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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024104982
(43)【公開日】2024-08-06
(54)【発明の名称】車両用熱交換器
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/6556 20140101AFI20240730BHJP
   H01M 10/613 20140101ALI20240730BHJP
   H01M 10/625 20140101ALI20240730BHJP
   H01M 10/6568 20140101ALI20240730BHJP
   H01M 10/615 20140101ALI20240730BHJP
【FI】
H01M10/6556
H01M10/613
H01M10/625
H01M10/6568
H01M10/615
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023009456
(22)【出願日】2023-01-25
(71)【出願人】
【識別番号】000152826
【氏名又は名称】株式会社日本クライメイトシステムズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 雄大
(72)【発明者】
【氏名】嘉本 啓悟
【テーマコード(参考)】
5H031
【Fターム(参考)】
5H031AA09
5H031KK08
(57)【要約】
【課題】異種材料を用いることによってバッテリの温度調整の効率が高い熱交換器を構成する場合に、内部を流通する熱交換媒体の漏出を防止する。
【解決手段】金属材料からなるとともにバッテリの外面に接触する第1流路構成プレート10と、金属材料よりも熱伝導率の低い樹脂材料からなるとともに第1流路構成プレート10のバッテリと反対側に接合された第2流路構成プレート20との間には、液状の熱交換媒体が流通可能な流路と、外周シール材とが設けられている。第1流路構成プレート10の周縁部は、第2流路構成プレート20にかしめ固定される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載された走行用モータへ電力を供給するバッテリの温度調整に用いられる車両用熱交換器であって、
金属材料からなるとともに前記バッテリの外面に接触する第1流路構成プレートと、前記金属材料よりも熱伝導率の低い樹脂材料からなるとともに前記第1流路構成プレートの前記バッテリと反対側に接合された第2流路構成プレートとの間には、液状の熱交換媒体が流通可能な流路と、該流路を囲む外周シール材とが設けられ、
前記第1流路構成プレートの周縁部には、前記第2流路構成プレートにかしめ固定されるかしめ部が設けられていることを特徴とする車両用熱交換器。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用熱交換器において、
前記第2流路構成プレートには、前記外周シール材が嵌まる外周溝部が形成されていることを特徴とする車両用熱交換器。
【請求項3】
請求項2に記載の車両用熱交換器において、
前記第2流路構成プレートの周縁部には、前記第1流路構成プレートに重なるように配置されるフランジ部が形成され、
前記かしめ部は、前記フランジ部にかしめ固定されることを特徴とする車両用熱交換器。
【請求項4】
請求項3に記載の車両用熱交換器において、
前記外周溝部は、前記フランジ部における前記第1流路構成プレート側に位置する面に形成されていることを特徴とする車両用熱交換器。
【請求項5】
請求項1に記載の車両用熱交換器において、
複数の前記かしめ部が、前記第1流路構成プレートの周方向に互いに間隔をあけて設けられていることを特徴とする車両用熱交換器。
【請求項6】
請求項1に記載の車両用熱交換器において、
前記流路は複数設けられており、
前記第2流路構成プレートには、複数の前記流路を区画する区画壁部が前記第1流路構成プレートへ向けて突出するように形成されていることを特徴とする車両用熱交換器。
【請求項7】
請求項6に記載の車両用熱交換器において、
前記区画壁部の突出方向先端部と前記第1流路構成プレートとの間には、流路間シール材が設けられていることを特徴とする車両用熱交換器。
【請求項8】
請求項7に記載の車両用熱交換器において、
前記区画壁部の突出方向先端部には、前記流路間シール材が嵌まる流路間溝部が形成されていることを特徴とする車両用熱交換器。
