(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024104966
(43)【公開日】2024-08-06
(54)【発明の名称】三次元積層造形装置、及び三次元積層造形方法
(51)【国際特許分類】
B22F 10/36 20210101AFI20240730BHJP
B29C 64/153 20170101ALI20240730BHJP
B29C 64/393 20170101ALI20240730BHJP
B29C 64/268 20170101ALI20240730BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20240730BHJP
B33Y 30/00 20150101ALI20240730BHJP
B33Y 50/02 20150101ALI20240730BHJP
B22F 10/25 20210101ALI20240730BHJP
B22F 12/41 20210101ALI20240730BHJP
【FI】
B22F10/36
B29C64/153
B29C64/393
B29C64/268
B33Y10/00
B33Y30/00
B33Y50/02
B22F10/25
B22F12/41
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023009436
(22)【出願日】2023-01-25
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】成田 竜一
【テーマコード(参考)】
4F213
4K018
【Fターム(参考)】
4F213AP11
4F213AP12
4F213AQ01
4K018CA44
4K018EA51
(57)【要約】
【課題】造形物に照射されるレーザーのエネルギー密度を適正に維持することができる三次元積層造形装置、及び三次元積層造形方法を提供する。
【解決手段】三次元積層造形装置は、造形物の造形面に粉末材料を供給し、供給された粉末材料にレーザーを照射することで粉末材料を溶融硬化させて、造形物を積層造形する三次元積層造形装置であって、造形物を支持するステージを有する造形装置本体と、レーザーを生成するレーザー発振部と、造形面に向かってレーザーを照射するとともに、レーザーの造形面に対する照射角度を変化させることが可能な照射部と、造形面におけるレーザーの照射面積に基づいてレーザーの出力を調節することが可能な出力調節部と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
造形物の造形面に粉末材料を供給し、供給された前記粉末材料にレーザーを照射することで前記粉末材料を溶融硬化させて、前記造形物を積層造形する三次元積層造形装置であって、
前記造形物を支持するステージを有する造形装置本体と、
前記レーザーを生成するレーザー発振部と、
前記造形面に向かって前記レーザーを照射するとともに、前記レーザーの前記造形面に対する照射角度を変化させることが可能な照射部と、
前記造形面における前記レーザーの照射面積に基づいて前記レーザーの出力を調節することが可能な出力調節部と、
を備える三次元積層造形装置。
【請求項2】
前記出力調節部は、前記照射角度がゼロの状態における前記レーザーの出力、及び前記照射面積をそれぞれP0、D0としたときに、任意の位置(x、y)における前記レーザーの出力Pxyを(1)式のように決定する請求項1に記載の三次元積層造形装置。
Pxy=P0×π/4×Dxcosθx×Dycosθy/(πD0
2/4)・・・(1)
【請求項3】
前記出力調節部は、予め取得された前記造形面の任意の位置における前記レーザーに直交する計測面でのビーム径に基づいて、前記レーザーの出力を調節する請求項1又は2に記載の三次元積層造形装置。
【請求項4】
前記出力調節部は、前記レーザーの照射点を中心とする同心円状をなす分割線によって前記造形面を複数の区画に分割し、該区画ごとに異なる前記レーザーの出力を設定することが可能な請求項1又は2に記載の三次元積層造形装置。
【請求項5】
複数の前記照射部を備え、
前記出力調節部は、前記照射部ごとに前記複数の区画を設定する請求項4に記載の三次元積層造形装置。
【請求項6】
粉末材料にレーザーを照射して前記粉末材料を溶融硬化させて造形物を生成する三次元積層造形方法であって、
前記レーザーを生成するステップと、
前記粉末材料が敷設された造形面に向かって前記レーザーを照射するとともに、前記レーザーの前記造形面に対する照射角度を変化させるステップと、
前記造形面における前記レーザーの照射面積を取得するステップと、
前記照射面積に基づいて前記レーザーの出力を調節するステップと、
を含む三次元積層造形方法。
【請求項7】
前記レーザーの出力を調節するステップでは、前記照射角度がゼロの状態における前記レーザーの前記出力、及び前記照射面積をそれぞれP0、D0としたときに、任意の位置(x、y)における前記レーザーの前記出力Pxyを(1)式のように決定する請求項6に記載の三次元積層造形方法。
Pxy=P0×π/4×Dxcosθx×Dycosθy/(πD0
2/4)・・・(1)
【請求項8】
前記レーザーの前記出力を調節するステップでは、予め取得された前記造形面の任意の位置における前記レーザーに直交する計測面でのビーム径に基づいて、前記レーザーの前記出力を調節する請求項6又は7に記載の三次元積層造形方法。
