(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024104945
(43)【公開日】2024-08-06
(54)【発明の名称】機械装置のトルク推定装置、機械装置、トルク推定方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
G01L 3/14 20060101AFI20240730BHJP
G01M 99/00 20110101ALI20240730BHJP
G01M 13/04 20190101ALN20240730BHJP
【FI】
G01L3/14 G
G01M99/00 A
G01M13/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023009402
(22)【出願日】2023-01-25
(71)【出願人】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】湯川 謹次
【テーマコード(参考)】
2G024
【Fターム(参考)】
2G024AC01
2G024AD04
2G024AD23
2G024BA11
2G024CA09
2G024CA12
2G024CA13
2G024DA09
2G024FA04
2G024FA06
(57)【要約】
【課題】トルクセンサを用いることなく、容易に軸受装置のトルクの推定が可能とする。
【解決手段】トルク推定装置であって、入力軸と、出力軸と、前記入力軸の回転を前記出力軸に伝達するための歯車とを含んで構成される機械装置における回転中の振動情報および回転速度情報を取得する取得手段と、前記振動情報および前記回転速度情報を用いて、前記歯車の噛み合いにより生じる振動に対応する所定の周波数における振動値を導出する導出手段と、前記導出手段にて導出した振動値に基づいて、前記入力軸のトルクを推定する推定手段と、を有する。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力軸と、出力軸と、前記入力軸の回転を前記出力軸に伝達するための歯車とを含んで構成される機械装置における回転中の振動情報および回転速度情報を取得する取得手段と、
前記振動情報および前記回転速度情報を用いて、前記歯車の噛み合いにより生じる振動に対応する所定の周波数における振動値を導出する導出手段と、
前記導出手段にて導出した振動値に基づいて、前記入力軸のトルクを推定する推定手段と、
を有するトルク推定装置。
【請求項2】
前記推定手段は、前記所定の周波数における振動値と、トルクとが予め対応付けて定義されたテーブルを用いて、トルクを推定する、ことを特徴とする請求項1に記載のトルク推定装置。
【請求項3】
前記機械装置は、1回転の間に回転速度が変化し、
前記導出手段は、前記振動情報を前記回転速度情報に基づいて、一定の回転速度とする変換を行った上で周波数を導出する、
ことを特徴とする請求項1に記載のトルク推定装置。
【請求項4】
請求項1に記載のトルク推定装置と、
前記入力軸と、前記出力軸と、前記歯車とを含む機構部と、
前記トルク推定装置にて推定されたトルクに基づいて、制御量を算出する制御量算出手段と、
前記制御量算出手段にて算出された制御量を用いて、前記機構部を制御する機構制御手段と、
を備える機械装置。
【請求項5】
前記機械装置は、風力発電装置である、請求項4に記載の機械装置。
【請求項6】
入力軸と、出力軸と、前記入力軸の回転を前記出力軸に伝達するための歯車とを含んで構成される機械装置における回転中の振動情報および回転速度情報を取得する取得工程と、
前記振動情報および前記回転速度情報を用いて、前記歯車の噛み合いにより生じる振動に対応する所定の周波数における振動値を導出する導出工程と、
前記導出工程にて導出した振動値に基づいて、前記入力軸のトルクを推定する推定工程と、
を有するトルク推定方法。
【請求項7】
コンピュータに、
入力軸と、出力軸と、前記入力軸の回転を前記出力軸に伝達するための歯車とを含んで構成される機械装置における回転中の振動情報および回転速度情報を取得する取得工程と、
前記振動情報および前記回転速度情報を用いて、前記歯車の噛み合いにより生じる振動に対応する所定の周波数における振動値を導出する導出工程と、
前記導出工程にて導出した振動値に基づいて、前記入力軸のトルクを推定する推定工程と、
を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機械装置のトルク推定装置、機械装置、トルク推定方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、風車などの機械装置では、その内部に設けられる軸受装置などの回転部品に対するトルクが適切な範囲内となるように制御することが求められる。例えば、トルクが必要以上に大きくなった場合、軸受装置やその内部の歯車の寿命低下や、不具合発生の原因となり得る。逆にトルクが必要以上に小さくなった場合、軸受装置にてスキッディングなどが発生する恐れが生じる。そのため、軸受装置などの回転部品に対するトルクを測定するための方法が求められている。
【0003】
一方、軸受装置の回転中に軸に対するトルクを計測することは困難である。トルクを検出するためにトルクセンサを用いることも可能であるが、トルクセンサを用いることで装置が煩雑になり、または、コストアップの要因ともなり得る。
【0004】
例えば、特許文献1では、転がり軸受の回転動作時において発生する振動を測定し、測定した振動から得られる周波数に基づいて荷重を演算する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、例えば風力発電装置のような比較的回転速度が遅い装置では、1回の回転が行われている最中にも回転速度が変化し得るが、回転速度が一定であることを前提とした特許文献1の技術では上記のような装置への適用には十分ではない可能性がある。
