(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024104958
(43)【公開日】2024-08-06
(54)【発明の名称】動作制御システム、追従ロボット
(51)【国際特許分類】
G05D 1/43 20240101AFI20240730BHJP
【FI】
G05D1/02 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023009423
(22)【出願日】2023-01-25
(71)【出願人】
【識別番号】321007782
【氏名又は名称】ノリテックデザイン株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504180239
【氏名又は名称】国立大学法人信州大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001726
【氏名又は名称】弁理士法人綿貫国際特許・商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】滝澤 憲弘
(72)【発明者】
【氏名】仲村 拓朗
(72)【発明者】
【氏名】小林 一樹
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 真平
【テーマコード(参考)】
5H301
【Fターム(参考)】
5H301AA01
5H301AA10
5H301BB14
5H301CC03
5H301CC06
5H301DD01
5H301DD07
5H301DD08
5H301DD15
5H301GG09
5H301LL02
5H301QQ06
5H301QQ08
(57)【要約】
【課題】同行者と動作制御システムの間に入り込んだ非同行者を同行者と誤認させることのない信頼性の高い動作制御システムを提供すること。
【解決手段】紐状体14と、紐状体14の第1端部14Aが係合される係合部12と係合部12に係合された紐状体14の基準位置における形状に対し、紐状体14の第2端部14Bの側が移動した際における紐状体14の第1方向から紐状体14を臨んだ際の紐状体14の形状変化および紐状体14の第2方向から紐状体14を臨んだ際の紐状体14の形状変化をそれぞれ計測する第1カメラ40および第2カメラ50と、第1方向から紐状体14を臨んだ際の紐状体14の形状変化に基づいて第1モータ20の動作制御信号を生成すると共に第2方向から紐状体14を臨んだ際の紐状体14の形状変化に基づいて第2モータ30の動作制御信号を生成する演算手段64と、を具備する動作制御部(動作制御システム)60である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
紐状体と、
前記紐状体の第1端部が係合される係合部と、
前記係合部に係合された前記紐状体の基準位置における形状に対し、前記紐状体の第2端部側が移動した際における前記紐状体の第1方向から前記紐状体を臨んだ際の前記紐状体の形状変化および前記紐状体の第2方向から前記紐状体を臨んだ際の前記紐状体の形状変化をそれぞれ計測する計測手段と、
前記第1方向から前記紐状体を臨んだ際の前記紐状体の形状変化に基づいて第1動作制御信号を生成すると共に前記第2方向から前記紐状体を臨んだ際の前記紐状体の形状変化に基づいて第2動作制御信号を生成する動作制御信号生成手段と、を具備することを特徴とする動作制御システム。
【請求項2】
前記第1方向と前記第2方向は、前記紐状体を長さ方向に計測可能であると共に互いに直交していることを特徴とする請求項1記載の動作制御システム。
【請求項3】
前記計測手段は、前記第1方向から前記紐状体の形状変化を計測する第1計測手段と、前記第2方向から前記紐状体の形状変化を計測する第2計測手段と、を有していることを特徴とする請求項1または2記載の動作制御システム。
【請求項4】
前記計測手段と前記紐状体の一部は外乱防止体に収容されていることを特徴とする請求項1または2記載の動作制御システム。
【請求項5】
前記外乱防止体は、前記紐状体の前記第2端部の側に開口する有底筒状体に形成されており、
前記紐状体の前記第1端部は、前記有底筒状体の内部空間に配設された前記係合部または前記有底筒状体の内表面に係合されていて、
前記紐状体に所定張力が作用した際に前記係合部または前記内表面と前記紐状体との係合が解除されると共に、前記動作制御信号生成手段は、前記第1動作制御信号および前記第2動作制御信号のうちの少なくとも一方で停止信号を生成することを特徴とする請求項4記載の動作制御システム。
【請求項6】
前記紐状体に所定張力が作用した際に前記係合部と前記紐状体との係合が解除されると共に、前記動作制御信号生成手段は、前記第1動作制御信号および前記第2動作制御信号のうちの少なくとも一方で停止信号を生成することを特徴とする請求項1または2記載の動作制御システム。
【請求項7】
