(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024104975
(43)【公開日】2024-08-06
(54)【発明の名称】車両用熱交換器
(51)【国際特許分類】
H01M 10/6556 20140101AFI20240730BHJP
H01M 10/613 20140101ALI20240730BHJP
H01M 10/615 20140101ALI20240730BHJP
H01M 10/625 20140101ALI20240730BHJP
H01M 10/6568 20140101ALI20240730BHJP
【FI】
H01M10/6556
H01M10/613
H01M10/615
H01M10/625
H01M10/6568
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023009447
(22)【出願日】2023-01-25
(71)【出願人】
【識別番号】000152826
【氏名又は名称】株式会社日本クライメイトシステムズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 雄大
(72)【発明者】
【氏名】嘉本 啓悟
【テーマコード(参考)】
5H031
【Fターム(参考)】
5H031AA09
5H031KK08
(57)【要約】
【課題】異種材料を用いることによってバッテリの温度調整の効率が高い熱交換器を構成する場合に、内部を流通する熱交換媒体の漏出を防止する。
【解決手段】バッテリの外面に接触する第1流路構成プレート10と、バッテリと反対側に接合された第2流路構成プレート20との間に、熱交換媒体が流通可能な流路が設けられている。第1流路構成プレート10には、金属材料からなり、バッテリの外面に沿って延びる板状に形成されるとともに流路の壁部を構成する伝熱促進部11~15が設けられている。第1流路構成プレート10における伝熱促進部11~15の周囲には、金属材料よりも熱伝導率の低い樹脂材料からなる放熱抑制部16が設けられている。第2流路構成プレート20は、金属材料よりも熱伝導率の低い樹脂材料で構成されている。第1流路構成プレート10と第2流路構成プレート20とは溶着されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載された走行用モータへ電力を供給するバッテリの温度調整に用いられる車両用熱交換器であって、
前記バッテリの外面に接触する接触部分を有する第1流路構成プレートと、当該第1流路構成プレートの前記バッテリと反対側に接合された第2流路構成プレートとの間には、液状の熱交換媒体が流通可能な流路が設けられ、
前記第1流路構成プレートにおける前記接触部分は、金属材料からなり、前記バッテリの外面に沿って延びる板状に形成されるとともに前記流路の壁部を構成する伝熱促進部とされ、
前記第1流路構成プレートにおける前記伝熱促進部の周囲には、前記金属材料よりも熱伝導率の低い樹脂材料からなる放熱抑制部が設けられ、
前記第2流路構成プレートは、前記金属材料よりも熱伝導率の低い樹脂材料で構成され、
前記第1流路構成プレートの前記放熱抑制部と前記第2流路構成プレートとは、前記流路の周囲に位置する部分同士が溶着されていることを特徴とする車両用熱交換器。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用熱交換器において、
前記伝熱促進部は、前記放熱抑制部にインサート成形されていることを特徴とする車両用熱交換器。
【請求項3】
請求項1に記載の車両用熱交換器において、
前記第1流路構成プレートの前記放熱抑制部と前記第2流路構成プレートとは、振動溶着または超音波溶着されていることを特徴とする車両用熱交換器。
【請求項4】
請求項1に記載の車両用熱交換器において、
前記第2流路構成プレートには、前記流路の上流側部分に連通し、熱交換媒体を前記流路に供給するための入口パイプ部が前記樹脂材料により一体成形されていることを特徴とする車両用熱交換器。
【請求項5】
請求項1に記載の車両用熱交換器において、
前記第2流路構成プレートには、前記流路の下流側部分に連通し、熱交換媒体を前記流路から排出するための出口パイプ部が前記樹脂材料により一体成形されていることを特徴とする車両用熱交換器。
【請求項6】
請求項1に記載の車両用熱交換器において、
前記第1流路構成プレートの前記伝熱促進部は、前記バッテリの底面に接触するように配置されるとともに、前記底面に沿った所定方向に長い形状とされ、
前記第2流路構成プレートは、前記第1流路構成プレートの下に配置され、前記所定方向に延びるように形成されていることを特徴とする車両用熱交換器。
