(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024104977
(43)【公開日】2024-08-06
(54)【発明の名称】薬品トレー供給ユニット及び台車
(51)【国際特許分類】
A61J 3/00 20060101AFI20240730BHJP
【FI】
A61J3/00 310K
A61J3/00 310E
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023009449
(22)【出願日】2023-01-25
(71)【出願人】
【識別番号】000151472
【氏名又は名称】株式会社トーショー
(74)【代理人】
【識別番号】100127111
【弁理士】
【氏名又は名称】工藤 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100204456
【弁理士】
【氏名又は名称】調 敏郎
(72)【発明者】
【氏名】大村 義人
【テーマコード(参考)】
4C047
【Fターム(参考)】
4C047JJ05
4C047JJ11
4C047JJ31
4C047JJ40
4C047KK40
(57)【要約】
【課題】薬品トレーを効率よくトレー搬送ラインに供給可能な薬品トレー供給ユニットの提供。
【解決手段】本発明は、薬品トレーを複数積載可能な台車と、薬品トレーを台車の積載面と平行な何れかの搬送方向へと搬送可能な搬送手段と、積載された薬品トレーを台車から搬送手段へと昇降する昇降手段と、を用いて薬品トレーを搬送方向の下流側へと移動させる薬品トレー供給ユニットであって、爪状部を備え、爪状部が台車に設けられた係合部と係合することで台車を昇降手段が薬品トレーを昇降可能とする位置まで引き込み可能な台車係止手段と、昇降可能とする位置まで台車係止手段と搬送手段とを一体に移動させる駆動手段と、を有し、台車係止手段によって薬品トレーが昇降可能とする位置まで引き込まれると、昇降手段が薬品トレーを昇降し、駆動手段が搬送手段を台車と薬品トレーとの間へと移動させることで、昇降手段によって保持された薬品トレーのうち最下段に配置された薬品トレーを搬送方向へと搬送する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬品トレーを複数積載可能な台車と、
前記薬品トレーを前記台車の積載面と平行な何れかの搬送方向へと搬送可能な搬送手段と、
積載された前記薬品トレーを前記台車から前記搬送手段へと昇降する昇降手段と、
を用いて前記薬品トレーを前記搬送方向の下流側へと移動させるための薬品トレー供給ユニットであって、
爪状部を備え、当該爪状部が前記台車に設けられた係合部と係合することで前記台車を前記昇降手段が前記薬品トレーを昇降可能とする位置まで引き込み可能な台車係止手段と、
前記昇降可能とする位置まで前記台車係止手段と前記搬送手段とを一体に移動させる駆動手段と、
を有し、
前記台車係止手段によって前記薬品トレーが前記昇降可能とする位置まで引き込まれると、前記昇降手段が前記薬品トレーを昇降し、前記駆動手段が前記搬送手段を前記台車と前記薬品トレーとの間へと移動させることで、前記昇降手段によって保持された前記薬品トレーのうち最下段に配置された薬品トレーを前記搬送方向へと搬送することを特徴とする薬品トレー供給ユニット。
【請求項2】
請求項1に記載の薬品トレー供給ユニットであって、
前記爪状部は、高さ方向において前記台車の前記積載面よりも上方であって前記搬送手段の搬送面よりも下方に位置し、
前記台車係止手段は、前記台車を引き込む際には前記爪状部を下方へと伸ばすことで前記係合部に前記爪状部を係合させることを特徴とする薬品トレー供給ユニット。
【請求項3】
請求項2に記載の薬品トレー供給ユニットであって、
前記台車係止手段は、前記台車の引き込みが行われた後には前記爪状部を元の位置に戻して前記爪状部と前記係合部との係合を解除することを特徴とする薬品トレー供給ユニット。
【請求項4】
請求項1に記載の薬品トレー供給ユニットであって、
前記台車が前記台車係止手段によって引き込まれる際に前記台車の移動方向を規制するために前記台車の両側に沿うように設けられたガイド部を有し、
前記ガイド部の前端部には、前記台車の有無を検知する検知手段を有することを特徴とする薬品トレー供給ユニット。
【請求項5】
請求項4に記載の薬品トレー供給ユニットであって、
前記ガイド部の前記検知手段よりも前記移動方向の下流側であって前記搬送手段よりも前記移動方向の上流側には、前記台車の逆走を妨げるように設けられた突出部を有することを特徴とする薬品トレー供給ユニット。
【請求項6】
請求項5に記載の薬品トレー供給ユニットであって、
前記突出部は前記台車が引き込まれた後に前記ガイド部から突出することを特徴とする薬品トレー供給ユニット。
【請求項7】
薬品トレーを積載面上に複数積載可能な台車であって、
前記台車は、上面から見たとき略長方形の躯体部と、前記躯体部から突出した取手状の係合部と、前記積載面から下方に向かって伸びて前記台車の接地面から積載面までの距離よりも短い棒状突起部と、前記積載面の上面に設けられた孔部と、を有し、
前記台車を2台以上重ね合わせる際に、下側に位置する前記躯体部の長辺と、上側に位置する前記躯体部の短辺とが互いに平行になるように前記台車を重ね合わせると、前記棒状突起部と前記孔部とが嵌合する位置に配置されることを特徴とする薬品トレー用の台車。
【請求項8】
請求項7に記載の台車であって、
前記棒状突起部と前記孔部とは、それぞれが前記躯体部の対角に位置するように2つずつ設けられたことを特徴とする台車。
【請求項9】
請求項7に記載の台車であって、
前記積載面には、前記薬品トレーが当該積載面に載置されたときに当該薬品トレーの移動を規制するために、当該積載面から上方に向かって立ち上がった壁部が形成され、
前記壁部は下方から上方へ向かうにつれて外側に広がる方向へと傾斜して配置されることを特徴とする台車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬品トレー供給ユニット及び当該薬品トレー供給ユニットに用いられる台車に関するものである。
【背景技術】
【0002】
処方箋データに従って、保管された薬品の中から必要な薬品類を自動で払い出す薬品払出装置が知られている(例えば引用文献1、2等参照)。
このような装置の一種として、薬品払出装置を複数連結して共通の搬送路で接続し、上位装置から送付された処方箋データを元に必要な薬品を搬送路の上流側から搬送された薬品トレーに順次払い出し、払い出しが終わったものから順に下流側へと搬送していくような構成も知られている。
こうした構成において、薬品トレーを搬送路に供給するために、複数の薬品トレーを重ねて保持するとともに、1つずつ下流へとトレー搬送ラインに供給する装置が考えられている(例えば特許文献3~8等参照)。
さて、こうした薬品トレー供給装置においては、払い出された薬品トレーを再度積み上げて1つずつ搬送可能な状態に戻しておく必要があり、さらにこれらの挙動は極力自動化されることが好ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】WO2005/110334号公報
【特許文献2】特開2020-36978号公報
【特許文献3】特許第5533653号公報
【特許文献4】特許第5598101号公報
【特許文献5】特許第5817865号公報
【特許文献6】特許第6156463号公報
【特許文献7】特許第4621367号公報
