(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024010493
(43)【公開日】2024-01-24
(54)【発明の名称】磁気処理装置
(51)【国際特許分類】
C02F 1/48 20230101AFI20240117BHJP
A61N 2/12 20060101ALI20240117BHJP
【FI】
C02F1/48 A
A61N2/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022111866
(22)【出願日】2022-07-12
(71)【出願人】
【識別番号】514080730
【氏名又は名称】株式会社ブガク・ブラザーズ・ジャパン
(71)【出願人】
【識別番号】322010556
【氏名又は名称】株式会社カノン
(74)【代理人】
【識別番号】100105614
【弁理士】
【氏名又は名称】児島 敦
(72)【発明者】
【氏名】高村 英光
(72)【発明者】
【氏名】津行 良明
【テーマコード(参考)】
4C106
4D061
【Fターム(参考)】
4C106AA04
4C106BB30
4C106CC03
4D061DA10
4D061DB06
4D061EA19
4D061EC02
4D061EC07
4D061EC19
4D061GC20
(57)【要約】
【課題】簡易な構成で様々な磁気処理用途に対応できる。
【解決手段】実施形態の磁気処理装置は、平面視した場合に扇形状を有する複数の磁石が、周方向にN極及びS極が交互となるように配置され、全体として円板状に形成された磁石部と、磁石部を回転駆動する駆動部と、磁石部の回転方向及び回転速度を制御すべく駆動部を制御する制御部と、制御部に対する指示操作を行うための操作部と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面視した場合に扇形状を有する複数の磁石が、周方向にN極及びS極が交互となるように配置され、全体として円板状に形成された磁石部と、
前記磁石部を回転駆動する駆動部と、
前記磁石部の回転速度を制御すべく前記駆動部を制御する制御部と、
前記制御部に対する指示操作を行うための操作部と、
を備えた磁気処理装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記磁石部の回転方向を制御すべく前記駆動部を制御する、
請求項1記載の磁気処理装置。
【請求項3】
前記指示操作は、前記磁石部の回転方向を選択する操作を含む、
請求項2記載の磁気処理装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記磁石部の回転速度にゆらぎを与える、
請求項1記載の磁気処理装置。
【請求項5】
前記ゆらぎは、1/fゆらぎである、
請求項3記載の磁気処理装置。
【請求項6】
前記磁石部及び前記駆動部を含むヘッド部を有し、
前記ヘッド部を収納するヘッド収納部及び前記ヘッド部に対向するように処理対象物を支持する載置面を有するホルダを備えた、
請求項1記載の磁気処理装置。
【請求項7】
前記磁石部の中心軸と前記駆動部の回転軸とがずれて配置されている、
請求項1記載の磁気処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、磁気(磁界)を用いて水等の液体の処理を行う液体処理装置や、血行促進等の治療を行う磁気治療器等の磁気処理装置が提案されている。
【0003】