【請求項7】
請求項6に記載の車両用熱交換器において、
前記第1流路構成プレートと前記第2流路構成プレートとの間には、前記所定方向に延びる複数の前記流路が前記所定方向と直交する方向に互いに間隔をあけて設けられ、
前記第1流路構成プレートには、複数の前記流路に対応するように、複数の前記伝熱促進部が前記所定方向と直交する方向に互いに間隔をあけて設けられていることを特徴とする車両用熱交換器。
【請求項8】
請求項7に記載の車両用熱交換器において、
前記第1流路構成プレートと前記第2流路構成プレートとの間には、外部から流入する熱交換媒体を複数の前記流路に分流させるための分流空間が設けられていることを特徴とする車両用熱交換器。
【請求項9】
請求項8に記載の車両用熱交換器において、
前記第1流路構成プレートと前記第2流路構成プレートとの間には、複数の前記流路を流通した熱交換媒体を合流させて外部へ流出させるための合流空間が設けられていることを特徴とする車両用熱交換器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両に搭載されるバッテリの温度調整を行う車両用熱交換器に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば電気自動車には、走行用モータに電力を供給する高電圧バッテリが補機用バッテリとは別に搭載されている。高電圧バッテリは、充放電時に発生する熱で高温状態になると電力供給が困難になったり、寿命が短くなったりするので、熱交換器によって冷却するようにしている。また、高電圧バッテリが極低温状態になると充放電性能が極端に低下するため、熱交換器によって加温することも行われている。
【0003】
例えば特許文献1には、液状媒体によってバッテリモジュールを冷却する冷却機構が開示されている。この冷却機構には、隔壁部とカバープレートとによって構成された冷媒流路が設けられており、液状媒体が冷媒流路を流通する間に液状媒体とバッテリモジュールとが熱交換し、バッテリモジュールの冷却が行われるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、バッテリの冷却または加温時には、熱交換媒体との間で効率良く熱交換させる必要があるため、熱交換器の材料は、熱伝導率の高い金属材が適している。しかしながら、熱交換器の全体を熱伝導率の高い金属材で構成すると、バッテリとの接触部分以外を介した熱ロスが大きくなる。特に、電気自動車の場合は、バッテリがフロア下の車外に配設される場合が多く、熱ロスが大きくなりがちであり、ひいては、バッテリの温度調整の効率が低下してしまう。
【0006】
そこで、バッテリとの接触部分を熱伝導率の高い金属材で構成し、それ以外の部分を熱伝導率の低い材料で構成することが考えられる。しかし、流路を形成する必要があることから、特許文献1のように複数の部材を組み合わせて熱交換器を構成しなければならない。つまり、異種材料を用い、かつ、複数の部材を組み合わせた場合に、如何にして熱交換媒体が漏出しないようにするかが問題となる。
【0007】
本開示は、かかる点に鑑みたものであり、その目的とするところは、異種材料を用いることによってバッテリの温度調整の効率が高い熱交換器を構成する場合に、内部を流通する熱交換媒体の漏出を防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本開示の一態様では、車両に搭載された走行用モータへ電力を供給するバッテリの温度調整に用いられる車両用熱交換器を前提とすることができる。前記バッテリの外面に接触する接触部分を有する第1流路構成プレートと、当該第1流路構成プレートの前記バッテリと反対側に接合された第2流路構成プレートとの間には、液状の熱交換媒体が流通可能な流路が設けられている。前記第1流路構成プレートにおける前記接触部分は、金属材料からなり、前記バッテリの外面に沿って延びる板状に形成されるとともに前記流路の壁部を構成する伝熱促進部とされている。前記第1流路構成プレートにおける前記伝熱促進部の周囲には、前記金属材料よりも熱伝導率の低い樹脂材料からなる放熱抑制部が設けられている。前記第2流路構成プレートは、前記金属材料よりも熱伝導率の低い樹脂材料で構成されている。前記第1流路構成プレートの前記放熱抑制部と前記第2流路構成プレートとは、前記流路の周囲に位置する部分同士が溶着されている。
【0009】
この構成によれば、バッテリの外面に接触する伝熱促進部が流路の壁部を構成しているので、流路を流れる熱交換媒体の熱は伝熱促進部を介してバッテリに伝わりやすくなる。このとき、伝熱促進部が金属材料からなるものなので、例えばアルミニウム合金等の熱伝達率の高い材料とすることが可能になり、その結果、熱交換媒体とバッテリとが伝熱促進部を介して効率良く熱交換する。