【請求項9】
請求項1に記載の車両用熱交換器において、
前記第2流路構成プレートには、前記流路の上流側部分に連通し、熱交換媒体を前記流路に供給するための入口パイプ部が前記樹脂材料により一体成形されていることを特徴とする車両用熱交換器。
【請求項10】
請求項1に記載の車両用熱交換器において、
前記第2流路構成プレートには、前記流路の下流側部分に連通し、熱交換媒体を前記流路から排出するための出口パイプ部が前記樹脂材料により一体成形されていることを特徴とする車両用熱交換器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両に搭載されるバッテリの温度調整を行う車両用熱交換器に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば電気自動車には、走行用モータに電力を供給する高電圧バッテリが補機用バッテリとは別に搭載されている。高電圧バッテリは、充放電時に発生する熱で高温状態になると電力供給が困難になったり、寿命が短くなったりするので、熱交換器によって冷却するようにしている。また、高電圧バッテリが極低温状態になると充放電性能が極端に低下するため、熱交換器によって加温することも行われている。
【0003】
例えば特許文献1には、液状媒体によってバッテリモジュールを冷却する冷却機構が開示されている。この冷却機構には、隔壁部とカバープレートとによって構成された冷媒流路が設けられており、液状媒体が冷媒流路を流通する間に液状媒体とバッテリモジュールとが熱交換し、バッテリモジュールの冷却が行われるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-125346号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、バッテリの冷却または加温時には、熱交換媒体との間で効率良く熱交換させる必要があるため、熱交換器の材料は、熱伝導率の高い金属材が適している。しかしながら、熱交換器の全体を熱伝導率の高い金属材で構成すると、バッテリとの接触部分以外を介した熱ロスが大きくなる。特に、電気自動車の場合は、バッテリがフロア下の車外に配設される場合が多く、熱ロスが大きくなりがちであり、ひいては、バッテリの温度調整の効率が低下してしまう。
【0006】
そこで、バッテリとの接触部分を熱伝導率の高い金属材で構成し、それ以外の部分を熱伝導率の低い材料で構成することが考えられる。しかし、流路を形成する必要があることから、特許文献1のように複数の部材を組み合わせて熱交換器を構成しなければならない。つまり、異種材料を用い、かつ、複数の部材を組み合わせた場合に、如何にして熱交換媒体が漏出しないようにするかが問題となる。
【0007】
本開示は、かかる点に鑑みたものであり、その目的とするところは、異種材料を用いることによってバッテリの温度調整の効率が高い熱交換器を構成する場合に、内部を流通する熱交換媒体の漏出を防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本開示の一態様では、車両に搭載された走行用モータへ電力を供給するバッテリの温度調整に用いられる車両用熱交換器を前提とすることができる。金属材料からなるとともに前記バッテリの外面に接触する第1流路構成プレートと、前記金属材料よりも熱伝導率の低い樹脂材料からなるとともに前記第1流路構成プレートの前記バッテリと反対側に接合された第2流路構成プレートとの間には、液状の熱交換媒体が流通可能な流路と、該流路を囲む外周シール材とが設けられている。前記第1流路構成プレートの周縁部には、前記第2流路構成プレートにかしめ固定されるかしめ部が設けられている。
【0009】
この構成によれば、バッテリの外面に接触する第1流路構成プレートが流路を構成しているので、流路を流れる熱交換媒体の熱は第1流路構成プレートを介してバッテリに伝わりやすくなる。このとき、第1流路構成プレートが金属材料からなるものなので、例えばアルミニウム合金等の熱伝達率の高い材料とすることが可能になり、その結果、熱交換媒体とバッテリとが第1流路構成プレートを介して効率良く熱交換する。
【0010】
一方、第2流路構成プレートが金属材料よりも熱伝導率の低い樹脂材料で構成されているので、熱交換媒体の熱が第2流路構成プレートからも逃げ難くなる。
【0011】
また、第1流路構成プレートのかしめ部を第2流路構成プレートにかしめ固定することで、第1流路構成プレートと第2流路構成プレートとを一体化し、この状態で第1流路構成プレートと第2流路構成プレートとの間に外周シール材が介在して流路をシールするので、第1流路構成プレートと第2流路構成プレートとの合わせ部から熱交換媒体が漏出しなくなる。