移動手段と、操舵手段と、前記移動手段および前記操舵手段の動作をそれぞれ制御する動作制御部と、を具備する追従ロボットであって、
前記動作制御部は、
紐状体と、
前記紐状体の第1端部が係合される係合部と、
前記係合部に係合された前記紐状体の基準位置における形状に対し、前記紐状体の第2端部側が移動した際における前記紐状体の第1方向から前記紐状体を臨んだ際の前記紐状体の形状変化および前記紐状体の第2方向から前記紐状体を臨んだ際の前記紐状体の形状変化をそれぞれ計測する計測手段と、
前記第1方向から前記紐状体を臨んだ際の前記紐状体の形状変化に基づいて前記移動手段の動作を制御する移動手段動作制御信号を生成すると共に前記第2方向から前記紐状体を臨んだ際の前記紐状体の形状変化に基づいて前記操舵手段の動作を制御する操舵手段動作制御信号を生成する動作制御信号生成手段と、
前記移動手段動作制御信号に基づいて前記移動手段の動作を制御すると共に前記操舵手段動作制御信号に基づいて前記操舵手段の動作を制御する制御手段と、を有していることを特徴とする追従ロボット。
【請求項8】
前記第1方向と前記第2方向は、前記紐状体を長さ方向に計測可能であると共に互いに直交していることを特徴とする請求項7記載の追従ロボット。
【請求項9】
前記計測手段は、
前記第1方向から前記紐状体の形状変化を計測する第1計測手段と、前記第2方向から前記紐状体の形状変化を計測する第2計測手段と、を有していることを特徴とする請求項7または8記載の追従ロボット。
【請求項10】
前記計測手段と前記紐状体の一部は外乱防止体に収容されていることを特徴とする請求項7または8記載の追従ロボット。
【請求項11】
前記外乱防止体は、前記紐状体の前記第2端部の側に開口する有底筒状体に形成されており、
前記紐状体の前記第1端部は、前記有底筒状体の内部空間に配設された前記係合部または前記有底筒状体の内表面に係合されていて、
前記紐状体に所定張力が作用した際に前記係合部または前記内表面と前記紐状体との係合が解除されると共に、前記動作制御信号生成手段は、前記移動手段動作制御信号および前記操舵手段動作制御信号のうちの少なくとも一方で停止信号を生成することを特徴とする請求項10記載の追従ロボット。
【請求項12】
前記紐状体に所定張力が作用した際に前記係合部と前記紐状体との係合が解除されると共に、前記動作制御信号生成手段は、前記移動手段動作制御信号および前記操舵手段動作制御信号のうちの少なくとも一方で停止信号を生成することを特徴とする請求項7または8記載の追従ロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動作制御システム、追従ロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
工場等において同行者に並走しながら荷物の運搬を行う移動ロボットが知られている。このような移動ロボットとしては、たとえば特許文献1(特開2008-234404号公報)に示すようなものが提案されている。
【0003】
特許文献1には、同行者の動きをカメラで撮影し、撮影データを解析することで同行者の動き等を判断し、移動ロボットの動作制御を行う構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008-234404号公報(請求項1―3、明細書段落0021―0028、
図1―
図3等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示されている移動ロボットによれば、カメラにより撮影した画像データに基づいて同行者の動作識別をしているため、画像データのデータ処理の負荷が高くなり、演算手段が高価になってしまうといった課題を有している。また、同行者を移動ロボットに先行させる場合、同行者の後姿を撮影した画像データに基づいて同行者の動作識別が行われることになる。しかしながら、同行者の後ろ姿を撮影した画像データは、同行者を正面側から撮影した画像データに対し、同行者を特定するための要素が大幅に減少してしまい、先行する同行者と移動ロボットとの間に入り込んだ非同行者を同行者と誤認してしまうおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで本発明は上記課題を解決するためのものであり、その目的は、動作制御システムおよび追従ロボットにおける画像データ処理の負荷を低減することで、制御システムおよび追従ロボットを安価に提供することを第1の目的としている。また、同行者と動作制御システムおよび追従ロボットの間に入り込んだ非同行者を同行者と誤認させることのない信頼性の高い動作制御システムおよび追従ロボットを提供することを第2の目的としている。
【0007】
