(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024104956
(43)【公開日】2024-08-06
(54)【発明の名称】被覆材展張装置及びこれを用いた被覆材展張方法
(51)【国際特許分類】
E02D 17/20 20060101AFI20240730BHJP
【FI】
E02D17/20 103A
E02D17/20 103B
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023009421
(22)【出願日】2023-01-25
(71)【出願人】
【識別番号】000166432
【氏名又は名称】戸田建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】598022956
【氏名又は名称】株式会社大同機械
(74)【代理人】
【識別番号】100090387
【弁理士】
【氏名又は名称】布施 行夫
(74)【代理人】
【識別番号】100090398
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 美千栄
(74)【代理人】
【識別番号】100213388
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 康司
(72)【発明者】
【氏名】小林 竜太
(72)【発明者】
【氏名】地引 千紘
(72)【発明者】
【氏名】萩森 大佑
(72)【発明者】
【氏名】宮本 幸伯
(72)【発明者】
【氏名】松山 典弘
【テーマコード(参考)】
2D044
【Fターム(参考)】
2D044DB02
2D044DB07
2D044DB33
2D044DB38
(57)【要約】
【課題】本発明は、被覆材30の先端34とロープ20との接続作業及び取外し作業の簡素化と効率化が可能な被覆材展張装置10を提供する。
【解決手段】被覆材展張装置10は、被覆材20を法面Aに展張する装置である。被覆材展張装置10は、法面Aの上部に固定される2つの滑車62と、法面Aの下部に配置されて2つの滑車62を介して2本のロープ20を巻き上げる第1巻上機11と、法面Aの下部に配置されて巻回された被覆材30を設置する操出部14と、操出部14と2つの滑車62の間で2本のロープ20のそれぞれに固定される一対の取付具50と、を備える。一対の取付具50は、操出部14に設置される被覆材30の先端34が固定される固定ロッド40の両端に着脱可能に取り付けられる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被覆材を法面に展張する被覆材展張装置であって、
法面の上部に固定される2つの滑車と、
法面の下部に配置されて前記2つの滑車を介して2本のロープを巻き上げる巻上機と、
法面の下部に配置されて巻回された被覆材を設置する操出部と、
前記操出部と前記2つの滑車の間で前記2本のロープのそれぞれに固定される一対の取付具と、
を備え、
前記一対の取付具は、前記操出部に設置される被覆材の先端が固定される固定ロッドの両端に着脱可能に取り付けられることを特徴とする、被覆材展張装置。
【請求項2】
請求項1に記載の被覆材展張装置において、
前記固定ロッドの両端は、開口すると共に前記固定ロッドの軸方向に沿って延びる孔を有し、
前記一対の取付具は、それぞれの一部が前記孔に入り込んで前記固定ロッドと一体化して一本の棒状部材となることを特徴とする、被覆材展張装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の被覆材展張装置おいて、
前記巻上機は、前記2本のロープの一端を巻き上げる第1巻上機と、前記2本のロープの他端を巻き上げる第2巻上機と、を含み、
前記第1巻上機は、前記2本のロープを巻き上げることで前記一対の取付具を法面の上部に移動させ、
前記第2巻上機は、前記2本のロープを巻き上げることで前記一対の取付具を法面の下部へ移動させることを特徴とする、被覆材展張装置。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載の被覆材展張装置を用いて被覆材を法面に展張する方法であって、
(a)巻回された被覆材を前記操出部に設置し、
(b)前記一対の取付具を前記固定ロッドに取り付け、
