(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024104939
(43)【公開日】2024-08-06
(54)【発明の名称】セラミックスサセプタ
(51)【国際特許分類】
H01L 21/683 20060101AFI20240730BHJP
H01L 21/3065 20060101ALN20240730BHJP
【FI】
H01L21/68 R
H01L21/302 101G
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023009393
(22)【出願日】2023-01-25
(71)【出願人】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114258
【弁理士】
【氏名又は名称】福地 武雄
(74)【代理人】
【識別番号】100125391
【弁理士】
【氏名又は名称】白川 洋一
(74)【代理人】
【識別番号】100208605
【弁理士】
【氏名又は名称】早川 龍一
(72)【発明者】
【氏名】市川 佳孝
(72)【発明者】
【氏名】傳井 美史
(72)【発明者】
【氏名】北林 徹夫
(72)【発明者】
【氏名】下嶋 浩正
【テーマコード(参考)】
5F004
5F131
【Fターム(参考)】
5F004AA16
5F004BB13
5F004BB18
5F004BB22
5F004BB25
5F004BB26
5F004BB29
5F131AA02
5F131BA19
5F131CA02
5F131CA32
5F131EA03
5F131EB11
5F131EB12
5F131EB78
5F131EB82
(57)【要約】
【課題】低温下、高出力での半導体製造プロセスに使用することができるセラミックスサセプタを提供する。
【解決手段】セラミックスサセプタ100であって、載置面を有し、SiCを主成分とするセラミックス焼結体により形成された基材10と、前記基材10に埋設された少なくとも1つの電極20と、を備え、前記基材10の体積抵抗率は、20℃で10
8Ωcmより大きく、-30℃で10
9Ωcmより大きい。これにより、基材の低温下での電気絶縁性を確保することができ、低温下、高出力での半導体製造プロセスにおいて電極が埋設されたサセプタの機能を発揮させることができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミックスサセプタであって、
載置面を有し、SiCを主成分とするセラミックス焼結体により形成された基材と、
前記基材に埋設された少なくとも1つの電極と、を備え、
前記基材の体積抵抗率は、20℃で108Ωcmより大きく、-30℃で109Ωcmより大きいことを特徴とするセラミックスサセプタ。
【請求項2】
前記電極は、静電吸着用電極であることを特徴とする請求項1に記載のセラミックスサセプタ。
【請求項3】
前記電極は、ヒーター用電極であることを特徴とする請求項1に記載のセラミックスサセプタ。
【請求項4】
前記電極は、高周波用電極であることを特徴とする請求項1に記載のセラミックスサセプタ。
【請求項5】
前記電極は、表面に絶縁層が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のセラミックスサセプタ。
【請求項6】
前記電極は、W、Moまたはこれらを主成分とする合金からなり、
前記絶縁層は、融点が2200℃以上の窒化物または酸化物により形成されることを特徴とする請求項5に記載のセラミックスサセプタ。
【請求項7】
前記基材は、内部に媒体流路が設けられていることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載のセラミックスサセプタ。
【請求項8】
前記基材のSiCの純度は、99.91wt%以上であることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載のセラミックスサセプタ。
【請求項9】
前記基材のSiCの純度は、99.91wt%以上であることを特徴とする請求項7に記載のセラミックスサセプタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミックスサセプタに関する。
【背景技術】
【0002】
近年の半導体の微細化に伴い、半導体製造プロセスでの微細加工の要求が高まってきている。例えば、エッチングプロセスにおいては、溝幅が狭く、溝深さが深いシャロートレンチ構造の高精細化要求が高まっている。これに対応するために、ラジカルによる等方性エッチングを抑制し、イオンによる異方性エッチングを主とするため低温下(0℃以下)でのプロセスが検討されてきた。
【0003】
特許文献1は、処理室内にてサセプタ上に静電チャック手段により吸着保持され冷却された被処理体を所定の処理ガスの反応プラズマによりプラズマ処理するための低温処理装置を制御するにあたり、前記被処理体を前記静電チャック手段の吸着面に載置し、前記被処理体と前記静電チャック手段との接触面に伝熱ガスを供給し、それから所定時間経過後に、処理室内に導入された処理ガスをプラズマ化することを特徴とする低温処理装置の制御方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
低温下ではエッチングレートが低下しスループットが上がらないため、高出力化(大熱量化)する必要があった。しかしながら、高出力化に伴い処理する基板に入射される熱量が増大するため、この大熱量を吸熱し基板を低温に維持することが困難であった。
