(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024010495
(43)【公開日】2024-01-24
(54)【発明の名称】円偏光板および画像表示装置
(51)【国際特許分類】
G02B 5/30 20060101AFI20240117BHJP
H10K 59/10 20230101ALI20240117BHJP
H05B 33/02 20060101ALI20240117BHJP
H10K 50/10 20230101ALI20240117BHJP
G09F 9/30 20060101ALI20240117BHJP
【FI】
G02B5/30
H01L27/32
H05B33/02
H05B33/14 A
G09F9/30 349E
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022111868
(22)【出願日】2022-07-12
(71)【出願人】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000154
【氏名又は名称】弁理士法人はるか国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 暢
【テーマコード(参考)】
2H149
3K107
5C094
【Fターム(参考)】
2H149AA18
2H149AB24
2H149BA02
2H149BA12
2H149CA02
2H149DA02
2H149DA04
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2H149FA02X
2H149FA03W
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2H149FD01
2H149FD47
3K107AA01
3K107BB01
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3K107CC33
3K107DD17
3K107EE26
3K107FF06
3K107FF15
5C094AA03
5C094BA27
5C094ED14
(57)【要約】
【課題】曲面ディスプレイやフォルダブルディスプレイにおいて、画面の曲面部分や屈曲部分が白表示時に着色して視認されることを抑制する。
【解決手段】円偏光板(10)は、有機ELセル(70)等の画像表示セルの視認側に配置され、曲面部分または屈曲可能部分を有する画像表示装置の反射防止に用いられる。円偏光板は、偏光子(11)と、偏光子の一方の面に貼り合わせられた2層以上の位相差層(131,132)とを備える。円偏光板は、厚みが100μm以下であり、透過光のクロマティクネス指数b
*が、4.0以下である。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
曲面部分または屈曲可能部分を有する画像表示装置の反射防止に用いられる円偏光板であって、
偏光子と、前記偏光子の一方の面に貼り合わせられた2層以上の位相差層とを備え、
厚みが100μm以下であり、
透過光のクロマティクネス指数b*が、4.0以下である、
円偏光板。
【請求項2】
前記位相差層は、nx>ny≧nzの屈折率異方性を有する第一位相差層と、nz>nx≧nyの屈折率異方性を有する第二位相差層を含む、請求項1に記載の円偏光板:
ただし、nxは面内の遅相軸方向の屈折率であり、nyは面内の進相軸方向の屈折率であり、nzは厚み方向の屈折率である。
【請求項3】
前記第一位相差層および前記第二位相差層の少なくとも一方が、非液晶性樹脂により構成された厚みが30μm以下のフィルムである、請求項2に記載の円偏光板。
【請求項4】
前記第二位相差層が、負の固有複屈折を有する非液晶性樹脂により構成された厚みが30μm以下のフィルムである、請求項2に記載の円偏光板。
【請求項5】
前記第一位相差層が、液晶化合物がホモジニアス配向した配向液晶層である、請求項4に記載の円偏光板。
【請求項6】
前記偏光子側から、前記第一位相差層および前記第二位相差層が順に配置されている、請求項2~5のいずれか1項に記載の円偏光板。
【請求項7】
請求項1~5のいずれか1項に記載の円偏光板と、前記円偏光板の前記位相差層側の面に配置された粘着剤層とを備える、粘着剤層付き円偏光板。
【請求項8】
合計厚みが100μm以下である、請求項7に記載の粘着剤層付き円偏光板。
【請求項9】
曲面部分または屈曲可能部分を有する画像表示装置であって、
有機ELセルの視認側表面に、請求項1~5のいずれか1項に記載の円偏光板を備える、画像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円偏光板および画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話、スマートフォン、カーナビゲーション装置、パソコン用モニタ、テレビ等の表示デバイスにおいて、液晶表示装置や有機EL表示装置等のフラットパネルディスプレイが用いられている。近年では、樹脂フィルム等の折り曲げ可能な基板(フレキシブル基板)を用いた有機EL素子が実用化されており、画面に曲面部分を有する曲面ディスプレイや、折り畳み可能なフォルダブルディスプレイが開発されている。
【0003】
有機EL素子を表示体とする有機EL表示装置は、有機EL素子(有機ELセル)の視認側表面に円偏光板を配置することにより、金属電極等により反射した外光が再出射して視認されることを防止している(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
曲面ディスプレイやフォルダブルディスプレイでは、有機EL素子が折り曲げ可能であることに加えて、その表面に配置される円偏光板も折り曲げ性に優れていることが要求されるため、円偏光板の厚みを小さくする必要がある。円偏光板の厚みを小さくするためには、円偏光板を構成する偏光子、位相差層、偏光子保護フィルム、粘接着剤層等の各部材の厚みを小さくする必要があり、位相差層として、液晶材料を所定方向に配向させた配向液晶層が広く用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
曲面ディスプレイやフォルダブルディスプレイでは、白表示時に画面の曲面部分や屈曲部分が黄色く着色して見える場合があり、改善が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、曲面部分または屈曲可能部分を有する画像表示装置、およびその反射防止に用いられる円偏光板に関する。円偏光板は、位相差層側の面に粘着剤層が付設された粘着剤層付き円偏光板として提供されてもよい。
【0008】
円偏光板は、偏光子と、偏光子の一方の面に貼り合わせられた2層以上の位相差層とを備える。円偏光板は、厚みが100μm以下であり、透過光のクロマティクネス指数b*が、4.0以下である。
【0009】
一実施形態において、円偏光板の位相差層は、nx>ny≧nzの屈折率異方性を有する第一位相差層と、nz>nx≧nyの屈折率異方性を有する第二位相差層を含む。nxは面内の遅相軸方向の屈折率であり、nyは面内の進相軸方向の屈折率であり、nzは厚み方向の屈折率である。
【0010】
