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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024104971
(43)【公開日】2024-08-06
(54)【発明の名称】車両用空調装置
(51)【国際特許分類】
   B60H 1/22 20060101AFI20240730BHJP
   B60H 1/08 20060101ALI20240730BHJP
【FI】
B60H1/22 651C
B60H1/08 611A
B60H1/08 621C
B60H1/22 651A
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023009443
(22)【出願日】2023-01-25
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110001472
【氏名又は名称】弁理士法人かいせい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】横尾 康弘
(72)【発明者】
【氏名】房州 俊樹
(72)【発明者】
【氏名】伊集院 幸久
(72)【発明者】
【氏名】河野 紘明
(72)【発明者】
【氏名】林 芳生
(72)【発明者】
【氏名】平山 順基
(72)【発明者】
【氏名】野口 航平
(72)【発明者】
【氏名】松永 久嗣
(72)【発明者】
【氏名】岡部 聡太
(72)【発明者】
【氏名】加藤 吉毅
【テーマコード(参考)】
3L211
【Fターム(参考)】
3L211AA10
3L211BA02
3L211CA16
3L211CA19
3L211DA28
3L211DA42
3L211DA47
3L211EA50
3L211GA27
3L211GA42
3L211GA43
(57)【要約】
【課題】走行に伴って生じる排熱に係る第1熱媒体回路と、第2熱媒体回路とを有効活用して、安定した空調性能を実現可能な車両用空調装置を提供する。
【解決手段】車両用空調装置1は、第1熱媒体回路10と、第2熱媒体回路20と、熱媒体熱媒体熱交換器13と、制御装置60とを有する。第1熱媒体回路10は、車両の走行に伴って熱を生じる第1熱源11であるエンジン11aを介して、第1熱媒体を循環させる。第2熱媒体回路20は、発生させる熱量を調整可能な第2熱源21としての冷凍サイクル30と、空調対象空間へ供給される送風空気を熱交換により加熱するヒータコア23とを介して、第2熱媒体を循環させる。熱媒体熱媒体熱交換器13は、第1熱媒体回路10を循環する第1熱媒体と、第2熱媒体回路20を循環する第2熱媒体とを熱交換させる。制御装置60は、第1熱媒体回路10及び第2熱媒体回路20の動作を制御する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の走行に伴って熱を生じる第1熱源(11、11a)を介して、第1熱媒体を循環させる第1熱媒体回路(10)と、
発生させる熱量を調整可能な第2熱源(21、30、42)と、空調対象空間へ供給される送風空気を熱交換により加熱するヒータコア(23)とを介して、第2熱媒体を循環させる第2熱媒体回路(20)と、
前記第1熱媒体回路を循環する前記第1熱媒体と、前記第2熱媒体回路を循環する前記第2熱媒体とを熱交換させる熱媒体熱媒体熱交換器(13)と、
前記第1熱媒体回路及び前記第2熱媒体回路の動作を制御する制御部(60)と、を有する車両用空調装置。
【請求項2】
前記第2熱源は、
冷媒を圧縮して吐出する圧縮機(31)と、前記圧縮機で圧縮された高圧冷媒の熱を前記第2熱媒体へ放熱させる熱媒体冷媒熱交換器(32)と、前記熱媒体冷媒熱交換器から流出した冷媒を減圧させる減圧部(34、36)と、前記減圧部から流出した冷媒を蒸発させる蒸発器(35、37)と、を有する冷凍サイクル(30)によって構成されている請求項1に記載の車両用空調装置。
【請求項3】
前記熱媒体熱媒体熱交換器に対して投入される熱量を調整する熱量調整部(45)と、
前記熱量調整部によって、前記熱媒体熱媒体熱交換器に投入されなかった熱量を放熱させる放熱部(46)と、を有する請求項1又は2に記載の車両用空調装置。
【請求項4】
前記熱量調整部(45)は、前記第1熱媒体回路において前記熱媒体熱媒体熱交換器を迂回するように前記第1熱媒体を流すバイパス流路(15)と、前記バイパス流路の側へ流れる前記第1熱媒体の流量と、前記熱媒体熱媒体熱交換器の側へ流れる前記第1熱媒体の流量を調整する流量調整部(16)と、を有し、
前記放熱部(46)は、前記第1熱媒体回路の流路に配置され、前記第1熱媒体の熱を外部に放熱させる外部放熱器(14)である請求項3に記載の車両用空調装置。
【請求項5】
前記熱量調整部(45)は、前記第2熱媒体回路において前記熱媒体熱媒体熱交換器を迂回するように前記第2熱媒体を流す熱媒体バイパス流路(24)と、前記熱媒体バイパス流路の側へ流れる前記第2熱媒体の流量と、前記熱媒体熱媒体熱交換器の側へ流れる前記第2熱媒体の流量を調整する熱媒体流量調整部(25)と、を有し、
前記放熱部(46)は、前記第2熱媒体回路の前記熱媒体バイパス流路に配置され、前記熱媒体バイパス流路を流れる前記第2熱媒体の熱を外部に放熱させる熱媒体放熱器(27)である請求項3に記載の車両用空調装置。
【請求項6】
前記熱媒体熱媒体熱交換器に対して投入される熱量を調整する熱量調整部(45)と、
前記熱量調整部によって、前記熱媒体熱媒体熱交換器に投入されなかった熱量を放熱させる放熱部(46)と、を有し、
前記熱量調整部は、前記冷凍サイクルにおいて、前記圧縮機から吐出された冷媒を、前記熱媒体冷媒熱交換器を迂回して前記減圧部に流入するように流す冷媒バイパス流路(38)と、前記冷媒バイパス流路の側へ流れる冷媒の流量と、前記熱媒体冷媒熱交換器の側へ流れる冷媒の流量を調整する冷媒流量調整部(40)と、を有し、
前記放熱部は、前記冷凍サイクルにおける前記冷媒バイパス流路に配置され、前記冷媒バイパス流路を流れる高圧冷媒の熱を外部に放熱させる冷媒放熱器(41)である請求項2に記載の車両用空調装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記第1熱媒体回路における前記第1熱媒体の流れについて、
前記外部放熱器、前記第1熱源及び前記熱媒体熱媒体熱交換器を経由して前記第1熱媒体が循環する第1循環態様と、
前記熱媒体熱媒体熱交換器を介さずに、前記外部放熱器及び前記第1熱源を経由して前記第1熱媒体が循環する第2循環態様と、の何れかに切り替える請求項4に記載の車両用空調装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記第1熱媒体回路における前記第1熱媒体の流れについて、
前記外部放熱器及び前記第1熱源を経由した前記第1熱媒体の一部が前記熱媒体熱媒体熱交換器を通過すると同時に、残りの部分が前記熱媒体熱媒体熱交換器を迂回して循環する第3循環態様に、切り替える請求項7に記載の車両用空調装置。
【請求項9】
前記制御部は、前記第1熱媒体回路における前記第1熱媒体の流れについて、
前記熱媒体熱媒体熱交換器及び前記外部放熱器を経由して前記第1熱媒体が循環する第4循環態様に切り替える請求項8に記載の車両用空調装置。
【請求項10】
前記第2熱源(21、30、42)は、前記第2熱媒体回路における前記第2熱媒体の流れに関して、前記熱媒体熱媒体熱交換器(13)の上流側に配置されている請求項1に記載の車両用空調装置。
【請求項11】
前記ヒータコア(23)は、前記第2熱媒体回路における前記第2熱媒体の流れに関して、前記第2熱源(21、30、42)の上流側に配置されている請求項1に記載の車両用空調装置。
【請求項12】
前記熱媒体熱媒体熱交換器(13)は、前記第2熱媒体回路における前記第2熱媒体の流れに関して、前記熱媒体バイパス流路への分岐部(25)よりも上流側に配置されている請求項5に記載の車両用空調装置。
【請求項13】
前記制御部(60)は、前記第2熱源を暖房に利用している状態から、少なくとも前記第1熱源を暖房に利用する場合に、
前記第2熱源を作動すると共に、前記第2熱媒体回路にて少なくとも前記第2熱源及び前記ヒータコアを介して前記第2熱媒体が循環している状態で、前記第1熱媒体の温度が予め定められた条件を満たすまで、前記第1熱媒体回路において、前記熱媒体熱媒体熱交換器に対する前記第1熱媒体の流通を待機し、
前記第1熱媒体の温度が予め定められた条件を満たした場合に、前記第2熱媒体回路にて少なくとも前記ヒータコア及び前記熱媒体熱媒体熱交換器を介した前記第2熱媒体の循環を行うと共に、前記第1熱媒体回路では、前記第1熱源及び前記熱媒体熱媒体熱交換器を介した前記第1熱媒体の循環を行う請求項1に記載の車両用空調装置。
【請求項14】
前記制御部(60)は、前記第1熱源が作動している状態から、前記第2熱源を利用した暖房を行う場合に、
前記第1熱源を作動すると共に、前記第1熱媒体回路にて前記第1熱源及び前記熱媒体熱媒体熱交換器を介して前記第1熱媒体が循環している状態において、前記第2熱媒体回路にて、前記第2熱源、前記ヒータコア及び前記熱媒体熱媒体熱交換器を介して、前記第2熱媒体を循環させ、
前記第2熱媒体の温度が予め定められた条件を満たした場合に、前記第1熱媒体回路における前記熱媒体熱媒体熱交換器を介した前記第1熱媒体の循環を停止して、前記第2熱媒体回路において、少なくとも前記第2熱源及び前記ヒータコアを介した前記第2熱媒体の循環を行う請求項1に記載の車両用空調装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、走行に伴って車載機器に生じた排熱を暖房に利用可能な車両用空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両用空調装置において、車両の走行に伴って車載機器に生じた排熱を利用した車室内の暖房を実現する技術が知られている。例えば、特許文献1に記載された技術には、車両に搭載されたエンジンの排熱を車室内の暖房に利用可能な車両用空調装置に関する技術が開示されている。
【0003】
特許文献1では、エンジンを通過した熱媒体をヒータコアへ流入させることによって、エンジンの排熱を利用して、車室内へ供給される送風空気を加熱するように構成されている。又、特許文献1では、同一の熱媒体が冷凍サイクルの構成機器である放熱器を通過するように循環させることで、冷凍サイクルを利用した暖房を実現することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-104393号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の車両用空調装置においては、車載機器としてのエンジンと、冷凍サイクルの構成機器である放熱器が、単一種類の熱媒体が循環する加熱側熱媒体回路に配置されている。
【0006】
この為、エンジン排熱と冷凍サイクルで生じた熱を暖房に利用しようとした場合、加熱側熱媒体回路の熱媒体を、エンジン、冷凍サイクルの構成機器(即ち、放熱器)及びヒータコアを介して循環させる必要がある。つまり、エンジン排熱及び冷凍サイクルの熱を暖房に利用しようとした場合、制御弁等の作動制御によって、加熱側熱媒体回路の回路構成を切り替える必要が生じる。
【0007】
そして、単純に加熱側熱媒体回路の回路構成を切り替えた場合、回路構成の変更に伴って通水抵抗の増減も生じる為、ヒータコアに対する熱媒体の流量が変動することになる為、車室内に対する暖房性能が変動することが想定される。
【0008】
又、特許文献1の構成では、エンジン及び放熱器が第2熱媒体回路に配置されているが、エンジンの排熱及び冷凍サイクルで生じた熱を、それぞれ別の用途で同時期に利用することが困難になっている。
【0009】
本開示は、上記点に鑑み、走行に伴って生じる排熱に係る第1熱媒体回路と、第2熱媒体回路とを有効活用して、安定した空調性能を実現可能な車両用空調装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示の一態様に係る車両用空調装置は、第1熱媒体回路(10)と、第2熱媒体回路(20)と、熱媒体熱媒体熱交換器(13)と、制御部(60)と、を有する。第1熱媒体回路は、車両の走行に伴って熱を生じる第1熱源(11、11a)を介して、第1熱媒体を循環させる。第2熱媒体回路は、発生させる熱量を調整可能な第2熱源(21、30、42)と、空調対象空間へ供給される送風空気を熱交換により加熱するヒータコア(23)とを介して、第2熱媒体を循環させる。熱媒体熱媒体熱交換器は、第1熱媒体回路を循環する第1熱媒体と、第2熱媒体回路を循環する第2熱媒体とを熱交換させる。制御部は、第1熱媒体回路及び第2熱媒体回路の動作を制御する。