【請求項9】
前記レーザーの前記出力を調節するステップでは、前記レーザーの照射点を中心とする同心円状をなす分割線によって前記造形面を複数の区画に分割し、該区画ごとに異なる前記レーザーの前記出力を設定する請求項6又は7に記載の三次元積層造形方法。
【請求項10】
複数の前記照射点から前記レーザーをそれぞれ照射し、
前記レーザーの前記出力を調節するステップでは、前記レーザーごとに前記複数の区画を設定する請求項9に記載の三次元積層造形方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、三次元積層造形装置、及び三次元積層造形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザーを金属粒子等に照射して溶融硬化させる工程を複数の層にわたって繰り返すことで造形物を得る三次元積層造形という技術が近年実用化されている。この種の技術を用いた装置では、少なくとも1つの照射点から照射されたレーザーの照射角度を、ガルバノスキャナー等の光学機器を用いて時々刻々と変化させながら、レーザーが所定の経路をなぞることで造形物が構築されていく。
【0003】
ここで、レーザーを用いた加工装置の一例として、下記特許文献1に記載されたものが知られている。下記特許文献1に係る装置では、レーザー溶接を行うに際して、溶接部の端部に対するレーザーの照射角度に応じて、ワークへのレーザーによる入熱量の変化率を調節することが可能であるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、三次元積層造形を行う際には、レーザーが走査する経路の端部のみならず、経路全体における入熱量が造形品の品質に影響する。このため、レーザーが走査する経路の全体にわたって適正なエネルギー密度を維持することが可能な技術に対する要請が高まっている。
【0006】
本開示は上記課題を解決するためになされたものであって、造形物に照射されるレーザーのエネルギー密度を適正に維持することができる三次元積層造形装置、及び三次元積層造形方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本開示に係る三次元積層造形装置は、造形物の造形面に粉末材料を供給し、供給された前記粉末材料にレーザーを照射することで前記粉末材料を溶融硬化させて、前記造形物を積層造形する三次元積層造形装置であって、前記造形物を支持するステージを有する造形装置本体と、前記レーザーを生成するレーザー発振部と、前記造形面に向かって前記レーザーを照射するとともに、前記レーザーの前記造形面に対する照射角度を変化させることが可能な照射部と、前記造形面における前記レーザーの照射面積に基づいて前記レーザーの出力を調節することが可能な出力調節部と、を備える。
【0008】
本開示に係る三次元積層造形方法は、粉末材料にレーザーを照射して当該粉末材料を溶融硬化させて造形物を生成する三次元積層造形方法であって、前記レーザーを生成するステップと、前記粉末材料が敷設された造形面に向かって前記レーザーを照射するとともに、前記レーザーの前記造形面に対する照射角度を変化させるステップと、前記造形面における前記レーザーの照射面積を取得するステップと、前記照射面積に基づいて前記レーザーのエネルギー密度を調節するステップと、を含む。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、造形物に照射されるレーザーのエネルギー密度を適正に維持することができる三次元積層造形装置、及び三次元積層造形方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本開示の第一実施形態に係る三次元積層造形装置の構成を示す模式図である。
【
図2】レーザーが照射される際の造形面の状態を示す説明図である。
【
図3】本開示の第一実施形態に係る制御部の構成を示す機能ブロック図である。
【
図4】本開示の第一実施形態に係る出力調節部によって設定される区画の状態を示す模式図である。
【
図5】本開示の第一実施形態に係る三次元積層造形方法、及び制御部の制御フローの各ステップを示すフローチャートである。
【
図6】レーザーが照射される際の計測面とビーム径との関係を示す説明図である。
【
図7】本開示の第二実施形態に係る三次元積層造形方法、及び制御部の制御フローの各ステップを示すフローチャートである。
【
図8】本開示の各実施形態に共通する第一変形例であって、出力調節部による区画を示す模式図である。
【
図9】本開示の各実施形態に共通する第二変形例であって、出力調節部による区画を示す模式図である。
【
図10】本開示の各実施形態に係る制御部のハードウェア構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<第一実施形態>
以下、本開示の第一実施形態に係る三次元積層造形装置1、及び三次元積層造形方法について、
図1から
図5を参照して説明する。
【0012】
本実施形態に係る三次元積層造形装置1は、金属やセラミック等の粉末材料に対してレーザーによる入熱を行うことで溶融硬化させながら積層していくことで、三次元形状の造形物を得る装置である。つまり、この三次元積層造形装置1は、Additive Manufacturing造形法(AM造形法)を用いた装置である。
【0013】
(三次元積層造形装置の構成)