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の磁気処理装置は、用途が特定されており、複数の用途に対応できるものではなかった。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、簡易な構成で様々な磁気処理用途に対応可能な磁気処理装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態の磁気処理装置は、平面視した場合に扇形状を有する複数の磁石が、周方向にN極及びS極が交互となるように配置され、全体として円板状に形成された磁石部と、前記磁石部を回転駆動する駆動部と、前記磁石部の回転速度を制御すべく前記駆動部を制御する制御部と、前記制御部に対する指示操作を行うための操作部と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、処理対象の制限を緩和しつつ簡易な構成で処理対象に対して磁気処理を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、第1実施形態の磁気処理装置の外観斜視図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態の磁気処理装置の一部分解斜視図である。
【
図5】
図5は、第1実施形態の磁気処理装置の制御系の概要構成ブロック図である。
【
図6】
図6は、磁気処理装置をホルダに収納した状態の外観斜視図である。
【
図7】
図7は、処理対象の試料をペットボトル飲料とした場合の説明図である。
【
図8】
図8は、第1実施形態の変形例のヘッド部の一部断面図である。
【
図9】
図9は、第2実施形態の磁気処理装置の正面図である。
【
図10】
図10は、第2実施形態の磁気処理装置の制御系の概要構成ブロック図である。
【
図11】
図11は、1/fゆらぎ運転時のPWM制御信号PWMu、PWMv、PWMwの一例の説明図である。
【
図12】
図12は、検査者A~C(ワイン醸造技術管理士)に赤ワイン(ブラッククイーン)の官能検査を行ってもらった場合の結果説明図である。
【
図13】
図13は、検査者A~C(ワイン醸造技術管理士)に赤ワイン(ノワール)の官能検査を行ってもらった場合の結果説明図である。
【
図14】
図14は、検査者A~C(ワイン醸造技術管理士)に白ワイン(シュルリー)の官能検査を行ってもらった場合の結果説明図である。
【
図15】
図15は、検査者D(ソムリエ兼醸造技術者)、検査者E(ソムリエ兼製造担当者)、検査者F(製造担当者)、検査者G(製造担当者)に赤ワイン(ラフィユ甲斐ノワール)の官能検査を行ってもらった場合の結果説明図である。
【
図16】
図16は、検査者D~Gに赤ワイン(いろ甲斐ノワール)の官能検査を行ってもらった場合の結果説明図である。
【
図17】
図16は、検査者D~Gに白ワイン(ラフィユトレゾワリザーブド甲州)の官能検査を行ってもらった場合の結果説明図である。
【
図18】
図17は、検査者D~Gにノンアルコール飲料である赤葡萄果汁(雫コンコード)についてアルコール飲料との比較を行うために官能検査を行ってもらった場合の結果説明図である。
【
図19】
図18は、検査者D~Gに市販焼酎甲類について官能検査を行ってもらった場合の結果説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に図面を参照して実施形態について詳細に説明する。
[1]第1実施形態
図1は、第1実施形態の磁気処理装置の外観斜視図である。
図2は、第1実施形態の磁気処理装置の一部分解斜視図である。
磁気処理装置10は、筐体HSと、ヘッド部11と、表示操作部12と、バッテリ部13と、プラグ部14と、コネクタ部15と、バッテリ16と、を備えている。
【0011】
筐体HSは、ヘッド部11及び表示操作部12に対応する第1筐体HS1及びバッテリ部13に対応する第2筐体HS2を備えている。
ヘッド部11は、透明窓部11Aと、本体収納部11Bと、を備えている。
表示操作部12は、操作ボタンの機能とLEDによる状態表示部の機能を備えた表示操作ユニット12Aを備えている。
この場合において、状態表示部の表示態様の変更としては、点灯色の変更や、点滅速度の変更、点灯と点滅との切り替え等が挙げられる。