第一位相差層と第二位相差層の配置は特に限定されないが、一実施形態では、偏光子側から、第一位相差層および前記第二位相差層が順に配置されている。
【0011】
第一位相差層および第二位相差層の少なくとも一方は、非液晶性樹脂により構成された厚みが30μm以下のフィルムであることが好ましい。一実施形態において、第二位相差層が、負の固有複屈折を有する非液晶性樹脂により構成された厚みが30μm以下のフィルムである。第一位相差層は、配向液晶層であってもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の円偏光板は厚みが小さく、耐屈曲に優れ、曲面部分や屈曲可能部分を有する画像表示装置にも適用可能である。また、円偏光板のb*が小さいため、画面の曲面部分においても白表示時の色付きを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】一実施形態にかかる円偏光板の断面図である。
【
図2】一実施形態にかかる粘着剤層付き円偏光板の断面図である。
【
図3】一実施形態にかかる画像表示装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の画像表示装置は、曲面部分または屈曲可能部分を有する。曲面部分を有する表示装置は、画面全体が曲面でもよく、画面の一部に曲面を有していてもよい。画面の一部に曲面を有する表示装置の例としては、画面の端部が曲面であり、曲面部分がエッジスクリーンを構成している曲面ディスプレイが挙げられる。屈曲可能部分を有する表示装置としては、折り畳み可能なフォルダブルディスプレイが挙げられる。
【0015】
図1は、本発明の一実施形態にかかる円偏光板の断面図であり、
図2は、円偏光板10の一方の面に粘着剤層21が設けられた粘着剤層付き円偏光板の断面図である。
図3は、本発明の一実施形態の画像表示装置の断面図であり、有機EL素子70(有機ELセル)の光取り出し面に、粘着剤層21を介して円偏光板10が貼り合わせられている有機EL表示装置を示している。
【0016】
有機ELセル70は、トップエミッション型でもボトムエミッション型でもよい。トップエミッション型の有機ELセルは、基板上に、金属電極、有機発光層および透明電極を順に備え、基板と反対側の面から光を取り出す構成である。ボトムエミッション型の有機ELセルは、基板上に、透明電極、有機発光層および金属電極を順に備え、基板側の面から光を取り出す構成である。
【0017】
有機ELセルの基板としては、ガラス基板またはプラスチック基板が用いられる。曲面ディスプレイやフォルダブルディスプレイには、基板として可撓性のプラスチック基板が好適に用いられる。
【0018】
トップエミッション型の有機ELセルでは、基板は透明である必要はなく、基板としてポリイミドフィルム等の高耐熱性フィルムを用いてもよい。有機発光層は、それ自身が発光層として機能する有機層の他に、電子輸送層、正孔輸送層等を備えていてもよい。透明電極は、金属酸化物層または金属薄膜であり、有機発光層からの光を透過する。
【0019】
有機ELセルの金属電極は光反射性である。そのため、外光が有機ELセルの内部に入射すると、金属電極で光が反射し、外部からは反射光が鏡面のように視認される。有機ELセル70の視認側表面に、円偏光板10を配置することにより、金属電極での反射光の外部への再出射を防止して、画面の視認性および意匠性を向上できる。
【0020】
[円偏光板]
円偏光板10は、偏光子11の一方の面に積層された位相差層13を備える。偏光子11の他方の面には、透明フィルム15が貼り合わせられていてもよい。円偏光板10は、位相差層13側の面が、有機ELセル70に対向するように配置される。偏光子11と位相差層13とは、適宜の接着剤または粘着剤を介して貼り合わせられていることが好ましい。偏光子11と位相差層13との間には、適宜の透明保護フィルムが配置されていてもよい。
【0021】
位相差層13は、2層以上の位相差層を含む。後に詳述するように、複数の位相差層を積層することにより、位相差層の三次元の屈折率異方性を調整可能であり、視認角度によるレターデーションの変化を低減できる。また、複数の位相差層を積層することにより、位相差層13のレターデーションの波長分散を調整して、円偏光板を広帯域化することも可能である。
【0022】
円偏光板10の厚み、すなわち、偏光子11、位相差層13および透明フィルム15、ならびにこれらの層間を貼り合わせる粘接着剤層(不図示)の厚みの合計は、100μm以下である。円偏光板10の厚みは、80μm以下が好ましく、70μm以下がより好ましく、65μm以下または60μm以下であってもよい。円偏光板の厚みが小さいことにより、画像表示装置の曲面部分や屈曲部分における折り曲げ性および耐屈曲性に優れる傾向がある。円偏光板10の厚みは、30μm以上、40μm以上または45μm以上であってもよい。
【0023】
円偏光板10は、透過光のb*が4.0以下である。b*は、CIELAB表色系のクロマティクネス指数であり、b*が小さいと、光は青色に着色して視認され、b*が大きいと、光は黄色に着色して視認される。色相のニュートラル化の観点から、円偏光板10の透過光のb*は、3.8以下が好ましく、3.6以下または3.5以下であってもよい。円偏光板10の透過光のb*は、0.0以上が好ましく、0.5以上、1.0以上、1.5以上、2.0以上または2.5以上であってもよい。
【0024】
曲面部分または屈曲可能部分を有する画像表示装置では、白表示時に画面の曲面部分や屈曲部分が黄色く着色して見える場合がある。曲面部分では、平面部分に比べて、円偏光板を透過する光の光路長が大きいため、円偏光板の着色がより顕著に視認されることが、着色の原因であると考えられる。円偏光板10の透過光のb*が小さいことにより、曲面部分や屈曲部分でも、着色が抑制され、良好な視認性を有する。
【0025】
<偏光子>
偏光子11としては、例えば、ポリビニルアルコール系フィルム、部分ホルマール化ポリビニルアルコール系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルム等の親水性高分子フィルムに、ヨウ素や二色性染料等の二色性物質を吸着させて一軸延伸したもの、ポリビニルアルコールの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物等のポリエン系配向フィルム等が挙げられる。中でも、高い偏光度を実現可能であることから、ポリビニルアルコール系フィルムに、ヨウ素を吸着させた偏光子が好ましい。
【0026】
偏光子の製造工程においては、必要に応じて、水洗、膨潤、架橋等の処理が行われてもよい。延伸は、ヨウ素染色の前後いずれに行われてもよく、染色しながら延伸が行われてもよい。延伸は、空中での延伸(乾式延伸)、あるいは、水中や、ホウ酸、ヨウ化カリウム等を含む水溶液中での延伸(湿式延伸)のいずれでもよく、これらを併用してもよい。
【0027】
偏光子11の厚みは特に制限されないが、一般的に、1~50μm程度である。円偏光板10の厚みを小さくする観点において、偏光子11の厚みは、30μm以下が好ましく、20μm以下がより好ましく、15μm以下がさらに好ましい。偏光子11は、厚みが10μm以下の薄型偏光子であってもよい。偏光子11の厚みは、3~10μmまたは4~8μmであってもよい。
【0028】
