(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024104974
(43)【公開日】2024-08-06
(54)【発明の名称】ブラケット取付装置および取付方法、ならびに搭載物の位置および姿勢の調整装置
(51)【国際特許分類】
F16M 11/20 20060101AFI20240730BHJP
E01D 19/02 20060101ALN20240730BHJP
【FI】
F16M11/20 Q
F16M11/20 T
E01D19/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023009446
(22)【出願日】2023-01-25
(71)【出願人】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】591075630
【氏名又は名称】株式会社アクティオ
(71)【出願人】
【識別番号】597094503
【氏名又は名称】巴機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082418
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 朔生
(74)【代理人】
【識別番号】100167601
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 信之
(74)【代理人】
【識別番号】100201329
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 真二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100220917
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 忠大
(72)【発明者】
【氏名】木戸 健太
(72)【発明者】
【氏名】大橋 亮介
(72)【発明者】
【氏名】古川 耕平
(72)【発明者】
【氏名】太田 八生
(72)【発明者】
【氏名】加藤 景泰
(72)【発明者】
【氏名】林 健太郎
【テーマコード(参考)】
2D059
【Fターム(参考)】
2D059AA03
2D059DD06
2D059GG55
(57)【要約】
【課題】クレーン等による揚重を用いることなく、また取付時のブラケットの位置や姿勢の調整作業の利便性にも優れる手段を提供すること。
【解決手段】構造物の所定箇所にブラケットを取り付けるためのブラケット取付装置であって、基部10、台座部20、および調整部30(昇降部31,スライド部32)を少なくとも具備する。各昇降部31および各スライド部32を個別に制御することで、基部10に対する台座部20の位置(座標)および姿勢(回転状態)を任意の態様に調整することができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造物の所定箇所にブラケットを取り付けるためのブラケット取付装置であって、
基部と、
ブラケットを搭載する、台座部と、
前記基部に対する、前記台座部の位置および姿勢を調整可能な、調整部と、
を少なくとも具備したことを特徴とする、
ブラケット取付装置。
【請求項2】
前記調整部が、
前記基部と前記台座部との間に設けた、三つの昇降部を少なくとも有し、
各昇降部の昇降長を調整することで、前記台座部の位置および姿勢を調整可能としたことを特徴とする、
請求項1に記載のブラケット取付装置。
【請求項3】
前記調整部が、
前記基部と前記台座部との間に設けた、二つのスライド部をさらに有し、
各スライド部のスライド長を調整することで、前記台座部の位置および姿勢を調整可能としたことを特徴とする、
請求項2に記載のブラケット取付装置。
【請求項4】
前記基部と前記台座部との間に設けた、安定部と、を更に具備し、
前記安定部が、
筒部と、当該筒部に収容して摺動可能な軸部とを少なくとも有し、
前記軸部の上端に、前記台座部を枢支してあることを特徴とする、
請求項3に記載のブラケット取付装置。
【請求項5】
前記基部に、前記ブラケットの取付箇所周辺まで移動するための走行機構を設けてあることを特徴とする、
請求項4に記載のブラケット取付装置。
【請求項6】
請求項1乃至5に記載のブラケット取付装置を用いて、構造物の所定箇所にブラケットを取り付けるための方法であって、
