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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024104983
(43)【公開日】2024-08-06
(54)【発明の名称】フィルター材の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 39/16 20060101AFI20240730BHJP
   B32B 5/26 20060101ALI20240730BHJP
【FI】
B01D39/16 A
B01D39/16 E
B32B5/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023009460
(22)【出願日】2023-01-25
(71)【出願人】
【識別番号】000004503
【氏名又は名称】ユニチカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089152
【弁理士】
【氏名又は名称】奥村 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】森岡 辰太
(72)【発明者】
【氏名】大矢 康平
(72)【発明者】
【氏名】高宮 和博
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 孝司
【テーマコード(参考)】
4D019
4F100
【Fターム(参考)】
4D019AA01
4D019BA13
4D019BB03
4D019BB10
4D019BC15
4D019CB06
4D019DA01
4D019DA02
4D019DA03
4D019DA04
4D019DA06
4F100AK03A
4F100AK07
4F100AK42
4F100AK42A
4F100BA02
4F100BA07
4F100DG01
4F100DG01A
4F100DG15
4F100DG15B
4F100EC01
4F100EC01A
4F100EC01B
4F100EJ86A
4F100EJ86B
4F100GB56
4F100JD02
4F100YY00B
(57)【要約】      (修正有)
【課題】除電処理を行っても、ビル空調に用いる中高性能エアフィルター材に使用しうる捕集効率及び通気度を持つフィルター材の製造方法を提供する。
【解決手段】ポリエチレンテレフタレートとポリオレフィンとが分割可能な態様で接合されている分割型短繊維よりなる短繊維ウェブを準備し、ポリプロピレン長繊維不織布の片面に前記短繊維ウェブを積層した後、高圧水流処理を施して一体化ウェブを得る。横断面形状が略Y字の下端で上下左右に連結した

形状となっているポリエステル長繊維を構成繊維とする不織布基材を準備する。一体化ウェブと不織布基材とを積層して積層体を得る。この積層体の一体化ウェブ側から高圧水流処理を施して、不織布基材と一体化ウェブが積層接合された複合不織布を得る。この複合不織布から水を除去してフィルター材を得る。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊度1~5デシテックスの長繊維よりなる長繊維不織布の片面に、ポリエチレンテレフタレートとポリオレフィンとが分割可能な態様で接合されている分割型短繊維よりなる短繊維ウェブを積層した後、該短繊維ウェブ側から高圧水流処理を施すことにより、該分割型短繊維を分割割繊させ該ポリエチレンテレフタレート極細短繊維及び該ポリオレフィン極細短繊維を生成させると共に、該長繊維と両極細短繊維とを交絡させ、該長繊維不織布と該両極細短繊維とが一体化した一体化ウェブを準備する工程、
横断面形状が略Y字の下端で上下左右に連結した
形状である繊度6~30デシテックスのポリエステル長繊維を構成繊維とする不織布基材を準備する工程、
前記一体化ウェブと前記不織布基材とを積層して積層体を得る工程、
前記積層体の前記一体化ウェブ側から高圧水流処理を施すことにより、前記不織布基材と前記一体化ウェブとの境界で、前記ポリエステル長繊維、前記ポリエチレンテレフタレート極細短繊維及び前記ポリオレフィン極細短繊維を交絡させて複合不織布を得る工程及び
前記複合不織布から前記高圧水流処理に由来する水を除去する脱水乾燥工程を具備するフィルター材の製造方法。
【請求項2】
脱水乾燥工程の後、さらに除電工程を付加する請求項1記載のフィルター材の製造方法。