図1に示すように、三次元積層造形装置1は、造形装置本体10と、レーザー発振部20と、照射部30と、制御部40と、を備えている。
【0014】
(造形装置本体)
造形装置本体10は、ハウジング11と、可動支持部12と、ステージ13と、ベースプレート13aと、空間14と、リコーター14aと、を有する。ハウジング11は、内部に造形チャンバー11aとしての空間が形成された容器である。造形チャンバー11aは、アルゴン等の不活性ガスによって満たされている。一例としてハウジング11は、直方体状、又は立方体状をなしている。ハウジング11の天面15には、後述するレーザーLを透過させるための透過窓16が設けられている。
【0015】
ハウジング11の底面17には、可動支持部12が設けられている。可動支持部12は、ハウジング11の底面17から上方に突出する棒状をなすとともに、当該底面17に直交する方向に進退動、又は伸縮することが可能とされている。詳しくは図示しないが、可動支持部12は、アクチュエータによって進退動又は伸縮することが可能とされている。
【0016】
可動支持部12の上端には、ステージ13、ベースプレート13a、及び空間14が設けられている。つまり、ステージ13、ベースプレート13a及び空間14は、可動支持部12の進退動に合わせて上下方向に移動することが可能である。ステージ13は、可動支持部12に直交する面内に広がる板状をなしている。ステージ13の面積は、造形品の寸法体格に応じて適宜決定されてよい。ステージ13の上面には、ベースプレート13aを介して空間14が設けられている。空間14は、上述した金属やセラミック等の粉末材料が敷き詰められる領域である。空間14の上面はレーザーLが照射される面であり、平滑かつ平坦状に整えられている。この上面のうち、造形品が形成されている領域を、以下では「造形面18」と呼ぶ。リコーター14aは、この造形面18に粉末を充填・敷設するための装置である。
【0017】
上記の可動支持部12による空間14の進退動の移動量は、造形物の積層回数に応じて自動で制御される。つまり、造形面18上で一つの層の造形が完了すると、可動支持部12が下方にわずかに移動して、新たな層の造形を進めるように構成されている。言い換えれば、空間14は造形が進むにつれて下方に移動するが、造形面18の上下方向位置は常態的に一定である。このような動作を複数の層によって繰り返すことによって、溶融硬化した金属やセラミックが積層され、三次元形状を有する造形品が形成される。
【0018】
(レーザー発振部)
レーザー発振部20は、上記の粉末材料に入熱を行うためのレーザーLを生成(発振)する。レーザーLとしては、例えばYAGレーザーや、ファイバーレーザー、半導体レーザー等が好適に用いられる。レーザーLの種類は、加工に要する入熱量や造形品の寸法体格に応じて適宜決定されてよい。また、詳しくは後述するが、レーザー発振部20によって生成されるレーザーLの出力は、制御部40からの指令に応じて調節可能である。また、本実施形態では、1つのレーザー発振部20のみが設けられている。
【0019】
(照射部)
レーザー発振部20によって生成されたレーザーLの光路上には照射部30が設けられている。照射部30は、造形面18に向かってレーザーLが照射されるように光路を変更するとともに、レーザーLの造形面18に対する照射角度を変化させることが可能である。照射部30として具体的には、ガルバノスキャナーが用いられる。ガルバノスキャナーは、角度を変化させることが可能なミラー31を有している。ミラー31の角度を変化させることで、当該ミラー31に反射したレーザーLの照射方向が変化する。つまり、造形面18に対するレーザーLの照射角度が都度変化する。また、照射部30は、レーザー速度を調節する機能も有している。
【0020】
なお、ここで言う「照射角度」とは、
図2に示すように、造形面18の法線方向に対してレーザーLの照射方向がなす角度θである。さらに詳細には、照射角度は、造形面18にX軸とY軸の座標系を設定した場合に、X軸を基準とする成分であるθxと、Y軸を基準とする成分であるθyと、を含む。したがって、照射角度θの位置におけるレーザーLの照射面積D
θは、照射角度がゼロの状態におけるビーム径をD
0(つまり、Dx=Dy)とした時、Dxcosθx、及びDycosθyを長軸、又は短軸とする楕円形の面積として(1)式のように表される。
D
θ=π/4×Dxcosθx×Dycosθy・・・(1)
さらに、この場合のエネルギー密度Q
θは、照射角度がゼロの状態におけるレーザーL出力P
0を基準として(2)式のようにあらわされる。
Q
θ=P
0/(πDxDy/4)・・・(2)
【0021】
照射部30による照射角度の変化(即ち、ミラー31の角度)は、後述する制御部40によってコントロールされる。レーザーLは、造形面18上を予め定められた経路に従って走査する。レーザーLの経路は、造形品の形状によって適宜決定される。さらに、照射部30によるレーザーLの照射角度の情報は、電気信号として制御部40(後述)に逐一送られる。
【0022】
(制御部)
制御部40は、上述したレーザー発振部20と、照射部30の動作をコントロールする。具体的には、
図3に示すように、角度調節部41と、出力調節部42と、ステージ駆動部43と、記憶部44と、リコーター駆動部45と、を有する。
【0023】
