IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ コイト電工株式会社の特許一覧

特開2024-104952情報通知システム、信号情報発信ユニットおよび発信制御装置
<>
  • 特開-情報通知システム、信号情報発信ユニットおよび発信制御装置 図1
  • 特開-情報通知システム、信号情報発信ユニットおよび発信制御装置 図2
  • 特開-情報通知システム、信号情報発信ユニットおよび発信制御装置 図3
  • 特開-情報通知システム、信号情報発信ユニットおよび発信制御装置 図4
  • 特開-情報通知システム、信号情報発信ユニットおよび発信制御装置 図5
  • 特開-情報通知システム、信号情報発信ユニットおよび発信制御装置 図6
  • 特開-情報通知システム、信号情報発信ユニットおよび発信制御装置 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024104952
(43)【公開日】2024-08-06
(54)【発明の名称】情報通知システム、信号情報発信ユニットおよび発信制御装置
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/09 20060101AFI20240730BHJP
   G08G 1/005 20060101ALI20240730BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20240730BHJP
【FI】
G08G1/09 D
G08G1/005
G08G1/16 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023009410
(22)【出願日】2023-01-25
(71)【出願人】
【識別番号】390010054
【氏名又は名称】コイト電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003339
【氏名又は名称】弁理士法人南青山国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小平 恭宏
(72)【発明者】
【氏名】角 建志
(72)【発明者】
【氏名】金子 英起
【テーマコード(参考)】
5H181
【Fターム(参考)】
5H181AA23
5H181BB04
5H181FF05
5H181FF13
5H181LL07
5H181LL08
(57)【要約】
【課題】騒音を抑制しつつ視覚障がい者に歩行者用信号機の灯色情報を通知することができる情報通知システム、信号情報発信ユニットおよび発信制御装置を提供する。
【解決手段】本発明の一形態に係る情報通知システムは、信号情報発信ユニットと、情報通知装置とを具備する。信号情報発信ユニットは、横断歩道に設けられた歩行者用信号機から送信される灯色情報を取得する取得部と灯色情報に基づいて第1の駆動信号を生成する第1の制御部とを有する発信制御装置と、第1の駆動信号に基づいて、横断歩道に向けて、灯色情報に応じた信号情報を、超音波を用いて送信する発信機とを有する。情報通知装置は、信号情報に基づいて第2の駆動信号を生成する第2の制御部と、第2の駆動信号に基づいて灯色情報を聴覚または触覚の少なくとも一つを介してユーザに通知する通知部と、を有し、ユーザに携帯される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
横断歩道に設けられた歩行者用信号機から送信される前記歩行者用信号機の現在の灯色に関する灯色情報を取得する取得部と前記取得部によって取得された前記灯色情報に基づいて第1の駆動信号を生成する第1の制御部とを有する発信制御装置と、前記第1の駆動信号に基づいて、前記横断歩道に向けて、前記取得部で取得された前記灯色情報に応じた信号情報を、超音波を用いて送信する発信機と、を有し、前記歩行者用信号機に設けられた信号情報発信ユニットと、
前記発信機から送信される前記信号情報を受信する受信部と、前記信号情報に基づいて第2の駆動信号を生成する第2の制御部と、前記第2の駆動信号に基づいて前記灯色情報を聴覚または触覚の少なくとも一つを介してユーザに通知する通知部と、を有し、前記ユーザに携帯される情報通知装置と
を具備する情報通知システム。
【請求項2】
請求項1に記載の情報通知システムであって、
