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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024104931
(43)【公開日】2024-08-06
(54)【発明の名称】酸素開孔装置
(51)【国際特許分類】
   B22D 41/44 20060101AFI20240730BHJP
   B22D 11/10 20060101ALI20240730BHJP
【FI】
B22D41/44
B22D11/10 340E
B22D11/10 310A
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023009378
(22)【出願日】2023-01-25
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-07-28
(71)【出願人】
【識別番号】306022513
【氏名又は名称】日鉄エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100145012
【弁理士】
【氏名又は名称】石坂 泰紀
(72)【発明者】
【氏名】前川 浩規
(72)【発明者】
【氏名】松岡 幸弘
【テーマコード(参考)】
4E014
【Fターム(参考)】
4E014FA00
(57)【要約】
【課題】閉塞した取鍋の注湯孔を、高い信頼性で適時に開孔させるのに有効な酸素開孔装置を提供する。
【解決手段】酸素開孔装置8は、酸素を導く酸素ランスパイプの先端部を、溶鋼の取鍋2の下に設けられた注湯孔3と、注湯孔3から離れて位置する熱源により加熱される位置とに配置するように酸素ランスパイプを搬送する搬送装置10と、先端部を熱源により加熱される位置に配置して着火させるように搬送装置10を制御する着火制御部114と、着火済みの先端部を注湯孔3内に配置して、閉塞された注湯孔3を開孔させるように搬送装置10を制御する開孔制御部115と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸素を導く酸素ランスパイプの先端部を、溶鋼の取鍋の下に設けられた注湯孔と、前記注湯孔から離れて位置する熱源により加熱される位置とに配置するように前記酸素ランスパイプを搬送する搬送装置と、
前記先端部を前記熱源により加熱される位置に配置して着火させるように前記搬送装置を制御する着火制御部と、
着火済みの前記先端部を前記注湯孔内に配置して、閉塞された前記注湯孔を開孔させるように前記搬送装置を制御する開孔制御部と、
を備える酸素開孔装置。
【請求項2】
前記着火制御部は、前記取鍋外に貯留された溶鋼を前記熱源として、前記熱源により加熱される位置に前記先端部を配置するように前記搬送装置を制御する、
請求項1記載の酸素開孔装置。
【請求項3】
前記取鍋の周囲に配置される着火装置を更に備え、
前記着火制御部は、前記着火装置を前記熱源として、前記熱源により加熱される位置に前記先端部を配置するように前記搬送装置を制御する、
請求項1記載の酸素開孔装置。
【請求項4】
前記注湯孔の下には、前記注湯孔から出た溶鋼を案内するノズルが取り付けられ、
前記開孔制御部は、着火済みの前記先端部を上に向け、前記ノズルの隣の待機位置に配置し、前記ノズルの取外し後に前記注湯孔内に配置するように前記搬送装置を制御する、
請求項1~3のいずれか一項記載の酸素開孔装置。
【請求項5】
前記注湯孔から出た溶鋼を案内するノズルを、前記注湯孔の下の取付位置と、前記取付位置から退避した退避位置との間で搬送する第二搬送装置を更に備える、
請求項1~3のいずれか一項記載の酸素開孔装置。
【請求項6】
前記注湯孔を開閉するゲートの状態と、前記ノズルにより案内された溶鋼を収容するタンディッシュの重量変化とに基づいて、前記注湯孔の閉塞を検出する閉塞検出部を更に備え、
前記着火制御部は、前記閉塞検出部により前記注湯孔の閉塞が検出された後、前記第二搬送装置が前記取付位置から前記ノズルを退避させる前に、前記先端部を前記熱源に配置するように前記搬送装置を制御する、
請求項5記載の酸素開孔装置。
【請求項7】
前記開孔制御部は、
前記第二搬送装置が前記取付位置から前記ノズルを退避させる前に、着火済みの前記先端部を上に向け、前記ノズルの隣の待機位置に配置し、
前記第二搬送装置が前記取付位置から前記ノズルを退避させた後に、着火済みの前記先端部を前記注湯孔内に配置するように前記搬送装置を制御する、
請求項6記載の酸素開孔装置。
【請求項8】
前記取鍋の外から前記注湯孔の三次元データを取得するセンサと、
前記センサにより取得された前記三次元データに基づいて、前記注湯孔の位置を検出する位置検出部と、を更に備え、
前記開孔制御部は、前記位置検出部により検出された前記注湯孔の位置に基づいて、前記先端部を前記注湯孔内に配置する、
請求項1~3のいずれか一項記載の酸素開孔装置。
【請求項9】
着火済みの前記先端部の画像データを取得する第二センサと、
前記第二センサにより取得された前記画像データに基づいて、前記先端部の燃焼が継続しているか否かを検出する燃焼検出部と、を更に備え、
前記着火制御部は、前記燃焼検出部により前記先端部の燃焼が継続していないことが検出された場合に、前記先端部を前記熱源により加熱される位置に再配置するように前記搬送装置を制御する、
請求項8記載の酸素開孔装置。
【請求項10】
前記搬送装置は、
前記酸素ランスパイプを保持するランス保持部と、
前記取鍋の下の周囲に固定された基部と、
前記ランス保持部を前記基部に連結し、前記基部に対する前記ランス保持部の位置及び姿勢を変更する多関節アームと、
を有する、
請求項1~3のいずれか一項記載の酸素開孔装置。
【請求項11】
前記ランス保持部に設けられた力センサを更に備え、
前記開孔制御部は、前記力センサによる検出結果に基づいて、前記注湯孔内への前記先端部の推進力を制限しながら、前記先端部を前記注湯孔内に挿入するように前記搬送装置を制御する、
請求項10記載の酸素開孔装置。
【請求項12】
前記開孔制御部は、
前記先端部を前記注湯孔内の第一深さまで挿入した状態にて、前記注湯孔の内面の複数箇所に前記先端部を接触させるように前記搬送装置を制御し、
前記複数箇所に接触する際の前記先端部の位置に基づいて前記注湯孔の中心位置を算出し、
前記注湯孔の中心位置に前記先端部の中心位置を合わせるように前記搬送装置を制御し、
前記第一深さよりも深い第二深さまで前記先端部を挿入するように前記搬送装置を制御する、
請求項10記載の酸素開孔装置。
【請求項13】
前記取鍋の下から離れた位置にて、複数の酸素ランスパイプを収容するラックと、
使用済みの前記酸素ランスパイプを前記ラックに配置するように前記搬送装置を制御し、前記ラックに収容された未使用の酸素ランスパイプを前記ランス保持部に保持させるように前記搬送装置を制御するランス交換制御部と、
を更に備える、
請求項10記載の酸素開孔装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、酸素開孔装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、自動酸素開孔装置が開示されている。自動酸素開孔装置は、パイプ送給装置と、傾転装置と、旋回装置と、酸素供給装置と、を備える。パイプ送給装置は、酸素注入パイプを巻き付けた巻きドラムと、酸素注入パイプを巻きドラムから巻き戻して連続送給する送給ロールと、酸素注入パイプを下方からスライディングゲートノズル内に案内するパイプガイドと、を有する。傾転装置は、パイプ送給装置を鉛直方向に回動する。旋回装置は、パイプ送給装置を水へ方向に回動する。酸素供給装置は、酸素注入パイプに酸素ガスを供給する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6-182526号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、閉塞した取鍋の注湯孔を、高い信頼性で適時に開孔させるのに有効な酸素開孔装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一側面に係る酸素開孔装置は、酸素を導く酸素ランスパイプの先端部を、溶鋼の取鍋の下に設けられた注湯孔と、注湯孔から離れて位置する熱源により加熱される位置とに配置するように酸素ランスパイプを搬送する搬送装置と、先端部を熱源により加熱される位置に配置して着火させるように搬送装置を制御する着火制御部と、着火済みの先端部を注湯孔内に配置して、閉塞された注湯孔を開孔させるように搬送装置を制御する開孔制御部と、を備える。