【0012】
前記第2流路構成プレートには、前記外周シール材が嵌まる外周溝部を形成することができる。すなわち、樹脂材料で構成されている第2流路構成プレートは、金属材料に比べて形状の自由度が高いので、第2流路構成プレートには外周溝部の形成が容易にかつ精度良く行える。これにより、外周シール材を第2流路構成プレートに対して高精度に位置決めできる。
【0013】
前記第2流路構成プレートの周縁部には、前記第1流路構成プレートに重なるように配置されるフランジ部を形成することができる。この場合、前記かしめ部を前記フランジ部にかしめ固定することで、強固に固定できる。
【0014】
また、前記溝部は、前記フランジ部における前記第1流路構成プレート側に位置する面に形成することもできる。これにより、かしめ部近傍に外周シール材を配置することができるので、外周シール材によるシール性をより一層高めることができる。
【0015】
複数の前記かしめ部が、前記第1流路構成プレートの周方向に互いに間隔をあけて設けられていてもよい。これにより、かしめ部を変形させてかしめる際に要する力が小さくて済み、かしめ時の作業性が良好になる。
【0016】
前記流路は複数設けられていてもよい。この場合、前記第2流路構成プレートには、複数の前記流路を区画する区画壁部が前記第1流路構成プレートへ向けて突出するように形成することができる。前記区画壁部の突出方向先端部と前記第1流路構成プレートとの間には、前記外周シール材とは別の流路間シール材が設けられていてもよい。これにより、複数の流路を確実に区画形成できる。
【0017】
前記区画壁部の突出方向先端部には、前記流路間シール材が嵌まる流路間溝部が形成されていてもよい。これにより、流路間シール材を第2流路構成プレートに対して高精度に位置決めできる。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように、バッテリの外面に接触する第1流路構成プレートを金属材料で構成し、他の部分を熱伝導率の低い樹脂材料で構成したのでバッテリの温度調整の効率が高い熱交換器とすることができ、さらに、第1流路構成プレートと第2流路構成プレートとの間に流路をシールするための外周シール材を設けたので、流路を流通する熱交換媒体の漏出を未然に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施形態に係る車両用熱交換器の斜視図である。
図2】車両用熱交換器の分解図である。
図3】バッテリ用温度調整装置の概略構造を示す図である。
図4】車両用熱交換器の平面図である。
図5】車両用熱交換器の側面図である。
図6】車両用熱交換器の底面図である。
図7】車両用熱交換器の正面図である。
図8】車両用熱交換器の背面図である。
図9図4におけるIX-IX線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0021】
図1は、本発明の実施形態に係る車両用熱交換器1の斜視図であり、図2は、車両用熱交換器1の分解図である。図3は、車両用熱交換器1を備えたバッテリ用温度調整装置100の概略構造を示す図である。バッテリ用温度調整装置100は、例えば自動車等の車両に搭載されているバッテリBの温度調整に用いられるものである。バッテリBは、自動車に搭載された走行用モータ(図示せず)へ電力を供給するバッテリであり、一般の補機用バッテリに比べて高電圧かつ大容量に構成されている。バッテリBは、例えば自動車のフロアパネルの下の車外に配設されている。バッテリBの底面は、水平方向に延びるように形成されている。このバッテリBは、複数のセルを有するバッテリユニットで構成されていてもよい。バッテリBの種類は特に限定されるものではないが、例えばリチウムイオンバッテリ等を挙げることができる。尚、バッテリBは、例えば車室内や荷室等に配設されていてもよい。
【0022】
自動車は、内燃機関を搭載しない電気自動車であってもよいし、内燃機関と走行用モータの両方を搭載するハイブリッド自動車であってもよい。ハイブリッド自動車の場合、プラグインハイブリッド自動車であってもよい。電気自動車及びプラグインハイブリッド自動車の場合、外部の充電設備から充電することや、走行用モータからの回生によって充電することができる。
【0023】