【0010】
一方、第1流路構成プレートにおける伝熱促進部の周囲は、金属材料よりも熱伝導率の低い樹脂材料で構成された放熱抑制部とされているので、熱交換媒体の熱が伝熱促進部以外の部分から逃げ難くなる。さらに、第2流路構成プレートも、金属材料よりも熱伝導率の低い樹脂材料で構成されているので、熱交換媒体の熱が第2流路構成プレートからも逃げ難くなる。
【0011】
また、第1流路構成プレートの放熱抑制部と第2流路構成プレートとが共に樹脂材料であることから、第1流路構成プレートの放熱抑制部における流路の周囲に位置する部分と、第2流路構成プレートにおける流路の周囲に位置する部分とを溶着することで、第1流路構成プレートと第2流路構成プレートとの合わせ部がシールされる。これにより、第1流路構成プレートと第2流路構成プレートとの合わせ部から熱交換媒体が漏出しなくなる。
【0012】
金属材料からなる伝熱促進部を樹脂材料からなる放熱抑制部にインサート成形することもできる。これにより、異種材料からなる各部を一体成形できるともに、伝熱促進部と放熱抑制部との間のシール性を確保して熱交換媒体の漏出を防止できる。
【0013】
第1流路構成プレートの放熱抑制部と第2流路構成プレートとは、振動溶着または超音波溶着することができる。これにより、第1流路構成プレートと第2流路構成プレートとを全周に亘って確実に溶着できる。
【0014】
第2流路構成プレートには、流路の上流側部分に連通し、熱交換媒体を流路に供給するための入口パイプ部が樹脂材料により一体成形されていてもよいし、流路の下流側部分に連通し、熱交換媒体を流路から排出するための出口パイプ部が樹脂材料により一体成形されていてもよい。これにより、部品点数の増加を招くことなく、入口パイプ部や出口パイプ部を設けることができる。また、入口パイプ部と第2流路構成プレートとの接続部分や、出口パイプ部と第2流路構成プレートとの接続部分からの熱交換媒体の漏出を防止できる。
【0015】
前記第1流路構成プレートの前記伝熱促進部が前記バッテリの底面に接触するように配置され、前記底面に沿った所定方向に長い形状とされていてもよい。この場合、前記第2流路構成プレートは、前記第1流路構成プレートの下に配置され、前記所定方向に延びるように形成することができる。
【0016】
前記第1流路構成プレートと前記第2流路構成プレートとの間には、前記所定方向に延びる複数の前記流路が前記所定方向と直交する方向に互いに間隔をあけて設けられ、前記第1流路構成プレートには、複数の前記流路に対応するように、複数の前記伝熱促進部が前記所定方向と直交する方向に互いに間隔をあけて設けられている設けられていてもよい。これにより、1つの熱交換器でバッテリの複数箇所の温度調整が可能になる。
【0017】
前記第1流路構成プレートと前記第2流路構成プレートとの間には、外部から流入する熱交換媒体を複数の前記流路に分流させるための分流空間が設けられていてもよい。これにより、例えば分流空間の1箇所に熱交換媒体を流入させるだけで、各流路に熱交換媒体を分流させることができる。
【0018】
また、前記第1流路構成プレートと前記第2流路構成プレートとの間には、複数の前記流路を流通した熱交換媒体を合流させて外部へ流出させるための合流空間が設けられていてもよい。これにより、複数の流路を流通した熱交換媒体を合流空間で合流させて例えば1箇所から外部へ流出させることができる。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したように、バッテリの外面に接触する伝熱促進部を金属材料で構成し、他の部分を熱伝導率の低い樹脂材料で構成したのでバッテリの温度調整の効率が高い熱交換器とすることができ、さらに、第1流路構成プレートの樹脂部分と第2流路構成プレートとを溶着することで、流路を流通する熱交換媒体の漏出を未然に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の実施形態に係る車両用熱交換器の斜視図である。
【
図3】バッテリ用温度調整装置の概略構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0022】
図1は、本発明の実施形態に係る車両用熱交換器1の斜視図であり、
図2は、車両用熱交換器1の分解図である。