厚みが10μm以下の薄型の偏光子としては、例えば、特開昭51-069644号公報、特開2000-338329号公報、WO2010/100917号、特許第4691205号、特許第4751481号、特開2012-73580号公報に記載されている偏光子が挙げられる。薄型偏光子は、例えば、延伸用樹脂基材上にポリビニルアルコール系樹脂層を形成した積層体を、ヨウ素染色および延伸することにより得られる。この製法では、ポリビニルアルコール系樹脂層が薄くても、延伸用樹脂基材に支持されているため、延伸による破断等の不具合なく延伸することが可能となる。
【0029】
<位相差層>
上記の通り、偏光子11の一方の面に位相差層13を配置することにより、円偏光板10が構成される。
【0030】
位相差層13は1/4波長板(λ/4板)であり、波長550nmにおける正面レターデーションR(550)は、100~180nmが好ましく、110~170nmがより好ましく、120~150nmがさらに好ましく、125~145nmであってもよい。位相差層13の遅相軸方向と、偏光子11の吸収軸方向とのなす角は、10~90°であり、40~50°が好ましく、43~47°または44~46°であってもよい。
【0031】
位相差層13は、2層以上の位相差層の積層構成を有し、積層体としての位相差層13が、上記の正面レターデーションおよび配置角度を有することにより、偏光子11と位相差層13との積層体が、円偏光板として機能する。
【0032】
図1に示す円偏光板10において、位相差層13は、偏光子11に近い側に配置された第一位相差層131と、偏光子11から遠い側に配置された第二位相差層132の2層を有する。一実施形態において、第一位相差層131および第二位相差層132のうち、一方の位相差層は、nx>ny≧nzの屈折率異方性を有し、他方の位相差層は、nz>nx≧nyの屈折率異方性を有する。nxは面内の遅相軸方向の屈折率であり、nyは面内の進相軸方向の屈折率であり、nzは厚み方向の屈折率である。
【0033】
屈折率異方性の異なる複数の位相差層を積層することにより、三次元の屈折率異方性を調整し、視認角度によるレターデーションの変化を低減できる。位相差層131が、nx>ny≧nzの屈折率異方性を有しており、位相差層132がnz>nx≒nyの屈折率異方性を有するポジティブCプレートである場合、位相差層132が負の厚み方向レターデーションを有するため、位相差層131の斜め方向の位相差が位相差層132により打ち消される。そのため、位相差層131と位相差層132との積層体である位相差層13は、nx>nz>nyの屈折率異方性を有し、視認角度によるレターデーションの変化が小さく、表示装置の正面だけでなく、斜め方向の反射光も低減できる。位相差層132がnz>nx>nyの屈折率異方性を有するネガティブBプレートである場合も、位相差層132が負の厚み方向レターデーションを有するため、位相差層131の斜め方向の位相差を打ち消して、視認角度によるレターデーションの変化を低減できる。
【0034】
位相差層13の厚みは、60μm以下が好ましく、50μm以下がより好ましく、40μm以下、30μm以下、25μm以下または20μm以下であってもよい。複数の位相差層131,132が粘接着剤層を介して貼り合わせられている場合は、粘接着剤層も含めた合計厚みが上記範囲であることが好ましい。ハンドリング性および位相差発現性の観点から、位相差層13の厚みは3μm以上が好ましく、5μm以上、8μm以上または10μm以上であってもよい。
【0035】
位相差層13の全光線透過率は、80%以上が好ましく、85%以上がより好ましく、90%以上がさらに好ましい。位相差層13の透過光のb*は、4.0以下が好ましく、3.8以下がより好ましく、3.6以下または3.5以下であってもよい。位相差層13の透過光のb*は、0.0以上、0.5以上、1.0以上、1.5以上、2.0以上または2.5以上であってもよい。
【0036】
上記のように、複数の位相差層131,132が積層された位相差層13の厚みを小さくすることにより、円偏光板10の厚みを小さくできる。位相差層13の厚みを小さくするためには、位相差層13を構成する各位相差層、すなわち、第一位相差層131および第二位相差層132のそれぞれの厚みを小さくすることが好ましい。第一位相差層131および第二位相差層132の厚みは、それぞれ、30μm以下が好ましく、25μm以下がより好ましく、20μm以下がさらに好ましく、15μm以下または10μm以下であってもよい。
【0037】
位相差層13を構成する第一位相差層131および第二位相差層132のそれぞれを、配向液晶層とすれば、厚みが小さく、かつ位相差層13に必要な位相差特性を持たせることが可能である。液晶化合物が所定方向に配向することにより屈折率異方性を持たせた配向液晶層は、複屈折が大きいため、小さな厚みで必要とするレターデーションを発現できる。例えば、第一位相差層131としてnx>ny≒nzの屈折率異方性を有するホモジニアス配向液晶層を採用し、第二位相差層132としてnz>nx≒nyの屈折率異方性を有するホメオトロピック配向液晶層を採用すれば、厚みの小さい位相差層を構成できる。
【0038】
しかしながら、液晶化合物は、メソゲン基による紫外から可視光短波長領域の光吸収が大きいため、黄色く着色しやすい。第一位相差層131および第二位相差層132の両方が配向液晶層であると、位相差層13のb*が大きく、これを備える円偏光板10の透過光のb*も大きいため、画像表示装置の白表示時に、曲面部分または屈曲部分において、画面が黄色く着色して視認されやすい。
【0039】
位相差層13のb*を小さくするためには、第一位相差層131および第二位相差層132の少なくとも一方が、非液晶性の樹脂材料により構成されたフィルムであることが好ましい。また、位相差層13の厚みを小さくする観点から、非液晶性樹脂により構成されたフィルムの厚みは30μm以下が好ましい。第一位相差層131および第二位相差層132の両方が厚み30μm以下の非液晶性樹脂フィルムであってもよい。
【0040】
以下では、偏光子11に近い側に配置された第一位相差層131がnx>ny≧nzの屈折率異方性を有し、偏光子11から遠い側に配置された第二位相差層132がnz>nx≧nyの屈折率異方性を有する構成について、第一位相差層131および第二位相差層132のそれぞれの具体例を挙げて説明する。なお、本発明の円偏光板は下記の例に限定されず、偏光子11に近い側にnz>nx≧nyの屈折率異方性を有する位相差層が配置され、偏光子11から遠い側にnx>ny≧nzの屈折率異方性を有する位相差層が配置されていてもよい。また、位相差層13は、3層以上の位相差層を含んでいてもよい。
【0041】
<第一位相差層>
nx>ny≧nzの屈折率異方性を有する位相差層としては、nx>ny≒nzの屈折率異方性を有するポジティブAプレート、およびnx>ny>nzの屈折率異方性を有するネガティブBプレートが挙げられる。
【0042】
第一位相差層131としては、液晶化合物がホモジニアス配向した配向液晶層、または正の固有複屈折を有する非液晶性樹脂材料(ポリマー)のフィルムが挙げられる。
【0043】
