する算出部と、を含む、眼科装置である。
【0008】
実施形態の別の態様は、被検眼にリング状の光を投影し、前記被検眼からの戻り光を受光することによりリング像を取得する眼科装置の制御方法である。眼科装置の制御方法は、前記リング像の中心位置を特定するリング像中心位置特定ステップと、前記中心位置を中心として前記リング像を極座標変換する極座標変換ステップと、前記極座標変換ステップにおいて極座標変換された前記リング像の極座標変換画像に対してノイズ低減処理を施すフィルタ処理ステップと、前記フィルタ処理ステップにおいて前記ノイズ低減処理が施されたノイズ低減画像に基づいて前記被検眼の屈折力値を算出する算出ステップと、を含む。
【0009】
実施形態の更に別の態様は、コンピュータに、上記の眼科装置の制御方法の各ステップを実行させるプログラムである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、眼科装置の低コスト化のための新たな技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施形態に係る眼科装置の光学系の構成例を示す概略図である。
【
図2】実施形態に係る眼科装置の処理系の構成例を示す概略図である。
【
図3】実施形態に係る眼科装置の処理系の構成例を示す概略図である。
【
図4】実施形態に係る眼科装置の動作を説明するための概略図である。
【
図5】実施形態に係る眼科装置の動作を説明するための概略図である。
【
図6】実施形態に係る眼科装置の動作を説明するための概略図である。
【
図7】実施形態に係る眼科装置の動作を説明するための概略図である。
【
図8】実施形態に係る眼科装置の動作を説明するための概略図である。
【
図9】実施形態に係る眼科装置の動作を説明するための概略図である。
【
図10】実施形態の比較例に係る眼科装置の動作を説明するための概略図である。
【
図11】実施形態に係る眼科装置の動作を説明するための概略図である。
【
図12】実施形態に係る眼科装置の動作を説明するための概略図である。
【
図13】実施形態に係る眼科装置の動作を説明するための概略図である。
【
図14】実施形態に係る眼科装置の動作例を示すフローチャートである。
【
図15】実施形態に係る眼科装置の動作例を示すフローチャートである。
【
図16】実施形態の変形例に係る眼科装置の処理系の構成例を示す概略図である。
【
図17】実施形態の変形例に係る眼科装置の動作例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
この発明に係る眼科装置、眼科装置の制御方法、及びプログラムの実施形態の例について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、この明細書において引用された文献の記載内容や任意の公知技術を、以下の実施形態に援用することが可能である。
【0013】
実施形態に係る眼科装置は、被検眼の眼底にリング状の光を投影し、被検眼からの戻り光を受光することによりリング像を取得し、取得されたリング像に基づいて被検眼の屈折力値を算出するように構成される。いくつかの実施形態では、眼科装置は、被検眼の眼底にリング状の光を投影し、被検眼からの戻り光を受光するように構成された光学系を含み、光学系を用いて取得されたリング像を解析することで被検眼の屈折力値を算出する。いくつかの実施形態では、眼科装置は、外部の装置により得られたリング像を、ネットワーク等を介して当該装置から取得し、取得されたリング像を解析することで被検眼の屈折力値を算出する。
【0014】
眼科装置は、取得されたリング像の中心位置を特定し、特定されたリング像の中心位置を中心としてリング像に対して極座標変換を施すことで極座標変換画像を生成し、生成された極座標変換に対してノイズ低減処理を施す。眼科装置は、ノイズ低減処理が施されたノイズ低減画像に基づいて、被検眼の屈折力値を算出する。いくつかの実施形態では、眼科装置は、ノイズ低減画像に対して逆極座標変換を施すことで逆極座標変換画像(ノイズ低減処理が施されたリング像)を生成し、生成された逆極座標変換画像に基づいて、被検眼の屈折力値を算出する。
【0015】
これにより、ロータリープリズムを設けることなく、リング像(極座標変換画像)のノイズを低減することが可能になり、リング像の解析精度を向上させることができる。その結果、眼科装置の構成及び制御が簡素化され、眼科装置の低コスト化を実現できるようになる。
【0016】
実施形態に係る眼科装置は、実施形態に係る眼科情報処理装置の機能を実現する。実施形態に係る眼科情報の制御方法は、プロセッサ(コンピュータ)により実行され、実施形態に係る眼科装置を制御するための処理を実現するための1以上のステップを含む。実施形態に係るプログラムは、プロセッサに実施形態に係る眼科装置の制御方法の各ステップを実行させる。実施形態に係る記録媒体(記憶媒体)は、実施形態に係るプログラムが記録(記憶)されたコンピュータにより読み取り可能な非一時的な記録媒体(記憶媒体)である。
【0017】
本明細書において「プロセッサ」は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、プログラマブル論理デバイス(例えば、SPLD(Simple Programmable Logic Device)、CPLD(Complex Programmable Logic Device)、FPGA(Field Programmable Gate Array))等の回路を意味する。プロセッサは、例えば、記憶回路や記憶装置に格納されているプログラムを読み出し実行することで、実施形態に係る機能を実現する。
【0018】
以下、実施形態に係る眼科装置は、リング像(リング像を極座標変換して得られた極座標変換画像)に対してノイズ低減処理としてのメディアンフィルタ処理を施す場合について説明する。しかしながら、実施形態に係る眼科装置は、メディアンフィルタ処理以外のノイズ低減処理を実行する場合にも適用可能である。
【0019】
実施形態に係る眼科装置は、屈折力測定(レフ測定)を実行可能な光学系(レフ測定光学系、屈折力測定光学系)を含む。いくつかの実施形態に係る眼科装置は、更に、自覚検査を行うための自覚検査光学系や、その他の他覚測定を行うための他覚測定系を含む。
【0020】
自覚検査は、被検者からの応答を利用して情報を取得する測定手法である。自覚検査には、遠用検査、近用検査、コントラスト検査、グレア検査等の自覚屈折測定や、視野検査などがある。
【0021】
他覚測定は、被検者からの応答を参照することなく、主に物理的な手法を用いて被検眼に関する情報を取得する測定手法である。他覚測定には、被検眼の特性を取得するための測定と、被検眼の画像を取得するための撮影とが含まれる。その他の他覚測定には、角膜形状測定、眼圧測定、眼底撮影、光コヒーレンストモグラフィ(OCT)計測等がある。
【0022】
以下、眼底共役位置は、アライメントが完了した状態での被検眼の眼底と光学的に略共役な位置であり、被検眼の眼底と光学的に共役な位置又はその近傍を意味するものとする。同様に、瞳孔共役位置は、アライメントが完了した状態での被検眼の瞳孔と光学的に略共役な位置であり、被検眼の瞳孔と光学的に共役な位置又はその近傍を意味するものとする。
【0023】
また、光学系の光軸の方向をz方向(前後方向)とし、光学系の光軸に直交する(広義には、交差する)水平方向をx方向(左右方向)とし、光学系の光軸に直交する垂直方向をy方向(上下方向)とする。
【0024】
<光学系の構成>
図1に、実施形態に係る眼科装置1000の光学系の構成例を示す。眼科装置1000は、被検眼Eの屈折力を測定するための光学系(レフ測定光学系)と、被検眼Eを観察するための光学系と、被検眼Eに対してその他の検査するための光学系と、これらの光学系の光路を波長分離するダイクロイックミラーとを含む。被検眼Eを観察するための光学系として、前眼部観察系5が設けられている。被検眼Eに対してその他の検査するための光学系として角膜形状測定光学系が設けられている。
【0025】
眼科装置1000は、上記の光学系として、Zアライメント系1、XYアライメント系2、ケラト測定系3、固視投影系4、前眼部観察系5、レフ測定投射系6、及びレフ測定受光系7を含む。以下では、例えば、前眼部観察系5が940nm~1000nmの光を用い、レフ測定光学系(レフ測定投射系6、レフ測定受光系7)が830nm~880nmの光を用い、固視投影系4が400nm~700nmの光を用いるものとする。
【0026】
(前眼部観察系5)
前眼部観察系5は、被検眼Eの前眼部を動画撮影する。前眼部観察系5を経由する光学系において、撮像素子59の撮像面は瞳孔共役位置に配置されている。前眼部照明光源50は、被検眼Eの前眼部に照明光(例えば、赤外光)を照射する。いくつかの実施形態では、前眼部照明光源50の機能が後述のケラトリング光源32により実現され、眼科装置1000は、前眼部照明光源50が省略された構成を有する。
【0027】
被検眼Eの前眼部により反射された光は、対物レンズ51を透過し、ダイクロイックミラー52を透過し、絞り(テレセン絞り)53に形成された孔部を通過し、ハーフミラー23を透過する。ハーフミラー23を透過した光は、リレーレンズ55及び56を透過し、ダイクロイックミラー76を透過する。ダイクロイックミラー52は、レフ測定光学系の光路と前眼部観察系5の光路とを合成(分離)する。ダイクロイックミラー52は、これらの光路を合成する光路合成面が対物レンズ51の光軸に対して傾斜して配置される。リレーレンズ56は、前眼部観察系5の光軸(又はリレーレンズ56の光軸)に沿って移動可能であってよい。ダイクロイックミラー76を透過した光は、結像レンズ58により撮像素子59(エリアセンサー)の撮像面に結像される。撮像素子59は、所定のレートで撮像及び信号出力を行う。撮像素子59の出力(映像信号)は、後述の処理部9に入力される。処理部9は、この映像信号に基づく前眼部画像E´を後述の表示部10の表示画面10aに表示させる。前眼部画像E´は、例えば赤外動画像である。
【0028】
(Zアライメント系1)
Zアライメント系1は、前眼部観察系5の光軸方向(前後方向、z方向)におけるアライメントを行うための光(赤外光)を被検眼Eに投射する。Zアライメント光源11は、前眼部観察系5の光軸から離れた位置から被検眼Eの角膜Crに光を投射する。Zアライメント光源11から出力された光は、被検眼Eの角膜Crに投射され、角膜Crにより反射され、結像レンズ12によりラインセンサー13のセンサー面に結像される。角膜頂点の位置が前眼部観察系5の光軸方向に変化すると、ラインセンサー13のセンサー面における光(角膜Crの反射光)の投射位置が変化する。処理部9は、ラインセンサー13のセンサー面における光の投射位置に基づいて被検眼Eの角膜頂点の位置を求め、これに基づき光学系を移動させる機構を制御してZアライメントを実行する。