【0006】
サセプタに伝熱された熱量は、サセプタの内部を熱伝導するため、サセプタを構成する素材の熱伝導率が吸熱に影響する。すなわち、吸熱には熱伝導率の大きい素材が有効であり、例えば、SiCやAlNなどが検討されてきた。しかしながら、SiCは熱伝導率は高いものの、体積抵抗率が低く、電極が埋設されたサセプタの基材を構成する材料としては適用しにくい難点があった。
【0007】
特許文献1は、低パワー(100W以下の電力)下で基板を冷却できる静電チャックの制御方法が開示されているものの、入射熱量が大きいプロセスで使用できるものではない。そこで、低温下、かつ高出力の半導体製造プロセスでも使用できるサセプタが要望されてきた。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、低温下、高出力の半導体製造プロセスに使用できるセラミックスサセプタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)上記の目的を達成するため、本発明は、以下のような手段を講じた。すなわち、本発明の適用例のセラミックスサセプタは、セラミックスサセプタであって、載置面を有し、SiCを主成分とするセラミックス焼結体により形成された基材と、前記基材に埋設された少なくとも1つの電極と、を備え、前記基材の体積抵抗率は、20℃で108Ωcmより大きく、-30℃で109Ωcmより大きいことを特徴としている。
【0010】
このように、基材の体積抵抗率が20℃で108Ωcmより大きく、-30℃で109Ωcmより大きいことにより、基材の低温下での電気絶縁性を確保することができ、低温下、高出力での半導体製造プロセスにおいて電極が埋設されたサセプタの機能を発揮させることができる。
【0011】
(2)また、上記(1)の適用例のセラミックスサセプタにおいて、前記電極は、静電吸着用電極であることを特徴としている。
【0012】
本発明のセラミックスサセプタは、低温下での電気絶縁性が確保されているため、この構成によりセラミックスサセプタを低温下、高出力で使用できる静電チャックとして機能させることができる。特に、強い接触圧(吸着力)を発揮することができるジョンセン・ラーベック(JR)型静電チャックとして好適に使用することができる。
【0013】
(3)また、上記(1)の適用例のセラミックスサセプタにおいて、前記電極は、ヒーター用電極であることを特徴としている。
【0014】
本発明のセラミックスサセプタは、低温下での電気絶縁性が確保されているため、この構成によりセラミックスサセプタを低温下、高出力で使用できる基板温度調節、加熱用ヒーターとして機能させることができる。
【0015】
(4)また、上記(1)の適用例のセラミックスサセプタにおいて、前記電極は、高周波用電極であることを特徴としている。
【0016】
本発明のセラミックスサセプタは、低温下での電気絶縁性が確保されているため、この構成によりセラミックスサセプタを低温下、高出力で使用できるRF印加用基台として機能させることができる。
【0017】
(5)また、上記(1)から(4)のいずれかの適用例のセラミックスサセプタにおいて、前記電極は、表面に絶縁層が設けられていることを特徴としている。
【0018】
このように、電極の表面に絶縁層を設けることによって、不必要なリーク電流を抑制することができる。また、セラミックスサセプタの使用環境により基材の電気絶縁性が不十分になった場合であっても、不具合が生じる虞を低減できる。
【0019】
(6)また、上記(5)の適用例のセラミックスサセプタにおいて、前記電極は、W、Moまたはこれらを主成分とする合金からなり、前記絶縁層は、融点が2200℃以上の窒化物または酸化物により形成されることを特徴としている。
【0020】
これにより、電極に絶縁層が設けられたセラミックスサセプタを具体的に構成することができる。
【0021】
(7)また、上記(1)から(6)のいずれかの適用例のセラミックスサセプタにおいて、前記基材は、内部に媒体流路が設けられていることを特徴としている。
【0022】
これにより、セラミックスサセプタに媒体による加熱、冷却の機能を付与することができ、セラミックスサセプタの機能を拡充することができる。
【0023】
(8)また、上記(1)から(7)のいずれかの適用例のセラミックスサセプタにおいて、前記基材のSiCの純度は、99.91wt%以上であることを特徴としている。
【0024】
これにより、基材の体積抵抗率が20℃で108Ωcmより大きく、-30℃で109Ωcmより大きいセラミックスサセプタを具体的に構成することが容易になる。
【発明の効果】
【0025】
本発明のセラミックスサセプタによれば、低温下、高出力での半導体製造プロセスに使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明の実施形態に係るセラミックスサセプタの一例を示した模式的な断面図である。
【
図2】本発明の実施形態に係るセラミックスサセプタの変形例を示した模式的な断面図である。
【
図3】本発明の実施形態に係るセラミックスサセプタの変形例を示した模式的な部分断面図である。
【
図4】本発明の実施形態に係るセラミックスサセプタの変形例を示した模式的な断面図である。
【
図5】本発明の実施形態に係るセラミックスサセプタの上面の一例を示した模式図である。
【
図6】本発明の実施形態に係るセラミックスサセプタの変形例を示した模式的な断面図である。
【
図7】本発明の実施形態に係るセラミックスサセプタの上面の変形例を示した模式図である。
【