【0012】
プラグ部14は、表示操作部12の一端から突設されている。
バッテリ部13は、プラグ部14に対応するコネクタ部15が第2筐体HS2の一端に設けられている。
【0013】
第2筐体HS2内には、リチウムイオンバッテリ等のバッテリ16が内蔵されて、コネクタ部15電気的に接続されて、プラグ部14を介して第1筐体HS1側に電力を供給可能とされている。
【0014】
図3は、ヘッド部の一部断面図である。
ヘッド部11の本体収納部11B内には、磁石部を構成する磁石ユニット21と、DCモータ22と、ホールセンサ23と、コントロール基板24と、を備えている。
この場合において、DCモータ22、ホールセンサ23及びコントロール基板24には、プラグ部14及びコネクタ部15を介して、バッテリ16から電力が供給されている。
【0015】
図4は、磁石ユニットの構成説明図である。
磁石ユニット21は、
図4(A)に示すように、複数(
図4の例では、8個)の平面視扇形の磁石MG1、MG2が複数一体化されて、平面視円形状を形成している。
【0016】
ここで、磁石MG1は、
図4(A)及び
図4(B)に示すように、上面側がN極とされ、下面側がS極とされている。また、磁石MG2は、
図4(A)及び
図4(B)に示すように、上面側がS極とされ、下面側がN極とされている。
【0017】
この結果、磁石ユニット21は、平面視した場合に扇形状を有する複数の磁石MG1、MG2が、周方向にN極及びS極が交互となるように配置されて、全体として円板状に形成されることとなっている。
【0018】
図4(C)は、磁石ユニット21の表面の磁界分布のイメージ図である。
図4(C)においては、上面側の表面の磁界分布のイメージのみを表しているが、実際には、側方側、下面側にも磁界は存在している。
磁石ユニット21における垂直方向磁界強度は、例えば、
図4(C)に示すように、磁石ユニット21の中心位置で0となり、外周に向けて徐々に高くなり、全体として、周縁部近傍が高く、中心部が最も低い冠状あるいはボウル状となっている。
【0019】
さらにN極とS極とが交互に配置されているため、磁石ユニット21をDCモータにより回転させた場合には、順次極性が入れ替わることとなり、処理対象に対する作用が異なることとなる。
【0020】
表示操作部12は、例えば、プッシュスイッチと、動作状態を表すLEDランプが一体となっている。
プッシュスイッチは、長押し操作で、電源のオン/オフが切り替えられるようになっている。
さらに電源のオン状態において、押し操作により、動作モードが順次切り替わるようにされている。
【0021】
動作モードとしては、例えば、停止モード、低速正回転モード、高速正転回転モード、低速逆回転モード、高速逆回転モードの5つの動作モードを備えている場合、プッシュスイッチの押し動作により、停止モード→低速正回転モード→高速正転回転モード→低速逆回転モード→高速逆回転モード→停止モード→…のような順番で動作モードが切り替わる。
【0022】
この場合において、低速正回転モード及び低速逆回転モードでは、例えば、400rpmで回転し、高速正回転モード及び高速逆回転モードでは、例えば、800rpmで回転する。また、正回転方向は、例えば、磁石ユニット21の表面側から見た場合、時計回り方向であり、逆回転方向は、反時計回り方向となる。
【0023】
また、動作モードとしては、所定時間毎に回転方向が切り替わる双方向回転モード、さらに所定時間、双方向回転モードを実行し、所定時間後に停止する双方向回転タイマモード等の複数の動作モードを設けるようにすることも可能である。
【0024】
これに伴い、LEDランプは、例えば、赤色(停止モード)→橙色(低速正回転モード)→黄色(高速正転回転モード)→緑色(低速逆回転モード)→青色(高速逆回転モード)→赤色の順番で点灯色が切り替わる。