【0029】
(XYアライメント系2)
XYアライメント系2は、前眼部観察系5の光軸に直交する方向(左右方向(x方向)、上下方向(y方向))のアライメントを行うための光(赤外光)を被検眼Eに照射する。XYアライメント系2は、ハーフミラー23により前眼部観察系5の光路から分岐された光路に設けられたXYアライメント光源21とコリメータレンズ22とを含む。XYアライメント光源21から出力された光は、コリメータレンズ22を通過し、ハーフミラー23により反射され、前眼部観察系5を通じて被検眼Eに投射される。被検眼Eの角膜Crによる反射光は、前眼部観察系5を通じて撮像素子59に導かれる。
【0030】
この反射光に基づく像(輝点像)Brは前眼部画像E´に含まれる。処理部9は、輝点像Brを含む前眼部画像E´とアライメントマークALとを表示部の表示画面に表示させる。手動でXYアライメントを行う場合、ユーザは、アライメントマークAL内に輝点像Brを誘導するように光学系の移動操作を行う。自動でアライメントを行う場合、処理部9は、アライメントマークALに対する輝点像Brの変位がキャンセルされるように、光学系を移動させる機構を制御する。
【0031】
(ケラト測定系3)
ケラト測定系3は、被検眼Eの角膜Crの形状を測定するためのリング状の光(赤外光、ケラトリング光)を角膜Crに投射する。ケラト板31は、対物レンズ51と被検眼Eとの間に配置されている。ケラト板31の背面側(対物レンズ51側)にはケラトリング光源32が設けられている。ケラト板31には、光学系(ケラト測定系3、前眼部観察系5)の光軸に相当する位置を中心として円弧状又は円周状に透過パターンが形成されている。実施形態では、ケラト板31には、光軸を中心に2つの同心円状の透過パターンが形成されているものとするが、光軸を中心に1つの円状の透過パターン、又は3以上の童心円上の透過パターンが形成されていてもよい。
【0032】
ケラトリング光源32からの光でケラト板31を照明することにより、被検眼Eの角膜Crにリング状光束(円弧状又は円周状の測定パターン、ケラトリング光)が投射される。被検眼Eの角膜Crからの反射光(ケラトリング像)は撮像素子59により前眼部画像E´とともに検出される。処理部9は、このケラトリング像を基に公知の演算を行うことで、角膜Crの形状を表す角膜形状パラメータを算出する。
【0033】
(レフ測定投射系6、レフ測定受光系7)
レフ測定光学系は、屈折力測定に用いられるレフ測定投射系6及びレフ測定受光系7を含む。レフ測定投射系6は、屈折力測定用の光束(例えば、リング状光束)(赤外光)を眼底Efに投射する。レフ測定受光系7は、この光束の被検眼Eからの戻り光を受光する。レフ測定投射系6は、レフ測定受光系7の光路に設けられた孔開きプリズム65によって分岐された光路に設けられる。孔開きプリズム65に形成されている孔部は、瞳孔共役位置に配置される。レフ測定受光系7を経由する光学系において、撮像素子59の撮像面は眼底共役位置に配置される。
【0034】
いくつかの実施形態では、レフ測定光源61は、高輝度光源であるSLD(Superluminescent Diode)光源である。レフ測定光源61は、光軸方向に移動可能である。レフ測定光源61は、眼底共役位置に配置される。レフ測定光源61から出力された光は、リレーレンズ62を透過し、円錐プリズム63の円錐面に入射する。円錐面に入射した光は偏向され、円錐プリズム63の底面から出射する。円錐プリズム63の底面から出射した光は、リング絞り64にリング状に形成された透光部を透過する。リング絞り64の透光部を透過した光(リング状光束)は、孔開きプリズム65の孔部の周囲に形成された反射面により反射され、ダイクロイックミラー67により反射される。ここで、孔開きプリズム65に形成された穴部は、瞳孔共役位置に配置可能である。ダイクロイックミラー67により反射された光は、ダイクロイックミラー52により反射され、対物レンズ51を透過し、被検眼Eに投射される。
【0035】
眼底Efに投射されたリング状光束の戻り光は、対物レンズ51を透過し、ダイクロイックミラー52及びダイクロイックミラー67により反射される。ダイクロイックミラー67により反射された戻り光は、孔開きプリズム65の孔部を通過し、リレーレンズ71を透過し、反射ミラー72により反射され、リレーレンズ73及び合焦レンズ74を透過する。合焦レンズ74は、レフ測定受光系7の光軸に沿って移動可能である。合焦レンズ74を透過した光は、反射ミラー75により反射され、ダイクロイックミラー76により反射され、結像レンズ58により撮像素子59の撮像面に結像される。処理部9は撮像素子59からの出力を基に公知の演算を行うことで被検眼Eの屈折力値を算出する。例えば、屈折力値は、球面度数、乱視度数及び乱視軸角度、又は等価球面度数を含む。
【0036】
(固視投影系4)
固視投影系4は、ダイクロイックミラー67によりレフ測定光学系の光路から波長分離された光路に設けられる。
【0037】
固視投影系4は、固視標を被検眼Eに呈示する。固視投影系4の光路には、固視ユニット40が配置されている。固視ユニット40は、後述の処理部9からの制御を受け、固視投影系4の光路に沿って移動可能である。固視ユニット40は、液晶パネル41を含む。
【0038】
処理部9による制御を受けた液晶パネル41は、固視標を表すパターンを表示する。液晶パネル41は、ケラト測定用又はレフ測定用の固視標(例えば、風景チャート)を表す固視標パターンを表示することが可能である。
【0039】
いくつかの実施形態では、固視標は、互いに視角が異なる2以上の固視標を含む。この場合、液晶パネル41は、互いに視角が異なる2以上の固視標を選択的に被検眼Eに呈示するように、当該2以上の固視標のいずれか1つを表すパターンを表示する。
【0040】
液晶パネル41の画面上におけるパターンの表示位置を変更することにより、被検眼Eの固視位置を変更できる。被検眼Eの固視位置としては、眼底Efの黄斑部を中心とする画像を取得するための位置や、視神経乳頭を中心とする画像を取得するための位置や、黄斑部と視神経乳頭との間の眼底中心を中心とする画像を取得するための位置などがある。固視標を表すパターンの表示位置を任意に変更することが可能である。
【0041】
液晶パネル41からの光は、リレーレンズ42を透過し、リレーレンズ43を透過し、反射ミラー44により反射され、ダイクロイックミラー67を透過し、ダイクロイックミラー52により反射される。ダイクロイックミラー52により反射された光は、対物レンズ51を透過して眼底Efに投射される。いくつかの実施形態では、液晶パネル41及びリレーレンズ42のそれぞれは、独立に光軸方向に移動可能である。
【0042】
いくつかの実施形態では、液晶パネル41に代えて、透過型又は反射型の視標チャートと、視標チャートを照明する照明光源とが設けられる。視標チャートには、固視標を表す固視標パターンが印刷される。照明光源により視標チャートを照明することにより被検眼Eに固視標が呈示される。互いに視角が異なる固視標パターンが印刷された2以上の視標チャートが選択的に照明光源により照明されるように構成されてもよい。
【0043】
処理部9は、レフ測定光学系を用いて得られた測定結果から屈折力値を算出し、算出された屈折力値に基づいて、眼底Efとレフ測定光源61と撮像素子59とが共役となる位置に、レフ測定光源61及び合焦レンズ74それぞれを光軸方向に移動させる。いくつかの実施形態では、処理部9は、レフ測定光源61及び合焦レンズ74の移動に連動して液晶パネル41(固視ユニット40)をその光軸方向に移動させる。
【0044】
<処理系の構成>
眼科装置1000の処理系の構成について説明する。
【0045】
図2、及び
図3に、眼科装置1000の処理系の構成を説明するための概略図を示す。
図2、及び
図3は、眼科装置1000の処理系の機能的な構成例のブロック図を表す。
【0046】
図2は、眼科装置1000の処理系(制御系)の機能ブロック図の一例を表す。
図2において、
図1と同様の部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。
図3は、
図2のデータ処理部223の機能ブロック図の一例を表す。
【0047】
処理部9は、眼科装置1000の各部を制御する。また、処理部9は、各種演算処理を実行可能である。処理部9は、プロセッサを含む。処理部9は、例えば、記憶回路や記憶装置に格納されているプログラムを読み出し実行することで、実施形態に係る機能を実現する。
【0048】
処理部9は、実施形態に係る「眼科情報処理装置」の一例である。すなわち、処理部9の機能を実現するためのプログラムは、実施形態に係る「プログラム」の一例である。
【0049】
処理部9は、制御部210と、演算処理部220とを含む。処理部9の機能は、1以上のプロセッサにより実現される。いくつかの実施形態では、処理部9の機能は、処理部9(演算処理部220)を構成する機能ブロック毎に設けられた複数のプロセッサにより実現される。いくつかの実施形態では、処理部9の機能は、単一のプロセッサにより実現される。また、眼科装置1000は、移動機構200と、表示部270と、操作部280と、通信部290とを含む。
【0050】
移動機構200は、Zアライメント系1、XYアライメント系2、ケラト測定系3、固視投影系4、前眼部観察系5、レフ測定投射系6、及びレフ測定受光系7等の光学系が収納されたヘッド部を左右方向(x方向)、上下方向(y方向)、及び前後方向(z方向)に移動させる機構である。例えば、移動機構200には、ヘッド部を移動するための駆動力を発生するアクチュエータと、この駆動力を伝達する伝達機構とが設けられる。アクチュエータは、例えばパルスモータにより構成される。伝達機構は、例えば歯車の組み合わせやラック・アンド・ピニオンなどによって構成される。制御部210(主制御部211)は、アクチュエータに対して制御信号を送ることにより移動機構200に対する制御を行う。
【0051】
(制御部210)
制御部210は、プロセッサを含み、眼科装置の各部を制御する。制御部210は、主制御部211と、記憶部212とを含む。記憶部212には、眼科装置を制御するためのコンピュータプログラムがあらかじめ格納される。コンピュータプログラムには、光源制御用プログラム、光学系制御用プログラム、演算処理用プログラム及びユーザインターフェイス用プログラムなどが含まれる。このようなコンピュータプログラムに従って主制御部211が動作することにより、制御部210は制御処理を実行する。
【0052】