正の固有複屈折を有するポリマーは、ポリマーを延伸等により配向させた場合に、その配向方向の屈折率が相対的に大きくなるものを指す。正の固有複屈折を有するポリマーとしては、例えば、ポリカーボネート系樹脂、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリサルホン、ポリエーテルサルホン等のサルホン系樹脂、ポリフェニレンスルフィド等のスルフィド系樹脂、ポリイミド系樹脂、環状ポリオレフィン系(ポリノルボルネン系)樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、セルロースエステル類等が挙げられる。
【0044】
第一位相差層131は、好ましくは1/4波長板であり、波長550nmにおける正面レターデーションR(550)は、100~180nmが好ましく、110~170nmがより好ましく、120~150nmがさらに好ましく、125~145nmであってもよい。なお、第二位相差層132がnz>nx>nyの屈折率異方性を有するポジティブBプレートである場合は、位相差層131と位相差層132との積層体である位相差層13の正面レターデーションが上記範囲となるように、第一位相差層131の正面レターデーションを調整すればよい。
【0045】
第一位相差層131は、長波長ほど大きなレターデーションを有する特性(いわゆる「逆波長分散」)を有するものでもよい。第一位相差層131が逆波長分散を有する場合、可視光の広い波長範囲にわたって、位相差層の正面レターデーションと1/4波長との差が小さいため、円偏光板が広帯域化され、優れた反射防止特性を実現できる。
【0046】
逆波長分散特性を有する位相差層は、波長450nmにおける正面レターデーションRe(450)と波長550nmにおける正面レターデーションRe(550)の比Re(450)/Re(550)が、1未満である。Re(450)/Re(550)は、0.65~0.99が好ましく、0.70~0.95がより好ましく、0.75~0.90がさらに好ましく、0.80~0.85であってもよい。
【0047】
上記のように、第一位相差層131は非液晶性樹脂のフィルムでもよく、配向液晶層でもよいが、小さな厚みで1/4波長の正面レターデーションを持たせる観点からは、第一位相差層131は、ホモジニアス配向液晶層であることが好ましい。ホモジニアス配向液晶層は、例えば、支持基板上に、液晶化合物を含む液晶組成物を塗布し、液晶化合物をホモジニアス配向させた後、配向状態を固定することにより形成される。
【0048】
液晶化合物としては、棒状液晶化合物および円盤状液晶化合物等が挙げられる。支持基板の配向規制力によりホモジニアス配向しやすいことから、液晶化合物としては棒状液晶化合物が好ましい。棒状液晶化合物は、主鎖型液晶でも側鎖型液晶でもよい。棒状液晶化合物は、液晶ポリマーでもよく、重合性液晶化合物の重合物でもよい。重合前の液晶化合物(モノマー)が液晶性を示すものであれば、重合後は液晶性を示さないものであってもよい。
【0049】
液晶化合物は、加熱により液晶性を発現するサーモトロピック液晶であることが好ましい。サーモトロピック液晶は、温度変化に伴って、結晶相、液晶相、等方相の相転移を生じる。サーモトロピック性を示す棒状液晶化合物としては、アゾメチン類、アゾキシ類、シアノビフェニル類、シアノフェニルエステル類、安息香酸エステル類、シクロヘキサンカルボン酸フェニルエステル類、シアノフェニルシクロヘキサン類、シアノ置換フェニルピリミジン類、アルコキシ置換フェニルピリミジン類、フェニルジオキサン類、トラン類、アルケニルシクロヘキシルベンゾニトリル類等が挙げられる。
【0050】
重合性液晶化合物としては、例えば、ポリマーバインダーを用いて棒状液晶化合物の配向状態を固定可能とした重合性液晶化合物、重合により液晶化合物の配向状態を固定可能とした重合性官能基を有する重合性液晶化合物等が挙げられる。この中でも、光重合性官能基を有する光重合性液晶化合物が好ましい。
【0051】
光重合性液晶化合物(液晶モノマー)は、1分子中にメソゲン基と少なくとも1つの光重合性官能基とを有する。液晶モノマーが液晶性を示す温度(液晶相転移温度)は、40~200℃が好ましく、50~150℃がより好ましく、55~100℃がさらに好ましい。
【0052】
液晶モノマーのメソゲン基としては、ビフェニル基、フェニルベンゾエート基、フェニルシクロヘキサン基、アゾキシベンゼン基、アゾメチン基、アゾベンゼン基、フェニルピリミジン基、ジフェニルアセチレン基、ジフェニルベンゾエート基、ビシクロヘキサン基、シクロヘキシルベンゼン基、ターフェニル基等の環状構造が挙げられる。これらの環状単位の末端は、シアノ基、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン基等の置換基を有していてもよい。
【0053】
光重合性官能基としては、(メタ)アクリロイル基、エポキシ基、ビニルエーテル基等が挙げられる。中でも、(メタ)アクリロイル基が好ましい。光重合性液晶モノマーは、1分子中に2以上の光重合性官能基を有するものが好ましい。2以上の光重合性官能基を含む液晶モノマーを用いることにより、光硬化後の液晶層に架橋構造が導入されるため、配向液晶層の耐久性が向上する傾向がある。
【0054】
光重合性液晶モノマーとしては、任意の適切な液晶モノマーが採用され得る。例えば、国際公開第00/37585号、米国特許第5211877号、米国特許第4388453号、国際公開第93/22397号、欧州特許第0261712号、独国特許第19504224号、独国特許第4408171号、英国特許第2280445号、特開2017-206460号公報、国際公開第2014/126113号、国際公開第2016/114348号、国際公開第2014/010325号、特開2015-200877号公報、特開2010-31223号公報、国際公開第2011/050896号、特開2011-207765号公報、特開2010-31223号公報、特開2010-270108号公報、国際公開第2008/119427号、特開2008-107767号公報、特開2008-273925号公報、国際公開第2016/125839号、特開2008-273925号公報等に記載の化合物が挙げられる。液晶モノマーの選択により、複屈折の発現性や、レターデーションの波長分散を調整することもできる。
【0055】
液晶モノマー、ならびに各種の配向制御剤、重合開始剤、およびレベリング剤等を、溶媒と混合することにより、液晶組成物を調製し、支持基板上に塗布して液晶化合物を配向させることにより配向液晶層が形成される。支持基板として可撓性のフィルムを用いることにより、支持基板上への液晶組成物の塗布から液晶モノマーの光硬化、およびその後の加熱処理までの一連の工程を、ロール・トゥー・ロールにより実施できるため、生産性を向上できる。
【0056】
支持基板は、液晶化合物を所定方向に配向させるための配向能を有していてもよい。例えば、支持基板として延伸フィルムを用いることにより、その延伸方向に沿って液晶化合物をホモジニアス配向させることが可能である。延伸フィルムの延伸率は、配向能を発揮し得る程度であればよく、例えば、1.1倍~5倍程度である。延伸フィルムは二軸延伸フィルムであってもよい。二軸延伸フィルムであっても、縦方向と横方向の延伸倍率が異なるものを用いれば、延伸倍率の大きい方向に沿って液晶化合物を配向させることができる。延伸フィルムは斜め延伸フィルムであってもよい。支持基板として斜め延伸フィルムを用いることにより、支持基板の長手方向および幅方向のいずれとも平行ではない方向に液晶化合物を配向させることができる。