前記灯色情報は、前記歩行者用信号機の灯色が横断可能を示す青信号、横断不可能を示す赤信号、または前記青信号の点滅信号のいずれか1つである
情報通知システム。
【請求項3】
請求項1に記載の情報通知システムであって、
前記第2の制御部は、前記発信機から送信された前記信号情報の受信レベルが所定の値以上かどうかを判定し、前記受信レベルが前記所定の値以上の場合、前記第2の駆動信号を生成する
情報通知システム。
【請求項4】
請求項2に記載の情報通知システムであって、
前記発信機は、前記灯色情報を表す識別コードが重畳された音響信号を用いて前記信号情報を送信し、
前記情報通知装置は、前記識別コードに対応する前記灯色情報を記憶する記憶部をさらに有する
情報通知システム。
【請求項5】
請求項4に記載の情報通知システムであって、
前記記憶部は、前記横断歩道が延びる方向に関する方向情報をさらに記憶し、
前記情報通知装置は、前記ユーザの進む方位を検出する検出部をさらに有し、
前記通知部は、前記検出部の検出結果と、前記記憶部に記憶された前記灯色情報及び前記方向情報と、を聴覚または触覚の少なくとも一つを介して前記ユーザに通知する
情報通知システム。
【請求項6】
請求項1に記載の情報通知システムであって、
前記通知部は、前記灯色情報を音声により前記歩行者に通知するスピーカを含む
情報通知システム。
【請求項7】
請求項1に記載の情報通知システムであって、
前記通知部は、前記灯色情報を振動により前記歩行者に通知する発振器を含む
情報通知システム。
【請求項8】
請求項1に記載の情報通知システムであって、
前記発信機は、前記信号情報を常時送信する
情報通知システム。
【請求項9】
横断歩道に設けられた歩行者用信号機から送信される前記歩行者用信号機の現在の灯色に関する灯色情報を取得する取得部と、前記灯色情報に基づいて第1の駆動信号を生成する第1の制御部とを有し、前記歩行者用信号機に設けられた発信制御装置と、
前記第1の駆動信号に基づいて、前記横断歩道に向けて、前記取得部で取得された前記灯色情報に応じた信号情報を、超音波を用いて送信し、前記歩行者用信号機に設けられた発信機と
を具備する信号情報発信ユニット。
【請求項10】
歩行者用信号機に設けられた発信制御装置であって、
横断歩道に設けられた前記歩行者用信号機から送信される前記歩行者用信号機の現在の灯色に関する灯色情報を取得する取得部と、
前記灯色情報に基づいて、前記横断歩道に向けて、前記取得部で取得された前記灯色情報に応じた信号情報を、超音波を用いて送信し、前記歩行者用信号機に設けられた発信機を駆動させる第1の駆動信号を生成する第1の制御部と
を具備する発信制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば横断歩道を渡ろうとする視覚障がい者に歩行者用信号機の灯色情報を通知する情報通知システム、信号情報発信ユニットおよび発信制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、視覚障がい者等が安全に横断歩道を渡ることができるように、音声により誘導することが行われている。
【0003】
例えば、特許文献1には、歩行者用交通信号灯器の支柱に取り付けられた白杖センサが、白杖の有無を検出し、制御機が、白状検出信号が入力されるとスピーカからの音響出力を開始して、音によって視覚障がい者を案内することについて記載されている。
【0004】
また特許文献2には、自機から通信可能範囲内にある携帯電話端末を検索し、交通信号機の状態情報を送信する機能を備えた交通信号機と、状態情報を解析し、ユーザに音声通知を行う携帯電話端末と、からなり、Bluetooth(登録商標)を用いて通信を行うシステムについて記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006-11600号公報
【特許文献2】特許第4385545号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1のように音を鳴らして視覚障がい者に歩行者用信号機の灯色情報を知らせていた場合、音量が大きいと近隣の住民にとって騒音となるおそれがある。
【0007】
また、特許文献2のようにBluetooth(登録商標)を用いて接続認証を行う構成は、構成が煩雑になり、製造コストが増加するというおそれがある。