【0011】
従って、車両用空調装置によれば、第1熱源で生じた熱を回収した第1熱媒体と、第2熱源で生じた熱を回収した第2熱媒体とを、熱媒体熱媒体熱交換器において熱交換させることができる。即ち、車両用空調装置は、第1熱源と第2熱源で生じた熱量を適切に利用して過不足を補うことができ、ヒータコアに投入される熱量を安定させて、暖房性能の安定化を図ることができる。
【0012】
なお、この欄および特許請求の範囲で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】第1実施形態に係る車両用空調装置の構成図である。
図2】第1実施形態に係る室内空調ユニットの構成を示す説明図である。
図3】第1実施形態に係る車両用空調装置の制御系を示すブロック図である。
図4】第1熱媒体回路における第1循環態様を示す説明図である。
図5】第1熱媒体回路における第2循環態様を示す説明図である。
図6】第1熱媒体回路における第3循環態様を示す説明図である。
図7】第1熱媒体回路における第4循環態様を示す説明図である。
図8】車両用空調装置の第1切替制御における初期状態及び移行状態の一例を示す説明図である。
図9】車両用空調装置の第1切替制御における切替完了状態の一例を示す説明図である。
図10】車両用空調装置の第2切替制御における初期状態の一例を示す説明図である。
図11】車両用空調装置の第2切替制御における移行状態の一例を示す説明図である。
図12】車両用空調装置の第2切替制御における切替完了状態の一例を示す説明図である。
図13】第2実施形態に係る車両用空調装置の構成図である。
図14】第3実施形態に係る車両用空調装置の構成図である。
図15】第4実施形態に係る車両用空調装置の構成図である。
図16】第5実施形態に係る車両用空調装置の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、図面を参照しながら本開示を実施するための複数の形態を説明する。各実施形態において、先行する実施形態で説明した事項に対応する部分には同一の参照符号を付して重複する説明を省略する場合がある。各実施形態において構成の一部のみを説明している場合は、構成の他の部分については先行して説明した他の実施形態を適用することができる。各実施形態で具体的に組合せが可能であることを明示している部分同士の組合せばかりではなく、特に組合せに支障が生じなければ、明示してなくとも実施形態同士を部分的に組み合せることも可能である。
【0015】
(第1実施形態)
本開示における第1実施形態について、図1図12を参照して説明する。第1実施形態においては、本開示に係る車両用空調装置1をハイブリッド自動車に適用している。ハイブリッド自動車は、内燃機関(即ち、エンジン11a)及び走行用電動モータから車両走行用の駆動力を得る車両である。
【0016】
車両用空調装置1は、ハイブリッド自動車において、空調対象空間である車室内の空調を行う。そして、車両用空調装置1は、車室内の空調を行う空調運転モードとして、冷房モードと、暖房モードと、除湿暖房モードとを切り替えることができる。冷房モードは、車室内へ送風される送風空気を冷却して車室内へ吹き出す運転モードである。暖房モードは、送風空気を加熱して車室内へ吹き出す運転モードである。除湿暖房モードは、冷却して除湿された送風空気を再加熱して車室内へ吹き出すことによって車室内の除湿暖房を行う運転モードである。
【0017】
次に、第1実施形態に係る車両用空調装置1の具体的構成について、図1図2を参照して説明する。図1に示すように、第1実施形態に係る車両用空調装置1は、第1熱媒体回路10と、第2熱媒体回路20と、熱媒体熱媒体熱交換器13を有している。
【0018】
第1熱媒体回路10は、ハイブリッド自動車の走行に伴って発熱する第1熱源11を介して、第1熱媒体が循環するように構成された熱媒体回路である。第1実施形態における第1熱源11としては、ハイブリッド自動車において走行用の駆動力を発生させる内燃機関であるエンジン11aが採用されている。
【0019】
第2熱媒体回路20は、後述する制御装置60等による制御によって発熱量を制御可能な第2熱源21を介して、第2熱媒体が循環するように構成された熱媒体回路である。第1実施形態における第2熱源21としては、冷凍サイクル30が採用されている。
【0020】
そして、車両用空調装置1は、室内空調ユニット50と、制御装置60を有している。即ち、第1実施形態に係る車両用空調装置1は、第1熱源11で生じた熱と第2熱源21で生じた熱を、熱媒体熱媒体熱交換器13を介して有効に活用して、室内空調ユニット50から空調対象空間である車室内に供給される送風空気の温度調整を行うことができる。
【0021】
初めに、車両用空調装置1における第1熱媒体回路10の構成について、図1を参照して説明する。上述したように、第1熱媒体回路10は、第1熱媒体を介して、第1熱源11で生じた熱を移動させる為の循環回路であり、第1熱源11としてのエンジン11aと、第1熱媒体ポンプ12と、熱媒体熱媒体熱交換器13とを有している。
【0022】
尚、第1熱媒体回路10の第1熱媒体としては、エチレングリコールを含む溶液、不凍液等を採用することができる。
【0023】
上述したように、車両用空調装置1における第1熱源11は、ハイブリッド自動車に搭載された車載機器の内、走行等を目的とした作動に伴って付随的に発熱する機器によって構成されている。第1実施形態では、第1熱源11として、燃料の燃焼により走行用駆動力を発生させるエンジン11aが採用されている。
【0024】
エンジン11aは、第1熱媒体が流通するウォータージャケットを有している。ウォータージャケットを第1熱媒体が流れることによってエンジン11aが冷却される。エンジン11aにおける燃料の燃焼によって発生する排熱は、ウォータージャケットを流れる第1熱媒体に伝えられる。即ち、第1熱媒体は、エンジン11aの排熱により加熱される。
【0025】
エンジン11aにおける第1熱媒体の流入口側には、三方継手状に形成された分岐部17を介して、第1熱媒体ポンプ12の吐出口が接続されている。第1熱媒体ポンプ12は、第1熱媒体回路10にて第1熱媒体を循環させる為に圧送する熱媒体ポンプである。第1熱媒体ポンプ12は、制御装置60から出力される制御電圧により、回転数(即ち、圧送能力)が制御される電動ポンプである。第1熱媒体ポンプ12の吸込口には、外気放熱器14における熱媒体出口側が接続されている。
【0026】
熱媒体熱媒体熱交換器13は、第1熱媒体回路10を循環する第1熱媒体と、第2熱媒体回路20を循環する第2熱媒体とを熱交換させる熱交換器である。熱媒体熱媒体熱交換器13は、第1熱媒体回路10の第1熱媒体を流通させる第1熱媒体通路13aと、第2熱媒体回路20の第2熱媒体を流通させる第2熱媒体通路13bを有している。
【0027】
熱媒体熱媒体熱交換器13は、伝熱性に優れる同種の金属(第1実施形態では、アルミニウム合金)で形成されており、各構成部材はロウ付け接合によって一体化されている。従って、第1熱媒体通路13aを流通する第1熱媒体と、第2熱媒体通路13bを流通する第2熱媒体は、互いに熱交換することができる。
【0028】
図1に示すように、第1熱媒体回路10には、外気放熱器14及び四方弁16が配置されている。外気放熱器14は、第1熱媒体回路10を循環する第1熱媒体の有する熱を外気に放熱させる放熱器である。
【0029】
外気放熱器14は、車両ボンネット内の前方側に配置して、ハイブリッド自動車の走行に伴って、外気を車両前方側から後方へ流すように構成することができる。このように外気放熱器14を配置した場合、外気放熱器14の熱交換部を走行風が通過することになる為、走行風を利用して外気に放熱することができる。従って、外気放熱器14は外部放熱器の一例に相当する。
【0030】
四方弁16は、第1熱媒体の流入出口を4つ有する流量調整弁である。四方弁16は、4つの流入出口のうち、何れかの流入出口から流入した第1熱媒体に関して、他の流入出口から流出する第1熱媒体の流量を調整する。
【0031】
四方弁16における流入出口の一つには、三方継手状の分岐部17における流入出口の一つが接続されており、四方弁16における流入出口の他の一つには、第1熱源11における熱媒体通路の出口側が接続されている。又、四方弁16における別の流入出口には、熱媒体熱媒体熱交換器13における第1熱媒体通路13aの流入口側が接続されている。そして、四方弁16における残りの流入出口には、後述するバイパス流路15を介して、三方継手状に形成された合流部18における流入出口の一つが接続されている。
【0032】
上述したように、分岐部17は三方継手構造に形成されており、3つの流入出口の内の1つを流入口として、残りの2つを流出口としている。図1に示すように、分岐部17における流入口には、第1熱媒体ポンプ12の吐出口側が接続されている。そして、分岐部17における一方の流出口には、第1熱源11における熱媒体通路の流入口側が接続されており、分岐部17における他方の流出口には、四方弁16における流入出口の一つが接続されている。
【0033】
合流部18は、分岐部17と同様に三方継手構造に形成されており、3つの流入出口の内の1つを流出口として、残りの2つを流入口としている。図1に示すように、合流部における流出口には、外気放熱器14における熱媒体入口側が接続されている。
【0034】
そして、合流部18における一方の流入口には、熱媒体熱媒体熱交換器13における第1熱媒体通路13aの流出口側が接続されており、合流部18における他方の流入口には、バイパス流路15を介して、四方弁16における残りの流入出口が接続されている。
【0035】
これにより、第1熱媒体回路10においては、四方弁16に流入した第1熱媒体を、熱媒体熱媒体熱交換器13を迂回して、合流部18及び外気放熱器14へ流入させることができる。即ち、四方弁16にて、バイパス流路15側へ流れる第1熱媒体の流量と、熱媒体熱媒体熱交換器13側へ流れる第1熱媒体の流量のバランスを調整することができ、熱媒体熱媒体熱交換器13に投入される熱量を調整することが可能となる。
【0036】
従って、バイパス流路15、四方弁16、分岐部17、合流部18は、第1熱媒体回路10における熱量調整部45の一例に相当する。又、外気放熱器14は、第1熱媒体回路10における放熱部の一例に相当する。
【0037】
このように構成された第1熱媒体回路10においては、四方弁16の作動を制御することで、複数種類の第1熱媒体の循環態様を実現できる。第1熱媒体回路10で実現される第1循環態様~第4循環態様の詳細については、後に図面を参照して説明する。
【0038】
次に、車両用空調装置1における第2熱媒体回路20の構成について図面を参照して説明する。第2熱媒体回路20は、第2熱媒体を循環させる熱媒体回路であり、図1に示すように、熱媒体熱媒体熱交換器13の第2熱媒体通路13b、第2熱媒体ポンプ22、ヒータコア23、第2熱源21としての冷凍サイクル30を有している。
【0039】
尚、第2熱媒体回路20を循環する第2熱媒体としては、エチレングリコールを含む溶液、不凍液等を採用することができる。第2熱媒体は、第1熱媒体回路10における第1熱媒体と混じりあうことがないように構成されている。従って、第1熱媒体と第2熱媒体は、両者が混じりあうことがないのであれば、同一種類の熱媒体の利用を妨げるものではない。
【0040】
第2熱源21は、第2熱媒体回路20を循環する第2熱媒体を加熱する熱源装置であり、制御装置60の作動制御によって発熱量を調整可能な熱源である。第2熱源21に対する第2熱媒体の流入口には、ヒータコア23の流出口側が接続されており、第2熱源21における第2熱媒体の流出口には、第2熱媒体ポンプ22の吸込口側が接続されている。第1実施形態に係る第2熱源21としては、冷凍サイクル30が採用されている。冷凍サイクル30の構成については、後に詳細に説明する。