図8】(a)~(d)、それぞれセラミックスサセプタの製造方法の一段階を示した模式的な断面図である。
【
図9】(a)~(d)、それぞれセラミックスサセプタの製造方法の一段階を示した模式的な断面図である。
【
図10】セラミックスサセプタの製造方法の一段階を示した模式的な断面図である。
【
図11】実施例および比較例の製造条件および各種試験の結果を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
次に、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては同一の参照番号を付し、重複する説明は省略する。なお、構成図において、各構成要素の大きさは概念的に表したものであり、必ずしも実際の寸法比率を表すものではない。
【0028】
[実施形態]
(電極埋設部材の構成)
本発明の実施形態に係るセラミックスサセプタについて、
図1を参照して説明する。
図1は、本発明の実施形態に係るセラミックスサセプタの一例を示した模式的な断面図である。本発明の実施形態に係るセラミックスサセプタ100は、基材10、および少なくとも1つの電極20を備えている。
【0029】
基材10は、SiCを主成分とするセラミックス焼結体により形成されている。基材10は略円板状のほか、多角形板状または楕円板状などのさまざまな形状であってもよい。基材10は、上面12に形成される凸部等を除いて平板状である。基材10の上面12に後述するピン状凸部が形成されない場合、基材10の上面12は、基板を載置する所定の形状の平面または曲面(載置面)を形成する。
【0030】
基材10の体積抵抗率は、20℃で108Ωcmより大きく、-30℃で109Ωcmより大きい。これにより、基材10の低温下(0℃以下)での電気絶縁性を確保することができ、低温下、高出力での半導体製造プロセスにおいて電極20が埋設されたセラミックスサセプタの機能を発揮させることができる。
【0031】
セラミックスサセプタ100に伝熱された熱量は、セラミックスサセプタ100の内部を熱伝導するため、セラミックスサセプタ100を構成する素材の熱伝導率が吸熱に影響する。すなわち、熱伝導率の大きい素材が吸熱には有効である。よって、基材10の熱伝導率は、50W/mK以上であることが好ましく、100W/mK以上であることがより好ましい。
【0032】
SiCを主成分とするセラミックス焼結体とは、SiCの純度が98wt%以上であることをいう。基材のSiCの純度は、99.91wt%以上であることが好ましい。これにより、基材の体積抵抗率が20℃で108Ωcmより大きく、-30℃で109Ωcmより大きいセラミックスサセプタ100を具体的に構成することが容易になる。
【0033】
電極20は、基材10に埋設されている。電極20は、セラミックスサセプタ100の設計に応じた形状のものが埋設される。電極20は、W、Moまたはこれらを主成分とする合金からなることが好ましい。
【0034】
電極20は、静電吸着用電極であることが好ましい。本発明のセラミックスサセプタ100は、低温下での電気絶縁性が確保されているため、この構成によりセラミックスサセプタ100を低温下、高出力で使用できる静電チャックとして機能させることができる。
【0035】
基板に入射される大熱量を吸熱するには、例えば、基板とセラミックスサセプタ100の接触による熱伝達を高くすることが有効である。そのためには、セラミックスサセプタ100は強い接触圧(吸着力)を発揮することができるジョンセン・ラーベック(JR)型静電チャックとすることが好ましい。
【0036】
JR型静電チャックは、使用する温度でその体積抵抗率を一定の範囲に維持する必要がある。体積抵抗率が大きすぎるとJR効果が発揮されず、静電吸着力は小さくなり基板との熱伝達が悪化する。体積抵抗率が小さすぎると消費電流が大きくなり、基板と静電チャックに内蔵される静電吸着用電極間の電位差が維持できなくなり、静電吸着力が低下し基板との熱伝達が悪化する。そのため、セラミックスサセプタ100をJR型静電チャックとして使用する場合、体積抵抗率は、使用温度において109Ωcm以上1012Ωcm以下であることが好ましく、109Ωcm以上1011Ωcm以下であることがより好ましい。本発明のセラミックスサセプタ100は、使用温度における体積抵抗率が概ねこの範囲にあるため、JR型静電チャックとして好適に使用することができる。
【0037】
電極20は、ヒーター用電極であることが好ましい。本発明のセラミックスサセプタ100は、低温下での電気絶縁性が確保されているため、この構成によりセラミックスサセプタ100を低温下、高出力で使用できる基板温度調節、加熱用ヒーターとして機能させることができる。
【0038】
電極20は、高周波用電極であることが好ましい。本発明のセラミックスサセプタ100は、低温下での電気絶縁性が確保されているため、この構成によりセラミックスサセプタ100を低温下、高出力で使用できるRF印加用基台として機能させることができる。
【0039】
基材10は、2種類以上の異なる電極20が埋設されていてもよい。
図2は、本発明の実施形態に係るセラミックスサセプタの変形例を示した模式的な断面図である。
図2に示されるように、例えば、基材10に静電吸着用電極22とヒーター用電極24が埋設されることで、基板の静電吸着機能と温度調節、加熱用機能を発揮させることができ、半導体製造プロセスをより高機能なものにすることができる。基材10は、3種類の異なる電極20が埋設されていてもよい。
【0040】
図3は、本発明の実施形態に係るセラミックスサセプタの変形例を示した模式的な部分断面図である。