【0007】
上記課題を鑑み、本発明は、トルクセンサを用いることなく、容易に軸受装置に対するトルクの推定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明は以下の構成を有する。すなわち、トルク推定装置であって、
入力軸と、出力軸と、前記入力軸の回転を前記出力軸に伝達するための歯車とを含んで構成される機械装置における回転中の振動情報および回転速度情報を取得する取得手段と、
前記振動情報および前記回転速度情報を用いて、前記歯車の噛み合いにより生じる振動に対応する所定の周波数における振動値を導出する導出手段と、
前記導出手段にて導出した振動値に基づいて、前記入力軸のトルクを推定する推定手段と、
を有する。
【0009】
また、本発明の別の形態は以下の構成を有する。すなわち、機械装置であって、
トルク推定装置と、
入力軸と、出力軸と、前記入力軸の回転を前記出力軸に伝達するための歯車とを含む機構部と、
前記トルク推定装置にて推定されたトルクに基づいて、制御量を算出する制御量算出手段と、
前記制御量算出手段にて算出された制御量を用いて、前記機構部を制御する機構制御手段と、
を備え、
前記トルク推定装置は、
前記機械装置における回転中の振動情報および回転速度情報を取得する取得手段と、
前記振動情報および前記回転速度情報を用いて、前記歯車の噛み合いにより生じる振動に対応する所定の周波数における振動値を導出する導出手段と、
前記導出手段にて導出した振動値に基づいて、前記入力軸のトルクを推定する推定手段と、
を有する。
【0010】
また、本発明の別の形態は以下の構成を有する。すなわち、トルク推定方法であって、
入力軸と、出力軸と、前記入力軸の回転を前記出力軸に伝達するための歯車とを含んで構成される機械装置における回転中の振動情報および回転速度情報を取得する取得工程と、
前記振動情報および前記回転速度情報を用いて、前記歯車の噛み合いにより生じる振動に対応する所定の周波数における振動値を導出する導出工程と、
前記導出工程にて導出した振動値に基づいて、前記入力軸のトルクを推定する推定工程と、
を有する。
【0011】
また、本発明の別の形態は以下の構成を有する。すなわち、プログラムであって、
コンピュータに、
入力軸と、出力軸と、前記入力軸の回転を前記出力軸に伝達するための歯車とを含んで構成される機械装置における回転中の振動情報および回転速度情報を取得する取得工程と、
前記振動情報および前記回転速度情報を用いて、前記歯車の噛み合いにより生じる振動に対応する所定の周波数における振動値を導出する導出工程と、
前記導出工程にて導出した振動値に基づいて、前記入力軸のトルクを推定する推定工程と、
を実行させる。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、トルクセンサを用いることなく、容易に軸受装置のトルクの推定が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明に係るトルク推定方法を適用可能な風力発電装置の構成例を示す概略図。
【
図2】第1の実施形態に係る機能構成の例を示すブロック図。
【
図3】各種センサにて検出されるデータの例を示す図。
【
図4】回転数の変化に対応した振動情報の分析例を示す図。
【
図6A】次数比分析を行った振動情報に基づく、トルクと振動との関係を説明するための図。
【
図6B】次数比分析を行った振動情報に基づく、トルクと振動との関係を説明するための図。
【
図6C】次数比分析を行った振動情報に基づく、トルクと振動との関係を説明するための図。
【
図6D】次数比分析を行った振動情報に基づく、トルクと振動との関係を説明するための図。
【
図6E】次数比分析を行った振動情報に基づく、トルクと振動との関係を説明するための図。
【
図6F】次数比分析を行った振動情報に基づく、トルクと振動との関係を説明するための図。
【
図7】第1の実施形態に係るトルク推定処理のフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための形態について図面などを参照して説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明を説明するための一実施形態であり、本発明を限定して解釈されることを意図するものではなく、また、各実施形態で説明されている全ての構成が本発明の課題を解決するために必須の構成であるとは限らない。また、各図面において、同じ構成要素については、同じ参照番号を付すことにより対応関係を示す。
【0015】
<第1の実施形態>
以下、本発明の第1の実施形態について説明を行う。
【0016】
[装置構成]
以下、本発明に係るトルク推定方法を適用可能な装置の一実施形態を説明する。なお、以下の説明では、被測定物として、例えば、軸受装置を含む風力発電装置を例にとって説明するが、風力発電装置に限定されず、それ以外の機械装置であっても同様に軸受装置に対するトルクを推定することが可能である。このような機械装置の例としては、風力発電装置の増速機、減速機、自動車のトランスミッション等の軸受などが挙げられる。
【0017】
図1は、本実施形態に係るトルク推定方法を適用可能な風力発電装置の概略構成図である。
図1に示すように、風力発電装置10は、地上、あるいは洋上に立設されたタワー11と、タワー11の上端に支持されたナセル12と、ナセル12の端部に設けられたローター13とを備えている。また、タワー11とナセル12の間には、ナセル12の向きを調整(ヨー制御)するための回動機構14が備えられる。
【0018】