【0057】
支持基板は、配向液晶層を形成する面に配向膜を備えるものでもよい。配向膜は、液晶化合物の種類や支持基板の材質等によって、適宜、適切なものを選択すればよい。液晶化合物を所定方向にホモジニアス配向させるための配向膜としては、ポリイミド系やポリビニルアルコール系の配向膜をラビング処理したものが好適に用いられる。また、光配向膜を用いてもよい。配向膜を設けずに、支持基板としての樹脂フィルムにラビング処理を施してもよい。
【0058】
液晶化合物がサーモトロピック液晶である場合は、支持基板上に液晶組成物を塗布し、加熱により液晶化合物を液晶状態として配向させる。支持基板上に形成された液晶組成物層を加熱して液晶相とすることにより、液晶化合物が配向する。具体的には、液晶組成物を支持基板上に塗布後、液晶組成物のN(ネマチック相)-I(等方性液体相)転移温度以上に加熱して、液晶組成物を等方性液体状態にする。そこから、必要に応じ徐冷してネマチック相を発現させる。このとき、一旦液晶相を呈する温度に保ち、液晶相ドメインを成長させてモノドメインとすることが望ましい。あるいは、液晶組成物を支持基板上に塗布後、ネマチック相が発現する温度範囲内で温度を一定時間保持して液晶化合物を所定方向に配向させてもよい。
【0059】
液晶化合物を所定方向に配向させる際の加熱温度は、液晶組成物の種類に応じて適宜選択すればよく、通常40~200℃程度である。加熱温度が過度に低いと液晶相への転移が不十分となる傾向があり、加熱温度が過度に高いと配向欠陥が増加する場合がある。加熱時間は液晶相ドメインが十分に成長するように調整すればよく、通常30秒~30分程度である。
【0060】
加熱により液晶化合物を配向させた後、ガラス転移温度以下の温度に冷却することが好ましい。冷却方法は特に限定されず、例えば、加熱雰囲気から室温に取り出せばよい。空冷、水冷等の強制冷却を行ってもよい。
【0061】
液晶層に光照射を行うことにより、光重合性液晶化合物(液晶モノマー)が液晶規則性を有した状態で光硬化が行われる。照射光は、光重合性液晶化合物を重合せさることが可能であればよく、通常は、波長250~450nmの紫外または可視光が用いられる。液晶組成物の光硬化の際に、所定方向の偏光を利用することにより、液晶化合物を所定方向に配向させることもできる。上記のように、支持基板の配向規制力により液晶化合物を配向させる場合は、照射光は非偏光(自然光)でもよい。
【0062】
光照射により液晶モノマーを光硬化後の重合物は非液晶性であり、温度変化による、液晶相、ガラス相、結晶相の転移が生じない。そのため、液晶モノマーを所定方向に配向させた状態で光硬化した液晶層は、温度変化による分子配向の変化が生じ難い。また、配向液晶層は、非液晶材料からなるフィルムに比べて複屈折が格段に大きいため、1/4波長の正面レターデーションを有する第一位相差層131の厚みを格段に小さくできる。第一位相差層131がホモジニアス配向液晶層である場合、その厚みは、0.5~10μm程度である。
【0063】
<第二位相差層>
nz>nx≧nyの屈折率異方性を有する位相差層としては、nz>nx≒nyの屈折率異方性を有するポジティブCプレート、およびnz>nx>nyの屈折率異方性を有するポジティブBプレートが挙げられる。
【0064】
第二位相差層132としては、液晶化合物がホメオトロピック配向した配向液晶層、または負の固有複屈折を有する非液晶性樹脂材料(ポリマー)のフィルムが挙げられる。前述のように、位相差層13および円偏光板10のb*を小さくする観点から、nz>nx≒nyの屈折率異方性を有する第二位相差層132は、負の固有複屈折を有する非液晶性樹脂により構成された樹脂フィルムであることが好ましい。
【0065】
負の固有複屈折を有するポリマーは、ポリマーを延伸等により配向させた場合に、その配向方向の屈折率が相対的に小さくなるものを指す。負の固有複屈折を有するポリマーとしては、例えば、芳香族やカルボニル基などの分極異方性の大きい化学結合や官能基が、ポリマーの側鎖に導入されているものが挙げられ、具体的には、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、マレイミド系樹脂、フマル酸エステル系樹脂等が挙げられる。
【0066】
樹脂フィルムの製造方法は特に限定されず、溶液法および溶融法のいずれも採用し得る。溶液法により樹脂フィルムを形成する場合、ポリマーの分子鎖は面内方向に配向する傾向がある。負の固有複屈折を有するポリマーの分子鎖が面内に配向すると、塗膜の厚み方向屈折率nzが、面内の屈折率に対して相対的に小さくなり、nz>nx≒nyの屈折率異方性(厚み方向レターデーションRthが負の値)を有するポジティブCプレート特性が発現する。また、負の固有複屈折を有するポリマーのフィルムを、正面レターデーションが略0となるように二軸延伸することにより、正面レターデーションが略0であるポジティブCプレートが得られる。なお、nx≒nyとは、nxとnyが完全に一致している場合に限定されず、波長550nmにおける正面レターデーションRe(550)が10nm以下であればよい。ポジティブCプレートの正面レターデーションRe(550)は、5nm以下が好ましく、3nm以下または1nm以下であってもよい。
【0067】
上記の通り、第二位相差層132は、nz>nx>nyの屈折率異方性を有するポジティブBプレートであってもよい。例えば、負の固有複屈折を有するポリマーのフィルムを、正面レターデーションが略0となるように二軸延伸することによりポジティブCプレートが得られる。また、コーティングにより得られたnz>nx≒nyの屈折率異方性を有するポリマーフィルムを自由端一軸延伸すると、延伸方向の屈折率nyが小さくなり、延伸方向と直交する方向の屈折率nxおよび厚み方向の屈折率nzが大きくなるが、延伸後もnz>nyの関係が保持されるため、nz>nz>nyの屈折率異方性を有するフィルムが得られる。
【0068】
第二位相差層132は、Rth=(nx-nz)×dで表される厚み方向レターデーションRthが、0より小さい。なお、nzおよびnzは前述の通りであり、dは厚みである。第二位相差層132の厚み方向レターデーションRthは、例えば、-30~-200nmであり、-50~-150nmが好ましい。第一位相差層131の厚み方向レターデーションと第二位相差層132の厚み方向レターデーションの和は、30~110nmが好ましく、40~100nmがより好ましく、50~90nmがさらに好ましい。
【0069】
第二位相差層132の厚みは、30μm以下が好ましく、25μm以下がより好ましく、20μm以下であってもよい。第二位相差層132の厚みは、3μm以上または5μm以上であってもよい。第一位相差層131の厚みと第二位相差層132の厚みの和は、50μm以下が好ましく、40μm以下がより好ましく、30μm以下、25μm以下または20μm以下であってもよい。
【0070】
<偏光子保護フィルム>
円偏光板10において、偏光子11の視認側表面(位相差層13が配置されている面の反対側の面)には、偏光子保護フィルムとして透明フィルム15が貼り合わせられていてもよい。
【0071】
偏光子11上に透明フィルム15が貼り合わせられる場合、その厚みは、1~50μm程度である。円偏光板10の厚みを小さくする観点から、透明フィルム15の厚みは、45μm以下が好ましく、40μm以下がより好ましく、35μm以下であってもよい。ハンドリング性および表面保護性等の観点から、透明フィルム15の厚みは、5μm以上が好ましく、10μm以上がより好ましく、15μm以上または20μm以上であってもよい。