【0041】
第2熱媒体ポンプ22は、第2熱媒体回路20にて第2熱媒体を循環させる為に圧送する熱媒体ポンプである。第2熱媒体ポンプ22は、第1熱媒体ポンプ12と同様の構成を有しており、制御装置60から出力される制御電圧により、回転数(即ち、圧送能力)が制御される電動ポンプである。
【0042】
ヒータコア23は、熱媒体熱媒体熱交換器13や第2熱源21等で加熱された第2熱媒体と、室内空調ユニット50内から車室内に供給される送風空気とを熱交換させ、送風空気を加熱する熱交換器である。図2に示すように、ヒータコア23は、室内空調ユニット50の空調ケース51内に配置されている。従って、ヒータコア23は暖房用熱交換器の一例に相当する。
【0043】
図1に示すように、第2熱媒体回路20は、熱媒体三方弁25及び熱媒体放熱器27を有している。熱媒体三方弁25は、3つの流入出口を有する電気式の三方流量調整弁によって構成されている。熱媒体三方弁25は、3つの流入出口の一つを流入口とし、他の2つを流出口とするように配置されている。即ち、熱媒体三方弁25は、第2熱媒体の流れに関して分岐部として機能する。
【0044】
熱媒体三方弁25における流入口には、熱媒体熱媒体熱交換器13の第2熱媒体通路13bにおける流出口側が接続されている。そして、熱媒体三方弁25における一方の流出口には、ヒータコア23における熱媒体流入口側が接続されており、熱媒体三方弁25における他方の流出口には、熱媒体バイパス流路24を介して、熱媒体放熱器27の流入口側が接続されている。
【0045】
従って、第2熱媒体回路20においては、熱媒体熱媒体熱交換器13から熱媒体三方弁25に流入した第2熱媒体をヒータコア23側へ流入させる態様と、熱媒体放熱器27側へ流入させる態様を実現することができる。即ち、熱媒体三方弁25にて、ヒータコア23側へ流れる第2熱媒体の流量と、熱媒体放熱器27側へ流れる第2熱媒体の流量のバランスを調整することができ、熱媒体熱媒体熱交換器13に投入される熱量を調整することができる。
【0046】
熱媒体放熱器27は、熱媒体冷媒熱交換器32等で加熱された第2熱媒体と外気とを熱交換させて、第2熱媒体の有する熱を外気に放熱させる。熱媒体放熱器27は、車両ボンネット内の前方側に配置することができる。これにより、ハイブリッド自動車の走行に伴って、外気は車両前方側から後方へ流れ、熱媒体放熱器27の熱交換部を通過することになる為、走行風を利用して第2熱媒体の有する熱を外気に放熱することができる。
【0047】
熱媒体放熱器27における熱媒体流出口には、熱媒体バイパス流路24を介して、三方継手構造の熱媒体合流部26が接続されている。熱媒体合流部26は、三方継手構造における3つの流入出口の内の1つを流出口とし、残りの2つを流入口としている。
【0048】
図1に示すように、熱媒体合流部26における流出口には、熱媒体熱媒体熱交換器13における第2熱媒体通路13bの流入口側が接続されている。そして、熱媒体合流部26における流出口の一方には、第2熱媒体ポンプ22の吐出口側が接続されており、熱媒体合流部26における流出口の他方には、熱媒体バイパス流路24を介して、熱媒体放熱器27の流出口側が接続されている。従って、熱媒体合流部26は、熱媒体放熱器27を通過した第2熱媒体の流れと、ヒータコア23及び第2熱源21を通過した第2熱媒体の流れとを合流させることができる。
【0049】
このように、第1実施形態の第2熱媒体回路20において、熱媒体熱媒体熱交換器13の第2熱媒体通路13bを通過する第2熱媒体の流れに関して、ヒータコア23と熱媒体放熱器27は並列に接続されている。そして、熱媒体三方弁25は、第2熱媒体回路20において、ヒータコア23側へ流入する第2熱媒体の流量と、熱媒体放熱器27側へ流入する第2熱媒体の流量との流量割合を連続的に調整することができる。
【0050】
つまり、熱媒体三方弁25の動作を制御することで、熱媒体放熱器27にて外気に放熱される第2熱媒体の熱量と、ヒータコア23にて送風空気に放熱される第2熱媒体の熱量とを調整することができる。
【0051】
従って、熱媒体バイパス流路24、熱媒体三方弁25、熱媒体合流部26は、第2熱媒体回路20における熱量調整部45の一例に相当する。又、熱媒体放熱器27は、第2熱媒体回路20における放熱部の一例に相当する。
【0052】
そして、第2熱媒体回路20において、第2熱源21は、第2熱媒体の流れに関して、熱媒体熱媒体熱交換器13の上流側に配置されている。ヒータコア23における送風空気の加熱に際して、第2熱源21で不足した熱量を、熱媒体熱媒体熱交換器13を介して、第1熱源11で生じた熱で補うことができる。即ち、第2熱源21を熱媒体熱媒体熱交換器13の上流側に配置することで、第1熱源11の熱を効率よく利用して、所望の暖房能力を実現することができる。
【0053】
又、ヒータコア23は、第2熱媒体の流れに関して、第2熱源21の上流側に配置されている。第2熱媒体の有する熱が、ヒータコア23における送風空気の加熱に用いられた後に、第2熱源21に流入することになる為、第2熱源21にて第2熱媒体に吸熱させる際の熱交換効率を向上させることができる。
【0054】
図1に示すように、熱媒体熱媒体熱交換器13は、第2熱媒体回路20における第2熱媒体の流れに関して、熱媒体バイパス流路24側への分岐部として機能する熱媒体三方弁25よりも上流側に配置されている。これにより、第2熱媒体回路20では、熱媒体バイパス流路24に配置されている熱媒体放熱器27での放熱量をできるだけ大きくすることができる。
【0055】
続いて、車両用空調装置1の第2熱源21を構成する冷凍サイクル30について、図面を参照して説明する。冷凍サイクル30は、蒸気圧縮式の冷凍サイクル装置である。図1に示すように、冷凍サイクル30は、圧縮機31、熱媒体冷媒熱交換器32、第1膨張弁34、第1蒸発器35、第2膨張弁36、第2蒸発器37を有している。冷凍サイクル30は、第1蒸発器35及び第2蒸発器37にて吸熱した熱を汲み上げて、熱媒体冷媒熱交換器32にて第2熱媒体を加熱することができる。
【0056】
尚、車両用空調装置1の冷凍サイクル30では、冷媒として、HFO系冷媒(具体的には、HFO1234yf)を採用しており、高圧側冷媒圧力が冷媒の臨界圧力を超えない亜臨界冷凍サイクルを構成している。冷媒には、圧縮機31を潤滑する為の冷凍機油が混入されている。冷凍機油としては、液相冷媒に相溶性を有するPAGオイル(ポリアルキレングリコールオイル)が採用されている。冷凍機油の一部は、冷媒と共にサイクルを循環している。
【0057】
圧縮機31は、冷凍サイクル30において、冷媒を吸入し圧縮して吐出する。圧縮機31は車両ボンネット内に配置されている。圧縮機31は、吐出容量が固定された固定容量型の圧縮機構を電動モータにて回転駆動する電動圧縮機である。圧縮機31は、後述する制御装置60から出力される制御信号によって、回転数(即ち、冷媒吐出能力)が制御される。
【0058】
そして、圧縮機31の吐出口には、熱媒体冷媒熱交換器32における冷媒通路32bの入口側が接続されている。熱媒体冷媒熱交換器32は、圧縮機31から吐出された高圧冷媒が有する熱を、第2熱媒体回路20を循環する第2熱媒体に放熱し、第2熱媒体を加熱する熱交換器である。
【0059】
熱媒体冷媒熱交換器32は、第2熱媒体回路20の第2熱媒体を流通させる熱媒体通路32aと、冷凍サイクル30の冷媒を流通させる冷媒通路32bを有している。熱媒体冷媒熱交換器32は、伝熱性に優れる同種の金属(第1実施形態では、アルミニウム合金)で形成されており、各構成部材はロウ付け接合によって一体化されている。
【0060】
これにより、冷媒通路32bを流通する高圧冷媒と熱媒体通路32aを流通する第2熱媒体は、互いに熱交換することができる。熱媒体冷媒熱交換器32は、高圧冷媒の有する熱を放熱させる凝縮器の一例である。
【0061】
熱媒体冷媒熱交換器32の冷媒通路32bの出口には、三方継手構造の冷媒分岐部33aが接続されている。冷媒分岐部33aでは、3つの流入出口の内の1つを冷媒流入口とし、残りの2つを冷媒流出口としている。つまり、冷媒分岐部33aは、熱媒体冷媒熱交換器32から流出した液相冷媒の流れを分岐する分岐部である。
【0062】
冷媒分岐部33aの一方の冷媒流出口には、第1膨張弁34を介して、第1蒸発器35の冷媒入口側が接続されている。冷媒分岐部の他方の冷媒流出口には、第2膨張弁36を介して、第2蒸発器37の冷媒入口側が接続されている。
【0063】
第1膨張弁34は、少なくとも送風空気を冷却する空調運転モード時において、冷媒分岐部33aの一方の冷媒流出口から流出した冷媒を減圧させる。第1膨張弁34は、電気式の可変絞り機構であり、弁体と電動アクチュエータとを有している。第1膨張弁34は、いわゆる電気式膨張弁によって構成されている。
【0064】
第1膨張弁34の弁体は、冷媒通路の通路開度(換言すれば絞り開度)を変更可能に構成されている。電動アクチュエータは、弁体の絞り開度を変化させるステッピングモータを有している。第1膨張弁34は、制御装置60から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
【0065】
又、第1膨張弁34は、絞り開度を全開した際に冷媒通路を全開する全開機能と、絞り開度を全閉した際に冷媒通路を閉塞する全閉機能を有する可変絞り機構で構成されている。つまり、第1膨張弁34は、冷媒通路を全開にすることで冷媒の減圧作用を発揮させないようにすることができる。
【0066】
そして、第1膨張弁34は、冷媒通路を閉塞することで、第1蒸発器35に対する冷媒の流入を遮断できる。即ち、第1膨張弁34は、冷媒を減圧させる減圧部としての機能と、冷媒回路を切り替える冷媒回路切替部としての機能とを兼ね備えている。又、第1膨張弁34は、冷媒通路に対する絞り開度を調整することで、第1蒸発器35に流入する冷媒流量を調整することができる。
【0067】
第1膨張弁34の出口には、第1蒸発器35の冷媒入口側が接続されている。図2に示すように、第1蒸発器35は、室内空調ユニット50の空調ケース51内に配置されている。第1蒸発器35は、少なくとも送風空気を冷却する空調運転モード時に、第1膨張弁34にて減圧された低圧冷媒と送風空気とを熱交換させて低圧冷媒を蒸発させ、送風空気を冷却する。
【0068】
図1に示すように、冷媒分岐部33aにおける他方の冷媒流出口には、第2膨張弁36が接続されている。第2膨張弁36は、第1膨張弁34と同様に、電気式の可変絞り機構であり、弁体と電動アクチュエータとを有している。即ち、第2膨張弁36は、いわゆる電気式膨張弁によって構成されており、全開機能と全閉機能を有している。
【0069】
つまり、第2膨張弁36は、冷媒通路を全開にすることで冷媒の減圧作用を発揮させないようにすることができる。又、第2膨張弁36は、冷媒通路を閉塞することで、第2蒸発器37に対する冷媒の流入を遮断することができる。即ち、第2膨張弁36は、冷媒を減圧させる減圧部としての機能と、冷媒回路を切り替える冷媒回路切替部としての機能とを兼ね備えている。第2膨張弁36は減圧部の一例である。
【0070】
第2膨張弁36の出口には、第2蒸発器37の冷媒入口側が接続されている。第2蒸発器37は、第2膨張弁36にて減圧された低圧冷媒に吸熱させる吸熱器として機能する。第2蒸発器37における吸熱対象については、車室の後席側に供給される送風空気であっても良いし、第1熱媒体回路10、第2熱媒体回路20とは異なる熱媒体回路の熱媒体としてもよい。
【0071】
図1に示すように、第1蒸発器35の冷媒出口には、冷媒合流部33bの一方の冷媒入口側が接続されている。又、第2蒸発器37の冷媒出口側には、冷媒合流部33bの他方の冷媒入口側が接続されている。ここで、冷媒合流部33bは、冷媒分岐部33aと同様の三方継手構造のもので、3つの流入出口のうち2つを冷媒入口とし、残りの1つを冷媒出口としている。
【0072】
従って、冷媒合流部33bは、第1蒸発器35から流出した冷媒の流れと第2蒸発器37から流出した冷媒の流れとを合流させる合流部である。そして、冷媒合流部33bの冷媒出口には、圧縮機31の吸入口側が接続されている。
【0073】
このように構成された冷凍サイクル30によれば、圧縮機31、第1膨張弁34、第2膨張弁36の作動を制御することで、熱媒体冷媒熱交換器32における放熱量を調整することができる。従って、車両用空調装置1では、第2熱源21で生じた熱を利用して、第2熱媒体を所望の温度に加熱することができる。