上記目的を達成するため発明者が鋭意研究した結果、以下の構成に想到した。すなわち本発明は、紐状体と、前記紐状体の第1端部が係合される係合部と、前記係合部に係合された前記紐状体の基準位置における形状に対し、前記紐状体の第2端部側が移動した際における前記紐状体の第1方向から前記紐状体を臨んだ際の前記紐状体の形状変化および前記紐状体の第2方向から前記紐状体を臨んだ際の前記紐状体の形状変化をそれぞれ計測する計測手段と、前記第1方向から前記紐状体を臨んだ際の前記紐状体の形状変化に基づいて第1動作制御信号を生成すると共に前記第2方向から前記紐状体を臨んだ際の前記紐状体の形状変化に基づいて第2動作制御信号を生成する動作制御信号生成手段と、を具備することを特徴とする動作制御システムである。
【0008】
これにより、画像データ処理の負荷を低減することができ、動作制御システムを安価に提供することが可能になる。また、動作制御システムと同行者を紐状体で連結することで、動作制御システムは自らの同行者を常に正しく認識することが可能であって、動作制御システムの信頼性を高めることができる。
【0009】
また、前記第1方向と前記第2方向は、前記紐状体を長さ方向に計測可能であると共に互いに直交していることが好ましい。また、前記計測手段は、前記第1方向から前記紐状体の形状変化を計測する第1計測手段と、前記第2方向から前記紐状体の形状変化を計測する第2計測手段と、を有していることが好ましい。
【0010】
これらにより、第1動作制御信号と第2動作制御信号が正しく生成され、動作制御対象物を正しく動作制御することができる。
【0011】
また、前記計測手段と前記紐状体の一部は外乱防止体に収容されていることが好ましい。さらに、前記外乱防止体は、前記紐状体の前記第2端部の側に開口する有底筒状体に形成されており、前記紐状体の前記第1端部は、前記有底筒状体の内部空間に配設された前記係合部または前記有底筒状体の内表面に係合されていて、前記紐状体に所定張力が作用した際に前記係合部または前記内表面と前記紐状体との係合が解除されると共に、前記動作制御信号生成手段は、前記第1動作制御信号および前記第2動作制御信号のうちの少なくとも一方で停止信号を生成することがより好ましい。
【0012】
これらにより、紐状体の形状変化を計測する際における風や逆光等の外乱要因を排除することができ、細かい動作制御を行うことができる。また、紐状体による同行者と動作制御部との連結が解除された場合には、動作制御部が制御対象物に対する停止信号を生成することで、意図しない動作制御を回避することができる。
【0013】
また、前記紐状体に所定張力が作用した際に前記係合部と前記紐状体との係合が解除されると共に、前記動作制御信号生成手段は、前記第1動作制御信号および前記第2動作制御信号のうちの少なくとも一方で停止信号を生成することが好ましい。
【0014】
これにより、紐状体による同行者と動作制御部との連結が解除された場合には、動作制御部が制御対象物に対する停止信号を生成することで、意図しない動作制御を回避することができる。
【0015】
また、移動手段と、操舵手段と、前記移動手段および前記操舵手段の動作をそれぞれ制御する動作制御部と、を具備する追従ロボットであって、前記動作制御部は、紐状体と、前記紐状体の第1端部が係合される係合部と、第1端部が係合部に係合された紐状体の基準位置における形状に対し、前記紐状体の第2端部側が移動した際における前記紐状体の第1方向から前記紐状体を臨んだ際の前記紐状体の形状変化および前記紐状体の第2方向から前記紐状体を臨んだ際の前記紐状体の形状変化をそれぞれ計測する計測手段と、前記第1方向から前記紐状体を臨んだ際の前記紐状体の形状変化に基づいて前記移動手段の動作を制御する移動手段動作制御信号を生成すると共に前記第2方向から前記紐状体を臨んだ際の前記紐状体の形状変化に基づいて前記操舵手段の動作を制御する操舵手段動作制御信号を生成する動作制御信号生成手段と、前記移動手段動作制御信号に基づいて前記移動手段の動作を制御すると共に前記操舵手段動作制御信号に基づいて前記操舵手段の動作を制御する制御手段と、を有していることを特徴とする追従ロボットの発明もある。
【0016】
これにより、画像データ処理の負荷を低減することができ、追従ロボットを安価に提供することが可能になる。また、追従ロボットと同行者を紐状体で連結することで、追従ロボットは自らの同行者を常に正しく認識することが可能であって、追従ロボットの動作制御の信頼性を高めることができる。
【0017】
また、前記第1方向と前記第2方向は、前記紐状体を長さ方向に計測可能であると共に互いに直交していることが好ましい。また、前記計測手段は、前記第1方向から前記紐状体の形状変化を計測する第1計測手段と、前記第2方向から前記紐状体の形状変化を計測する第2計測手段と、を有していることが好ましい。
【0018】
これらにより、第1動作制御信号と第2動作制御信号が正しく生成され、追従ロボットを正しく動作制御することができる。
【0019】