さらに双方向回転モードあるいは双方向回転タイマモード中は、LEDランプは、例えば、紫色で点滅表示とするように構成することも可能である。
【0025】
図5は、第1実施形態の磁気処理装置の制御系の概要構成ブロック図である。
磁気処理装置10のコントローラ24Aは、表示操作部12の操作状態に対応する操作指示に基づいて、DCモータ22を制御すべく、バッテリ16からの直流電力をDCモータ22に供給する。
この場合において、コントローラ24Aは、回転方向に応じて供給する直流電力の極性を切り替え、設定された回転数に応じて供給電圧を制御する。
これにより、DCモータ22は、スピンドル22Aを回転駆動し、スピンドル22Aにより回転駆動される固定部21Aと一体に駆動されて、磁石ユニット21を所定方向に回転させる。
磁石ユニット21が所定方向に回転されると、コントローラ24Aは、ホールセンサ23の出力信号(磁石ユニット21の回転位置に相当する位置検出信号)に基づいて、磁石ユニット21の回転状態(回転数)を検出し、所望の制御状態となるように供給電圧を制御する。
【0026】
図6は、磁気処理装置をホルダに収納した状態の外観斜視図である。
ホルダ30は、大別すると、ホルダ本体31と、ヘッド収納部32と、支持テーブル部33と、を備えている。
ホルダ本体31の上面は、処理対象の試料を載置する載置面31Aとして構成されている。
【0027】
ヘッド収納部32は、磁気処理装置10のヘッド部11の外形形状に沿った形状を有しており、磁気処理装置10の駆動時に、磁気処理装置10を所定位置に保持した状態を維持する。
支持テーブル部33は、磁気処理装置10を背面側から支持する。
【0028】
図7は、処理対象の試料をペットボトル飲料とした場合の説明図である。
図7においては、ペットボトルPB内の飲料LQは、理解の容易のため、液面LSのみを示している。
図7に示すように、磁気処理装置10のヘッド部11は、ペットボトルPBの下方に位置することとなり、ペットボトルPBの下面から磁石ユニット21により発生された磁界MFが飲料LQ内で回転して、飲料LQに対して磁気処理がなされることとなる。
以上は、ペットボトルPB内の飲料LQについての説明であったが、磁力線が通過可能な容器に収納された液体であれば、同様に適用が可能である。
例えば、ガラスボトルに収納されたワイン、日本酒、ウイスキー等の酒類や、ジュース等のノンアルコール飲料等が挙げられる。
【0029】
図8は、第1実施形態の変形例のヘッド部の一部断面図である。
図8の変形例が、
図3の第1実施形態と異なる点は、DCモータ22の回転軸AX0と、磁石部を構成する磁石ユニット21の中心軸AX1がずれて配置されている点である。
【0030】
この結果、処理対象の特定位置を通過する磁界MFの実効的な磁界強度が随時変更されることとなり、処理対象内の磁界分布が変動して、より磁気処理を効率的に行うことが可能となる。
【0031】
[2]第2実施形態
図9は、第2実施形態の磁気処理装置の正面図である。
図9において、
図1の第1実施形態と同様の部分には、同一の符号を付すものとする。
第2実施形態の磁気処理装置10Aは、筐体HSと、ヘッド部11と、表示操作部12Bと、バッテリ部13と、を備えている。
【0032】
筐体HSは、ヘッド部11に対応する第1筐体HS1並びに表示操作部12B及びバッテリ部13に対応する第2筐体HS2を備えている。
ヘッド部11は、透明窓部11Aと、本体収納部11Bと、電源ボタン41と、を備えている。
【0033】
表示操作部12Bは、液晶表示パネル42、モード選択ボタン43、プリセットタイマ選択ボタン44、第1項目選択ボタン45、第2項目選択ボタン46、設定ボタン47、第1回転方向(
図9においては、反時計方向)設定ボタン48及び第2回転方向(
図9においては、時計方向)設定ボタン49を備えている。
【0034】
上記構成において、液晶表示パネル42は、現在の設定状態(磁石ユニットの回転方向、回転速度、動作モード、タイマ設定時間、タイマ残時間など)を表示する。
