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特開2024-104970フィルターパネルおよびフィルター装置
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  • 特開-フィルターパネルおよびフィルター装置 図1
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  • 特開-フィルターパネルおよびフィルター装置 図6
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024104970
(43)【公開日】2024-08-06
(54)【発明の名称】フィルターパネルおよびフィルター装置
(51)【国際特許分類】
   B01D 45/10 20060101AFI20240730BHJP
【FI】
B01D45/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023009441
(22)【出願日】2023-01-25
(71)【出願人】
【識別番号】000193047
【氏名又は名称】進和テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】原村 啓史
(72)【発明者】
【氏名】杉山 俊樹
【テーマコード(参考)】
4D031
【Fターム(参考)】
4D031AB02
4D031AB16
4D031AB21
4D031AB25
4D031BA04
4D031BB08
4D031DA02
(57)【要約】
【課題】火山灰を効率良く確実に捕捉できるフィルターパネルを提供する。
【解決手段】循環運動する無限軌道に取り付けられるフィルターパネル4A,4Bが、無限軌道の循環方向に平行な方向の短辺と、それに直交する方向の長辺とを有する長方形状であり、短辺方向に延びる複数の傾斜片部10a,10bが長辺方向に並んで設けられ、隣り合う傾斜片部10a,10b同士の間に、短辺方向に延びるスリット状の切り欠き部9が設けられている。傾斜片部10a,10bは、フィルターパネル4A,4Bの板厚方向Tに対して傾斜しており、傾斜片部10a,10bには複数の凸部11および凹部12が形成されている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
循環運動する無限軌道に取り付けられるフィルターパネルであって、
前記無限軌道の循環方向に平行な方向の短辺と、それに直交する方向の長辺とを有する長方形状であり、
短辺方向に延びる複数の傾斜片部が長辺方向に並んで設けられ、隣り合う前記傾斜片部同士の間に、前記短辺方向に延びるスリット状の切り欠き部が設けられており、
前記傾斜片部は、前記フィルターパネルの板厚方向に対して傾斜しており、前記傾斜片部には複数の凸部および凹部が形成されていることを特徴とする、フィルターパネル。
【請求項2】
少なくとも前記傾斜片部の表面に油膜が形成されている、請求項1に記載のフィルターパネル。
【請求項3】
前記油膜は、20℃における粘度が40mPa・s以上100mPa・s以下のオイルからなる、請求項2に記載のフィルターパネル。
【請求項4】
前記油膜は、酸化防止剤とミスト防止剤を含有するオイルからなる、請求項2または3に記載のフィルターパネル。
【請求項5】
前記切り欠き部の、前記フィルターパネルの前記長辺方向の長さは600mm以上1600mm以下である、請求項1から3のいずれか1項に記載のフィルターパネル。
【請求項6】
前記傾斜片部の、前記フィルターパネルの前記板厚方向に対して一方の向きまたは他方の向きに傾斜する傾斜角度は40度以上70度以下である、請求項1から3のいずれか1項に記載のフィルターパネル。
【請求項7】
前記傾斜片部の、傾斜方向に沿う長さは7mm以上12mm以下である、請求項1から3のいずれか1項に記載のフィルターパネル。
【請求項8】
前記傾斜片部の前記凸部の高さおよび前記凹部の深さは0.3mm以上1.0mm以下である、請求項1から3のいずれか1項に記載のフィルターパネル。
【請求項9】