バッテリ用温度調整装置100は、液状の熱交換媒体を用いてバッテリBの温度調整を行うように構成されている。熱交換媒体としては、例えばクーラント液等を挙げることができるが、これに限られるものではなく、流動性を有する熱交換媒体であればよい。バッテリ用温度調整装置100は、車両用熱交換器1の他に、熱交換媒体の温度調整を行う温度調整部101と、熱交換媒体を送るポンプ102と、入口側配管103と、出口側配管104と、中間配管105とを有している。ポンプ102の吐出側が入口側配管103を介して車両用熱交換器1の入口側に接続されている。また、車両用熱交換器1の出口側が出口側配管104を介して温度調整部101に接続されている。温度調整部101とポンプ102の吸入側とは、中間配管105を介して接続されている。これにより、車両用熱交換器1、温度調整部101及びポンプ102が接続され、熱交換媒体の循環が可能な循環経路が構成されている。
【0024】
温度調整部101は、例えば外部空気と熱交換媒体とを熱交換させて熱交換媒体を冷却する熱交換器で構成されていてもよいし、熱交換媒体を加温するヒータ等で構成されていてもよいし、熱交換媒体の冷却と加温の両方が行える装置等で構成されていてもよい。また、図示しないが、熱交換媒体を冷却するための温度調整部と、熱交換媒体を加温するための温度調整部とが別々に設けられていてもよい。バッテリBを冷却する場合には、温度調整部101によって熱交換媒体を冷却し、一方、バッテリBを加温する場合には、温度調整部101によって熱交換媒体を加温する。温度調整部101は、図示しない制御部によって制御される。制御部は、バッテリBの温度状態、バッテリBの充放電状態を検出し、バッテリBの温度範囲が適切な範囲内となるように、温度調整部101を制御する。
【0025】
ポンプ102も制御部によって制御される。制御部は、バッテリBの温度状態、バッテリBの充放電状態を検出し、バッテリBの温度範囲が適切な範囲内となるように、ポンプ102を制御する。
【0026】
車両用熱交換器1は、バッテリBと熱交換媒体との間で熱交換させ、バッテリBの温度範囲が適切な範囲内となるように、当該バッテリBの温度調整に用いられるものである。車両用熱交換器1をバッテリBの下に配設した場合には、バッテリBを下から温度調整することができるが、これに限らず、車両用熱交換器1をバッテリBの上に配設してもよいし、バッテリBの側方に配設してもよい。また、バッテリBを上下に挟むように複数の車両用熱交換器1を配設してもよい。また、複数の車両用熱交換器1を直列または並列に接続して使用してもよい。「直列」とは、熱交換媒体の流れ方向に複数の車両用熱交換器1を配列して接続することであり、「並列」とは、熱交換媒体が同時に複数の車両用熱交換器1に流入するように、車両用熱交換器1を配列して接続することである。
【0027】
本実施形態では、バッテリBの下に車両用熱交換器1が配設されている場合について説明する。車両用熱交換器1は、当該車両用熱交換器1の上側に配置される上側流路構成プレート(第1流路構成プレート)10と、当該車両用熱交換器1の下側に配置される下側流路構成プレート(第2流路構成プレート)20とを備えている。バッテリBの下に車両用熱交換器1が配設されるので、上側流路構成プレート10がバッテリBの底面(外面)に接触する接触部分を有する部材であり、一方、下側流路構成プレート20が上側流路構成プレート10の下に配置され、当該上側流路構成プレート10の下側(バッテリBと反対側)に接合された部材である。
【0028】
また、車両用熱交換器1には、ポンプ102から送給された熱交換媒体を当該車両用熱交換器1の内部に流入させるための入口パイプ部30と、熱交換媒体を車両用熱交換器1の外部へ流出させるための出口パイプ部40とが設けられている。この実施形態では、入口パイプ部30が設けられている側を正面とし、出口パイプ部40が設けられている側を背面とする。説明の便宜を図るために、正面を車両前側とし、背面を車両後側とし、さらに、車両前側に向かって見た時に右となる側を右側とし、左になる側を左側とする。車両の左右方向は幅方向と一致している。この方向の定義は、車両用熱交換器1を自動車に搭載した時の方向を限定するものではなく、前後方向が反対になるように車両に搭載してもよいし、左右方向が車両前後方向に向くように搭載してもよい。
【0029】
図4図8にも示すように、車両用熱交換器1は全体として、バッテリBの底面に沿うように前後方向(所定方向)に長い矩形状をなしており、従って、上側流路構成プレート10及び下側流路構成プレート20は共に前後方向に延びるように形成される。また、前後方向に長い形状であることから、車両用熱交換器1の前後方向の寸法は、左右方向の寸法よりも短くなる。尚、車両用熱交換器1は左右方向に長い形状であってもよいし、前後方向の寸法と左右方向の寸法とが同じ形状であってもよい。