【0035】
動作モードとしては、例えば、停止モード、低速正回転モード、高速正回転モード、低速逆回転モード、高速逆回転モード、低速ゆらぎ正回転モード、高速ゆらぎ正回転モード、低速ゆらぎ逆回転モード、高速ゆらぎ逆回転モード、定速回転方向任意切り替えモード等が挙げられる。さらに、これらの動作モードを複数予め組み合わせて、順次動作モードを変更するプリセット動作モード等が挙げられる。
【0036】
そして、モード選択ボタン43の押し操作により、動作モードの選択がなされる。
プリセットタイマ選択ボタン44は、予め設定された複数のプリセットタイマ(例えば、5分、10分、20分、30分等)から押し操作により選択を行うようにされている。
【0037】
第1項目選択ボタン45及び第2項目選択ボタン46は、モード選択あるいはプリセットタイマ選択を行う際に、複数の選択項目が存在する場合に、選択対象の項目を一つずつ順番であるいは複数の選択対象をまとめて順番に液晶表示パネル42に表示させるボタンである。例えば、第1項目選択ボタン45は、次項目あるいは次項目群を表示させ、第2項目選択ボタン46は前項目あるいは前項目群を表示させる操作を行う。
設定ボタン47は、液晶表示パネル42に表示されている選択項目を確定するためのボタンである。
第1回転方向設定ボタン48及び第2回転方向設定ボタン49は、例えば、定速回転方向任意切り替えモード等の様に、磁石ユニット21の回転方向を選択可能な場合に、回転方向を選択するためのボタンである。
【0038】
図10は、第2実施形態の磁気処理装置の制御系の概要構成ブロック図である。
図10において、
図5の第1実施形態と同様の部分には、同一の符号を付すものとする。
第2実施形態の磁気処理装置10Aが第1実施形態と異なる点は、DCモータ22に代えてDCブラシレスモータ22Xを用いた点と、このDCブラシレスモータ22Xを制御するために、DCブラシレスモータ22Xに内蔵された図示しない3つのホールセンサから出力される位置検出信号hu、hv、hwに基づいてPWM制御を行うためのPWM制御信号PWMu、PWMv、PWMwを出力するコントローラ24Bと、を備えた点である。
【0039】
この場合において、コントローラ24Bは、DCブラシレスモータ22Xを定速回転させるだけではなく、上述した低速ゆらぎ正回転モード、高速ゆらぎ正回転モード、低速ゆらぎ逆回転モード、高速ゆらぎ逆回転モードとして、例えば、1/fゆらぎ運転を行うように構成されている。
さらに第1の回転数(例えば、800rpm)から第2の回転数(例えば、900rpm)の範囲を速度変化が一定でない状態で回転速度を変化させ(所定速度範囲を往復するようなイメージ)、回転速度にゆらぎを与えるように構成することも可能である。
【0040】
すなわち、コントローラ24Bは、表示操作部12Bの操作状態に対応する操作指示に基づいて、DCブラシレスモータ22Xを定速回転させる場合には、PWM制御信号PWMu、PWMv、PWMwとして、互いに120°ずつ位相がずれた正弦波あるいは疑似正弦波を出力する。
【0041】
図11は、1/fゆらぎ運転時のPWM制御信号PWMu、PWMv、PWMwの一例の説明図である。
図11において、縦軸は、DCブラシレスモータ22Xを構成しているU、V、W相に対応する巻線(コイル)を流れる電流量であり、横軸は時間である。
これに対し、コントローラ24Bは、上述した低速ゆらぎ正回転モード、高速ゆらぎ正回転モード、低速ゆらぎ逆回転モード、高速ゆらぎ逆回転モードとして、1/fゆらぎ運転を行う場合には、例えば、
図11に示すように、複数の正弦波を組み合わせてパワー(スペクトル密度)が周波数fに反比例する回転を行うように1/fゆらぎを生成している。ここで、周波数fは、0より大きい有限な範囲をとる。
【0042】
この結果、処理対象物あるいは処理対象者あるいは処理対象者を構成している細胞に心地よい磁界のゆらぎを与えることができ、より効果的に磁気処理を行うことが可能となっている。