【0006】
閉塞された注湯孔の開孔が適時に行われないと、取鍋内の溶鋼が排出されないまま凝固し、取鍋内の全溶鋼及び取鍋を廃棄せざるを得ない場合もある。このため、注湯孔の開孔作業は重要な作業である。これに対し、本装置によれば、予め着火された酸素ランスパイプが注湯孔に挿入される。このため、注湯孔内における着火を待つことなく、注湯孔内における酸素ランスパイプの燃焼継続によって注湯孔の開孔が適時に行われる。従って、注湯孔内の残存熱量に影響されることなく、注湯孔を高い信頼性で適時に開孔させることができる。
【0007】
着火制御部は、取鍋外に貯留された溶鋼を熱源として、熱源により加熱される位置に先端部を配置するように搬送装置を制御してもよい。溶鋼の熱を先端部の着火に有効活用することで、装置構成の簡素化を図ることができる。
【0008】
取鍋の周囲に配置される着火装置を更に備え、着火制御部は、着火装置を熱源として、熱源により加熱される位置に先端部を配置するように搬送装置を制御してもよい。溶鋼の貯留量が少なく、先端部を溶鋼内に配置し難い状況においても、先端部を着火させることができる。
【0009】
注湯孔の下には、注湯孔から出た溶鋼を案内するノズルが取り付けられ、開孔制御部は、着火済みの先端部を上に向け、ノズルの隣の待機位置に配置し、ノズルの取外し後に注湯孔内に配置するように搬送装置を制御してもよい。ノズルの取外し後に、酸素ランスパイプを注湯孔に迅速に挿入し、注湯孔をより迅速に開孔させることができる。
【0010】
注湯孔から出た溶鋼を案内するノズルを、注湯孔の下の取付位置と、取付位置から退避した退避位置との間で搬送する第二搬送装置を更に備えてもよい。ノズルに対する作業と、酸素ランスパイプに対する作業とを並行して行うことができる。従って、注湯孔をより迅速に開孔させることができる。
【0011】
注湯孔を開閉するゲートの状態と、ノズルにより案内された溶鋼を収容するタンディッシュの重量変化とに基づいて、注湯孔の閉塞を検出する閉塞検出部を更に備え、着火制御部は、閉塞検出部により注湯孔の閉塞が検出された後、第二搬送装置が取付位置からノズルを退避させる前に、先端部を熱源に配置するように搬送装置を制御してもよい。先端部を着火させる作業と、ノズルを退避させる作業とを並行して行うことで、閉塞の検出から開孔までの時間を更に短縮することができる。
【0012】
開孔制御部は、第二搬送装置が取付位置からノズルを退避させる前に、着火済みの先端部を上に向け、ノズルの隣の待機位置に配置し、第二搬送装置が取付位置からノズルを退避させた後に、着火済みの先端部を注湯孔内に配置するように搬送装置を制御してもよい。着火済みの酸素ランスパイプを、ノズルの退避後により迅速に挿入することができる。
【0013】
取鍋の外から注湯孔の三次元データを取得するセンサと、センサにより取得された三次元データに基づいて、注湯孔の位置を検出する位置検出部と、を更に備え、開孔制御部は、位置検出部により検出された注湯孔の位置に基づいて、先端部を注湯孔内に配置してもよい。酸素ランスパイプを高い精度で注湯孔に挿入することができる。
【0014】
着火済みの先端部の画像データを取得する第二センサと、第二センサにより取得された画像データに基づいて、先端部の燃焼が継続しているか否かを検出する燃焼検出部と、を更に備え、着火制御部は、燃焼検出部により先端部の燃焼が継続していないことが検出された場合に、先端部を熱源により加熱される位置に再配置するように搬送装置を制御してもよい。先端部が着火済みの状態で酸素ランスパイプを挿入することをより確実に実行することができる。
【0015】
搬送装置は、酸素ランスパイプを保持するランス保持部と、取鍋の下の周囲に固定された基部と、ランス保持部を基部に連結し、基部に対するランス保持部の位置及び姿勢を変更する多関節アームと、を有してもよい。着火と開孔という二種類の作業を一装置で簡単に実現することができる。
【0016】
ランス保持部に設けられた力センサを更に備え、開孔制御部は、力センサによる検出結果に基づいて、注湯孔内への先端部の推進力を制限しながら、先端部を注湯孔内に挿入するように搬送装置を制御してもよい。注湯孔内のライニングが、酸素ランスパイプとの衝突により破損することを容易に回避することができる。
【0017】
開孔制御部は、先端部を注湯孔内の第一深さまで挿入した状態にて、注湯孔の内面の複数箇所に先端部を接触させるように搬送装置を制御し、複数箇所に接触する際の先端部の位置に基づいて注湯孔の中心位置を算出し、注湯孔の中心位置に先端部の中心位置を合わせるように搬送装置を制御し、第一深さよりも深い第二深さまで先端部を挿入するように搬送装置を制御してもよい。先端部が第一深さまで挿入された状態にて、先端部の中心位置を注湯孔の中心位置に合わせることで、先端部が第二深さに到達するまでの過程におけるライニングの破損等をより確実に回避することができる。
【0018】
取鍋の下から離れた位置にて、複数の酸素ランスパイプを収容するラックと、使用済みの酸素ランスパイプをラックに配置ように搬送装置を制御し、ラックに収容された未使用の酸素ランスパイプをランス保持部に保持させるように搬送装置を制御するランス交換制御部と、を更に備えてもよい。ランス保持部への酸素ランスパイプの付け替えも自動化することで、酸素開孔作業の更なる省力化を図ることができる。
【発明の効果】
【0019】
本開示によれば、閉塞した取鍋の注湯孔を、高い信頼性で適時に開孔させるのに有効な酸素開孔装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】連続鋳造システムの構成を例示する模式図である。
図2】制御システムの機能的な構成を例示するブロック図である。
図3】制御システムのハードウェア構成を例示するブロック図である。
図4】取鍋からタンディッシュへの注湯手順を例示するフローチャートである。
図5】酸素開孔手順を例示するフローチャートである。
図6】酸素ランスパイプを着火させている状態を例示する模式図である。
図7】ノズルの退避を待機している状態を例示する模式図である。
図8】酸素開孔手順を例示するフローチャートである。
図9】酸素ランスパイプの挿入動作を開始した状態を例示する模式図である。
図10】酸素開孔手順を例示するフローチャートである。
図11】酸素ランスパイプの位置調節手順を例示するフローチャートである。
図12】位置調節手順における先端部の位置と、注湯孔の中心位置との関係を例示する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、実施形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0022】
〔連続鋳造システム〕
図1は、連続鋳造システムの構成を例示する模式図である。図1に示す連続鋳造システム1は、連続鋳造(Continuous Caster)により鋼片を製造するシステムである。連続鋳造システム1は、取鍋2と、注湯孔3と、ゲート4と、ノズル5と、タンディッシュ6と、モールド7と、酸素開孔装置8とを備える。取鍋2は、高炉又は電気炉にて生成された溶鋼を収容する。取鍋2は、注湯孔3と、ゲート4とを下部に有する。注湯孔3は、溶鋼を下方に排出する。ゲート4は注湯孔3を開閉する。