角度調節部41は、上記の照射部30のミラー31の角度(姿勢)を変化させることで、造形面18に対するレーザーLの照射角度を調節する。つまり、角度調節部41から送られた信号に基づいて、レーザーLは造形面18上を走査する。この走査経路は、造形物の形状や寸法に基づいて予め設定されている。出力調節部42は、レーザー発振部20で生成されるレーザーLの出力をコントロールする。具体的には、レーザーLの出力は、上述した照射面積に基づいて適宜決定される。
【0024】
ここで、ビーム径が(1)式のように照射角度に応じて変化することから、レーザーL出力P0が一定とすると、(2)式のようにエネルギー密度は照射角度に応じて変動してしまう。そこで、出力調節部42は、造形面18上の任意の位置(x、y)におけるレーザーL出力Pxyを、以下の(3)式に基づいて調節する。
Pxy=P0×π/4×Dxcosθx×Dycosθy/(πD0
2/4)・・・(3)
つまり、照射角度から得られた照射面積に基づいて任意の位置における出力が決定される。したがって、照射角度がゼロより大きい位置であっても、レーザーLのエネルギー密度は、照射角度ゼロの場合のエネルギー密度と同等に維持される。
【0025】
さらに、出力調整部は、レーザーLの照射角度の範囲に応じて、造形面18を複数の区画50に分割し、区画50ごとにレーザーLの出力を調節するように構成されている。具体的には
図4に示すように、照射部30からのレーザーLの照射点32を中心として同心円状となる分割線51によって造形面18が複数の区画50に分割されている。
図4の例では、区画50の数は3つである。また、同心円のそれぞれの径は、造形品の形状等に基づいて適宜決定されてよい。つまり、等間隔の同心円であってもよいし、不等間隔の同心円であってもよい。内周側の区画50から外周側の区画50に向かうに従って照射角度が大きくなっていく。これら区画50によって造形面18の全体がカバーされるようになっている。
【0026】
ステージ駆動部43は、上記のステージ13、及び空間14を進退動させるための駆動信号を生成する。造形面18での造形が1つの層で完了するごとに空間14を1ピッチ下げるように駆動信号が発信される。1ピッチとは、予め定められた造形品の一層当たりの積層高さである。ピッチを小さくするほど、造形品の表面粗さを低くすることができる。記憶部44には、これらピッチの情報等が一時的、又は永続的に格納されている。リコーター駆動部45は、造形面18での造形が1つの層で完了するごとに当該造形面18に新たな粉末材料を供給するための駆動信号をリコーター14aに送信する。
【0027】
(三次元積層造形方法、及び制御部40の制御フロー)
次に、本開示の第一実施形態に係る三次元積層造形方法について、
図5を参照して説明する。また、この方法は、上記の制御部40の制御フローとしても成立している。
【0028】
図5に示すように、この方法、及び制御フローは、レーザーLを生成するステップS1と、照射角度を変化させるステップS2と、照射面積を取得するステップS3と、レーザーL出力を調節するステップS4と、テーブルを駆動するステップS5と、を含む。
【0029】
ステップS1では、上記のレーザー発振部20がレーザーLを生成する。初期状態でのレーザーLの出力は、制御部40の出力調節部42によって予め設定されている。次いで、ステップS2では、造形品の形状に基づく経路に従って、角度調節部41がレーザーLの照射方向、つまり照射角度を変化させる。この時の照射角度に関する情報は記憶部44に格納される。次に、ステップS3では、出力調節部42が、照射角度に基づいてレーザーLの照射面積を取得する。照射面積は、上記の(1)式によって得られる。
【0030】
さらに、ステップS4では、出力調節部42が、照射面積に基づいて、(2)式からレーザーLの出力を取得し、レーザー発振部20に指令信号を送る。これにより、レーザーLの出力が照射角度に応じて調節される。なお、この時、上述したように、造形面18を複数の区画50に分割している場合には、出力調節部42は、それぞれの区画50ごとにレーザーLの出力を変化させる。つまり、1つの区画50内では、レーザーLの出力は一定である。その後、ステップS5で、1つの層の造形が完了した後に、ステージ駆動部43がテーブル、及び空間14を下降させる。この時、リコーター駆動部45によってリコーター14aが動作して新たな粉末材料を空間14に供給する。これらのステップS2からS5を、複数の層にかけて繰り返して実行することで、造形品が形成される。以上により、本実施形態に係る三次元積層造形方法、及び制御部40の制御フローに係る全ステップが完了する。
【0031】
(作用効果)
ここで、三次元積層造形を行う際には、レーザーLが走査する経路の端部のみならず、経路全体における入熱量が造形品の品質に影響する。このため、レーザーLが走査する経路の全体にわたって適正なエネルギー密度を設定することが可能な技術に対する要請が高まっていた。そこで、本実施形態では上述の各構成、及び方法を採用している。
【0032】
上記構成によれば、造形面18におけるレーザーLの照射面積に基づいて、出力調節部42がレーザーLの出力を調節する。これにより、照射角度の変化やビームの経路長(焦点距離)の変化等に起因して照射面積に変動が生じた場合であっても、当該変動に追従するようにしてエネルギー密度を常に適正な状態で維持できるように、レーザーLの出力が調節される。一例として、エネルギー密度が一定の値を取るようにレーザーLの出力が調節される。(なお、ここで言う「一定」とは、実質的な一定を指すものであって、外乱要因等によるわずかな変動は許容される。)したがって、造形品の形状を問わず、照射面積が変動した場合であっても、エネルギー密度の変動が抑制されるため、造形面18上の粉末材料に対する入熱量を一定に保つことが可能となる。その結果、造形品の品質をさらに向上させることが可能となる。反対に、入熱量が不安定な場合には、造形品の肉厚や寸法精度に影響が及び、最終製品としての歩留まりが低下してしまう可能性がある。上記構成によれば、このような可能性を大きく低減することが可能となる。