また、前記計測手段と前記紐状体の一部は外乱防止体に収容されていることが好ましい。さらに、前記外乱防止体は、前記紐状体の前記第2端部の側に開口する有底筒状体に形成されており、前記紐状体の前記第1端部は、前記有底筒状体の内部空間に配設された前記係合部または前記有底筒状体の内表面に係合されていて、前記紐状体に所定張力が作用した際に前記係合部または前記内表面と前記紐状体との係合が解除されると共に、前記動作制御信号生成手段は、前記第1動作制御信号および前記第2動作制御信号のうちの少なくとも一方で停止信号を生成することがより好ましい。
【0020】
これらにより、紐状体の形状変化を計測する際における風や逆光等の外乱要因を排除することができ、追従ロボットの細かい動作制御を行うことができる。また、紐状体による同行者と追従ロボットとの連結が解除された場合には、動作制御部が追従ロボットに対する停止信号を生成することで、追従ロボットに対する意図しない動作制御を回避することができる。
【0021】
また、前記紐状体に所定張力が作用した際に前記係合部と前記紐状体との係合が解除されると共に、前記動作制御信号生成手段は、前記第1動作制御信号および前記第2動作制御信号のうちの少なくとも一方で停止信号を生成することが好ましい。
【0022】
これにより、紐状体による同行者と追従ロボットとの連結が解除された場合には、動作制御部が追従ロボットに対する停止信号を生成することで、追従ロボットに対する意図しない動作制御を回避することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る動作制御システム、追従ロボットの構成を採用することにより、画像データ処理の負荷を低減することができ、動作制御システムを安価に提供することが可能になる。また、動作制御システムと同行者が紐状体で連結されているため、動作制御システムは自らの同行者を常に正しく認識することが可能であって、動作制御システムの信頼性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】第1実施形態における追従ロボットの概略構成を示す斜視図である。
【
図2】第1実施形態における追従ロボットの概略構成を示す平面図である。
【
図3】第1実施形態における追従ロボットの概略構成を示す側面図である。
【
図4】紐状体の基準形状と同行者により操作された紐状体の状態を示す正面図(第1カメラによる撮影画像)である。
【
図5】紐状体の基準形状と同行者により操作された紐状体の状態を示す平面図(第2カメラによる撮影画像)である。
【
図6】紐状体の基準形状と同行者により操作された紐状体の他の状態を示す平面図(第2カメラによる撮影画像)である。
【
図7】第2実施形態における追従ロボットにおける動作制御部の概略構成を示す一部透視斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明に係る追従ロボット100の実施形態について説明する。
【0026】
(第1実施形態)
図1~
図3に示すように、本実施形態における追従ロボット100は、タイヤ付車台10、第1モータ20、第2モータ30、第1カメラ40、第2カメラ50、動作制御部60を具備する走行ロボットである。本実施形態における追従ロボット100は、タイヤ付車台10の係合部12に係合された紐状体14を同行者に連結することにより、自らの同行者を特定することができる。同行者が移動することにより生じる紐状体14の形状変化に基づいて動作制御システムとしての動作制御部60が第1モータ20と第2モータ30の動作を制御することにより、追従ロボット100を同行者に追従させている。
【0027】
タイヤ付車台10は、前後に2輪ずつのタイヤ11を有している。
図1~
図3中の矢印Aに示す進行方向の後方における2つのタイヤ11の第1車軸11Aには第1モータ20が、進行方向の前方における2つのタイヤ11の第2車軸11Bには第2モータ30が、それぞれ公知の手法により連結されている。本実施形態においては、第1モータ20が図示しないギヤ機構等を介して進行方向の後方側におけるタイヤ11を第1車軸11Aの周りに回転駆動させており、回転駆動するタイヤ11により移動手段が構成されている。また、第2モータ30の出力軸が図示しないリンク機構を介して進行方向の前方側におけるタイヤ11の第2車軸11Bに連結されていて、第2モータ30によりタイヤ11を第2車軸11Bの中心線に対して水平面内で回動させる操舵手段が構成されている。
【0028】
また、タイヤ付車台10の上面には係合部12が立設されており、係合部12には紐状体14の第1端部14Aが係合されている。係合部12と紐状体14の第1端部14Aの少なくとも一方に磁石15を取り付けて、係合部12と紐状体14の第1端部14Aを磁石15の磁力により係合させた形態を採用することができる。このように磁石15を用いた係合部12と紐状体14の第1端部14Aの係合形態によれば、紐状体14に所要張力以上の張力が作用した場合に、係合部12と紐状体14の第1端部14Aとの係合状態を解除させることができる。なお、紐状体14に所定張力以上の張力が作用したときにおける係合部12と紐状体14の第1端部14Aとの係合状態を解除させる係合形態は磁石15による係合形態に限定されるものではない。また、係合部12と紐状体14の第1端部14Aとは紐状体14が破断しない限り係合状態が維持されてもよい。