【0030】
図9に示すように、上側流路構成プレート10と下側流路構成プレート20との間には、熱交換媒体が流通可能な第1流路R1、第2流路R2、第3流路R3、第4流路R4及び第5流路R5が設けられている。第1~第5流路R1~R5は、前後方向に延びており、前後方向と直交する左右方向に互いに間隔をあけて設けられている。第1~第5流路R1~R5の長さ(前後方向の寸法)は同一とされ、また、第1~第5流路R1~R5の幅(左右方向の寸法)も同一とされている。さらに、第1~第5流路R1~R5の上下方向の寸法も同一とされている。
【0031】
尚、熱交換媒体が流通可能な流路の数は、5つに限られるものではなく、4つ以下または6つ以上の任意の数であってもよく、例えば1つの流路のみ有する構造であってもよい。また、複数の流路を設ける場合には、全ての流路の長さが同じでなくてもよく、長さの異なる流路を設けてもよい。また、全ての流路の幅が同じでなくてもよく、幅の異なる流路を設けてもよい。
【0032】
上側流路構成プレート10は、バッテリBの底面に接触する部材であり、バッテリBに接触した部分を介して熱交換媒体とバッテリBとの間で熱交換させるようにしている。上側流路構成プレート10におけるバッテリBへの接触部分は、第1接触部11、第2接触部12、第3接触部13、第4接触部14及び第5接触部15とされている。第1~第5接触部11~15は、バッテリBの底面に沿って前後方向に延びる細長い形状とされている。
【0033】
上側流路構成プレート10における第1~第5接触部11~15以外の部分は、非接触部16とされている。第1~第5接触部11~15は、非接触部16よりも上に位置付けられている。第1~第5接触部11~15は、それぞれ、第1~第5流路R1~R5に対応するように、左右方向に互いに間隔をあけて設けられている。
【0034】
上側流路構成プレート10は、例えばアルミニウム合金等の熱伝導率の高い金属材料からなる。この実施形態では、アルミニウム合金製の板材によって上側流路構成プレート10が構成されている。第1~第5接触部11~15及び非接触部16は、1枚の板材に一体成形されており、例えば板材をプレス成形することにより、第1~第5接触部11~15と非接触部16を高さが異なるように形成することができる。尚、第1~第5接触部11~15及び非接触部16は別部材で構成されていてもよく、この場合、別部材で構成された第1~第5接触部11~15及び非接触部16を接合することにより、上側流路構成プレート10を得ることができる。
【0035】
第1接触部11は、第1流路R1の上側の壁部を構成する部分であり、第1接触部11の下面が第1流路R1に臨んでいる。これにより、第1流路R1を流れる熱交換媒体が第1接触部11の下面に接することになり、熱伝導率の高い第1接触部11を介してバッテリBと効率良く熱交換可能になる。同様に、第2~第5接触部12~15は、それぞれ第2~第5流路R2~R5の上側の壁部を構成する部分であり、第2~第5接触部12~15の下面が第2~第5流路R2~R5に臨んでいる。
【0036】
非接触部16は、上側流路構成プレート10の周囲に全周に亘って環状に設けられるとともに、隣合う第1~第5接触部11~15の間にも介在している。したがって、第1接触部11と第2接触部12とは左右方向に互いに間隔をあけて設けられるとともに、互いに平行に延びている。第2接触部12と第3接触部13、第3接触部13と第4接触部14、及び、第4接触部14と第5接触部15も、第1接触部11及び第2接触部12と同様に左右方向に互いに間隔をあけて設けられるとともに、互いに平行に延びている。
【0037】
また、必要に応じて、第1~第5接触部11~15のうち、任意の1つ以上を省略することもできる。例えばバッテリBの形状や配置等により、第3接触部13の上にバッテリBが存在しない場合には、プレス成形時に第3接触部13が成形されないように金型の形状を変更する。これにより、第3接触部13の無い上側流路構成プレート10を得ることができる。
【0038】
上側流路構成プレート10の周縁部には、下方へ突出して周方向に連続して環状に延びる環状板部16aが形成されている。環状板部16aの内側に下側流路構成プレート20が配置されるようになっている。環状板部16aの下側部分には、下側流路構成プレート20にかしめ固定される複数のかしめ部16bが上側流路構成プレート10の周方向に互いに間隔をあけて設けられている。成形直後のかしめ部16bは、環状板部16aの下側部分から下方へ向けて突出するように形成された片状またはタブ状をなしている。かしめ部16bの厚みは、接触部11~15の厚みよりも薄く設定されている。