請求項1に記載の複数のフィルターパネルと、前記無限軌道と、を含むフィルター装置であって、
前記傾斜片部の前記フィルターパネルの板厚方向に対する傾斜角度が互いに反対向きである2種類の前記フィルターパネルを有しており、
前記無限軌道の外周に、2種類のフィルターパネルが交互にずれ重なるように並べて配置されている、フィルター装置。
【請求項10】
前記無限軌道の鉛直方向下方には、洗浄用のオイルを収容した洗浄槽が設けられており、前記無限軌道の下部が前記洗浄槽内に進入している、請求項9に記載のフィルター装置。
【請求項11】
前記オイルの20℃における粘度が40mPa・s以上100mPa・s以下である、請求項10に記載のフィルター装置。
【請求項12】
前記オイルは、酸化防止剤とミスト防止剤を含有している、請求項10または11に記載のフィルター装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルターパネルおよびフィルター装置に関する。
【背景技術】
【0002】
空気中の粉塵等を除去するためのフィルター装置の一例が、特許文献1~4に開示されている。特許文献1~4に記載されているフィルター装置は、複数のフィルターパネルが並べて配置された構成である。この構成では、空気中の粉塵等を捕捉したフィルターパネルは洗浄槽に移動されてオイルで洗浄される。その代わりに、未使用または洗浄後の別のフィルターパネルが、空気に触れる位置に移動されて、それ以降の粉塵等の捕捉を行う。複数のフィルターパネルからなるループ状のカーテンパネルが循環運動して、各フィルターパネルが粉塵等の捕捉とオイルによる洗浄とを繰り返し行うフィルター装置は、湿式慣性衝突型フィルター装置と呼ばれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許2167283号明細書
【特許文献2】米国特許2586616号明細書
【特許文献3】特許3410795号公報
【特許文献4】実公平5-22248号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1~4に開示されているような湿式慣性衝突型フィルター装置では、空気中の様々な粉塵等を良好に除去することができる。特許文献1~4の湿式慣性衝突型フィルター装置は、特に製鉄所や下水処理場への給気の中の粉塵等を除去できるように、フィルターパネルの寸法および形状が設定されるとともにオイルが選択されている。このフィルターパネルの寸法および形状とオイルは、製鉄所や下水処理場への給気の中の粉塵等の捕捉に適したものであるが、他の物質(例えば火山灰)を良好に捕捉できるとは限らない。そのため、火山灰をより効率良く確実に捕捉できるフィルター装置の開発が望まれている。また、一定の風量の外気を導入することが必要な施設や設備において、火山灰の流入時に急激に圧力損失が上昇すると、短時間でフィルターとしての機能を失って風量を確保できなくなる。
【0005】
本発明の目的は、火山灰を効率良くより確実に捕捉できるフィルターパネルおよびフィルター装置を提供することと、流入する負荷が変動しても圧力損失が一定であるフィルター装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のフィルターパネルは、循環運動する無限軌道に取り付けられるフィルターパネルであって、前記無限軌道の循環方向に平行な方向の短辺と、それに直交する方向の長辺とを有する長方形状であり、短辺方向に延びる複数の傾斜片部が長辺方向に並んで設けられ、隣り合う前記傾斜片部同士の間に、前記短辺方向に延びるスリット状の切り欠き部が設けられており、前記傾斜片部は、前記フィルターパネルの板厚方向に対して傾斜しており、前記傾斜片部には複数の凸部および凹部が形成されていることを特徴とする。
少なくとも前記傾斜片部の表面に油膜が形成されていてよい。前記油膜は、20℃における粘度が40mPa・s以上100mPa・s以下のオイルからなるものであってよい。また、前記油膜は、酸化防止剤とミスト防止剤を含有するオイルからなるものであってよい。
前記切り欠き部の、前記フィルターパネルの前記長辺方向の長さは600mm以上1600mm以下であってよい。