【0008】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、騒音を抑制しつつ視覚障がい者に歩行者用信号機の灯色情報を通知することができる情報通知システム、信号情報発信ユニットおよび発信制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る情報通知システムは、信号情報発信ユニットと、情報通知装置とを具備する。
上記信号情報発信ユニットは、歩行者用信号機に設けられ、発信制御装置と、発信機と、を有する。
発信制御装置は、横断歩道に設けられた上記歩行者用信号機から送信される上記歩行者用信号機の現在の灯色に関する灯色情報を取得する取得部と、上記取得部によって取得された上記灯色情報に基づいて第1の駆動信号を生成する第1の制御部とを有する。
上記発信機は、上記第1の駆動信号に基づいて、上記横断歩道に向けて、上記取得部で取得された上記灯色情報に応じた信号情報を、超音波を用いて送信する。
上記情報通知装置は、上記発信機から送信される上記信号情報を受信する受信部と、上記信号情報に基づいて第2の駆動信号を生成する第2の制御部と、上記第2の駆動信号に基づいて上記灯色情報を聴覚または触覚の少なくとも一つを介してユーザに通知する通知部と、を有し、上記ユーザに携帯される。
【0010】
上記情報通知システムにおいて、超音波を用いてユーザに灯色情報に応じた信号情報を送信し、ユーザが携帯する情報通知装置が上記信号情報を受信して、上記灯色情報を通知部により通知する。これにより、灯色情報を必要とするユーザにのみ灯色情報を通知することが可能となるため、騒音を抑制することができる。また発信機は、ユーザの携帯する情報通知装置を検索したり、情報通知装置と接続認証を行ったりすることなく、信号情報を送信しているため、簡易な構成でユーザに灯色情報を通知することができる。これにより、製造コストを抑制しつつ、ユーザに灯色情報を通知することができる。
【0011】
上記灯色情報は、上記歩行者用信号機の灯色が横断可能を示す青信号、横断不可能を示す赤信号、または前記青信号の点滅信号のいずれか1つであってもよい。
【0012】
上記第2の制御部は、上記発信機から送信された上記信号情報の受信レベルが所定の値以上かどうかを判定し、上記受信レベルが上記所定の値以上の場合、上記第2の駆動信号を生成してもよい。
【0013】
上記発信機は、上記灯色情報を表す識別コードが重畳された音響信号を用いて上記信号情報を送信してもよい。その場合、上記情報通知装置は、上記識別コードに対応する上記灯色情報を記憶する記憶部をさらに有する。
【0014】
上記記憶部は、上記横断歩道が延びる方向に関する方向情報をさらに記憶し、上記情報通知装置は、上記ユーザの進む方位を検出する検出部をさらに有してもよい。その場合、上記通知部は、上記検出部の検出結果と、上記記憶部に記憶された上記灯色情報及び上記方向情報と、を聴覚または触覚の少なくとも一つを介して前記ユーザに通知する。
【0015】
上記通知部は、上記灯色情報を音声により上記歩行者に通知するスピーカを含んでもよい。
【0016】
上記通知部は、上記灯色情報を振動により上記歩行者に通知する発振器を含んでもよい。
【0017】
上記発信機は、上記信号情報を常時送信してもよい。
【0018】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る信号情報発信ユニットは、発信制御装置と、発振器とを有する。
上記発信制御装置は、上記歩行者用信号機に設けられ、横断歩道に設けられた歩行者用信号機から送信される上記歩行者用信号機の現在の灯色に関する灯色情報を取得する取得部と、上記灯色情報に基づいて第1の駆動信号を生成する第1の制御部と、上記第1の駆動信号に基づいて、上記横断歩道に向けて、上記取得部で取得された上記灯色情報に応じた信号情報を、超音波を用いて送信する。
【0019】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る発信制御装置は、歩行者用信号機に設けられ、取得部と、第1の制御装置とを具備する。
上記取得部は、横断歩道に設けられた上記歩行者用信号機から送信される上記歩行者用信号機の現在の灯色に関する灯色情報を取得する。
上記第1の制御部は、上記灯色情報に基づいて、上記横断歩道に向けて、上記取得部で取得された上記灯色情報に応じた信号情報を、超音波を用いて送信し、上記歩行者用信号機に設けられた発信機を駆動させる第1の駆動信号を生成する。
【発明の効果】
【0020】