図3に示されるように、電極20は、表面に絶縁層28が設けられていることが好ましい。このように、電極20の表面に絶縁層28を設けることによって、不必要なリーク電流を抑制することができる。また、セラミックスサセプタ100の使用環境により基材10の電気絶縁性が不十分になった場合であっても、不具合が生じる虞を低減できる。絶縁層28は、5μm以上1000μm以下の厚さであることが好ましい。絶縁層28は、融点が2200℃以上の窒化物または酸化物により形成されることが好ましい。絶縁層28は、電極20の一部のみに設けられてもよい。また、電極20が複数ある場合、絶縁層28はその全てに設けられてもよいし、一部の電極20のみに設けられてもよい。
【0041】
絶縁層28は、例えば、Y2O3(融点2435℃)やLa2O3(融点2315℃)、BN(融点2700℃)で形成することができる。Y2O3およびLa2O3により形成される絶縁層28は、例えば、Y2O3またはLa2O3を溶媒に懸濁させて、埋設前の電極20をディップし、熱処理をすることで形成することが可能である。BNにより形成される絶縁層28は、例えば、BCl4とNH3を原料ガスとして2000℃以上で熱分解して、埋設前の電極20にコーティングする熱分解CVDによって形成することが可能である。
【0042】
図4は、本発明の実施形態に係るセラミックスサセプタの変形例を示した模式的な断面図である。
図5は、本発明の実施形態に係るセラミックスサセプタの上面の一例を示した模式図である。
図4は、
図5のAA線における断面を示している。
【0043】
図4および
図5に示されるように、基材10は、内部に媒体流路30を有することが好ましい。媒体流路30は、例えば、管状に形成される。媒体流路30は、基材10の垂直な断面において、電極20が埋設された層より基材10の下面14に近い位置にあることが好ましい。媒体流路30の幅は、1mm以上60mm以下であることが好ましい。媒体流路30の断面形状は、矩形に限られず、円形、楕円形、半円形、段差付きの形状など、製造可能な形状であればどのようなものでもよい。
【0044】
媒体流路30は、低温のチラーを循環する方式であることが好ましい。そのため、媒体流路30は、チラーを流入させる流入口および流出させる流出口が形成されることが好ましい。
【0045】
基材10に媒体流路30が形成される場合、基材10はセラミックス焼結体により一体的に形成されることが好ましい。基材10がセラミックス焼結体により一体的に形成されるとは、媒体流路30の天井部を形成するセラミックス焼結体と媒体流路30の底部を形成するセラミックス焼結体がセラミックスを含む接合材を用いてもしくは接合材を用いずに直接接合されていることをいう。これにより、基材10の機械的強度が高くなる。
【0046】
媒体流路30は、基材10を上面12から透視した形状で、基材10の中心16を中心とする略円環状の形状を含むことが好ましい。これにより、基材10表面の半径方向の温度分布を調整できる。略円環状とは、
図5のように円環状の円弧の一部がつながっていない形状および通常の円環状を含む。
図5の点線は、基材10を上面12から透視したときの媒体流路30の形状を示している。媒体流路30以外の透視される構造は省略している。
【0047】
図6は、本発明の実施形態に係るセラミックスサセプタの変形例を示した模式的な断面図である。
図7は、本発明の実施形態に係るセラミックスサセプタの上面の変形例を示した模式図である。
図6は、
図7のBB線における断面を示している。
【0048】
図6および
図7に示されるように、媒体流路30は、基材10を上面12から透視した形状で、基材10の中心16を中心とする同心円状に配置されることが好ましい。これにより、基材10の表面の半径方向の温度分布を細かく調整できる。同心円状に配置される略円環状の媒体流路30は、
図6および
図7のように2重であってもよいし、3重以上であってもよい。同心円状に配置される略円環状の媒体流路30は、
図7のように基材10の内部で連通していてもよいし、それぞれに流入口および流出口が形成されてもよい。また、隣接する媒体流路30の間隙の幅(隣接する媒体流路30の間隙に存在する基材10の幅)は、2mm以上であることが好ましい。また、隣接する媒体流路30の間隙の幅は、媒体流路30の幅の25%以上であることが好ましい。これにより、基材10の内部に媒体流路30を形成しても、基材10の強度を保つことができる。
【0049】
媒体流路30は、直線状の形状を含んでもよい。また、略円環状の媒体流路30と直線状の媒体流路30を組み合わせてもよい。略円環状の媒体流路30と直線状の媒体流路30は、連通していてもよい。
【0050】
セラミックスサセプタ100は、ピン状凸部を備えていてもよい。その場合、ピン状凸部は、基材10の上面12から上方に突出して複数形成される。ピン状凸部の形状は、円柱状、角柱状等の柱状、円錐状、角錐状等の錐状、円錐台状、角錐台状等の錐状の上部を切断した形状等から適宜選択される。
【0051】
ピン状凸部の配置は特に限定されない。既知の形態またはそれに類似する形態であればよく、例えば、同心円状、正方格子状、三角格子状など規則的な配置であってもよいし、局部的に疎密が生じているような不規則的な配置であってもよい。また、セラミックスサセプタ100の上面12の外周部には、ピン状凸部を囲むように環状凸部が配置されていてもよい。
【0052】