【請求項3】
一体化ウェブが両極細短繊維量の多い表面と、該両極細短繊維量の少ない裏面とを有し、該一体化ウェブの該表面と不織布基材とが当接するようにして積層し積層体を得た後、該一体化ウェブの該裏面側から高圧水流処理を施す請求項1記載のフィルター材の製造方法。
【請求項4】
分割型短繊維の横断面は円形であって、ポリエチレンテレフタレートとポリオレフィンとは各々、横断面が楔形となっている請求項1記載のフィルター材の製造方法。
【請求項5】
楔形のポリエチレンテレフタレートとポリオレフィンとが、各々10個存在する請求項4記載のフィルター材の製造方法。
【請求項6】
生成するポリエチレンテレフタレート極細短繊維及びポリオレフィン極細短繊維の繊度が0.055~0.242デシテックスである請求項1記載のフィルター材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気等の気体の濾過に使用するフィルター材の製造方法に関し、特にビル空調に用いる中高性能エアフィルター材の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、高捕集効率及び低圧力損失(高通気度)を持つフィルター材として、極細繊維層と太繊度繊維層とが積層され、層間で極細繊維及び太繊度繊維が交絡してなる複合不織布を用いることが行われている(特許文献1)。具体的には、ポリプロピレン極細繊維よりなるメルトブロー不織布と、ポリエチレンテレフタレート太繊度繊維よりなるスパンレース不織布とを積層した積層体に、メルトブロー不織布側から高圧水流を噴射して、ポリプロピレン極細繊維とポリエチレンテレフタレート太繊度繊維とを交絡させた後、ハイドロチャージ法により帯電処理を行ってフィルター材を得ることが記載されている(特許文献1、実施例)。
【0003】
しかしながら、かかる方法で得られたフィルター材を長期に亙って使用していると、極細繊維表面の電荷が消失して、捕集効率が低下するという問題があった。このため、ビル空調に用いる中高性能エアフィルター材等においては、フィルター材を除電した後の捕集効率が一定以上の性能を持つものしか採用されず、特許文献1記載のフィルター材は採用できない。また、使用しているポリエチレンテレフタレート太繊度繊維は、横断面が円形のものであり、太繊度繊維相互間の間隙が密となりやすく、高通気度にしにくいという憾みがあった。
【0004】
そこで、除電をした後においても、ビル空調に用いる中高性能エアフィルター材等に使用しうる捕集効率及び通気度を持つフィルター材を得るため、本件発明者等は特許文献2記載の発明を提案した。
【0005】
【特許文献1】WO2020/137605
【特許文献2】特願2023-2779号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、特許文献2記載の発明の改良発明であり、除電をした後においても、ビル空調に用いる中高性能エアフィルター材等に使用しうる捕集効率及び通気度を持つフィルター材を、より合理的に製造しうることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明は、繊度1~5デシテックスの長繊維よりなる長繊維不織布の片面に、ポリエチレンテレフタレートとポリオレフィンとが分割可能な態様で接合されている分割型短繊維よりなる短繊維ウェブを積層した後、該短繊維ウェブ側から高圧水流処理を施すことにより、該分割型短繊維を分割割繊させ該ポリエチレンテレフタレート極細短繊維及び該ポリオレフィン極細短繊維を生成させると共に、該長繊維と両極細短繊維とを交絡させ、該長繊維不織布と該両極細短繊維とが一体化した一体化ウェブを準備する工程、横断面形状が略Y字の下端で上下左右に連結した
なる形状(略Y字の下端で上下左右に連結した形状となっているので、以下「略Y4形状」という。)である繊度6~30デシテックスのポリエステル長繊維を構成繊維とする不織布基材を準備する工程、前記一体化ウェブと前記不織布基材とを積層して積層体を得る工程、前記積層体の前記一体化ウェブ側から高圧水流処理を施すことにより、前記不織布基材と前記長繊維不織布付き極細短繊維ウェブとの境界で、前記ポリエステル長繊維、前記ポリエチレンテレフタレート極細短繊維及び前記ポリオレフィン極細短繊維を交絡させて複合不織布を得る工程及び前記複合不織布から前記高圧水流処理に由来する水を除去する脱水乾燥工程を具備するフィルター材の製造方法に関するものである。
【0008】