前記傾斜片部の、前記フィルターパネルの板厚方向に対して一方の向きまたは他方の向きに傾斜する傾斜角度は40度以上70度以下であってよい。
前記傾斜片部の、傾斜方向に沿う長さは7mm以上12mm以下であってよい。
前記傾斜片部の前記凸部の高さおよび前記凹部の深さは0.3mm以上1.0mm以下であってよい。
本発明のフィルター装置は、前述した複数のフィルターパネルと、前記無限軌道と、を含むフィルター装置であって、前記傾斜片部の前記フィルターパネルの板厚方向に対する傾斜角度が互いに反対向きである2種類の前記フィルターパネルを有しており、前記無限軌道の外周に、2種類のフィルターパネルが交互にずれ重なるように並べて配置されている。
前記無限軌道の鉛直方向下方には、洗浄用のオイルを収容した洗浄槽が設けられていてよく、前記無限軌道の下部が前記洗浄槽内に進入していてよい。前記オイルは、20℃における粘度が40mPa・s以上100mPa・s以下であってよい。また、前記オイルは、酸化防止剤とミスト防止剤を含有していてよい。
【発明の効果】
【0007】
本発明のフィルターパネルおよびフィルター装置によると、火山灰を効率良くより確実に捕捉できる。また、本発明のフィルター装置は、流入する負荷が変動しても圧力損失が一定である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態のフィルター装置の正面側から見た斜視図である。
図2図1に示すフィルター装置の内部の構造を模式的に示す側面図である。
図3】(A1)は図1に示すフィルター装置の2種類のフィルターパネルのうちの一方の種類のフィルターパネルを示す正面図、(A2)はその横断面図であり、(B1)は他方の種類のフィルターパネルを示す正面図、(B2)はその横断面図である。
図4図1に示すフィルター装置の要部の、フィルターパネルを空気流が通過する状態を模式的に示す拡大平面図である。
図5図4に示す状態において空気流中の粉塵等を捕捉する過程をより拡大して模式的に示す拡大平面図である。
図6図1に示すフィルター装置の要部の、フィルターパネルを空気流が通過する状態を模式的に示す拡大側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
[湿式慣性衝突型フィルター装置]
図1,2に本発明の一実施形態のフィルター装置である湿式慣性衝突型フィルター装置1が模式的に示されている。湿式慣性衝突型フィルター装置1は、間隔を置いて配置されている1対のスプロケット2を有し、両スプロケット2のそれぞれの中心軸2aは互いに平行である。両スプロケット2に、無限軌道3が架け渡されている。本実施形態の無限軌道3はエンドレスチェーンである。ただし、図示しないが複数の履板が連なってループ状になっている無限軌道であってもよい。エンドレスチェーンを構成する各環状体3a(または各履板)は、スプロケット2の外周の凸部2bが係合可能な部分をそれぞれ有している。一部の環状体3aにスプロケット2の凸部2bが嵌合している状態で、図示しない駆動手段に駆動されて少なくとも一方のスプロケット2が回転すると、凸部2bが嵌合していた環状体3aから凸部2bが脱出して、無限軌道3の循環方向Cの上流側に隣接する環状体3aに嵌合する。このようにして無限軌道3は循環運動を行う。
【0010】
無限軌道3の外周側において、各環状体3aにはフィルターパネル4の一端部(無限軌道3の循環方向Cの一方の端部)がそれぞれ取り付けられている。フィルターパネル4の他端部(無限軌道3の循環方向Cの他方の端部)は、環状体3aに固定されていない自由端であって、隣接するフィルターパネル4に部分的に重なっている。すなわち、無限軌道3の外周側において、多数のフィルターパネル4が、部分的に重なり合いながら並んで配置されてループ状の濾過体であるカーテンパネルを構成している。無限軌道3の循環運動に合わせて、複数のフィルターパネル4からなるカーテンパネルも循環運動を行う。フィルターパネル4の詳細な構造については後述する。
【0011】