基材10にピン状凸部が形成される場合、複数のピン状凸部の上端は、全体として基板を載置する所定の形状の平面または曲面(載置面)を形成する。これによって、複数のピン状凸部は、基板を支持する。すなわち、複数のピン状凸部の上端により形成される載置面が決定される。これにより、複数のピン状凸部の上端と基板とが当接し、基板が支持される。なお、複数のピン状凸部のうち、上端が基板と当接しないものがあってもよい。これは、そのようなピン状凸部があっても、周りのピン状凸部の配置によっては、基板を支持することが可能だからである。ピン状凸部の上端は、全面が基板と当接していてもよいし、一部のみが基板と当接していてもよい。
【0053】
ピン状凸部の高さは、セラミックスサセプタ100の用途によって異なる。例えば、セラミックスサセプタ100を静電チャックとして適用する場合、5μm以上50μm以下であることが好ましい。また、例えば、セラミックスサセプタ100を基板の温度調節、加熱用ヒーターとして適用する場合、50μm以上1000μm以下であることが好ましい。なお、ピン状凸部の高さとは、基材10の上面12からピン状凸部の上端までの距離をいう。ピン状凸部の上端は、所定の大きさの平面になっていることが好ましい。その場合、ピン状凸部の上端の平面の最大径は、100μm以上5mm以下であることが好ましい。ピン状凸部の上端の平面の表面粗さは、Ra0.01μm以上1.6μm以下であることが好ましい。
【0054】
セラミックスサセプタ100は、必要に応じて端子50、51や端子穴52を備えていてもよい。また、セラミックスサセプタ100は、図示しないリフトピン孔や、真空チャックとして使用する場合の通気孔等を備えていてもよい。
【0055】
[セラミックスサセプタの製造方法]
次に、本発明の実施形態に係るセラミックスサセプタの製造方法を説明する。本発明の実施形態に係るセラミックスサセプタは、例えば、以下に説明する成形体ホットプレス法によって作製される。なお、セラミックスサセプタの製造方法は本方法に限られず、例えば、粉末ホットプレス法や従前のグリーンシート積層法等であってもよい。粉末ホットプレス法は、セラミックス原料粉と所定の発熱抵抗体や電極を交互に重ねることにより発熱抵抗体や電極をセラミックスの内部に埋設し、それを1軸ホットプレス焼成する方法である。
【0056】
本発明の実施形態に係るセラミックスサセプタの成形体ホットプレス法による製造方法は、セラミックス成形体形成工程、セラミックス脱脂体作製工程、積層体形成工程、積層体焼成工程、基材加工工程を備えている。
【0057】
セラミックス成形体形成工程では、例えば、SiC(炭化珪素)を主成分とするセラミックス原料粉から複数のセラミックス成形体を形成する。必要に応じて焼結助剤が添加されてもよい。例えば、SiCセラミックス原料粉に焼結助剤のB4C、C、バインダ、可塑剤、分散剤などの添加剤を適宜添加して混合して、スラリーを作製し、スプレードライ法等により造粒粉を造粒する。その後、造粒粉を加圧成形して複数のセラミックス成形体を形成することができる。
【0058】
原料となるセラミックス原料粉は、アチソン法により作製された原料粉やCVD法により作製された原料粉などが用いられる。これらの中でも、体積抵抗率を大きくしやすいCVD法により作製された原料粉を用いることが好ましい。
【0059】
セラミックス原料粉は、高純度であることが好ましく、その純度は、好ましくは99%以上、より好ましくは99.9%以上である。また、セラミックス原料粉の平均粒径は、好ましくは0.1μm以上1.0μm以下である。
【0060】
混合方法は、湿式、乾式の何れであってもよく、例えばボールミル、振動ミルなどの混合器を用いることができる。成形方法としては、例えば、一軸加圧成形や冷間静水等方圧加圧(CIP:Cold Isostatic Pressing)法などの公知の方法を用いればよい。なお、セラミックス成形体を形成する方法は、加圧成形に限らず、例えば、グリーンシート積層、または鋳込み成形であっても適用が可能であり、これらを適宜脱脂、またはさらに仮焼する工程により、セラミックス成形体を製造することができる。
【0061】
セラミックス成形体は、成形後、機械加工により成形体の形状が整えられてもよい。また、セラミックス成形体の片面または両面(他のセラミックス成形体との接合面)に、電極、ビア、配線等の形状に合わせた形状の溝が形成されてもよい。機械加工は、脱脂後に行なってもよい。
【0062】
セラミックス脱脂体作製工程では、複数のセラミックス成形体を所定の温度以上、所定の時間以上脱脂処理して複数のセラミックス脱脂体を作製する。
【0063】
セラミックス成形体は、例えば、500℃以上900℃以下の温度で熱処理され、セラミックス脱脂体となる。脱脂時間は、1時間以上120時間以下であることが好ましい。脱脂には、大気炉または窒素雰囲気炉を用いることができるが、バインダの有機成分を除去するために、大気炉の方が好ましい。
【0064】
積層体形成工程では、1または複数の電極および必要な場合、ビアの材料、配線を準備し、これらと複数のセラミックス脱脂体を組み合わせ、平板状に形成された積層体を形成する。
図8(a)~(d)は、それぞれセラミックスサセプタの製造工程の一段階を示す模式的な断面図である。
図8(a)は、上面が載置面となるセラミックス脱脂体101、電極20、電極20が配置される凹部が形成されたセラミックス脱脂体102の断面を示している。
図8(b)は、セラミックス脱脂体101、電極20、およびセラミックス脱脂体102が組み合わされて1の積層体110が形成されている。
図8は、2つのセラミックス脱脂体を用いて積層体110を作製しているが、セラミックス脱脂体の数は、セラミックスサセプタの設計に応じて3以上でもよい。電極、ビアの材料、配線はモリブデンやタングステンなどの箔、薄板、ワイヤー、メッシュまたはこれら材質の多孔体、ペースト充填、印刷により形成される。