(c)被覆材の先端を前記固定ロッドに固定し、
(d)前記(a)~前記(c)の後、前記巻上機を駆動させて前記滑車を介して前記ロープを巻き上げることで前記一対の取付具及びこれらと一体化した前記固定ロッドを移動させて被覆材を法面に展張し、
(e)前記(d)の後、展張された被覆材と共に前記固定ロッドを法面の上部に固定し、(f)前記(e)の後、前記固定ロッドから前記一対の取付具を取り外し、
(g)前記被覆材展張装置を隣接する展張位置へ移動し、
(a)~(g)を繰り返して複数の被覆材で覆われた法面を形成することを特徴とする、被覆材展張方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被覆材を法面に展張する被覆材展張装置及びこれを用いた被覆材展張方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、河川の堤防や道路端等の法面を保護するための被覆材としていわゆるブルーシート等の合成樹脂製の被覆材で法面を覆う工事が行われている。
【0003】
このような法面の工事は、傾斜面における作業となるため、被覆材を持ち運んだり、展張したりするのは容易ではない。そのため、巻回された被覆材を搭載する移動可能な台車からロープで被覆材を法面の上へ引き上げて展張する技術が知られている(特許文献1,2)。そして、ロープで被覆材を引き上げるために、被覆材の先端に棒状の部材を挟み込んで固定する押え金具をロープと連結する技術が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭59-112846号公報
【特許文献2】特開平9-59991号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、被覆材の先端とロープとの接続作業及び取外し作業は、屋外の足場の安定しない場所で複数回被覆材を展張することになるため、作業の簡素化と効率化が求められる。
【0006】
そこで、本発明は、被覆材の先端とロープとの接続作業及び取外し作業の簡素化と効率化が可能な被覆材展張装置及びこれを用いた被覆材展張方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の態様または適用例として実現することができる。
【0008】
[1]本発明に係る被覆材展張装置の一態様は、
被覆材を法面に展張する被覆材展張装置であって、
法面の上部に固定される2つの滑車と、
法面の下部に配置されて前記2つの滑車を介して2本のロープを巻き上げる巻上機と、
法面の下部に配置されて巻回された被覆材を設置する操出部と、
前記操出部と前記2つの滑車の間で前記2本のロープのそれぞれに固定される一対の取付具と、
を備え、
前記一対の取付具は、前記操出部に設置される被覆材の先端が固定される固定ロッドの両端に着脱可能に取り付けられることを特徴とする。
【0009】
[2]上記被覆材展張装置の一態様において、
前記固定ロッドの両端は、開口すると共に前記固定ロッドの軸方向に沿って延びる孔を有し、
前記一対の取付具は、それぞれの一部が前記孔に入り込んで前記固定ロッドと一体化し
て一本の棒状部材となることができる。
【0010】
[3]上記被覆材展張装置の一態様において、
前記巻上機は、前記2本のロープの一端を巻き上げる第1巻上機と、前記2本のロープの他端を巻き上げる第2巻上機と、を含み、
前記第1巻上機は、前記2本のロープを巻き上げることで前記一対の取付具を法面の上部に移動させ、
前記第2巻上機は、前記2本のロープを巻き上げることで前記一対の取付具を法面の下部へ移動させることができる。
【0011】
[4]本発明に係る被覆材展張方法の一態様は、
上記被覆材展張装置の一態様を用いて被覆材を法面に展張する方法であって、
(a)巻回された被覆材を前記操出部に設置し、
(b)前記一対の取付具を前記固定ロッドに取り付け、
(c)被覆材の先端を前記固定ロッドに固定し、
(d)前記(a)~前記(c)の後、前記巻上機を駆動させて前記滑車を介して前記ロープを巻き上げることで前記一対の取付具及びこれらと一体化した前記固定ロッドを移動させて被覆材を法面に展張し、
(e)前記(d)の後、展張された被覆材と共に前記固定ロッドを法面の上部に固定し、(f)前記(e)の後、前記固定ロッドから前記一対の取付具を取り外し、
(g)前記被覆材展張装置を隣接する展張位置へ移動し、