主制御部211は、測定制御部として眼科装置の各種制御を行う。Zアライメント系1に対する制御には、Zアライメント光源11の制御、ラインセンサー13の制御などがある。Zアライメント光源11の制御には、光源の点灯、消灯、光量調整、絞り調整などがある。それにより、Zアライメント光源11の点灯と非点灯とが切り替えられたり、光量が変更されたりする。ラインセンサー13の制御には、検出素子の露光調整やゲイン調整や検出レート調整などがある。主制御部211は、ラインセンサー13により検出された信号を取り込み、取り込まれた信号に基づいてラインセンサー13に対する光の投影位置を特定する。主制御部211は、演算処理部220を制御して、特定された投影位置に基づいて被検眼Eの角膜頂点の位置を特定させ、これに基づき移動機構200を制御してヘッド部をz方向に移動させる(Zアライメント)。
【0053】
XYアライメント系2に対する制御には、XYアライメント光源21に対する制御などがある。XYアライメント光源21の制御には、光源の点灯、消灯、光量調整、絞り調整などがある。それにより、XYアライメント光源21の点灯と非点灯とが切り替えられたり、光量が変更されたりする。主制御部211は、撮像素子59より検出された信号を取り込み、取り込まれた信号に基づいて輝点像を特定し、アライメント基準位置(例えば、光学系の光軸に相当する位置)に対する輝点像の位置の変位に基づいて移動機構200を制御してヘッド部をxy方向に移動させる(XYアライメント)。
【0054】
ケラト測定系3に対する制御には、ケラトリング光源32の制御などがある。ケラトリング光源32の制御には、光源の点灯、消灯、光量調整、絞り調整などがある。それにより、ケラトリング光源32の点灯と非点灯とが切り替えられたり、光量が変更されたりする。主制御部211は、撮像素子59により検出されたケラトリング像に対する公知の演算を演算処理部220に実行させる。それにより、被検眼Eの角膜形状情報が求められる。
【0055】
固視投影系4に対する制御には、液晶パネル41の制御や固視ユニット40の移動制御などがある。液晶パネル41の制御には、固視標を表すパターンの表示のオン・オフや、固視標を表すパターンの切り替え、固視標を表すパターンの表示位置の切り替えなどがある。固視標を表すパターンの切り替えとしては、視角が小さい固視標を表すパターンと視角が大きい固視標を表すパターンとの切り替えなどがある。
【0056】
例えば、固視投影系4には、液晶パネル41(又は固視ユニット40)を光軸方向に移動する移動機構が設けられる。この移動機構には、移動機構200と同様に、当該移動機構を移動するための駆動力を発生するアクチュエータと、この駆動力を伝達する伝達機構とが設けられる。主制御部211は、アクチュエータに対して制御信号を送ることにより移動機構に対する制御を行い、少なくとも液晶パネル41を光軸方向に移動させる。それにより、液晶パネル41と眼底Efとが光学的に共役となるように液晶パネル41の位置が調整される。
【0057】
前眼部観察系5に対する制御には、前眼部照明光源50の制御、撮像素子59の制御などがある。前眼部照明光源50の制御には、光源の点灯、消灯、光量調整、絞り調整などがある。それにより、前眼部照明光源50の点灯と非点灯とが切り替えられたり、光量が変更されたりする。撮像素子59の制御には、撮像素子59の露光調整やゲイン調整や検出レート調整などがある。主制御部211は、撮像素子59により検出された信号を取り込み、取り込まれた信号に基づく画像の形成等の処理を演算処理部220に実行させる。
【0058】
レフ測定投射系6に対する制御には、レフ測定光源61の制御などがある。レフ測定光源61の制御には、光源の点灯、消灯、光量調整、絞り調整などがある。それにより、レフ測定光源61の点灯と非点灯とが切り替えられたり、光量が変更されたりする。例えば、レフ測定投射系6は、レフ測定光源61を光軸方向に移動する移動機構を含む。この移動機構には、移動機構200と同様に、当該移動機構を移動するための駆動力を発生するアクチュエータと、この駆動力を伝達する伝達機構とが設けられる。主制御部211は、アクチュエータに対して制御信号を送ることにより移動機構に対する制御を行い、レフ測定光源61を光軸方向に移動させる。
【0059】
レフ測定受光系7に対する制御には、合焦レンズ74の制御などがある。合焦レンズ74の制御には、合焦レンズ74の光軸方向への移動制御などがある。例えば、レフ測定受光系7は、合焦レンズ74を光軸方向に移動する移動機構を含む。この移動機構には、移動機構200と同様に、当該移動機構を移動するための駆動力を発生するアクチュエータと、この駆動力を伝達する伝達機構とが設けられる。主制御部211は、アクチュエータに対して制御信号を送ることにより移動機構に対する制御を行い、合焦レンズ74を光軸方向に移動させる。主制御部211は、レフ測定光源61と眼底Efと撮像素子59とが光学的に共役となるように、例えば被検眼Eの屈折力に応じてレフ測定光源61及び合焦レンズ74をそれぞれ光軸方向に移動させることが可能である。
【0060】
また、主制御部211は、表示制御部として、各種情報を表示部270に表示させることが可能である。例えば、主制御部211は、撮像素子59により得られた被検眼Eの画像(前眼部画像、眼底画像)、操作部280の機能をタッチパネルにより実現するためのグラフィカルユーザインターフェイス、及び演算処理部220の処理結果に対応した情報などを表示部270に表示させる。演算処理部220の処理結果として、眼屈折力算出部221により算出された被検眼Eの屈折力値、角膜形状情報算出部222により算出された被検眼Eの角膜形状情報、データ処理部223の処理結果などがある。
【0061】
更に、主制御部211は、記憶部212にデータを書き込む処理や、記憶部212からデータを読み出す処理を行う。
【0062】
(記憶部212)
記憶部212は、各種のデータを記憶する。記憶部212に記憶されるデータとしては、例えば他覚測定(レフ測定、ケラト測定)の測定結果、眼底画像の画像データ、被検眼情報、被検者情報などがある。被検眼情報は、左眼/右眼の識別情報などの被検眼に関する情報を含む。被検者情報は、患者ID、氏名、被検者の年令、性別、身長、体重などの被検者に関する情報を含む。いくつかの実施形態では、被検者情報は、電子カルテから取得される情報である。いくつかの実施形態では、被検眼情報や被検者情報は、操作部280を用いて検者又は被検者により入力される情報である。また、記憶部212には、眼科装置を動作させるための各種プログラムやデータが記憶されている。
【0063】
(演算処理部220)
演算処理部220は、眼屈折力算出部221と、角膜形状情報算出部222と、データ処理部223とを含む。
【0064】
(眼屈折力算出部221)
眼屈折力算出部221は、レフ測定投射系6により眼底Efに投影されたリング状光束(リング状の測定パターン)の戻り光を撮像素子59が受光することにより得られたリング像(パターン像)を解析することで、被検眼Eの屈折力値を算出する。この実施形態では、撮像素子59により戻り光を受光することにより得られたリング像に対して、後述のノイズ低減処理を施すことでリング像のノイズ低減画像が取得される。眼屈折力算出部221は、リング像のノイズ低減画像を解析することによって、被検眼Eの屈折力値を算出する。
【0065】
眼屈折力算出部221は、例えば特開昭63-275318号公報に開示されているように、取得されたリング像の大きさ及び形状を特定することにより被検眼Eの屈折力値を求めることが可能である。ここで、リング像の大きさは被検眼Eの屈折度に応じて変化し、リング像の形状は乱視度に応じて正円形状から楕円形状に変化する。このとき、リング像が、長径と短径とを有し、長径が基準軸に対して所定の角度をなす楕円形状である場合、楕円の大きさが球面度数に対応し、乱視の強主経線の屈折力が長径に対応し、乱視の弱主経線の屈折力が短径に対応し、乱視軸角度が角度に対応する。この実施形態では、眼屈折力算出部221は、リング像の中心位置(又は、重心位置)を中心として当該リング像を極座標変換することにより得られた極座標変換後の画像からリング像の近似楕円の長径、短径、及び角度を特定する。より具体的には、眼屈折力算出部221は、極座標変換後の画像に対してノイズ低減処理が施すことにより得られたノイズ低減画像からリング像の近似楕円の長径、短径、及び角度を特定する。
【0066】
眼屈折力算出部221は、長径、短径、及び角度から近似楕円の大きさを特定し、所定の基準円を基準に、特定された楕円の大きさに対応する球面度数Sを求める。また、眼屈折力算出部221は、強主経線に対応する長径と弱主経線に対応する短径での屈折力の差分を乱視度数Cとして求め、基準軸に対する角度を乱視軸角度Aとして特定する。いくつかの実施形態では、屈折力値として等価球面度数SE(=S+C/2)が算出される。
【0067】
いくつかの実施形態では、眼屈折力算出部221は、例えば特開昭63-275318号公報に開示されているように、xy平面におけるリング像に対して近似楕円のフィッティング処理を施し、リング像の近似楕円の一般式“αx2+βy2+γxy=1”(α、β、γは係数)を求める。係数α、β、γは、長径、短径、及び角度で表すことができるため、眼屈折力算出部221は、係数α、β、γから、長径、短径、及び角度を算出することが可能である。すなわち、眼屈折力算出部221は、極座標変換前のxy座標系におけるリング像から長径、短径、及び角度を算出することが可能である。
【0068】
いくつかの実施形態では、眼屈折力算出部221は、基準パターンに対するリング像の変形及び変位に基づいて、球面度数S、乱視度数C及び乱視軸角度A、又は等価球面度数SEを求める。
【0069】
(角膜形状情報算出部222)
角膜形状情報算出部222は、ケラト測定系3によりケラトリング光束が投影された前眼部からの反射光を受光することにより前眼部観察系5により取得されたリングパターン像(ケラトリング像)に基づいて、角膜形状情報を算出する。角膜形状情報には、角膜屈折力、角膜乱視度、及び角膜乱視軸角度などがある。例えば、角膜形状情報算出部222は、ケラトリング像を解析することにより角膜前面の強主経線や弱主経線の角膜曲率半径を算出し、角膜曲率半径に基づいて上記の角膜形状情報を算出する。
【0070】
(データ処理部223)
データ処理部223は、撮像素子59により得られた画像に対して各種のデータ処理(画像処理)や解析処理を施す。例えば、データ処理部223は、画像の輝度補正や分散補正等の補正処理を実行する。
【0071】
また、データ処理部223は、被検眼Eの屈折力値を算出するためのリング像を特定し、特定されたリング像に対して極座標変換を行い、極座標変換後の画像に対してノイズ低減処理を施してノイズ低減画像を生成する。