【0023】
ノズル5は、注湯孔3から出た溶鋼を下方に案内する。タンディッシュ6は、ノズル5により上方から案内された溶鋼を収容し、下方に排出する。モールド7は、タンディッシュ6により上方から排出された溶鋼を収容し、成型しながら下方に送り出す。溶鋼は、モールド7を通りながら徐々に凝固する。モールド7を通過して下方に送り出された溶鋼は、複数の搬送ロールによって搬送され、ガス切断機などによって鋼片に切り分けられる。
【0024】
酸素開孔装置8は、取鍋2内で高粘度化又は凝固した溶鋼等によって注湯孔3が閉塞された場合に、酸素を導く酸素ランスパイプ30の先端部33を注湯孔3内に配置し、酸素ランスパイプ30の燃焼熱によって注湯孔3を開孔させる装置である。作業者に代わって酸素ランスパイプ30による注湯孔3の開口作業を行う酸素開孔装置8によれば、作業者の負担が大幅に軽減される。
【0025】
酸素開孔装置8は、酸素ランスパイプ30を搬送する搬送装置10と、搬送装置10を制御する制御システム100とを備える。連続鋳造において、閉塞された注湯孔3の開孔が適時に行われないと、取鍋2内の溶鋼が排出されないまま凝固し、取鍋2内の全溶鋼及び取鍋2を廃棄せざるを得ない場合もある。このため、注湯孔3の開孔作業は重要な作業である。
【0026】
そこで、搬送装置10は、注湯孔3内と、注湯孔3から離れて位置する熱源により加熱される位置とに先端部33を配置するように酸素ランスパイプ30を搬送するように構成されている。制御システム100は、先端部33を熱源に配置して着火させるように搬送装置10を制御することと、着火済みの先端部33を注湯孔3内に配置して、閉塞された注湯孔3を開孔させるように搬送装置10を制御することと、を実行するように構成されている。
【0027】
これにより、予め着火された酸素ランスパイプ30が注湯孔3に挿入される。このため、注湯孔3内における着火を待つことなく、注湯孔3内における酸素ランスパイプ30の燃焼継続によって注湯孔3の開孔が適時に行われる。従って、注湯孔3内の残存熱量に影響されることなく、注湯孔3を高い信頼性で適時に開孔させることができる。
【0028】
搬送装置10は、注湯孔3内と、注湯孔3から離れて位置する熱源とに先端部33を配置し得る限り、いかに構成されていてもよい。一例として、図1に示す搬送装置10は、シリアルリンク型の垂直多関節ロボットにより構成されている。例えば搬送装置10は、ランス保持部11と、基部12と、多関節アーム13とを有する。
【0029】
ランス保持部11は、酸素ランスパイプ30を保持する。例えばランス保持部11は、オートツールチェンジャのマスタであり、酸素ランスパイプ30に予め装着されたツールアダプタ15を保持する。例えば酸素ランスパイプ30は、ツールアダプタ15から延びる支持部31と、支持部31に対して屈曲した挿入部32とを有する。支持部31は、不図示のホースなどによって酸素の供給源に接続され、酸素ランスパイプ30は支持部31から挿入部32に酸素を導く。挿入部32に導かれた酸素は挿入部32の端部から吹き出す。この構成においては、挿入部32の端部が酸素ランスパイプ30の先端部33である。ランス保持部11は、ツールアダプタ15を保持するロック状態と、ツールアダプタ15を解除するアンロック状態とを制御信号に従って切り替えるように構成されている。
【0030】
基部12は、取鍋2の下の周囲に固定される。例えば基部12は、取鍋2の下に位置するタンディッシュ6の周囲に設けられたステージ9の上に固定されている。多関節アーム13は、ランス保持部11を基部12に連結するように延び、複数の関節軸の動きによって、基部12に対するランス保持部11の位置及び姿勢を変更する。
【0031】
多関節アーム13は、複数の関節軸を駆動する複数の駆動軸14を有する。一例として、多関節アーム13は、互いに垂直な3方向におけるランス保持部11の位置と、当該3方向まわりのランス保持部11の姿勢とを変更し得るように、6の駆動軸14を有している。
【0032】
このように、多関節ロボットにより構成された搬送装置10によれば、着火と開孔という二種類の作業を一装置で簡単に実現することができるが、上述のとおり搬送装置10は垂直多関節ロボットに限られない。例えば搬送装置10は、所謂スカラ型ロボットと、酸素ランスパイプ30を昇降させる昇降アクチュエータと、先端部33の向きを変更するように酸素ランスパイプ30を回転させる回転アクチュエータとにより構成されていてもよい。例えば搬送装置10は、酸素ランスパイプ30を水平方向に移動させるXYテーブルと、酸素ランスパイプ30を昇降させる昇降アクチュエータと、先端部33の向きを変更するように酸素ランスパイプ30を回転させる回転アクチュエータとにより構成されていてもよい。
【0033】
連続鋳造システム1は、上記熱源として着火装置41を更に備えていてもよい。着火装置41は取鍋2の周囲に配置される。例えば着火装置41は、取鍋2の下においてタンディッシュ6の周囲に配置される。一例として、着火装置41は、上記ステージ9の上に配置されている。
【0034】
例えば着火装置41は、ガスにより火炎を発生さるバーナである。着火装置41により加熱される位置は、着火装置41が発生させる火炎内である。着火装置41は、コイルの電磁誘導によって先端部33を発熱させる誘導加熱装置であってもよい。この場合、着火装置41により加熱される位置は、コイル内である。着火装置41は、摩擦により先端部33を加熱するグラインダーであってもよい。この場合、着火装置41により加熱される位置は、グラインダーに接触する位置である。
【0035】
連続鋳造システム1は、センサ42を更に備えていてもよい。センサ42は、取鍋2の外から注湯孔3の三次元データを取得する。例えばセンサ42は、ゲート4を経て取鍋2外に開口する注湯孔3の三次元データを取得する。三次元データは、三次元空間に配置されたオブジェクトの三次元形状を、三次元空間における点列等で表したデータである。センサ42が取得する三次元データは、注湯孔3に対する先端部33の位置調節に利用可能である。
【0036】
センサ42は、例えばTOF(Time-of-Flight)カメラである。TOFカメラは、オブジェクトに照射した光がオブジェクトで反射して撮像部に入射するまでの時間に基づいて、オブジェクトまでの距離を検出するカメラである。TOFカメラは、撮像したオブジェクトまでの距離情報を画素ごとに含む距離画像データを三次元データとして取得する。
【0037】
センサ42は、三次元データを取得可能であればいかなるセンサであってもよい。例えばセンサ42はステレオカメラであってもよく、レーザスキャン式の三次元形状センサであってもよい。センサ42は、注湯孔3に対する相対位置が既知である画像認識用のマーカの位置・姿勢の情報を三次元データとして取得してもよい。注湯孔3に対する相対位置が既知であるマーカの位置・姿勢に基づけば、注湯孔3の位置・姿勢が導出可能であるため、マーカの位置・姿勢も、注湯孔3の三次元データに含まれる。センサ42は、搬送装置10により位置・姿勢が変更される部分(例えばランス保持部11)に固定されていてもよい。この場合、センサ42の位置・姿勢を搬送装置10により変更することで、センサ42を様々な対象の三次元データの取得に共用することができる。また、複数の視点からの三次元データを組み合わせることで、注湯孔3の位置をより高い精度で認識することも可能となる。
【0038】