【0029】
このようにして係合部12に係合された紐状体14の第2端部14Bは、図示しない同行者に係合される。紐状体14の第2端部14Bと同行者の係合は、同行者のベルト等に係合させた形態や、紐状体14の第2端部14Bを係合させたベルトを同行者に装着させること等によって行うことができる。紐状体14の第2端部14Bは、同行者の両手を自由にした状態で同行者に係合させることにより、同行者の安全確保や利便性向上が可能になる点で好都合である。なお、通常の使用状態においては、同行者と追従ロボット100との間に掛け渡された紐状体14には張力は作用しておらず、紐状体14にはある程度のたわみが生じている状態になっている。
【0030】
また、タイヤ付車台10には紐状体14を第1方向である水平方向から計測する第1計測手段としての第1カメラ40と、紐状体14を第2方向である上方向から計測する第2計測手段としての第2カメラ50が配設されている。第1カメラ40は
図1~
図3中の矢印B(点Bの紙面奥行方向)の向きに、第2カメラ50は
図1~
図3中の矢印C(点Cの紙面奥行方向)の向きで紐状体14を撮影する。このように第1カメラ40と第2カメラ50は、紐状体14を互いに直交する方向から紐状体14の長さ方向に計測することで、紐状体14の形状変化を2方向から計測することが可能になっている。本実施形態における第1カメラ40は、タイヤ付車台10に立設された第1カメラ保持体42に横向きにして保持されており、第2カメラ50は、タイヤ付車台10の上面に立設された第2カメラ保持体52に吊り下げられた状態で保持されている。
【0031】
第1カメラ40により撮影された紐状体14の横側からの撮影データは、第1カメラ撮影形状データSD1として動作制御部60の記憶手段62に記憶される。本実施形態におけるタイヤ付車台10には、第1カメラ40と紐状体14の延長線上に動作制御部60を収容する収容体66が配設されており、収容体66の高さは第1カメラ40の光軸の高さ位置よりも高くなっている。また、収容体66の紐状体14の側における壁面は、紐状体14の色と対になる色に着色されている。これにより、第1カメラ40による紐状体14の撮影画像を明確な画像データにすることができる。
【0032】
記憶手段62には、基準位置(基準形状)における紐状体14の第1カメラ40による横側からの撮影データが基準位置における紐状体14の形状を示す第1カメラ基準形状データKD1として予め記憶されている。本実施形態における基準形状とは、紐状体14を係合部12の高さ位置で進行方向前方に引張り、水平にした状態としている。CPUに代表される演算手段(動作制御信号生成手段)64は、第1カメラ基準形状データKD1と第1カメラ撮影形状データSD1における紐状体14の形状データとの比較を行い、紐状体14の変化状態に基づいて第1動作制御信号としての第1モータ20の動作制御信号を生成する。第1カメラ撮影形状データSD1と第1カメラ基準形状データKD1に基づいた(紐状体14の変化状態に基づいた)演算手段64による第1モータ20の動作制御信号の具体的な生成方法の説明は後述する。
【0033】
第2カメラ50により撮影された紐状体14の上側からの撮影データは、第2カメラ撮影形状データSD2として動作制御部60の記憶手段62に記憶される。本実施形態におけるタイヤ付車台10の上面のうち少なくとも紐状体14の第2端部14Bの左右方向における最大振れ幅の範囲は、紐状体14の色と対になる色に着色されている。これにより、第2カメラ50による紐状体14の撮影データを明確な画像データにすることができる。
【0034】
記憶手段62には、基準位置(基準形状)における紐状体14の第2カメラ50による上側からの撮影データが基準位置における紐状体14の形状を示す第2カメラ基準形状データKD2として予め記憶されている。CPUに代表される演算手段(動作制御信号生成手段)64は、第2カメラ基準形状データKD2と第2カメラ撮影形状データSD2における紐状体14の形状データとの比較を行い、第2動作制御信号としての第2モータ30の動作制御信号を生成する。第2カメラ撮影形状データSD2と第2カメラ基準形状データKD2に基づいた演算手段64による第2モータ30の動作制御信号の具体的な生成方法の説明は後述する。
【0035】
演算手段64は、記憶手段62に記憶されている第1カメラ基準形状データKD1と第1カメラ撮影形状データSD1との比較を行う。具体的には、
図4に示すように第1カメラ撮影形状データSD1における紐状体14の形状が、第1カメラ基準形状データKD1における紐状体14の形状に比較して紐状体14の第2端部14B(同行者)の側が上側に持ち上がった状態になっている。すなわち、同行者により紐状体14が引っ張られているので、演算手段64は、第1モータ20によりタイヤ11を前方(同行者の側)に回転させるための動作制御信号(第1モータ20に供給する電力量)を生成する処理を実行する。