【0072】
図3に示すように、データ処理部223は、リング像特定部230と、リング像中心位置特定部240と、極座標変換部250と、フィルタ処理部260とを含む。
【0073】
データ処理部223の機能は、プロセッサにより実現される。いくつかの実施形態では、データ処理部223の機能は、データ処理部223を構成する機能ブロック毎に設けられた複数のプロセッサにより実現される。いくつかの実施形態では、データ処理部223の機能は、単一のプロセッサにより実現される。
【0074】
(リング像特定部230)
リング像特定部230は、レフ測定受光系7における撮像素子59により得られた被検眼Eの眼底画像を解析することにより、レフ測定投射系6により眼底Efに投射されたリング状光束の戻り光により形成されるリング像を特定する。
【0075】
例えば、リング像特定部230は、取得された眼底画像の輝度分布を求め、求められた輝度分布からリング像の中心位置又は重心位置を求め、求められた中心位置又は重心位置から放射状にのびる複数の経線方向に沿った輝度分布を求める。リング像特定部230は、求められた輝度分布からリング像を特定する。
【0076】
(リング像中心位置特定部240)
リング像中心位置特定部240は、リング像特定部230により特定されたリング像の中心位置を特定する。
【0077】
例えば、リング像中心位置特定部240は、特定されたリング像の輝度分布から十字方向の4つの経線を特定し、特定された4つの経線においてリング像の内径又は外径からの距離が略等しくなる位置をリング像の中心位置として特定する。
【0078】
いくつかの実施形態では、リング像中心位置特定部240は、リング像特定部230により求められた眼底画像の輝度分布からリング像の中心位置を特定する。いくつかの実施形態では、リング像中心位置特定部240は、リング像特定部230により特定されたリング像の重心位置を特定する。
【0079】
いくつかの実施形態では、リング像中心位置特定部240は、リング像に対して楕円近似処理を施し、得られた近似楕円の長軸と短軸との交点である近似楕円の中心位置をリング像の中心位置として特定する。
【0080】
いくつかの実施形態では、リング像中心位置特定部240は、リング像特定部230により特定されたリング像に対してガウシアンフィルタ等のノイズ低減処理を施すことにより得られた画像から、リング像の中心位置を特定する。
【0081】
(極座標変換部250)
極座標変換部250は、リング像中心位置特定部240により特定されたリング像の中心位置を中心として、リング像特定部230により特定されたリング像に対して極座標変換処理を施し、リング像の極座標変換画像を生成する。
【0082】
図4及び
図5に、極座標変換部250の動作説明図を示す。
図4は、リング像特定部230により特定されたxy座標系のリング像の一例を表す。
図5は、極座標変換部250により生成されたリング像の極座標変換画像の一例を表す。
【0083】
リング像中心位置特定部240は、
図4に示すようなxy座標系のリング像IMG0からリング像の中心位置Oを特定する。極座標変換部250は、中心位置Oを原点とするxy座標系のリング像IMG0に対して、中心位置Oを中心とする極座標変換を行う。それにより、極座標変換部250は、
図5に示すような、中心位置Oからの動径(径)rと基準方向(例えば、x方向)を基準とした偏角(角度)θとにより規定される極座標系のリング像(極座標変換画像)IMG1を生成することができる。
【0084】
いくつかの実施形態では、極座標変換部250は、リング像特定部230により特定されたリング像IMG0に対してガウシアンフィルタ等のノイズ低減処理を施すことにより得られた画像に対して極座標変換を行う。
【0085】
(フィルタ処理部260)
フィルタ処理部260は、極座標変換部250により生成された極座標変換画像IMG1に対してノイズ低減処理を施す。ノイズ低減処理の例として、メディアンフィルタ処理、平均値フィルタ処理、ガウシアンフィルタ処理、LoG(Laplacian of Gaussian)フィルタなどがある。この実施形態では、フィルタ処理部260は、極座標変換部250により生成された極座標変換に対して1次元又は2次元のメディアンフィルタ処理を施すことが可能である。例えば、フィルタ処理部260は、リング像中心位置特定部240により特定されたリング像の中心位置を中心とする径(動径)方向に1画素を有し、当該中心位置を中心とする角度(偏角)方向に第1画素数を有する画素ブロック毎に、極座標変換画像に対して1次元のメディアンフィルタ処理を施す。
【0086】
図6及び
図7に、フィルタ処理部260の動作説明図を示す。
図6は、メディアンフィルタ処理が行われる画素ブロック(処理単位)の一例を模式的に表したものである。
図7は、
図6の画素ブロックに対して実行されるメディアンフィルタ処理の処理内容を模式的に表したものである。
図7では、1次元のメディアンフィルタ処理の処理内容を表すが、2次元のメディアンフィルタ処理も同様である。
【0087】
メディアンフィルタ処理は、注目画素を順次に変更しつつ、各注目画素の画素値を各注目画素の周囲の2以上の画素の画素値の中央値に置き換えていく処理である。1次元のメディアンフィルタ処理では、注目画素を中心に角度方向に隣接する2以上の画素を含む画素ブロック(1次元方向に隣接する画素群)が処理単位となる。2次元のメディアンフィルタ処理では、注目画素を中心に径方向と角度方向とに隣接する2以上の画素を含む画素ブロック(2次元方向に隣接する画素群)が処理単位となる。
【0088】
フィルタ処理部260は、極座標変換画像IMG1の角度方向(周方向)にのびる所定の取得開始ラインから、角度方向に隣接する画素群を含むデータブロックDTを順次に取得する。フィルタ処理部260は、取得されたデータブロックDTに対し、注目画素が角度方向に移動するように画素ブロックDSを順次に取得し、各画素ブロックDSに対してメディアンフィルタ処理を実行する。
【0089】
極座標変換画像IMG1がリング像を極座標変換して得られた画像であるため、極座標変換画像IMG1における角度360度における径方向の画素のそれぞれは、角度0度における径方向の画素に相当する。従って、画素ブロックにおいて注目画素に対して角度方向に隣接する画素がデータブロックDTに収まらない場合、画素ブロックは角度0度からプラス方向、又は角度360度からマイナス方向に隣接する画素を含むように取得される。
【0090】
例えば、
図6に示すように、データブロックDTが角度方向に配列された画素d1~d9を含むものとする。1次元のメディアンフィルタ処理のフィルタサイズが1画素(径方向、r方向)×5画素(角度方向、θ方向)である場合、フィルタ処理部260は、注目画素d3に対して角度方向に隣接する画素d1~d5に対してメディアンフィルタ処理を実行する。次に、フィルタ処理部260は、注目画素d4に対して角度方向に隣接する画素d2~d6に対してメディアンフィルタ処理を実行し、注目画素d5に対して角度方向に隣接する画素d3~d7に対してメディアンフィルタ処理を実行し、・・・、注目画素d7に対して角度方向に隣接する画素d5~d9に対してメディアンフィルタ処理を実行する。更に、フィルタ処理部260は、注目画素d8に対して角度方向に隣接する画素d6~d9、d1に対してメディアンフィルタ処理を実行し、注目画素d9に対して角度方向に隣接する画素d7~d9、d1~d2に対してメディアンフィルタ処理を実行する。
【0091】
ここで、メディアンフィルタ処理前の極座標変換画像IMG1における所定のデータブロックDT0を構成する画素d1~d9のそれぞれの画素値が
図7に示す画素値を有するものとする。なお、
図7では、画素値「0」が黒画素、画素値「1」が白画素であるものとする。
【0092】
まず、フィルタ処理部260は、データブロックDT0から注目画素d3の周囲の画素d1~d5を含む画素ブロックDS0を取得する。次に、フィルタ処理部260は、取得された画素ブロックDS0を構成する画素d1~d5に対して画素値の小さい順(又は、大きい順)に整列するソート処理を実行する(ソート処理ブロックDS0s)。フィルタ処理部260は、ソート処理ブロックDS0sにおける画素値の中央値である画素値「74」を特定し、特定された画素値「74」で画素ブロックDS0の注目画素d3の画素値を置き換える(データブロックDT01)。
【0093】
次に、フィルタ処理部260は、データブロックDT0から注目画素d4の周囲の画素d2~d6を含む画素ブロックを取得し、同様に注目画素d4の画素値を置き換える。この処理は、データブロックDT0を構成する全画素が注目画素になるまで繰り返される。
【0094】
なお、注目画素が画素d9である場合、フィルタ処理部260は、データブロックDT0から注目画素d9の周囲の画素d7~d8、d1~d2を含む画素ブロックDSnを取得する。次に、フィルタ処理部260は、取得された画素ブロックDSnを構成する画素d7~d9、d1~d2に対してソート処理を実行する(ソート処理ブロックDSns)。フィルタ処理部260は、ソート処理ブロックDSnsにおける画素値の中央値である画素値「74」を特定し、特定された画素値「74」で画素ブロックDSnの注目画素d9の画素値を置き換える。
【0095】
以上のように、フィルタ処理部260は、データブロックDT0を、メディアンフィルタ処理後のデータブロックDT1に変換する。フィルタ処理部260は、例えば径方向に隣接する次の取得ラインからデータブロックを取得し、例えば、極座標変換画像IMG1の全画素が注目画素になるまで上記の処理を繰り返す。
【0096】
なお、フィルタ処理部260が2次元のメディアンフィルタ処理を実行する場合、フィルタ処理部260は、極座標変換画像の径方向の最上端ライン又は最下端ラインのデータブロックでは、画素ブロックの径方向のサイズを変更することが可能である。いくつかの実施形態では、フィルタ処理部260は、極座標変換画像の径方向の最上端ライン又は最下端ラインのデータブロックのように、画素ブロックを構成する画素が存在しないデータブロックに対する2次元のメディアンフィルタ処理を実行しないように構成される。いくつかの実施形態では、極座標変換画像の径方向の最上端ライン又は最下端ラインのデータブロックのように、所定サイズの2次元の画素ブロックを構成できない場合、あらかじめ決められた画素値で補填して、極座標変換画像の全画素を注目画素として2次元のメディアンフィルタ処理が実行される。
【0097】
図8に、フィルタ処理部260により実行されたノイズ低減処理後の極座標変換画像の一例を示す。
図8は、
図6に示す極座標変換画像IMG1に対してメディンフィルタ処理が施されたノイズ低減画像IMG2の一例を表す。
【0098】