【0033】
さらに、上記構成では、出力調節部42は、照射角度がゼロの状態におけるレーザーLの出力、及び照射面積をそれぞれP0、D0とし、照射角度がθの状態におけるレーザーLの出力、及び照射面積をそれぞれPθ、Dθとしたときに、任意の位置(x、y)におけるレーザーLの出力を以下の(1)式のように決定する。
Pxy=P0×π/4×Dxcosθx×Dycosθy/(πD0
2/4)・・・(1)
【0034】
この構成によれば、照射角度がゼロの状態におけるレーザーLの出力、及び照射面積に基づいて、照射角度がθの状態におけるこれら出力、及び照射面積が調節される。これにより、照射角度の変動に起因して、造形面18上で照射面積に変動が生じた箇所であっても、照射角度がゼロの状態における粉末材料への入熱量と同等の入熱量を維持することができる。その結果、造形品の品質をさらに向上させることが可能となる。
【0035】
また、出力調節部42は、レーザーLの照射点32を中心とする同心円状をなす分割線51によって造形面18を複数の区画50に分割する。さらに、出力調節部42は、区画50ごとに異なるレーザーLの出力を設定することが可能である。ここで、レーザーLのエネルギー密度を変化させる際には、その境界でレーザーLの出力が不安定になり、所定の値に対してわずかな変動成分が生じることがある。上記構成によれば、レーザーLの照射点32を中心とする同心円状に造形面18を分割することで、上記のような出力の変化の境界の数を減らすことができる。これにより、レーザーL出力が不安定になる位置が減少するため、造形品の品質をさらに高めることが可能となる。
【0036】
以上、本開示の第一実施形態について説明した。なお、本開示の要旨を逸脱しない限りにおいて、上記の構成・方法に種々の変更を施すことが可能である。
【0037】
<第二実施形態>
次に、本開示の第二実施形態について、
図6と
図7を参照して説明する。なお、上記第一実施形態と同様の構成については同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0038】
本実施形態では、出力調節部42がレーザーLの照射面積を取得した後に、当該照射面積の値を、予め取得されたビーム径によって補正する点で、第一実施形態とは異なっている。ここで言う、「ビーム径」とは、
図6に示すように、レーザーLの照射方向(進行方向)に直交する面である計測面19上におけるレーザーLの口径を指す。
【0039】
このようなビーム径の値を得るには、造形面18の各所で、レーザーLの照射方向に向けて姿勢を自在に変化させることが可能なビームプロファイラが好適に用いられる。特に、造形面18の辺縁に近い領域では、ミラー31の角度を変化させてレーザーLの照射方向を変化させること、又はビームの経路長(焦点距離)が長くなることに起因して、造形面18上におけるレーザーLの口径がガウス分布とは異なる場合がある。ビーム径に誤差がある場合、照射面積の値にも影響が及び、最終的なレーザーL出力にズレを生じてしまうことになる。このため、計測面19上におけるビーム径を実際に計測しておくことが肝要となる。ビームプロファイラを用いたビーム径の計測は、造形作業に先立って予め行われていることが望ましい。出力調節部42は、上記のように補正された照射面積の値に基づいて、最終的なレーザーLの出力を決定する。
【0040】
上記の補正を行う場合の制御部40の制御フローは
図7に示すとおりである。まず、ステップS11で、レーザー発振部20がレーザーLを生成(発振)する。次いで、ステップS12では、造形品の形状に基づく経路に従って、角度調節部41がレーザーLの照射方向、つまり照射角度を変化させる。この時の照射角度に関する情報は記憶部44に格納される。次に、ステップS13では、出力調節部42が、照射角度に基づいてレーザーLの照射面積を取得する。照射面積は、上記の(1)式によって得られる。
【0041】
さらに、ステップS14では、出力調節部42が、上述のビーム径に基づいて、照射面積の値に補正を加える。続くステップS15では、この補正された照射面積に基づいて、(2)式からレーザーLの出力を取得し、レーザー発振部20に指令信号を送る。これにより、レーザーLの出力が照射角度に応じて調節される。なお、この時、上述したように、造形面18を複数の区画50に分割している場合には、出力調節部42は、それぞれの区画50ごとにレーザーLの出力を変化させる。つまり、1つの区画50内では、レーザーLの出力は一定である。その後、ステップS16で、1つの層の造形が完了した後に、テーブル駆動部がテーブル、及び空間14を下降させる。これらのステップS12からS16を、複数の層にかけて繰り返して実行することで、造形品が形成される。以上により、本実施形態に係る三次元積層造形方法、及び制御部40の制御フローに係る全ステップが完了する。
【0042】
(作用効果)