【0074】
次に、車両用空調装置1を構成する室内空調ユニット50について、図2を参照して説明する。室内空調ユニット50は、車両用空調装置1において、冷凍サイクル30によって温度調整された送風空気を車室内の適切な箇所へ吹き出すためのユニットである。室内空調ユニット50は、車室内最前部の計器盤(即ち、インストルメントパネル)の内側に配置されている。
【0075】
室内空調ユニット50は、その外殻を形成する空調ケース51の内部に形成される空気通路に、室内送風機52、第1蒸発器35、ヒータコア23等を収容して構成されている。空調ケース51は、車室内に送風される送風空気の空気通路を形成している。空調ケース51は、或る程度の弾性を有し、強度的にも優れた樹脂(具体的には、ポリプロピレン)にて成形されている。
【0076】
図2に示すように、空調ケース51の送風空気流れ最上流側には、内外気切替装置53が配置されている。内外気切替装置53は、空調ケース51内へ内気(車室内空気)と外気(車室外空気)とを切替導入する。
【0077】
内外気切替装置53は、空調ケース51内へ内気を導入させる内気導入口及び外気を導入させる外気導入口の開口面積を、内外気切替ドアによって連続的に調整して、内気の導入風量と外気の導入風量との導入割合を変化させる。内外気切替ドアは、内外気切替ドア用の電動アクチュエータによって駆動される。この電動アクチュエータは、制御装置60から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
【0078】
内外気切替装置53の送風空気流れ下流側には、室内送風機52が配置されている。室内送風機52は、遠心多翼ファンを電動モータにて駆動する電動送風機によって構成されている。室内送風機52は、内外気切替装置53を介して吸入した空気を車室内へ向けて送風する。室内送風機52は、制御装置60から出力される制御電圧によって、回転数(即ち、送風能力)が制御される。
【0079】
室内送風機52の送風空気流れ下流側には、第1蒸発器35及びヒータコア23が、送風空気の流れに対して、この順に配置されている。つまり、第1蒸発器35は、ヒータコア23よりも送風空気流れ上流側に配置されている。従って、車両用空調装置1の室内空調ユニット50では、第1蒸発器35を通過した送風空気の少なくとも一部を、ヒータコア23によって加熱することができる。
【0080】
又、空調ケース51内には、冷風バイパス通路55が形成されている。冷風バイパス通路55は、第1蒸発器35を通過した送風空気を、ヒータコア23を迂回させて下流側へ流す空気通路である。
【0081】
第1蒸発器35の送風空気流れ下流側であって、且つ、ヒータコア23の送風空気流れ上流側には、エアミックスドア54が配置されている。エアミックスドア54は、第1蒸発器35を通過後の送風空気のうち、ヒータコア23を通過させる風量と冷風バイパス通路55を通過させる風量との風量割合を調整する。
【0082】
エアミックスドア54は、エアミックスドア駆動用の電動アクチュエータによって駆動される。この電動アクチュエータは、制御装置60から出力される制御信号により、その作動が制御される。
【0083】
そして、ヒータコア23の送風空気流れ下流側には、混合空間が設けられている。混合空間では、ヒータコア23にて加熱された送風空気と冷風バイパス通路55を通過してヒータコア23にて加熱されていない送風空気とが混合される。
【0084】
更に、空調ケース51の送風空気流れ最下流部には、混合空間にて混合された送風空気(空調風)を車室内へ吹き出す開口穴が配置されている。この開口穴としては、フェイス開口穴、フット開口穴、及びデフロスタ開口穴(いずれも図示せず)が設けられている。
【0085】
フェイス開口穴は、車室内の乗員の上半身に向けて空調風を吹き出すための開口穴である。フット開口穴は、乗員の足元に向けて空調風を吹き出すための開口穴である。デフロスタ開口穴は、車両前面の窓ガラスにおける内側面に向けて空調風を吹き出すための開口穴である。
【0086】
これらのフェイス開口穴、フット開口穴、及びデフロスタ開口穴は、それぞれ空気通路を形成するダクトを介して、車室内に設けられたフェイス吹出口、フット吹出口およびデフロスタ吹出口(いずれも図示せず)に接続されている。
【0087】
従って、エアミックスドア54が、ヒータコア23を通過させる風量と冷風バイパス通路55を通過させる風量との風量割合を調整することによって、混合空間にて混合される空調風の温度が調整される。これにより、各吹出口から車室内へ吹き出される送風空気(空調風)の温度も調整される。
【0088】
そして、フェイス開口穴、フット開口穴、及びデフロスタ開口穴の送風空気流れ上流側には、それぞれ、フェイスドア、フットドア、デフロスタドア(いずれも図示せず)が配置されている。フェイスドアは、フェイス開口穴の開口面積を調整する。フットドアは、フット開口穴の開口面積を調整する。デフロスタドアは、デフロスタ開口穴の開口面積を調整する。
【0089】
これらのフェイスドア、フットドア、デフロスタドアは、空調風が吹き出される吹出口を切り替える吹出モード切替装置を構成する。フェイスドア、フットドア、デフロスタドアは、リンク機構等を介して、吹出口モードドア駆動用の電動アクチュエータに連結されて連動して回転操作される。この電動アクチュエータは、制御装置60から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
【0090】
続いて、車両用空調装置1の制御系の概要について、図3を用いて説明する。制御装置60は、CPU、ROM及びRAM等を含む周知のマイクロコンピュータとその周辺回路から構成されている。制御装置60は、ROM内に記憶された空調制御プログラムに基づいて各種演算、処理を行い、出力側に接続された各種制御対象機器の作動を制御する。制御装置60は制御部の一例に相当する。
【0091】
各種制御対象機器には、第1熱媒体ポンプ12、四方弁16、第2熱媒体ポンプ22、熱媒体三方弁25が含まれている。更に、各種制御対象機器には、圧縮機31、第1膨張弁34、第2膨張弁36、室内送風機52、内外気切替装置53、エアミックスドア54等が含まれている。
【0092】
そして、制御装置60の入力側には、図3に示すように、各種の制御用センサが接続されている。制御用センサとしては、内気温センサ62a、外気温センサ62b、日射センサ62cが含まれる。又、制御用センサとして、高圧圧力センサ62d、第1蒸発器温度センサ62f、第2蒸発器温度センサ62g、空調風温度センサ62e、機器温度センサ、電池温度センサが含まれている。
【0093】
そして、内気温センサ62aは、車室内の温度である内気温Trを検出する内気温検出部である。外気温センサ62bは、車室外の温度である外気温Tamを検出する外気温検出部である。日射センサ62cは、車室内へ照射される日射量Asを検出する日射量検出部である。
【0094】
高圧圧力センサ62dは、圧縮機31から吐出された高圧冷媒の圧力である高圧圧力Pdを検出する高圧圧力検出部である。空調風温度センサ62eは、混合空間から車室内へ吹き出される吹出空気温度TAVを検出する空調風温度検出部である。
【0095】
そして、第1蒸発器温度センサ62fは、第1蒸発器35における冷媒蒸発温度を検出する冷媒温度検出部である。第2蒸発器温度センサ62gは、第2蒸発器37における冷媒蒸発温度を検出する冷媒温度検出部である。
【0096】
又、制御装置60の入力側には、第1熱媒体回路10、第2熱媒体回路20における熱媒体の温度を検出する為に、複数の熱媒体温度センサが接続されている。複数の熱媒体温度センサには、第1熱媒体温度センサ62hと、第2熱媒体温度センサ62iが含まれている。
【0097】
第1熱媒体温度センサ62hは、エンジン11aにおける熱媒体通路の出口部分に配置されており、第1熱源11から流出する第1熱媒体の温度を検出する。第2熱媒体温度センサ62iは、熱媒体冷媒熱交換器32における熱媒体通路32aの出口部分に配置されており、第2熱源21の構成機器である熱媒体冷媒熱交換器32から流出する第2熱媒体の温度を検出する。
【0098】
車両用空調装置1は、第1熱媒体温度センサ62h、第2熱媒体温度センサ62iの検出結果を参照して、第1熱源11及び第2熱源21を有効に活用した暖房運転を実現する為の制御を行う。この暖房運転に関する制御内容については、後に図面を参照して説明する。
【0099】
更に、制御装置60の入力側には、車室内前部の計器盤付近に配置された操作パネル61が接続されている。制御装置60には、この操作パネル61に設けられた各種操作スイッチからの操作信号が入力される。
【0100】
操作パネル61に設けられた各種操作スイッチとしては、具体的に、オートスイッチ、エアコンスイッチ、風量設定スイッチ、温度設定スイッチ等がある。オートスイッチは、冷凍サイクル30の自動制御運転を設定あるいは解除する操作スイッチである。
【0101】
エアコンスイッチは、第1蒸発器35で送風空気の冷却を行うことを要求する操作スイッチである。風量設定スイッチは、室内送風機52の風量をマニュアル設定する際に操作される操作スイッチである。温度設定スイッチは、車室内の目標温度Tsetを設定する操作スイッチである。
【0102】
そして、本実施形態の制御装置60は、その出力側に接続された各種制御対象機器を制御する制御部が一体に構成されたものである。従って、それぞれの制御対象機器の作動を制御する構成(即ち、ハードウェア及びソフトウェア)が、それぞれの制御対象機器の作動を制御する制御部を構成している。
【0103】
例えば、制御装置60の内、第2熱源21を暖房に利用している状態から、少なくとも第1熱源11を暖房に利用する場合に、第1熱源11、第2熱源21を有効活用して安定した暖房性能を発揮させる制御を行う構成は、第1切替制御部60aに相当する。
【0104】
又、制御装置60の内、第1熱源11が作動している状態から、第2熱源21を利用した暖房を行う場合に、第1熱源11、第2熱源21を有効活用して安定した暖房性能を発揮させる制御を行う構成は、第2切替制御部60bに相当する。
【0105】
次に、車両用空調装置1の第1熱媒体回路10における第1熱媒体の循環態様の種類について、図4図7を参照して説明する。車両用空調装置1の第1熱媒体回路10における第1熱媒体の循環態様としては、第1循環態様~第4循環態様を含んでいる。
【0106】
第1熱媒体回路10における第1循環態様は、第1熱源11、熱媒体熱媒体熱交換器13、外気放熱器14を経由して第1熱媒体が循環する循環態様である。第1熱媒体回路10の第1循環態様では、制御装置60は、四方弁16について、エンジン11a側の流入出口と熱媒体熱媒体熱交換器13側の流入出口を連通させると共に、分岐部17側の流入出口と合流部18側の流入出口を閉鎖させる。又、制御装置60は、第1熱媒体ポンプ12については、予め定められた吐出能力で第1熱媒体を吐出させる。
【0107】
図4に示すように、第1熱媒体回路10の第1循環態様では、第1熱媒体は、第1熱媒体ポンプ12、第1熱源11であるエンジン11a、四方弁16、熱媒体熱媒体熱交換器13、合流部18、外気放熱器14、第1熱媒体ポンプ12の順に流れて循環する。
【0108】
これにより、熱媒体熱媒体熱交換器13に第1熱媒体を流通させることで、第1熱源11であるエンジン11aの熱を、第1熱媒隊を介して第2熱媒体へ伝達させることができる。また、外気放熱器14に第1熱媒体を流通させることで、第1熱源11であるエンジン11aの熱を、第1熱媒体を介して外気に放熱させることができる。
【0109】
そして、第1熱媒体回路10における第2循環態様は、熱媒体熱媒体熱交換器13を迂回させると同時に、第1熱源11、外気放熱器14を経由して第1熱媒体が循環する循環態様である。第1熱媒体回路10の第2循環態様では、制御装置60は、四方弁16について、エンジン11a側の流入出口と合流部18側の流入出口を連通させると共に、熱媒体熱媒体熱交換器13側の流入出口と分岐部17側の流入出口を閉鎖させる。又、制御装置60は、第1熱媒体ポンプ12については、予め定められた吐出能力で第1熱媒体を吐出させる。
【0110】