連続鋳造システム1は、第二センサ43を更に備えていてもよい。第二センサ43は、着火済みの先端部33の画像データを取得する。第二センサ43は、例えば白黒の可視光カメラであってもよく、カラーの可視光カメラであってもよい。例えば第二センサ43は、ノズル5の退避を待機するために、上に向けられたノズル5の隣の待機位置P11に配置された先端部33を撮像し得るように配置されている。第二センサ43が取得する画像データは、例えばノズル5の退避の待機中に先端部33の燃焼が途切れてしまい、先端部33の再着火が必要であることを検知するのに利用可能である。なお、第二センサ43は、搬送装置10により位置・姿勢が変更される部分(例えばランス保持部11)に固定されていてもよい。この場合、第二センサ43の位置・姿勢を搬送装置10により変更することで、第二センサ43を様々な対象の画像データの取得に共用することができる。また、第二センサ43の死角を減らし、先端部33の状態をより高い信頼性で検知することも可能となる。
【0039】
連続鋳造システム1は、力センサ16を更に備えていてもよい。力センサ16は、酸素ランスパイプ30に作用する力を検出する。力センサ16は、少なくとも挿入部32に沿って酸素ランスパイプ30に作用する力を検出する。力センサ16は、挿入部32に交差する方向に沿って酸素ランスパイプ30に作用する力を更に検出してもよい。
【0040】
例えば力センサ16は、ランス保持部11に設けられている。力センサ16の例としては、ひずみゲージ式のロードセル等が挙げられる。
【0041】
連続鋳造システム1は、ラック44を更に備えていてもよい。ラック44は、取鍋2の下から離れた位置にて、複数の酸素ランスパイプ30を収容する。例えばラック44は、上記ステージ9の上に配置されている。ラック44が収容する複数の酸素ランスパイプ30のそれぞれには、予めツールアダプタ15が装着されていてもよい。これにより、使用済みの酸素ランスパイプ30を新たな酸素ランスパイプ30に持ち替える作業を搬送装置10に実行させることが可能である。
【0042】
ラック44は、使用済みの酸素ランスパイプ30を収容する使用済みラックと、未使用の酸素ランスパイプ30を収容する未使用ラックとに分かれていてもよい。使用済みラックと未使用ラックとは、互いに隣接していてもよく、上下に並んでいてもよく、互いに離れて配置されていてもよい。
【0043】
連続鋳造システム1は、重量センサ45を更に備えていてもよい。重量センサ45は、タンディッシュ6の重量を検出する。重量センサ45による検出結果は、注湯孔3の閉塞の検出等に利用可能である。
【0044】
連続鋳造システム1は、第二搬送装置20を更に備えていてもよい。第二搬送装置20は、ノズル5を、注湯孔3の下の取付位置P1と、取付位置P1から退避した退避位置P2との間で搬送する。退避位置P2は、取鍋2の下の周囲に位置している。例えば第二搬送装置20は、取鍋2の下から離れた位置にて鉛直な軸線周りに旋回することで、円弧状の軌道に沿ってノズル5を取付位置P1と退避位置P2との間で搬送する。
【0045】
ノズル5を搬送する第二搬送装置20を、酸素ランスパイプ30を搬送する連続鋳造システム1とは別に備えることで、ノズル5に対する作業と、酸素ランスパイプ30に対する作業とを並行して行うことができる。従って、注湯孔3をより迅速に開孔させることができる。
【0046】
図2は、制御システムの構成を例示するブロック図である。図2に示すように、制御システム100は、機能上の構成要素(以下、「機能ブロック」という。)として、開閉制御部111と、閉塞検出部112と、ノズル搬送制御部113と、着火制御部114と、開孔制御部115とを有する。
【0047】
開閉制御部111は、ゲート4を開閉させる。閉塞検出部112は、ゲート4の状態と、タンディッシュ6の重量変化とに基づいて、注湯孔3の閉塞を検出する。ここでの閉塞とは、ゲート4が注湯孔3を開放しているにもかかわらず、高粘度化又は凝固した溶鋼等によって、注湯孔3からの溶鋼の流出が完全に、又は著しく妨げられている状態を意味する。例えば閉塞検出部112は、ゲート4の状態の情報を開閉制御部111から取得し、タンディッシュ6の重量の情報を重量センサ45から取得する。閉塞検出部112は、ゲート4が注湯孔3を開放させた後、重量センサ45から時系列の複数の検出結果を取得し、複数の検出結果に基づき単位時間あたりのタンディッシュ6の重量変化を算出する。閉塞検出部112は、算出した重量変化が所定の閾値よりも小さい場合に、注湯孔3の閉塞を検出する。閾値は、注湯孔3の閉塞が生じていない場合に想定される重量変化よりも低い値に予め設定されている。
【0048】
ノズル搬送制御部113は、取付位置P1と退避位置P2との間で第二搬送装置20にノズル5を搬送させる。例えばノズル搬送制御部113は、開閉制御部111がゲート4に注湯孔3を開放させる前に、第二搬送装置20によりノズル5を取付位置P1に配置させる。ノズル搬送制御部113は、開閉制御部111がゲート4に注湯孔3を開放させた後、閉塞検出部112により注湯孔3の閉塞が検出された場合に、第二搬送装置20によりノズル5を取付位置P1から退避位置P2に搬送させる。
【0049】
着火制御部114は、先端部33を熱源により加熱される位置に配置して着火させるように搬送装置10を制御する。例えば着火制御部114は、先端部33を熱源により加熱される位置に配置するように予め定められた目標位置及び目標姿勢までランス保持部11を変位させるように搬送装置10を制御する。例えば着火制御部114は、ランス保持部11を現在位置及び現在姿勢から上記目標位置及び目標姿勢まで移動させるための複数の駆動軸14の動作角度を逆運動学等により算出し、算出結果に従って複数の駆動軸14を動作させる。
【0050】
着火制御部114は、取鍋2外に貯留された溶鋼を熱源として、熱源により加熱される位置に先端部33を配置するように搬送装置10を制御してもよい。例えば着火制御部114は、タンディッシュ6に収容された溶鋼の近傍、又はタンディッシュ6に収容された溶鋼内に先端部33を配置するように搬送装置10を制御してもよい。溶鋼の熱を先端部33の着火に有効活用することで、装置構成の簡素化を図ることができる。
【0051】
着火制御部114は、着火装置41を熱源として、熱源により加熱される位置に先端部33を配置するように搬送装置10を制御してもよい。タンディッシュ6等における溶鋼の貯留量が少なく、先端部33を溶鋼の近傍、又は溶鋼内に配置し難い状況においても、先端部33を着火させることができる。
【0052】
着火装置41がバーナである場合、着火制御部114は、着火装置41が発生させる火炎内に先端部33を配置するように搬送装置10を制御する。着火装置41が誘導加熱装置である場合、着火制御部114は、コイル内に先端部33を配置するように搬送装置10を制御する。着火装置41がグラインダである場合、着火制御部114は、グラインダと接する位置に先端部33を配置するように搬送装置10を制御する。
【0053】
開孔制御部115は、着火済みの先端部33を注湯孔3内に配置して、閉塞された注湯孔3を開孔させるように搬送装置10を制御する。例えば開孔制御部115は、挿入部32を注湯孔3内に挿入して、着火済みの先端部33を注湯孔3内に配置するように搬送装置10を制御する。注湯孔3の燃焼熱によって、高粘度化又は凝固した溶鋼が溶解され、注湯孔3の閉塞が解消される。
【0054】
開孔制御部115は、着火済みの先端部33を上に向け 、ノズル5の隣の待機位置P11に配置し、ノズル5の取外し後に注湯孔3内に配置するように搬送装置10を制御してもよい。例えば開孔制御部115は、ツールアダプタ15から待機位置P11の下に向かって支持部31が水平に延び、挿入部32が支持部31の端部から上方に向かって延び、先端部33が待機位置P11に配置されるように予め定められた第一目標位置及び第一目標姿勢までランス保持部11を変位させるように搬送装置10を制御する。例えば開孔制御部115は、ランス保持部11を現在位置及び現在姿勢から上記第一目標位置及び第一目標姿勢まで変位させるための複数の駆動軸14の動作角度を逆運動学等により算出し、算出結果に従って複数の駆動軸14を動作させる。なお、待機位置P11に配置される際の先端部33の向きは、必ずしも上向きに限られない。例えば開孔制御部115は、先端部33を水平方向に向けて待機位置P11に配置するように搬送装置10を制御してもよい。