まず、本発明で用いる長繊維不織布について説明する。この長繊維不織布は、ポリプロピレン長繊維やポリエステル長繊維等の長繊維で構成されてなり、長繊維相互間が部分的な熱融着等の手段で結合されてなるものである。ポリプロピレン長繊維等の長繊維は、不織布基材を構成するポリエステル長繊維とは異なり、その横断面が一般的に円形である。また、ポリプロピレン長繊維等の長繊維の繊度は、1~5デシテックスである。繊度が1デシテックス未満のものは溶融紡糸法では製造しにくい。繊度が5デシテックスを超えると、生成する極細短繊維との繊度差が大きくなり、長繊維不織布と極細短繊維とが一体化しにくくなる。この長繊維不織布は比較的薄手のもので、目付は5~20g/m2程度である。目付が5g/m2未満であると、長繊維不織布が製造しにくくなる傾向が生じる。一方、目付が20g/m2を超えると、生成する極細短繊維が高圧水流の付与によって長繊維不織布を貫通しにくくなり、長繊維不織布と極細短繊維が一体化しにくくなる。
【0009】
次に、本発明で用いる短繊維ウェブについて説明する。この短繊維ウェブは、ポリエチレンテレフタレートとポリオレフィンとが分割可能な態様で接合されている分割型短繊維が集積されてなるものである。本発明で分割可能とは、高圧水流が分割型短繊維に衝突することによる物理的衝撃によって、分割割繊して極細短繊維を生成するものを言う。かかる分割型短繊維の横断面は、たとえば図1のような形状となっている。すなわち、分割型短繊維の横断面は円形となっており、ポリエチレンテレフタレートとポリオレフィンとの横断面は各々楔形となって交互に接合されてなるものである。本発明において、ポリエチレンテレフタレートとポリオレフィンで選択されているのは、分割割繊による生成したポリエチレンテレフタレート極細短繊維とポリオレフィン極細短繊維とが混合されていると、高圧水流処理によって両者が摩擦しても、帯電しにくいためである。特に、この観点から、ポリオレフィンとしてはポリプロピレンを選択するのが好ましい。
【0010】
分割型短繊維の繊度は、任意に決定しうる事項であるが、好ましくは1.1~5.5デシテックスであるのが好ましい。分割型短繊維の繊度が1.1デシテックス未満であると、生成する各極細短繊維の繊度を、例えば0.055デシテックス未満という程度に細くしなければならず、現実的に分割型短繊維が製造しにくくなる。また、繊度が5.5デシテックスを超えると、生成する各極細短繊維の繊度も太くなり、捕集効率が低下し、ビル空調に用いる中高性能エアフィルター材として不適当である。なお、分割割繊により生成する極細短繊維の繊度は0.055~0.242デシテックス程度であるのが好ましい。また、分割型短繊維の繊維長は、従来公知の短繊維における繊維長と同等程度でよく、例えば、5~120mm程度であるのが好ましい。
【0011】
分割型短繊維が集積されてなる短繊維ウェブの目付は、20~70g/m2であるのが好ましい、この目付が20g/m2未満であると、生成する極細短繊維よりなる層の繊維密度が低下し、捕集効率が低下し、ビル空調に用いる中高性能エアフィルター材として不適当である。一方、目付が70g/m2を超えると、繊維密度が高すぎて、通気度が低下する傾向が生じる。短繊維ウェブは、分割型短繊維が単に集積されたものであっても、水流処理等による予備処理で、分割型短繊維相互間が絡合してなるものであってもよい。
【0012】
長繊維不織布の片面に短繊維ウェブを積層して、短繊維ウェブ側から高圧水流処理を施す。長繊維不織布側から高圧水流処理を施すと、搬送コンベアに短繊維ウェブ中の繊維が絡んで、一体化ウェブを搬送コンベアから剥離しにくくなる。しかしながら、短繊維ウェブ側から高圧水流処理を施した後であれば、長繊維不織布側から高圧水流処理を施してもよい。この場合は、短繊維ウェブ中の繊維が長繊維不織布にある程度絡んでいるため、搬送コンベアに短繊維ウェブ中の繊維が絡みにくいからである。高圧水流処理は、高圧の水流を短繊維ウェブに衝突させる処理であり、具体的には、1~12MPaの圧力の水流を短繊維ウェブに衝突させることにより、行うのが好ましい。水流の圧力が1MPa未満であると、分割型短繊維を分割割繊しにくくなる傾向が生じる。また、水流の圧力が12MPaを超えると、長繊維不織布と極細短繊維との交絡が強くなりすぎて、後の工程で不織布基材と極細短繊維とが交絡しにくくなる。この高圧水流処理により、分割型短繊維が分割割繊され、ポリエチレンテレフタレート極細短繊維とポリオレフィン極細短繊維が生成する。また、長繊維不織布の長繊維と、生成したポリエチレンテレフタレート極細短繊維及びポリオレフィン極細短繊維が交絡する。以上により、長繊維不織布と両極細短繊維とが一体化した一体化ウェブが得られる。この一体化ウェブは、一般的に、短繊維ウェブを積層した面の方が極細短繊維量が多い。すなわち、高圧水流を付与した面の方が極細短繊維量が多く、高圧水流が排出された面の方が極細短繊維量が少なくなっている。