図5に示すように、第1熱媒体回路10の第2循環態様では、第1熱媒体は、第1熱媒体ポンプ12、第1熱源11であるエンジン11a、四方弁16、バイパス流路15、合流部18、外気放熱器14、第1熱媒体ポンプ12の順に流れて循環する。
【0111】
これにより、熱媒体熱媒体熱交換器13に第1熱媒体を流通させることで、第1熱源11であるエンジン11aの熱を、第1熱媒隊を介して第2熱媒体へ伝達させることなく、第1熱媒隊を介して外気に放熱させることができる。
【0112】
そして、第1熱媒体回路10における第3循環態様は、外気放熱器14及び第1熱源11を経由した第1熱媒体の一部が熱媒体熱媒体熱交換器13を通過すると同時に、残りの部分が熱媒体熱媒体熱交換器13を迂回して循環する循環態様である。第1熱媒体回路10の第3循環態様では、制御装置60は、四方弁16について、エンジン11a側の流入出口、熱媒体熱媒体熱交換器13側の流入出口及び合流部18側の流入出口を連通させると共に、分岐部17側の流入出口を閉鎖させる。又、制御装置60は、第1熱媒体ポンプ12については、予め定められた吐出能力で第1熱媒体を吐出させる。
【0113】
図6に示すように、第1熱媒体回路10の第3循環態様では、第1熱媒体は、第1熱媒体ポンプ12、第1熱源11であるエンジン11a、四方弁16、熱媒体熱媒体熱交換器13、合流部18、外気放熱器14、第1熱媒体ポンプ12の順に流れて循環する。同時に、第1熱媒体は、第1熱媒体ポンプ12、第1熱源11であるエンジン11a、四方弁16、バイパス流路15、合流部18、外気放熱器14、第1熱媒体ポンプ12の順に流れて循環する。
【0114】
これにより、熱媒体熱媒体熱交換器13に第1熱媒体の一部を流通させることで、第1熱源11であるエンジン11aの熱の一部を、第1熱媒隊を介して第2熱媒体へ伝達させることができる。また、第1熱媒体の残りの部分を、熱媒体熱媒体熱交換器13を迂回させるように循環させることで、第1熱媒隊を介して第2熱媒体へ伝達させる熱量を調整することができる。
【0115】
又、第1熱媒体回路10における第4循環態様は、熱媒体熱媒体熱交換器13及び外気放熱器14を経由して第1熱媒体が循環する循環態様である。第1熱媒体回路10の第4循環態様では、制御装置60は、四方弁16について、分岐部17側の流入出口と熱媒体熱媒体熱交換器13側の流入出口を連通させると共に、エンジン11a側の流入出口と合流部18側の流入出口を閉鎖させる。又、制御装置60は、第1熱媒体ポンプ12については、予め定められた吐出能力で第1熱媒体を吐出させる。
【0116】
図7に示すように、第1熱媒体回路10の第4循環態様では、第1熱媒体は、第1熱媒体ポンプ12、分岐部17、四方弁16、熱媒体熱媒体熱交換器13、合流部18、外気放熱器14、第1熱媒体ポンプ12の順に流れて循環する。
【0117】
これにより、熱媒体熱媒体熱交換器13における第2熱媒体の熱交換をおこなった第1熱媒体が有する熱を、外気放熱器14にて外気に放熱させることができる。
【0118】
続いて、車両用空調装置1における第1切替制御について、図8図9を参照して説明する。上述したように、車両用空調装置1における第1切替制御は、第2熱源21を暖房に利用している状態から、少なくとも第1熱源11を暖房に利用する場合に実行される。
【0119】
例えば、冷凍サイクル30にて汲み上げられた熱を用いて送風空気を加熱している状態から、少なくともエンジン11aの排熱を利用して送風空気を加熱する状態に切り替える場合が第1切替制御の対象となる。従って、エンジン11aの排熱と冷凍サイクル30で汲み上げた熱の両方を用いて送風空気を加熱する状態へ切り替えられる場合も、第1切替制御の態様に含まれる。
【0120】
第1切替制御では、第2熱源21を暖房に利用している状態を示す初期状態と、少なくとも第1熱源11を暖房に利用している状態である切替完了状態との間に、移行状態を介在させている。
【0121】
先ず、第1切替制御の初期状態の一例について、図8を参照して説明する。図8に示すように、第1切替制御の初期状態では、第1熱媒体回路10は、第2循環態様で第1熱媒体を循環させている。第2循環態様では、エンジン11aから流出した第1熱媒体は、熱媒体熱媒体熱交換器13を迂回して、外気放熱器14を流通して循環する。従って、エンジン11aの排熱は、熱媒体熱媒体熱交換器13にて第2熱媒体に伝達されることなく、外気放熱器14にて外気に放熱される。
【0122】
又、第1切替制御の初期状態において、第2熱媒体は、第2熱媒体ポンプ22、熱媒体熱媒体熱交換器13、ヒータコア23、熱媒体冷媒熱交換器32、第2熱媒体ポンプ22の順に流れて循環している。ここで、第1切替制御の初期状態において、冷凍サイクル30は作動しており、第1蒸発器35、第2蒸発器37で吸熱した熱を、熱媒体冷媒熱交換器32にて第2熱媒体に放熱している。従って、第1切替制御の初期状態では、第2熱源21である冷凍サイクル30を熱源として用いた送風空気の加熱が実現されている。
【0123】
次に、第1切替制御における移行状態について図面を参照して説明する。制御装置60は、第1熱源11を用いて送風空気を加熱している状態において、少なくとも第2熱源21を利用した送風空気の加熱を行う条件が満たされた場合に、車両用空調装置1を移行状態に変更する。
【0124】
第1切替制御の移行状態では、第1熱媒体温度センサ62hで検出される第1熱媒体の温度が予め定められた基準値より高くなるまで、熱媒体熱媒体熱交換器13に対する第1熱媒体の流入を待機する。具体的には、制御装置60は、第1熱媒体の温度が第2熱媒体の温度以上になった場合や、第1熱源11であるエンジン11aが駆動してからの経過時間が所定値以上になった場合に、移行状態を解除して切替完了状態に変更する。
【0125】
続いて、第1切替制御における切替完了状態について、図9を参照して説明する。図9では、第1切替制御の切替完了状態の一例として、第1熱源11であるエンジン11aの排熱と、第2熱源21である冷凍サイクル30に由来する熱を用いて、送風空気を加熱する場合を示している。
【0126】
第1切替制御において、第1熱媒体の温度が第2熱媒体の温度以上となった場合、移行状態から切替完了状態に変更する為に、制御装置60は、少なくともエンジン11a及び熱媒体熱媒体熱交換器13を経由して循環するように、第1熱媒体回路10を制御する。例えば、図9に示すように、制御装置60は、第1熱媒体回路10を第2循環態様から第1循環態様に切り替える。
【0127】
この時、第2熱媒体回路では、熱媒体熱媒体熱交換器13、ヒータコア23、熱媒体冷媒熱交換器32を経由するように、第2熱媒体が循環しており、冷凍サイクル30も動作している。従って、切替完了状態では、熱媒体熱媒体熱交換器13にて、エンジン11aに由来する第1熱媒体の熱を第2熱媒体に伝達することができ、熱媒体冷媒熱交換器32にて冷凍サイクル30の冷媒に由来する熱を第2熱媒体に伝達することができる。そして、熱媒体熱媒体熱交換器13及び熱媒体冷媒熱交換器32にて加熱された第2熱媒体がヒータコア23を流通するので、切替完了状態の車両用空調装置1は、第1熱源11と第2熱源21を用いた暖房を実現することができる。
【0128】
第2熱源21を暖房に利用している状態から、少なくとも第1熱源11を暖房に利用する際に、第2熱媒体に対して第1熱媒体の温度が低い場合、熱媒体熱媒体熱交換器13における熱交換によって、第2熱媒体の温度が低下することが想定される。そうすると、ヒータコア23では、第2熱媒体の有する熱によって送風空気が加熱される為、第2熱媒体に対して第1熱媒体の温度が低い状態では、車両用空調装置1の暖房性能が低下してしまう。
【0129】
この点を考慮して、車両用空調装置1の第1切替制御では、初期状態から切替完了状態との間に、第1熱媒体の温度が第2熱媒体の温度より高くなるまで、熱媒体熱媒体熱交換器13に対する第1熱媒体の流入を待機する移行状態を介在させている。これにより、熱媒体熱媒体熱交換器13に対して第1熱媒体が流入したとしても、第2熱媒体の温度が低下することはない為、車両用空調装置1は、第1熱源11、第2熱源21を有効活用して安定した暖房性能を発揮させることができる。
【0130】
尚、第1切替制御の移行状態において、第1熱媒体が熱媒体熱媒体熱交換器13に流入することを待機する為に、第1熱媒体回路10を第2循環状態としていたが、この態様に限定されるものではない。第1熱媒体が熱媒体熱媒体熱交換器13に流入することを抑制できればよく、例えば、第1熱媒体の温度が予め定められた条件を満たすまで、第1熱媒体ポンプ12を停止して、第1熱媒体の循環を停止しておくことも可能である。
【0131】
次に、車両用空調装置1における第2切替制御について、図10図12を参照して説明する。上述したように、車両用空調装置1における第2切替制御は、第1熱源11が作動している状態から、第2熱源21を利用した暖房を行う場合に実行される。
【0132】
例えば、エンジン11aが駆動して排熱が発生している状態から、冷凍サイクル30にて汲み上げられた熱を用いて送風空気を加熱する状態に切り替える場合が第2切替制御の対象となる。
【0133】
第2切替制御では、第2熱源21が駆動している状態を示す初期状態と、第1熱源11を単独で暖房に利用している状態である切替完了状態との間に、移行状態を介在させている。
【0134】
先ず、第2切替制御における初期状態について、図10を参照して説明する。図10に示すように、第2切替制御における初期状態では、エンジン11aが駆動した状態になっており、第1熱媒体回路10が第1循環態様となるように制御されている。そして、第2切替制御における初期状態では、第2熱媒体回路20における第2熱媒体の循環は行われておらず、第2熱源21としての冷凍サイクル30も動作していない。
【0135】
従って、第2切替制御における初期状態において、第1熱媒体は、駆動中のエンジン11aの排熱によって加熱され、熱媒体熱媒体熱交換器13に流入する。第2熱媒体回路20で第2熱媒体は循環していないので、第1熱媒体は、熱媒体熱媒体熱交換器13にて第2熱媒体にほとんど放熱することなく、外気放熱器14へ向かって流れる。外気放熱器14では、第1熱媒体の有する熱が外気に対して放熱される。即ち、第2切替制御の初期状態では、駆動中のエンジン11aで発生する排熱が、第1熱媒体を介して、外気放熱器14にて外気に対して放熱される。
【0136】
次に、第2切替制御における移行状態について、図11を参照して説明する。制御装置60は、第1熱源11であるエンジン11aが駆動している状態において、エンジン11aの駆動を停止すると共に、第2熱源21を利用した送風空気の加熱を行うことが決定された場合に、車両用空調装置1を移行状態に変更する。第2切替制御に係る移行状態の具体例としては、ハイブリッド自動車がエンジン11aで生じた駆動力によって走行する運転モードから、バッテリの電力で走行用電動モータを駆動させて走行する運転モードに移行すると共に車室内の暖房を行う場合を挙げられる。
【0137】
第2切替制御における移行状態では、制御装置60は、第1熱媒体回路10について、初期状態と同様に、第1循環態様を維持するように制御を行う。ここで、移行状態への移行する段階で、第1熱源11であるエンジン11aの駆動は停止している。従って、移行状態の第1熱媒体回路10では、既にエンジン11aの排熱で加熱された第1熱媒体が循環している。
【0138】
そして、制御装置60は、第2熱媒体回路20に関し、第2熱媒体ポンプ22を駆動させ、第2熱媒体が第2熱媒体ポンプ22、熱媒体熱媒体熱交換器13、ヒータコア23、熱媒体冷媒熱交換器32、第2熱媒体ポンプ22の順に流れて循環するように制御する。この時、制御装置60は、第2熱源21である冷凍サイクル30を動作させ、第1蒸発器35、第2蒸発器37で吸熱した熱を、熱媒体冷媒熱交換器32にて第2熱媒体に放熱させている。
【0139】
つまり、第2切替制御における移行状態では、第1熱媒体回路10において、熱媒体熱媒体熱交換器13を介した第1熱媒体の循環が行われ、第2熱媒体回路20では、熱媒体熱媒体熱交換器13及び熱媒体冷媒熱交換器32を介した第2熱媒体の循環が行われる。従って、第2切替制御の移行状態では、第2熱媒体回路20の第2熱媒体は、熱媒体冷媒熱交換器32にて冷凍サイクル30で汲み上げた熱によって加熱されると共に、熱媒体熱媒体熱交換器13では、第1熱媒体及びエンジン11aの余熱によって加熱される。
【0140】