【0065】
電極20は、セラミックスサセプタの設計に応じた形状に加工されたものを準備する。電極の形状は、メッシュ状や箔状など、様々な形状とすることができる。また、材質も、モリブデン、タングステンなど、様々な材質とすることができる。
【0066】
積層体焼成工程では、形成された積層体110を、積層方向に一軸加圧焼成して基材を形成する。焼成条件のうち、加圧する力は4MPa以上であることが好ましい。また、焼成温度は、2000℃以上2200℃以下であることが好ましい。焼成時間は、1時間以上12時間以下であることが好ましく、1時間以上5時間以下であることがより好ましい。焼成雰囲気は、例えば、窒素や不活性ガス雰囲気であるが、真空などの雰囲気であってもよい。また、真空雰囲気の後に不活性ガス雰囲気とすることでもよい。これにより、それぞれの積層体で1または複数のセラミックス脱脂体が焼結してセラミックス焼結体となり、これらが一体化され、基材を得ることができる。
図8(c)は、基材加工前の基材の断面を示している。
【0067】
基材加工工程では、基材の外形の加工をする。また、必要な場合、ピン状凸部等を形成する。また、下面の所定の位置に端子を接続するための端子穴の穿設を行なう。
【0068】
そして、端子穴にロウ材等で端子を接続する。端子は、Ni等を用いることができる。また、ロウ材はAuロウ等を用いることができる。
図8(d)は、端子を接続した基材の断面を示している。
【0069】
なお、セラミックス脱脂体作製工程と、積層体形成工程との間に、セラミックス仮焼体作製工程を設けてもよい。セラミックス仮焼体作製工程を設ける場合、セラミックス脱脂体を所定の温度で仮焼してセラミックス仮焼体を作製する。これにより、セラミックスサセプタの寸法精度をより高くすることができる。仮焼温度は1200℃以上1900℃以下であることが好ましい。仮焼時間は、0.5時間以上12時間以下であることが好ましい。仮焼雰囲気は、窒素や不活性ガス雰囲気であることが好ましいが、真空などの雰囲気であってもよい。仮焼体作製工程を設ける場合、機械加工は仮焼体作製工程の後に行なってもよい。
【0070】
このようにして、低温下、高出力での半導体製造プロセスに使用できる電極が埋設されたセラミックスサセプタを製造することができる。
【0071】
[セラミックスサセプタの製造方法の変形例]
次に、本発明のセラミックスサセプタの製造方法の変形例を説明する。本発明の実施形態に係る媒体流路を備えるセラミックスサセプタの成形体ホットプレス法による製造方法は、セラミックス成形体形成工程、セラミックス脱脂体作製工程、積層体形成工程、積層体焼成工程、基材前駆体加工工程、基材前駆体接合工程、および基材加工工程を備えている。セラミックス成形体形成工程、セラミックス脱脂体作製工程、および基材加工工程は、上記と同様であるため、説明を省略する。
【0072】
積層体形成工程では、1または複数の電極および必要な場合、ビアの材料、配線を準備し、これらと複数のセラミックス脱脂体を組み合わせ、平板状に形成された1または複数の積層体を形成する。
図9(a)~(d)および
図10は、それぞれセラミックスサセプタの製造工程の一段階を示す模式的な断面図である。
図9(a)は、上面が載置面となるセラミックス脱脂体101、電極20、電極20が配置される凹部が形成され、下面が媒体流路の天井部となるセラミックス脱脂体102、媒体流路の一部となる溝105が形成されるセラミックス脱脂体103の断面を示している。
図9(b)は、セラミックス脱脂体101、電極20、およびセラミックス脱脂体102が組み合わされて1の積層体110が形成されている。また、セラミックス脱脂体103のみから1の積層体110が形成されている。積層体110は、1のセラミックス脱脂体からなるものがあってもよい。
【0073】
積層体焼成工程では、形成された積層体を、それぞれ積層方向に一軸加圧焼成して1または複数の基材前駆体を形成する。焼成条件は、上記と同様である。複数の基材前駆体とは、例えば、電極が埋設された基材前駆体、媒体流路の蓋となる基材前駆体、媒体流路の一部が形成される基材前駆体などである。
【0074】
基材前駆体加工工程では、1または複数の基材前駆体に対し、それぞれ必要な加工を行う。例えば、接合後媒体流路となる溝の形成をする。
図9(c)は、基材前駆体122に接合後媒体流路となる溝105が形成された断面を示している。
図9では、溝105に他の基材前駆体121が蓋をすることで媒体流路が形成されているが、2つの基材前駆体にそれぞれ形成された溝が組み合わさって媒体流路が形成されてもよい。このような方法によると、様々な形状の媒体流路を形成することができる。
【0075】
基材前駆体接合工程では、複数の基材前駆体を接合して、基材を作製する。接合は、接合材を用いた接合方法、および接合材を用いない接合方法のいずれかを用いることができる。
図9(d)は、接合後の基材を示している。
【0076】
最初に接合材を用いた接合方法を説明する。まず、接合材を準備し、基材前駆体の接合する側の端面の少なくとも一方に接合材を塗布する。基材前駆体の接合する側の端面は、表面粗さRaを1.6μm以下にすることが好ましく、0.4μm以下に研磨することがより好ましい。塗布する接合材の厚さは、5μm以上30μm以下であることが好ましい。
【0077】
次に、複数の基材前駆体を配置し、基板載置面に垂直方向に加圧しつつ加熱する。接合条件のうち加圧する力は、5kPa以上であることが好ましい。また、加熱温度は、1500℃以上1800℃以下であることが好ましい。加熱時間は、0.5時間以上5時間以下であることが好ましい。加熱雰囲気は、例えば、窒素や不活性ガス雰囲気であるが、真空などの雰囲気であってもよい。これにより、複数の基材前駆体を接合することができる。