【0043】
以上の説明においては、主として処理対象について飲料の場合について述べたが、処理対象を人(処理対象者)とした場合には、処理対象者の体内に磁界を与えることで、微少電流を体内に発生させ、血流を促したり、神経に刺激を与えることで、痛みの緩和、筋肉の緊張(張り)を緩和したりすることが可能となる。
【0044】
以上の説明のように、各実施形態によれば、簡易な構成で様々な磁気処理用途に対応可能であり、処理対象物あるいは処理対象者に対して磁気処理を確実に施すことにより、処理対象物あるいは処理対象者の状態を良好に改善することができる。
【実施例0045】
次により具体的な実施例について説明する。
[1]第1実施例(官能検査)
第1実施例は、磁気処理装置の処理対象を飲料として官能検査を行った場合のものである。
[1.1]赤ワイン(ブラッククイーン)
図12は、検査者A~C(ワイン醸造技術管理士)に赤ワイン(ブラッククイーン)の官能検査を行ってもらった場合の結果説明図である。
【0046】
以下の説明においては、色、香り、異臭、酸味、甘み、苦み/渋み、雑味及び粘性等の官能検査結果については、磁気処理を行った場合と比較した状態について記載している。
ところで、ワインは、熟成により味や香りが変化することが知られている。
発明者らは、磁気処理を行うことで、ワイン(その他の処理対象飲料)について、擬似的に熟成を進めることで味や香りが変化すると考えている。
【0047】
より詳細には、ワインの熟成においては、アルコールが、酸素に触れて酸化することにより、有機酸類を生成し、この生成された有機酸類が他のアルコール分子と結合することにより新しい芳香成分を生成している。
また、ワイン中の複数の水分子が、ワイン中のアルコール分子を覆うようにクラスタを形成することで、口当たりをなめらかにする。
【0048】
さらにワインの熟成が進むことで、ワイン中のタンニン成分は、互いに結合して巨大化し、沈殿して澱を生じる。
【0049】
さらにまた、ワインの熟成が進むことで、ワイン中に含まれる酒石酸がワインに含まれるカリウムやマグネシウムなどと結合して結晶化し、沈殿することでシルキーな口当たりを形成することとなる。
【0050】
すなわち、磁気処理を行うことで、これらの熟成と同様の手順を短期的に行わせることで、味や香りが変化するのである。
【0051】
以下、具体的な官能検査の結果について説明する。
まず、官能検査における磁気処理手順について説明する。
磁気処理においては、
図7に示したペットボトルに代えて、ボトルワインを使用し、磁石部の磁力を800~1000ガウスとし、回転速度を800RPMとし、1回当たり5時間の処理を行った。以下の飲料に対する官能検査も同様である。
【0052】
この結果、香りが落ち着いたり、酸味が落ちついたり、甘みが増したり、渋み、苦みなどのいわゆるえぐみが弱まったりして、ワインを適正に貯蔵して熟成した場合と同様に変化していることが分かる。
また、
図12に全体的感想として示すように、1回目の磁気処理により、味わいのバランスが良好となり、まろやかとなり、ワインの熟成が促進された状態となった。
【0053】
2回目の磁気処理後には、さらに熟成が進んだ状態となり、香味ともにフラットになる傾向が見られ、今回用いた赤ワインにおいては、適正な熟成を超えた状態となったものと思われた。
【0054】
[1.2]赤ワイン(ノワール)
図13は、検査者A~C(ワイン醸造技術管理士)に赤ワイン(ノワール)の官能検査を行ってもらった場合の結果説明図である。
【0055】
本実施例においても、色が濃くなったり、香りが変化したり、酸味が増したり、甘みが増したり、渋み、苦みなどが弱まったりして、ワインを適正に貯蔵して熟成した場合と同様に変化していることが分かる。
【0056】
また、