【特許文献8】特開2020-055418号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、トレーが積載された台車から薬品トレー供給装置までのトレーの移動は、トレーを奥側へと引き込むことで行われ、引き込んだ台車が存在することによって、保管のためのスペースも必要となるので、十分な数のトレーの積載数を確保することが難しかった。
【0005】
こうした積載数の問題を解消するために、予め薬品トレー供給装置の前に薬品トレーを積載した台車を配置しておき、薬品トレー供給装置内の薬品トレーの在庫数が減少してきたタイミングで、台車上の薬品トレーを回収する予約機能を備えた薬品トレー供給ユニットの開発が進められている。
しかしながら、メンテナンス性の向上等を目的として、特に搬送路を装置の前面側に配置した構成では、引き込まれた台車自体がスペースを圧迫するために、十分な数の保管が難しいという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上のような課題を解決するべく、本発明は、薬品トレーを複数積載可能な台車と、前記薬品トレーを前記台車の積載面と平行な何れかの搬送方向へと搬送可能な搬送手段と、積載された前記薬品トレーを前記台車から前記搬送手段へと昇降する昇降手段と、を用いて前記薬品トレーを前記搬送方向の下流側へと移動させるための薬品トレー供給ユニットであって、爪状部を備え、当該爪状部が前記台車に設けられた係合部と係合することで前記台車を前記昇降手段が前記薬品トレーを昇降可能とする位置まで引き込み可能な台車係止手段と、前記昇降可能とする位置まで前記台車係止手段と前記搬送手段とを一体に移動させる駆動手段と、を有し、前記台車係止手段によって前記薬品トレーが前記昇降可能とする位置まで引き込まれると、前記昇降手段が前記薬品トレーを昇降し、前記駆動手段が前記搬送手段を前記台車と前記薬品トレーとの間へと移動させることで、前記昇降手段によって保持された前記薬品トレーのうち最下段に配置された薬品トレーを前記搬送方向へと搬送する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、薬品トレーを効率よくトレー搬送ラインに供給可能な薬品トレー供給ユニットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】薬品払出システムの構成の一例を示す図である。
【
図2】トレー供給装置の構成の一例を示す図である。
【
図3】トレー供給装置と薬品トレーを積載した台車の構成の一例を示す図である。
【
図4】本発明の台車係止手段の構成の一例を示す図である。
【
図5】
図4に示す引き込み装置の動作の一例を示す図である。
【
図6】引き込み装置による台車引き込み動作の一例を示す図である。
【
図7】駆動部による搬送手段の前進動作の一例を示す図である。
【
図8】昇降装置による昇降動作の一例を示す図である。
【
図9】昇降装置による昇降動作の一例を示す図である。
【
図10】昇降装置による昇降動作の制御例を示す図である。
【
図11】本発明のトレー供給装置における制御部の構成の一例を示すブロック図である。
【
図13】本発明に用いる台車の構成の一例を示す斜視図である。
【
図16】
図13に示す台車の構成の一例を示す左側面図である。
【
図18】
図13に示す台車の構成の一例を示す右側面図である。
【
図20】
図13に示す台車を2段積み重ねたときの構成の一例を示す図である。
【
図21】
図13に示す台車を3段積み重ねたときの構成の一例を示す図である。
【
図22】
図13に示す台車を3段積み重ねたときの比較例を示す図である。
【
図23】台車予約処理の制御動作の一例を示す図である。
【
図24】トレー供給装置に台車が配置されたときの動作の一例を示す図である。
【
図25】引き込み装置が台車の係合部と係合したときの動作の一例を示す図である。
【
図26】駆動部が台車を所定位置へと引き込んだときの動作の一例を示す図である。
【
図27】
図27に示した動作の後、昇降装置が払出トレーを持ち上げたときの動作の一例を示す図である。
【
図28】逆走防止機構の動作の一例を示す図である。
【
図29】駆動部が搬送装置を前方へと移動させたときの動作の一例を示す図である。
【
図30】本発明の変形例としてトレー収納装置として用いたときの構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係る実施形態について図面を参照して説明する。
図1には、薬品を払い出すための払出装置が複数並べられ、1つの搬送路を形成するように並べられた薬品払出システム300を示している。
薬品払出システム300は、例えば上位装置500から通信によって送られた処方箋データや電子カルテ等の情報に従って、必要な薬剤を払出トレー310に払い出す自動払い出し装置として機能する。
薬品払出システム300は、本実施形態では払出トレー310の移送経路に沿って一列になる配置で右から左へ、トレー供給装置320と、帳票発行装置330と、薬剤仕分装置350と、薬剤払出装置370とトレー収納装置360とを並べた一連のシステムである。
払出トレー310はトレー供給装置320からトレー収納装置360へ移送される間に、払出トレー310に対して帳票331と注射薬等の薬剤1と輸液2とが順次投入されるようになっている。そのような一連の動作を自動制御するため、マイクロプロセッサ等からなるコントローラ390も備わっている。
コントローラ390は、適宜な入力装置や他のコンピュータ例えば上位装置500で示すような処方オーダーエントリシステムから処方箋データ又は処方箋データから派生した調剤指示箋データや注射指示箋データを得て、かかるデータに基づいて制御指令の生成やデータの抽出等を行うとともに、指令やデータを薬品払出システム300を構成する各装置へ送出するようになっている。
【0010】
払出トレー310は、例えば金属や硬質プラスチック製の上面が開放された薬品トレーとして機能する箱状の容器であって、通常は空の状態でトレー供給装置320に搭載されている。払出トレー310は、トレー供給装置320から排出されると、薬品払出システム300の下方に各装置を貫くように連結して配置された搬送路340を通じてトレー収納装置360へと搬送される。払出トレー310は各装置において内部に薬剤1や輸液2、処方箋データまたは調剤指示箋データや注射指示箋データを示す帳票331等が投入された後、トレー収納装置360の所定の位置へと載置される。
【0011】
帳票発行装置330は、帳票331を出力するためのプリンタ332と、かかるプリンタ332から印刷・出力された帳票331を対応する払出トレー310に送出するための送出装置333とを備えており、印刷した帳票331に対応する払出トレー310が到達した時に、下方にある当該払出トレー310に向けて帳票331が載置されるように送り出す。
【0012】
薬剤仕分装置350は、一度払い出しを行って返納されてきた薬剤1を保管するための返納装置であるとともに、収容トレー110上には返納された薬剤1が整列して配置されており、コントローラ390によって薬剤1の位置が管理されて払出トレー310へ移送可能な払出装置でもある。
具体的には返納されてきた薬剤1の中に、まだ使用期限内であって、新たに流れてきた処方箋データに必要な薬剤1が何れかの収容トレー110内にあった場合には、払出トレー310に向けてかかる薬剤1を払いだすことが可能である。
【0013】