以上のように、本発明によれば、騒音を抑制しつつ視覚障がい者に歩行者用信号機の灯色情報を通知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の第1の実施形態における交通システムの概略構成図である。
図2】第1の実施形態における交通システムのブロック図である。
図3】第1の実施形態における交通システムの使用例である。
図4】第1の実施形態における情報通知システムのフローチャートである。
図5】変形例1における交通システムのブロック図である。
図6】第2の実施形態における交通システムのブロック図である。
図7】信号情報発信ユニットが設けられた交差点である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。図1は、本発明の第1の実施形態における交通システム1の概略構成図であり、図2は、交通システム1のブロックを示す図であり、図3は、交通システム1の使用例である。本実施形態では、図1に示された歩行者Peは、白杖Cをもった視覚障がい者で説明するが、これに限られず、白杖Cをもっていない方であり、例えば、弱視の方や色覚多様性の方であってもよい。
【0023】
<第1の実施形態>
図2に示すように交通システム1は、情報通知システム200と、信号制御機40とを備える。情報通知システム200は、信号情報発信ユニット100と、情報通知装置30とを備え、信号情報発信ユニット100は、発信制御装置10と、発信機20と、を有する。
【0024】
(信号制御機)
本実施形態では、図1に示されるように、歩行者用信号機Tは、歩行者用信号灯器Sと信号制御機40とを有し、それぞれが支柱Pに設置されている。
【0025】
信号制御機40は、図1、3に示されるように、商用電源を電力源に用いて、予め設定された点灯時間(現示秒数)及び周期で横断歩道Dに設置されている歩行者用信号灯器Sの灯色(赤、青)を制御する。信号制御機40は、歩行者用信号灯器Sと有線で電気的に接続される。また信号制御機40は、歩行者用信号灯器Sを歩行者用信号灯器Sの灯色変更(赤信号から青信号)を要求する押ボタンからの要求信号に基づいて、灯色の変更を行ってもよい。
【0026】
(信号情報発信ユニット)
信号情報発信ユニット100は、超音波により外部に歩行者用信号機Tの灯色情報に応じた信号情報を送信するユニットである。上述したように信号情報発信ユニット100は、発信制御装置10と、発信機20とを有する。
【0027】
発信制御装置10は、本実施形態では、支柱Pに設けられ、CPU(Central Processing Unit)等により構成され、取得部11と、第1の制御部12と、第1の記憶部13とを有する。取得部11は、信号制御機40から送信される歩行者用信号機Tの現在の灯色に関する灯色情報を取得する。
【0028】
本実施形態では、灯色情報とは、歩行者用信号機Tの灯色に関する情報であり、例えば歩行者用信号灯器Sの灯色が横断可能を示す青信号、横断不可能を示す赤信号、または青信号の点滅信号のいずれかであることを示す情報である。本実施形態では例えば取得部11は、信号制御機40から歩行者用信号機Tは赤信号であるという情報を取得する。もちろん灯色情報はこれに限られず、例えば、その灯色の残秒数を含んでもよい。例えば、信号制御機40から歩行者用信号機Tは青信号でありその残秒数は、10秒であるという情報である。
【0029】
取得部11が灯色情報を取得する構成について、例えば、信号制御機40から歩行者用信号灯器Sに接続され歩行者用信号灯器Sの灯色の制御をおこなう信号が送信される信号線を分岐させて歩行者用信号機Tの灯色情報を発信制御装置10に送信させるようにしてもよい。また信号制御機40から発信制御装置10に有線又は無線で制御設定情報が送信されるようにしてもよい。もちろんこれに限られず、信号制御機40から灯色情報を発信制御装置10が取得できる構成であればよい。
【0030】
ここで制御設定情報とは、典型的には、歩行者用信号灯器Sの信号機定数をいい、階梯表(灯色出力データ)、オフセット、時限表、感応秒数、安全確保時間などが含まれる。
【0031】
第1の制御部12は、取得部11によって取得された灯色情報に基づいて、後述する発信機20を駆動させる第1の駆動信号を生成する。第1の制御部12は、灯色情報に対応する第1の駆動信号を第1の記憶部13から読み出してもよい。
【0032】
第1の制御部12は、例えば、歩行者用信号機Tが赤信号である場合に応じた信号情報を発信機20が送信できるように第1の駆動信号を生成する。もちろんこれに限られず、歩行者用信号機Tが青信号の場合や青信号の点滅信号の場合も同様である。