図3は、車両用熱交換器1を備えたバッテリ用温度調整装置100の概略構造を示す図である。バッテリ用温度調整装置100は、例えば自動車等の車両に搭載されているバッテリBの温度調整に用いられるものである。バッテリBは、自動車に搭載された走行用モータ(図示せず)へ電力を供給するバッテリであり、一般の補機用バッテリに比べて高電圧かつ大容量に構成されている。バッテリBは、例えば自動車のフロアパネルの下の車外に配設されている。バッテリBの底面は、水平方向に延びるように形成されている。このバッテリBは、複数のセルを有するバッテリユニットで構成されていてもよい。バッテリBの種類は特に限定されるものではないが、例えばリチウムイオンバッテリ等を挙げることができる。尚、バッテリBは、例えば車室内や荷室等に配設されていてもよい。
【0023】
自動車は、内燃機関を搭載しない電気自動車であってもよいし、内燃機関と走行用モータの両方を搭載するハイブリッド自動車であってもよい。ハイブリッド自動車の場合、プラグインハイブリッド自動車であってもよい。電気自動車及びプラグインハイブリッド自動車の場合、外部の充電設備から充電することや、走行用モータからの回生によって充電することができる。
【0024】
バッテリ用温度調整装置100は、液状の熱交換媒体を用いてバッテリBの温度調整を行うように構成されている。熱交換媒体としては、例えばクーラント液等を挙げることができるが、これに限られるものではなく、流動性を有する熱交換媒体であればよい。バッテリ用温度調整装置100は、車両用熱交換器1の他に、熱交換媒体の温度調整を行う温度調整部101と、熱交換媒体を送るポンプ102と、入口側配管103と、出口側配管104と、中間配管105とを有している。ポンプ102の吐出側が入口側配管103を介して車両用熱交換器1の入口側に接続されている。また、車両用熱交換器1の出口側が出口側配管104を介して温度調整部101に接続されている。温度調整部101とポンプ102の吸入側とは、中間配管105を介して接続されている。これにより、車両用熱交換器1、温度調整部101及びポンプ102が接続され、熱交換媒体の循環が可能な循環経路が構成されている。
【0025】
温度調整部101は、例えば外部空気と熱交換媒体とを熱交換させて熱交換媒体を冷却する熱交換器で構成されていてもよいし、熱交換媒体を加温するヒータ等で構成されていてもよいし、熱交換媒体の冷却と加温の両方が行える装置等で構成されていてもよい。また、図示しないが、熱交換媒体を冷却するための温度調整部と、熱交換媒体を加温するための温度調整部とが別々に設けられていてもよい。バッテリBを冷却する場合には、温度調整部101によって熱交換媒体を冷却し、一方、バッテリBを加温する場合には、温度調整部101によって熱交換媒体を加温する。温度調整部101は、図示しない制御部によって制御される。制御部は、バッテリBの温度状態、バッテリBの充放電状態を検出し、バッテリBの温度範囲が適切な範囲内となるように、温度調整部101を制御する。
【0026】
ポンプ102も制御部によって制御される。制御部は、バッテリBの温度状態、バッテリBの充放電状態を検出し、バッテリBの温度範囲が適切な範囲内となるように、ポンプ102を制御する。
【0027】
車両用熱交換器1は、バッテリBと熱交換媒体との間で熱交換させ、バッテリBの温度範囲が適切な範囲内となるように、当該バッテリBの温度調整に用いられるものである。車両用熱交換器1をバッテリBの下に配設した場合には、バッテリBを下から温度調整することができるが、これに限らず、車両用熱交換器1をバッテリBの上に配設してもよいし、バッテリBの側方に配設してもよい。また、バッテリBを上下に挟むように複数の車両用熱交換器1を配設してもよい。また、複数の車両用熱交換器1を直列または並列に接続して使用してもよい。「直列」とは、熱交換媒体の流れ方向に複数の車両用熱交換器1を配列して接続することであり、「並列」とは、熱交換媒体が同時に複数の車両用熱交換器1に流入するように、車両用熱交換器1を配列して接続することである。
【0028】
本実施形態では、バッテリBの下に車両用熱交換器1が配設されている場合について説明する。車両用熱交換器1は、当該車両用熱交換器1の上側に配置される上側流路構成プレート(第1流路構成プレート)10と、当該車両用熱交換器1の下側に配置される下側流路構成プレート(第2流路構成プレート)20とを備えている。バッテリBの下に車両用熱交換器1が配設されるので、上側流路構成プレート10がバッテリBの底面(外面)に接触する接触部分を有する部材であり、一方、下側流路構成プレート20が上側流路構成プレート10の下に配置され、当該上側流路構成プレート10の下側(バッテリBと反対側)に接合された部材である。
【0029】