無限軌道3の鉛直方向下方には、洗浄用のオイル5を収容した洗浄槽6が設けられている。オイル5は、20℃における粘度が40mPa・s以上100mPa・s以下であることが好ましい。そして、オイル5は酸化防止剤とミスト防止剤を含んでいる。洗浄槽6の上方は開放されており、無限軌道3の下部が洗浄槽6内に進入し、一部のフィルターパネル4が洗浄槽6内でオイル5に接している。オイル5に接したフィルターパネル4の表面には油膜5aが形成される。便宜上、油膜5aは図1~3,6では明示されておらず、図4,5において太い実線にて模式的に図示されている。
【0012】
無限軌道3および洗浄槽6は筐体7内に配置されており、無限軌道3およびフィルターパネル4の、洗浄槽6内に進入していない部分のうちの一部は、筐体7の両面に設けられた開口部7a,7bにそれぞれ対向して露出しており、空気流8がフィルターパネル4および無限軌道3を通過可能である。
【0013】
本実施形態の湿式慣性衝突型フィルター装置1によると、筐体7の一方の面の開口部7aから流入した空気流8が、開口部7aから開口部7bに向かう流れ方向Fに沿って流れる。この空気流8は、無限軌道3に取り付けられた多数のフィルターパネル4のうちの、開口部7aに対向する位置のいくつかのフィルターパネル4に衝突する。これらのフィルターパネル4によって火山灰14(図5参照)が捕捉され、火山灰14が捕捉された後の空気流8は、筐体7の他方の面の開口部7bから外部へ流出する。こうして、本実施形態の湿式慣性衝突型フィルター装置1を空気流8が通過することによって、空気中の火山灰14が除去される。
【0014】
無限軌道3は適宜のタイミングで少しずつ循環運動を行う。例えば、無限軌道3は24時間で1周する。従って、筐体7の開口部7aに対向する位置にあって火山灰14を捕捉したフィルターパネル4は徐々に移動して、洗浄槽6に到達する。洗浄槽6内で、フィルターパネル4はオイル5中に浸漬されて、火山灰14が洗い流される。火山灰14が洗い流された後のフィルターパネル4は、無限軌道3の循環運動によって洗浄槽6から鉛直方向上方に移動し、筐体7の開口部7a,7bに対向する位置に再度到達する。筐体7の開口部7a,7bに対向する位置に到達したフィルターパネル4は、再び火山灰14を捕捉する機能を発揮する。このフィルターパネル4が以前に捕捉した火山灰14はオイル5で洗い流され、フィルターパネル4には改めて油膜5aが形成されているので、このフィルターパネル4は良好に火山灰14を捕捉することができる。この動作を繰り返すことによって、自動的にフィルターパネル4の洗浄を行いながら、空気中の火山灰14の除去を良好に行い続けることができる。
【0015】
[フィルターパネル]
以上説明した湿式慣性衝突型フィルター装置1において、火山灰14の除去性能を高めるためには、フィルターパネル4の構造が重要である。すなわち、フィルターパネル4は、空気中から除去すべき粉塵等(本発明では火山灰14)の大きさや形状に応じて、捕捉しやすい構造になっていることが望ましい。そこで、本実施形態では、特に火山灰14を捕捉しやすいフィルターパネル4の構造を提案する。
【0016】
本実施形態のフィルターパネル4は2種類あり、図3(A1),3(A2)は本実施形態のフィルターパネル4のうちの一方の種類のフィルターパネル4Aを示し、図3(B1),3(B2)は他方の種類のフィルターパネル4Bを示している。図4は、フィルターパネル4A,4Bからなるカーテンパネルの、空気流8が通過する状態を湿式慣性衝突型フィルター装置1の鉛直方向上方から見て模式的に示す拡大平面図であり、図5は、その状態において空気流8中の粉塵等(火山灰14)を捕捉する過程をより拡大して模式的に示す拡大平面図である。図6は、その状態を湿式慣性衝突型フィルター装置1の側方から見て模式的に示す拡大側面図である。フィルターパネル4A,4Bはいずれも、鋼板等の金属からなり、無限軌道3の循環方向Cに平行な方向の短辺と、それに直交する方向の長辺とを有する長方形状である。フィルターパネル4A,4Bには、短辺方向(循環方向C)に沿って延びる複数の傾斜片部10a,10bが長辺方向に並んで設けられている。
【0017】