図8に示すノイズ低減画像IMG2は、極座標変換画像IMG1と比較してノイズが低減される。上記の眼屈折力算出部221は、ノイズ低減画像IMG2からリング像の近似楕円の長径、短径、及び角度を特定し、特定された長径、短径、及び角度から球面度数S、乱視度数C及び乱視軸角度Aを算出する。
【0099】
すなわち、実施形態によれば、ロータリープリズムを設けることなく、被検眼Eの屈折力値を高精度に算出することが可能になる。
【0100】
いくつかの実施形態では、フィルタ処理部260は、径方向の所定範囲内でデータブロックを取得し、取得された所定の径方向の範囲のデータブロック内でメディアンフィルタ処理を実行する。ここで、所定範囲は、眼科装置1000において測定可能な球面度数の範囲、乱視度数の範囲、及び乱視軸角度の範囲により一意に決定される。これにより、メディアンフィルタ処理の負荷を軽減することが可能になる。
【0101】
ところで、被検眼Eが乱視眼である場合、取得されたリング像に対して極座標変換を施すと、
図5に示すような極座標変換後のリング像の形状は角度方向にのびる直線状ではない。
【0102】
図9に、被検眼Eが乱視眼である場合のリング像の極座標変換画像の一例を示す。
【0103】
乱視眼である被検眼Eの眼底Efに対して光を投影し、その戻り光に基づいて形成されるリング像の形状は楕円形状となる。このようなリング像に対して極座標変換を施すと、極座標変換後のリング像は、角度方向の増加に伴い径方向に変化する波型の形状となる。
【0104】
この場合、
図9に示すような形状を有する極座標変換画像IMG3に対して1次元のメディアンフィルタ処理を施すと、径方向に縞が生ずる場合がある。
【0105】
図10に、実施形態の比較例において、極座標変換画像に対して1次元のメディアンフィルタ処理を施した場合のノイズ低減画像の一例を示す。
【0106】
図10に示すように、極座標変換画像IMG3に対して1次元のメディアンフィルタ処理を施すと、径(ライン)毎にノイズ低減効果が異なるため、角度の変化に対して径が変化する傾斜部では、縞が生ずる。この場合、フィルタ処理部260は、径方向についてもノイズ低減処理を施すように、極座標変換画像IMG3に対して2次元のメディアンフィルタ処理を実行することが望ましい。
【0107】
図11に、実施形態に係る2次元のメディアンフィルタ処理の動作説明図である。
【0108】
図11において、極座標変換画像IMG5は、
図9の極座標変換画像IMG3の一部を拡大した図である。このとき、フィルタ処理部260は、極座標変換画像IMG5の傾斜部を構成する画素が含まれるように設定された画素ブロック毎に、2次元のメディアンフィルタ処理を実行する。このとき、画素ブロックは、径方向に画素数fsyを有し、角度方向に画素数fsxを有する。これにより、リング像のリング幅にわたって一律のノイズ低減処理を施すことができ、極座標変換画像IMG6に示すように、傾斜部の縞の出現を抑えることが可能になる。その結果、リング像のノイズを低減することが可能になり、被検眼Eの屈折力値をより高精度に算出することができるようになる。
【0109】
ここで、画素数fsx、fsy(すなわち、画素ブロックのサイズ)のそれぞれは、眼科装置1000により測定可能な球面度数、乱視度数、及び、乱視軸角度の範囲に基づいて事前に決定することが可能である。これにより、測定可能な屈折力値の範囲でリング像の大きさ及び形状が変化しても、ロータリープリズムを設けることなくリング像のノイズを大幅に低減することができるようになる。
【0110】
具体的には、画素数fsx、fsyは、眼科装置1000による被検眼の屈折力値(乱視度数、乱視軸角度を含む)の測定範囲により一意に定まるリング像の径方向のリング幅、リング像の短径方向の外径、及びリング像の長径方向の外径に基づいて決定される。
【0111】
図12及び
図13に、被検眼Eが乱視眼である場合に取得されたリング像を模式的に示す。
図12は、xy座標系におけるリング像IMG10を模式的に表したものである。
図13は、
図12のリング像IMG10に対して極座標変換を施すことで得られた極座標変換画像IMG11と、リング像の傾斜部の拡大図とを模式的に表したものである。
【0112】
図12に示すように、リング像の径方向のリング幅に相当する画素数をdとし、リング像の長径方向の外径に相当する画素数をLとし、リング像の短径方向の外径に相当する画素数をMとする。このとき、
図13に示すように、リング像の傾斜部における角度方向のリング幅に相当する画素数fは、arccos(2d×(L-M))で表すことができる。
【0113】
すなわち、極座標変換により径方向に縞が生じない場合、フィルタ処理部260は、径方向に1画素を有し、角度方向に第1画素数を有する画素ブロック毎に、極座標変換画像に対して1次元のメディアンフィルタ処理を施すことができる。ここで、第1画素数は、リング像の径方向のリング幅、リング像の長径方向の外径、及びリング像の短径方向の外径に基づいて決定される。第1画素数を
図12の画素数fより大きくすることで、傾斜部におけるリング像の境界付近のノイズを効果的に低減することが可能になる。
【0114】
一方、極座標変換により径方向に縞が生ずる場合、フィルタ処理部260は、径方向にリング幅に相当する画素数dより大きい画素数を有し、角度方向に第1画素数を有する画素ブロック毎に、極座標変換画像に対して2次元のメディアンフィルタ処理を施すことができる。ここで、第1画素数は、リング像の径方向のリング幅、リング像の長径方向の外径、及びリング像の短径方向の外径に基づいて決定される。1次元のメディアンフィルタ処理と同様に、第1画素数を
図12の画素数fより大きくすることができる。
【0115】
図13に示すように、ノイズ低減処理が施された極座標変換画像(ノイズ低減画像)IMG11から、眼屈折力算出部221は、リング像の近似楕円の長径方向の外径に相当する画素数Lと、短径方向の外径に相当する画素数Mと、長径の角度θを特定することが可能である。例えば、極座標変換画像IMG11におけるリング像について径方向に最も長い径(外径)の2倍を長径方向の外径に相当する画素数Lとして特定し、径方向に最も短い径(外径)の2倍を短径方向の外径に相当する画素数Mとして特定し、長径方向の外径として特定された角度方向の角度を角度θとして特定する。
【0116】
リング像の近似楕円の長径方向の外径に相当する画素数L、短径方向の外径に相当する画素数M、及び角度θが特定できれば、眼屈折力算出部221は、上記のように、特定された長径、短径、及び角度から球面度数S、乱視度数C及び乱視軸角度Aを算出することができる。
【0117】
(表示部270、操作部280)
表示部270は、ユーザインターフェイス部として、制御部210による制御を受けて情報を表示する。表示部270は、
図1に示す表示部10を含む。
【0118】
操作部280は、ユーザインターフェイス部として、眼科装置を操作するために使用される。操作部280は、眼科装置に設けられた各種のハードウェアキー(ジョイスティック、ボタン、スイッチなど)を含む。また、操作部280は、タッチパネル式の表示画面10aに表示される各種のソフトウェアキー(ボタン、アイコン、メニューなど)を含んでもよい。
【0119】
表示部270及び操作部280の少なくとも一部が一体的に構成されていてもよい。その典型例として、タッチパネル式の表示画面10aがある。
【0120】
(通信部290)
通信部290は、図示しない外部装置と通信するための機能を有する。通信部290は、外部装置との接続形態に応じた通信インターフェイスを備える。外部装置の例として、屈折力測定が可能な屈折力測定装置、又は、レンズの光学特性を測定するための眼鏡レンズ測定装置がある。屈折力測定装置は、眼科装置1000と同様に、被検眼の眼底に光を投影し、被検眼からの戻り光を受光することによりリング像を取得する。眼科装置1000は、通信部290を介して、外部の屈折力測定装置により取得されたリング像を取り込み、取り込まれたリング像に対して上記のように極座標変換処理とノイズ低減処理とを施してノイズ低減画像を生成し、生成されたノイズ低減画像から被検眼の屈折力値を算出することができる。眼鏡レンズ測定装置は、被検者が装用する眼鏡レンズの度数などを測定し、この測定データを眼科装置1000に入力する。また、外部装置は、任意の眼科装置、記録媒体から情報を読み取る装置(リーダ)や、記録媒体に情報を書き込む装置(ライタ)などでもよい。更に、外部装置は、病院情報システム(HIS)サーバ、DICOM(Digital Imaging and COmmunication in Medicine)サーバ、医師端末、モバイル端末、個人端末、クラウドサーバなどでもよい。通信部290は、例えば処理部9に設けられていてもよい。
【0121】
レフ測定投射系6、及びレフ測定受光系7、又は、通信部290は、実施形態に係る「取得部」の一例である。眼屈折力算出部221は、実施形態に係る「算出部」の一例である。
【0122】
<動作例>
実施形態に係る眼科装置1000の動作について説明する。
【0123】
図14及び
図15に、眼科装置1000の動作の一例を示す。
図14は、眼科装置1000の動作例のフロー図を表す。
図15は、
図14のステップS3の動作例のフロー図を表す。記憶部212には、
図14及び
図15に示す処理を実現するためのコンピュータプログラムが記憶されている。主制御部211は、このコンピュータプログラムに従って動作することにより、
図14及び
図15に示す処理を実行する。
【0124】
(S1:アライメント)
図示しない顔受け部に被検者の顔が固定された状態で、検者が操作部280に対して所定の操作を行うことで、眼科装置1000は、被検眼Eに対して固視標の呈示を開始する。具体的には、主制御部211は、固視投影系4を制御することにより、あらかじめ決められた固視標を表す固視標パターンを液晶パネル41に表示させる。
【0125】
また、検者が操作部280に対して所定の操作を行うことで、眼科装置1000は、アライメントを実行する。
【0126】
具体的には、主制御部211は、XYアライメント光源21、及びZアライメント光源11を点灯させる。主制御部211は、撮像素子59を制御してXYアライメント光源21から出力された光により形成された輝点像を特定し、アライメント基準に対する輝点像の変位に基づいて移動機構200を制御してXYアライメントを実行する。また、主制御部211は、ラインセンサー13を制御して角膜Crからの反射光の投射位置を特定し、特定された投射位置に対してZアライメントを実行する。これにより、
図1に示す光学系が被検眼Eの検査位置に移動される。検査位置とは、被検眼Eの検査を十分な精度内で行うことが可能な位置である。
【0127】