【0033】
第1の記憶部13は、発信制御装置10の第1の制御部12の各種機能を実行させるプログラムや各種パラメータに関する情報を記憶する。例えば信号制御機40から送信される灯色情報に応じた出力値(参考値)やその出力値に応じて発信機20を駆動させる際の超音波に関するデータなどが記憶される。超音波に関するデータとは、発信機20によって出力される様々な超音波の種類(振幅や周波数、出力時間などが異なるもの)などを記憶したものである。
【0034】
発信機20は、本実施形態では支柱Pに設けられており、横断歩道Dに向けて、超音波を用いて信号情報を送信する。本実施形態において発信機20は、第1の受信部21と、信号処理部22と、拡声器23とを有する。また本実施形態では発信機20は、歩行者用信号灯器Sの周囲に設けられている。
【0035】
ここで横断歩道Dに向けてとは、図3に示されるように、横断歩道D上だけでなく、横断歩道Dを含むその周囲の領域Wや、支柱P1や支柱P2の周囲であり歩行者が赤信号時に待機している領域W1、W2を含む。領域W1、W2の大きさは特に限られないが、例えば横断歩道D手前の3メートル四方である。領域W1、W2内には、点字ブロックが含まれることが好ましいがこの限りではない。本実施形態では、発信機20は対向する支柱P2の周囲に存在する領域W1に向けて送信されるが、もちろんこれに限られず、周囲の領域Wまたは領域W1+領域Wであってもよい。
【0036】
第1の受信部11は、上記第1の制御部12によって生成された第1の駆動信号を受信する。
【0037】
信号処理部22は、D/A変換処理と、増幅処理とを実行する。つまり、信号処理部22は、第1の受信部11で受信したデジタル信号である第1の駆動信号をD/A変換処理によってアナログ信号に変換する。そして、変換されたアナログ信号を増幅処理(アンプ)によって増幅する。
【0038】
拡声器23は、アンプによって増幅されたアナログ信号に基づく音(信号情報)を出力する。本実施形態では、横断歩道Dに向けて発信している。ここで横断歩道Dとは、上述したように、横断歩道Dのみに限られず、横断歩道Dの周囲(赤信号時に歩行者が待機している領域Wなど)も含まれる(図3参照)。また本実施形態では、発信機20は、信号情報を常時送信する。ここでいう常時送信とは、一定の間隔(周期)で送信されることであり、例えば0.1秒間隔や1秒間隔で信号情報が送信される場合などである。つまり、常時送信とは、例えば後述する端末装置300が検出された場合など、特定の条件に当てはまった場合に送信されるものとは異なる。
【0039】
ここで超音波を用いた情報発信について説明する。第2の制御部32は、灯色情報を表す識別コード(ID)が重畳された音響信号を用いて拡声器23に信号情報として送信させる第1の駆動信号を生成する。本実施形態では、第1の駆動信号は、超音波帯域の音響信号であり、第1の記憶部13に記憶された発信機20を駆動させる情報(灯色情報を表す識別コード)を変調し、超音波帯域(高い周波数帯域側)へシフトさせたものである。ここで超音波帯域とは人の耳に聞かせることを目的としない周波数であり例えば18kHz以上であるが、もちろんこれに限られない。本実施形態では、超音波を用いた通信技術として例えば、SoundUD(登録商標)が用いられるが、もちろんこれに限られない。
【0040】
ここで、第2の制御部32の第1の駆動信号を生成するとは、第1の駆動信号を生成するだけでなく、生成した第1の駆動信号を発信機20に出力することも含む。
【0041】
図3に示すように発信機20は、横断歩道Dの一端に設けられた歩行者用信号灯器S1と他端に設けられた歩行者用信号灯器S2とを支持する支柱P1及び支柱P2のそれぞれに設けられている。これにより、横断歩道Dを両方向から横断する各歩行者に対しても信号情報を送信することができる。もちろん発信機20の設置個所はこれに限らず、支柱P1及び支柱P2とは別に設けられてもよい。
【0042】
(情報通知装置)
情報通知装置30は、端末装置300と、通知部34とを有する。端末装置300は、第2の受信部31(受信部)と、第2の制御部32と、第2の記憶部33(記憶部)とを有する。
【0043】
端末装置300は、歩行者(ユーザ)Peに携帯され、例えば、歩行者により把持された状態で携帯されたり、ポケットやカバン等の中に入れられた状態で携帯されたりする。本実施形態において端末装置300は、例えばスマートフォンである。