【0072】
透明フィルム15の樹脂材料の例としては、位相差層13の樹脂材料として前述したものが挙げられる。透明フィルム15は、樹脂フィルムの表面(偏光子11と反対側の面)に、ハードコート層、反射防止層、スティッキング防止層等の機能層を備えていてもよい。透明フィルム15が樹脂フィルム上に機能層を備える場合、これらの機能層を含めた厚みが上記範囲であることが好ましい。
【0073】
透明フィルム15は、可視光の吸収が少なく、透明であることが好ましい。透明フィルム15の全光線透過率は、80%以上が好ましく、85%以上がより好ましく、90%以上がさらに好ましい。透明フィルム15の波長440nmにおける光透過率は、80%以上が好ましく、85%以上がより好ましく、90%以上がさらに好ましい。
【0074】
<粘接着剤層>
円偏光板10を構成する偏光子11、位相差層13および透明フィルム15は、それぞれ、適宜の粘接着剤層(不図示)を介して貼り合わせられていることが好ましい。また、第一位相差層131と第二位相差層132も粘接着剤層を介して貼り合わせられていることが好ましい。粘接着剤層の厚みは、例えば、0.01~30μm程度である。
【0075】
接着剤としては、水系接着剤、溶剤系接着剤、ホットメルト接着剤系、活性エネルギー線硬化型接着剤等の各種形態のものが用いられる。これらの中でも、接着剤層の厚みを小さくできることから、水系接着剤または活性エネルギー線硬化型接着剤が好ましい。塗布後の硬化反応により接着性を示す接着剤を用いる場合、接着剤層の厚みは0.01~5μmが好ましく、0.03~3μmがより好ましい。
【0076】
水系接着剤のポリマー成分としては、ビニルポリマー、ゼラチン、ビニル系ラテックス、ポリウレタン、ポリエステ系、エポキシ等を例示できる。これらの中でも、易接着フィルムと偏光子との接着性に優れることから、ビニルポリマーが好ましく、ポリビニルアルコール系樹脂が特に好ましい。ポリビニルアルコール系樹脂の中でも、アセトアセチル基含有ポリビニルアルコールが好ましい。
【0077】
活性エネルギー線硬化型接着剤は、電子線や紫外線等の活性エネルギー線の照射により、ラジカル重合、カチオン重合またはアニオン重合可能な接着剤である。中でも、低エネルギーで硬化可能であることから、紫外線照射により重合が開始する光ラジカル重合性接着剤、光カチオン重合性接着剤、または光カチオン重合と光ラジカル重合を併用するハイブリッド型接着剤が好ましい。
【0078】
ラジカル重合性接着剤のモノマーとしては、(メタ)アクリロイル基を有する化合物や、ビニル基を有する化合物が挙げられる。中でも、(メタ)アクリロイル基を有する化合物が好適である。カチオン重合性接着剤の硬化性成分としては、エポキシ基やオキセタニル基を有する化合物が挙げられる。エポキシ基を有する化合物は、分子内に少なくとも2個のエポキシ基を有するものであれば特に限定されず、一般に知られている各種の硬化性エポキシ化合物が用いられる。
【0079】
粘着剤としては、アクリル系ポリマー、シリコーン系ポリマー、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエーテル、フッ素系やゴム系等のポリマーをベースポリマーとするものを適宜に選択して用いることができる。特に、光学的透明性に優れ、適度な濡れ性と凝集性を示し、かつ耐候性や耐熱性等に優れることから、アクリル系粘着剤が好ましい。
【0080】
円偏光板10の厚みを小さくする観点から、円偏光板の構成部材間を貼り合わせる粘着剤層の厚みは、20μm以下が好ましく、15μm以下がより好ましい。粘着剤層の厚みは、1~10μmまたは2~7μmであってもよい。
【0081】
[有機EL表示装置]
有機ELセル70の視認側表面に円偏光板10を配置することにより、有機EL表示装置100が形成される。
図3に示す様に、有機ELセル70と円偏光板10は、適宜の粘接着剤層21を介して貼り合わせられていてもよい。粘接着剤層21としては、硬化型の接着剤または粘着剤(感圧接着剤)が用いられる。粘接着剤層21の厚みは、例えば、0.1~50μm程度である。
【0082】
取扱性等の観点から、粘接着剤層21としては、粘着剤が好ましい。粘着剤としては、アクリル系ポリマー、シリコーン系ポリマー、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエーテル、フッ素系ポリマー、ゴム系ポリマー等をベースポリマーとするものを適宜に選択して用いることができる。特に、アクリル系粘着剤やゴム系粘着剤等の、透明性に優れ、適度な濡れ性と凝集性と接着性を示し、耐候性や耐熱性等に優れる粘着剤が好ましい。
【0083】
粘着剤層の厚みは、例えば、1~50μm程度である。薄型化および折り曲げ性の観点から、有機ELセル70と円偏光板10とを貼り合わせる粘着剤層21の厚みは、30μm以下が好ましく、25μm以下がより好ましく、20μm以下がさらに好ましく、18μm以下であってもよい。
【0084】
図2に示すように、円偏光板10の位相差層13側の面に予め粘着剤層21を設けて、粘着剤層付き円偏光板としてもよい。粘着剤層付き円偏光板の厚み(円偏光板10の厚みと粘着剤層21の厚みの合計)は、100μm以下が好ましく、90μm以下がより好ましく、80μm以下または75μm以下であってもよい。
【0085】
粘着剤層付き偏光板において、粘着剤層21の表面には、粘着剤層の汚染防止等を目的として、はく離ライナー(不図示)を仮着してもよい。はく離ライナーとしては、プラスチックフィルムの表面を、シリコーン系離型剤、長鎖アルキル系離型剤、フッ素系離型剤等の剥離剤でコーティングしたものが好ましく用いられる。
【0086】
有機EL表示装置は、有機ELセル70および円偏光板10に加えて、任意の光学部材を含んでいてもよい。例えば、円偏光板10の視認側表面には、ハードコート層、反射防止層、防汚層、表面保護層(カバーウインドウ)等が設けられていてもよい。また、有機EL表示装置は、タッチパネルセンサーを含んでいてもよい。タッチパネルセンサーは、有機ELセル70の裏面、有機ELセル70の内部、有機ELセル70と円偏光板10との間、円偏光板10よりも視認側のいずれに配置されていてもよい。
【0087】
前述のように、本発明の画像表示装置は、曲面部分または屈曲可能部分を有する。円偏光板10の厚みが小さいため、円偏光板10は曲面部分または屈曲部分での折り曲げ性および耐屈曲性に優れている。また、円偏光板の透過光のb*が小さいため、曲面部分または屈曲部分においても、白表示時の黄色い着色が少なく、画像表示装置は良好な視認性を示す。
【実施例0088】
以下、実施例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。
【0089】
[位相差層の製造例]
<製造例1:ポリカーボネート系延伸フィルム>