また、車両用熱交換器1には、ポンプ102から送給された熱交換媒体を当該車両用熱交換器1の内部に流入させるための入口パイプ部30と、熱交換媒体を車両用熱交換器1の外部へ流出させるための出口パイプ部40とが設けられている。この実施形態では、入口パイプ部30が設けられている側を正面とし、出口パイプ部40が設けられている側を背面とする。説明の便宜を図るために、正面を車両前側とし、背面を車両後側とし、さらに、車両前側に向かって見た時に右となる側を右側とし、左になる側を左側とする。車両の左右方向は幅方向と一致している。この方向の定義は、車両用熱交換器1を自動車に搭載した時の方向を限定するものではなく、前後方向が反対になるように車両に搭載してもよいし、左右方向が車両前後方向に向くように搭載してもよい。
【0030】
図4~
図8にも示すように、車両用熱交換器1は全体として、バッテリBの底面に沿うように前後方向(所定方向)に長い矩形状をなしており、従って、上側流路構成プレート10及び下側流路構成プレート20は共に前後方向に延びるように形成される。また、前後方向に長い形状であることから、車両用熱交換器1の前後方向の寸法は、左右方向の寸法よりも短くなる。尚、車両用熱交換器1は左右方向に長い形状であってもよいし、前後方向の寸法と左右方向の寸法とが同じ形状であってもよい。
【0031】
図9に示すように、上側流路構成プレート10と下側流路構成プレート20との間には、熱交換媒体が流通可能な第1流路R1、第2流路R2、第3流路R3、第4流路R4及び第5流路R5が設けられている。第1~第5流路R1~R5は、前後方向に延びており、前後方向と直交する左右方向に互いに間隔をあけて設けられている。第1~第5流路R1~R5の長さ(前後方向の寸法)は同一とされ、また、第1~第5流路R1~R5の幅(左右方向の寸法)も同一とされている。さらに、第1~第5流路R1~R5の上下方向の寸法も同一とされている。
【0032】
尚、熱交換媒体が流通可能な流路の数は、5つに限られるものではなく、4つ以下または6つ以上の任意の数であってもよく、例えば1つの流路のみ有する構造であってもよい。また、複数の流路を設ける場合には、全ての流路の長さが同じでなくてもよく、長さの異なる流路を設けてもよい。また、全ての流路の幅が同じでなくてもよく、幅の異なる流路を設けてもよい。
【0033】
上側流路構成プレート10は、バッテリBの底面に接触する接触部分を有しており、当該接触部分を介して熱交換媒体とバッテリBとの間で熱交換させるようにしている。上側流路構成プレート10における接触部分は、第1伝熱促進部11、第2伝熱促進部12、第3伝熱促進部13、第4伝熱促進部14及び第5伝熱促進部15とされている。第1~第5伝熱促進部11~15は、例えばアルミニウム合金等の熱伝導率の高い金属材料からなる部分であり、バッテリBの底面に沿って前後方向に延びる細長い板状に形成されている。第1~第5伝熱促進部11~15は、それぞれ、第1~第5流路R1~R5に対応するように、左右方向に互いに間隔をあけて設けられている。
【0034】
第1伝熱促進部11は、第1流路R1の上側の壁部を構成する部分であり、第1伝熱促進部11の下面が第1流路R1に臨んでいる。これにより、第1流路R1を流れる熱交換媒体が第1伝熱促進部11の下面に接することになり、熱伝導率の高い第1伝熱促進部11を介してバッテリBと効率良く熱交換可能になる。同様に、第2~第5伝熱促進部12~15は、それぞれ第2~第5流路R2~R5の上側の壁部を構成する部分であり、第2~第5伝熱促進部12~15の下面が第2~第5流路R2~R5に臨んでいる。
【0035】
上側流路構成プレート10における第1~第5伝熱促進部11~15の周囲には、当該伝熱促進部11~15を構成している金属材料よりも熱伝導率の低い樹脂材料からなる放熱抑制部16が設けられている。この樹脂材料は、熱交換媒体による腐食や劣化、熱による劣化等が起こらないように構成された材料であり、熱伝導率がアルミニウム合金の1/1000程度に設定されている。
【0036】
放熱抑制部16は、上側流路構成プレート10の周囲に全周に亘って環状に設けられた外周部16aと、隣合う第1~第5伝熱促進部11~15の間に介在する中間部16bとで構成されている。中間部16bは、第1伝熱促進部11と第2伝熱促進部12との間に位置して前後方向に延びる部分と、第2伝熱促進部12と第3伝熱促進部13との間に位置して前後方向に延びる部分と、第3伝熱促進部13と第4伝熱促進部14との間に位置して前後方向に延びる部分と、第4伝熱促進部14と第5伝熱促進部15との間に位置して前後方向に延びる部分とを含んでいる。中間部16bの前側部分が外周部16aの前側部分と一体化され、また、中間部16bの後側部分が外周部16aの後側部分と一体化されている。
【0037】