【0055】
ノズル5の取外し後に、開孔制御部115は、上に向いた先端部33が、下方から注湯孔3の中心に向かうように予め定められた第二目標位置及び第二目標姿勢までランス保持部11を変位させるように搬送装置10を制御する。例えば開孔制御部115は、ランス保持部11を第一目標位置及び第一目標姿勢から上記第二目標位置及び第二目標姿勢まで移動させるための複数の駆動軸14の動作角度を逆運動学等により算出し、算出結果に従って複数の駆動軸14を動作させる。
【0056】
その後、開孔制御部115は、挿入部32を注湯孔3内に挿入し、先端部33を注湯孔3内に配置するように予め定められた第三目標位置及び第三目標姿勢までランス保持部11を直線状に変位させるように搬送装置10を制御する。例えば開孔制御部115は、ランス保持部11を現在位置及び現在姿勢から上記第三目標位置及び第三目標姿勢まで直線状に変位させるための複数の駆動軸14の動作角度を逆運動学等により算出し、算出結果に従って複数の駆動軸14を動作させる。
【0057】
このように、着火済みの先端部33を上に向け、待機位置P11に配置してノズル5の取外しを待機することで、ノズル5の取外し後に、酸素ランスパイプ30を注湯孔3に迅速に挿入し、注湯孔3をより迅速に開孔させることができる。ノズル5の取外しとは、例えば、注湯孔3への酸素ランスパイプ30の挿入が可能となる位置まで、注湯孔3の下からノズル5を退避させることを意味する。
【0058】
連続鋳造システム1が第二搬送装置20を更に備える場合、着火制御部114は、閉塞検出部112により注湯孔3の閉塞が検出された後、第二搬送装置20が取付位置P1からノズル5を退避させる前に、先端部33を記熱源に配置するように搬送装置10を制御してもよい。ノズル5が取付位置P1から退避した状態とは、ノズル5が取付位置P1から退避位置P2に向かって移動することで、注湯孔3への酸素ランスパイプ30の挿入が可能となった状態を意味する。先端部33を着火させる作業と、ノズル5を取付位置P1から退避させる作業とを並行して行うことで、注湯孔3の閉塞の検出から注湯孔3の開孔までの時間を更に短縮することができる。
【0059】
開孔制御部115は、第二搬送装置20が取付位置P1からノズル5を退避させる前に、着火済みの先端部33を上に向け、ノズル5の隣の待機位置P11に配置し、第二搬送装置20が取付位置P1からノズル5を退避させた後に、着火済みの先端部33を注湯孔3内に配置するように搬送装置10を制御してもよい。例えば開孔制御部115は、ノズル5が取付位置P1から退避したか否かをノズル搬送制御部113による第二搬送装置20の動作状況に基づいて確認する。着火済みの酸素ランスパイプ30を、ノズル5の退避後に迅速に挿入することができる。
【0060】
制御システム100は、位置検出部116を更に有してもよい。位置検出部116は、センサ42により取得された三次元データに基づいて、注湯孔3の位置を検出する。例えば位置検出部116は、予め記憶された注湯孔3及びその周辺の三次元モデルと、三次元データとのマッチングによって、三次元データ内における三次元モデルの位置及び姿勢を特定し、特定された三次元モデルの位置及び姿勢に基づいて注湯孔3の位置を検出する。
【0061】
制御システム100が位置検出部116を更に有する場合、開孔制御部115は、位置検出部116により検出された注湯孔3の位置に基づいて、先端部33を注湯孔3内に配置してもよい。、例えば開孔制御部115は、位置検出部116により検出された位置に基づいて、挿入部32の中心軸を注湯孔3の中心軸に沿わせるように、予め定められたランス保持部11の目標位置及び目標姿勢(例えば上記第二目標位置、第二目標姿勢、第三目標位置、及び第三目標姿勢)を補正し、補正済みの目標位置及び目標姿勢に合わせてランス保持部11を動作させる。酸素ランスパイプ30を高い精度で注湯孔3に挿入することができる。
【0062】
開孔制御部115は、力センサ16による検出結果に基づいて、注湯孔3内への先端部33の推進力を制限しながら、先端部33を注湯孔3内に挿入するように搬送装置10を制御してもよい。例えば開孔制御部115は、力センサ16による検出結果に基づいて、先端部33の挿入に対する反力を算出する。開孔制御部115は、算出した反力が予め定められた反力閾値を超えている場合に、反力が反力閾値よりも小さくなるまでランス保持部11の変位速度を小さくするように搬送装置10を制御する。注湯孔3内のライニングが、酸素ランスパイプ30との衝突により破損することを容易に回避することができる。
【0063】
開孔制御部115は、力センサ16による検出結果に基づいて、注湯孔3に対する先端部33の位置合わせを搬送装置10に実行させてもよい。例えば開孔制御部115は、先端部33を注湯孔3内の第一深さまで挿入した状態にて、注湯孔3の内面の複数箇所に先端部33を接触させるように搬送装置10を制御する。例えば開孔制御部115は、力センサ16による検出結果に基づいて先端部33が注湯孔3の内面に接触しているか否かを確認しながら、先端部33が注湯孔3の内面に接触するまでランス保持部11を変位させることを、水平な複数方向に対して実行するように搬送装置10を制御する。開孔制御部115は、先端部33が注湯孔3の内面に接触する度に、ランス保持部11の位置に基づいて、注湯孔3の内面に接触する際の先端部33の位置を算出する。これにより、注湯孔3の内面の複数箇所に接する際の先端部33の位置が算出される。
【0064】
開孔制御部115は、注湯孔3の内面の複数箇所に接触する際の先端部33の位置に基づいて注湯孔3の中心位置を算出し、注湯孔3の中心位置に先端部33の中心位置を合わせるように搬送装置10を制御する。例えば開孔制御部115は、注湯孔3の中心位置と先端部33の中心位置との差分をゼロにするように、ランス保持部11の現在位置及び現在姿勢を補正するように搬送装置10を制御する。その後、開孔制御部115は、先端部33の中心位置を注湯孔3の中心位置に合わせた状態を維持したまま、第一深さよりも深い第二深さまで先端部33を挿入するように搬送装置10を制御する。先端部33が第一深さまで挿入された状態にて、先端部33の中心位置を注湯孔3の中心位置に合わせることで、先端部33が第二深さに到達するまでの過程におけるライニングの破損等をより確実に回避することができる。
【0065】
制御システム100は、燃焼検出部117を更に有してもよい。燃焼検出部117は、第二センサ43により取得された画像データに基づいて、先端部33の燃焼が継続しているか否かを検出する。例えば画像データにおいて、先端部33に対応する部分の輝度等に基づいて、先端部33の燃焼が継続しているか否かを検出する。
【0066】
制御システム100が燃焼検出部117を更に有する場合、開孔制御部115は、燃焼検出部117により先端部33の燃焼が継続していないことが検出された場合に、先端部33を熱源により加熱される位置に再配置するように搬送装置10を制御してもよい。先端部33が着火済みの状態で酸素ランスパイプ30を挿入することをより確実に実行することができる。
【0067】
制御システム100は、ランス交換制御部118を更に有してもよい。ランス交換制御部118は、使用済みの酸素ランスパイプ30をゲート4に配置するように搬送装置10を制御し、ラック44に収容された未使用の酸素ランスパイプ30をランス保持部11に保持させるように搬送装置10を制御する。例えばランス交換制御部118は、使用済みの酸素ランスパイプ30をゲート4に配置した後、ランス保持部11をロック状態からアンロック状態に切り替えるように搬送装置10を制御する。その後、ランス交換制御部118は、ラック44に収容された未使用の酸素ランスパイプ30に装着されたツールアダプタ15にランス保持部11を接続し、ランス保持部11をアンロック状態からロック状態に切り替えるように搬送装置10を制御する。ランス保持部11への酸素ランスパイプ30の付け替えも自動化することで、酸素開孔作業の更なる省力化を図ることができる。