【0078】
接合材は、基材前駆体同士を接合できればどのようなものであってもよい。例えば、基材前駆体と同一の主成分であるSiC粉末にB4C粉末を少なくとも含む混合粉末のペーストであってもよい。また、SiCを90wt%以上含み、必要に応じて接合時融液となる温度を調節するためにSiやBを含むペーストであってもよい。
【0079】
次に、接合材を用いない接合方法を説明する。まず、複数の基材前駆体を配置する。基材前駆体の接合する側の端面は、表面粗さRaを0.1μm以下に研磨することが好ましい。次に、基板載置面に垂直方向に加圧しつつ加熱する。接合条件のうち、加圧する力は、4MPa以上であることが好ましい。また、加熱温度は、1600℃以上2000℃以下であることが好ましい。加熱時間は、0.5時間以上6時間以下であることが好ましい。加熱雰囲気は、例えば、窒素や不活性ガス雰囲気であるが、真空などの雰囲気であってもよい。これにより、複数の基材前駆体を接合することができる。
【0080】
また、上述した方法では、基材前駆体をセラミックス焼結体で形成して、それらを接合して基材としたが、基材前駆体をセラミックス仮焼体で形成して、それらを接合しつつ焼結させて基材を作製してもよい。また、媒体流路等の構造が単純な場合は、セラミックス脱脂体を加工して、積層、焼結して基材を作製することもできる。媒体流路等の構造が複雑な場合や媒体流路に外部から連通する流路を設ける場合、媒体流路の寸法精度を高くする場合は、セラミックス焼結体を接合する方法のほうが好ましい。
【0081】
このようにして、低温下、高出力での半導体製造プロセスに使用できる電極が埋設され媒体流路が形成されたセラミックスサセプタを製造することができる。
【0082】
[実施例および比較例]
(実施例1)
実施例1は、静電吸着用電極が埋設されたセラミックスサセプタの実施例である。基材の原料は、アチソン法で作製されたSiC原料粉(純度99.9wt%)を使用した。SiC原料粉に、焼結助剤としてB4Cを内割で0.1wt%添加し、バインダ、分散剤などを適宜添加して混合して、スラリーを作製し、スプレードライ法により造粒粉を造粒した。
【0083】
次に、造粒粉を静水圧成形し、成形後Φ320mm、厚さt10mmの円板状の成形体とΦ320mm、厚さt20mmの円板状の成形体に加工した。また、厚さt20mmの成形体の片面にΦ294mm深さ0.15mmの凹部を形成した。電極は、半径146mmの半円板の形状に加工したMoメッシュ(線径0.1mm、#50メッシュ、平織)を2つ組み合わせて用いた。電極は、外径がおよそΦ294mmの範囲に収まる形状とした。
【0084】
次に、厚さt20mmの成形体の凹部に電極を配置し、厚さt10mmの成形体と組み合わせて積層体を形成した。次に、積層体を真空雰囲気で1500℃で2時間熱処理後、Ar雰囲気、焼成温度2050℃、ホットプレス圧力4MPaでホットプレス焼成した。焼成時間は、3時間とした。焼成後、外径をΦ300mm、上面から電極までの距離(厚み)を1mmとし、上面をRa0.2μmに研磨加工した。また、電極まで止まり穴を形成し、コバール製の端子をBag-8ロウ材で真空中、850℃でロウ付けした。このようにして、実施例1のセラミックスサセプタを作製した。また、同一の造粒粉を使用し、同一の焼成条件でΦ60mm、厚さt10mmの円板状の実施例1の試験用試料を作製した。
【0085】
(実施例2)
実施例2は、焼成雰囲気をN2添加Ar雰囲気(N2/Ar流量比=0.03)とした。それ以外は、実施例1と同様の条件で実施例2のセラミックスサセプタを作製した。また、同一の造粒粉を使用し、同一の焼成条件で実施例2の試験用試料を作製した。
【0086】
(実施例3)
実施例3は、焼結助剤を0.1wt%B4C+1wt%Cとして造粒粉を造粒した。また、焼成温度を2000℃、ホットプレス圧力を15MPaとした。それ以外は、実施例1と同様の条件で実施例3のセラミックスサセプタを作製した。また、同一の造粒粉を使用し、同一の焼成条件で実施例3の試験用試料を作製した。
【0087】
(実施例4)
実施例4は、焼結助剤を0.3wt%B4C+2wt%Cとして造粒粉を造粒した。また、焼成温度を2100℃、ホットプレス圧力を15MPaとした。それ以外は、実施例1と同様の条件で実施例4のセラミックスサセプタを作製した。また、同一の造粒粉を使用し、同一の焼成条件で実施例4の試験用試料を作製した。
【0088】
(実施例5)
実施例5は、基材の原料をCVD法で作製されたSiC原料粉(純度99.9wt%)に変更した。また、焼結助剤を0.1wt%B4C+1wt%Cとして造粒粉を造粒した。また、ホットプレス圧力を15MPaとした。それ以外は、実施例1と同様の条件で実施例5のセラミックスサセプタを作製した。また、同一の造粒粉を使用し、同一の焼成条件で実施例5の試験用試料を作製した。
【0089】
(比較例1)
比較例1は、焼結助剤を0.1wt%B4C+5wt%Cとして造粒粉を造粒した。それ以外は、実施例1と同様の条件で比較例1のセラミックスサセプタを作製した。また、同一の造粒粉を使用し、同一の焼成条件で比較例1の試験用試料を作製した。
【0090】
(比較例2)
比較例2は、焼結助剤を0.3wt%B4Cとして造粒粉を造粒した。それ以外は、実施例1と同様の条件で比較例2のセラミックスサセプタを作製した。また、同一の造粒粉を使用し、同一の焼成条件で比較例2の試験用試料を作製した。
【0091】
(比較例3)