図13に全体的感想として示すように、1回目の磁気処理により、香味が良好となり、酸と渋みのバランスが良好となり、香りが強くなり、ワインの熟成が促進された状態となった。
【0057】
さらに2回目の磁気処理後には、さらに熟成が進んだ状態となり、香味ともにフラットになる傾向が見られるとともに、バランスが崩れたと感じられた場合もあり、今回用いた赤ワインにおいては、適正な熟成を超えた状態となったものと思われた。
【0058】
[1.3]白ワイン(シュルリー)
図14は、検査者A~C(ワイン醸造技術管理士)に白ワイン(シュルリー)の官能検査を行ってもらった場合の結果説明図である。
【0059】
本実施例においても、香りが穏やかになったり、酸味が穏やかになったり、甘みが増したり、渋み、苦みなどが落ち着いてまろやかになったりして、ワインを適正に貯蔵して熟成した場合と同様に変化していることが分かる。
また、
図14に全体的感想として示すように、1回目の磁気処理により、酸と渋みのバランスが良好となり、香りが強くなり、ワインの熟成が促進された状態となった。
【0060】
一方、2回目の磁気処理後には、フルーティーさが減少したり、フレッシュさが減少したり、熟成が進みすぎた状態となっており、赤ワインと比較して、タンニン成分などが少ない白ワインにおいては、磁気処理時間が長すぎ、適正な熟成を超えた状態となったものと思われた。
【0061】
[1.4]赤ワイン(ラフィユ甲斐ノワール)
図15は、検査者D(ソムリエ兼醸造技術者)、検査者E(ソムリエ兼製造担当者)、検査者F(製造担当者)、検査者G(製造担当者)に赤ワイン(ラフィユ甲斐ノワール)の官能検査を行ってもらった場合の結果説明図である。検査者D~Gは、上記検査者A~Cとは異なっている。
【0062】
上記官能検査の結果、香りが落ち着いたり、酸味が落ちついたり、甘みが増したり、渋み、苦みなどが弱まったりして、ワインを適正に貯蔵して熟成した場合と同様に変化していることが分かる。
【0063】
また、
図15に全体的感想として示すように、1回目の磁気処理により、味わいのバランスが良好となり、まろやかとなり、ワインの熟成が促進された状態となった。
さらに2回目の磁気処理後には、さらに熟成が進んだ状態となり、香味ともにフラットになる傾向が見られ、今回用いた赤ワインにおいては、適正な熟成を超えた状態となったものと思われた。
[1.5]赤ワイン(いろ甲斐ノワール)
図16は、検査者D~Gに赤ワイン(いろ甲斐ノワール)の官能検査を行ってもらった場合の結果説明図である。
【0064】
本実施例においても、色が濃くなったり、香りが変化したり、酸味が増加やまとまったり、甘みが増したり、渋み、苦みなどが変化したりして、ワインを適正に貯蔵して熟成した場合と同様に変化していることが分かる。
また、
図16に全体的感想として示すように、1回目の磁気処理により、酸、エッジがあり、バランスの良い苦みとなり、苦み、渋みが穏やかで、優しく感じることとなり、ワインの熟成が促進された状態となった。
また、2回目の磁気処理後には、第1回目の傾向と同様となり、さらに熟成が進んだ状態となったものと思われた。
【0065】
[1.6]白ワイン(ラフィユトレゾワリザーブド甲州)
図17は、検査者D~Gに白ワイン(ラフィユトレゾワリザーブド甲州)の官能検査を行ってもらった場合の結果説明図である。
本実施例においては、香りが減少したり、弱まったりして、ワインを貯蔵して熟成した場合と同様に変化していることが分かる。
【0066】
しかしながら、1回目の磁気処理の段階から香りが減少したり、弱まったり、酸味も減少していることから、赤ワインと比較して、タンニン成分などが少ないこの白ワインにおいては、1回の磁気処理であっても、磁気処理時間が長すぎ、適正な熟成を超えた状態となったものと思われた。
【0067】
[1.7]赤葡萄果汁(雫コンコード)
図18は、検査者D~Gにノンアルコール飲料である赤葡萄果汁(雫コンコード)についてアルコール飲料との比較を行うために官能検査を行ってもらった場合の結果説明図である。