【0068】
図3は、制御システムのハードウェア構成を例示するブロック図である。図3に示すように、制御システム100は、回路190を有する。回路190は、プロセッサ191と、メモリ192と、ストレージ193と、入出力ポート194と、制御回路195,196,197とを有する。
【0069】
ストレージ193は、フラッシュメモリ、又はハードディスク等の1以上の不揮発性メモリデバイスにより構成されている。ストレージ193は、先端部33を熱源に配置して着火させるように搬送装置10を制御することと、着火済みの先端部33を注湯孔3内に配置して、閉塞された注湯孔3を開孔させるように搬送装置10を制御することと、を制御システム100に実行させるためのプログラムを記憶している。例えばストレージ193は、上述した各機能ブロックを制御システム100に構成させるためのプログラムを記憶している。
【0070】
メモリ192は、例えばランダムアクセスメモリ等の1以上の揮発性メモリデバイスにより構成されている。メモリ192は、ストレージ193からロードされたプログラムを一時的に記憶する。プロセッサ191は、CPU(Central Processing Unit)又はGPU(Graphics Processing Unit)等の1以上の演算デバイスにより構成されている。プロセッサ191は、メモリ192にロードされたプログラムを実行することで、上述した各機能ブロックを制御システム100に構成させる。プロセッサ191による演算結果は一時的にメモリ192に格納される。
【0071】
入出力ポート194は、プロセッサ191からの要求に応じて、センサ42、第二センサ43、力センサ16、及び重量センサ45等との間で情報の入出力を行う。制御回路195は、プロセッサ191からの要求に応じて搬送装置10を動作させる。制御回路196は、プロセッサ191からの要求に応じて第二搬送装置20を動作させる。制御回路197は、プロセッサ191からの要求に応じてゲート4を開閉させる。以上に示したハードウェア構成はあくまで一例であり、適宜変更可能である。例えば回路190は、互いに追伸可能な複数の回路に分かれていてもよい。
【0072】
〔注湯手順〕
注湯方法の一例として、連続鋳造システム1において実行される取鍋2からタンディッシュ6への注湯手順を例示する。図4は、注湯手順を例示するフローチャートである。図4に示すように、制御システム100は、まずステップS01,S02を実行する。ステップS01では、開閉制御部111が、ゲート4を開いて注湯孔3からの溶鋼の排出を開始させる。ステップS02では、閉塞検出部112が、ゲート4の状態と、タンディッシュ6の重量変化とに基づいて、注湯孔3が閉塞しているか否かを確認する。
【0073】
ステップS02において注湯孔3の閉塞を検出した場合、制御システム100はステップS03を実行する。ステップS03の内容については後述する。次に、制御システム100はステップS04を実行する。ステップS02において注湯孔3の閉塞を検出しなかった場合、制御システム100はステップS03を実行することなくステップS04を実行する。ステップS04では、開閉制御部111が、注湯の完了を待機する。例えば開閉制御部111は、タンディッシュ6による検出結果に基づいて、ゲート4を開放した時点からの注湯量が予定量に達するのを待機する。
【0074】
次に、制御システム100はステップS05を実行する。ステップS05では、開閉制御部111が、ゲート4を閉じて注湯孔3からの溶鋼の排出を停止させる。
【0075】
(酸素開孔手順)
図5は、上述のステップS03における酸素開孔手順を例示するフローチャートである。図5に示すように、制御システム100は、まずステップS11,S12を実行する。ステップS11では、着火制御部114が、先端部33を熱源により加熱される位置に配置して着火させるための搬送装置10の動作を開始させる。ステップS12では、ノズル搬送制御部113が、取付位置P1から退避位置P2へのノズル5の搬送を第二搬送装置20に開始させる。ステップS12は、ステップS11よりも先に実行されてもよく、ステップS11と同時に実行されてもよい。
【0076】
次に、制御システム100はステップS13を実行する。ステップS13では、着火制御部114が、先端部33の着火を待機する。例えば着火制御部114は、熱源により加熱される位置に先端部33が配置された後に、着火のために予め設定された着火時間が経過するのを待機する(図6参照)。
【0077】
次に、制御システム100はステップS14,S15を実行する。ステップS14では、開孔制御部115が、着火済みの先端部33を上に向け、ノズル5の隣の待機位置P11に配置するように搬送装置10を制御する(図7参照)。ステップS15では、燃焼検出部117が、第二センサ43により取得された画像データに基づいて、先端部33の燃焼が継続しているか否かを検出する。
【0078】
ステップS15において、先端部33の燃焼が継続していると判定した場合、制御システム100はステップS16を実行する。ステップS16では、ノズル搬送制御部113による第二搬送装置20の動作状況に基づいて、取付位置P1からのノズル5の退避が完了しているか否かを開孔制御部115が確認する。
【0079】
ステップS16において、取付位置P1からのノズル5の退避が完了していないと判定した場合、制御システム100は処理をステップS15に戻す。以後、取付位置P1からのノズル5の退避が完了するまで、先端部33の燃焼が継続していることを確認しながら、取付位置P1からのノズル5の退避を待機することが継続される。ステップS15において、先端部33の燃焼が継続していないと判定した場合、制御システム100はステップS17を実行する。ステップS17では、着火制御部114が、先端部33を熱源により加熱される位置に配置して再着火させるための搬送装置10の動作を開始させる。その後、制御システム100は処理をステップS13に戻す。
【0080】
ステップS16において、取付位置P1からのノズル5の退避が完了していると判定した場合、制御システム100は、図8に示すようにステップS21,S22を実行する。ステップS21では、位置検出部116が、センサ42により取得された三次元データに基づいて、注湯孔3の位置を検出する。ステップS22では、開孔制御部115が、位置検出部116により検出された位置に基づいて、挿入部32の中心軸を注湯孔3の中心軸に沿わせるように、予め定められた目標位置及び目標姿勢を補正する。例えば開孔制御部115は、上に向いた先端部33が、下方から注湯孔3の中心に向かうように予め定められた上記第二目標位置及び第二目標姿勢と、先端部33を注湯孔3内に配置するように予め定められた第三目標位置及び第三目標姿勢とを補正する。
【0081】
次に、制御システム100はステップS23,S24,S25を実行する。ステップS23では、補正済みの第二目標位置、第二目標姿勢、第三目標位置、及び第三目標姿勢に基づいて、先端部33を注湯孔3内の第一深さまで挿入するように搬送装置10を制御する(図9参照)。ステップS24では、注湯孔3の内面の複数箇所に先端部33を接触させるように搬送装置10を制御して注湯孔3に対する注湯孔3の位置合わせを行う。ステップS24の内容については後述する。ステップS25では、開孔制御部115が、先端部33の中心位置を注湯孔3の中心位置に合わせた状態を維持したまま、第一深さよりも深い第二深さまで先端部33を挿入するように搬送装置10を制御する。
【0082】
次に、制御システム100は、図10に示すように、ステップS31,S32,S33を実行する。ステップS31では、開孔制御部115が、酸素ランスパイプ30の燃焼熱による注湯孔3の開孔を待機する。例えば開孔制御部115は、開孔のために予め定められた開孔時間が経過するのを待機する。開孔制御部115は、重量センサ45による検出結果に基づいて、注湯孔3の開孔によりタンディッシュ6の重量増加が始まるのを待機してもよい。開孔制御部115は、注湯孔3からの出湯状態を検出可能なカメラ等により、注湯孔3からの出湯が開始されるのを待機してもよい。