【0044】
第2の受信部31は、拡声器23から送信された信号情報を受信するマイクである。
【0045】
第2の制御部32は、信号情報に基づいて後述する通知部34を駆動させる第2の駆動信号を生成する。第2の制御部32は、変調された波形から信号情報を取り出す復調処理を行う。そして復調処理されて取り出した情報に基づいて第2の駆動信号を生成する。
【0046】
本実施形態では、信号情報には、識別コード(ID)が重畳されており、第2の制御部32は、その識別コードのコード処理を行い、その識別コードに対応した灯色情報に基づいて第2の駆動信号を生成する。
【0047】
本実施形態において第2の制御部32が、受信した信号情報を復調処理した結果、例えば、ID001という情報が取り出された場合を考える。その場合、そのID001に対応する灯色情報を第2の記憶部33から読み出す動作を行う。その結果、歩行者用信号機T1は赤信号であるという灯色情報が得られると、その得られた灯色情報を歩行者Peに通知する通知部34を駆動させるための第2の駆動信号を生成する。このとき第2の制御部32は、歩行者用信号機T1が赤であるという灯色情報に対応する第2の駆動信号を第2の記憶部33から読み出す。
【0048】
ここで、第2の制御部32の第2の駆動信号を生成するとは、第2の駆動信号を生成するだけでなく、生成した第2の駆動信号を通知部34に出力することも含む。第2の制御部32は、例えばBluetooth(登録商標)により通知部34に第2の駆動信号を出力する。もちろんこれに限られず、有線を用いて通知部34に第2の駆動信号を出力してもよい。
【0049】
第2の記憶部33は、端末装置300の各種機能を実行させるプログラムや識別コードに対応する灯色情報、各種パラメータに関する情報を記憶する。例えば受信した波形から復調処理を行うためのプログラムや、その復調処理されて取り出した情報から第2の駆動信号を生成するための各種パラメータに関する情報や第2の駆動信号を生成するためのプログラムである。
【0050】
通知部34は、灯色情報を視覚または触覚の少なくとも一つを介して歩行者(ユーザ)Peに通知する。通知部34は、受信した第2の駆動信号に基づいて、所定の動作が実行される。本実施形態において通知部34は、歩行者Peの耳に装着されるスピーカを含むイヤホンであり、第2の駆動信号に基づいて、イヤホンから音声を出力する。これにより、歩行者Peは、横断する横断歩道Dに設けられた歩行者用信号機T1の灯色情報(例えば、歩行者用信号機T1は赤信号など)を音声(例えば、信号は赤です。など)により知ることができる。
【0051】
本実施形態では、通知部34はイヤホンであったが、もちろんこれに限られず、端末装置300に設けられたスピーカであってもよい。またイヤホンは、本実施形態では、耳の中に装着されるものであるが、これに限られず、骨伝導イヤホンであってもよい。
【0052】
ここで、スピーカとは、上述した発信機20と同様の構成であってもよく、ボイスコイル、磁石、コーン紙等で構成される。
【0053】
続いて、本実施形態における情報通知システム200の動作について説明する。図4は、本実施形態における情報通知システム200のフローチャートである。以下、歩行者Peは、横断歩道Dの領域W1で待機しており、歩行者用信号機T1は赤信号である。
【0054】
まず、信号制御機40から送信される灯色情報を取得部11が取得する(ステップ101)。ここでの灯色情報は、歩行者用信号機T1が赤信号であるという情報である。
【0055】
次に、取得部11によって取得された灯色情報に基づいて、発信機20を駆動させる第1の駆動信号を生成する(ステップ102)。
【0056】
次に、発信機20は、上記第1の駆動信号に基づいて、信号情報を送信する(ステップ103)。ここでの信号情報は、灯色情報である歩行者用信号機T1が赤信号という情報に対応するものであり、発信機20は、歩行者用信号機T1が赤信号という識別コードが重畳された音響信号を超音波によって横断歩道Dに向けて送信する。ここで、発信機20は、領域W1に向けて信号情報を送信する。
【0057】
次に、第2の制御部32は、受信した信号情報に基づいて通知部34を駆動させる第2の駆動信号を生成する(ステップ104)。つまり、領域W1で待機する歩行者Peが携帯する端末装置300の第2の受信部31が、発信機20から送信された信号情報を受信する。これにより、第2の制御部32は、上記第2の駆動信号を生成する。
【0058】