【0039】
下側流路構成プレート20は、上側流路構成プレート10を構成する金属材料よりも熱伝導率の低い樹脂材料で構成されている。この樹脂材料は、熱交換媒体による腐食や劣化、熱による劣化等が起こらないように構成された材料であり、熱伝導率がアルミニウム合金の1/1000程度に設定されている。
【0040】
下側流路構成プレート20は、第1~第5流路R1~R5の底壁を構成する底壁部21と、底壁部21の周縁部から上方向及び下方向に突出して当該底壁部21の周方向に連続して延びる周壁部22とを有している。周壁部22の内側に第1~第5流路R1~R5が形成されるので、周壁部22は、第1~第5流路R1~R5の周囲に位置する部分である。周壁部22の上端部は、外方へ向けて突出するとともに当該底壁部21の周方向に連続して環状に延びるフランジ部22aを有している。フランジ部22aは、上側流路構成プレート10の周縁部に位置する非接触部16の下面に重なるように形成されている。上側流路構成プレート10のかしめ部16bは、フランジ部22aにかしめ固定される。
【0041】
上側流路構成プレート10の周縁部に位置する非接触部16と、下側流路構成プレート20のフランジ部22aとの間には、外周シール材50が設けられている。外周シール材50は、第1~第5流路R1~R5を囲む環状に形成されており、上側流路構成プレート10の周縁部と下側流路構成プレート20の周縁部との間をシールするための部材である。外周シール材50は、例えばゴムや熱可塑性エラストマー等の弾性材料で構成されている。この実施形態では、図2に示すように、上側流路構成プレート10及び下側流路構成プレート20が矩形状であることから、外周シール材50も矩形状とされている。
【0042】
図9に示すように、フランジ部22aの上面、即ち、フランジ部22aにおける上側流路構成プレート10側に位置する面には、外周シール材50が嵌まる外周溝部22bが形成されている。外周溝部22bは、外周シール材50の形状と同じ矩形の環状をなしている。外周溝部22bの深さ方向の寸法は、非圧縮状態の外周シール材50の上下方向の寸法よりも短く設定されている。これにより、外周溝部22bに収容された外周シール材50の上側部分は、当該外周溝部22bから上方へ突出することになり、上側流路構成プレート10の非接触部16の下面に確実に接触する。
【0043】
底壁部21の上側には、第1~第5流路R1~R5を区画するための区画壁部として、第1区画壁部23、第2区画壁部24、第3区画壁部25及び第4区画壁部26が上方へ向けて(上側流路構成プレート10へ向けて)突出するように設けられている。第1区画壁部23、第2区画壁部24、第3区画壁部25及び第4区画壁部26は、第1~第5接触部11~15の間隔に対応するように、左右方向に間隔をあけて配置されるとともに、前後方向に延びている。第1区画壁部23、第2区画壁部24、第3区画壁部25及び第4区画壁部26は互いに平行である。
【0044】
第1区画壁部23の突出方向先端部(上端部)と上側流路構成プレート10との間には、第1流路間シール材51が設けられている。第1流路間シール材51は、外周シール材50と同様な材料で構成されており、第1区画壁部23に沿って前後方向に直線状に延びている。第1流路間シール材51は、非接触部16の下面における第1接触部11と第2接触部12との間に接触するように配置されている。第1区画壁部23の突出方向先端部には、第1流路間シール材51が嵌まる第1流路間溝部23aが形成されている。第1流路間溝部23aは、第1流路間シール材51の形状と同じ直線状に延びている。第1流路間溝部23aの深さ方向の寸法は、非圧縮状態の第1流路間シール材51の上下方向の寸法よりも短く設定されている。これにより、第1流路間溝部23aに収容された第1流路間シール材51の上側部分は、当該第1流路間溝部23aから上方へ突出することになり、上側流路構成プレート10の非接触部16の下面に確実に接触する。
【0045】
第2区画壁部24の突出方向先端部と上側流路構成プレート10との間には、第1流路間シール材51と同様な第2流路間シール材52が設けられており、この第2流路間シール材52は、第2区画壁部24の突出方向先端部に形成された第2流路間溝部24aに嵌め込まれている。
【0046】
第3区画壁部25の突出方向先端部と上側流路構成プレート10との間には、第1流路間シール材51と同様な第3流路間シール材53が設けられており、この第3流路間シール材53は、第3区画壁部25の突出方向先端部に形成された第3流路間溝部25aに嵌め込まれている。
【0047】