【0083】
ステップS32では、開孔制御部115が、注湯孔3から酸素ランスパイプ30を抜去するように搬送装置10を制御する。例えば開孔制御部115は、注湯孔3に酸素ランスパイプ30を挿入する前における上記第二目標位置及び第二目標位置までランス保持部11を変位させるように搬送装置10を制御する。ステップS33では、開孔制御部115が、注湯孔3の下から酸素ランスパイプ30を退避させるように搬送装置10を制御する。
【0084】
次に、制御システム100はステップS34,S35,S36,S37を実行する。ステップS34では、開閉制御部111が、ゲート4を閉じて注湯孔3からの出湯を一時停止させる。ステップS35では、ノズル搬送制御部113が、第二搬送装置20により退避位置P2から取付位置P1にノズル5を搬送させる。ステップS36では、開閉制御部111が、ゲート4を開いて注湯孔3からの出湯を再開させる。ステップS37では、ランス交換制御部118が、使用済みの酸素ランスパイプ30をゲート4に配置ように搬送装置10を制御し、ラック44に収容された未使用の酸素ランスパイプ30をランス保持部11に保持させるように搬送装置10を制御する。以上で酸素開口手順が完了する。
【0085】
(位置調節手順)
図11は、ステップS24における酸素ランスパイプ30の位置調節手順を例示するフローチャートである。図11に示すように、制御システム100は、まずステップS41,S42を実行する。ステップS41では、酸素ランスパイプ30が注湯孔3の内面に接触するまで、開孔制御部115が水平な第一方向にランス保持部11を変位させるように搬送装置10を制御する。ステップS42では、開孔制御部115が、ランス保持部11の現在位置及び現在姿勢に基づいて、先端部33の中心位置P21を算出する(図12参照)。
【0086】
次に、制御システム100はステップS43,S44を実行する。ステップS43では、酸素ランスパイプ30が注湯孔3の内面に接触するまで、開孔制御部115が水平な第二方向にランス保持部11を変位させるように搬送装置10を制御する。ステップS44では、開孔制御部115が、ランス保持部11の現在位置及び現在姿勢に基づいて、先端部33の中心位置P22を算出する。
【0087】
次に、制御システム100はステップS45,S46を実行する。ステップS45では、酸素ランスパイプ30が注湯孔3の内面に接触するまで、開孔制御部115が水平な第三方向にランス保持部11を変位させるように搬送装置10を制御する。ステップS46では、開孔制御部115が、ランス保持部11の現在位置及び現在姿勢に基づいて、先端部33の中心位置P23を算出する。
【0088】
次に、制御システム100は、ステップS47,S48を実行する。ステップS47では、開孔制御部115が、算出済みの中心位置P21,P22,P23に基づいて、注湯孔3の中心位置CPを算出する。例えば開孔制御部115は、中心位置P21,P22,P23までの距離が互いに等しくなる位置を中心位置CPとして算出する。ステップS48では、開孔制御部115が、注湯孔3の中心位置に先端部33の中心位置を合わせるように搬送装置10を制御する。以上で酸素ランスパイプ30の位置調節手順が完了する。
【0089】
〔まとめ〕
以上の実施形態は、以下の構成を含む。
(1) 酸素を導く酸素ランスパイプの先端部を、溶鋼の取鍋2の下に設けられた注湯孔3と、注湯孔3から離れて位置する熱源により加熱される位置とに配置するように酸素ランスパイプを搬送する搬送装置10と、先端部を熱源により加熱される位置に配置して着火させるように搬送装置10を制御する着火制御部114と、着火済みの先端部を注湯孔3内に配置して、閉塞された注湯孔3を開孔させるように搬送装置10を制御する開孔制御部115と、を備える酸素開孔装置8。
閉塞された注湯孔3の開孔が適時に行われないと、取鍋2内の溶鋼が排出されないまま凝固し、取鍋2内の全溶鋼及び取鍋2を廃棄せざるを得ない場合もある。このため、注湯孔3の開孔作業は重要な作業である。これに対し、本装置によれば、予め着火された酸素ランスパイプが注湯孔3に挿入される。このため、注湯孔3内における着火を待つことなく、注湯孔3内における酸素ランスパイプの燃焼継続によって注湯孔3の開孔が適時に行われる。従って、注湯孔3内の残存熱量に影響されることなく、注湯孔3を高い信頼性で適時に開孔させることができる。
【0090】
(2) 着火制御部114は、取鍋2外に貯留された溶鋼を熱源として、熱源により加熱される位置に先端部を配置するように搬送装置10を制御する、(1)記載の酸素開孔装置8。
溶鋼の熱を先端部の着火に有効活用することで、装置構成の簡素化を図ることができる。
【0091】
(3) 取鍋2の周囲に配置される着火装置41を更に備え、着火制御部114は、着火装置41を熱源として、熱源により加熱される位置に先端部を配置するように搬送装置10を制御する、(1)記載の酸素開孔装置8。
溶鋼の貯留量が少なく、先端部を溶鋼内に配置し難い状況においても、先端部を着火させることができる。
【0092】
(4) 注湯孔3の下には、注湯孔3から出た溶鋼を案内するノズル5が取り付けられ、開孔制御部115は、着火済みの先端部を上に向け、ノズル5の隣の待機位置P11に配置し、ノズル5の取外し後に注湯孔3内に配置するように搬送装置10を制御する、(1)~(3)のいずれか一項記載の酸素開孔装置8。
ノズル5の取外し後に、酸素ランスパイプを注湯孔3に迅速に挿入し、注湯孔3をより迅速に開孔させることができる。
【0093】
(5) 注湯孔3から出た溶鋼を案内するノズル5を、注湯孔3の下の取付位置と、取付位置から退避した退避位置との間で搬送する第二搬送装置20を更に備える、(1)~(4)のいずれか一項記載の酸素開孔装置8。
ノズル5に対する作業と、酸素ランスパイプに対する作業とを並行して行うことができる。従って、注湯孔3をより迅速に開孔させることができる。
【0094】
(6) 注湯孔3を開閉するゲート4の状態と、ノズル5により案内された溶鋼を収容するタンディッシュ6の重量変化とに基づいて、注湯孔3の閉塞を検出する閉塞検出部を更に備え、着火制御部114は、閉塞検出部により注湯孔3の閉塞が検出された後、第二搬送装置20が取付位置からノズル5を退避させる前に、先端部を熱源に配置するように搬送装置10を制御する、(5)記載の酸素開孔装置8。
先端部を着火させる作業と、ノズル5を退避させる作業とを並行して行うことで、閉塞の検出から開孔までの時間を更に短縮することができる。
【0095】
(7) 開孔制御部115は、第二搬送装置20が取付位置からノズル5を退避させる前に、着火済みの先端部を上に向け、ノズル5の隣の待機位置P11に配置し、第二搬送装置20が取付位置からノズル5を退避させた後に、着火済みの先端部を注湯孔3内に配置するように搬送装置10を制御する、(6)記載の酸素開孔装置8。
着火済みの酸素ランスパイプを、ノズル5の退避後により迅速に挿入することができる。
【0096】
(8) 取鍋2の外から注湯孔3の三次元データを取得するセンサ42と、センサ42により取得された三次元データに基づいて、注湯孔3の位置を検出する位置検出部116と、を更に備え、開孔制御部115は、位置検出部116により検出された注湯孔3の位置に基づいて、先端部を注湯孔3内に配置する、(1)~(7)のいずれか一項記載の酸素開孔装置8。
酸素ランスパイプを高い精度で注湯孔3に挿入することができる。
【0097】
(9) 着火済みの先端部の画像データを取得する第二センサ43と、第二センサ43により取得された画像データに基づいて、先端部の燃焼が継続しているか否かを検出する燃焼検出部117と、を更に備え、着火制御部114は、燃焼検出部117により先端部の燃焼が継続していないことが検出された場合に、先端部を熱源により加熱される位置に再配置するように搬送装置10を制御する、(8)記載の酸素開孔装置8。