ナセル12には、ドライブトレイン部21が格納されている。ドライブトレイン部21は、主軸22、増速機23、発電機24、および軸受ユニット25を備える。主軸22は、増速機23を介して発電機24に接続されている。主軸22は、軸受ユニット25によってナセル12内に回転可能に支持されている。この主軸22を支持する軸受ユニット25には、振動センサ27が設けられて軸受ユニット25にて生じる振動を測定する。また、主軸22の回転速度を検出する回転速度センサ26が配設される。発電機24には、発電量を測定する発電量測定装置31が配設されている。
【0019】
ローター13は、ハブ16と、複数のブレード15とを有している。ブレード15は、ハブ16から放射状に延在されている。ローター13は、ドライブトレイン部21の主軸22の端部に設けられている。ハブ16は、複数のブレード15それぞれに対応する回転軸(不図示)周りの回転を制御することで、複数のブレード15それぞれの向きを調整(ピッチ制御)する。
【0020】
また、風力発電装置10は、増速機23や発電機24の回転軸も転がり軸受によって支持されている。増速機23のローター13側と発電機24側にそれぞれ、回転速度センサ28、30が備えられる。回転速度センサ28は、ローター13側(すなわち、増速機23の入力側)の回転軸(主軸22)の回転速度を検出する。また、回転速度センサ30は、発電機24側(すなわち、増速機23の出力側)の回転軸32の回転速度を検出する。増速機23は、主軸22の回転を歯車(不図示)等を介して増速させるため、入力側と出力側の回転軸の回転速度が変動する。したがって、増速機23内部には、入力軸である主軸22の回転に同期して回転する歯車と、出力軸である回転軸32の回転に同期して回転する歯車とが噛み合うように構成される。なお、主軸22側の歯車と、回転軸32側の歯車は直接噛み合うように構成されてもよいし、その間に更に異なる歯車が設けられてもよい。ここでは、トルクを伝達するための複数の歯車を含んで構成されるギアボックス33を示す。更に、増速機23には、振動センサ29が設けられて増速機23にて生じる振動を測定する。また、ドライブトレイン部21には、主軸22の回転を必要に応じて停止または減速させるためのブレーキ装置(不図示)が設けられている。なお、軸受ユニット25に対して備えられる回転速度センサ26と、増速機23に対して備えられる回転速度センサ28、30はそれぞれ同じ構成であってもよいし、異なる構成であってもよい。主軸22と増速機23の出力側の回転軸32間は複数の回転軸や歯車でトルクを伝達しているため遅延が発生する。そのため、
図2に示すように、回転速度センサ28は、増速機23の入力側と出力側に取り付ける方が正確であるが構成によっては片方でもよい。また、軸受ユニット25に対して備えられる振動センサ27と、増速機23に対して備えられる振動センサ29は、同じ構成であってもよいし、異なる構成であってもよい。
【0021】
上記構造の風力発電装置10は、ローター13のブレード15が風を受けることで主軸22が回転される。すると、その主軸22の回転が増速機23によって増速されて発電機24に伝達され、発電機24によって発電される。また、ローター13のブレード15が風を受けることで、主軸22を介して軸受ユニット25や増速機23に対して、荷重(ラジアル荷重およびアキシアル荷重)が負荷される。なお、
図1では、説明を簡略化するために1の風力発電装置10に対して、1の軸受ユニット25が設けられた構成を示しているが、この構成に限定するものではなく、1の風力発電装置10において複数の軸受ユニット25が設けられてもよい。
【0022】
[機能構成]
図2は、本実施形態に係るトルク推定方法を用いて機械装置の制御を行う制御装置の構成例を示すブロック図である。本実施形態では、トルク推定方法によるトルク推定が適用される対象を増速機23とし、トルク推定を制御装置200が行うものとして説明する。増速機23内には、主軸22の回転を伝達する回転軸105を支持する転がり軸受101が設けられる。なお、本実施形態において、転がり軸受101として、例えば、円すいころ軸受、円筒ころ軸受などに適用可能であるが、これらに限定するものではない。なお、1の増速機23に複数の転がり軸受が備えられてもよい。また、増速機23内部には、回転を伝達、増速するための各部品(歯車を含むギアボックス33など)が更に含まれる。また、
図2では、本実施形態に係るトルク推定方法を適用する対象として、増速機23を例に挙げて説明するが、軸受ユニット25や発電機24を対象として適用してもよい。
【0023】
制御装置200は、
図1に示した風力発電装置10内に設けられてもよいし、風力発電装置10の外部に設けられてもよい。また、
図2では、説明を簡略化するために1の増速機23に対して、1の制御装置200が設けられた構成を示している。しかし、この構成に限定するものではなく、1の制御装置200が、複数の風力発電装置10(すなわち、複数の増速機23)に対するトルク推定を行うような構成であってもよい。
【0024】
転がり軸受101は、回転軸105を回転自在に支持する。回転軸105は、回転部品である転がり軸受101を介して、増速機23の外側を覆うハウジング100、あるいはプラネットキャリア(不図示)に支持される。転がり軸受101は、回転軸105に外嵌される回転輪、或いはプラネタリシャフト(不図示)に外嵌される固定輪である内輪104、ハウジング100に内嵌される固定輪、或いはプラネタリホイール(不図示)に内装される回転輪である外輪102、内輪104および外輪102との間に配置された複数の転動体103である複数のころ(玉)、および転動体103を転動自在に保持する保持器(不図示)を備える。また、転がり軸受101において、所定の潤滑方式により、内輪104と転動体103の間、および、外輪102と転動体103の間の摩擦が軽減される。潤滑方式は特に限定するものではないが、例えば、グリース潤滑や油潤滑などが用いられる。また、潤滑剤の種類についても特に限定するものではない。
【0025】