第1伝熱促進部11には、放熱抑制部16に埋め込まれる第1埋設部11aが設けられている。第1埋設部11aは、第1伝熱促進部11の周縁部の全周に亘って設けられていて、第1伝熱促進部11における第1埋設部11a以外の部分に比べて下に位置している。第1伝熱促進部11における第1埋設部11a以外の部分は、バッテリBの底面に接触する第1接触部11bである。第1接触部11bは、放熱抑制部16の上面よりも上に位置付けられている。
【0038】
第2伝熱促進部12も第1伝熱促進部11と同様に、放熱抑制部16に埋め込まれる第2埋設部12aと、バッテリBの底面に接触する第2接触部12bとを有している。第2埋設部12aと第1埋設部11aとは、左右方向に離れており、第2埋設部12aと第1埋設部11aとの間に、放熱抑制部16の中間部16bが位置している。
【0039】
また、第3伝熱促進部13も、放熱抑制部16に埋め込まれる第3埋設部13aと、バッテリBの底面に接触する第3接触部13bとを有している。また、第4伝熱促進部14も、放熱抑制部16に埋め込まれる第4埋設部14aと、バッテリBの底面に接触する第4接触部14bとを有している。また、第5伝熱促進部15も、放熱抑制部16に埋め込まれる第5埋設部15aと、バッテリBの底面に接触する第5接触部15bとを有している。第2埋設部12aと第3埋設部13aとの間、第3埋設部13aと第4埋設部14aとの間、第4埋設部14aと第5埋設部15aとの間には、それぞれ、放熱抑制部16の中間部16bが位置している。
【0040】
第1~第5伝熱促進部11~15は、放熱抑制部16にインサート成形されている。具体的には、開閉動作可能な射出成形金型を用意し、両金型を開いた後に、第1~第5伝熱促進部11~15を一方の金型の内面に固定してから両金型を閉じる。その後、溶融状態の樹脂材料を金型内に射出することで、当該樹脂材料が固化する際に第1~第5伝熱促進部11~15と一体化し、放熱抑制部16が成形される。尚、上側流路構成プレート10の成形方法は上述した方法に限られるものではなく、例えば放熱抑制部16を樹脂材料で成形した後、第1~第5伝熱促進部11~15と放熱抑制部16とを一体化する方法であってもよい。
【0041】
また、必要に応じて、第1~第5伝熱促進部11~15のうち、任意の1つ以上を省略することもできる。例えばバッテリBの形状や配置等により、第3伝熱促進部13の上にバッテリBが存在しない場合には、成形時に第3伝熱促進部13を金型に固定することなく、樹脂製の入子(図示せず)を用意して当該入子を金型に固定し、その後、溶融状態の樹脂材料を金型内に射出する。これにより、第3伝熱促進部13の無い上側流路構成プレート10を得ることができる。
【0042】
下側流路構成プレート20は、第1~第5伝熱促進部11~15を構成する金属材料よりも熱伝導率の低い樹脂材料で構成されている。下側流路構成プレート20を構成する樹脂材料と、上側流路構成プレート10の放熱抑制部16を構成する樹脂材料とは同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0043】
下側流路構成プレート20は、第1~第5流路R1~R5の底壁を構成する底壁部21と、底壁部21の周縁部から上方向及び下方向に突出して当該底壁部21の周方向に連続して延びる周壁部22とを有している。周壁部22の内側に第1~第5流路R1~R5が形成されるので、周壁部22は、第1~第5流路R1~R5の周囲に位置する部分である。周壁部22の上端部は、外方へ向けて突出するとともに当該底壁部21の周方向に連続して環状に延びる突出部22aを有している。突出部22aは、放熱抑制部16の外周部16aに重なるように形成されている。突出部22aの上側部分が、放熱抑制部16の外周部16aの下側部分に溶着されている。つまり、上側流路構成プレート10の放熱抑制部16と下側流路構成プレート20とは、第1~第5流路R1~R5の周囲に位置する部分同士が溶着されている。
【0044】
底壁部21の上側には、第1区画壁部23、第2区画壁部24、第3区画壁部25及び第4区画壁部26が上方へ突出するように設けられている。第1区画壁部23、第2区画壁部24、第3区画壁部25及び第4区画壁部26は、第1~第5伝熱促進部11~15の間隔に対応するように、左右方向に間隔をあけて配置されるとともに、前後方向に延びている。第1区画壁部23、第2区画壁部24、第3区画壁部25及び第4区画壁部26は互いに平行である。第1区画壁部23の上側部分は、放熱抑制部16の中間部16bにおける第1伝熱促進部11と第2伝熱促進部12との間に溶着されている。第2区画壁部24の上側部分は、放熱抑制部16の中間部16bにおける第2伝熱促進部12と第3伝熱促進部13との間に溶着されている。第3区画壁部25の上側部分は、放熱抑制部16の中間部16bにおける第3伝熱促進部13と第4伝熱促進部14との間に溶着されている。第4区画壁部26の上側部分は、放熱抑制部16の中間部16bにおける第4伝熱促進部14と第5伝熱促進部15との間に溶着されている。