【0036】
本実施形態における演算手段64は、
図4に示す第1カメラ基準形状データKD1と、第1カメラ撮影形状データSD1において、紐状体14の第1端部14Aから進行方向前方側の複数箇所における紐状体14の高さ位置の差分をそれぞれ算出する処理を行うことで、紐状体14の高さ方向における形状変化を検出(判断)している。本実施形態においては、演算手段64が第1カメラ基準形状データKD1における紐状体14の第1端部14Aから5箇所の位置における高さ位置の差分Δz1~Δz5をそれぞれ算出し、Δz1~Δz5の合計値を高さ方向変化量Δzとして記憶手段62に記憶させる。なお、高さ方向変化量Δzは、紐状体14の全ての画素に対して算出する(
図4中の塗りつぶし部分の面積に相当)こともできる。これとは反対に、高さ方向変化量Δzは、紐状体14の第1端部14Aから5箇所より少ない位置における高さ位置の差分Δz1からΔznにより算出することもできる。
【0037】
演算手段64は、記憶手段62に記憶させた紐状体14の高さ方向変化量Δzの数値に応じて第1モータ20への供給電力量である移動手段動作制御信号としての第1モータ動作制御信号を生成する。本実施形態における第1モータ動作制御信号は、高さ方向変化量Δzの数値と比例関係となるように設定されている。なお、高さ方向変化量Δzの所定数値範囲毎に第1モータ動作制御信号を対応させた第1モータ動作制御信号生成マップを予め記憶手段62に記憶させておくこともできる。演算手段64は、記憶手段62から読み出した高さ方向変化量Δzを同じく記憶手段62から読み出した第1モータ動作制御信号生成マップに参照して第1モータ動作制御信号を生成することもできる。制御手段としての演算手段64は、第1モータ動作制御信号に基づいて第1モータ20の動作制御を行う。
【0038】
第2カメラ50により撮影された第2カメラ基準形状データKD2と、第2カメラ撮影形状データSD2に対しても第1カメラ基準形状データKD1と第1カメラ撮影形状データSD1を用いた高さ方向変化量Δzの算出方法と同様に行うことができる。具体的には、演算手段64は、
図5に示す第2カメラ基準形状データKD2と、第2カメラ撮影形状データSD2において、第2カメラ基準形状データKD2における紐状体14の第1端部14Aから進行方向前方側の複数箇所における紐状体14の縦方向の差分をそれぞれ算出する処理を行うことで紐状体14の横方向の形状変化を検出(判断)している。本実施形態においては、演算手段64が第2カメラ基準形状データKD2における紐状体14の第1端部14Aから5箇所の位置における横方向位置の差分Δy1~Δy5をそれぞれ算出し、Δy1~Δy5の合計値を横方向変化量Δyとして記憶手段62に記憶させている。なお、横方向変化量Δyは、紐状体14の全ての画素に対して算出する(
図5中の塗りつぶし部分の面積に相当)こともできる。さらにこれとは反対に、横方向変化量Δyは、紐状体14の第1端部14Aから5箇所より少ない位置における横方向位置の差分Δy1からΔynにより算出することもできる。
【0039】
なお、
図5は、同行者により紐状体14が進行方向右側に引っ張られた状態を示している。同行者により紐状体14が進行方向左側に引っ張られた状態は
図6に示した状態になる。
図6に示した場合における横方向変化量Δyはマイナスになる。
【0040】
演算手段64は、記憶手段62に記憶させた横方向変化量Δyの数値に応じて第2モータ30への供給電力量である操舵手段動作制御信号としての第2モータ動作制御信号を生成する。本実施形態における第2モータ動作制御信号は、横方向変化量Δyの数値と比例関係となるように設定されている。なお、横方向変化量Δyの所定数値範囲毎に対して1つの第2モータ動作制御信号を対応させた第2モータ動作制御信号生成マップを予め記憶手段62に記憶させておくこともできる。演算手段64は、記憶手段62から読み出した横方向変化量Δyを同じく記憶手段62から読み出した第2モータ動作制御信号生成マップに参照して第2モータ動作制御信号を生成することもできる。制御手段としての演算手段64は、第2モータ動作制御信号に基づいて第2モータ30の動作制御を行う。
【0041】
以上のようにして、追従ロボット100は、追従ロボット100に先行する同行者によって紐状体14が引っ張られた際における基準形状からの紐状体14全体の変化状態に応じて第1モータ20および第2モータ30の動作が制御されている。なお、本実施形態においては、横方向変化量Δyの数値がプラス(マイナスであっても良い)である場合、演算手段64は操舵手段である第2モータ30によってタイヤ11を右側に向けて所要角度回動させる第2モータ動作制御信号を生成する。これに対して、横方向変化量Δyの数値がマイナス(プラスであっても良い)である場合、演算手段64は操舵手段である第2モータ30によってタイヤ11を左側に向けて所要角度回動させる第2モータ動作制御信号を生成する。高さ方向変化量Δzは常にプラスの値になる。なお、高さ方向変化量Δzの値が所定数値未満である場合、演算手段64は、第1モータ20の動作が停止するように設定することもできる。