増速機23において、回転軸105の回転中に転がり軸受101から発生する振動を検出する振動センサ29が備えられる。振動センサ29は、ボルト固定、接着、ボルト固定と接着、あるいはモールド材による埋め込み等によってハウジング100の外輪近傍に固定されている。なお、ボルト固定の場合には、回り止め機能を備えるようにしてもよい。なお、振動センサ29は、検出位置に固定して設置される構成に限定するものではなく、トルク推定時に増速機23に含まれる歯車の噛み合いによる振動を検出するための位置に設置されればよい。そのため、振動センサ29は、着脱可能もしくは移動可能な構成であってもよい。
【0026】
また、振動センサ29は、振動を検出可能なものであればよく、加速度センサ、AE(Acoustic Emission)センサ、超音波センサ、及びショックパルスセンサ等、検出される加速度、速度、歪み、応力、変位型等、振動を電気信号化できるものであればよい。また、ノイズが多いような環境に位置する風力発電装置10に取り付ける際には、絶縁型を使用する方がノイズの影響を受けることが少ないためより好ましい。さらに、振動センサ29が、圧電素子等の振動検出素子を使用する場合には、この素子をプラスチック等にモールドして構成してもよい。
【0027】
また、増速機23には、回転軸105に外嵌される内輪104の回転速度を検出する回転速度センサ28が設けられる。ここでは、ローター13側に配置された回転速度センサ28を例に挙げて説明する。本実施形態において、回転輪である内輪104と回転軸105の回転速度および回転数は一致している。主軸22から回転が伝達される回転軸105のトルクや回転速度は、風力発電装置10が受ける風の向きや風量、風圧、ブレード15のピッチ角、ヨー角、発電機24の出力により変動し得る。更には、ブレーキ装置(不図示)により、回転速度は調整され得る。回転速度センサ28は、例えば、転がり軸受101の内輪104に設けられたエンコーダ(不図示)を検出することで、その回転速度を検出してよい。なお、振動センサ29や回転速度センサ28は、制御装置200の利用者(例えば、風力発電装置10の管理者)の指示等に基づき、指定されたタイミング(例えば、トルク推定時)のみ検出動作を行うような構成であってもよいし、常時検出動作を行うような構成であってもよい。
【0028】
制御装置200は、例えば、不図示の制御部、記憶部、および入出力装置を含んで構成される情報処理装置にて実現されてよい。制御部は、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)、GPU(Graphical Processing Unit)、DSP(Digital Single Processor)、または専用回路などから構成されてよい。記憶部は、HDD(Hard Disk Drive)、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)等の揮発性および不揮発性の記憶媒体により構成され、制御部からの指示により各種情報の入出力が可能である。出力装置は、液晶ディスプレイ等の表示デバイス、或いはスピーカやライトから構成され、制御部からの指示により、作業者への報知等の出力を行う。出力装置による出力方法は特に限定するものではないが、例えば、画面出力による視覚的な出力であってもよいし音声による聴覚的な出力であってもよく、ネットワーク(不図示)を介した外部装置(不図示)とのデータの送受信により各種入出力動作を行ってもよい。
【0029】
制御装置200は、振動信号取得部201、回転速度取得部202、振動解析部203、トルク推定部204、情報記憶部205、制御量算出部206、通信処理部207、および機構制御部208を含んで構成される。各部位は、上述した制御部が対応するプログラムを記憶装置から読み出して実行することで実現してもよい。更には、制御部が入出力装置を制御することで通信動作などの各種動作が行われてもよい。
【0030】
振動信号取得部201は、振動センサ29にて検出された電気信号を振動情報として取得する。振動信号取得部201は、電気信号の内容に応じて、AD変換器(不図示)によるA/D(Analog/Digital)変換や、増幅器(不図示)による信号の増幅処理を行ってもよい。取得した振動情報は、情報記憶部205へ出力される。
【0031】
回転速度取得部202は、回転速度センサ28にて検出された回転軸105(または、内輪104)の回転速度を取得する。取得した回転速度の情報は、情報記憶部205へ出力される。
【0032】
回転速度取得は回転速度センサに限定されない。回転速度センサ28が付いていない機械装置、あるいは回転速度センサ28の出力を得られない場合は歯車の噛みあいで発生する振動周波数から回転速度を取得することも可能である。
【0033】
振動解析部203は、情報記憶部205に記憶されている振動情報に対して包絡処理(エンベロープ処理)、あるいは所定のフィルタ処理等を適用してもよい。振動センサ29にて取得される電気信号が示す振動情報において、転がり軸受101の理論周波数に対応した周波数帯域が抽出される。このとき、回転数に応じたデータのサンプリング処理が行われる。ここでのデータ処理あるいはフィルタ処理の内容は特に限定するものではなく、振動情報から所定の高周波成分を除去するLPF(Low Pass Filter)や、所定の低周波成分を除去するHPF(High Pass Filter)を用いた処理が行われてよい。もしくは、所定の周波数成分を抽出するBPF(Band Pass Filter)を用いた処理が行われてよい。また、振動解析部203は、フィルタ処理が行われていない振動情報、またはフィルタ処理が適用された振動情報を用いて、その振動情報が示す振動の周波数分析を行う。より具体的には、振動解析部203は、信号解析処理においてはFFT(Fast Fourier Transform)解析した上で、次数比分析を行う。
【0034】
トルク推定部204は、振動解析部203にて分析した振動情報に基づいて、軸受装置に対するトルクを推定する。本実施形態に係るトルク推定方法については後述する。