(a)~(g)を繰り返して複数の被覆材で覆われた法面を形成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る被覆材展張装置及び被覆材展張方法によれば、被覆材の先端が固定される固定ロッドの両端にロープに固定された一対の取付具を着脱できるので、被覆材の先端とロープとの接続作業及び取外し作業の簡素化と効率化が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本実施形態に係る被覆材展張装置による展張作業を模式的に示す斜視図である。
【
図2】取り付け前と取り付け後の取付具を模式的に示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また、以下で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
【0015】
1.被覆材展張装置
図1及び
図2を用いて、本実施形態に係る被覆材展張装置10について説明する。
図1は、本実施形態に係る被覆材展張装置10による展張作業を模式的に示す斜視図であり、
図2は、本実施形態に係る被覆材展張装置10の取付具50を模式的に示す平面図である。
【0016】
図1に示すように、被覆材展張装置10は、被覆材30を法面Aに展張する装置である。被覆材展張装置10は、少なくとも法面Aの上部に固定される2つの滑車62と、法面Aの下部に配置されて2つの滑車62を介して2本のロープ20を巻き上げる巻上機(11,12)と、法面Aの下部に配置されて巻回された被覆材30を設置する操出部14と、操出部14と2つの滑車62の間で2本のロープ20のそれぞれに固定される一対の取
付具50と、を備える。
【0017】
被覆材30は、法面Aを覆って法面Aを保護することができる。被覆材30は、例えば施工対象である法面Aの縦方向の長さよりも長く、巻芯に巻回された状態で施工現場に運び込まれる。巻回状態の被覆材30(以下、「巻回被覆材32」)は、法面Aの下部に配置された操出部14に回転可能に支持される。巻回被覆材32は、例えば金属製の円筒ロッドの周りに巻き回される。巻回被覆材32の先端34は、例えば、被覆材30の幅よりも僅かに長い固定ロッド40に固定される。
【0018】
被覆材30は、シート状またはネット状の形態であることができ、施工性を考慮して柔軟に変形可能であることが好ましい。被覆材30の材質は限定されないが、天然素材、合成樹脂及び金属などを採用できる。天然素材としては、例えば綿、麻、絹などの天然繊維を用いることができる。合成樹脂としては、例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリエステル(PEs)、塩化ビニル(PVC)などを用いることができる。金属としては、鉄、ステンレス、アルミニウム、銅などを用いることができる。また、被覆材30は、異なる材質を組み合わせて複合化してもよく、例えば、法面Aを長期間にわたって保護するために耐候性に優れた材質を用いることが好ましく、例えば被覆材30の表面を耐候性に優れた材質でコーティングしてもよい。被覆材30が不透水性のシート状、例えば、主にポリエチレンを用いたいわゆるブルーシートであれば、比較的安価で汎用性に優れると共に法面Aを雨水から保護することができる。また、被覆材30が透水性のシート状、例えば長繊維不織布であれば、法面Aを補強すると共に排水性が要求される法面Aに用いることができる。また、被覆材30がネット状であれば、例えば、軟弱地盤表層処理や落石防止ネットなどに利用できる。
【0019】
法面Aは、傾斜面であり、例えば道路や住宅造成での盛土や切土によって造られた人工傾斜面や山などの自然傾斜面を含み、また例えば河川堤防や護岸の側面を含む。法面Aは、被覆材30によって覆われて保護されて雨水の浸入や法面Aの損壊が防止される。法面Aの上部は、被覆材30で覆われる部分より上方にある部分であり、作業者が作業しやすい傾斜が少ない平坦な面を有する部分が好ましい。法面Aの下部は、被覆材30で覆われる部分より下方にある部分であり、被覆材展張装置10を設置可能な平坦な面を有することが好ましい。被覆材展張装置10は、法面Aの下部を法面Aの横方向に沿って移動可能であることが好ましい。法面Aの上部と下部は地面であるが、地面に一部が埋設された部材があってもよい。