ブラケットの取付箇所周辺へと前記ブラケット取付装置を移動させるためのレールを設置し、
前記ブラケット取付装置をブラケットの取付箇所周辺まで移動させ、
前記調整部でもって、前記台座部の位置および姿勢を調整しながら、ブラケットを構造物に取り付けることを特徴とする、
ブラケットの取付方法。
【請求項7】
搭載物の位置および姿勢を調整するための調整装置であって、
基部と、
搭載物を搭載する、台座部と、
前記基部に対する、前記台座部の位置および姿勢を調整可能な、調整部と、
を少なくとも具備したことを特徴とする、
搭載物の位置および姿勢の調整装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、橋梁等の構造物の所定位置にブラケットを取り付ける為に使用する、ブラケット取付装置および、このブラケット取付装置を用いたブラケットの取付方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
橋梁工事において、ブラケットを取り付けるための装置として以下の特許文献1に記載の方法が知られている。
特許文献1では、ブラケットを吊り荷とする吊り天秤装置を用いて、ブラケットを搬送している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載の吊り天秤装置を使用するには、クレーンによる揚重が必須であり、クレーンの使用が難しい現場条件での適用が困難だった。
【0005】
また、例えば、RC造の構造物にブラケットを取り付ける場合、ブラケットを取り付けるための取付具(ボルト等)を構造物側に新たに設けるにあたって、取付具がコンクリート内部の鉄筋と干渉しないように取付位置を調整する必要が生じる。その結果、設置箇所毎に取付具の位置がバラバラとなり、その結果各ブラケットに設ける取付孔の位置も個別に対応させた特注品を用意することになる。そのため、各ブラケットの取り付け作業時のブラケットの位置や姿勢の調整も個別に行う必要が生じ、従来の方法よりも柔軟に対応可能な手段の提供が求められていた。
【0006】
よって、本発明は、クレーン等による揚重を用いることなく、また取付時のブラケットの位置や姿勢の調整作業の利便性にも優れる手段の提供を目的の一つとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決すべくなされた本願発明は、構造物の所定箇所にブラケットを取り付けるためのブラケット取付装置であって、基部と、ブラケットを搭載する、台座部と、前記基部に対する、前記台座部の位置および姿勢を調整可能な、調整部と、を少なくとも具備したことを特徴とする。
また、本願発明は、前記調整部が、前記基部と前記台座部との間に設けた、三つの昇降部を少なくとも有し、各昇降部の昇降長を調整することで、前記台座部の位置および姿勢を調整可能に構成してもよい。
また、本願発明は、前記調整部が、前記基部と前記台座部との間に設けた、二つのスライド部をさらに有し、各スライド部のスライド長を調整することで、前記台座部の位置および姿勢を調整可能に構成してもよい。
また、本願発明は、前記基部と前記台座部との間に設けた、安定部と、を更に具備し、前記安定部が、筒部と、当該筒部に収容して摺動可能な軸部とを少なくとも有し、前記軸部の上端に、前記台座部を枢支してあるように構成してもよい。
また、本願発明は、前記基部に、前記ブラケットの取付箇所周辺まで移動するための走行機構を設けておいてもよい。
また、本願発明は、前記したブラケット取付装置を用いて、構造物の所定箇所にブラケットを取り付けるための方法であって、ブラケットの取付箇所周辺へと前記ブラケット取付装置を移動させるためのレールを設置し、前記ブラケット取付装置をブラケットの取付箇所周辺まで移動させ、前記調整部でもって、前記台座部の位置および姿勢を調整しながら、ブラケットを構造物に取り付けることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、クレーン等によるブラケットの揚重を用いることなく、ブラケットの取付作業を行うことができ、また、取付時のブラケットの位置や姿勢の調整作業をより効率良く実施することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明に係るブラケット取付装置の概略斜視図。
【
図2】昇降部による台座部の動き(1)を示すイメージ図。
【
図3】昇降部による台座部の動き(2)を示すイメージ図。