【0035】
情報記憶部205は、振動信号取得部201や回転速度取得部202から出力される振動情報や回転速度の情報を適時受信し、記憶する。このとき、振動センサ29と回転速度センサ28の検出タイミングは対応し、その検出情報は、対応付けて記憶される。また、情報記憶部205は、振動解析部203などの他の部位に対して記憶している各種情報を適時提供する。また、情報記憶部205は、振動解析部203の解析結果やトルク推定部204の推定結果を履歴情報として記憶してもよい。
【0036】
制御量算出部206は、トルク推定部204にて推定した振動情報に基づいて増速機23を含む風力発電装置10に対する制御量を算出する。また、制御量算出部206は、トルク推定部204にて推定したトルクに基づいて、制御量に対する補正量等を算出し、制御量を調整する。通信処理部207は、ネットワーク(不図示)を介して外部との通信を制御する。例えば、通信処理部207は、トルク推定部204による推定結果を外部装置(不図示)へ送信する。
【0037】
機構制御部208は、制御量算出部206にて算出された制御量に基づいて、風力発電装置10の動作を制御する。具体的には、回動機構14を制御してナセル12の向きを調整(ヨー制御)してもよいし、ハブ16を制御して複数のブレード15それぞれの向きを調整(ピッチ制御)してもよいし、発電機24の出力を制御してもよい。また、ブレーキ機構(不図示)により、主軸22の回転速度あるいは回転加速度が所定の数値となるように制御してよい。
【0038】
[検出データ]
図3は、各種センサにて検出されるデータの一例を示す図である。
図3(a)は、振動センサ29にて検出された振動情報の例を示す。横軸は時間を示し、縦軸は信号強度(振幅)を示す。
図3(a)では、様々な周波数の信号が合成された状態である。
図3(a)に示すような振動情報に対して、必要に応じて包絡処理やフィルタ処理を行って周波数解析を行うことで、所望の周波数帯域の振動を抽出し、振動値を導出する。
【0039】
図3(b)は、回転速度センサ28にて検出された転がり軸受101の回転速度を示す検出情報の例を示す。横軸は時間を示し、縦軸は信号強度を示す。パルス信号の検出結果に応じて、回転軸105(または、内輪104)の回転速度が特定される。なお、回転速度は、回転軸105が1回転する間にも変動し得る。
【0040】
[振動情報の変換]
図4は、振動情報の変換を説明するための図である。
図4(a)は、計測対象から振動センサ等を介して得られた振動情報Aの例を示す。
図4(a)において、横軸は時間[s]を示し、縦軸は振幅を示す。実際の軸受の振動情報は多くの異なった周波数の異なる振動が重ね合わされたデータとなるが、ここでの振動情報Aは2つの振動情報B、Cしか含まれていない例を用いて説明する。
図4(a)に示す例では、時間の経過に伴って転がり軸受の角速度が上昇しそれに比例して回転数が高くなっている。その結果、2つの振動情報B、Cのうち、振動情報Cの周波数が時間の経過と共に徐々に高くなり、
図4(a)に示す振動情報A全体の波形も変化している。
図4(a)中において、振動情報の上側に示される包絡線は、エンベロープ処理の結果を示す波形に相当する。なお、回転数は、
図4(a)に示すような変動に限定されるものではなく、時間の経過に伴って低くなるように変化する場合もあれば、一定期間内に増減するような場合もある。
【0041】
図4(b)は、
図4(a)に示す波形にエンベロープ処理を適用し、FFT処理を適用した結果を示す。
図4(b)において、横軸は周波数[Hz]を示し、縦軸は強度を示す。このとき、振動情報Cにおいて回転数が変動していることに起因して、
図4(b)の領域401に示すように、周波数のピークが検出できない。そのため、振動情報Cがどのような周波数特性を有するかを特定できず、周波数特性に基づいた分析が困難となる。
【0042】
例えば、風力発電装置用の転がり軸受は、制御の際に周波数解析を用いる。転がり軸受の振動の固有周波数は回転時の角速度と比例しており、周波数解析では一定速で転がり軸受が回転している状態のデータを使用する必要がある。そこで、本実施形態では、角速度の変動がある状態で、時間的に等間隔にサンプリングした振動情報を、角速度が一定である、すなわち、等速にて回転している状態に相当する振動情報に変換する。
【0043】
図4(c)は、
図4(a)に示す振動情報Aに対し、回転数の変動の影響を除去する処理を適用して得られる振動情報Dの例を示す。
図4(c)において、横軸は時間[s]を示し、縦軸は振幅を示す。
図4(c)では、
図4(a)の振動情報Aを、角速度が一定、すなわち、等速回転している状態に相当するように変換している。
【0044】
まず、元の振動情報と所定の角速度を用いて、以下の式(1)を満たすt0を求める。ここでの所定の角速度は、振動情報における初期の角速度ω0として説明するが、これに限定するものではない。例えば、振動情報の所定範囲における角速度の平均値であってもよいし、最大値であってもよい。また、振動情報の所定のタイミングにおける角速度であってもよい。
【0045】
【0046】
さらに、変換前の振動情報Aと、変換後の振動情報Dとを、以下の式(2)により変換する。
【0047】
D(t1)=A(t0) ・・・(2)
A(t):時間tにおける変換前の振動情報
D(t):時間tにおける変換後の振動情報
【0048】
上記の式(1)および式(2)を用いた変換により、
図4(c)に示す振動情報Dが得られる。つまり、振動情報Dは、一定の角速度(ここでは、初期角速度ω
0)となった状態の波形データに相当する。
図4(c)において、振動情報Dの上側に示される包絡線は、エンベロープ処理の結果を示す波形に相当する。
【0049】
図4(d)は、
図4(c)に示す波形にエンベロープ処理を適用し、FFT処理を適用した結果を示す。