上記構成では、出力調節部42は、予め取得された前記造形面18の任意の位置におけるレーザーLに直交する計測面19でのビーム径に基づいて照射面積の値を補正する。その後、補正された照射面積の値に基づいて、レーザーLの出力が調節される。
【0043】
ここで、造形面18上における位置によってレーザーLの経路長(焦点距離)が変わることから、レーザーLのビーム径(レーザーLのプロファイル)に変動を生じる場合がある。特に、造形面18の辺縁に近い領域では、ビームの経路長(焦点距離)が長くなることに起因して、造形面18上におけるレーザーLの口径がガウス分布とは異なる場合がある。ビーム径に誤差がある場合、照射面積の値にも影響が及び、最終的なレーザーL出力にズレを生じてしまうことになる。上記構成によれば、このビーム径を予め各所で取得した上で、照射面積の値を補正する。これにより、実際のビーム径に基づいて、さらに適正なエネルギー密度を維持した状態でレーザーLによる造形を進めることができる。したがって、最終製品の歩留まりをさらに向上させることが可能となる。
【0044】
<その他の実施形態>
以上、本開示の各実施形態について説明した。なお、本開示の要旨を逸脱しない限りにおいて、上記の構成に種々の変更や改修を施すことが可能である。
【0045】
例えば、上記第一実施形態では、造形装置本体10の可動支持部12が1つのみ設けられている例について説明した。しかしながら、可動支持部12の数は設計や仕様に応じて適宜決定されてよく、2つ以上であってもよい。可動支持部12の数が多いほど、テーブル、及び空間14をより安定的に下方から支持することができる。このため、造形面18の水平状態をさらに正確に維持することが可能となり、造形品の寸法精度をより一層高めることができる。
【0046】
また、上記の各実施形態では、照射部30によって1つのみのレーザーLが照射される例について説明した。しかしながら、照射部30によるレーザーLの照射点32の数は1つに限定されず、2つ以上であってもよい。具体的には、第一変形例として
図8に示すように、照射点32が2つである場合には、上述した出力調節部42による区画50の分割を照射点32ごとに行うことが可能である。つまり、1つの照射点32を基準として同心円状の複数の区画50を形成しつつ、照射点32同士の間の中央部分では、直線状の分割線52によって造形面18を分割することが望ましい。これにより、各照射点32から照射されるレーザーLが互いに干渉することなく、造形作業を進めることが可能となる。
【0047】
さらに、第二変形例として
図9に示すように、照射点32が格子状に4つ配置されている場合には、各照射点32を中心とする同心円状の区画50によって造形面18の全体をカバーすることが可能である。この場合であっても、各照射点32から照射されるレーザーLが互いに干渉することなく、造形作業を進めることが可能となる。
【0048】
加えて、上記の各実施形態では、出力調節部42が、レーザーLの照射角度に基づいて照射面積を取得する例について説明した。しかしながら、レーザーLの照射面積は必ずしも出力調節部42によって取得されなくてもよい。他の例として、ハウジング11の天面15に照射面積を随時取得する装置を設けて、出力調節部42に当該照射面積を送信するように構成してもよい。
【0049】
このような装置として具体的には、CCDカメラやCMOSカメラ等の撮像装置の他、サーモグラフィ画像による画像解析を用いる装置が考えられる。この構成によれば、実際に計測又は取得された正確な照射面積の値に基づいてレーザーLの出力が決定されるため、造形品の寸法精度や形状の正確性をさらに向上させることが可能となる。したがって、最終製品の歩留まりをより一層高めることができる。
【0050】
また、上記の各実施形態で示した、出力調節部42による造形面18の分割数、即ち区画50の数は一例であって、造形品の寸法体格や形状に応じて適宜決定されてよい。つまり、区画50の数は、3つ以上や2つ以下であってもよい。区画50の数を減らすほど、レーザーLの出力が不安定となる境界を減らすことができる。他方で、区画50の数を増やせば、その分だけレーザーLの出力が精緻に変化するため、最終製品の品質を向上させることができる。さらには、このような区画50を設けずに、照射面積の変動に応じてレーザーLの出力を無段階で変化させる構成を採ることも可能である。
【0051】
なお、本開示の実施形態における制御部40の処理フローでは、適切な処理が行われる範囲において、処理の順番が入れ替わってもよい。
【0052】
本開示の実施形態における記憶部44、その他の記憶装置のそれぞれは、適切な情報の送受信が行われる範囲においてどこに備えられていてもよい。また、記憶部44、その他の記憶装置のそれぞれは、適切な情報の送受信が行われる範囲において複数存在しデータを分散して記憶していてもよい。
【0053】
上述した制御部40による処理の過程は、プログラムの形式でコンピュータ200が読み取り可能な記録媒体に記憶されており、このプログラムをコンピュータ200が読み出して実行することによって、上記処理が行われる。コンピュータ200の具体例を以下に示す。
【0054】
図10に示すように、コンピュータ200は、CPU101と、メインメモリ102と、ストレージ103と、インターフェース104と、を備える。
例えば、上述の制御部40はコンピュータ200に実装される。そして、上述した各処理部の動作は、プログラムの形式でストレージ103に記憶されている。CPU101は、プログラムをストレージ103から読み出してメインメモリ102に展開し、当該プログラムに従って上記処理を実行する。また、CPU101は、プログラムに従って、上述した記憶部44に対応する記憶領域をメインメモリ102に確保する。