薬剤払出装置370は、輸液2の入ったボトルやキット等を保管する保管棚371と、保管棚371に載置された輸液2を挟持して移動させるためのロボットアームたる移送手段としてのハンドラーユニット372と、を有する払出装置である。なお、薬剤払出装置370に収納される薬剤・薬品は、輸液2に限定されるものではなく、ハンドラーユニット372によって持ち運びが可能な態様であれば様々な薬品について搭載していても良い。
また、ハンドラーユニット372の形状や配置を変える等により、図示したものとは異なる形態の薬剤払出装置370を用いても良い。
【0014】
こうした薬品払出システム300においては、薬剤1や輸液2は既に述べたように払出トレー310に搭載されて搬送路340上を運ばれる。
この時最も上流側のトレー供給装置320には、十分な数の払出トレー310が保管されている必要がある。
また、トレー供給装置320には、薬品トレー供給ユニットとして、払出トレー310を予め積載しておくために、次のような構成が備えられている。
【0015】
トレー供給装置320には、
図1、
図2に示すように、搬送路340の起点であってその一部を構成するための搬送手段である搬送装置10と、搬送装置10と一体に装置前後方向であるY方向に動作する引き込み装置20と、払出トレー310をZ方向に上下動させることで搬送装置10上へと1つずつ供給するための昇降手段である昇降装置30と、が設けられている。
トレー供給装置320は、また、搬送装置10の奥側にあって搬送装置10を前後に移動可能にするための駆動手段である駆動部40と、搬送装置10、引き込み装置20、昇降装置30、駆動部40の各部の動作を制御するための制御部50と、を有している。
トレー供給装置320の装置前方側には、供給されるべき払出トレー310が複数積載された台車100を予め置いておくことができるよう開放されたスペースが開いており、例えば
図3のように配置される。なお、このような配置をしているときにも、特にトレー供給装置320から台車100を固定するような必要はなく、台車100は装置前方に配置されているだけで良い。
【0016】
トレー供給装置320の+Y方向側は、前方に向かって伸びた外枠部321によって筐体部分が形成されており、外枠部321の+Y方向先端部には、台車100と同一の高さに、台車100の有無を検知可能なように検知手段たる台車検知センサ51が設けられている。
また、トレー供給装置320の上方も開放されており、上部には積載された払出トレー310が上限値以上に積載されていないかどうかを検知するために上部トレーセンサ52が設けられていても良い。
【0017】
台車検知センサ51は、±X方向に向けて伸びた赤外線センサであって、例えば台車100あるいは台車100上に載置された払出トレー310がかかる赤外線を遮ることによって、制御部50は台車100がトレー供給装置320の前方に存在することを検知することが可能である。
上部トレーセンサ52についても同様の構成であって、トレー供給装置320の昇降装置30よりも上方に配置され、後述するように積載された払出トレー310が上方向へと持ち上げられる際に天井に引っかからないように、あるいは過積載を防止するために、設けられても良い。
【0018】
外枠部321は、台車100が引き込み装置20と係合した状態で引き込まれる際に、台車100の両側に沿うように設けられている。このような構成とすることによれば、台車100が引き込まれる際に台車100の±X方向への移動を規制できるので、外枠部321が引き込み時にガイド部として機能する。
さらに、外枠部321の+Y方向の先端部は、装置前方側に向けて外側に広がるように対称な緩やかな傾斜が設けられていることが望ましい。傾斜を設けることで、台車100の設置位置が多少変動してどちらかに寄ってしまった場合にも、外枠部321に当接することで台車100の位置が補正されて、昇降装置30によって払出トレー310を昇降可能とする位置まで自動的に誘導されることが期待できる。
【0019】
搬送装置10は、既に述べたように搬送路340の起点となるベルトコンベアの一部を構成するとともに、駆動部40によってY方向前後に移動可能に備え付けられた搬送手段である。
搬送装置10は、
図4に示すように払出トレー310の短手方向の幅に沿って平行に2本設けられた無端状のベルト11と、ベルト11が巻きかけられたローラ12と、を有している。
搬送装置10は、かかるベルト11上に払出トレー310が1つ配置され、制御部50から回転の指示を受けると、回転するベルト11に沿って+X方向へと払出トレー310を搬送する。
このとき、ベルト11の上面は、台車100の載置面あるいはトレー供給装置320の載置面と平行な平面であって、搬送路340の一部を構成している。すなわち、搬送装置10は、薬品トレーを台車100の積載面と平行な何れかの搬送方向へと搬送可能な搬送手段として機能する。
搬送装置10は、駆動部40に連結されており、駆動部40によって前後方向に移動可能に保持されている。かかる移動は、±Y方向への前進・後退移動である。
【0020】
搬送装置10と一体に動作する躯体の内部には、
図4、
図5に示すような引き込み装置20が設けられている。
引き込み装置20は、後述する台車100の取っ手部分である取っ手101に係合するための爪状部21と、回動させることで爪状部21を上下動させるための爪状部モータ22と、を有している。
引き込み装置20は、Z方向において搬送装置10のベルト11の上面よりも下方かつ台車100の積載面よりも上方に位置している。かかる構成により、引き込み装置20は、爪状部21を爪状部モータ22によって
図6に示すように回動させることで、台車100の取っ手101に爪状部21を係合させることが可能となる。このように、引き込み装置20は、台車100を-Y方向へと移動させる際に、台車100の取っ手101と係合する台車係止手段として機能する。
【0021】
搬送装置10が駆動部40によって前後に移動する際には、引き込み装置20もまた搬送装置10と一体に移動する。従って、台車100もまた取っ手101が係合した状態の-Y方向の移動においては、引き込み装置20に連れ添う形で移動する。
【0022】
昇降装置30は、
図2において示したように、外枠部321の上方にあってトレー供給装置320の両側面に内向きに備えられたリフターであって、昇降装置30の把持可能な位置に載置された払出トレー310の±X方向側面を両側から把持するアーム31と、かかるアーム31を上下動させるための昇降駆動部32と、を有している。ここで昇降装置30の把持可能な位置とは、昇降装置30の間を示している。
昇降装置30は、
図7で示したように、昇降装置30の間に積載された払出トレー310にアーム31が±X方向の側面の両側から当接することで、払出トレー310の上端縁部に形成されているフランジと係合し、下方から払出トレー310を支持することができる。
このようにアーム31による支持状態から昇降駆動部32がアーム31を上下動させることで、支持された払出トレー310は、積載された状態のまま上下動可能になる。
【0023】
ここで、昇降装置30の間に積載された状態の払出トレー310のうち、特に最下段に位置するものを払出トレー310a、最下段の1つ上の段に位置するものを払出トレー310bとして、昇降装置30の動作を
図7~
図10を用いて説明する。
昇降装置30は、アーム31を払出トレー310aのフランジ部分に係合させて、積載された状態のまま払出トレー310を上下動させることができるので、
図7のように昇降装置30が払出トレー310aを支持した状態から、