先端部が着火済みの状態で酸素ランスパイプを挿入することをより確実に実行することができる。
【0098】
(10) 搬送装置10は、酸素ランスパイプを保持するランス保持部11と、取鍋2の下の周囲に固定された基部12と、ランス保持部11を基部12に連結し、基部12に対するランス保持部11の位置及び姿勢を変更する多関節アーム13と、を有する、(1)~(9)のいずれか一項記載の酸素開孔装置8。
着火と開孔という二種類の作業を一装置で簡単に実現することができる。
【0099】
(11) ランス保持部11に設けられた力センサ16を更に備え、開孔制御部115は、力センサ16による検出結果に基づいて、注湯孔3内への先端部の推進力を制限しながら、先端部を注湯孔3内に挿入するように搬送装置10を制御する、(10)記載の酸素開孔装置8。
注湯孔3内のライニングが、酸素ランスパイプとの衝突により破損することを容易に回避することができる。
【0100】
(12) 開孔制御部115は、先端部を注湯孔3内の第一深さまで挿入した状態にて、注湯孔3の内面の複数箇所に先端部を接触させるように搬送装置10を制御し、複数箇所に接触する際の先端部の位置に基づいて注湯孔3の中心位置を算出し、注湯孔3の中心位置に先端部の中心位置を合わせるように搬送装置10を制御し、第一深さよりも深い第二深さまで先端部を挿入するように搬送装置10を制御する、(10)又は(11)記載の酸素開孔装置8。
先端部が第一深さまで挿入された状態にて、先端部の中心位置を注湯孔3の中心位置に合わせることで、先端部が第二深さに到達するまでの過程におけるライニングの破損等をより確実に回避することができる。
【0101】
(13) 取鍋2の下から離れた位置にて、複数の酸素ランスパイプを収容するラック44と、使用済みの酸素ランスパイプをラック44に配置ように搬送装置10を制御し、ラック44に収容された未使用の酸素ランスパイプをランス保持部11に保持させるように搬送装置10を制御するランス交換制御部118と、を更に備える、(10)~(12)のいずれか一項記載の酸素開孔装置8。
ランス保持部11への酸素ランスパイプの付け替えも自動化することで、酸素開孔作業の更なる省力化を図ることができる。
【符号の説明】
【0102】
2…取鍋、3…注湯孔、4…ゲート、5…ノズル、6…タンディッシュ、8…酸素開孔装置、10…搬送装置、11…ランス保持部、12…基部、13…多関節アーム、41…着火装置、42…センサ、43…第二センサ、P11…待機位置、16…力センサ、44…ラック、20…第二搬送装置、114…着火制御部、115…開孔制御部、116…位置検出部、117…燃焼検出部、118…ランス交換制御部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
【手続補正書】
【提出日】2023-05-24
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸素を導く酸素ランスパイプの先端部を、溶鋼の取鍋の下に設けられた注湯孔と、前記注湯孔から離れて位置する熱源により加熱される位置とに配置するように前記酸素ランスパイプを搬送する搬送装置と、
前記注湯孔から出た溶鋼を案内するノズルを、前記注湯孔の下の取付位置と、前記取付位置から退避した退避位置との間で搬送する第二搬送装置と、
前記先端部を前記熱源により加熱される位置に配置して着火させるように前記搬送装置を制御する着火制御部と、
前記第二搬送装置が前記ノズルを前記取付位置から退避させた状態にて、着火済みの前記先端部を前記注湯孔内に配置して、閉塞された前記注湯孔を開孔させるように前記搬送装置を制御する開孔制御部と、
を備える酸素開孔装置。
【請求項2】
前記着火制御部は、前記取鍋外に貯留された溶鋼を前記熱源として、前記熱源により加熱される位置に前記先端部を配置するように前記搬送装置を制御する、
請求項1記載の酸素開孔装置。
【請求項3】
前記取鍋の周囲に配置される着火装置を更に備え、
前記着火制御部は、前記着火装置を前記熱源として、前記熱源により加熱される位置に前記先端部を配置するように前記搬送装置を制御する、
請求項1記載の酸素開孔装置。
【請求項4】
前記注湯孔の下には、前記注湯孔から出た溶鋼を案内するノズルが取り付けられ、
前記開孔制御部は、着火済みの前記先端部を上に向け、前記ノズルの隣の待機位置に配置し、前記ノズルの取外し後に前記注湯孔内に配置するように前記搬送装置を制御する、
請求項1~3のいずれか一項記載の酸素開孔装置。
【請求項5】
前記注湯孔を開閉するゲートの状態と、前記ノズルにより案内された溶鋼を収容するタンディッシュの重量変化とに基づいて、前記注湯孔の閉塞を検出する閉塞検出部を更に備え、
前記着火制御部は、前記閉塞検出部により前記注湯孔の閉塞が検出された後、前記第二搬送装置が前記取付位置から前記ノズルを退避させる前に、前記先端部を前記熱源に配置するように前記搬送装置を制御する、
請求項1~3のいずれか一項記載の酸素開孔装置。
【請求項6】
前記開孔制御部は、
前記第二搬送装置が前記取付位置から前記ノズルを退避させる前に、着火済みの前記先端部を上に向け、前記ノズルの隣の待機位置に配置し、
前記第二搬送装置が前記取付位置から前記ノズルを退避させた後に、着火済みの前記先端部を前記注湯孔内に配置するように前記搬送装置を制御する、
請求項記載の酸素開孔装置。
【請求項7】
前記取鍋の外から前記注湯孔の三次元データを取得するセンサと、
前記センサにより取得された前記三次元データに基づいて、前記注湯孔の位置を検出する位置検出部と、を更に備え、
前記開孔制御部は、前記位置検出部により検出された前記注湯孔の位置に基づいて、前記先端部を前記注湯孔内に配置する、
請求項1~3のいずれか一項記載の酸素開孔装置。
【請求項8】
着火済みの前記先端部の画像データを取得する第二センサと、
前記第二センサにより取得された前記画像データに基づいて、前記先端部の燃焼が継続しているか否かを検出する燃焼検出部と、を更に備え、
前記着火制御部は、前記燃焼検出部により前記先端部の燃焼が継続していないことが検出された場合に、前記先端部を前記熱源により加熱される位置に再配置するように前記搬送装置を制御する、
請求項記載の酸素開孔装置。
【請求項9】
前記搬送装置は、
前記酸素ランスパイプを保持するランス保持部と、
前記取鍋の下の周囲に固定された基部と、
前記ランス保持部を前記基部に連結し、前記基部に対する前記ランス保持部の位置及び姿勢を変更する多関節アームと、
を有する、
請求項1~3のいずれか一項記載の酸素開孔装置。
【請求項10】
前記ランス保持部に設けられた力センサを更に備え、
前記開孔制御部は、前記力センサによる検出結果に基づいて、前記注湯孔内への前記先端部の推進力を制限しながら、前記先端部を前記注湯孔内に挿入するように前記搬送装置を制御する、
請求項記載の酸素開孔装置。
【請求項11】
前記開孔制御部は、
前記先端部を前記注湯孔内の第一深さまで挿入した状態にて、前記注湯孔の内面の複数箇所に前記先端部を接触させるように前記搬送装置を制御し、
前記複数箇所に接触する際の前記先端部の位置に基づいて前記注湯孔の中心位置を算出し、
前記注湯孔の中心位置に前記先端部の中心位置を合わせるように前記搬送装置を制御し、
前記第一深さよりも深い第二深さまで前記先端部を挿入するように前記搬送装置を制御する、
請求項記載の酸素開孔装置。
【請求項12】
前記取鍋の下から離れた位置にて、複数の酸素ランスパイプを収容するラックと、
使用済みの前記酸素ランスパイプを前記ラックに配置するように前記搬送装置を制御し、前記ラックに収容された未使用の酸素ランスパイプを前記ランス保持部に保持させるように前記搬送装置を制御するランス交換制御部と、
を更に備える、
請求項記載の酸素開孔装置。