(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024104985
(43)【公開日】2024-08-06
(54)【発明の名称】高粘度材料用加圧装置、高粘度材料用加圧方法
(51)【国際特許分類】
F04B 15/02 20060101AFI20240730BHJP
B05C 5/00 20060101ALI20240730BHJP
F04B 53/14 20060101ALI20240730BHJP
【FI】
F04B15/02 Z
B05C5/00 101
F04B53/14 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023009462
(22)【出願日】2023-01-25
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 凌
(72)【発明者】
【氏名】石黒 徹
(72)【発明者】
【氏名】井野 友貴
(72)【発明者】
【氏名】久保田 文徳
(72)【発明者】
【氏名】村田 満理
【テーマコード(参考)】
3H071
3H075
4F041
【Fターム(参考)】
3H071AA15
3H071BB01
3H071CC28
3H071CC41
3H071DD01
3H071DD35
3H071DD54
3H075AA17
3H075BB03
3H075BB13
3H075CC16
3H075CC28
3H075DA03
3H075DA04
4F041AA01
4F041AB01
4F041BA02
4F041BA10
4F041BA32
4F041BA35
(57)【要約】
【課題】カートリッジ内に収容されている高粘度材料を吐出口側に向けて加圧する高粘度材料用加圧装置について、カートリッジ内の高粘度材料への空気の混入および空気の使用量の増大という問題を払拭できるようにした構成例を提供する。
【解決手段】高粘度材料用加圧装置10は、高粘度材料を収容したカートリッジ11と、前記カートリッジ内の高粘度材料を前記カートリッジの吐出口11b側に向けて加圧する加圧部12と、前記加圧部の外面を前記カートリッジの内面に押し付ける押付部13と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高粘度材料を収容したカートリッジ(11)と、
前記カートリッジ内の高粘度材料を前記カートリッジの吐出口(11b)側に向けて加圧する加圧部(12)と、
前記加圧部の外面を前記カートリッジの内面に押し付ける押付部(13)と、
を備える高粘度材料用加圧装置。
【請求項2】
前記カートリッジを保持する保持部(14)を備え、
前記保持部は、前記押付部が発生する押付力により前記カートリッジが拡大することを抑制する請求項1に記載の高粘度材料用加圧装置。
【請求項3】
前記カートリッジの吐出口側において、前記加圧部が発生する圧力を受ける受圧部(18)を備える請求項1に記載の高粘度材料用加圧装置。
【請求項4】
前記カートリッジの吐出口に接続される接続部(16c)を備え、
前記受圧部は、前記カートリッジの吐出口を前記接続部に密着させる請求項3に記載の高粘度材料用加圧装置。
【請求項5】
流動性を有さない非流動体として構成され、前記加圧部を前記カートリッジの吐出口側に押し込む押込部(15a)を備える請求項1に記載の高粘度材料用加圧装置。
【請求項6】
カートリッジ(11)内の高粘度材料を加圧部(12)により前記カートリッジの吐出口(11b)側に向けて加圧するとともに、前記加圧部の外面を押付部(13)により前記カートリッジの内面に押し付ける高粘度材料用加圧方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、カートリッジ内に収容されている高粘度材料を吐出口側に向けて加圧する高粘度材料用加圧装置および高粘度材料用加圧方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1に開示されている従来の装置は、凹状ピストンを備えるカートリッジを加圧タンク内に収容し、空気圧力調整弁から供給する圧縮空気によって凹状ピストンを加圧することによりカートリッジ内の高粘度材料を吐出口側に加圧する構成となっている。即ち、従来の装置は、圧縮空気によりカートリッジ内の高粘度材料を加圧する構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
圧縮空気によりカートリッジ内の高粘度材料を加圧する従来の構成では、高粘度材料に向けて圧縮空気が供給される方式であることから、カートリッジ内の高粘度材料に空気が混入してしまい不良が発生するという問題がある。圧縮空気によりカートリッジ内の高粘度材料を加圧する従来の構成では、空気の使用量が多くなりコストが増大するという問題もある。
【0005】
そこで、本開示は、カートリッジ内に収容されている高粘度材料を吐出口側に向けて加圧する高粘度材料用加圧装置について、カートリッジ内の高粘度材料への空気の混入および空気の使用量の増大という問題を払拭できるようにした構成例を提供する。また、カートリッジ内の高粘度材料への空気の混入および空気の使用量の増大という問題を払拭できるようにした高粘度材料用加圧方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る高粘度材料用加圧装置10は、高粘度材料を収容したカートリッジ11と、前記カートリッジ内の高粘度材料を前記カートリッジの吐出口11b側に向けて加圧する加圧部12と、前記加圧部の外面を前記カートリッジの内面に押し付ける押付部13と、を備える。