第4区画壁部26の突出方向先端部と上側流路構成プレート10との間には、第1流路間シール材51と同様な第4流路間シール材54が設けられており、この第4流路間シール材54は、第4区画壁部26の突出方向先端部に形成された第4流路間溝部26aに嵌め込まれている。
【0048】
周壁部22の左側部分と第1区画壁部23との間に第1流路R1が区画形成され、第1区画壁部23と第2区画壁部24との間に第2流路R2が区画形成され、第2区画壁部24と第3区画壁部25との間に第3流路R3が区画形成され、第3区画壁部25と第4区画壁部26との間に第4流路R4が区画形成され、第4区画壁部25と周壁部22の右側部分との間に第5流路R5が区画形成されている。
【0049】
底壁部21の下側には、第1リブ21a、第2リブ21b、第3リブ21c及び第4リブ21dが下方へ突出するように設けられている。第1リブ21a、第2リブ21b、第3リブ21c及び第4リブ21dは互いに平行である。第1リブ21aは、第1区画壁部23の真下に位置付けられており、前後方向に延びている。また、第2リブ21bは、第2区画壁部24の真下に位置付けられており、第1リブ21aと同様に前後方向に延びている。また、第3リブ21cは、第3区画壁部25の真下に位置付けられており、第1リブ21aと同様に前後方向に延びている。また、第4リブ21dは、第4区画壁部26の真下に位置付けられており、第1リブ21aと同様に前後方向に延びている。
【0050】
第1リブ21a、第2リブ21b、第3リブ21c及び第4リブ21dの厚みは、第1区画壁部23、第2区画壁部24、第3区画壁部25及び第4区画壁部26の厚みよりも薄く設定されている。尚、第1リブ21a、第2リブ21b、第3リブ21c及び第4リブ21dは必要に応じて設ければよく、省略してもよい。
【0051】
図2図6図7に示すように、上側流路構成プレート10と下側流路構成プレート20との間における前側部分には、車両用熱交換器1の外部から流入する熱交換媒体を第1~第5流路R1~R5に分流させるための分流空間S1が設けられている。分流空間S1は、左右方向に長く延びるように形成されており、分流空間S1の左側部分は第1流路R1の上流側に連通し、分流空間S1の右側部分は第5流路R5の上流側に連通している。分流空間S1の左右方向中間部は、第2~第4流路R2~R4の上流側に連通している。
【0052】
下側流路構成プレート20の底壁部21の前側部分には、分流空間S1を形成するための前側膨出部(上流側膨出部)21eが下方へ膨出するように形成されている。従って、分流空間S1の上下方向の寸法は、第1~第5流路R1~R5の上下方向の寸法よりも長く設定されている。また、前側膨出部21eの左側部分は周壁部22の左側部分に達しており、また、前側膨出部21eの右側部分は周壁部22の右側部分に達している。
【0053】
下側流路構成プレート20には、熱交換媒体を第1~第5流路R1~R5に供給するための入口パイプ部30が、当該下側流路構成プレート20を構成している樹脂材料により一体成形されている。入口パイプ部30を一体成形することにより、入口パイプ部30の下側流路構成プレート20に対する相対的な位置精度を高めることができる。
【0054】
入口パイプ部30は、周壁部22の前側部分における左寄りの部位から前方へ向けて突出している。入口パイプ部30の下流側は、分流空間S1を介して第1~第5流路R1~R5と連通している。入口パイプ部30の上流側には、図3に示す入口側配管103の下流側が接続されている。入口パイプ部30が左寄りに位置しているため、入口パイプ部30から流入する熱交換媒体は分流空間S1の左寄りの部分に流入することになる。尚、入口パイプ部30は、右寄りに形成されていてもよいし、左右方向中間部に形成されていてもよい。
【0055】
一方、上側流路構成プレート10と下側流路構成プレート20との間における後側部分には、第1~第5流路R1~R5を流通した熱交換媒体を合流させて車両用熱交換器1の外部へ流出させるための合流空間S2が設けられている。合流空間S2は、分流空間S1と同様に、左右方向に長く延びるように形成されており、合流空間S2の左側部分は第1流路R1の下流側に連通し、合流空間S2の右側部分は第5流路R5の下流側に連通している。合流空間S2の左右方向中間部は、第2~第4流路R2~R4の下流側に連通している。
【0056】
下側流路構成プレート20の底壁部21の後側部分には、合流空間S2を形成するための後側膨出部(下流側膨出部)21fが下方へ膨出するように形成されている。従って、合流空間S2の上下方向の寸法は、第1~第5流路R1~R5の上下方向の寸法よりも長く設定されている。また、後側膨出部21fの左側部分は周壁部22の左側部分に達しており、また、後側膨出部21fの右側部分は周壁部22の右側部分に達している。