次に、通知部34は、第2の駆動信号に基づいて、音声を歩行者Peに出力する(ステップ105)。本実施形態では、通知部34は歩行者Peの耳に装着されたイヤホンであり、例えば、「信号は赤です」といった音声がイヤホンを介して歩行者Peに通知される。
【0059】
これにより、灯色情報を必要とする歩行者Pe(ユーザ)にのみ灯色情報を通知することが可能となるため、周囲への騒音を抑制することができる。また発信機20は、歩行者Peの携帯する情報通知装置30を検索したり、情報通知装置30と接続認証を行ったりすることなく、信号情報を送信しているため、簡易な構成で歩行者Peに灯色情報を通知することができる。これにより、製造コストを抑制しつつ、歩行者Peに灯色情報を通知することができる。
【0060】
さらに本実施形態では信号情報が超音波である。超音波は、電波に比べ回折しにくいため、特定の領域(例えば領域W1)にいる歩行者Peに対して信号情報を送信することができる。これにより、灯色情報を通知したい歩行者Peに対してのみ信号情報を送信することが可能となり、交差点などで多方向から信号情報が送信される場合であっても別方向からの信号情報が受信されることを抑制することができる。また超音波を用いることで混信のおそれを防ぐことができる。また端末装置300を用いる場合、歩行者Peが所持しているその端末装置300に専用のアプリをインストールするだけでよいため、情報通知装置30のコストを抑えることができる。
【0061】
本実施形態では音を用いて歩行者Peに灯色情報を知らせたが、もちろんこれに限られない。例えば、通知部34は、振動(例えば、バイブレーターによる)を通知する発振器を用いて知らせてもよい。例えば、端末装置300が振動してもよいし、白杖Cが振動してもよい。振動のパターンとして、例えば、赤信号のときは、常時振動し、青信号のときは、所定周期(例えば3秒間隔)で振動するようにしてもよい。もちろんこれに限られず、歩行者Peが認知しやすい振動パターンであればよい。
【0062】
これにより、例えば、横断歩道Dの周囲が自動車の騒音などで音が聞こえにくい場合でも歩行者Peに灯色情報を振動により知らせることができる。またこれによっても、横断歩道Dの周囲に対して騒音が伝わることを抑制することができる。
【0063】
<変形例1>
続いて、本発明の変形例1について説明する。第1の実施形態と異なる構成について主に説明し、第1の実施形態と同様の構成についてはその説明を省略または簡略化する。また図5は、変形例1における交通システム1Bのブロック図である。
【0064】
本変形例では、交通システム1Aの情報通知システム200Aが有する情報通知装置30Aの第2の制御部32が判定部321を有する点で第1の実施形態と異なる。
【0065】
判定部321は、発信機20から送信された信号情報の受信レベル(受信強度)が所定の値以上かどうかを判定する。
【0066】
判定部321は、信号情報の受信レベルが所定の値以上である場合に信号情報を受信したと判定し、受信レベルが所定の値未満である場合は信号情報を受信していないと判定する。またこれに限られず、判定部321は、信号情報の受信レベルが所定の値以上であり、かつ、所定の時間以上である場合に信号情報を受信したと判定してもよい。
【0067】
つまり、本変形例によれば、第2の受信部31で受信した信号情報の受信レベルが判定部321によって所定の値以上であると判定された場合、第2の制御部32は、受信した信号情報に基づいて、第2の駆動信号を生成する。つまり、歩行者Peは、信号情報の受信レベルが所定の値以上の範囲にいる場合に、灯色情報が歩行者Peに通知され、信号情報の受信レベルが所定の値未満の範囲(信号情報の受信レベルが所定の値以上の範囲外)にいる場合には、灯色情報が歩行者Peに通知されない。
【0068】
これにより、横断歩道Dを渡り終わった歩行者Peがいつまでも灯色情報が通知されるというわずらわしさを低減することができる。信号情報の受信レベルが所定の値以上となる範囲は適宜設定可能であるが、例えば、歩行者用信号機T1の発信機20から信号情報が送信される場合、領域W、W1を含む範囲で所定の値以上となるように設定してもよい。
【0069】
これにより、横断歩道Dを渡ろうと領域W1で待機している歩行者Peは、待機しているときと、横断歩道Dを渡っているときと、の場合に灯色情報を知ることができる。そして、歩行者Peが横断歩道Dを渡り終え、領域W2にいるときは、灯色情報が通知されなくなる。
【0070】
<第2の実施形態>