【0013】
次に、本発明で用いる不織布基材について説明する。この不織布基材は、構成繊維であるポリエステル長繊維の横断面形状に特徴を有するものである。この横断面形状は、図2に示すような略Y字を四個持つものである。そして、略Y字の下端1で上下左右に連結して、図3に示すような略Y4形状となっている。この略Y4形状は、四個の凹部2と八個の凸部3と四個の小凹部4とを有している。四個の凹部2は、凸部3間に深く窪んだ形状となっている。なお、かかる横断面形状を持つポリエステル長繊維は、中央の略+字部5と、略+字部5の各先端に連結された四個の略V字部6により、高剛性となっている。したがって、本発明で用いる不織基材は、フィルター材の骨材として機能するものである。また、かかる横断面形状を持っているため、ポリエステル長繊維相互間の間隙が広くなり、高通気度の骨材となる。
【0014】
ポリエステル長繊維の繊度は、6~30デシテックスであり、8~16デシテックスであるのが好ましい。繊度が低くなると、剛性が低下しフィルター材の骨材として不適当になる。ポリエステル長繊維は、一種類のポリエステルからなるものでもよいが、低融点ポリエステルと高融点ポリエステルとを組み合わせるのが好ましい。すなわち、ポリエステル長繊維の横断面形状の略V字部6が低融点ポリエステルで形成され、略+字部5が高融点ポリエステルで形成された複合型するのが好ましい。複合型ポリエステル長繊維を集積した後、低融点ポリエステルを軟化又は溶融させた後、固化させることにより、ポリエステル長繊維相互間を低融点ポリエステルによって融着させた不織布基材が得られるからである。不織布基材の目付は任意であるが、一般に50g/m2以上であるのが好ましく、特に50~100g/m2程度であるのが最も好ましい。目付が低すぎると、剛性が低下し、フィルター材の骨材としての機能が低下する傾向が生じる。
【0015】
一体化ウェブと不織布基材とを積層し積層体を得る。そして、この積層体に、一体化ウェブ側から高圧水流処理を施す。高圧水流処理は、高圧の水流を一体化ウェブに衝突させる処理であり、具体的には、1~12MPaの圧力の水流を一体化ウェブに衝突させることにより、行うのが好ましい。本発明に係る方法で用いる不織布基材は、横断面が略Y4形状であるポリエステル長繊維を構成繊維とするものであるため、ポリエステル長繊維相互間の間隙が広く、高圧水流が通過しやすいという利点がある。したがって、水流が不織布基材と一体化ウェブ間に滞留しにくく、高圧水流により、一体化ウェブ中の極細短繊維と不織布基材を構成しているポリエステル繊維との交絡が促進される。水流の圧力が1MPa未満であると、極細短繊維とポリエステル繊維との交絡が弱くなり、一体化ウェブと不織布基材とが剥離しやすくなる傾向が生じる。また、水流の圧力が12MPaを超えると、一体化ウェブの表面が荒れる傾向が生じる。この高圧水流処理により、一体化ウェブと不織布基材との境界で、ポリエステル長繊維、ポリエチレンテレフタレート極細短繊維及びポリオレフィン極細短繊維が交絡する。以上により、一体化ウェブと不織布基材とが積層接合された複合不織布が得られる。
【0016】
また、一体化ウェブが極細短繊維量の多い表面と、極細短繊維量の少ない裏面とを持つときは、以下のようにして複合不織布を得るのが好ましい。すなわち、一体化ウェブと不織布基材を積層する際、一体化ウェブの極細短繊維量の多い表面と不織布基材とが当接するようにして積層し積層体を得る。そして、一体化ウェブの極細短繊維量の少ない裏面側から高圧水流を付与し、ポリエステル長繊維、ポリエチレンテレフタレート極細短繊維及びポリオレフィン極細短繊維を交絡させるのである。この方法の方が、ポリエステル長繊維と極細短繊維との交絡が多くなり、接合強度が高くなるからである。また、極細短繊維量の少ない裏面が、複合不織布の濾過面となるので、濾過面に毛羽立ちや荒れが少なく、濾過面に溜まった塵埃は払い落としやすいからである。
【0017】