【0057】
下側流路構成プレート20には、熱交換媒体を第1~第5流路R1~R5から排出するための出口パイプ部40が、当該下側流路構成プレート20を構成している樹脂材料により一体成形されている。出口パイプ部40は、周壁部22の後側部分における右寄りの部位から後方へ向けて突出している。出口パイプ部40の上流側は、合流空間S2を介して第1~第5流路R1~R5と連通している。出口パイプ部40の上流側には、図3に示す出口側配管104の下流側が接続されている。出口パイプ部40が右寄りに位置しているため、合流空間S2の右寄りの部分から熱交換媒体が流出することになる。尚、出口パイプ部40は、左寄りに形成されていてもよいし、左右方向中間部に形成されていてもよいが、出口パイプ部40と入口パイプ部30とは左右方向について互いに反対側に位置するように設けられているのが好ましい。
【0058】
(上側流路構成プレート10と下側流路構成プレート20との一体化)
上側流路構成プレート10と下側流路構成プレート20とを一体化する際には、まず、外周シール材50を外周溝部22bに収容し、第1~第4流路間シール材51~54を第1~第4流路間溝部23a、24a、25a、26aにそれぞれ収容する。その後、上側流路構成プレート10のかしめ部16bを、環状板部16aの下側部分から下方へ向けて突出する形状(図2に示す形状)としたまま、下側流路構成プレート20を上側流路構成プレート10の環状板部16aの内側に配置する。
【0059】
次いで、かしめ部16bを内側へ向けて折り曲げて塑性変形させ、下側流路構成プレート20のフランジ部22aの側面及び下面に強く接触させることにより、かしめ部16bがフランジ部22aにかしめ固定される。これにより、外周シール材50及び第1~第4流路間シール材51~54が上側流路構成プレート10の非接触部16の下面に密着して弾性変形し、シール性が得られる。
【0060】
かしめ部16bの厚みが薄く設定されているので、かしめ時に加わる力は局所的なものなのになる。これにより、上側流路構成プレート10及び下側流路構成プレート20に生じる負荷が小さくなり、上側流路構成プレート10及び下側流路構成プレート20の寸法安定性が向上する。
【0061】
(実施形態の作用効果)
ポンプ102から送給された熱交換媒体は、車両用熱交換器1の入口パイプ部30から分流空間S1に流入した後、第1~第5流路R1~R5に分流する。第1~第5流路R1~R5に分流した熱交換媒体は、第1~第5流路R1~R5内を流通する間に、第1~第5接触部11~15を介してバッテリBと熱交換する。熱交換媒体がバッテリBの温度よりも低温であればバッテリBを冷却することができ、一方、熱交換媒体がバッテリBの温度よりも高温であればバッテリBを加温することができる。これにより、バッテリBの温度調整が可能になる。このとき、第1~第5接触部11~15は、熱伝導率の高い金属材料からなる部分なので、熱交換媒体とバッテリBとが第1~第5接触部11~15を介して効率良く熱交換する。
【0062】
第1~第5流路R1~R5内を流通した熱交換媒体は、合流空間S2に流入して合流した後、出口パイプ部40から出口側配管104に流入する。熱交換媒体が車両用熱交換器1の内部を流れている間、下側流路構成プレート20が金属材料よりも熱伝導率の低い樹脂材料で構成されているので、熱交換媒体の熱が下側流路構成プレート20から逃げ難くなる。特に、車両用熱交換器1が自動車の外部に設置されている場合には、外気と熱交換媒体との熱交換を抑制することができるので、バッテリBの温度調節が効率良く行える。
【0063】
上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0064】
以上説明したように、本発明に係る車両用熱交換器は、例えば車両に搭載されるバッテリの温度調整を行う場合に利用できる。
【符号の説明】
【0065】
1 車両用熱交換器
10 上側流路構成プレート(第1流路構成プレート)
11~15 第1~第5接触部
16 非接触部
16b かしめ部
20 下側流路構成プレート(第2流路構成プレート)
22a フランジ部
22b 外周溝部
23 区画壁部
23a 流路間溝部
30 入口パイプ部
40 出口パイプ部
50 外周シール材
51~54 第1~第4流路間シール材
S1 分流空間
S2 合流空間
B バッテリ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9