図4(d)において、横軸は周波数[Hz]を示し、縦軸は強度を示す。このとき、回転数が一定であるものとした波形のため、
図4(d)の領域402に示すように、周波数のピークを検出でき、その周波数特性に基づく分析が可能となる。
【0050】
なお、上記の流れでは、振動情報に対して、データ変換処理、エンベロープ処理、FFT処理の順で行う例を示したが、これに限定するものではない。例えば、エンベロープ処理、データ変換処理、FFT処理の順で行われてもよい。あるいはエンベロープ処理を行わずにデータ変換処理、FFT処理だけの場合もあり得る。
【0051】
なお、振動情報Aを取得する際のサンプリング数は有限であるため、上記の式(1)にて特定される時間t0に対応する振動情報A(t0)が振動センサ等にて得られた振動情報Aに存在しない場合がある。そのような場合には、所定の範囲aを予め設定しておき、以下の式(3)のように、t0を基準として所定の範囲に含まれるt0’に対応する振動情報A(t0’)を用いて、振動情報Dを求めてもよい。
【0052】
D(t1)=A(t0’) (t0-a<t0’<t0+a) ・・・(3)
【0053】
または、以下の式(4)のような、t0の前後のt(便宜上、t0-1、t0+1とする)に対応する振動情報A(t)に基づく補間式を規定しておき、振動情報Dを求めてもよい。
【0054】
D(t1)={A(t0-1)+A(t0+1)}/2 ・・・(4)
【0055】
データ変換の際のデータの補間方法は、上記以外の方法を用いてもよく、目的に応じて適用する補間方法を切り替えてもよい。
【0056】
[トルクと振動との関係]
続いて、本実施形態にて扱うトルクと振動との関係について
図5、
図6A~
図6Fを用いて説明する。
【0057】
図5は、風力発電装置10が回転を開始し、その回転数の変遷の例を示す図である。また、
図5に示す点A~点Fはそれぞれ、後述する
図6A~
図6Fに対応している。
図5において、横軸は時間の経過を示し、縦軸は回転数[rpm]を示す。
図5の例では、徐々に回転数が増加し、点Dにてピークを示し、その後、略安定した回転数を示している。
【0058】
図6A~
図6Fは、
図5に示す点A~点Fそれぞれの時点でサンプリングされた振動情報に対応し、周波数分析を行った結果を示す。本例では、風力発電装置10の増速機23が備える歯車の噛み合いに起因する振動を検出可能に設置された振動センサ29にて取得される振動情報である。
図6A~
図6Fは、
図4を用いて上述したように、得られた振動情報に対し、回転数を一定とする補正が行われた結果である。つまり、点A~点Fそれぞれにて検出された振動情報に対し、
図4(c)のように等速回転している状態に変換し、更に、エンベロープ処理およびFFT処理を適用することで、
図4(d)と同様に処理された結果を示す。
図6A~
図6Fにおいて、横軸は周波数[Hz]を示し、縦軸は強度を示す。なお、
図5に示す点A~点Fにてサンプリングされるデータ量(時間間隔)は特に限定するものではなく、例えば、風力発電装置10の構成に応じて規定されてよい。
【0059】
図6A~
図6Fにおいて、波形601は、各周波数の強度を示す。破線602は、増速機23に含まれる歯車の噛み合い位置にて発生する振動に対応する周波数(以下、「噛み合い周波数」と称する)を示す。風力発電装置10の低回転域(例えば、
図5の点A~点B)に対応する
図6A~
図6Bを参照すると、噛み合い周波数(破線602)の強度は低い値を示している。通常、低回転域では、トルクは小さい値となる。このとき、噛み合い周波数での振動は低い値が出力される。一方、高回転域では、トルクは大きい値となる。このとき、高回転域(例えば、
図5の点D~点F)に対応する
図6D~
図6Fを参照すると、噛み合い周波数(破線602)の強度は高い値を示している。
【0060】
上記を踏まえると、回転数、トルク(軸トルク)、および振動との間には相関関係があることが特定できる。例えば、回転数が変化した場合には、同じトルクであっても異なる振動レベルが得られる。そのため、回転数、トルク、振動レベルの相関関係を事前に特定しておくことで、ある時点における回転数の情報および次数比分析の結果にて得られる振動情報から、その時点でのトルクの推定が可能となる。また、噛み合い周波数の強度が高いほど、トルクが高いことが推定できる。例えば、高回転域である
図5の点D~点Fであっても、噛み合い周波数の振動レベルに差異が生じており、その差異に着目してトルクの推定に利用することができる。より具体的には、点Fに対応する
図6Fが最も噛み合い周波数の振動レベルが高い値が得られているが、実際にこの時点のトルクが、最も高い値が得られていることが発明者による測定により特定できている。本実施形態では、この相関関係に着目し、噛み合い周波数の強度の変化に基づいてトルクを推定する。
【0061】
噛み合い周波数としての理論周波数(破線602)は、軸受装置の仕様に基づいて予め特定される。また、噛み合い周波数に対する強度と、トルクとの対応関係については、予めテーブル等にて規定しておく。予め規定されたテーブルは、情報記憶部205にて記憶される。
【0062】
なお、噛み合い周波数に加え、その高次(N次)の振動周波数も用いてトルクを推定する場合には、理論周波数とその高次の振動周波数に対しては異なるテーブルを用いてもよい。また、理論周波数およびその高次の振動周波数のうち、いずれに対応する振動値を用いてトルクを推定するかは、回転速度に応じて決定してもよい。回転速度によっては、理論周波数およびその高次の振動周波数において、ノイズが増加する場合が想定されるため、そのノイズが少ない振動周波数を対象としてトルク推定を行ってよい。この場合、回転速度に応じて着目する振動周波数は予め規定される。または、理論周波数とその高次の振動周波数それぞれの振動値の平均を用いるような構成であってもよい。これにより、一部の振動周波数にてノイズが含まれている場合でも、その影響を抑制することが可能となる。