以上の複合不織布には、高圧水流処理により水が含有されているので、この水を脱水乾燥工程を経て除去し、フィルター材を得る。脱水乾燥工程は従来公知の方法が採用され、たとえば、複合不織布をマングル等で搾液した後、乾燥機を通すことにより行われる。このフィルター材は、殆ど帯電していないため、このまま、ビル空調用の中高性能エアフィルター材として用いることができる。ただし、現実には、除電して捕集効率及び通気度を測定してから、ビル空調用の中高性能エアフィルター材等として用いることが多い。除電工程を経ずに、捕集効率及び通気度を測定すると、帯電による捕集効率を測定しているかもしれないからである。なお、除電は公知の方法で行えばよく、たとえば、フィルター材を除電器に通せばよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る方法で得られたフィルター材は、特定の一体化ウェブと特定の不織布基材を用いて、高圧水流処理によって得られたものなので、不織布基材中のポリエステル長繊維と、一体化ウェブ中のポリエチレンテレフタレート極細短繊維及びポリオレフィン極細短繊維が電荷を帯有しにくくなっており、除電しても、捕集効率が低下しにくいという効果を奏する。また、一体化ウェブを製造する際、短繊維ウェブ側から高圧水流を付与するため、高圧水流により生成する極細短繊維が搬送コンベアに絡みにくく、一体化ウェブを合理的に製造しうるという効果を奏する。
【0019】
また、一体化ウェブとして、極細短繊維量の多い表面と、極細短繊維量の少ない裏面とを持つものを採用し、極細短繊維量の多い表面と不織布基材とが当接するようにして積層した積層体に、極細短繊維量の少ない裏面側に高圧水流を施してフィルター材を得ると、極細短繊維量の少ない、比較的平滑な裏面が濾過面となり、捕集した塵埃を払い落としやすく、フィルター材の洗浄又は再生が容易になるという効果を奏する。
【実施例0020】
実施例1
繊度約3デシテックスで横断面が円形のポリプロピレン長繊維が集積されてなり、部分的に熱圧着が施された長繊維不織布(目付9g/m2)を準備した。
一方、図3に示す横断面形状を持つ繊度が3.3デシテックスで繊維長が51mmの分割型短繊維をカード機に通して、目付50g/m2の短繊維ウェブを準備した。なお、図3中のポリオレフィンとしてポリプロピレンを採用し、ポリプロピレンとポリエチレンテレフタレートの質量比は、ポリプロピレン:ポリエチレンテレフタレート=55:45である。
【0021】
そして、長繊維不織布の片面に短繊維ウェブを積層した後、孔径0.12mmの噴出孔から圧力2.8MPaで噴出する高圧水流を短繊維ウェブ側から二回付与し、次いで孔径0.12mmの噴出孔から圧力8.3MPaで噴出する高圧水流を短繊維ウェブ側から更に二回付与した。この高圧水流処理により、分割型短繊維が分割割繊され、約0.16デシテックスのポリプロピレン極細短繊維とポリエチレンテレフタレート極細短繊維が生成した。また同時に、ポリプロピレン極細短繊維とポリエチレンテレフタレート極細短繊維と長繊維不織布中のポリプロピレン長繊維とが交絡し、一体化ウェブを得た。
【0022】
不織布基材として、ユニチカ株式会社製ポリエステルスパンボンド(製品名:Dilla、太繊度タイプ)を準備した。この不織布基材は、横断面形状が図3に示す形状のポリエステル長繊維(繊度16デシテックス)よりなるもので、目付は90g/m2である。また、このポリエステル長繊維は、図2の略V字部6が低融点ポリエステルで形成され、略+字部5が高融点ポリエステルで形成された複合型ポリエステル長繊維である。そして、この不織布基材は、複合型ポリエステル長繊維相互間が、略V字部6の融着によって結合されてなるものである。
【0023】
この不織布基材の片面に一体化ウェブを積層した後、孔径0.12mmの噴出孔から圧力8.3MPaで噴出する高圧水流を一体化ウェブ側から二回付与した。積層する際、不織布基材面に当接する一体化ウェブの面は、高圧水流が付与された面とした。この高圧水流処理により、一体化ウェブ中のポリプロピレン極細短繊維とポリエチレンテレフタレート極細短繊維は、不織布基材のポリエステル長繊維と交絡し、不織布基材と一体化ウェブとが積層接合された複合不織布を得た。この複合不織布をマングルで絞った後、乾燥機に導入し、複合不織布中の水を除去して、フィルター材を得た。
【0024】
実施例2
実施例1で用いた長繊維不織布及び短繊維ウェブを準備した。そして、長繊維不織布の片面に短繊維ウェブを積層した後、孔径0.12mmの噴出孔から圧力2.8MPaで噴出する高圧水流を短繊維ウェブ側から二回付与し、次いで孔径0.12mmの噴出孔から圧力8.3MPaで噴出する高圧水流を長繊維不織布側から二回付与し、さらに孔径0.12mmの噴出孔から圧力8.3MPaで噴出する高圧水流を短繊維ウェブ側から二回付与して、一体化ウェブを得た。