【
図4】基部、スライド部およびアーム部の関係を示す概略平面図。
【
図5】スライド部による台座部の動き(1)を示すイメージ図。
【
図6】スライド部によるアーム部の動き(1)を示す概略平面図。
【
図7】スライド部による台座部の動き(2)を示すイメージ図。
【
図8】スライド部によるアーム部の動き(2)を示す概略平面図。
【
図9】本発明に係るブラケット取付装置の概略側面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら本発明の実施例について説明する。
【実施例0011】
<1>全体構成(
図1)
図1に示したブラケット取付装置(以下、単に「取付装置」ともいう。)は、基部10、台座部20、調整部30および安定部40を具備している。
図1では、橋脚の側面(取付面B)にブラケットAを取り付ける作業を想定しており、取付面Bに正対したときの前後方向をX軸方向、左右方向をY軸方向、上下方向をZ軸方向と定義している。
橋脚の周辺には、略Y軸方向を走行方向とするレールCを設置しておき、取付装置がこのレールC上を走行することで、所定の取付箇所までブラケットAを運搬する。
ブラケットAを搭載した取付装置が所定の取付箇所まで移動した後は、調整部30によってブラケットAの位置及び姿勢の調整を行って、取付面Bに設けてある取付具B1(ボルトなど)とブラケットAに設けた取付孔(図示せず)との位置合わせを行い、ブラケットAの取付作業を行う。
以下、各部の詳細について説明する。
【0012】
<2>基部(
図1)
基部10は、台座部20を相対移動させる際の基準となる部材である。
本実施例では、基部10の底面にレールC上を走行するための走行機構を設けているが、本発明において走行機構の有無は問わない。
基部10の上面には、調整部30および台座部20を設けている。
【0013】
<3>台座部(
図1)
台座部20は、ブラケットAを載置するための部材である。
台座部20は主として、ブラケットAを載置可能な平板状の部材からなり、載置後のブラケットAを固定しておくためのフックなどを別途設けている。
【0014】
<4>調整部(
図1~
図5)
調整部30は、基部10に対する台座部20の位置および姿勢を調整するための部材である。
本実施例では、三つの昇降部31と二つのスライド部32とで、調整部30を構成している。
以下、各部の詳細について説明する。
【0015】
<4.1>昇降部(
図1~
図3)
昇降部31は、基部10に対して台座部20を昇降動作させるための部材である。
昇降部31は、シリンダなどの伸縮部材を用い、伸縮方向が略Z軸方向となるように使用する。
本実施例では、三つの昇降部31を、平面視して正三角形の頂点部分に位置するように設けつつ、基部10と台座部20との間を接続している。
なお、昇降部31の端部と台座部20との連結構造はやや遊びを設けたピン連結としている。これは、後述する台座部20を任意の方向に傾斜させる動作に対応させるためである。
【0016】
当該構造により、昇降部31では、以下の動作を実現できる。
(1)台座部20の位置調整(略Z軸方向の相対移動)(
図2)
各昇降部31の昇降長が等長となるように同時に昇降させた場合には、基部10に対して台座部20が略Z軸方向に相対移動したことになる。
(2)台座部20の姿勢調整(ローリング、ピッチング)(
図3)
各昇降部31の昇降長を個別に調整することにより、台座部20を任意の方向に傾斜させることができ、あたかも、略X軸周りの回転動作(ローリング)およびまたは略Y軸周りの回転動作(ピッチング)を調整することができる。
【0017】
<4.2>スライド部(
図1,
図4~
図8)
スライド部32は、基部10に対して台座部20をスライド動作させるための部材である。
図4に示すように、本実施例では、二つのスライド部32を、後述する安定部40を略Y軸方向で挟むように配置している。
各スライド部32は、略X軸方向を長手方向にするねじ軸321と、ねじ軸321に螺合されるナット要素322からなる。
ナット要素322は、後述する筒部41の側面に一端を接続したアーム部43の他端に設けている。
【0018】
当該構造により、スライド部32では、以下の作用を実現できる。
(1)台座部20の位置調整(略X軸方向の相対移動)(
図5,
図6)
各スライド部32を構成するねじ軸321を回転させることによって、両アーム部43および両ナット要素322の前後位置が同一となるように動作させた場合には、基部10に対して台座部20および安定部40が略X軸方向に相対移動したことになる(