隣り合う傾斜片部10a,10b同士の間に、短辺方向(循環方向C)に延びるスリット状の切り欠き部9が設けられている。従って、長辺方向に沿って、スリット状の切り欠き部9と傾斜片部10a,10bとが交互に位置している。傾斜片部10a,10bはフィルターパネル4の板厚方向Tに対して傾斜しており、一方の種類のフィルターパネル4Aの傾斜片部10aと、他方の種類のフィルターパネル4Bの傾斜片部10bとは、フィルターパネル4の板厚方向Tに対して互いに反対向きに傾斜している。各傾斜片部10a,10bには多数の小さな凸部11および凹部12が形成されている。この2種類のフィルターパネル4A,4Bが、無限軌道3の循環方向Cに沿って交互に配置されている。
【0018】
前述したように、フィルターパネル4にはオイル5からなる油膜5aが形成されている。油膜5aは、図2に示す洗浄槽6にフィルターパネル4が進入することにより形成される。ただし、洗浄槽6内に進入する前のフィルターパネル4に予め油膜5aが形成されていてもよい。その場合には、少なくとも傾斜片部10a,10bの表面に油膜5aが形成される。
【0019】
フィルターパネル4A,4Bの製造方法としては、例えば、フィルターパネル4A,4Bの材料である鋼板等の金属板に、短辺方向に沿って複数の切れ目を形成し、隣り合う切れ目に挟まれる位置において金属板をねじるように変形させることにより、傾斜片部10a,10bを形成することができる。各切れ目は、金属板の短辺方向の両端部には到達せずその内側で終端するように形成され、金属板の短辺方向の両端部には直線状の部分が残っている。この両端部の直線状の部分から、ねじれ部分13を介して、短辺方向の中央部に位置し一定の傾斜方向Rに向いている傾斜片部10a,10bにつながっている。そして、隣り合う傾斜片部10a,10b同士の間のスペースは、開口部7aから開口部7bに向かう流れ方向Fの空気流8の通過を可能にするスリット状の切り欠き部9になっている。傾斜片部10a,10bには、プレス加工等によって両面に凸部11および凹部12が形成されている。すなわち、傾斜片部10a,10bの一方の面に凸部11および凹部12が形成され、他方の面には、一方の面の凸部11と重なり合う位置に凹部12が形成され、一方の面の凹部12と重なり合う位置に凸部11が形成されている。なお、図4,5では、図面を見やすくするためにねじれ部分13を省略している。ただし、傾斜片部10a,10bの形成方法は、前述した方法に限定されない。
【0020】
一例としては、フィルターパネル4A,4Bの長辺は約620mm、短辺は約140mmであり、切り欠き部9および傾斜片部10a,10bの、フィルターパネル4A,4Bの短辺方向の長さは約110mmである。切り欠き部9の、フィルターパネル4A,4Bの長辺方向の長さは7mm以上12mm以下であり、一例としては9.5mmである。傾斜片部10a,10bが、板厚方向Tに対して右向きまたは左向きにそれぞれ同じ角度θだけ傾斜している。この傾斜角度θは40度以上70度以下であり、一例としては約60度である。この傾斜方向Rに沿う傾斜片部10a,10bの長さは7mm以上12mm以下であり、一例としては約10mmである。各傾斜片部10a,10bの凸部11の高さおよび凹部12の深さは0.3mm以上1.0mm以下であり、一例としては約0.5mmである。
【0021】
[作用効果]
2種類のフィルターパネル4A,4Bが、図2に示すように鱗状にずれ重なりながら無限軌道3の循環方向Cに沿って交互に配置されている。一例としては、図4,6に拡大して示すように、4枚のフィルターパネル4A,4Bが部分的に重なり合っている。筐体7の開口部7aに対向する位置において、フィルターパネル4A,4Bが交互に位置している。空気流8は、フィルターパネル4の板厚方向Tに対して一方の向き(例えば左向き)に傾斜しており表面に凸部11および凹部12を有する傾斜片部10aと、フィルターパネル4の板厚方向Tに対して他方の向き(例えば右向き)に傾斜しており表面に凸部11および凹部12を有する傾斜片部10bとを交互に通過する。従って、図4,5に示すように、空気流8は、傾斜片部10aと傾斜片部10bに交互に衝突して進行方向を変えられながら、部分的に重なり合う複数のフィルターパネル4A,4Bを通過する。フィルターパネル4A,4Bの表面の油膜5aに粉塵等(火山灰14)が衝突する際の慣性質量を利用して、衝突した火山灰14を、20℃における粘度が40mPa・s以上100mPa・s以下のオイル5に粘着させて効率良く捕捉することができる。