図8に示したように払出トレー310aを搬送装置10の搬送面であるベルト11の上に載せる(ステップS001)。
さらにアーム31と払出トレー310aとの係合を解除した状態でアーム31を上下させ、アーム31を今度は払出トレー310bのフランジ部分に係合させる(ステップS002)。昇降装置30は、最下段の払出トレー310aを搬送面に置いたまま、払出トレー310bを含めより上部に位置する全ての払出トレー310を支持することとなる。
この状態で昇降駆動部32がアーム31を上方へと移動させると、
図9に示すように最下段の払出トレー310aのみが搬送面であるベルト11上に載置され、その他の払出トレー310が昇降装置30によって上方に離間して支持される状態となる。
なお、
図9では図示のために昇降装置30の上昇幅を誇張して記載しているが、最下段の払出トレー310aと2段目の払出トレー310bとの積載が解除され、払出トレー310aが搬送路340に移動する際に他の払出トレー310に干渉しない程度に上昇させれば良い。
【0024】
最下段の払出トレー310aをベルト11が+X方向へ搬送する(ステップS003)と、制御部50は、アーム31に保持された払出トレー310が残っているかどうかを判断し(ステップS004)、残っている場合には次に最下段となった払出トレー310bについてもステップS001~ステップS004の同様の処理を行う。これらの処理は
図7~
図9で払出トレー310aについて述べた動作と同様となるため図示は省略する。昇降装置30によるトレー払出処理は、このように昇降装置30がアーム31を用いて次々と支持する払出トレー310を交換していくことによって、昇降装置30が最下段の払出トレー310のみを搬送装置10へと1つずつ載置していく処理を示している。
【0025】
また、払出トレー310を昇降装置30が持ち上げた際にも、払出トレー310がトレー供給装置320の天井に干渉することがないように昇降装置30の上部は開放されている。
さらに、上部トレーセンサ52を設けることによって、例えばトレー供給装置320が設置されている室内の天井に到達しそうな程の過積載の防止をするとしても良い。
【0026】
これらの各機能は、制御部50によって制御可能である。
図11では、制御部50が制御する各部をブロック図として模式的に示した。
制御部50は、CPU(Central Processing Unit)53、RAM(Random Access Memory)54、ROM(Read Only Memory)55、及びI/F56が接続されている構成を備える。
【0027】
CPU53は演算手段であり、トレー供給装置320の全体の動作を制御する。RAM54は、情報の高速な読み書きが可能な揮発性の記憶媒体であり、CPU53が情報を処理する際の作業領域として用いられる。ROM55は、読み出し専用の不揮発性の記憶媒体であり、ファームウェア等のプログラムが格納されている。
【0028】
トレー供給装置320は、ROM55に格納された制御プログラムからRAM54にロードされた情報処理プログラム(アプリケーションプログラム)などをCPU53が備える演算機能によって処理する。その処理によって、トレー供給装置320の種々の機能モジュールを含むソフトウェア制御部が構成される。このようにして構成されたソフトウェア制御部と、トレー供給装置320に搭載されるハードウェア資源との組み合わせによって、トレー供給装置320の機能を実現する機能ブロックが構成される。すなわち、CPU53、RAM54、ROM55、I/F56は、トレー供給装置320の動作を制御する制御部50を構成する。
I/F56は、を制御部50に接続するためのインターフェースである。I/F56は、台車検知センサ51や上部トレーセンサ52、アーム31の状態を、電気信号を用いて把握するとともに、昇降駆動部32、駆動部40、搬送装置10のローラ12等の駆動を制御するための信号を、制御部50から各部へと変換して送信する。
【0029】
このような制御部50を用いて、払出トレー310の払い出しを行う機構について説明する。
まず、
図7~
図9で示したように、払出トレー310が昇降装置30の間に既にある場合については、既に説明した通り、昇降装置30が最下段に配置された払出トレー310aを搬送装置10のベルト11上に載せ、下段から2つ目の払出トレー310bを上方で支持することで払出トレー310aを搬送方向下流側である+X方向側に搬送する。
このような払出トレー310が少なくなってきたときには、払出トレー310の補充を行う必要がある。
【0030】
払出トレーの補充方法としては、様々な手法が考えられる。例えば従来の構成の一例として、
図12に示したようなトレー供給装置200を例に挙げる。トレー供給装置200では、払出トレー310がY方向奥側に重ねて配置され、前後方向に延びたベルト201をエレベーターのように上下動させることで、最下段の払出トレー310aを前方へと運び出す構成を有している。なお、昇降装置30は本発明における昇降装置30と同様の動作・構成でも良いため同一の符号を付して説明は省略する。
【0031】
このような構成において、補充の際には、同じベルト201をキャリーカート202に積載された払出トレー310の下端に当接させるように上昇させて、ベルト201によって重ねた払出トレー310を-Y方向側へ向けて一息に搬送するような方式が知られていた。
【0032】
しかしながら、このようなキャリーカート202を用いた方法では、搬送路340の通るスペースを確保するためには
図12に示すようにキャリーカート202の下方を開けておく必要があってキャリーカート202の構造が複雑になりがちであること、ベルト201が下方から当たるようにするためキャリーカート202に積載するときの払出トレー310の載置面203が比較的高い位置にあること、等の理由によりキャリーカート202が大型化しやすいことが課題であった。
また、払出トレー310の安定した供給のためには、キャリーカート202を複数用意し、払出トレー310を積載する必要があるため、キャリーカート202自体の保管場所の確保という観点からも、こうした大型化の解消にはメリットが大きい。
【0033】
そこで、本実施形態においては、キャリーカート202の代わりに台車100を用いることとし、また引き込み装置20と搬送装置10とが一体に前後移動する構成とすることにより、搬送路340への動作線の一本化と台車の省スペース化を図ることとした。
かかる構成によれば、払出トレー310を効率よく搬送路340に供給可能な薬品トレー供給ユニットを提供することができる。
さらに、かかる台車100は複数台を互いに重ねられる構成とすることにより、トレー供給装置320にセットされていない状態のときにも、保管スペースの低減に寄与する。
【0034】
台車100は、
図13のような斜視図並びに
図14~
図19に示すような六面図で形成された台車であって、上面から見たときに略長方形の枠形状をした躯体部102と、躯体部102の長辺に当たる部分に突出して設けられた係合部である一対の取っ手101と、躯体部102上に設けられて払出トレー310を載置可能な平面である積載面103と、積載面103から下方に向かって伸びた棒状突起部104と、積載面103の上面側に設けられた孔部105と、躯体部102の4隅の下部にそれぞれ1つずつ配置された4つのタイヤ107と、を有している。
なお、本実施形態では、躯体部102は中央部に空隙の空いた枠形状であるので、積載面103もまたかかる躯体部102の上面の一部を示すに過ぎないが、かかる形状に限定されるものではなく、例えば躯体部102が1枚の平板である場合には、かかる平板の上面の平坦部分を積載面103として扱う。