図5(b),
図6)。
(2)台座部20の姿勢調整(ヨーイング)(
図7,
図8)
各スライド部32を構成するねじ軸321を回転させることによって、一方のスライド部32のアーム部43を前進させ、他方のスライド部32のアーム部43を後進させた場合には、台座部20および安定部40における、略Z軸周りの回転(ヨーイング)を調整することができる(
図7(b),
図8)。
【0019】
<4.3>昇降部とスライド部の組み合わせ
このように、各昇降部31および各スライド部32を個別に制御することで、基部10に対する台座部20の位置(X軸方向およびZ軸方向の座標)および姿勢(三軸回りの回転状態)を任意の態様に調整することができる。
【0020】
<5>安定部(
図1,
図9)
安定部40は、台座部20の転倒を阻止するための部材である。
本実施例では、安定部40を、基部10の上面に設ける筒部41と、筒部41に収容して略Z軸方向に摺動可能な軸部42とで構成している。
【0021】
<5.1>枢支構造(
図9)
また、本発明では、軸部42と台座部20との間に枢支部44を介在させた構成とする。本実施例では、枢支部44を、台座部20の底部に固定可能な球体441と、軸部42の上端に設け、球体441を回転可能に収容する受け部442とで構成している。
この枢支部44を設けることにより、各昇降部31の昇降動作に伴って台座部20の位置や姿勢の変更が発生した際にも、球体441は受け部442上で任意の方向に回転するのみで足り、台座部20と軸部42との一体化は維持されることになる。
その結果、ブラケットAを搭載する台座部20の位置や姿勢の変化による重心位置の変動や、昇降部31の破損等によって、台座部20が任意の方向に倒れそうになった場合にも、台座部20と一体化されている軸部42の転倒が、筒部41によって阻止されることになる。
また、仮に全ての昇降部31が機能喪失した場合にも、台座部20は任意の方向に倒れずに真下に落下することになるため、台座部20は筒部41内の軸部42によって支持されることになる。
上記作用により、台座部20の転倒事故を防止することができる。
【0022】
<5.2>鍔部・ガイド溝(
図1)
筒部41の下端には、側方へ張り出す様に、外縁が略円形を呈する鍔部411を設けており、この鍔部411に各昇降部31の一端を接続している。
また、基部10の上面には、ブラケットAの取付箇所と対向する側を開放してある、半円形状のガイド溝を有する収容部11を設け、この収容部11へと鍔部411を収容している。
【0023】
<5.3>アーム部(
図1)
筒部41の側面には、外側に張り出すように二箇所のアーム部43を設けている。
各アーム部43の解放端側には、前述した通りスライド部321を構成するナット要素を設けている。
【0024】
<5.4>安定部の作用(
図4~
図9)
当該構造により、安定部40では以下の作用を実現できる。
(1)筒部41と軸部42による摺動機構、および軸部42と台座部20との間に設ける枢支部44を設けることにより、ブラケットAを搭載する台座部20の位置や姿勢の変化による重心位置の変動や、昇降部31の破損等に起因する、台座部20の転倒事故を阻止することができる。(
図9)
(2)円形の鍔部411を、半円形状のガイド溝からなる収容部11に収容しておくことで、スライド部32による台座部20の略X軸方向の位置調整(略X軸方向の相対移動)および姿勢調整(ヨーイング)の実施時にも、鍔部411と収容部11との間で干渉が生じない。(
図4~
図8)
(3)昇降部31およびまたはスライド部32による台座部20の位置および姿勢の調整作業の前後を問わず、鍔部411のうち少なくとも一部は、必ず収容部11に収容された状態を維持しているため、ブラケットAを搭載する台座部20の位置や姿勢の変化によって重心位置が変動しても、台座部20を支持する安定部40(筒部41)がバランスを崩して転倒することがない。(
図4~
図8)
上記した実施例1では、台座部への搭載物としてブラケットを想定していたが、例えば何らかの物体(重量物など)を搭載物として所定の位置および姿勢に調整・保持したい場合にも、本発明に係るブラケット取付装置を、搭載物の位置および姿勢の調整装置として転用することができる。
また、上記した実施例1では、橋脚に別途設置したレールを走行可能な走行機構を基部に設けていたが、例えば、基部に車輪を設けて、地上を自走可能な構成としてもよい。