【0068】
本実施例においても、色が濃くなったり、香りが変化したり、酸味が減少したり、柔らかくなったり、甘みが変化たり、渋み、苦みなどが変化したりして、赤葡萄果汁を貯蔵した場合と同様に変化していることが分かる。
また、
図16に全体的感想として示すように、アルコール飲料と比較して、変化が少ないと感じられた。これはアルコール成分と他の成分による反応が生じないためと考えられた。
【0069】
[1.8]市販焼酎甲類
図19は、検査者D~Gに市販焼酎甲類について官能検査を行ってもらった場合の結果説明図である。
【0070】
市販焼酎甲類は、ワインが醸造酒であるのに対し、蒸留酒であることから、固形成分を含むものではない。
この結果、今回の磁気処理では、ほとんど変化が生じなかったものと考えられた。
【0071】
[1.9]第1実施例のまとめ
以上の説明の様に、熟成によって沈殿などを生じることで味の変化の生じるアルコール類については、含有成分同士の反応を促進して、擬似的に熟成を促進することができ、磁気処理の効果が大きいという結論が得られた。
【0072】
[2]第2実施例
次に第2実施例として、処理対象を人(患者)とし、人の患部に磁気処理として磁気治療を行った場合について説明する。
第2実施例においては、磁石部の磁力を800~1000ガウスとし、回転速度を800RPM~900RPMの範囲でゆらぎを生じさせているものとする。また、以下の説明において、正回転(方向)は、磁石ユニット21の表面側(患者に対向する面側)から見た場合、時計回り(方向)であり、逆回転(方向)は、反時計回り(方向)であるものとする。
以下の説明においては(a)欄が症状、(b)欄が磁気処理後の患者の感想を表している。
【0073】
[2.1]患者A 57歳 男
(a)腰、左首筋に痛みと張り。
(b)実施直後に緩和。
【0074】
[2.2]患者B 30歳 女
(a)左右方 張りと痛み、肩が回らない。
(b)少し軽減。
【0075】
[2.3]患者C 54歳 女
(a1)左手首腱鞘炎の痛み。
(b1)1日目:正回転でしばらくして完全緩和。
2日目:正回転でしばらくして完全緩和。
(a2)右膝靱帯に疼痛。
(b2)正回転でしばらくして完全緩和。
【0076】
[2.4]患者D 男
(a)両顎が顎関節症、通院したものの痛み解消せず。
(b)正回転5分、逆回転5分のセットを朝晩1回ずつ、二日間疼痛解消。
【0077】
[2.5]患者E 56歳 男
(a)ロキソニンが効かない左胸から肩にかけての帯状疱疹の痛み。
(b)1回正回転15分を3日間かけてほぼ緩解。
【0078】
[2.6]患者F 60歳 男
(a)首のこり、首が回りづらい。
(b)正回転15分の患部にあてがうことで症状が軽くなった。
【0079】
[2.7]患者G 62歳
(a)右顎、口を開けるときに痛み。
(b1)1日目:正回転で15分患部にあてがう。
→痛みが緩和し、口が開けやすくなった。
(b2)2日目(1日目から17日後):正回転で15分患部にあてがう。
→前回より緩和し、口を開けやすくなった。
[
【0080】
[2.8]患者H 74歳
(a)腰を回すと痛む。
(b)正回転で20分患部にあてがう。
→患部が温かくなり、動きやすくなった。
【0081】
[2.9]患者I 85歳
(a)腰を曲げるときに痛む。
(b)正回転で15分腰にあてがう。
→痛みが軽減。
【0082】
[2.10]患者J 79歳
(a)腰を曲げると痛む。
(b1)1日目:正回転で10分患部にあてがう。
→痛みが少し軽くなった。
(b2)2日目(1日目から6日後):正回転で20分患部にあてがう。
→痛みが軽くなった。
[2.11]第2実施例のまとめ
いずれの場合も、磁気処理装置で磁気処理を施すことで、処理対象者である患者の症状が軽減され、治癒効果が現れることが分かった。
症状が軽減される理由としては、血行の改善による腫れの改善、細胞の活性化に伴う細胞の組織損傷の回復などが考えられる。