【0020】
2つの滑車62は、それぞれ法面Aの上部に固定される。
図1の例では2つの滑車62は、法面Aの上部に立設された上部固定台60の両端に固定される。上部固定台60は、被覆材30を展張させる際にロープ20の巻上力により法面A側に倒れたり移動して落下したりしないように法面Aの上部に確実に固定される。上部固定台60は、被覆材30を展張した後、次に被覆材30を展張する隣接する展張位置へ移動可能な程度に軽量であることが好ましい。上部固定台60は、複数の被覆材30を展張する予定の範囲にわたって法面Aの横方向に沿って連続して延びてもよい。その場合には、2つの滑車62を含む一部だけを上部固定台60から取り外して隣接する展張位置に移動してもよい。滑車62には、法面Aの下部にある巻上機との間でロープ20が掛け回される。
【0021】
巻上機は、法面Aの下部に配置される。巻上機は、金属フレーム構造の機台16上に固定される。機台16は、図示しない車輪を有し、法面Aの下部に沿って移動可能である。巻上機は、2本のロープ20の一端を巻き上げる第1巻上機11と、2本のロープ20の他端を巻き上げる第2巻上機12と、を含む。
図1の例では第1巻上機11と第2巻上機12を各2機設けたが、左右の巻上用のプーリーを連結すれば各1機でもよい。第1巻上機11及び第2巻上機12は、滑車62から延びるロープ20を手動式または原動機の動
力により巻き上げることができる。第1巻上機11は、2本のロープ20を巻き上げることで一対の取付具50を法面Aの上部に移動させることができる。第2巻上機12は、2本のロープ20を巻き上げることで一対の取付具50を法面Aの下部へ移動させることができる。ロープ20や取付具50などを地面になるべく接触させないように、取付具50を下部から上部へ移動する場合は、第1巻上機11を駆動して2本のロープ20を巻き上げると共に、第2巻上機12を駆動して2本のロープ20を繰り出す。逆に、取付具50を上部から下部へ移動する場合は、第2巻上機12を駆動して2本のロープ20を巻き上げると共に、第1巻上機11を駆動して2本のロープ20を繰り出す。このようにすることで、ロープ20や取付具50などの損傷を防止すると共に被覆材30が外れるのを防止できる。
【0022】
操出部14は、機台16に設けられ、巻回被覆材32を回転可能に支持する。被覆材30の先端34が第1巻上機11の駆動により法面Aの上方へ移動すると、操出部14は巻回被覆材32を軸周りに回転させながら徐々に被覆材30を繰り出す。操出部14は、被覆材30が巻き回された例えば金属製の円筒ロッドの両端を回転可能に支持するように構成される。また、操出部14は、特許文献1のように巻回被覆材32を2本のフリーロールの上に搭載するように構成してもよい。
【0023】
固定ロッド40は、被覆材30の先端34が固定される例えば金属製の棒状部材である。固定ロッド40は、例えば建築現場で用いられる単管パイプであってもよい。単管パイプであれば施工現場における汎用性に優れるからである。固定ロッド40は被覆材30の幅と同じか僅かに長く、被覆材30に皺や捩れが生じないように先端34の全幅が固定ロッド40の長さ方向に張った状態で固定される。固定ロッド40に対する被覆材30の先端34の固定は、少なくとも法面Aの上部へ引き上げられる際に固定ロッド40との一体性を維持できる程度に確実に行われる。被覆材30の先端34は固定ロッド40の周りに巻き付けられた状態でクランプする、例えば市販の単管クリップなどが採用できる。固定ロッド40は、被覆材30の先端34を法面Aの上部まで引き上げた後、被覆材30の先端34を固定したまま法面Aの上部に固定される。そして、法面Aの保護期間が終わったら、固定ロッド40を法面Aから取り外し、展張作業とは逆の工程で展張されていた被覆材30を巻回被覆材32に巻き取ることができる。
【0024】
固定ロッド40の長手方向の両端は開口し当該長手方向に延びる孔42を有する。固定ロッド40の開口付近には孔42を貫通する貫通孔44が形成され、固定ボルト46を差し込むことができる。
【0025】
一対の取付具50は、操出部14に設置される被覆材30の先端34が固定される固定ロッド40の両端に着脱可能に取り付けられる。一対の取付具50が固定ロッド40の両端に取り付けられることで、被覆材30を引き上げる際に固定ロッド40及び被覆材30が引き上げる方向に対して斜めになりにくく、被覆材30が安定する。