反応容器に、ビス[9-(2-フェノキシカルボニルエチル)フルオレン-9-イル]メタン:38.06重量部、イソソルビド(ロケットフルーレ製「POLYSORB」):53.73重量部、1,4-シクロヘキサンジメタノール(シス・トランス混合物、SKケミカル製):9.64重量部、およびジフェニルカーボネート(三菱ケミカル製):81.28重量部、ならびに触媒としての酢酸カルシウム一水和物を投入し、減圧窒素置換した後、窒素ガス気流下、150℃で約10分間攪拌して、原料を溶解させた。220℃に昇温した後、常圧で60分反応を行った。その後、常圧から13.3kPaに減圧し、30分間保持して、発生するフェノールを反応系外へ抜き出した。次いで、240℃まで昇温しながら、圧力を0.10kPa以下まで減圧して、発生するフェノールを反応系外へ抜き出した。所定の撹拌トルクに到達後、窒素で常圧まで復圧して反応を停止した。生成したポリカーボネートを水中に押し出し、ストランドをカッティングしてポリカーボネート(PC)樹脂ペレットを得た。
【0090】
上記のポリカーボネート樹脂ペレットを用い、溶融押出法により、厚み100μmの未延伸フィルムを作製した。このフィルムを、左右のクリップの進行速度を独立制御可能なテンター式延伸機により、温度137℃、延伸倍率約2.5倍で斜め延伸して、遅相軸方向がフィルムの長手方向に対して45°である延伸位相差フィルム(厚み47μm、正面レターデーションRe(550)=140nm)を得た。
【0091】
<製造例2:ホモジニアス配向液晶フィルム>
ネマチック液晶相を示す光重合性液晶化合物(BASF製「Paliocolor LC242」)をシクロペンタノンに溶解して、固形分濃度30重量%の溶液を調製した。この溶液に、界面活性剤(ビック・ケミー製「BYK-360」)および光重合開始剤(IGM Resins製「Omnirad907」)を添加して、液晶組成物溶液を調製した。レベリング剤および重合開始剤の添加量は、光重合性液晶化合物100重量部に対して、それぞれ、0.01重量部および3重量部とした。
【0092】
二軸延伸ノルボルネン系フィルム(日本ゼオン製「ゼオノアフィルム」、厚み:33μm、正面レターデーション:135nm)を基材として、基材上に上記の液晶組成物を乾燥後の厚みが3μmとなるようにバーコーターにより塗布し、100℃で3分間加熱して液晶を配向させた。室温に冷却した後、窒素雰囲気下で、積算光量400mJ/cm2の紫外線を照射して光硬化を行い、フィルム基材上に、配向膜を介さずにホモジニアス配向液晶層が設けられた積層体を得た。
【0093】
<製造例3:ホメオトロピック配向液晶フィルム>
下記の化学式(n=0.35であり、便宜上ブロックポリマー体で示している)の重量平均分子量5000の側鎖型液晶ポリマー20重量部、ネマチック液晶相を示す重合性液晶化合物(BASF製「Paliocolor LC242」)80重量部、および光重合開始剤(IGM Resins製「Omnirad907」)5重量部を、シクロペンタノン400重量部に溶解して液晶組成物を調製した。
【0094】
【0095】
二軸延伸ノルボルネン系フィルム(日本ゼオン製「ゼオノアフィルム」、厚み:52μm、正面レターデーション:50nm)を基材として、基材上に上記の液晶組成物を乾燥後の厚みが3.5μmとなるようにバーコーターにより塗布し、80℃で2分間加熱して液晶を配向させた室温に冷却した後、窒素雰囲気下で700mJ/cm2の紫外線を照射して、液晶モノマーを光硬化させ、フィルム基材上に、配向膜を介さずにホメオトロピック配向液晶層が設けられた積層体を得た。
【0096】
<製造例4:ポリ(ニトロスチレン)系コーティングフィルム>
反応容器中で、ニトロベンゼン900重量部と1、2-ジクロロエタン300重量部の混合溶媒にポリスチレン50重量部を溶解させ、撹拌しながら、硝酸86重量部と濃硫酸100重量部の混合酸を、30分かけて滴下した。室温で撹拌しながら22時間反応させた後、反応液を水酸化ナトリウム水溶液中に注ぎ、有機相を分離して、メタノール中で沈殿させた。沈殿物を、N、N-ジメチルホルムアミド(DMF)中に溶解させ、メタノール中で再沈殿させ、ろ過した後、メタノールで繰り返し洗浄し、真空下で乾燥させて、ポリ(ニトロスチレン)系樹脂の繊維状粉末を得た。
【0097】
得られたポリ(ニトロスチレン)系樹脂を、シクロペンタノンに溶解して20%溶液とし、PETフィルム上に塗布し、乾燥して、PETフィルム上に厚み6μmのフィルム(コーティング位相差フィルム)が設けられた積層体を得た。PETフィルムを剥離後のコーティングフィルムの正面レターデーションは0nm、厚み方向レターデーションは-85nmであった。
【0098】
<製造例5:フマル酸エステル系コーティングフィルム>
オートクレーブに、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(信越化学工業製「メトローズ60SH-50」):48重量部、蒸留水:15600重量部、フマル酸ジイソプロピル:8161重量部、アクリル酸3-エチル-3-オキセタニルメチル:240重量部、および重合開始剤としてt-ブチルパーオキシピバレートを投入し、窒素バブリングを1時間行った後、攪拌しながら49℃で24時間保持して、ラジカル懸濁重合を行なった。次いで、室温まで冷却し、生成したポリマー粒子を含む懸濁液を遠心分離した。得られたポリマー粒子を、蒸留水およびメタノールで洗浄した後、80℃で減圧乾燥してフマル酸エステル系樹脂を得た。
【0099】
上記のフマル酸エステル系樹脂を、トルエン・メチルエチルケトン混合溶媒に溶解して樹脂溶液を調製し、溶液製膜法により厚み20μmの未延伸フィルム(コーティング位相差フィルム)を作製した。このフィルムの正面レターデーションは0nm、厚み方向レターデーションは-85nmであった。
【0100】
[偏光板の製造例]
<製造例6:両保護偏光板>
(偏光子の作製)
厚み30μmのポリビニルアルコールフィルム(クラレ製「PE3000」)を、ロール搬送しながら、20℃の純水中で2.2倍に自由端一軸延伸した。次いで、30℃の染色液(0.2%ヨウ素、1.4%ヨウ化カリウム水溶液)中で1.4倍、40℃の架橋液1(5.0%ホウ酸、3.0%ヨウ化カリウム水溶液)中で1.2倍、65℃の架橋液2(4.3%ホウ酸、5.0%ヨウ化カリウム水溶液)中で1.6倍に自由端一軸延伸した。その後、20℃の洗浄液(2.6%ヨウ化カリウム水溶液)に浸漬し、70℃のオーブン内で5分間乾燥して、厚み12μmの偏光子を得た。
【0101】
(保護フィルムの貼り合わせ)
上記の偏光子の一方の面に、トリアセチルセルロース(TAC)フィルム(25μm)、偏光子の他方の面に、片面にハードコート層が形成されたTACフィルム(厚み32μm)のハードコート層非形成面を、紫外線硬化型接着剤を介して貼り合わせ、偏光子の両面に透明フィルム(偏光子保護フィルム)が貼り合わせられた偏光板(合計厚み69μm)を作製した。
【0102】
<製造例7:片保護偏光板>
厚み100μmの非晶質ポリエステルフィルム(ポリエチレン-テレフタレート/イソフタレート;ガラス転移温度75℃)の片面にコロナ処理を施した。ポリビニルアルコール(重合度4200、ケン化度99.2モル%)およびアセトアセチル変性ポリビニルアルコール(日本合成化学工業製「ゴーセファイマーZ410」)を9:1の重量比で混合した樹脂100重量部に、ヨウ化カリウム13重量部を添加し、PVA水溶液を調製した。この水溶液を、非晶質ポリエステルフィルムのコロナ処理面に塗布し、60℃で乾燥して、非晶質ポリエステルフィルム基材上に厚み13μmのPVA系樹脂層が設けられた積層体を作製した。
【0103】