【0063】
[処理フロー]
図7は、本実施形態に係るトルク推定方法を用いた制御処理のフローチャートである。本処理は、制御装置200により実行され、例えば、制御装置200が備える制御部(不図示)が
図2に示した各部位を実現するためのプログラムを記憶装置から読み出して実行することにより実現されてよい。なお、本処理フローは、風力発電装置10の動作が継続される間、継続される。
【0064】
S701にて、制御装置200は、情報記憶部205にて記憶されている、振動センサ29にて検出した増速機23の振動情報(
図3(a)に相当)を取得する。なお、トルク推定をリアルタイムで行う場合には、振動センサ29にて検出される信号を直接取得するような構成であってもよい。
【0065】
S702にて、制御装置200は、情報記憶部205にて記憶されている、回転速度センサ28にて検出した転がり軸受101の回転速度情報(
図3(b)に相当)を取得する。なお、トルク推定をリアルタイムで行う場合には、回転速度センサ28にて検出される信号を直接取得するような構成であってもよい。上述したように、S701にて取得される振動情報とS702にて取得される回転速度情報とは、その検出タイミングが対応している。
【0066】
S703にて、制御装置200は、S701にて取得した振動情報およびS702にて取得した回転速度情報に基づいて振動解析処理を行う。ここでは、
図4を用いて説明したような振動解析処理が行われ、
図6A~
図6Fに示すような情報が得られる。また、包絡処理、あるいはLPFやBPFフィルタ処理を行った上で、振動解析処理が行われてもよい。
【0067】
S704にて、制御装置200は、S703にて得られた振動解析の結果から、予め規定された噛み合い周波数における振動値(強度)を導出する。
【0068】
S705にて、制御装置200は、S704にて導出した振動値と、予め規定されたテーブルとに基づいて、トルクを推定する。
【0069】
S706にて、制御装置200は、S705にて推定したトルクに基づいて風力発電装置10に対する制御量を導出する。また、ここでの制御量は、例えば、回動機構14を制御してナセル12の向きを調整(ヨー制御)するためのものでもよいし、ハブ16を制御して複数のブレード15それぞれの向きを調整(ピッチ制御)するためのものでもよい。また、発電機24の出力を制御するためのものでもよい。また、ブレーキ機構(不図示)により、主軸22の回転速度あるいは回転加速度が所定の数値となるように制御するためのものでもよい。
【0070】
なお、制御量は、例えば、推定したトルクの値が所定の閾値を超えた場合に、予め規定されたテーブル等に基づいて導出してもよい。または、ある時点を基準として、推定したトルクの変化量が所定の範囲を超えた場合に、制御量を導出してもよい。特に、風力発電装置10などのような大型機械では急激に制御を変化させるよりも、徐々に制御を切り替えることが好ましい。
【0071】
S707にて、制御装置200は、S706にて導出した制御量に基づいて、フィードバック制御を行うことで、風力発電装置10を制御する。そして、本処理フローを終了する。
【0072】
以上、本実施形態により、回転動作中の回転速度の変化にも対応可能な軸受装置のトルクの推定が可能となる。また、トルクセンサを用いるような複雑な構成を必要としないため、低コストでトルク推定を実現することが可能となる。
【0073】
<その他の実施形態>
上記の実施形態では、噛み合い周波数における強度に対応するトルクをテーブルにて定義して用いる例を示した。しかし、この構成に限定するものではない。例えば、噛み合い周波数、振動情報、および回転速度情報を入力とし、トルクを出力とする学習済みモデルを、所定の学習アルゴリズムを用いて学習することで生成する。そして、一定の学習が進んだ学習済みモデルを用いて、トルクを推定してもよい。このような学習処理を行う場合には、例えば、噛み合い周波数、振動情報、および回転速度情報と、トルクとを対とした学習用データを用いる。なお、学習処理に用いる学習アルゴリズムは、ニューラルネットワークによる教師学習のほかの学習アルゴリズムを用いてよい。
【0074】
学習処理においては、例えば、学習モデルに入力データを入力すると、トルクを示す値が出力データとして出力される。そして、損失関数を用いて、出力データと、教師データ(ここでは、トルクの値)との比較が行われ、その差分に応じて学習モデルにおける重みが調整されることで、学習モデルのパラメータが更新される。この処理を繰り返すことで学習済みモデルが生成される。つまり、本実施形態において、回帰によるトルクの推定を行うための学習済みモデルが生成される。上述したように、学習処理は、一定量の学習用データが追加されるごとに繰り返されてよく、その学習結果により学習済みモデルが更新されてよい。なお、学習処理は、制御装置200が実行するような構成であってもよいし、ネットワーク(不図示)を介して接続された外部の学習サーバ(不図示)が実行するような構成であってもよい。
【0075】
また、上記の実施形態では、振動情報と回転速度情報を入力としてトルク推定を行って、制御量を導出していた。これに対して、更に、荷重情報や環境情報(温度など)などを用いてもよい。このような他の情報を用いる場合には、例えば、推定されたトルクと荷重に応じて制御量を調整してもよいし、推定されたトルクと環境情報に応じて制御量を調整してもよい。
【0076】
また、上記の実施形態では、振動センサ29を用いて増速機23の振動を検出する構成を示したが、これに限定するものではない。振動センサ29に代えてマイクを含む音センサを用いて音情報を検出してもよい。この場合、音情報を対象として解析処理を行う。
【0077】
また、本発明において、上述した1以上の実施形態の機能を実現するためのプログラムやアプリケーションを、ネットワーク又は記憶媒体等を用いてシステム又は装置に供給