図2に示すように、固定ロッド40の両端は、開口すると共に固定ロッド40の軸方向に沿って延びる孔42を有する。一対の取付具50は、それぞれの一部が孔42に入り込んで固定ロッド40と一体化して一本の棒状部材となる。一対の取付具50が固定ロッド40を延長させた形態となることで、固定ロッド40の途中にロープを取り付けた場合より安定して被覆材を引き上げることができる。
【0026】
取付具50は、例えば、ロープ20が一体に取り付けられるロープ取付部54と、ロープ取付部54の両側に突出して延びる2つの円筒状の挿入部52と、を備える。挿入部52が両側に突出していれば一方の挿入部52を固定ロッド40の取っ手として利用できる。なお、挿入部52がロープ取付部54の片側だけに突出してもよい。挿入部52は、固定ロッド40の孔42の開口径と同じか僅かに細い直径を有する。挿入部52には破線で
示す貫通孔が形成されてもよい。また、ロープ取付部54はロープ20が貫通する貫通孔を有してもよく、ロープ20をこの貫通孔に貫通させた状態でロープに結び目を作ってロープ20に対しロープ取付部54が移動不能に構成してもよい。
【0027】
本実施形態に係る被覆材展張装置10によれば、被覆材30の先端34が固定される固定ロッド40の両端にロープ20に固定された一対の取付具50を着脱できるので、被覆材30の先端34とロープ20との接続作業及び取外し作業の簡素化と効率化が可能である。これにより、法面Aに沿って隣接する展張位置へ被覆材展張装置10を移動し、被覆材30を展張する作業を効率よく行うことができ、しかも作業者が法面A上を徒歩移動する機会を減らすことができる。また、法面Aの保護期間が終了すれば固定ロッド40に取付具50を取り付けて被覆材30を巻き取れば他の施工現場で容易に再使用することができる。
【0028】
2.被覆材展張方法
図1及び
図2の被覆材展張装置10を用いて被覆材30を法面Aに展張する方法について、説明する。
【0029】
本実施形態に係る被覆材展張方法は、少なくとも下記(a)~下記(g)の工程を繰り返し実行することにより複数の被覆材30で覆われた法面Aを形成する。
【0030】
具体的には、
(a)巻回被覆材32を操出部14に設置し、
(b)一対の取付具50を固定ロッド40に取り付け、
(c)被覆材30の先端34を固定ロッド40に固定し、
(d)前記(a)~前記(c)の後、第1巻上機11を駆動させて滑車62を介してロープ20を巻き上げることで一対の取付具50及びこれらと一体化した固定ロッド40を移動させて被覆材30を法面Aに展張し、
(e)前記(d)の後、展張された被覆材30と共に固定ロッド40を法面Aの上部に固定し、
(f)前記(e)の後、固定ロッド40から一対の取付具50を取り外し、
(g)被覆材展張装置10を隣接する展張位置へ移動する。
【0031】
まず、工程(a)~工程(c)を実行する前に、法面Aにおける被覆材30を展張する位置に被覆材展張装置10を配置する。より具体的には、法面Aの上部に上部固定台60を設置し、法面Aの下部に第1巻上機11、第2巻上機12及び操出部14を設置する。ロープ20を滑車62に掛け、ロープ20の一端及び他端を法面Aの上部から下部へ向けて降ろす。ロープ20の一端は第1巻上機11に固定して巻き付け、ロープ20の他端は第2巻上機12に固定して巻き付ける。そして、第1巻上機11付近でロープ20に取付具50を固定する。
【0032】
次に、工程(a)~工程(c)を実行する。工程(a)~工程(c)の順序は問わない。工程(a)は、法面Aの下部に配置された操出部14に巻回被覆材32を設置する。巻回被覆材32を載せた状態で操出部14を法面Aの下部に配置してもよい。巻回被覆材32は、法面Aの縦方向の長さに応じて選択して法面Aに設置する複数の被覆材30の枚数分を用意してもよいし、複数枚の被覆材30を展張作業(工程(a)~工程(g))の度に切り出すことができる長さを有してもよい。操出部14に設置された巻回被覆材32は、回転可能に操出部14に支持される。
【0033】
工程(b)は、各取付具50の挿入部52を固定ロッド40の孔42に挿入し、挿入部52が孔42から抜けないように固定ボルト46を貫通孔44に通してナット48で固定
することができる。これにより固定ロッド40と取付具50とが一体に固定されて、固定ロッド40から延長した一本の棒状部材となる。工程(c)は、操出部14にある巻回被覆材32から先端34を引き出して、先端34を固定ロッド40に例えば単管クリップで挟み込んで固定する。