そして、第2切替制御における移行状態は、第2熱媒体温度センサ62iで検出される第2熱媒体の温度が予め定められた所定値より高くなるまで継続される。予め定められた所定値とは、例えば、第1熱媒体温度センサ62hによって検出される第1熱媒体の温度によって定められ、第2熱媒体の温度が第1熱媒体の温度よりも高くなった場合に、移行状態から切替完了状態に移行する。
【0141】
即ち、第2切替制御の移行状態では、第2熱源21である冷凍サイクル30に加えて、第1熱媒体及びエンジン11aの余熱を併用することで、第2熱媒体を第1熱媒体と同程度まで温めることができる。
【0142】
続いて、第2切替制御における切替完了状態について、図12を参照して説明する。第2切替制御において、第2熱媒体の温度が第1熱媒体の温度以上となった場合、移行状態から切替完了状態に変更する為に、制御装置60は、第1熱媒体ポンプ12の駆動を停止して、第1熱媒体回路10における第1熱媒体の循環を停止する。
【0143】
この時、第2切替制御の切替完了状態では、第2熱源21である冷凍サイクル30が動作しており、第2熱媒体回路20では、第2熱媒体が、熱媒体熱媒体熱交換器13、ヒータコア23、熱媒体冷媒熱交換器32を介して循環している。上述したように、第1熱媒体回路10における第1熱媒体の循環は停止している為、切替完了状態では、車両用空調装置1は、第2熱源21を利用した車室内の暖房が行われる。
【0144】
車両用空調装置1において、第2熱源21である冷凍サイクル30が停止し、且つ、第2熱媒体回路20にて第2熱媒体の循環も停止している場合、第2熱媒体は、比較的低温になっていることが想定される。この状態から、冷凍サイクル30を駆動させて、第2熱媒体を介して車室内の暖房を開始したとしても、第2熱媒体の温度が上昇するまでの間は十分な暖房能力を得ることができないことが想定される。
【0145】
この点を考慮して、車両用空調装置1の第2切替制御では、第1熱源11が作動している初期状態から切替完了状態との間に、移行状態を介在させている。第2切替制御の移行状態では、第2熱媒体の温度が第1熱媒体の温度より高くなるまで、熱媒体熱媒体熱交換器13にて第1熱媒体と第2熱媒体を熱交換させている。即ち、第2熱源21で生じた熱に加えて、第1熱源11(即ち、エンジン11a)の余熱を、第1熱媒体を介して第2熱媒体に加えることができる。
【0146】
これにより、第2熱媒体の温度が上昇するまでの期間を短縮することができるので、車両用空調装置1では、第2熱源21を用いた暖房の開始に際して、第1熱源11、第2熱源21を有効活用して安定した暖房性能を発揮させることができる。
【0147】
以上説明したように、第1実施形態に係る車両用空調装置1は、図1等に示すように、第1熱媒体回路10と、第2熱媒体回路20と、制御装置60を有している。第1熱媒体回路10は、第1熱源11としてのエンジン11aを介して、第1熱媒体を循環させている。第2熱媒体回路20は、第2熱源21としての冷凍サイクル30の構成機器(熱媒体冷媒熱交換器32)と、ヒータコア23を介して、第2熱媒体を循環させる。熱媒体熱媒体熱交換器13は、第1熱媒体回路10及び第2熱媒体回路20に配置されており、第1熱媒体回路10を循環する第1熱媒体と、第2熱媒体回路20を循環する第2熱媒体とを熱交換させる。制御装置60は、第1熱媒体回路10及び第2熱媒体回路20の動作を制御する。
【0148】
このように構成された車両用空調装置1によれば、エンジン11aの排熱を回収した第1熱媒体と、冷凍サイクル30で生じた熱を回収した第2熱媒体とを、熱媒体熱媒体熱交換器13において熱交換させることができる。即ち、車両用空調装置1は、エンジン11aの排熱に係る熱量と、冷凍サイクル30で生じた熱量とを適切に利用して過不足を補うことができ、車両用空調装置1の暖房性能の安定化を図ることができる。
【0149】
又、車両用空調装置1は、第2熱源21として、冷凍サイクル30を有している。冷凍サイクル30は、圧縮機31、熱媒体冷媒熱交換器32、減圧部としての第1膨張弁34及び第2膨張弁36、蒸発器としての第1蒸発器35及び第2蒸発器37を有している。冷凍サイクル30は、圧縮機31の冷媒吐出能力、減圧部における冷媒減圧量を調整することで、第2熱媒体に対して加えられる熱量を調整することができる。
【0150】
従って、車両用空調装置1によれば、第2熱源21として、冷凍サイクル30を採用することで、第2熱媒体を効率よく加熱することが可能となり、車両用空調装置1としての暖房性能及び省動力性を向上させることができる。
【0151】
図1に示すように、車両用空調装置1は、熱媒体熱媒体熱交換器13に対して投入される熱量を調整する熱量調整部45と、熱量調整部45によって、熱媒体熱媒体熱交換器13に投入されなかった熱量を放熱させる放熱部46と、を有している。
【0152】
これにより、車両用空調装置1は、第1熱源11で生じた熱及び第2熱源21で生じた熱と、ヒータコア23で要求される熱量とのバランスを取ることができる。例えば、ヒータコア23で要求される熱量に対して、第1熱源11及び第2熱源21で生じる熱が余っている場合、車両用空調装置1は、熱量調整部45を制御することで、放熱部46から余剰の熱量を放熱させ、適切な熱量をヒータコア23に投入できる。
【0153】
図1に示すように、車両用空調装置1の第1熱媒体回路10には、熱量調整部45としてバイパス流路15及び四方弁16が配置されており、放熱部46として外気放熱器14が配置されている。
【0154】
図4図7に示すように、車両用空調装置1は、四方弁16の動作を制御することで、熱媒体熱媒体熱交換器13に投入される熱量および外気放熱器14で外気に放熱される熱量を調整することができる。熱媒体熱媒体熱交換器13に投入される熱量は、第2熱媒体を介してヒータコア23に投入される熱量と強い相関を示す為、四方弁16の動作制御によって、ヒータコア23に投入される熱量を適切に調整することが可能となる。
【0155】
又、車両用空調装置1の第2熱媒体回路20には、熱量調整部45として、熱媒体バイパス流路24及び熱媒体三方弁25が配置されており、放熱部46として、熱媒体放熱器27が配置されている。
【0156】
従って、車両用空調装置1は、熱媒体三方弁25の動作制御を行うことで、ヒータコア23へ流入する第2熱媒体の流量と、熱媒体バイパス流路24及び熱媒体放熱器27側へ流れる第2熱媒体の流量とを調整することができる。これにより、車両用空調装置1は、熱媒体三方弁25の動作制御を行うことで、ヒータコア23に投入される熱量を適切に調整することができる。
【0157】
そして、図4図5に示すように、車両用空調装置1は、第1熱媒体回路10における第1熱媒体の循環態様として、第1循環態様と第2循環態様に切り替えることができる。第1循環態様は、外気放熱器14、エンジン11a、熱媒体熱媒体熱交換器13を経由して第1熱媒体が循環する態様であり、第2循環態様は、熱媒体熱媒体熱交換器13を介さずに、エンジン11a及び外気放熱器14を経由して第1熱媒体が循環する態様である。
【0158】
従って、車両用空調装置1は、第1熱媒体回路10における第1熱媒体の循環態様として、第1循環態様と第2循環態様を使い分けることで、第1熱源11であるエンジン11aの排熱の放熱先を、熱媒体熱媒体熱交換器13と外気放熱器14から選択できる。これにより、車両用空調装置1は、熱媒体熱媒体熱交換器13における第1熱媒体と第2熱媒体との間における熱交換量を制御することができる。つまり、車両用空調装置1は、第1熱媒体における第1熱源11に由来する熱量と、第2熱媒体における第2熱源21に由来する熱量とを有効に活用して、ヒータコア23における暖房性能の安定化を図ることができる。
【0159】
又、図6に示すように、車両用空調装置1は、第1熱媒体回路10における第1熱媒体の循環態様として、第1循環態様、第2循環態様に加えて、第3循環態様に切り替えることができる。第3循環態様は、外気放熱器14及びエンジン11aを経由した第1熱媒体の一部が熱媒体熱媒体熱交換器13を通過すると同時に、残りの第1熱媒体が熱媒体熱媒体熱交換器13を迂回して循環する態様である。
【0160】
これにより、車両用空調装置1は、第1熱媒体回路10における第1熱媒体の循環態様として、第3循環態様を採用することで、エンジン11aの排熱の一部を第2熱媒体へ放熱させ、残りの熱量を外気に放熱させることができる。即ち、車両用空調装置1は、第1熱媒体における第1熱源11に由来する熱量と、第2熱媒体における第2熱源21に由来する熱量との配分を精度よく調整して、ヒータコア23における暖房性能の安定化を図ることができる。
【0161】
更に、図7に示すように、車両用空調装置1は、第1熱媒体回路10における第1熱媒体の循環態様として、第1循環態様~第3循環態様に加えて、第4循環態様に切り替えることができる。第4循環態様は、エンジン11aを介さずに、熱媒体熱媒体熱交換器13及び外気放熱器14を経由して第1熱媒体が循環する態様である。
【0162】
これにより、車両用空調装置1は、第4循環態様に切り替えることで、熱媒体熱媒体熱交換器13で第2熱媒体と熱交換した第1熱媒体の有する熱を外気に放熱することができる。そして、車両用空調装置1は、第1熱媒体回路10における第1熱媒体の循環態様を、多様な循環態様に切り替えることができ、第1熱源11に由来する熱量と第2熱源21に由来する熱量とを有効活用して、暖房性能の安定化を図ることができる。
【0163】
図1に示すように、車両用空調装置1の第2熱媒体回路20において、熱媒体冷媒熱交換器32は、第2熱媒体の流れに関して、熱媒体熱媒体熱交換器13の上流側に配置されている。熱媒体冷媒熱交換器32は、第2熱源21である冷凍サイクル30の構成機器の一つであり、冷凍サイクル30で汲み上げた熱を第2熱媒体に放熱する放熱器である。
【0164】
第2熱媒体回路20において、熱媒体冷媒熱交換器32を熱媒体熱媒体熱交換器13の上流側に配置することで、熱媒体熱媒体熱交換器13にて第1熱媒体から第2熱媒体に放熱すべき熱量を特定することができる。この結果、車両用空調装置1は、所望の暖房性能に対して不足する分だけ、第1熱源11に由来する熱で補うことができ、効率よく暖房性能の安定化を図ることができる。
【0165】
又、車両用空調装置1の第2熱媒体回路20において、ヒータコア23は、第2熱媒体の流れに関して、熱媒体冷媒熱交換器32の上流側に配置されている。上述したように、熱媒体冷媒熱交換器32は、第2熱源21である冷凍サイクル30の構成機器の一つであり、冷凍サイクル30で汲み上げた熱を第2熱媒体に放熱する放熱器である。
【0166】
従って、第2熱媒体回路20の第2熱媒体は、送風空気を加熱する為にヒータコア23へ放熱した状態で、第2熱源21を構成する熱媒体冷媒熱交換器32に流入する。即ち、第2熱媒体をできるだけ低い温度を示す状態で、第2熱源21に供給することができるので、第2熱源21で生じた熱量を効率よく回収することができる。
【0167】
又、第2熱源21として、冷凍サイクル30が採用されている場合、熱媒体冷媒熱交換器32における放熱量を確保できない場合には、冷凍サイクル30の冷媒圧力に関して、高圧異常が生じることが想定される。この点、熱媒体冷媒熱交換器32に対して、できるだけ低い温度で第2熱媒体を流通させることができるので、車両用空調装置1は、冷凍サイクルの高圧異常の発生を抑制することができる。
【0168】
そして、車両用空調装置1の第2熱媒体回路20において、熱媒体熱媒体熱交換器13は、第2熱媒体の流れに関して、熱媒体バイパス流路24への分岐部として機能する熱媒体三方弁25よりも上流側に配置されている。
【0169】
これにより、熱媒体熱媒体熱交換器13にて第1熱媒体と熱交換した第2熱媒体を、できるだけ熱を維持した状態で、熱媒体バイパス流路24及び熱媒体放熱器27へ流通させることができる。即ち、車両用空調装置1は、熱媒体放熱器27における第2熱媒体の放熱量を最大化することが可能となる。例えば、外気が低温高湿度である環境において、熱媒体放熱器27が着霜した場合に関して、この構成を採用することで、第2熱媒体によって熱媒体放熱器27を除霜する際の除霜性能を向上させることができる。
【0170】
又、車両用空調装置1においては、第2熱源21を暖房に利用している状態から、少なくとも第1熱源11を暖房に利用する場合に、第1切替制御が実行される。図8図9に示すように、第1切替制御では、第2熱源21を暖房に利用している状態を示す初期状態と、少なくとも第1熱源11を暖房に利用している状態である切替完了状態との間に、移行状態を介在させている。