このように、ここでいう積載面103は、払出トレー310を積み重ねる際に最下段の払出トレー310aの底面と同一の高さであって、台車100の接地面と平行な面のことを示している。
【0035】
積載面103の周囲には、
図13、
図15等から明らかなように、積載面103から上方に向かって、台車100の外側に向かって広がる方向へと傾斜して配置され、躯体部102の長辺側に配置された壁部である第1壁部1061と、躯体部102の短辺側に配置された壁部である第2壁部1062と、がそれぞれ形成されている。
第1壁部1061と第2壁部1062とは、それぞれ台車100に載置される払出トレー310の底面の周囲を囲むようなサイズで設けられている。
また、第2壁部1062は、後述するように台車100が重ねられる際には、取っ手101と干渉しないように、取っ手101の幅分の距離L1としたとき、L2>L1となるような幅L2だけ互いに離れて形成されている。
このような構成とすることで、台車100を重ねたときにも、上側の台車と下側の台車とが干渉することなく重ね合わせることが可能となる。
【0036】
また、積載面103から上方に向かって立ち上がった壁部である第1壁部1061と第2壁部1062とが何れも下方から上方へ向かうにつれて外側に広がる方向へと傾斜した態様であることによって、ユーザーが積載面103に払出トレー310を積載する際に多少の位置ずれが生じてしまったとしても、第1壁部1061と第2壁部1062とがガイドとなって積載面103の中央部分に払出トレー310が誘導されることとなるので、積載が容易になる。
【0037】
棒状突起部104は、積載面103の下方に向かって垂直に伸びた円柱状の突起であり、円柱の径は孔部105と嵌合するように、孔部105よりも小さくなっている。
また、円柱の高さは、タイヤ107が平らな場所を転がる際に床面と接することがないようにタイヤ107の高さよりは短くなっている。
棒状突起部104は、台車100の1台につき2本設けられていて、
図19に示したように、躯体部102を下方から見たとき、2本が躯体部102の中心に対して点対称となるように、互いに対角に位置するように設けられている。
【0038】
孔部105は、積載面103を貫通するように開けられた円形の開口部であって、積載面103上に本実施形態では4つ形成されている。
かかる孔部105の径は、棒状突起部104の円柱の径よりも大きく形成されていることが望ましい。
【0039】
ところで、台車100は、トレー供給装置320にセットされていない状態のときには、トレー供給装置320の外の任意の位置に保管されることとなる。
本実施形態においては、かかるトレー供給装置320にセットされていない状態の台車100を、積み重ねて保管することによって、保管のためのスペースを省スペース化するとともに、積み重ねた際に荷崩れ等を生じないような機構を備えている。
【0040】
説明の簡素化のために台車100を2台重ねる場合を例として、下側に位置する台車100を特に台車100a、上側に位置する台車100bとして、それぞれの構成について台車100a、100bのそれぞれを構成する各部にa、bの符号を付して説明を行う。
なお、当然ではあるが台車100aと台車100bとの間に形状の相違はなく、同種の台車100を積み重ねられるように各構成等を有するものであって、3段以上に積み重ねる場合にも同様に、直下の台車100と90度ずらして重ねることで積み重ねていくことができる。
【0041】
台車100を2台重ね合わせる際には、
図20に示すように、下側に位置する台車100aの躯体部102aの長辺と、上側に位置する台車100bの躯体部102bの短辺とが互いに平行になるように台車100を重ね合わせる。
このとき、上側に位置する台車100bの棒状突起部104bと下側に位置する台車100aの孔部105aとが互いに嵌合する位置に配置されるように位置している。
また、孔部105aは棒状突起部104bの径よりも大きい開口部であるから、棒状突起部104bは4つある孔部105aのうち、互いに対角に位置する2か所に挿入されて嵌合することとなる。
【0042】
すなわち、
図20に示すように、台車100aと台車100bとを互いに90度ずらして積み重ねたときには、棒状突起部104bが孔部105aへと挿入可能な位置となるように、棒状突起部104の位置と孔部105の位置とがそれぞれの台車で規定されている。
【0043】
図20で示した積載状態に、さらに台車100cを積み重ねると、
図21に示したような3段構成となる。なお、この時には
図21において線AA’で断面を示したように、台車100cの棒状突起部104は、台車100bの孔部105に嵌合するように位置することとなる。
棒状突起部104と孔部105とが嵌合する構成により、台車100を互いに90度積み重ねる際の位置決めが行いやすくなるとともに、一度積み上げた台車100を取り外す際は容易に、かつ荷崩れが生じにくくなるという効果がある。
また、このように棒状突起部104には、台車100を積み上げたときに互いを支持する支持部としての機能を有するように、鉄やSUS等、比較的強度の高い素材を用いることが望ましい。
【0044】
台車100をこのように互いに90度ずらした態様で重ねることによれば、一般的に同形状の台車100を
図22に示すように単に平行に積み重ねる構成とは異なり、積み重ねたときの高さを省スペース化することが可能となる。
さらに、棒状突起部104と孔部105とを有することによれば、かかる90度に互い違いにずらしながら積み重ねた場合にも、積み重ねた上側に位置する台車100bの棒状突起部104bが、下側に位置する台車100aの孔部105aに嵌合することで台車の荷崩れを防ぐことができる。
【0045】
また、平行に積み重ねる構成で前述したように高さ方向に延びた突起によって下にある台車と嵌合させようとすると、タイヤ107の高さよりも長くなるように突起を形成する必要が出来てしまうため、突起が床面に擦れてしまったり、伸縮可能にするために構造が複雑になる懸念がある。
しかしながら、本実施形態のように長方形の躯体部102を互いに90度ずらして、積み重ねた際にタイヤ107が躯体部102の外側にくるように配置することによれば、このようなタイヤ107よりも短い棒状突起部104によっても、孔部105と嵌合させて台車100の荷崩れを防ぐことが可能となる。
さらに、このような構成とすれば、台車100はタイヤ107によってのみ地面と接する形となり、固定された脚部を持たない。かかる構成により、ユーザーが台車100を移動させる際にスムーズな移動が可能となる。
【0046】
次に、トレー供給装置320が、トレー供給装置320の前に配置された台車100を引き込み、台車100上に複数積載された払出トレー310を搬送路340によって搬送するまでの一連の流れについて
図23を用いて説明する。
なお、説明の簡易化のために、初期状態において、トレー供給装置320内にあった払出トレー310が全て搬送路340によって搬送される等して空の状態であると仮定して説明を行う。
【0047】
まず、ユーザーが空の払出トレー310が積載された台車100を、トレー供給装置320の目前に配置する。
このとき、
図3あるいは
図24に示すように、台車100はトレー供給装置320の前方に位置しているだけであり、トレー供給装置320から特に支持などされることなく配置された状態であるが、台車100の先端が台車検知センサ51に検知可能な程度に近づけて配置される。