【0045】
周壁部22の左側部分と第1区画壁部23との間に第1流路R1が区画形成され、第1区画壁部23と第2区画壁部24との間に第2流路R2が区画形成され、第2区画壁部24と第3区画壁部25との間に第3流路R3が区画形成され、第3区画壁部25と第4区画壁部26との間に第4流路R4が区画形成され、第4区画壁部25と周壁部22の右側部分との間に第5流路R5が区画形成されている。
【0046】
底壁部21の下側には、第1リブ21a、第2リブ21b、第3リブ21c及び第4リブ21dが下方へ突出するように設けられている。第1リブ21a、第2リブ21b、第3リブ21c及び第4リブ21dは互いに平行である。第1リブ21aは、第1区画壁部23の真下に位置付けられており、前後方向に延びている。また、第2リブ21bは、第2区画壁部24の真下に位置付けられており、第1リブ21aと同様に前後方向に延びている。また、第3リブ21cは、第3区画壁部25の真下に位置付けられており、第1リブ21aと同様に前後方向に延びている。また、第4リブ21dは、第4区画壁部26の真下に位置付けられており、第1リブ21aと同様に前後方向に延びている。
【0047】
第1リブ21a、第2リブ21b、第3リブ21c及び第4リブ21dの厚みは、第1区画壁部23、第2区画壁部24、第3区画壁部25及び第4区画壁部26の厚みよりも薄く設定されている。尚、第1リブ21a、第2リブ21b、第3リブ21c及び第4リブ21dは必要に応じて設ければよく、省略してもよい。
【0048】
図2、
図6や
図7に示すように、上側流路構成プレート10と下側流路構成プレート20との間における前側部分には、車両用熱交換器1の外部から流入する熱交換媒体を第1~第5流路R1~R5に分流させるための分流空間S1が設けられている。分流空間S1は、左右方向に長く延びるように形成されており、分流空間S1の左側部分は第1流路R1の上流側に連通し、分流空間S1の右側部分は第5流路R5の上流側に連通している。分流空間S1の左右方向中間部は、第2~第4流路R2~R4の上流側に連通している。
【0049】
下側流路構成プレート20の底壁部21の前側部分には、分流空間S1を形成するための前側膨出部(上流側膨出部)21eが下方へ膨出するように形成されている。従って、分流空間S1の上下方向の寸法は、第1~第5流路R1~R5の上下方向の寸法よりも長く設定されている。また、前側膨出部21eの左側部分は周壁部22の左側部分に達しており、また、前側膨出部21eの右側部分は周壁部22の右側部分に達している。
【0050】
下側流路構成プレート20には、熱交換媒体を第1~第5流路R1~R5に供給するための入口パイプ部30が、当該下側流路構成プレート20を構成している樹脂材料により一体成形されている。入口パイプ部30を一体成形することにより、入口パイプ部30の下側流路構成プレート20に対する相対的な位置精度を高めることができる。
【0051】
入口パイプ部30は、周壁部22の前側部分における左寄りの部位から前方へ向けて突出している。入口パイプ部30の下流側は、分流空間S1を介して第1~第5流路R1~R5と連通している。入口パイプ部30の上流側には、
図3に示す入口側配管103の下流側が接続されている。入口パイプ部30が左寄りに位置しているため、入口パイプ部30から流入する熱交換媒体は分流空間S1の左寄りの部分に流入することになる。尚、入口パイプ部30は、右寄りに形成されていてもよいし、左右方向中間部に形成されていてもよい。
【0052】
一方、上側流路構成プレート10と下側流路構成プレート20との間における後側部分には、第1~第5流路R1~R5を流通した熱交換媒体を合流させて車両用熱交換器1の外部へ流出させるための合流空間S2が設けられている。合流空間S2は、分流空間S1と同様に、左右方向に長く延びるように形成されており、合流空間S2の左側部分は第1流路R1の下流側に連通し、合流空間S2の右側部分は第5流路R5の下流側に連通している。合流空間S2の左右方向中間部は、第2~第4流路R2~R4の下流側に連通している。
【0053】
下側流路構成プレート20の底壁部21の後側部分には、合流空間S2を形成するための後側膨出部(下流側膨出部)21fが下方へ膨出するように形成されている。従って、合流空間S2の上下方向の寸法は、第1~第5流路R1~R5の上下方向の寸法よりも長く設定されている。また、後側膨出部21fの左側部分は周壁部22の左側部分に達しており、また、後側膨出部21fの右側部分は周壁部22の右側部分に達している。
【0054】