【0171】
第1切替制御の移行状態では、第1熱媒体の温度が第2熱媒体の温度以上となるまで、第2熱源21である冷凍サイクル30を作動すると共に、第2熱媒体回路20にて少なくとも第2熱源21及びヒータコア23を介して第2熱媒体が循環している状態を維持する。この時、第1熱媒体回路10では、第2循環態様で第1熱媒体を循環させ、第1熱源11を流通した第1熱媒体が熱媒体熱媒体熱交換器13に流入することを待機している。この移行状態を経て図9に示す切替完了状態に移行することで、第1熱媒体の温度が十分に上昇した状態で、少なくとも第1熱源11を利用した暖房を行うことができる。
【0172】
ここで、第2熱源21を暖房に利用している状態から、少なくとも第1熱源11を暖房に利用する際に、第2熱媒体に対して第1熱媒体の温度が低い場合、熱媒体熱媒体熱交換器13における熱交換によって、第2熱媒体の温度が低下することが想定される。そうすると、ヒータコア23では、第2熱媒体の有する熱によって送風空気が加熱される為、第2熱媒体に対して第1熱媒体の温度が低い状態では、車両用空調装置1の暖房性能が低下してしまう。
【0173】
この点、車両用空調装置1の第1切替制御では、初期状態から切替完了状態への間に、移行状態を介在させている為、熱媒体熱媒体熱交換器13に対して第1熱媒体が流入したとしても、第2熱媒体の温度が低下することはない。従って、車両用空調装置1は、第1切替制御を行うことで、第1熱源11、第2熱源21を有効活用して安定した暖房性能を発揮させることができる。
【0174】
そして、車両用空調装置1では、第1熱源11が作動している状態から、第2熱源21を利用した暖房を行う場合に、第2切替制御が実行される。図10図12に示すように、第2切替制御では、第2熱源21が駆動している状態を示す初期状態と、第1熱源11を単独で暖房に利用している状態である切替完了状態との間に、移行状態を介在させている。
【0175】
第2切替制御における移行状態では、第1熱媒体回路10において、熱媒体熱媒体熱交換器13を介した第1熱媒体の循環が行われ、第2熱媒体回路20では、熱媒体熱媒体熱交換器13及び熱媒体冷媒熱交換器32を介した第2熱媒体の循環が行われる。従って、第2切替制御の移行状態では、第2熱媒体回路20の第2熱媒体は、熱媒体冷媒熱交換器32にて冷凍サイクル30で汲み上げた熱によって加熱されると共に、熱媒体熱媒体熱交換器13では、第1熱媒体及びエンジン11aの余熱によって加熱される。そして、第2切替制御における移行状態は、第2熱媒体温度センサ62iで検出される第2熱媒体の温度が予め定められた所定値より高くなるまで継続される。
【0176】
ここで、車両用空調装置1において、第2熱源21である冷凍サイクル30が停止し、且つ、第2熱媒体回路20にて第2熱媒体の循環も停止している場合、第2熱媒体は、比較的低温になっていることが想定される。この状態から、冷凍サイクル30を駆動させて、第2熱媒体を介して車室内の暖房を開始したとしても、第2熱媒体の温度が上昇するまでの間は十分な暖房能力を得ることができないことが想定される。
【0177】
この点、車両用空調装置1の第2切替制御では、初期状態から切替完了状態の間に移行状態を介在させることで、第2熱源21で生じた熱に加えて、第1熱源11(即ち、エンジン11a)の余熱を、第1熱媒体を介して第2熱媒体に加えることができる。これにより、第2熱媒体の温度が上昇するまでの期間を短縮することができるので、車両用空調装置1では、第2熱源21を用いた暖房の開始に際して、第1熱源11、第2熱源21を有効活用して安定した暖房性能を発揮させることができる。
【0178】
(第2実施形態)
次に、上述した実施形態と異なる第2実施形態について、図13を参照して説明する。第2実施形態に係る車両用空調装置1では、第2熱媒体回路20の構成が上述した第1実施形態と相違している。第2実施形態に係る車両用空調装置1におけるその他の構成(第1熱媒体回路10、冷凍サイクル30、室内空調ユニット50、制御装置60等)については、上述した第1実施形態と同様である為、再度の説明を省略する。
【0179】
図13に示すように、第2実施形態に係る車両用空調装置1の第2熱媒体回路20は、第2熱媒体ポンプ22、熱媒体熱媒体熱交換器13、ヒータコア23、第2熱源21の構成機器である熱媒体冷媒熱交換器32を有している。換言すると、第2実施形態に係る第2熱媒体回路20は、熱媒体バイパス流路24、熱媒体三方弁25、熱媒体合流部26、熱媒体放熱器27を有していない点で、第1実施形態と相違している。従って、第2実施形態の第2熱媒体回路20では、熱媒体熱媒体熱交換器13から流出した第2熱媒体は、全てヒータコア23に流入する構成となる。
【0180】
第2実施形態に係る車両用空調装置1では、第2熱媒体回路20における熱量調整部45及び放熱部46に関する事項を除いて、上述した第1実施形態と同様の効果を発揮することができる。
【0181】
尚、第2実施形態においては、第1熱媒体回路10が、熱量調整部45として、バイパス流路15及び四方弁16を有すると共に、放熱部46として、外気放熱器14を有している。この為、第1熱媒体回路10の熱量調整部45及び放熱部46を用いることで、熱媒体熱媒体熱交換器13に投入される熱量を調整することができ、車両用空調装置1の暖房性能を調整する機能も担保されている。
【0182】
以上説明したように、第2実施形態に係る車両用空調装置1によれば、第2熱媒体回路20の構成を変更した場合でも、上述した実施形態と共通の構成及び作動から奏される作用効果を得ることができる。
【0183】
(第3実施形態)
続いて、上述した実施形態と異なる第3実施形態について、図14を参照して説明する。第3実施形態に係る車両用空調装置1では、第1熱媒体回路10の構成が上述した第1実施形態と相違している。第3実施形態に係る車両用空調装置1におけるその他の構成(第2熱媒体回路20、冷凍サイクル30、室内空調ユニット50、制御装置60等)については、上述した第1実施形態と同様である為、再度の説明を省略する。
【0184】
図14に示すように、第3実施形態に係る車両用空調装置1の第1熱媒体回路10は、第1熱源11としてのエンジン11a、第1熱媒体ポンプ12、熱媒体熱媒体熱交換器13、外気放熱器14を有している。換言すると、第3実施形態に係る第1熱媒体回路10は、バイパス流路15、四方弁16、分岐部17、合流部18を有していない点で、第1実施形態と相違している。従って、第3実施形態の第1熱媒体回路10では、第1熱源11から流出した第1熱媒体は、全て熱媒体熱媒体熱交換器13に流入する構成となる。
【0185】
第3実施形態に係る車両用空調装置1では、第1熱媒体回路10における熱量調整部45及び放熱部46に関する事項を除いて、上述した第1実施形態と同様の効果を発揮することができる。
【0186】
尚、第3実施形態においては、第2熱媒体回路20が、熱量調整部45として、熱媒体バイパス流路24及び熱媒体三方弁25を有すると共に、放熱部46として、熱媒体放熱器27を有している。この為、第2熱媒体回路20の熱量調整部45及び放熱部46を用いることで、熱媒体熱媒体熱交換器13に投入される熱量を調整することができ、車両用空調装置1の暖房性能を調整する機能も担保されている。
【0187】
以上説明したように、第3実施形態に係る車両用空調装置1によれば、第1熱媒体回路10の構成を変更した場合でも、上述した実施形態と共通の構成及び作動から奏される作用効果を得ることができる。
【0188】
(第4実施形態)
次に、上述した実施形態と異なる第4実施形態について、図15を参照して説明する。第4実施形態に係る車両用空調装置1は、第1熱媒体回路10、第2熱媒体回路20、冷凍サイクル30の構成が上述した第1実施形態と相違している。第4実施形態に係る車両用空調装置1におけるその他の構成(室内空調ユニット50、室内空調ユニット50)については、上述した第1実施形態と同様である為、再度の説明を省略する。
【0189】
図15に示すように、第4実施形態に係る車両用空調装置1の第1熱媒体回路10は、第1熱源11としてのエンジン11a、第1熱媒体ポンプ12、熱媒体熱媒体熱交換器13、外気放熱器14を有している。換言すると、第4実施形態に係る第1熱媒体回路10は、熱量調整部45及び放熱部46に相当する構成を有しておらず、第3実施形態に係る第1熱媒体回路10と同様の構成である。
【0190】
そして、第4実施形態に係る車両用空調装置1の第2熱媒体回路20は、第2熱媒体ポンプ22、熱媒体熱媒体熱交換器13、ヒータコア23、第2熱源21の構成機器である熱媒体冷媒熱交換器32を有している。換言すると、第2実施形態に係る第2熱媒体回路20は、熱量調整部45及び放熱部46に相当する構成を有しておらず、第2実施形態に係る第2熱媒体回路20と同様の構成である。
【0191】
そして、第4実施形態に係る車両用空調装置1では、第2熱源21として、冷凍サイクル30が配置されている。第4実施形態に係る冷凍サイクル30は、上述した実施形態と同様に、圧縮機31、熱媒体冷媒熱交換器32、第1膨張弁34、第1蒸発器35、第2膨張弁36、第2蒸発器37を有している。第4実施形態に係る冷凍サイクル30は、更に、熱量調整部45及び放熱部46に相当する構成を有している。
【0192】
図15に示すように、第4実施形態に係る冷凍サイクル30において、圧縮機31の吐出口と熱媒体冷媒熱交換器32の冷媒通路32bにおける冷媒流入口との間には、冷媒三方弁39が配置されている。冷媒三方弁39は、3つの流入出口を有する電気式の三方流量調整弁によって構成され、3つの流入出口の一つを流入口とし、他の2つを流出口とするように配置されている。冷媒三方弁39は、圧縮機31から吐出された冷媒の流れに関して分岐部として機能する。
【0193】
冷媒三方弁39における流入口には、圧縮機31の吐出口側が接続されている。又、冷媒三方弁39における流出口の一方には、熱媒体冷媒熱交換器32の冷媒通路32bにおける冷媒流入口側が接続されており、冷媒三方弁39における流出口の他方には、冷媒バイパス流路38を介して、冷媒放熱器41が接続されている。
【0194】
冷媒放熱器41は、圧縮機31から吐出された高圧冷媒と外気とを熱交換させて、高圧冷媒の有する熱を外気に放熱させる。冷媒放熱器41における冷媒流出口側には、冷媒バイパス流路38を介して、三方継手構造の冷媒接続部40が接続されている。冷媒接続部40は、三方継手構造における3つの流入出口の内の1つを流出口とし、残りの2つを流入口としている。
【0195】
上述したように、冷媒接続部40における流入口の一方には、冷媒バイパス流路38を介して、冷媒放熱器41の流出口側が接続され、冷媒接続部40における流入口の他方には、熱媒体冷媒熱交換器32の冷媒通路32bにおける流出口側が接続されている。そして、冷媒接続部40における流出口に対しては、冷媒分岐部33aの流入口側が接続されている。
【0196】
このように構成された第4実施形態に係る冷凍サイクル30では、冷媒三方弁39の動作を制御することで、圧縮機31から吐出された高圧冷媒について、冷媒バイパス流路38を介して熱媒体冷媒熱交換器32を迂回するように流すことができる。即ち、第4実施形態に係る冷凍サイクル30では、熱媒体冷媒熱交換器32に流入する高圧冷媒に由来する熱量を調整でき、第2熱媒体に放熱される熱量を調整することができる。上述したように、ヒータコア23では、第2熱媒体の有する熱によって送風空気が加熱される為、第4実施形態に係る車両用空調装置1は、暖房性能を調整することができる。
【0197】
そして、第4実施形態に係る冷凍サイクル30において、冷媒バイパス流路38、冷媒三方弁39、冷媒接続部40は熱量調整部45の一例に相当し、冷媒放熱器41は、放熱部46の一例に相当する。
【0198】
第4実施形態に係る車両用空調装置1では、冷凍サイクル30における熱量調整部45及び放熱部46に関する事項を除いて、上述した第1実施形態と同様の効果を発揮することができる。
【0199】
以上説明したように、第4実施形態に係る車両用空調装置1によれば、第2熱源21としての冷凍サイクル30の構成を変更した場合でも、上述した実施形態と共通の構成及び作動から奏される作用効果を得ることができる。