その後は、実施例1と同様の方法でフィルター材を得た。
【0025】
実施例3
実施例1で用いた長繊維不織布及び短繊維ウェブを準備した。そして、長繊維不織布の片面に短繊維ウェブを積層した後、孔径0.12mmの噴出孔から圧力2.8MPaで噴出する高圧水流を短繊維ウェブ側から二回付与し、さらに孔径0.12mmの噴出孔から圧力8.3MPaで噴出する高圧水流を短繊維ウェブ側から八回付与して、一体化ウェブを得た。
その後は、実施例1と同様の方法でフィルター材を得た。
【0026】
参考例
実施例1で用いた分割型短繊維をカード機に通して、目付30g/m2の短繊維ウェブを準備した。また、実施例1で用いた不織布基材を準備した。
この不織布基材の片面に、短繊維ウェブを積層した後、孔径0.12mmの噴出孔から圧力8.3MPaで噴出する高圧水流を短繊維ウェブに衝突させた。この高圧水流処理によって、分割型短繊維が分割割繊され、約0.16デシテックスのポリプロピレン極細短繊維とポリエチレンテレフタレート極細短繊維が生成した。また同時に、ポリプロピレン極細短繊維とポリエチレンテレフタレート極細短繊維とポリエステル長繊維とが交絡し、不織布基材と短繊維ウェブとが複合一体化した複合不織布を得た。この複合不織布をマングルで絞った後、乾燥機に導入し、複合不織布中の水を除去して、フィルター材を得た。
【0027】
比較例
ポリプロピレン製メルトブロー不織布を準備した。このメルトブロー不織布は、繊維径3μmポリプロピレン極細繊維が集積されてなるもので、目付は20g/m2であった。このメルトブロー不織布を実施例1で用いた不織布基材面に積層し、メルトブロー不織布に孔径0.12mmの噴出孔から圧力6.2MPaで噴出する高圧水流を衝突させることにより、ポリプロピレン極細繊維とポリエステル長繊維とを交絡させて複合不織布を得た。この複合不織布マングルで絞った後、乾燥機に導入し、複合不織布中の水を除去して、フィルター材を得た。
【0028】
実施例1~3、参考例及び比較例で得られたフィルター材を、JIS B 9908-4(2019) 9(試験方法)に記載の方法に準拠して除電した後、以下の方法で捕集効率と通気度を測定し、その結果を表1に示した。
【0029】
[捕集効率(%)]
ASTM F 2299記載の方法に準拠して、捕集効率を測定した(ただし、粒子の中和を行った。)。詳細な測定条件は、次のとおりである。試験面積:49.0cm2、試験流量:28.3L/min、粒子径:0.3μm(0.303±0.006μm)、粒子の種類:NANOSPHERE SIZE STANDARDS 3300A(Thermo Fisher Scientific社製)真球状ポリスチレン系標準粒子
【0030】
[通気度(cc/cm2/s)]
JIS L 1096(2010) 8.26.1A法(フラジール形法)記載の方法に準拠して、通気度を測定した。
【0031】
[表1]
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
捕集効率 通気度
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
実施例1 46.8 14.7
実施例2 51.3 11.3
実施例3 57.8 9.8
参考例 21.1 37.8
比較例 13.5 39.1
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【0032】
実施例1~3及び比較例を対比すれば明らかなように、フィルター材を除電した後において、実施例1~3に係る方法で得られたフィルター材の方が、比較例に係る方法で得られたフィルター材に比べて、捕集効率が高いことが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】本発明に用いる分割型短繊維の横断面形状の一例を示した図である。
図2】ポリエステル長繊維の横断面形状である略Y4形状の一つの略Y字を示した図である。
図3】ポリエステル長繊維の横断面形状である略Y4形状を示した図である。
【符号の説明】
【0034】
1 ポリエステル長繊維の横断面形状である略Y4形状の一つの略Y字の下端
2 略Y4形状で形成された凹部
3 略Y4形状で形成された凸部
4 略Y4形状で形成された小凹部
5 略Y4形状中の略+字部
6 略Y4形状中の略V字部
図1
図2
図3