下側流路構成プレート20には、熱交換媒体を第1~第5流路R1~R5から排出するための出口パイプ部40が、当該下側流路構成プレート20を構成している樹脂材料により一体成形されている。出口パイプ部40は、周壁部22の後側部分における右寄りの部位から後方へ向けて突出している。出口パイプ部40の上流側は、合流空間S2を介して第1~第5流路R1~R5と連通している。出口パイプ部40の上流側には、
図3に示す出口側配管104の下流側が接続されている。出口パイプ部40が右寄りに位置しているため、合流空間S2の右寄りの部分から熱交換媒体が流出することになる。尚、出口パイプ部40は、左寄りに形成されていてもよいし、左右方向中間部に形成されていてもよいが、出口パイプ部40と入口パイプ部30とは左右方向について互いに反対側に位置するように設けられているのが好ましい。
【0055】
(上側流路構成プレート10と下側流路構成プレート20との溶着)
上側流路構成プレート10と下側流路構成プレート20とは振動溶着または超音波溶着することができる。振動溶着する場合には、上側流路構成プレート10と下側流路構成プレート20の一方を固定した後、振動溶着機(図示せず)を用いて、他方を一方に対して相対的に振動させる。超音波溶着する場合には、上側流路構成プレート10と下側流路構成プレート20の一方を固定した後、超音波溶着機(図示せず)を用いて、他方を一方に対して相対的に振動させる。
【0056】
他方を一方に対して振動させることにより、下側流路構成プレート20の突出部22aの上側部分と、上側流路構成プレート10の放熱抑制部16の外周部16aの下側部分とが溶融していく。溶融量が所定量になった段階で振動を停止して冷却することで、溶融していた樹脂が固化し、突出部22aの上側部分と外周部16aの下側部分とが溶着した状態になる。これにより、上側流路構成プレート10と下側流路構成プレート20とを全周に亘って確実に溶着できる。
【0057】
このとき、第1区画壁部23、第2区画壁部24、第3区画壁部25及び第4区画壁部26の上側部分が、放熱抑制部16の中間部16bに溶着されて第1~第5流路R1~R5が区画形成される。尚、第1区画壁部23、第2区画壁部24、第3区画壁部25及び第4区画壁部26の溶着は必要に応じて行えばよく、溶着しなくてもよい。
【0058】
溶着時に発生する熱は局所的なものなので、上側流路構成プレート10及び下側流路構成プレート20に生じる熱負荷は小さくなる。よって、上側流路構成プレート10及び下側流路構成プレート20の寸法安定性が向上する。
【0059】
(実施形態の作用効果)
ポンプ102から送給された熱交換媒体は、車両用熱交換器1の入口パイプ部30から分流空間S1に流入した後、第1~第5流路R1~R5に分流する。第1~第5流路R1~R5に分流した熱交換媒体は、第1~第5流路R1~R5内を流通する間に、第1~第5伝熱促進部11~15を介してバッテリBと熱交換する。熱交換媒体がバッテリBの温度よりも低温であればバッテリBを冷却することができ、一方、熱交換媒体がバッテリBの温度よりも高温であればバッテリBを加温することができる。これにより、バッテリBの温度調整が可能になる。このとき、第1~第5伝熱促進部11~15は、熱伝導率の高い金属材料からなる部分なので、熱交換媒体とバッテリBとが第1~第5伝熱促進部11~15を介して効率良く熱交換する。
【0060】
第1~第5流路R1~R5内を流通した熱交換媒体は、合流空間S2に流入して合流した後、出口パイプ部40から出口側配管104に流入する。熱交換媒体が車両用熱交換器1の内部を流れている間、上側流路構成プレート10における第1~第5伝熱促進部11~15の周囲は、金属材料よりも熱伝導率の低い樹脂材料で構成された放熱抑制部16とされているので、熱交換媒体の熱が伝熱促進部11~15以外の部分から逃げ難くなる。さらに、下側流路構成プレート20も、金属材料よりも熱伝導率の低い樹脂材料で構成されているので、熱交換媒体の熱が下側流路構成プレート20からも逃げ難くなる。特に、車両用熱交換器1が自動車の外部に設置されている場合には、外気と熱交換媒体との熱交換を抑制することができるので、バッテリBの温度調節が効率良く行える。
【0061】
上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0062】
以上説明したように、本発明に係る車両用熱交換器は、例えば車両に搭載されるバッテリの温度調整を行う場合に利用できる。
【符号の説明】
【0063】
1 車両用熱交換器
10 上側流路構成プレート(第1流路構成プレート)
11~15 第1~第5伝熱促進部
16 放熱抑制部
20 下側流路構成プレート(第2流路構成プレート)
30 入口パイプ部
40 出口パイプ部
S1 分流空間
S2 合流空間
B バッテリ