【0034】
工程(d)は、工程(a)~工程(c)の後、法面Aの下部に配置された第1巻上機11を駆動させる。第1巻上機11が駆動すると、滑車62を介してロープ20が巻き上げられて、一対の取付具50が法面Aの下部から上部まで移動する。固定ロッド40が取付具50と共に移動することで、巻回被覆材32が回転しながら被覆材30を繰り出し、被覆材30が法面Aに沿って展張される。また、第1巻上機11の駆動に合わせて第2巻上機12も駆動させることで、ロープ20の巻き上げと繰り出しが同期するためロープ20に一定の張力を維持したまま展張できる。滑車62の位置を法面Aより高い位置に設定しておけば、この張力により固定ロッド40が法面Aに接触して被覆材30の先端34が外れるのを防止できると共に、固定ロッド40や取付具50などの損傷を防止できる。
【0035】
工程(e)は、工程(d)の後、法面Aに沿って展張された被覆材30を固定ロッド40に固定したまま、固定ロッド40を法面Aの上部に固定する。法面Aへの固定手段は限定されないが、強風で被覆材30が浮き上がって外れることを防止するため、固定ロッド40及び好ましくは被覆材30を確実に固定する手段が望ましい。被覆材30と固定ロッド40が一体のまま法面Aに固定されるので、被覆材30の取外し作業が不要となり、展張作業が効率化する。また、保護期間が終了した後、固定ロッド40に取付具50を取り付けて巻き取れば被覆材30を回収できるので、回収作業も効率化できる。
【0036】
工程(f)は、工程(e)の後、固定ロッド40から固定ボルト46を外し、挿入部52を孔42から抜き出すことで一対の取付具50を固定ロッド40から取り外す。固定ロッド40から取り外された取付具50は滑車62付近でロープ20に吊下げられた状態のままであるので、第2巻上機12を駆動してロープ20を巻き上げて取付具50を法面Aの下部まで移動させる。取付具50を法面Aの下部まで移動させておけば、隣接する展張位置に被覆材展張装置10を移動させれば次の工程(a)及び工程(b)がすぐに実行できる。
【0037】
工程(g)は、工程(f)の後、操出部14から外された残りの巻回被覆材32を法面Aの下部に置いて、被覆材展張装置10を隣接する展張位置へ移動する。被覆材展張装置10の移動は、機台16と上部固定台60とを平行移動することにより行うことが好ましい。法面Aの下部に残された巻回被覆材32が風で移動しないように法面Aの下部に固定することが望ましい。また、複数枚の被覆材30を切り出す巻回被覆材32の場合には、工程(f)の後、展張済みの被覆材30を巻回被覆材32から切り取り、切り取られた被覆材30を法面Aの下部に固定する。
【0038】
工程(g)の後、工程(a)~工程(g)を繰り返すことで法面Aの延在する横方向に複数列に被覆材30を展張して、法面Aの横方向に並べられた複数の被覆材30で覆われた法面Aを形成する。
【0039】
本実施形態に係る被覆材展張方法によれば、被覆材30の先端34が固定される固定ロッド40の両端にロープ20に固定された一対の取付具50を着脱できるので、被覆材30の先端34とロープ20との接続作業及び取外し作業の簡素化と効率化が可能である。また、本実施形態に係る被覆材展張方法によれば、作業の簡素化と効率化により短い工期で被覆材30に覆われた法面Aを施工できる。さらに、法面Aの保護期間が終了した後は、被覆材30の回収が容易であり、回収した巻回被覆材32を次の施工現場で再使用し易い。
【0040】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、さらに種々の変形が可能である。例えば、本発明は、実施形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法、及び結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【符号の説明】
【0041】
10…被覆材展張装置、11…第1巻上機、12…第2巻上機、14…操出部、16…機台、20…ロープ、30…被覆材、32…巻回被覆材、34…先端、40…固定ロッド、42…孔、44…貫通孔、46…固定ボルト、48…ナット、50…取付具、52…挿入部、54…ロープ取付部、60…上部固定台、62…滑車