【0022】
このフィルターパネル4A,4Bは空気流8の傾斜片部10a,10bに対する接触面積が大きいため、空気流8中の火山灰14が効率良く除去される。特に、各フィルターパネル4A,4Bは前述した寸法および形状(切り欠き部9の寸法、傾斜片部10a,10bの寸法および傾斜角度、凸部11および凹部12の寸法)を有しており、これは特に直径1μm以上の火山灰14の捕捉に特化した設計である。このような寸法および形状を採用することによって、本実施形態のフィルターパネル4A,4Bを有する湿式慣性衝突型フィルター装置1は特に良好に火山灰14を除去できる。なお、図5に示すように、傾斜片部10a,10bに凸部11および凹部12が形成されていると、空気流8との接触面積が大きくなり、火山灰14の捕捉効率が良い。ただし、凸部11および凹部12以外の部分でも火山灰14の捕捉が行われる。また、便宜上、図5では空気流8が細い矢印で示されているため、傾斜片部10a,10bの一部の油膜5aのみに火山灰14が捕捉されているように図示されているが、実際には、筐体7の開口部7a全体から空気流8が流入するため、傾斜片部10a,10b全体の油膜5aが火山灰14を捕捉する。
【0023】
本発明のフィルターパネル4は、少なくとも傾斜片部10a,10bの表面に油膜5aが形成されており、この油膜5aを構成するオイル5は、20℃における粘度が40mPa・s以上100mPa・s以下であり、火山灰14を良好に捕捉することができる。その点について説明すると、火山の噴火により生じる降下火山灰は、高温のマグマが噴火により大気中に放出されて急速に冷却されることで、ほとんど水分を含まず、二酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化鉄、硫黄化合物を主成分とするものである。従って、この火山灰14に少量の水分を付与することにより固結させることができ、捕捉しやすくなる。本実施形態では、フィルターパネル4の表面の油膜5aを構成しているオイル5が、火山灰14を固結させる水分として働くので、火山灰14を効率良く捕捉できる。しかも、オイル5は揮発性が小さいので、長時間にわたって火山灰14を良好に捕捉する油膜5aを維持できる。特に、オイル5は、20℃における粘度が40mPa・s以上100mPa・s以下であり、二酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化鉄、硫黄化合物を主成分とする火山灰14を捕捉しやすい。
【0024】
さらに、オイル5に酸化防止剤が含有されていると、フィルターパネル4の酸化(さび)や変性を生じにくく、また、オイル5にミスト防止剤が含有されていると、オイル5がミストになって空気流8とともに流れることが抑えられて油膜5aが維持される。従って、オイル5に酸化防止剤とミスト防止剤が含有されていると、長時間にわたって、油膜5aを有するフィルターパネル4が維持されて火山灰14の良好な捕捉を継続できる。そして、水に比べてオイル5は洗浄槽6内で火山灰14と分離し易いので、フィルターパネル4が洗浄槽6内に進入する度に十分に洗浄されて火山灰14が除去された油膜5a付きのフィルターパネル4が洗浄槽6から取り出され、火山灰14を良好に捕捉できる状態になる。
【0025】
本発明のフィルター装置では、各フィルターパネル4が、火山灰14を捕捉した後に洗浄槽6のオイル5によって洗浄されてから再び火山灰14の捕捉に用いられる。それにより、流入する負荷が変動しても圧力損失がほぼ一定に保たれるため、火山灰14の流入時に急激に圧力損失が上昇して短時間でフィルターとしての機能を失うことが抑制される。
【符号の説明】
【0026】
1 湿式慣性衝突型フィルター装置
2 スプロケット
2a 中心軸
2b 凸部
3 無限軌道
3a 環状体
4,4A,4B フィルターパネル
5 オイル
5a 油膜
6 洗浄槽
7 筐体
7a,7b 開口部
8 空気流
9 切り欠き部
10a,10b 傾斜片部
11 凸部
12 凹部
13 ねじれ部分
14 火山灰
C 循環方向
F 流れ方向
R 傾斜方向
T 板厚方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6