し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサがプログラムを
読出し実行する処理でも実現可能である。
【0078】
また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC(Application S
pecific Integrated Circuit)やFPGA(Field P
rogrammable Gate Array))によって実現してもよい。
【0079】
このように、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、実施形態の各構成を
相互に組み合わせることや、明細書の記載、並びに周知の技術に基づいて、当業者が変更
、応用することも本発明の予定するところであり、保護を求める範囲に含まれる。
【0080】
以上の通り、本明細書には次の事項が開示されている。
(1) 入力軸(例えば、主軸22)と、出力軸(例えば、回転軸32)と、前記入力軸の回転を前記出力軸に伝達するための歯車(例えば、ギアボックス33)とを含んで構成される機械装置(例えば、増速機23)における回転中の振動情報および回転速度情報を取得する取得手段(例えば、振動信号取得部201、回転速度取得部202)と、
前記振動情報および前記回転速度情報を用いて、前記歯車の噛み合いにより生じる振動に対応する所定の周波数(例えば、602)における振動値を導出する導出手段(例えば、振動解析部203)と、
前記導出手段にて導出した振動値に基づいて、前記入力軸のトルクを推定する推定手段(例えば、トルク推定部204)と、
を有するトルク推定装置(例えば、制御装置200)。
【0081】
これによれば、トルクセンサを用いることなく、容易に軸受装置のトルクの推定が可能となる。
【0082】
(2) 前記推定手段は、前記所定の周波数における振動値と、トルクとが予め対応付けて定義されたテーブルを用いて、トルクを推定する、ことを特徴とする(1)に記載のトルク推定装置。
【0083】
これによれば、歯車に対応した歯打ち周波数における振動値と、トルクとの対応関係により予め定義されたテーブルを用いて、容易にトルクを推定することが可能となる。
【0084】
(3) 前記機械装置は、1回転の間に回転速度が変化し、
前記導出手段は、前記振動情報を前記回転速度情報に基づいて、一定の回転速度とする変換を行った上で周波数を導出する、
ことを特徴とする(1)または(2)に記載のトルク推定装置。
【0085】
これによれば、軸受装置の回転速度が1回転する間に変化する場合であっても、トルクの推定が可能となる。
【0086】
(4) (1)から(3)のいずれかに記載のトルク推定装置(例えば、制御装置200)と、
前記入力軸と、前記出力軸と、前記歯車とを含む機構部(例えば、増速機23)と、
前記トルク推定装置にて推定されたトルクに基づいて、制御量を算出する制御量算出手段(例えば、制御量算出部206)と、
前記制御量算出手段にて算出された制御量を用いて、前記機構部を制御する機構制御手段(例えば、機構制御部208)と、
を備える機械装置(例えば、風力発電装置10)。
【0087】
これによれば、トルクセンサを用いることなくトルクを推定して、トルクに応じたフィードバック制御が可能な機械装置を実現することが可能となる。
【0088】
(5) 前記機械装置は、風力発電装置である、(4)に記載の機械装置。
【0089】
これによれば、トルクセンサを用いることなくトルクを推定して、トルクに応じたフィードバック制御が可能な風力発電装置を実現することが可能となる。
【0090】
(6) 入力軸(例えば、主軸22)と、出力軸(例えば、回転軸32)と、前記入力軸の回転を前記出力軸に伝達するための歯車(例えば、ギアボックス33)とを含んで構成される機械装置(例えば、増速機23)における回転中の振動情報および回転速度情報を取得する取得工程(例えば、S701、S702)と、
前記振動情報および前記回転速度情報を用いて、前記歯車の噛み合いにより生じる振動に対応する所定の周波数における振動値を導出する導出工程(例えば、S703、S704)と、
前記導出工程にて導出した振動値に基づいて、前記入力軸のトルクを推定する推定工程(例えば、S705)と、
を有するトルク推定方法。
【0091】
これによれば、トルクセンサを用いることなく、容易に軸受装置のトルクの推定が可能となる。
【0092】
(7) コンピュータ(例えば、制御装置200)に、
入力軸(例えば、主軸22)と、出力軸(例えば、回転軸32)と、前記入力軸の回転を前記出力軸に伝達するための歯車(例えば、ギアボックス33)とを含んで構成される機械装置(例えば、増速機23)における回転中の振動情報および回転速度情報を取得する取得工程(例えば、S701、S702)と、
前記振動情報および前記回転速度情報を用いて、前記歯車の噛み合いにより生じる振動に対応する所定の周波数における振動値を導出する導出工程(例えば、S703、S704)と、
前記導出工程にて導出した振動値に基づいて、前記入力軸のトルクを推定する推定工程(例えば、S705)と、
を実行させるためのプログラム。
【0093】
これによれば、トルクセンサを用いることなく、容易に軸受装置のトルクの推定が可能となる。
【符号の説明】
【0094】
10…風力発電装置
11…タワー
12…ナセル
13…ローター
14…回動機構
15…ブレード
16…ハブ
21…ドライブトレイン部
22…主軸
23…増速機
24…発電機
25…軸受ユニット
26、28、30…回転速度センサ
27、29…振動センサ
31…発電量測定装置
32…回転軸
33…ギアボックス
200…制御装置
201…振動信号取得部
202…回転速度取得部
203…振動解析部
204…トルク推定部
205…情報記憶部
206…制御量算出部
207…通信処理部
208…機構制御部