また、主制御部211は、レフ測定光源61と、合焦レンズ74と、固視ユニット40(液晶パネル41)をそれぞれの光軸に沿って原点の位置(例えば、0Dに相当する位置)に移動させる。
【0128】
主制御部211からの指示、又は操作部280に対するユーザの操作若しくは指示により、眼科装置1000の動作はステップS2に移行する。
【0129】
(S2:角膜形状測定)
続いて、主制御部211は、角膜形状測定を実行させる。
【0130】
具体的には、主制御部211は、ケラトリング光源32からの光が前眼部に投影された前眼部画像を角膜形状情報算出部222に解析させる。
【0131】
角膜形状情報算出部222は、ケラトリング像に対して所定の演算処理を施すことにより、角膜曲率半径を算出し、算出された角膜曲率半径から角膜屈折力、角膜乱視度及び角膜乱視軸角度を算出する。制御部210では、算出された角膜屈折力などが記憶部212に記憶される。
【0132】
主制御部211からの指示、又は操作部280に対するユーザの操作若しくは指示により、眼科装置1000の動作はステップS3に移行する。
【0133】
(S3:屈折力測定)
続いて、主制御部211は、屈折力測定を実行する。ステップS3の詳細は、後述する。
【0134】
(S4:自覚検査)
続いて、主制御部211は、例えば、操作部280に対するユーザの指示に基づき、液晶パネル41を制御することにより所望の視標を表示させる。また、主制御部211は、屈折力測定の結果に応じた位置に固視ユニット40を移動する。主制御部211は、操作部280に対するユーザの指示に応じた位置に固視ユニット40を移動させてもよい。
【0135】
被検者は、眼底Efに投射された視標に対する応答を行う。例えば、視力測定用の視標の場合には、被検者の応答により被検眼の視力値が決定される。視標の選択とそれに対する被検者の応答が、検者又は主制御部211の判断により繰り返し行われる。検者又は主制御部211は、被検者からの応答に基づいて視力値或いは処方値(S、C、A)を決定する。
【0136】
以上で、眼科装置1000の動作は終了である(エンド)。
【0137】
図14のステップS3は、
図15に示すフローに従って実行される。
【0138】
(S11:リングパターンを投影)
ステップS3における屈折力測定では、主制御部211は、前述のように屈折力測定のためのリングパターン(リング状の測定パターン光束)を被検眼E(眼底Ef)に投影させる。被検眼Eからのリングパターンの戻り光に基づくリング像が撮像素子59の撮像面に結像される。
【0139】
まず、仮測定として、主制御部211は、撮像素子59により検出された眼底Efからの戻り光に基づくリング像を取得できたか否かを判定する。例えば、主制御部211は、撮像素子59により検出された戻り光に基づく像のエッジの位置(画素)を検出し、像の幅(外径と内径との差)が所定値以上であるか否かを判定する。或いは、主制御部211は、所定の高さ(リング径)以上の点(像)に基づいてリングを形成できるか否かを判定することにより、リング像を取得できたか否かを判定してもよい。
【0140】
仮測定によりリング像を取得できたと判定されたとき、眼屈折力算出部221は、被検眼Eに投射された測定パターン光束の戻り光に基づくリング像を公知の手法(又は、上記の手法)で解析し、仮の球面度数S及び仮の乱視度数Cを求める。主制御部211は、求められた仮の球面度数S及び乱視度数Cに基づき、レフ測定光源61、合焦レンズ74、及び固視ユニット40(液晶パネル41)を等価球面度数(S+C/2)の位置(仮の遠点に相当する位置)へ移動させる。
【0141】
主制御部211は、特定された等価球面度数(S+C/2)の位置から固視ユニット40(液晶パネル41)を更に雲霧位置に移動させる。
【0142】
なお、リング像を取得できないと判定されたとき、主制御部211は、強度屈折異常眼である可能性を考慮して、レフ測定光源61及び合焦レンズ74をあらかじめ設定したステップでマイナス度数側(例えば-10D)、プラス度数側(例えば+10D)へ移動させる。主制御部211は、レフ測定受光系7を制御することにより各位置でリング像を検出させる。それでもリング像を取得できないと判定されたとき、主制御部211は、所定の測定エラー処理を実行する。制御部210では、レフ測定結果が得られなかったことを示す情報が記憶部212に記憶される。
【0143】
(S12:リング像を取得)
続いて、本測定として、主制御部211は、レフ測定投射系6及びレフ測定受光系7を制御することによりリング像を再び取得させる。
【0144】
主制御部211は、リング像特定部230を制御して、上記のようにリング像を特定させる(
図4、
図12参照)。
【0145】
(S13:中心位置を特定)
続いて、主制御部211は、リング像中心位置特定部240を制御して、上記のように、ステップS12において特定されたリング像の中心位置を特定させる。
【0146】
(S14:極座標変換)
次に、主制御部211は、極座標変換部250を制御して、ステップS12において取得されたxy座標系のリング像に対して、ステップS13において特定された中心位置を中心に極座標変換処理を施す。
【0147】
極座標変換部250は、
図4又は
図12に示すようなxy座標系のリング像から
図5又は
図9に示すような極座標変換画像を生成する。生成された極座標変換画像は、記憶部212に保存される。
【0148】
いくつかの実施形態では、ステップS13とステップS14との間で、xy座標系のリング像に対してガウシアンフィルタ処理等の公知のノイズ低減処理が施される。
【0149】
(S15:画素ブロックを取得)
続いて、主制御部211は、フィルタ処理部260を制御し、ステップS14において取得された極座標変換画像から少なくとも角度方向に隣接する画素群を含むデータブロックを順次に取得させ、データブロック内で画素ブロックを順次に取得させる。
【0150】
(S16:メディアンフィルタ処理)
続いて、主制御部211は、フィルタ処理部260を制御し、ステップS15において取得された画素ブロックに対して、上記のようにメディアンフィルタ処理を施す。
【0151】
(S17:次の画素ブロック?)
次に、主制御部211は、次の画素ブロックをデータブロックから取得するか否かを判定する。例えば、主制御部211は、極座標変換画像内の全画素が注目画素として画素ブロックが抽出されたか否かを判定することで、次の画素ブロックをデータブロックから取得するか否かを判定する。或いは、主制御部211は、極座標変換画像内のあらかじめ決められたフィルタ処理範囲内の全画素が注目画素として画素ブロックが抽出されたか否かを判定することで、次の画素ブロックをデータブロックから取得するか否かを判定する。
【0152】
次の画素ブロックを取得すると判定されたとき(S17:Y)、ステップS3の処理は、ステップS15に移行する。次の画素ブロックを取得しないと判定されたとき(S17:N)、ステップS3の処理は、ステップS18に移行する。
【0153】
(S18:屈折力値を算出)
次の画素ブロックを取得しないと判定されたとき(S17:N)、主制御部211は、眼屈折力算出部221を制御してステップS15~ステップS17を繰り返すことで取得された、極座標変換画像のノイズ低減画像に基づいて、被検眼Eの屈折力値を算出させる。
【0154】
眼屈折力算出部221は、上記のように、ノイズ低減画像におけるリング像について径方向に最も長い径の2倍を長径方向の外径に相当する画素数Lとして特定し、径方向に最も短い径の2倍を短径方向の外径に相当する画素数Mとして特定し、長径方向の外径として特定された角度方向の角度を角度θとして特定する。眼屈折力算出部221は、特定された長径方向の外径に相当する画素数L、短径方向の外径に相当する画素数M、及び角度θから球面度数S、乱視度数C及び乱視軸角度Aを算出する。
【0155】
以上で、
図14のステップS3の処理は終了である(エンド)。
【0156】
以上説明したように、実施形態によれば、取得されたリング像を極座標変換し、得られた極座標変換画像に対してノイズ低減処理としてのメディアンフィルタ処理を施し、得られたノイズ低減画像から被検眼Eの屈折力値が算出される。それにより、ロータリープリズムを設けることなく、被検眼Eの屈折力値を高精度に算出し、眼科装置の低コスト化に寄与することができるようになる。
【0157】
(変形例)
上記の実施形態では、メディアンフィルタ処理が適用される画素ブロックのサイズが事前に決められている場合について説明した。しかしながら、実施形態に係る構成は、これに限定されるものではない。例えば、被検眼Eのリング像毎に、当該リング像のノイズ低減画像を解析して、リング像のリング幅、リング像の外径方向の外径、及び、リング像の内径方向の外径を特定して、画素ブロックのサイズが決定されてよい。
【0158】
実施形態の変形例に係る眼科装置の構成が、実施形態に係る眼科装置1000の構成と異なる点は、データ処理部223に代えてデータ処理部223aが設けられた点と、制御部210(主制御部211)がデータ処理部223に代えてデータ処理部223aを制御するように構成された点である。
【0159】
以下、実施形態の変形例の構成及び制御について、主に、実施形態の構成及び制御の相違点を中心に説明する。
【0160】
図16に、実施形態の変形例に係るデータ処理部223aの構成例の機能ブロック図の一例を示す。
図16において、
図3と同様の部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。
【0161】
データ処理部223aの構成がデータ処理部223の構成と異なる点は、データ処理部223の構成に対して、リング幅特定部251、外径特定部252、及び、フィルタサイズ算出部253が追加された点である。
【0162】
(リング幅特定部251)
リング幅特定部251は、リング像特定部230により特定されたリング像の径方向の幅に相当する画素数dを特定する。
【0163】
例えば、リング幅特定部251は、リング像の外径側の境界位置と内径側の境界位置とを特定し、特定された外径側の境界位置と内径側の境界位置との間の距離に相当する画素数をリング像の径方向の幅に相当する画素数dとして特定する。いくつかの実施形態では、リング幅特定部251は、リング像の2以上の幅(例えば、長軸の通過位置における幅と、短軸の通過位置における幅)に相当する画素数を特定し、特定された2以上の画素数の平均値を画素数dとして特定する。
【0164】
リング幅特定部251の処理対象であるリング像は、xy座標系のリング像であってもよいし、極座標変換部250により変換された極座標変換画像におけるリング像であってよい。
【0165】
(外径特定部252)