比較例3は、焼成温度を2200℃とした。それ以外は、実施例1と同様の条件で比較例3のセラミックスサセプタを作製した。また、同一の造粒粉を使用し、同一の焼成条件で比較例3の試験用試料を作製した。
【0092】
(体積抵抗率の測定)
実施例および比較例の試験用試料の体積抵抗率を3端子法(JIS C 2139-3)により測定した。試験用試料の厚みを2mmに加工し、Φ60mm×2mmtの測定物を準備した。電極はAgペーストを印刷して形成した。測定器(アドバンテスト社製R8340(超高抵抗計))を用いて、試験電圧500VDC、電圧印加後1分経過後の体積抵抗率を測定した。測定温度は、20℃(室温)、-20℃、-30℃、-50℃とした。0℃以下の測定は、測定物を冷却盤を備えた真空チャンバに載置して、排気後冷却盤により冷却して所定の温度になってから測定を開始した。
【0093】
(焼成後成分分析)
実施例および比較例の試験用試料に対し、GDMSによる微量成分分析とJIS G 1211-3(燃焼-赤外線吸収法)、JIS R 1616(ファインセラミックス用炭化けい素微粉末の化学分析方法)、JIS R 6124(炭化けい素質研削材の化学分析方法)に準拠してフリーカーボン分析を行った。Si、C以外の微量成分とフリーカーボンを総計し、100%より差し引いて各試験用試料のSiCの純度とした。
【0094】
(吸着力試験)
実施例および比較例のセラミックスサセプタを真空チャンバ内の冷却盤上に載置し、上面に基板(シリコンウェハ)を載置した。セラミックスサセプタは、真空排気後に所定の温度(-20℃、-30℃、-50℃)に冷却され、外部の電源より端子間に±500Vの電圧が印加された。基板に横方向からロードセルを押し当て基板が動き出す荷重を測定した。動き出す荷重が3000gf以上であれば十分な吸着力が発現しているものと評価した。
【0095】
図11は、実施例および比較例の製造条件および各種試験の結果を示す表である。実施例1~5は、体積抵抗率が20℃で10
8Ωcmより大きく、-30℃で10
9Ωcmより大きいことが確かめられた。一方、比較例1~3は、体積抵抗率が20℃で10
8Ωcmより小さく、-30℃で10
9Ωcmより小さいことが確かめられた。
【0096】
実施例および比較例から、ホウ素添加量が低いほど体積抵抗率は高く、高抵抗化には、ホウ素添加量は少ないほうがよいことが分かった。これは、ホウ素のSiC格子中への固溶に関係し、SiCバンド中にアクセプタレベルが形成されたためと推測される。また、N2を含有するAr雰囲気中で焼結を行うことにより、体積抵抗率の増加が認められた。これは、SiC格子中にNが侵入することによる影響と推測される。
【0097】
アチソン法によるSiC粉末を原料とする場合とCVD法によるSiC粉末を原料とする場合では、CVD法による原料粉末のほうが微細であり焼成後も相対的に微細な組織が残存し、多くの粒界が形成されるため体積抵抗率が高くなったと推測される。さらに、同等の純度(99.9wt%)であったとしても、アチソン法の粉体には比較的多くの不純物が含有されうることも、相対的にCVD法によるSiC粉末を原料とした場合のほうが高い体積抵抗率を有する原因であると推測される。
【0098】
実施例および比較例は、SiCの純度がいずれも98wt%以上であったが、実施例のほうが若干高い値を示す傾向にあった。SiCの純度が99.85wt%以上であった実施例1~5は、体積抵抗率が基準を満たしていたが、SiCの純度が同じく99.85wt%以上であった比較例2または3は、体積抵抗率が基準を満たさなかった。このことから、SiCの純度のみでは体積抵抗率は定まらず、セラミックスサセプタとしての性能を満たすかどうかは分からないことが確かめられた。一方、SiCの純度が99.91wt%未満であった実施例4は、SiCの純度が99.91wt%以上であった実施例1~3、5と比較して各温度における体積抵抗率が低い値を示す傾向にあった。このことから、体積抵抗率が基準を満たす場合、SiCの純度は99.91wt%以上であることが好ましいことが確かめられた。
【0099】
実施例1~5は、-20℃、-30℃、-50℃の全ての温度で十分な吸着力が発現していたが、比較例1は全ての温度で、比較例2および3は-20℃と-30℃で十分な吸着力が発現していなかった。これは、実施例1~5は、-20℃、-30℃、-50℃での体積抵抗率が109Ωcmより大きいことが理由であると推測される。
【0100】
実施例のセラミックスサセプタは、-20℃でも大きな体積抵抗率を示していたことから、本発明のセラミックスサセプタは、低温下(0℃以下)で静電チャックとして使用する場合、電流消費が抑制され、基板と電極間に十分な電位差が生じ、ジョンセン・ラーベック効果による強い吸着力が発現するものと期待される。
【0101】
以上により、本発明のセラミックスサセプタは、低温下、かつ高出力のプロセスでも使用できることが確かめられた。
【0102】
本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の思想と範囲に含まれる様々な変形および均等物に及ぶことはいうまでもない。また、各図面に示された構成要素の構造、形状、数、位置、大きさ等は説明の便宜上のものであり、適宜変更しうる。
【符号の説明】
【0103】
10 基材
12 上面
14 下面
16 中心
20 電極
22 静電吸着用電極
24 ヒーター用電極
28 絶縁層
30 媒体流路
50、51 端子
52 端子穴
100 セラミックスサセプタ
101、102、103 セラミックス脱脂体
105 溝
110 積層体
121、122 基材前駆体