制御部50は、台車検知センサ51がトレー供給装置320の前方に台車100を検知しているかどうかを判断する(ステップS100)。
【0048】
仮にステップS100にて、台車100が検知されなかった場合には、トレー供給装置320の表示部分あるいはコントローラ390の表示部分に、払出トレー310の在庫が空であることや、台車100の予約配置が可能であることを表示し、ユーザーが台車100をトレー供給装置320の前方に配置する操作を待てば良い(ステップS101)。
ここでは、
図24に示すように、空の払出トレー310が複数積載された台車100がトレー供給装置320の前方に配置されているから、台車検知センサ51はかかる台車100を検知したとして説明を進める。
【0049】
台車検知センサ51が台車100を検知すると、
図25に示すように、引き込み装置20の爪状部モータ22が爪状部21を下方へと回動して、爪状部21が取っ手101に係合する(ステップS102)。
既に述べたように、台車検知センサ51は、外枠部321の+Y方向端部に設けられているので、台車検知センサ51が台車100を検知したときには、取っ手101の位置が爪状部21の移動範囲内にあることとなる。
かかる係合状態においては、爪状部21が取っ手101に係合してはいるものの、
図5、
図6で示したように爪状部21は取っ手101の上から覆い被さるように係合するに過ぎず、取っ手101を固定するわけではない。従って、台車100の位置は台車検知センサ51の検知範囲から出ない程度に自由に移動可能である。
他方、このとき台車100は取っ手101を上側から爪状部21に押さえられる形で係合しているから、台車100が独りでにかかる係合状態を解いてしまうことは生じにくい状態でもある。
【0050】
制御部50は、昇降装置30が
図8~
図10で示したようなトレーの払出処理を継続中であるかどうかを判断する(ステップS103)。トレー払出処理が終了していない場合には、かかる払出処理が終了するまで待機する。
【0051】
ステップS103でトレー払出処理が終了しており、制御部50が台車100の引き込みが可能であると判断した場合に、引き込み装置20は、そのまま爪状部21を取っ手101に係合させた状態で、駆動部40によって搬送装置10ごと-Y方向へと引き込まれる(ステップS104)。
このとき、台車100はタイヤ107によって任意の方向へ移動可能であるので、駆動部40による引き込み装置20を引き込む動作によって、連動して台車100もまた外枠部321の内側へと引き込まれることとなる(例えば
図26参照)。
【0052】
駆動部40が-Y方向側への引き込みを完了すると、
図26に示すように、台車100は払出トレー310を積載した状態のまま、外枠部321の内側へと位置することになるとともに、昇降装置30のアーム31が把持可能な位置に払出トレー310が位置することとなる。
なお、このとき駆動部40は、搬送装置10を
図25に示すような前進位置にするか、
図26に示すような後退位置にするか、の2つを選択するだけであり、駆動部40が最大限に駆動して搬送装置10を引いた後退位置において、台車100に積載された払出トレー310にアーム31が届くような位置となるように設計されている。
なお、アーム31が払出トレー310を把持可能な位置とは、昇降装置30が払出トレー310を昇降可能とする位置でもある。
従って、既に述べたようにアーム31は払出トレー310のうち最下段の払出トレー310aのフランジ部分を把持し、
図27に示すように上昇させることができる(ステップS105)。なお、アーム31や昇降装置30の個別の動作については、
図8、9に図示したため省略する。
【0053】
また、ステップS105の動作と平行して、台車100が完全に引き込まれると、
図28に示すように、外枠部321の内側に向かって台車100の逆走を妨げるように設けられた突出部である逆走防止機構322が突出することで、台車100が+Y方向へと動き出してしまうような状況を防いでいる。
【0054】
逆走防止機構322について説明する。逆走防止機構322は、外枠部321内に左右一対に設けられており、付勢部材であるバネ323によって緩い力で内側に向けて付勢された爪状の突出部である。逆走防止機構322は、何も力がかかっていない状態では
図28の下図に示すように外枠部321から内向きに突出して配置されている。また、逆走防止機構322の+Y方向側の台車100に当接する面は、外枠部321の内向きの傾斜に沿うように、傾斜部322aを形成している。
突出部における傾斜部322aとは反対側の面は、何も力を受けないときにはX方向と平行な壁部322bとなるように、鋭角に切り返しが設けられており、かかる傾斜部322aと壁部322bとによって、台車100が-Y方向側に移動する際には台車100の移動とともにスムーズに外枠部321の内部に収納され、逆に台車100が+Y方向側に移動する際にはその移動を妨げやすい形状となっている。なお、バネ323と逆走防止機構322とは、図示した構成に依らず、任意の機構によって逆走防止機構322を内向きに付勢し少なくとも一部が外枠部321から突出する構成であれば良い。
【0055】
このような形状により、爪状部21が台車100を引き込む動作を行うときには、かかる傾斜部322aに台車100の躯体部102が当接することで、バネ323よりも強い力で外枠部321側に押し広げられるので、
図28上図に示すように外枠部321の内部に収納される。
逆に
図28下図のように台車100が引き込まれた後の状態では、逆走防止機構322がバネ323の力によって内側に突出するように付勢されて、台車100が容易に逆走してしまうことを防いでいる。
なお、本実施形態では、台車100は後述するようにユーザーの手動操作によって引き抜かれることがあり得る。
そのため、かかる逆走防止機構322を付勢するバネ323の強度は、人力で解除可能な程度の強さであって、台車100を内側に固定あるいはロックするような構成ではない方が望ましい。
【0056】
昇降装置30が払出トレー310を上昇位置に保持するまでは、
図26に示した通り、台車100は外枠部321の内側に保持されたままであり、また引き込み装置20の爪状部21も取っ手101に係合した状態を維持し続けている。
【0057】
このような昇降装置30の動作が終了し、昇降装置30のアーム31が払出トレー310を上昇位置に保持した後、制御部50は、引き込み装置20の爪状部モータ22を回動して、爪状部21と取っ手101との係合を解除するように動作させる(ステップS106)。
【0058】
なお、かかる係合解除動作は、昇降装置30の動作終了をトリガとしても良いし、逆走防止機構322が内側に突出しているかどうかを制御部50が判別してそれをトリガとしても良い。
【0059】
ステップS106の動作は、単に爪状部モータ22が爪状部21を先程とは反対向きに回動させれば良い。十分に回動されると、爪状部21と取っ手101との係合は解除されるが、逆走防止機構322によって、外枠部321の+Y方向端部は狭くなっており、台車100は固定や位置決めこそされないものの、台車100の自重や床面の傾斜、軽い振動などの軽度な揺動によっては外枠部321の外に出てしまうことがないように移動を規制されている。
【0060】
次に、制御部50は、再び駆動部40を今度は+Y方向へと前進するように動かすことで、搬送装置10と引き込み装置20とを+Y方向側へと移動させる(ステップS107)。