【0042】
また、係合部12に図示しないマグネットスイッチを配設しておけば、紐状体14の第1端部14Aの磁石15が何らかの理由により係合部12から脱落した場合、演算手段64は、少なくとも第1モータ20の動作を停止させる停止信号を生成することもできる。これにより同行者と追従ロボット100との接続が途絶え、紐状体14に意図しない形状変化が生じても追従ロボット100の暴走を防止することができる。さらに演算手段64は、図示しないロック機構を作動させて少なくとも第1モータ20により回転駆動するタイヤ11をロックさせる処理を実行することもできる。これにより、坂道の途中で係合部12から紐状体14が外れてしまった場合であっても追従ロボット100を確実に停止させることができる。
【0043】
(第2実施形態)
図7は第2実施形態における追従ロボット100における動作制御部60の概略構成を示す一部透視斜視図である。第1実施形態においては、紐状体14が外部に露出しているため、逆光な風等の外乱要因により紐状体14の形状が正確に計測できないおそれや、第1カメラ40と第2カメラ50による紐状体14の撮影データがいわゆる白飛びしてしまうことがある。本実施形態においては、これらの外乱要因を排除または軽減することが可能な構成を有している点が特徴である。
【0044】
本実施形態における追従ロボット100には、タイヤ付車台10の上面における紐状体14の第1端部14A側の所要長さ範囲(少なくとも第1カメラ40と第2カメラ50による撮影範囲)に外乱防止体70が設けられている。本実施形態における外乱防止体70は、進行方向前方側が開口する有底角筒体(有底筒状体)に形成されている。本実施形態における外乱防止体70の有底部72(進行方向後方側の鉛直壁)の内側面は、紐状体14の係合部12として用いられている。また、本実施形態における外乱防止体70は、鉛直壁74の内側面に第1カメラ40が取り付けられ、外乱防止体70の天井76(または床面)の内側面に第2カメラ50が取り付けられている。
【0045】
また、外乱防止体70の内表面のうち、少なくとも第1カメラ40と紐状体14の延長線上の面と第2カメラ50と紐状体14の延長線上の面は紐状体14と対をなす色に着色されていることが好ましい。紐状体14を黒色にして、外乱防止体70の内表面を白色にすれば、紐状体14の形状が明確になると共に、第1カメラ40と第2カメラ50をモノクロカメラにすることもできる。これにより、高さ方向変化量Δzや横方向変化量Δyの算出に用いる画像データのデータ容量を小さくすることができる点においても好都合である。
【0046】
また、以上の実施形態における追従ロボット100は、第1モータ20により回転駆動するタイヤ11が移動手段であり、タイヤ11の第2車軸11Bにリンクを介して連結した第2モータ30を操舵手段としているが、この形態に限定されるものではない。2条の無限軌道や2つのプロペラ等に代表される推進手段が装備された追従ロボット100の形態を採用することもできる。これらの形態における移動手段と操舵手段の動作制御は、2条の無限軌道におけるそれぞれの駆動スプロケットの回転駆動方向や、2つの推進手段の出力および推進方向を制御することにより可能である。
【0047】
また、以上の実施形態においては、追従ロボット100が単独で同行者に追従する形態を例示しているが、追従ロボット100に随行ロボットや随行台車(いずれも図示はせず)を連結することもできる。随行ロボットは、追従ロボット100から係合部12、紐状体14、第1カメラ40および第2カメラ50を省略し、動作制御部60に通信部を有する構成を例示することができる。この場合、追従ロボット100の動作制御部60にも通信部が配設されている。追従ロボット100における第1モータ動作制御信号および第2モータ動作制御信号は、追従ロボット100の通信部から随行ロボットの通信部に送信される。随行ロボットは通信部で追従ロボット100の通信部から送信された第1モータ動作制御信号および第2モータ動作制御信号を随行ロボットの第1モータ動作制御信号および第2モータ動作制御信号とすることもできる。随行台車は単なるタイヤ付台車を例示することができる。
【0048】