【0055】
ストレージ103の例としては、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)、DVD-ROM(Digital Versatile Disc Read Only Memory)、半導体メモリ等が挙げられる。ストレージ103は、コンピュータ200のバスに直接接続された内部メディアであってもよいし、インターフェース104または通信回線を介してコンピュータ200に接続される外部メディアであってもよい。また、このプログラムが通信回線によってコンピュータ200に配信される場合、配信を受けたコンピュータ200が当該プログラムをメインメモリ102に展開し、上記処理を実行してもよい。なお、ストレージ103は、一時的でない有形の記憶媒体である。
【0056】
また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現してもよい。さらに、上記プログラムは、前述した機能をコンピュータ200にすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるファイル、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【0057】
なお、上記構成に加えて、または上記構成に代えてPLD(Programmable Logic Device)などのカスタムLSI(Large Scale Integrated Circuit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、GPU(Graphics Processing Unit)、及びこれらに類する処理装置を備えてもよい。PLDの例としては、PAL(Programmable Array Logic)、GAL(Generic Array Logic)、CPLD(Complex Programmable Logic Device)、FPGA(Field Programmable Gate Array)が挙げられる。この場合、プロセッサによって実現される機能の一部または全部が当該集積回路によって実現されてよい。
【0058】
<付記>
各実施形態に記載の三次元積層造形装置1、及び三次元積層造形方法は、例えば以下のように把握される。
【0059】
(1)第1の態様に係る三次元積層造形装置1は、造形物の造形面18に粉末材料を供給し、供給された前記粉末材料にレーザーLを照射することで前記粉末材料を溶融硬化させて、前記造形物を積層造形する三次元積層造形装置1であって、前記造形物を支持するステージ13を有する造形装置本体10と、前記レーザーLを生成するレーザー発振部20と、前記造形面18に向かって前記レーザーLを照射するとともに、前記レーザーLの前記造形面18に対する照射角度を変化させることが可能な照射部30と、前記造形面18における前記レーザーLの照射面積に基づいて前記レーザーLの出力を調節することが可能な出力調節部42と、を備える。
【0060】
上記構成によれば、造形面18におけるレーザーLの照射面積に基づいて、出力調節部42がレーザーLの出力を調節する。これにより、照射角度の変化や造形面18上の凹凸等に起因して照射面積に変動が生じた場合であっても、当該変動に追従するようにしてエネルギー密度を常に適正な状態で維持しながら、レーザーLによる造形を行うことが可能となる。
【0061】
(2)第2の態様に係る三次元積層造形装置1は、(1)の三次元積層造形装置1であって、前記出力調節部42は、前記照射角度がゼロの状態における前記レーザーLの出力、及び前記照射面積をそれぞれP0、D0としたときに、任意の位置(x、y)における前記レーザーLの出力Pxyを(1)式のように決定する。
Pxy=P0×π/4×Dxcosθx×Dycosθy/(πD0
2/4)・・・(1)
【0062】
上記構成によれば、照射角度がゼロの状態におけるレーザーLの出力、及び照射面積に基づいて、照射角度がθの状態におけるこれら出力、及び照射面積が調節される。これにより、造形面18上で照射面積に変動が生じた箇所であっても、照射角度がゼロの状態における粉末材料への入熱量を維持することができる。
【0063】
(3)第3の態様に係る三次元積層造形装置1は、(1)又は(2)の三次元積層造形装置1であって、前記出力調節部42は、予め取得された前記造形面18の任意の位置における前記レーザーLに直交する計測面19でのビーム径に基づいて、前記レーザーLの出力を調節する。
【0064】
ここで、造形面18上における位置によってレーザーLの経路長が変わることから、レーザーLのビーム径(レーザーLのプロファイル)に変動を生じる場合がある。上記構成によれば、このビーム径を予め各所で取得した上で、照射面積の値を補正する。これにより、さらに適正なエネルギー密度を維持した状態でレーザーLによる造形を進めることができる。
【0065】
(4)第4の態様に係る三次元積層造形装置1は、(1)から(3)のいずれか一態様に係る三次元積層造形装置1であって、前記出力調節部42は、前記レーザーLの照射点32を中心とする同心円状をなす分割線51によって前記造形面18を複数の区画50に分割し、該区画50ごとに異なる前記レーザーLの出力を設定することが可能である。