外径特定部252は、リング像特定部230により特定されたリング像の長径方向の外径に相当する画素数と、短径方向の外径に相当する画素数とを特定する。
【0166】
例えば、外径特定部252は、
図13に示すように、極座標変換画像におけるリング像について径方向に最も長い径の2倍を長径方向の外径に相当する画素数Lとして特定し、径方向に最も短い径の2倍を短径方向の外径に相当する画素数Mとして特定する。
【0167】
外径特定部252の処理対象であるリング像は、極座標変換前のxy座標系のリング像であってもよい。
【0168】
(フィルタサイズ算出部253)
フィルタサイズ算出部253は、リング幅特定部251により特定されたリング像のリング幅に相当する画素数d、外径特定部252により特定されたリング像の長径方向の外径に相当する画素数Lと、短径方向の外径に相当する画素数Mとに基づいて、フィルタサイズとして画素ブロックのサイズを算出する。画素ブロックのサイズは、上記のように、極座標変換画像における径方向の画素数と角度方向の画素数とにより規定される。
【0169】
フィルタ処理部260が1次元のメディアンフィルタ処理を実行する場合、フィルタサイズ算出部253は、リング像の中心位置を中心とする径方向に1画素を有し、この中心位置を中心とする角度方向に第1画素数を有するようにフィルタサイズを算出する。ここで、第1画素数は、上記のように、arccos(2d×(L-M))より大きい画素数である。例えば、第1画素数は、arccos(2d×(L-M))を超える最小の整数、又は、arccos(2d×(L-M))に所定のマージン値を加算した整数である。
【0170】
フィルタ処理部260が2次元のメディアンフィルタ処理を実行する場合、フィルタサイズ算出部253は、リング像の中心位置を中心とする径方向にリング幅に相当する画素数dを有し、この中心位置を中心とする角度方向に第1画素数を有するようにフィルタサイズを算出する。ここで、第1画素数は、上記のように、arccos(2d×(L-M))より大きい画素数である。例えば、第1画素数は、arccos(2d×(L-M))を超える最小の整数、又は、arccos(2d×(L-M))に所定のマージン値を加算した整数である。いくつかの実施形態では、フィルタサイズ算出部253は、リング像の中心位置を中心とする径方向に既定の画素数を有し、この中心位置を中心とする角度方向に第1画素数を有するようにフィルタサイズを算出する。いくつかの実施形態では、フィルタサイズ算出部253は、リング像の中心位置を中心とする径方向にリング幅に相当する画素数dを有し、この中心位置を中心とする角度方向に既定の画素数を有するようにフィルタサイズを算出する。
【0171】
フィルタ処理部260は、フィルタサイズ算出部253により算出されたフィルタサイズ(画素ブロックのサイズ)を用いて、極座標変換画像に対してメディアンフィルタ処理を施してノイズ低減画像を生成する。
【0172】
続いて、本変形例に係る眼科装置の動作について説明する。
【0173】
本変形例に係る眼科装置の動作は、
図14に示す実施形態に係る眼科装置1000の動作例とほぼ同様である。しかしながら、本変形例では、
図14のステップS3における処理が実施形態に係る眼科装置1000の処理と異なる。
【0174】
図17に、本変形例に係る眼科装置における
図14のステップS3の動作例のフロー図を表す。記憶部212には、
図14及び
図17に示す処理を実現するためのコンピュータプログラムが記憶されている。主制御部211は、このコンピュータプログラムに従って動作することにより、
図14及び
図17に示す処理を実行する。
【0175】
本変形例では、
図14のステップS3は、
図17に示すフローに従って実行される。
【0176】
(S21:リングパターンを投影)
ステップS3における屈折力測定では、主制御部211は、ステップS11と同様に、前述のように屈折力測定のためのリングパターン(リング状の測定パターン光束)を被検眼E(眼底Ef)に投影させる。被検眼Eからのリングパターンの戻り光に基づくリング像が撮像素子59の撮像面に結像される。
【0177】
(S22:リング像を取得)
続いて、本測定として、主制御部211は、ステップS12と同様に、レフ測定投射系6及びレフ測定受光系7を制御することによりリング像を再び取得させる。
【0178】
(S23:中心位置を特定)
続いて、主制御部211は、ステップS13と同様に、リング像中心位置特定部240を制御して、上記のように、ステップS22において特定されたリング像の中心位置を特定させる。
【0179】
(S24:極座標変換)
次に、主制御部211は、ステップS14と同様に、極座標変換部250を制御して、ステップS22において取得されたxy座標系のリング像に対して、ステップS23において特定された中心位置を中心に極座標変換処理を施す。
【0180】
極座標変換部250は、
図4又は
図12に示すようなxy座標系のリング像から
図5又は
図9に示すような極座標変換画像を生成する。生成された極座標変換画像は、記憶部212に保存される。
【0181】
いくつかの実施形態では、ステップS23とステップS24との間で、xy座標系のリング像に対してガウシアンフィルタ処理等の公知のノイズ低減処理が施される。
【0182】
(S25:リング幅を特定)
続いて、主制御部211は、リング幅特定部251を制御して、ステップS22において取得されたリング像の径方向の幅に相当する画素数を特定させる。
【0183】
リング幅特定部251は、上記のように、リング像の径方向の幅に相当する画素数を特定する。
【0184】
(S26:外径を特定)
続いて、主制御部211は、外径特定部252を制御して、ステップS22において取得されたリング像の長径方向の外径に相当する画素数と短径方向の外径に相当する画素数とを特定させる。
【0185】
外径特定部252は、上記のように、リング像の長径方向の外径に相当する画素数と短径方向の外径に相当する画素数とを特定する。
【0186】
(S27:フィルタサイズを算出)
続いて、主制御部211は、フィルタサイズ算出部253を制御して、ステップS25において特定されたリング幅に相当する画素数、ステップS26において特定されたリング像の長径方向の外径に相当する画素数、及び短径方向の外径に相当する画素数に基づいて、フィルタサイズ(画素ブロックのサイズ)を算出させる。
【0187】
フィルタサイズ算出部253は、上記のように、フィルタサイズ(画素ブロックのサイズ)を算出する。
【0188】
(S28:画素ブロックを取得)
続いて、主制御部211は、ステップS15と同様に、フィルタ処理部260を制御し、ステップS24において取得された極座標変換画像から少なくとも角度方向に隣接する画素群を含むデータブロックを順次に取得させ、データブロック内で画素ブロックを順次に取得させる。
【0189】
(S29:メディアンフィルタ処理)
続いて、主制御部211は、ステップS16と同様に、フィルタ処理部260を制御し、ステップS28において取得された画素ブロックに対して、上記のようにメディアンフィルタ処理を施す。
【0190】
(S30:次の画素ブロック?)
次に、主制御部211は、ステップS17と同様に、次の画素ブロックをデータブロックから取得するか否かを判定する。
【0191】
次の画素ブロックを取得すると判定されたとき(S30:Y)、ステップS3の処理は、ステップS28に移行する。次の画素ブロックを取得しないと判定されたとき(S30:N)、ステップS3の処理は、ステップS31に移行する。
【0192】
(S31:屈折力値を算出)
次の画素ブロックを取得しないと判定されたとき(S30:N)、主制御部211は、ステップS18と同様に、眼屈折力算出部221を制御してステップS28~ステップS30を繰り返すことで取得された、極座標変換画像のノイズ低減画像に基づいて、被検眼Eの屈折力値を算出させる。
【0193】
眼屈折力算出部221は、上記のように、ノイズ低減画像におけるリング像について径方向に最も長い径の2倍を長径方向の外径に相当する画素数Lとして特定し、径方向に最も短い径の2倍を短径方向の外径に相当する画素数Mとして特定し、長径方向の外径として特定された角度方向の角度を角度θとして特定する。眼屈折力算出部221は、特定された長径方向の外径に相当する画素数L、短径方向の外径に相当する画素数M、及び角度θから球面度数S、乱視度数C及び乱視軸角度Aを算出する。
【0194】
以上で、本変形例における
図14のステップS3の処理は終了である(エンド)。
【0195】
以上説明したように、本変形例によれば、取得されたリング像を極座標変換し、被検眼Eに応じて極座標変換画像に対してノイズ低減処理としてのメディアンフィルタ処理を施し、得られたノイズ低減画像から被検眼Eの屈折力値が算出される。それにより、ロータリープリズムを設けることなく、実施形態よりも被検眼Eの屈折力値を高精度に算出し、眼科装置の低コスト化に寄与することができるようになる。
【0196】
[作用]
実施形態に係る眼科装置、眼科装置の制御方法、及びプログラムについて説明する。
【0197】
いくつかの実施形態の第1態様は、取得部(レフ測定投射系6、及びレフ測定受光系7、又は、通信部290)と、リング像中心位置特定部(240)と、極座標変換部(250)と、フィルタ処理部(260)と、算出部(眼屈折力算出部221)と、を含む眼科装置(1000)である。取得部は、被検眼(E)にリング状の光(リングパターン、リング状の測定パターン光束)を投影し、被検眼からの戻り光を受光することによりリング像を取得する。リング像中心位置特定部は、リング像の中心位置(O)を特定する。極座標変換部は、中心位置を中心としてリング像を極座標変換する。フィルタ処理部は、極座標変換部により極座標変換されたリング像の極座標変換画像(IMG1、IMG3)に対してノイズ低減処理を施す。算出部は、フィルタ処理部によりノイズ低減処理が施されたノイズ低減画像(IMG2、IMG6)に基づいて被検眼の屈折力値を算出する。
【0198】
このような態様によれば、取得されたリング像を極座標変換し、得られた極座標変換画像に対してノイズ低減処理を施し、得られたノイズ低減画像から被検眼の屈折力値が算出される。それにより、ロータリープリズムを設けることなく、被検眼の屈折力値を高精度に算出し、眼科装置の低コスト化に寄与することができるようになる。
【0199】
いくつかの実施形態の第2態様では、第1態様において、ノイズ低減処理は、メディアンフィルタ処理を含む。
【0200】
このような態様によれば、メディアンフィルタ処理を用いた簡素な処理で、ロータリープリズムを設けることなく、被検眼の屈折力値を高精度に算出し、眼科装置の低コスト化に寄与することができるようになる。
【0201】