続いて、本発明の第2の実施形態について説明する。図6は、第2の実施形態に係る交通システム1Bのブロック図であり、図7は、信号情報発信ユニット100が設けられた交差点Iである。以下、第1の実施形態と異なる構成について主に説明し、第1の実施形態と同様の構成については同様の符号を付しその説明を省略または簡略化する。
【0071】
図7に示されるように、交差点Iは、南北方向に延びる道路I1と東西方向に延びる道路I2とが交わる部分のことである。また横断歩道は、南北方向に延びる2つの横断歩道D1と、東西方向に延びる2つの横断歩道D2とを有する。横断歩道D1には、歩行者用信号機T1と歩行者用信号機T2とが設けられており、本実施形態では信号情報発信ユニット100は、歩行者用信号機T2に設けられているが、もちろんこれに限られない。また本実施形態では、歩行者Pe1は横断歩道D1を渡ろうと、歩行者用信号機T1の周囲で待機している。
【0072】
本実施形態では、情報通知装置30B(端末装置300B)が検出部35を有している点で、第1の実施形態の構成と異なる。検出部35は、歩行者Peの進む方向を検出する。検出部35は、例えば、GPSにより、歩行者Peが進む方向を検出してもよいし、地磁気センサを用いて歩行者Pe(歩行者Peの携帯する端末装置300B)の進む向きを検出してもよい。
【0073】
また本実施形態では、第2の記憶部33は、横断歩道Dが延びる方向に関する方向情報をさらに記憶する。例えば、第2の記憶部33に記憶される方向情報として、横断歩道D1は、南北方向に延びているという情報が記憶されている。またこれ以外にも、横断歩道D1の南方向は、東戸塚駅方面、という建物名や駅名などの情報であってもよい。
【0074】
本実施形態によれば、歩行者Pe1に対して検出部35の検出結果である歩行者Pe1の進む方向と、第2の記憶部33に記憶された灯色情報及び信号情報を送信する歩行者用信号機T1、T2が設けられた横断歩道D1が延びる方向に関する方向情報とを聴覚または触覚を介して通知する。
【0075】
つまり、本実施形態では、発信機20から送信された信号情報を歩行者Pe1の携帯する端末装置300Bの第2の受信部31が受信した場合、検出部35が歩行者Pe1の進む方向を地磁気センサ等で検出する。この場合、歩行者Pe1は横断歩道D1を南方向へ進もうとしていることが検出される。
【0076】
そして、第2の制御部32は、受信した信号情報のコード処理を行う。このとき、コード処理を行った結果、ID002というという情報が取り出された場合を考える。その場合、そのID002に対応する灯色情報を第2の記憶部33から読み出す動作を行う。その結果、南北方向に延びる横断歩道D1の信号は赤信号であるという灯色情報が得られる。そしてその得られた灯色情報を歩行者Pe1に通知する通知部34を駆動させるための第2の駆動信号を生成する。このとき第2の制御部32は、南北方向に延びる横断歩道D1の信号は赤信号であるという灯色情報に対応する第2の駆動信号を第2の記憶部33から読み出す。本実施形態では、通知部34はイヤホンであるが、もちろんこれに限られず、発振器を有する白杖であってもよい。
【0077】
本実施形態では、通知部34(イヤホン)を介して、例えば、「あなたは南方向を向いています。そして、南北方向に延びる横断歩道D1の信号は赤です。」といった情報が歩行者Pe1に通知される。
【0078】
これにより、歩行者Pe1は、自分の進む方向と灯色情報を示す信号機が設けられた横断歩道の延びる方向とがわかるため、誤って違う横断歩道(例えば、横断歩道D2)を渡ることを抑制することができる。
【0079】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態にのみ限定されるものではなく種々変更を加え得ることは勿論であり、各実施形態及び変形例の構成を組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0080】
1…交通システム
10…発信制御装置
11…取得部
12…第2の制御部
13…第1の記憶部
20…発信機
21…第1の受信部
22…信号処理部
23…拡声器
30…情報通知装置
31…第2の受信部
32…第2の制御部
33…第2の記憶部
34…通知部
40…信号制御機
100…信号情報発信ユニット
200…情報通知システム
300…端末装置
Pe…歩行者
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7