この積層体を、130℃のオーブン内での空中補助延伸により長手方向に3.0倍に自由端一軸延伸した後、ロール搬送しながら、40℃の4%ホウ酸水溶液に30秒間、40℃の染色液(0.2%ヨウ素、1.4%ヨウ化カリウム水溶液)に60秒間、順次浸漬した。次いで、積層体をロール搬送しながら、40℃の架橋液(ホウ酸5%、ヨウ化カリウム3%水溶液)に30秒間浸漬して架橋処理を行い、70℃のホウ酸4%、ヨウ化カリウム5%水溶液に浸漬しながら、総延伸倍率が5.5倍となるように長手方向に自由端一軸延伸した。その後、積層体を20℃の洗浄液(4%ヨウ化カリウム水溶液)に浸漬した。
【0104】
積層体を60℃のオーブン内で1分間搬送して乾燥を行った。この間に、オーブン内に配置された表面温度が75℃のSUS製加熱ロールに約2秒間接触させた。上記の工程により、非晶質ポリエステルフィルム基材上に厚み約5μmのPVA系偏光子が設けられた積層体を得た。
【0105】
片面にハードコート層が形成されたTACフィルム(厚み32μm)のハードコート層非形成面を、上記の積層体の偏光子側に、紫外線硬化型接着剤を介して貼り合わせた。その後、偏光子から非晶質ポリエステルフィルム基材を剥離して、偏光子の片側にハードコートフィルムが貼り合わせられた偏光板(合計厚み38μm)を得た。
【0106】
[円偏光板の作製]
<比較例1>
製造例1のポリカーボネートフィルムと、製造例3のホメオトロピック配向液晶フィルムを、紫外線硬化型接着剤を介して貼り合わせて積層位相差板を作製した。
【0107】
この積層位相差板のポリカーボネートフィルム側の面を、厚み5μmのアクリル系粘着剤層を介して、製造例6の偏光板のハードコート層が設けられていないTACフィルム側の面に貼り合わせた後、ホメオトロピック配向液晶フィルムからフィルム基材を剥離して、合計厚みが126μmの円偏光板を作製した。ポリカーボネートフィルムの延伸方向(遅相軸方向)と偏光子の延伸方向(吸収軸方向)とのなす角は45°であった。
【0108】
上記の円偏光板のホメオトロピック配向液晶層側の面に、厚み20μmのアクリル系粘着シートを貼り合わせて、合計厚みが146μmの粘着剤層付き円偏光板を得た。
【0109】
<比較例2>
製造例2のホモジニアス配向液晶フィルムと、製造例3のホメオトロピック配向液晶フィルムを、紫外線硬化型接着剤を介して貼り合わせて積層位相差板を作製した。
【0110】
この積層位相差板のホモジニアス配向液晶フィルムからフィルム基材を剥離し、厚み5μmのアクリル系粘着剤層を介して、製造例6の偏光板のハードコート層が設けられていないTACフィルム側の面に貼り合わせた後、ホメオトロピック配向液晶フィルムからフィルム基材を剥離して、合計厚みが82μmの円偏光板を作製した。ホモジニアス配向液晶層の配向方向(遅相軸方向)と偏光子の延伸方向(吸収軸方向)とのなす角は45°であった。
【0111】
上記の円偏光板のホメオトロピック配向液晶層側の面に、厚み20μmのアクリル系粘着シートを貼り合わせて、合計厚みが102μmの粘着剤層付き円偏光板を得た。
【0112】
<比較例3>
比較例2と同様にして、ホモジニアス配向液晶フィルムとホメオトロピック配向液晶フィルムが積層された積層位相差板を作製した。ホモジニアス配向液晶フィルムからフィルム基材を剥離し、厚み5μmのアクリル系粘着剤層を介して、製造例7の偏光子側の面に貼り合わせた後、ホメオトロピック配向液晶フィルムからフィルム基材を剥離して、合計厚みが51μmの円偏光板を作製した。
【0113】
上記の円偏光板のホメオトロピック配向液晶層側の面に、厚み15μmのアクリル系粘着シートを貼り合わせて、合計厚みが66μmの粘着剤層付き円偏光板を得た。
【0114】
<実施例1>
製造例2のホモジニアス配向液晶フィルムと、製造例4のポリ(ニトロスチレン)系樹脂フィルムを、紫外線硬化型接着剤を介して貼り合わせて、積層位相差板を作製した。
【0115】
この積層位相差板のホモジニアス配向液晶フィルムからフィルム基材を剥離し、比較例3と同様にして、製造例6の偏光板と貼り合わせて、厚み53μmの円偏光板を作製した。この円偏光板のポリ(ニトロスチレン)系樹脂フィルムの面に、厚み15μmのアクリル系粘着シートを貼り合わせて、合計厚みが68μmの粘着剤層付き円偏光板を得た。
【0116】
<実施例2>
製造例2のホモジニアス配向液晶フィルムと、製造例5のフマル酸エステル系樹脂フィルムを、紫外線硬化型接着剤を介して貼り合わせて、積層位相差板を作製した。
【0117】
この積層位相差板のホモジニアス配向液晶フィルムからフィルム基材を剥離し、比較例3と同様にして、製造例6の偏光板と貼り合わせて、厚み67μmの円偏光板を作製した。この円偏光板のフマル酸エステル系樹脂フィルムの面に、厚み15μmのアクリル系粘着シートを貼り合わせて、合計厚みが82μmの粘着剤層付き円偏光板を得た。
【0118】
[評価]
実施例および比較例の円偏光板について、以下の評価を実施した。
【0119】
<透過光b*>
紫外可視分光光度計(日本分光製「V-7100」)により、実施例および比較例の円偏光板の透過スペクトルを測定し、JIS Z8729に準じて、2度視野、標準光源:D65での透過光のクロマティクネス指数b*を算出した。
【0120】
<耐屈曲性>
実施例および比較例の円偏光板を、30mm×100mmの長方形に切り出して、ユアサシステム機器製の卓上型耐久試験機(クラムシェル型屈曲試験機「DR11MR4-CS-m」の治具に、アクリル系粘着シートを介して貼り合わせた。試料の短辺方向が屈曲軸となるように配置し、屈曲部分にはアクリル系粘着シートを設けなかった。さらに、試料の長辺にポリイミドテープを貼り合わせて、治具に固定した。
【0121】
屈曲半径:1.5mm、屈曲速度:30サイクル/分の条件で、10万回の屈曲試験を実施し、試験後の試料の屈曲部分を目視にて確認した。クラックや割れが見られなかったものを〇、クラックまたは割れがみられたものを×とした。
【0122】
<屈曲部分の着色>
実施例および比較例の円偏光板を、30mm×100mmの長方形に切り出し、長辺方向の中央付近で、屈曲半径1.5mmで180°屈曲させた。この試料を暗室内のトレース台上で目視し、試料の屈曲部分におけるトレース台からの白色光の透過光の着色を確認した。著しく黄色く視認されたものを×、特に着色が気にならないものを〇とした。
【0123】
実施例および比較例の円偏光板の積層構成、および評価結果を表1に示す。位相差層1は、偏光子に近い側に配置されたλ/4板であり、位相差層2は偏光子から遠い側に配置されたポジティブCプレートである。表1では、位相差層1,2について、材料が樹脂材料であるか液晶材料であるかを示すとともに、括弧内に位相差層の厚みを記載している。
【0124】
【0125】
位相差層1(λ/4板)および位相差層2(ポジティブCプレート)がいずれも配向液晶層である比較例2,3の円偏光板は、透過光のb*が大きく、屈曲部分が黄色く着色して視認された。また、比較例2では、比較例3に比べて、耐屈曲性が低下していた。位相差層1として延伸樹脂フィルムを用いた比較例1では、着色は改善されていたが、厚みが大きいために、耐屈曲性が低下していた。
【0126】
位相差層1が配向液晶層であり、位相差層2が負の固有複屈折を有する樹脂のコーティングにより形成されたポジティブCプレートである実施例1および実施例2は、比較例2,3に比べてb*が小さく、着色が改善しており、耐屈曲性も良好であった。