このとき、台車100の積載面103及び第1壁部1061、第2壁部1062を含めた高さは、搬送装置10の底面部の高さよりも低く設定されている。
つまり、台車100が位置を変じることなく、搬送装置10の下部にそのまま収まった状態で保持される。
【0061】
またこのとき、爪状部21も回動して上方へと移動しているので、台車100に引っかかることはなく、搬送装置10の下部に位置した状態となっている。
【0062】
ステップS107の動作を完了すると、
図29に示すように、外枠部321の間に逆走防止機構322によって閉じ込められた台車100と、引き込み装置20と、搬送装置10と、搬送装置10の上部に離間して位置している払出トレー310が下から当該順序にて位置していることになる。
【0063】
ここで、既に
図8、
図9等で説明したように昇降装置30が最下段の払出トレー310aのみを搬送装置10の上に載せ、搬送装置10がローラ12を回転させてベルト11を駆動すると、最下段の払出トレー310aがベルト11の搬送方向下流側すなわちX方向へと流れていく(ステップS108)。
以降、同様に新たに最下段となった払出トレー310についても搬送装置10の上へと配置する。
制御部50は、昇降装置30に保持された払出トレー310がなくなるまで、ステップS108で示したトレー払出処理をサブルーチンとして行う。
【0064】
さて、トレー払出処理によって昇降装置30が稼働している最中における台車100の取り扱いと、台車予約機能について説明する。
ステップS107の動作を完了した時点で、台車100は、引き込み装置20よりも下部に位置しており、逆走防止機構322と、外枠部321とによってトレー供給装置320の内側に囲われた状態である。
制御部50は、ステップS107の動作を完了すると、逆走防止機構322を解除して台車100を引き抜き可能な状態としても良い。また、逆走防止機構322は、既に述べたように、ある程度以上の力で台車100が-Y方向側に進行することで、台車100の躯体部102によって外側に向けて押し広げられる構造である。従ってユーザーは、引き込み装置20の爪状部21が係合した方とは逆方向すなわち-Y方向側に突出した取っ手101を掴んで、台車100をそのまま-Y方向側へと引っ張り出すことで、台車100を取り出すことが可能となる。
【0065】
このようにユーザーがステップS107以降の任意のタイミングで台車100を引っ張り出すことによって、制御部50は、搬送装置10の下部である台車保管位置が空になったことを検知することができる。
このような検知は、任意のセンサによって台車保管位置における台車100の有無を検知するのでも良いし、逆走防止機構322が外側に押し広げられたことを検知して台車100が引き抜かれたと判断するとしても良い。
制御部50は、台車保管位置が空である場合には、新たな台車100を予約可能であると判断して(ステップS109)、台車保管位置に未だ台車100が存在している場合には、空になった台車100を引き抜ける旨をコントローラ390のディスプレイに表示する等してユーザーに報知する(ステップS110)。
【0066】
ステップS109において、台車100が既に台車保管位置から引き抜かれた状態であれば、制御部50は、払出トレー310が積載された次の台車100を予約して受け入れることが可能であるとして、再度ステップS100の動作へと戻る。
なお、ステップS110で示された状態に従って、ユーザーが払出トレー310が積載された次の台車100を再度
図3に示すようにトレー供給装置320の前に配置されると、制御部50は、同様にステップS100からの制御を再開する。
【0067】
なお、爪状部21が取っ手101と係合した後に、ステップS103においてトレー払出処理中であると判断された場合、すなわち払出トレー310が未だ昇降装置30に残っている場合には、それらの払出トレー310が全て払い出されるまで昇降装置30と搬送装置10の動作を続け、払出トレー310が全て払い出された後で、ステップS103の動作へと戻れば良い。このようにトレー払出処理の途中においても、上述したような台車100の予約動作を行うことは可能である。
【0068】
ステップS100の動作から一連の動作を繰り返すことで、次の台車100についても同様に積載された払出トレー310の回収が行われる。
なお、次の台車100が引き込み可能となるタイミングは、かかる構成に限定されるものではないが、搬送装置10が移動する構成上、このように既に昇降装置30に保持されている払出トレー310を全て搬送した後に昇降装置30に新たな払出トレー310を積み上げる方が動作の効率が良い。
従って、本実施形態ではステップS103のようにトレー払出処理の終了確認を行った後に台車100を駆動部40によって搬送装置10及び引き込み装置20とともに引き込むこととしている。
【0069】
かかる構成によれば、払出トレー310を効率よく搬送路340に供給可能なトレー供給装置320を提供することができる。
【0070】
なお、本実施形態においては、トレー供給装置320としてのみ説明をしたが、同様の構成の装置を用いた変形例として、-X方向側から搬送路340を通過してきた払出トレー310を、昇降装置30によって積み重ねていくことでトレー収納装置360として用いる場合についても簡単に説明を行う。なお、本変形例において、トレー収納装置360を構成する各部は何れもトレー供給装置320と同様であるため、同一の付番をして個別の構成についての説明は省略する。
【0071】
薬品払出システム300において、トレー収納装置360は
図1に示した通り搬送路340の終端に位置している。
従って、トレー収納装置360に流れてきた払出トレー310上には、各払出装置等によって払い出された薬品である薬剤1や輸液2が載置された態様で、搬送装置10の上に移動してくることになる。
このとき、トレー収納装置360は、払出トレー310を搬送装置10上の中央に停止させる。かかる中央位置は、昇降装置30のアーム31が動作可能な範囲であって、「昇降装置30が昇降可能とする位置」に相当する。
昇降装置30は、かかる位置に停止された払出トレー310を、
図8、
図9で示したのとは逆の手順で次のように積み重ねていく。
1.昇降装置30が1つ目の払出トレー310bを上昇させる。
2.払出トレー310bを保持した状態で、同位置に運ばれてきた払出トレー310aの上に載置する。
3.昇降装置30は、アーム31の払出トレー310aとの係合を解除するとともに、最下段の払出トレー310aをアーム31によって保持して、2段重ねの状態で払出トレー310a、払出トレー310bを昇降させる。
1~3を繰り返すことで、内部に薬剤1や輸液2が配置された払出トレー310が
図8、
図9に示したように積載した状態で、トレー収納装置360に保持される。
【0072】
また、搬送装置10と、引き込み装置20とが一体に動く構成も同様であるので、事前に空の台車100を、搬送装置10の下部に配置する、あるいはトレー収納装置360の前方に配置しておくこととすれば、駆動部40が動作して、昇降装置30が台車100にこれらの積載された払出トレー310を積み重ねた状態で載置することも可能である。
【0073】
このように、当該構成とすれば、トレー供給装置320として用いる他にも、全く同様の構成で動作順序を制御するだけで、トレー収納装置360としても用いることが可能となる。
【0074】
<1>