【0200】
(第5実施形態)
続いて、上述した実施形態と異なる第5実施形態について、図16を参照して説明する。第5実施形態に係る車両用空調装置1では、第2熱源21として採用される構成が上述した実施形態と相違している。第5実施形態に係る車両用空調装置1におけるその他の構成(第1熱媒体回路10、第2熱媒体回路20、室内空調ユニット50、制御装置60)については、上述した実施形態と同様である為、再度の説明を省略する。
【0201】
図16に示すように、第5実施形態に係る車両用空調装置1は、第2熱媒体回路20における第2熱源21として、電気ヒータ42が配置されている。第5実施形態に係る電気ヒータ42は、第2熱媒体回路20におけるヒータコア23の流出口と、第2熱媒体ポンプ22の吸込口側の間に配置されている。
【0202】
電気ヒータ42は、電力を供給されることによって発熱し、電気ヒータ42の熱媒体通路を流れる第2熱媒体を加熱する。電気ヒータ42としては、例えば、PTC素子(即ち、正特性サーミスタ)を有するPTCヒータを用いることができる。電気ヒータ42は、制御装置60から出力される制御電圧によって、第2熱媒体を加熱する為の熱量を任意に調整することができ、第2熱源21の一例に相当する。
【0203】
従って、第5実施形態に係る車両用空調装置1によれば、第2熱源21として、冷凍サイクル30に替えて電気ヒータ42を採用した場合でも、エンジン11aの排熱と電気ヒータ42で生じる熱を効率よく利用して、安定した暖房性能を発揮させることができる。
【0204】
以上説明したように、第5実施形態に係る車両用空調装置1によれば、第2熱源21として、冷凍サイクル30に替えて電気ヒータ42を採用した場合でも、上述した実施形態と共通の構成及び作動から奏される作用効果を得ることができる。
(他の実施形態)
本開示は上述の実施形態に限定されることなく、本開示の趣旨を逸脱しない範囲内で、以下のように種々変形可能である。
【0205】
(a)上述した実施形態においては、第1熱源11として、走行等を目的とした燃料の燃焼に伴って付随的に発熱するエンジン11aを採用していたが、この態様に限定されるものではない。第1熱源11としては、車両に搭載された車載機器の内、走行等を目的とした作動に伴って付随的に発熱する機器であれば、種々の車載機器を採用することができる。
【0206】
例えば、第1熱源11として、車載バッテリ、インバータINV、モータジェネレータMG、トランスアクスル装置、PCU、ADAS用の制御装置等を採用しても良い。例えば、走行用モータは、通電により走行用駆動力を発生させる際に発熱する為、第1熱源11として利用することができる。又、車載バッテリは、走行に伴って電力の入出力が行われ、入出力に伴って発熱する為、第1熱源11として利用することができる。
【0207】
そして、インバータINVは、直流電流を交流電流に変換する電力変換部である。又、モータジェネレータMGは、電力を供給されることによって走行用の駆動力を出力すると共に、減速時等には回生電力を発生させるものである。
【0208】
トランスアクスル装置は、トランスミッションとファイナルギア・ディファレンシャルギア(デフギア)を一体化した装置である。PCUは、変電や電力分配を行う電力制御ユニットである。ADAS用の制御装置は、先進運転支援システム用の制御装置である。これらの構成は、エンジン11a等と同様に、車両の走行等を目的とした作動に伴って付随的に発熱する為、第1熱源11として利用することができる。
【0209】
(b)又、上述した実施形態では、第2熱源21として、冷凍サイクル30や電気ヒータ42を採用していたが、この態様に限定されるものではない。第2熱源21としては、制御装置60の制御によって、第2熱媒体を加熱する熱量を調整可能な構成であれば、種々の構成を採用することができ、例えば、ペルチェ素子等を用いてもよい。
【0210】
(c)上述した実施形態における第1熱媒体回路10、第2熱媒体回路20、冷凍サイクル30の回路構成は一例であり、第1熱媒体回路10、第2熱媒体回路20、冷凍サイクル30の構成を適宜変更することができる。
【0211】
第1熱媒体回路10については、第1熱源11、熱媒体熱媒体熱交換器13を介して第1熱媒体を循環可能な構成であれば、各構成機器の接続態様については適宜変更できる。同様に、第2熱媒体回路20については、熱媒体熱媒体熱交換器13、第2熱源21、ヒータコア23を有し、第2熱媒体を循環させる構成であれば、各構成機器の接続態様を適宜変更することができる。
【0212】
そして、冷凍サイクル30については、サイクルで汲み上げた熱を第2熱媒体に放熱可能な構成であれば、冷凍サイクル30の構成機器及び各構成機器の接続態様を適宜変更しても良い。例えば、上述した実施形態では、第1膨張弁34及び第1蒸発器35と、第2膨張弁36及び第2蒸発器37を並列に接続していたが、膨張弁及び蒸発器の数を変更しても良い。
【0213】
(d)上述した実施形態においては、放熱部46に相当する構成として、外気放熱器14、熱媒体放熱器27、冷媒放熱器41を採用し、第1熱媒体、第2熱媒体、冷媒の何れかの熱を外気に放熱していたが、この態様に限定されるものではない。放熱部46としては、第1熱媒体回路10、第2熱媒体回路20、冷媒接続部40といった循環回路から外部に放熱することができれば良く、放熱される対象を特に限定するものではない。
【0214】
本明細書に開示された車両用空調装置の特徴を以下の通り示す。
(項目1)
車両の走行に伴って熱を生じる第1熱源(11、11a)を介して、第1熱媒体を循環させる第1熱媒体回路(10)と、
発生させる熱量を調整可能な第2熱源(21、30、42)と、空調対象空間へ供給される送風空気を熱交換により加熱するヒータコア(23)とを介して、第2熱媒体を循環させる第2熱媒体回路(20)と、
前記第1熱媒体回路を循環する前記第1熱媒体と、前記第2熱媒体回路を循環する前記第2熱媒体とを熱交換させる熱媒体熱媒体熱交換器(13)と、
前記第1熱媒体回路及び前記第2熱媒体回路の動作を制御する制御部(60)と、を有する車両用空調装置。
(項目2)
前記第2熱源は、
冷媒を圧縮して吐出する圧縮機(31)と、前記圧縮機で圧縮された高圧冷媒の熱を前記第2熱媒体へ放熱させる熱媒体冷媒熱交換器(32)と、前記熱媒体冷媒熱交換器から流出した冷媒を減圧させる減圧部(34、36)と、前記減圧部から流出した冷媒を蒸発させる蒸発器(35、37)と、を有する冷凍サイクル(30)によって構成されている項目1に記載の車両用空調装置。
(項目3)
前記熱媒体熱媒体熱交換器に対して投入される熱量を調整する熱量調整部(45)と、
前記熱量調整部によって、前記熱媒体熱媒体熱交換器に投入されなかった熱量を放熱させる放熱部(46)と、を有する項目1又は2に記載の車両用空調装置。
(項目4)
前記熱量調整部(45)は、前記第1熱媒体回路において前記熱媒体熱媒体熱交換器を迂回するように前記第1熱媒体を流すバイパス流路(15)と、前記バイパス流路の側へ流れる前記第1熱媒体の流量と、前記熱媒体熱媒体熱交換器の側へ流れる前記第1熱媒体の流量を調整する流量調整部(16)と、を有し、
前記放熱部(46)は、前記第1熱媒体回路の流路に配置され、前記第1熱媒体の熱を外部に放熱させる外部放熱器(14)である項目3に記載の車両用空調装置。
(項目5)
前記熱量調整部(45)は、前記第2熱媒体回路において前記熱媒体熱媒体熱交換器を迂回するように前記第2熱媒体を流す熱媒体バイパス流路(24)と、前記熱媒体バイパス流路の側へ流れる前記第2熱媒体の流量と、前記熱媒体熱媒体熱交換器の側へ流れる前記第2熱媒体の流量を調整する熱媒体流量調整部(25)と、を有し、
前記放熱部(46)は、前記第2熱媒体回路の前記熱媒体バイパス流路に配置され、前記熱媒体バイパス流路を流れる前記第2熱媒体の熱を外部に放熱させる熱媒体放熱器(27)である項目3に記載の車両用空調装置。
(項目6)
前記熱媒体熱媒体熱交換器に対して投入される熱量を調整する熱量調整部(45)と、
前記熱量調整部によって、前記熱媒体熱媒体熱交換器に投入されなかった熱量を放熱させる放熱部(46)と、を有し、
前記熱量調整部は、前記冷凍サイクルにおいて、前記圧縮機から吐出された冷媒を、前記熱媒体冷媒熱交換器を迂回して前記減圧部に流入するように流す冷媒バイパス流路(38)と、前記冷媒バイパス流路の側へ流れる冷媒の流量と、前記熱媒体冷媒熱交換器の側へ流れる冷媒の流量を調整する冷媒流量調整部(40)と、を有し、
前記放熱部は、前記冷凍サイクルにおける前記冷媒バイパス流路に配置され、前記冷媒バイパス流路を流れる高圧冷媒の熱を外部に放熱させる冷媒放熱器(41)である項目2に記載の車両用空調装置。
(項目7)
前記制御部は、前記第1熱媒体回路における前記第1熱媒体の流れについて、
前記外部放熱器、前記第1熱源及び前記熱媒体熱媒体熱交換器を経由して前記第1熱媒体が循環する第1循環態様と、
前記熱媒体熱媒体熱交換器を介さずに、前記外部放熱器及び前記第1熱源を経由して前記第1熱媒体が循環する第2循環態様と、の何れかに切り替える項目4に記載の車両用空調装置。
(項目8)
前記制御部は、前記第1熱媒体回路における前記第1熱媒体の流れについて、
前記外部放熱器及び前記第1熱源を経由した前記第1熱媒体の一部が前記熱媒体熱媒体熱交換器を通過すると同時に、残りの部分が前記熱媒体熱媒体熱交換器を迂回して循環する第3循環態様に、切り替える項目7に記載の車両用空調装置。
(項目9)
前記制御部は、前記第1熱媒体回路における前記第1熱媒体の流れについて、
前記熱媒体熱媒体熱交換器及び前記外部放熱器を経由して前記第1熱媒体が循環する第4循環態様に切り替える項目8に記載の車両用空調装置。
(項目10)
前記第2熱源(21、30、42)は、前記第2熱媒体回路における前記第2熱媒体の流れに関して、前記熱媒体熱媒体熱交換器(13)の上流側に配置されている項目1ないし9の何れか1つに記載の車両用空調装置。
(項目11)
前記ヒータコア(23)は、前記第2熱媒体回路における前記第2熱媒体の流れに関して、前記第2熱源(21、30、42)の上流側に配置されている項目1ないし10の何れか1つに記載の車両用空調装置。
(項目12)
前記熱媒体熱媒体熱交換器(13)は、前記第2熱媒体回路における前記第2熱媒体の流れに関して、前記熱媒体バイパス流路の側への分岐部(25)よりも上流側に配置されている項目5に記載の車両用空調装置。
(項目13)
前記制御部(60)は、前記第2熱源を暖房に利用している状態から、少なくとも前記第1熱源を暖房に利用する場合に、
前記第2熱源を作動すると共に、前記第2熱媒体回路にて少なくとも前記第2熱源及び前記ヒータコアを介して前記第2熱媒体が循環している状態で、前記第1熱媒体の温度が予め定められた条件を満たすまで、前記第1熱媒体回路において、前記熱媒体熱媒体熱交換器に対する前記第1熱媒体の流通を待機し、
前記第1熱媒体の温度が予め定められた条件を満たした場合に、前記第2熱媒体回路にて少なくとも前記ヒータコア及び前記熱媒体熱媒体熱交換器を介した前記第2熱媒体の循環を行うと共に、前記第1熱媒体回路では、前記第1熱源及び前記熱媒体熱媒体熱交換器を介した前記第1熱媒体の循環を行う項目1ないし12の何れか1つに記載の車両用空調装置。
(項目14)
前記制御部(60)は、前記第1熱源が作動している状態から、前記第2熱源を利用した暖房を行う場合に、
前記第1熱源を作動すると共に、前記第1熱媒体回路にて前記第1熱源及び前記熱媒体熱媒体熱交換器を介して前記第1熱媒体が循環している状態において、前記第2熱媒体回路にて、前記第2熱源、前記ヒータコア及び前記熱媒体熱媒体熱交換器を介して、前記第2熱媒体を循環させ、
前記第2熱媒体の温度が予め定められた条件を満たした場合に、前記第1熱媒体回路における前記熱媒体熱媒体熱交換器を介した前記第1熱媒体の循環を停止して、前記第2熱媒体回路において、少なくとも前記第2熱源及び前記ヒータコアを介した前記第2熱媒体の循環を行う項目1ないし13の何れか1つに記載の車両用空調装置。
【符号の説明】
【0215】
1 車両用空調装置
10 第1熱媒体回路
11 第1熱源
11a エンジン
13 熱媒体熱媒体熱交換器
20 第2熱媒体回路
21 第2熱源
23 ヒータコア
60 制御装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16