また、記憶手段62には、第1モータ20に供給する電力量を均等配分する第1モータ供給電力量マップを予め記憶させておくこともできる。第1モータ供給電力量マップは、第1カメラ基準形状データKD1における紐状体14の形状に対して電力量の供給を0に設定し、紐状体14の第2端部14Bの側が最大限上側に持ち上がった形状(直線状態)に対して最大供給電力量を設定し、これらの間で供給電力量を比例配分する形態を例示することができる。また、第2モータ30に対する動作制御信号についても第2モータ動作制御信号マップを予め記憶手段62に記憶させておくこともできる。第2モータ動作制御信号マップは、第2カメラ基準形状データKD2における紐状体14の形状に対して回動量を0に設定し、紐状体14の第2端部14Bの側が最大限振れた形状(直線状態)に対して最大回動量(最大操舵角)を設定し、これらの間で回動量(操舵角)を比例配分する形態を例示することができる。
【0049】
また、紐状体14の基準形状は、第1実施形態で説明したように、紐状体14を係合部12の高さ位置で進行方向前方に引張り、水平にした状態に限定されるものではない。紐状体14の他の基準形状としては、紐状体14の第2端部14Bを装着(保持)した同行者が較正用位置に静止して起立した状態における紐状体14の形状を紐状体14の基準形状に採用することもできる。このような形態を採用することにより、同行者と追従ロボット100との間の紐状体14がたるんだ状態であっても第1モータ20に対する動作制御信号や第2モータ30に対する動作制御信号を生成することができる。したがって、同行者への身体的負担をかけることなく追従ロボット100を追従させることができる点において好都合である。
【0050】
また、第2実施形態においては、外乱防止体70に有底角筒体を用いているが、外乱防止体70具体的形状は特に限定されるものではない。また、紐状体14の第1端部14Aは外乱防止体70の内部空間に配設されていればよく、外乱防止体70の内側面に直接係合されていなくても良い。同様に、第1カメラ40および第2カメラ50が外乱防止体70の内側面に直接取り付けられていない形態を採用することもできる。
【0051】
また、以上の実施形態においては、紐状体14の形状を光学的に撮影した画像データを用いて紐状体14の基準形状に対する高さ方向変化量Δzや横方向変化量Δyの算出を行うことにより紐状体14の形状変化を計測(判断)しているが、本発明はこの形態に限定されるものではない。紐状体14の基準形状の基準画像データと、紐状体14の形状変化を示す複数種類の第1参考形状画像データおよび第2参考形状画像データを予め記憶62に記憶させておくと共に、第1参考形状画像データおよび第2参考形状画像データに第1モータ動作制御信号および第2モータ動作制御信号を紐づけておくこともできる。このとき同行者は基準画像データに表れている紐状体14の状態を基準状態とする。同行者が移動を開始すると演算手段64は、第1カメラ撮影形状データSD1と第1参考形状画像データとの比較および第2カメラ撮影形状データSD2と第2参考形状画像データとの比較を行う。そして演算手段64は、第1カメラ撮影形状データSD1に最も類似する第1参考形状画像データを抽出し、これに紐づけられている第1モータ動作制御信号を採用することができる。また、演算手段64は、第2カメラ撮影形状データSD2に最も類似する第2参考形状画像データを抽出し、これに紐づけられている第2モータ動作制御信号を採用することができる。
【0052】
また、紐状体14の形状変化の計測は、光学的手段によって撮影された画像データに基づいた方法に限定されるものではない。紐状体14の静電容量を計測する静電容量型近接センサや紐状体14の磁束密度を計測する磁気センサを用いた計測データを用いて紐状体14の基準形状に対する高さ方向変化量Δzや横方向変化量Δyの算出を行う形態を採用することもできる。紐状体14の形状の変化を検出する具体的手段は特に限定されるものではない。
【0053】
また、以上の実施形態においては、計測手段として第1カメラ40と第2カメラ50を用いた形態を例示しているが、本発明はこの形態に限定されるものではない。計測手段は複数台である必要はなく、単体の計測手段(カメラ)により第1方向および第2方向から紐状体14の形状を長さ方向に計測(撮影)する形態を採用することもできる。
【0054】
さらには、以上に説明した実施形態と上記変形例における任意の構成どうしが適宜組み合わされた追従ロボット100の形態も本発明の技術的範囲に属する。
【符号の説明】
【0055】
10:タイヤ付車台
11:タイヤ,11A:第1車軸,11B:第2車軸,12:係合部,
14:紐状体,14A:第1端部,14B:第2端部,15:磁石
20:第1モータ
30:第2モータ
40:第1カメラ(計測手段)
42:第1カメラ保持体
50:第2カメラ(計測手段)
52:第2カメラ保持体
60:動作制御部
62:記憶手段,64:演算手段(動作制御信号生成手段,制御手段),66:収容体
70:外乱防止体
72:有底部,74:鉛直壁,76:天井
100:追従ロボット
KD1:第1カメラ基準形状データ
SD1:第1カメラ撮影形状データ
KD2:第2カメラ基準形状データ
SD2:第2カメラ撮影形状データ
Δy:横方向変化量
Δy1~Δyn:横方向の差分
Δz:高さ方向変化量
Δz1~Δzn:高さ位置の差分