また本実施形態では、払出トレー310を複数積載可能な台車100と、払出トレー310を台車100の積載面103と平行な何れかの搬送方向へと搬送可能な搬送装置10と、積載された払出トレー310を台車100から搬送装置10へと昇降する昇降装置30と、を用いて払出トレー310を搬送方向の下流側へと移動させるためのトレー供給装置320であって、爪状部21を備え、爪状部21が台車100に設けられた取っ手101と係合することで台車100を昇降装置30が払出トレー310を昇降可能とする位置まで引き込み可能な引き込み装置20と、昇降可能とする位置まで引き込み装置20と搬送装置10とを一体に移動させる駆動部40と、を有している。
また、トレー供給装置320は、引き込み装置20によって払出トレー310が昇降可能とする位置まで引き込まれると、昇降装置30が払出トレー310を昇降し、駆動部40が搬送装置10を台車100と払出トレー310との間へと移動させることで、昇降装置30によって保持された払出トレー310のうち最下段に配置された払出トレー310を搬送方向へと搬送する。
かかる構成とすれば、トレー供給装置320を用いて、払出トレー310を効率よく搬送路340に供給可能なトレー供給装置320を提供することができる。
【0075】
<2>
また、本発明のトレー供給装置320では、<1>で述べた構成に加えて、爪状部21は、高さ方向において台車100の積載面103よりも上方であって搬送装置10の搬送面を構成するベルト11よりも下方に位置し、引き込み装置20は、台車100を引き込む際には爪状部21を下方へと伸ばすことで取っ手101に爪状部21を係合させる。
かかる構成とすれば、引き込み装置20が台車100を引き込む際に、搬送装置10よりも下側に引き込むことができるから、駆動部40が搬送装置10と引き込み装置20とを同時に引き込んだときに、台車100は搬送装置10よりも下側に格納されることとなり、省スペース化に寄与する。
【0076】
<3>
また、本発明のトレー供給装置320は、<1>または<2>で述べた構成に加えて、引き込み装置20は、台車100の引き込みが行われた後には爪状部21を元の位置に戻して爪状部21と取っ手101との係合を解除する。
かかる構成とすれば、台車100がトレー供給装置320に引き込まれた後には台車100の取っ手101と爪状部21とは係合していない状態となるので、ユーザーが容易に台車100をトレー供給装置320から引き出して回収することができる。
【0077】
<4>
また、本発明のトレー供給装置320は、<1>乃至<3>の何れかで述べたに加えて、台車100が引き込み装置20によって引き込まれる際に台車100の移動方向を規制するために台車100の両側に沿うように設けられた外枠部321を有している。
また、外枠部321の前端部には、台車100の有無を検知する台車検知センサ51を有する。
かかる構成とすれば、台車100が爪状部21によって引き込まれる際にも外枠部321に沿って誘導されるので、台車100上の払出トレー310の位置が大きく変動することを防ぐことができる。また、外枠部321の前端部に台車検知センサ51を設けることで、制御部50は、払出トレー310を全て搬送した次に回収するべき次の台車100の有無を検知できるから、ユーザーは容易に次の台車100を設置できるから、払出トレー310を効率よく搬送路340に供給可能なトレー供給装置320を提供することができる。
【0078】
<5>
また、本発明のトレー供給装置320は、<1>乃至<3>の何れかで述べた構成に加えて、外枠部321の台車検知センサ51よりも台車100の移動方向の下流側であって搬送装置10よりも移動方向の上流側に、台車100の逆走を妨げるように設けられた逆走防止機構322を有する。
かかる構成によれば、仮にトレー供給装置320の接地面が平面でなかったとしても、台車100を引き込んだ後に台車100が逆走してトレー供給装置320の外部へと離間してしまうことを防ぐことができる。
【0079】
<6>
また、本発明のトレー供給装置320は、<1>乃至<5>の何れかで述べた構成に加えて、逆走防止機構322は台車100が引き込まれた後に外枠部321から突出する。
かかる構成によれば、仮にトレー供給装置320の接地面が平面でなかったとしても、台車100を引き込んだ後に台車100が逆走してトレー供給装置320の外部へと離間してしまうことを防ぐことができる。
【0080】
<7>
また、本発明の台車100は、払出トレー310を積載面103上に複数積載可能な台車100であって、台車100は、上面から見たとき略長方形の躯体部102と、躯体部102から突出した取手状の係合部である取っ手101と、積載面103から下方に向かって伸びて台車100の接地面から積載面103までの距離よりも短い棒状突起部104と、積載面103の上面に設けられた孔部105と、を有している。
また、台車100を2台以上重ね合わせる際に、下側に位置する躯体部102aの長辺と、上側に位置する躯体部102bの短辺とが互いに平行になるように台車100を重ね合わせると、棒状突起部104と孔部105とが嵌合する位置に配置される。
かかる構成によれば、台車100をトレー供給装置320に用いない時にも、コンパクトに重ねて収納可能となるので、多数重ねたときの荷崩れや、台車100による保管スペースの占有を防ぐことができる。
【0081】
<8>
また本発明の台車100は、<7>に記載の台車100であって、払出トレー310を積載面103上に複数積載可能な台車100であって、台車100は、上面から見たとき略長方形の躯体部102と、躯体部102から突出した取手状の係合部である取っ手101と、積載面103から下方に向かって伸びて台車100の接地面から積載面103までの距離よりも短い棒状突起部104と、積載面103の上面に設けられた孔部105と、を有している。
棒状突起部104と孔部105とは、それぞれが躯体部102の対角に位置するように2つずつ設けられている。
かかる構成によれば、台車100を重ねる方向に依らず、互いに90度回転した状態で2つ以上の台車100を複数台積み重ねることができるから、台車100による保管スペースの占有を防ぐことができる。
【0082】
<9>
また本発明の台車100は、<7>または<8>で述べた台車100の構成に加えて、積載面103には、払出トレー310が積載面103に載置されたときに払出トレー310の移動を規制するために、積載面103から上方に向かって立ち上がった壁部1061、1062が形成され、壁部1061、1062は下方から上方へ向かうにつれて外側に広がる方向へと傾斜して配置される。
かかる構成によれば、第1壁部1061と第2壁部1062とが払出トレー310の底面を取り囲むように位置するとともに、上部に払出トレー310が置かれた際に積載面103の中央へと払出トレー310を誘導することとなるので、容易に台車100上に払出トレー310を積み重ねることができる。
【0083】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された内で適宜変更等が可能である。
【符号の説明】
【0084】
1…薬剤(薬品)
2…輸液(薬品)
10…搬送装置(搬送手段)
20…引き込み装置(台車係止手段)
21…爪状部
30…昇降装置(昇降手段)
40…駆動部(駆動手段)
50…制御部
100…台車
101…取っ手(係合部)
102…躯体部
103…積載面
104…棒状突起部
105…孔部
200…トレー供給装置
300…薬品払出システム
310…払出トレー(薬品トレー)
320…トレー供給装置(薬品トレー供給ユニット)
321…外枠部(ガイド部)
322…逆走防止機構(突出部)
340…搬送路
360…トレー収納装置
X…搬送方向
Y…前後方向