いくつかの実施形態の第3態様では、第1態様又は第2態様において、フィルタ処理部は、中心位置を中心とする径方向に1画素を有し、中心位置を中心とする角度方向に第1画素数を有する画素ブロック毎に、極座標変換画像に対して1次元のメディアンフィルタ処理を施す。
【0202】
このような態様によれば、1次元のメディアンフィルタ処理を用いた簡素な処理で、ロータリープリズムを設けることなく、被検眼の屈折力値を高精度に算出し、眼科装置の低コスト化に寄与することができるようになる。
【0203】
いくつかの実施形態の第4態様では、第3態様において、第1画素数は、リング像の径方向のリング幅、リング像の長径方向の外径、及びリング像の短径方向の外径に基づいて決定される。
【0204】
このような態様によれば、被検眼が乱視眼であった場合でも、1次元のメディアンフィルタ処理を用いた簡素な処理で、被検眼の屈折力値を高精度に算出し、眼科装置の低コスト化に寄与することができるようになる。
【0205】
いくつかの実施形態の第5態様では、第1態様又は第2態様において、フィルタ処理部は、中心位置を中心とする径方向にリング幅に相当する画素数より大きい画素数を有し、中心位置を中心とする角度方向に第1画素数を有する画素ブロック毎に、極座標変換画像に対して2次元のメディアンフィルタ処理を施す。
【0206】
このような態様によれば、2次元のメディアンフィルタ処理を用いた簡素な処理で、ロータリープリズムを設けることなく、被検眼の屈折力値を高精度に算出し、眼科装置の低コスト化に寄与することができるようになる。
【0207】
いくつかの実施形態の第6態様では、第5態様において、第1画素数は、リング像の径方向のリング幅、リング像の長径方向の外径、及びリング像の短径方向の外径に基づいて決定される。
【0208】
このような態様によれば、被検眼が乱視眼であった場合でも、2次元のメディアンフィルタ処理を用いた簡素な処理で、被検眼の屈折力値を高精度に算出し、眼科装置の低コスト化に寄与することができるようになる。
【0209】
いくつかの実施形態の第7態様では、第6態様において、リング幅に相当する画素数をdとし、長径方向の外径に相当する画素数をLとし、短径方向の外径に相当する画素数をMとしたとき、第1画素数は、arccos(2d×(L-M))より大きい画素数である。
【0210】
このような態様によれば、極座標変換画像においてリング像が傾斜部を有する場合であっても、径方向に縞が生ずることなくリング像のノイズを効果的に低減し、より高精度に被検眼の屈折力値を算出することが可能になる。
【0211】
いくつかの実施形態の第8態様は、第1態様又は第2態様において、リング像又は極座標変換画像に基づいて、リング像のリング幅を特定するリング幅特定部(251)を含む。フィルタ処理部は、リング幅特定部により特定されたリング幅を用いて極座標変換画像に対してノイズ低減処理を施す。
【0212】
このような態様によれば、乱視眼である被検眼に応じて極座標変換画像に対してノイズ低減処理を施し、得られたノイズ低減画像から被検眼の屈折力値が算出される。それにより、ロータリープリズムを設けることなく、被検眼の屈折力値をより高精度に算出することが可能になる。
【0213】
いくつかの実施形態の第9態様は、第8態様において、リング像又は極座標変換画像に基づいてリング像の長径方向の外径、及びリング像の短径方向の外径を特定する外径特定部(252)を含む。フィルタ処理部は、リング幅特定部により特定されたリング幅と、外径特定部により特定された長径方向の外径、及び短径方向の外径とを用いて極座標変換画像に対してノイズ低減処理を施す。
【0214】
このような態様によれば、乱視眼である被検眼に応じて極座標変換画像に対してノイズ低減処理を施し、得られたノイズ低減画像から被検眼の屈折力値が算出される。それにより、ロータリープリズムを設けることなく、被検眼の屈折力値をより高精度に算出することが可能になる。
【0215】
いくつかの実施形態の第10態様は、被検眼(E)にリング状の光(リングパターン、リング状の測定パターン光束)を投影し、被検眼からの戻り光を受光することによりリング像を取得する眼科装置(1000)の制御方法である。眼科装置の制御方法は、リング像中心位置特定ステップと、極座標変換ステップと、フィルタ処理ステップと、算出ステップとを含む。リング像中心位置ステップは、リング像の中心位置を特定する。極座標変換ステップは、中心位置を中心としてリング像を極座標変換する。フィルタ処理ステップは、極座標変換ステップにおいて極座標変換されたリング像の極座標変換画像に対してノイズ低減処理を施す。算出ステップは、フィルタ処理ステップにおいてノイズ低減処理が施されたノイズ低減画像に基づいて被検眼の屈折力を算出する。
【0216】
このような方法によれば、取得されたリング像を極座標変換し、得られた極座標変換画像に対してノイズ低減処理を施し、得られたノイズ低減画像から被検眼の屈折力値が算出される。それにより、ロータリープリズムを設けることなく、被検眼の屈折力値を高精度に算出し、眼科装置の低コスト化に寄与することができるようになる。
【0217】
いくつかの実施形態の第11態様では、第10態様において、ノイズ低減処理は、メディアンフィルタ処理を含む。
【0218】
このような方法によれば、メディアンフィルタ処理を用いた簡素な処理で、ロータリープリズムを設けることなく、被検眼の屈折力値を高精度に算出し、眼科装置の低コスト化に寄与することができるようになる。
【0219】
いくつかの実施形態の第12態様では、第10態様又は第11態様において、フィルタ処理ステップは、中心位置を中心とする径方向に1画素を有し、中心位置を中心とする角度方向に第1画素数を有する画素ブロック毎に、極座標変換画像に対して1次元のメディアンフィルタ処理を施す。
【0220】
このような方法によれば、1次元のメディアンフィルタ処理を用いた簡素な処理で、ロータリープリズムを設けることなく、被検眼の屈折力値を高精度に算出し、眼科装置の低コスト化に寄与することができるようになる。
【0221】
いくつかの実施形態の第13態様では、第12態様において、第1画素数は、リング像の径方向のリング幅、リング像の長径方向の外径、リング像の短径方向の外径に基づいて決定される。
【0222】
このような方法によれば、被検眼が乱視眼であった場合でも、1次元のメディアンフィルタ処理を用いた簡素な処理で、被検眼の屈折力値を高精度に算出し、眼科装置の低コスト化に寄与することができるようになる。
【0223】
いくつかの実施形態の第14態様では、第10態様又は第11態様において、フィルタ処理ステップは、中心位置を中心とする径方向にリング幅に相当する画素数より大きい画素数を有し、中心位置を中心とする角度方向に第1画素数を有する画素ブロック毎に、極座標変換画像に対して2次元のメディアンフィルタ処理を施す。
【0224】
このような方法によれば、2次元のメディアンフィルタ処理を用いた簡素な処理で、ロータリープリズムを設けることなく、被検眼の屈折力値を高精度に算出し、眼科装置の低コスト化に寄与することができるようになる。
【0225】
いくつかの実施形態の第15態様では、第14態様において、第1画素数は、リング像の径方向のリング幅、リング像の長径方向の外径、及びリング像の短径方向の外径に基づいて決定される。
【0226】
このような方法によれば、被検眼が乱視眼であった場合でも、2次元のメディアンフィルタ処理を用いた簡素な処理で、被検眼の屈折力値を高精度に算出し、眼科装置の低コスト化に寄与することができるようになる。
【0227】
いくつかの実施形態の第16態様では、第15態様において、リング幅に相当する画素数をdとし、長径方向の外径に相当する画素数をLとし、短径方向の外径に相当する画素数をMとしたとき、第1画素数は、arccos(2d×(L-M))より大きい画素数である。
【0228】
このような方法によれば、極座標変換画像においてリング像が傾斜部を有する場合であっても、径方向に縞が生ずることなくリング像のノイズを効果的に低減し、より高精度に被検眼の屈折力値を算出することが可能になる。
【0229】
いくつかの実施形態の第17態様は、第10態様又は第11態様において、リング像又は極座標変換画像に基づいて、リング像のリング幅を特定するリング幅特定ステップを含む。フィルタ処理ステップは、リング幅特定ステップにおいて特定されたリング幅を用いて極座標変換画像に対してノイズ低減処理を施す。
【0230】
このような方法によれば、乱視眼である被検眼に応じて極座標変換画像に対してノイズ低減処理を施し、得られたノイズ低減画像から被検眼の屈折力値が算出される。それにより、ロータリープリズムを設けることなく、被検眼の屈折力値をより高精度に算出することが可能になる。
【0231】
いくつかの実施形態の第18態様は、第17態様において、リング像又は極座標変換画像に基づいてリング像の長径方向の外径、及びリング像の短径方向の外径を特定する外径特定ステップを含む。フィルタ処理ステップは、リング幅特定ステップにおいて特定されたリング幅と外径特定ステップにおいて特定された長径方向の外径、及び短径方向の外径とを用いて極座標変換画像に対してノイズ低減処理を施す。
【0232】
このような方法によれば、乱視眼である被検眼に応じて極座標変換画像に対してノイズ低減処理を施し、得られたノイズ低減画像から被検眼の屈折力値が算出される。それにより、ロータリープリズムを設けることなく、被検眼の屈折力値をより高精度に算出することが可能になる。
【0233】
いくつかの実施形態の第19態様は、コンピュータに、第10態様~第18態様のいずれかの眼科装置の制御方法の各ステップを実行させるプログラムである。
【0234】
このようなプログラムによれば、取得されたリング像を極座標変換し、得られた極座標変換画像に対してノイズ低減処理を施し、得られたノイズ低減画像から被検眼の屈折力値が算出される。それにより、ロータリープリズムを設けることなく、被検眼の屈折力値を高精度に算出し、眼科装置の低コスト化に寄与することができるようになる。
【0235】
<その他>
以上に示された実施形態は、この発明を実施するための一例に過ぎない。この発明を実施しようとする者は、この発明の要旨の範囲内において任意の変形、省略、追加等を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0236】
6 レフ測定投射系
7 レフ測定受光系
9 処理部
210 制御部
211 主制御部
220 演算処理部
221 眼屈折力算出部
223、223a データ処理部
230 リング像特定部
240 リング像中心位置特定部
250 極座標変換部
251 リング幅特定部
252 外径特定部
253 フィルタサイズ算出部
260 フィルタ処理部
1000 眼科装置
E 被検眼