【0066】
ここで、レーザーLのエネルギー密度を変化させる際には、その境界でレーザーL出力が不安定になることがある。上記構成によれば、レーザーLの照射点32を中心とする同心円状に造形面18を分割することで、上記のような境界の数を減らすことができる。これにより、レーザーL出力が不安定になる位置が減少するため、造形品の品質をさらに高めることが可能となる。
【0067】
(5)第5の態様に係る三次元積層造形装置1は、(4)の三次元積層造形装置1であって、複数の前記照射部30を備え、前記出力調節部42は、前記照射部30ごとに前記複数の区画50を設定する。
【0068】
上記構成によれば、照射部30が複数ある場合であっても、当該照射部30ごとに同心円状の複数の区画50を形成することができる。これにより、エネルギー密度変化の境界における出力の不安定化が抑制され、さらに良好な造形品を得ることができる。
【0069】
(6)第6の態様に係る三次元積層造形方法は、粉末材料にレーザーLを照射して当該粉末材料を溶融硬化させて造形物を生成する三次元積層造形方法であって、前記レーザーLを生成するステップと、前記粉末材料が敷設された造形面18に向かって前記レーザーLを照射するとともに、前記レーザーLの前記造形面18に対する照射角度を変化させるステップと、前記造形面18における前記レーザーLの照射面積を取得するステップと、前記照射面積に基づいて前記レーザーLの出力を調節するステップと、を含む。
【0070】
上記方法によれば、造形面18におけるレーザーLの照射面積に基づいて、レーザーLの出力を調節するステップでレーザーLの出力を調節する。これにより、照射角度の変化や造形面18上の凹凸等に起因して照射面積に変動が生じた場合であっても、当該変動に追従するようにしてエネルギー密度を常に適正な状態で維持しながら、レーザーLによる造形を行うことが可能となる。
【0071】
(7)第7の態様に係る三次元積層造形方法は、(6)の三次元積層造形方法であって、前記エネルギー密度を調節するステップでは、前記照射角度がゼロの状態における前記レーザーLの出力、及び前記照射面積をそれぞれP0、D0としたときに、任意の位置(x、y)における前記レーザーLの前記出力Pxyを(1)式のように決定する。
Pxy=P0×π/4×Dxcosθx×Dycosθy/(πD0
2/4)・・・(1)
【0072】
上記方法によれば、照射角度がゼロの状態におけるレーザーLの出力、及び照射面積に基づいて、照射角度がθの状態における出力が調節される。これにより、造形面18上で照射面積に変動が生じた箇所であっても、照射角度がゼロの状態における粉末材料への入熱量を維持することができる。
【0073】
(8)第8の態様に係る三次元積層造形方法は、(6)又は(7)の三次元積層造形方法であって、前記レーザーLの前記出力を調節するステップでは、予め取得された前記造形面18の任意の位置における前記レーザーLに直交する計測面19でのビーム径に基づいて、前記レーザーLの前記出力を調節する。
【0074】
ここで、造形面18上における位置によってレーザーLの経路長が変わることから、レーザーLのビーム径(レーザーLのプロファイル)に変動を生じる場合がある。上記方法によれば、このビーム径を予め各所で取得した上で、照射面積の値を補正する。これにより、さらに適正なエネルギー密度を維持した状態でレーザーLによる造形を進めることができる。
【0075】
(9)第9の態様に係る三次元積層造形方法は、(6)から(8)のいずれか一態様に係る三次元積層造形方法であって、前記レーザーLの前記出力を調節するステップでは、前記レーザーLの照射点32を中心とする同心円状をなす分割線51によって前記造形面18を複数の区画50に分割し、該区画50ごとに異なる前記レーザーLの前記出力を設定する。
【0076】
ここで、レーザーLのエネルギー密度を変化させる際には、その境界でレーザーL出力が不安定になることがある。上記方法によれば、レーザーLの照射点32を中心とする同心円状に造形面18を分割することで、上記のような境界の数を減らすことができる。これにより、レーザー出力が不安定になる位置が減少するため、造形品の品質をさらに高めることが可能となる。
【0077】
(10)第10の態様に係る三次元積層造形方法は、(9)の三次元積層造形方法であって、複数の前記照射点32から前記レーザーLをそれぞれ照射し、前記レーザーLの前記出力を調節するステップでは、前記レーザーLごとに前記複数の区画50を設定する。
【0078】
上記構成によれば、照射部30が複数ある場合であっても、当該照射部30ごとに同心円状の複数の区画50を形成することができる。これにより、エネルギー密度変化の境界における出力の不安定化が抑制され、さらに良好な造形品を得ることができる。
【符号の説明】
【0079】
1…三次元積層造形装置
10…造形装置本体
11…ハウジング
11a…造形チャンバー
12…可動支持部
13…ステージ
13a…ベースプレート
14…空間
14a…リコーター
15…天面
16…透過窓
17…底面
18…造形面
19…計測面
20…レーザー発振部
30…照射部
31…ミラー
32…照射点
40…制御部
41…角度調節部
42…出力調節部
43…ステージ駆動部
44…記憶部
45…リコーター駆動部
50…区画
51,52…分割線
101…CPU
102…メインメモリ
103…ストレージ
104…インターフェース
200…コンピュータ
L…レーザー