【0007】
本開示に係る高粘度材料用加圧方法は、カートリッジ11内の高粘度材料を加圧部12により前記カートリッジの吐出口11b側に向けて加圧するとともに、前記加圧部の外面を押付部13により前記カートリッジの内面に押し付ける。
【0008】
本開示に係る高粘度材料用加圧装置10および高粘度材料用加圧方法によれば、カートリッジ11内の高粘度材料への空気の混入および空気の使用量の増大という問題を払拭することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示の一実施形態に係る高粘度材料用加圧装置の構成例を、一部を断面にして概略的に示す図
【
図2】本開示の一実施形態に係るプッシャ治具の構成例を概略的に示す縦断面図
【
図3】本開示の一実施形態に係るカートリッジ扉の閉状態および開状態における構成例を概略的に示す横断面図
【
図4】本開示の一実施形態に係るネジ治具およびその周辺部分の構成例を概略的に示す縦断面図
【
図5】本開示の一実施形態に係るカートリッジの交換作業のうち交換前の外段取り作業の一例を概略的に示すフローチャート
【
図6】本開示の一実施形態に係るカートリッジの交換作業のうち内段取り作業の一例を概略的に示すフローチャート
【
図7】本開示の一実施形態に係るカートリッジの交換作業のうち交換後の外段取り作業の一例を概略的に示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の高粘度材料用加圧装置に係る一実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1に例示する高粘度材料用加圧装置10は、カートリッジ11、プランジャ12、プッシャ治具13、カートリッジ扉14、加圧シリンダ15を備えている。高粘度材料用加圧装置10には、さらに、中継部16および切替弁17が接続されている。以下、高粘度材料用加圧装置10を、単に「加圧装置10」と称する場合がある。
【0011】
カートリッジ11は、長尺な概ね円筒状に形成されており、その内部には、高粘度材料の一例であるゲル材Gが収容されている。本実施形態では、ゲル材Gは、例えば電子装置などの基板に塗布される放熱ゲルである。なお、ゲル材Gは、放熱ゲルに限定されるものではなく、ある程度の粘度を有する流動性の材料であれば種々の材料を適用することができる。
【0012】
カートリッジ11の長手方向における一端部、この場合、図面において上側の端部には、開放口11aが形成されている。即ち、カートリッジ11の長手方向における一端側は、閉塞されておらず開放されている。
【0013】
カートリッジ11の長手方向における他端部、この場合、図面において下側の端部には、吐出口11bが形成されている。即ち、カートリッジ11の長手方向における他端側は、その大部分が閉塞面11cによって閉塞されているが、当該閉塞面11cの一部に吐出口11bが形成された構成となっている。カートリッジ11内のゲル材Gは、この吐出口11bから外部に流出可能である。本実施形態では、吐出口11bは、カートリッジ11の軸心に沿って、閉塞面11cから外方に突出するように形成されている。吐出口11bの外周面にはネジ山が形成されている。
【0014】
プランジャ12は、カートリッジ11の開放口11aから当該カートリッジ11内に挿入されている。プランジャ12は、カートリッジ11内において当該カートリッジ11の長手方向に沿って移動可能に収容されている。プランジャ12は、加圧面部12aおよび周壁部12bを一体的に備えている。加圧面部12aは、カートリッジ11の内径と同寸法の概ね円形状に形成されている。周壁部12bは、加圧面部12aの縁部において概ね円環状の壁面を形成している。
【0015】
プランジャ12は、凹部12cを形成している。即ち、加圧面部12aは、当該凹部12cの底面を形成している。周壁部12bは、当該凹部12cの内周面を形成している。プランジャ12は、カートリッジ11内のゲル材Gを当該カートリッジ11の吐出口11b側に向けて加圧する加圧部の一例として機能する。
【0016】
プッシャ治具13は、プランジャ12の外面、この場合、周壁部12bの外面をカートリッジ11の内面に押し付ける押付部の一例として機能する。
図2に例示するように、プッシャ治具13は、一対の本体部材13aの間に弾性体13bを挟持した構成である。本体部材13aは、例えばステンレス材などといった剛性を有する材料により構成されている。弾性体13bは、例えばシリコンゴムなどといった弾性変形可能な材料により構成されている。
【0017】
一対の本体部材13aは、全体として概ね円形状に形成されており、その径方向における外側部分に挟持部13cを形成している。弾性体13bは、この挟持部13c内に挟持されている。弾性体13bは、単なる円環状の、いわゆる「Oリング」などと称されるものではなく、軸方向においてある程度の厚さ寸法を有し、また、径方向においてもある程度の長さ寸法を有した、ある程度の大きさを有する塊状の構成要素となっている。弾性体13bは、プッシャ治具13の周方向に沿う概ね円環状に形成されている。即ち、弾性体13bは、プッシャ治具13の周方向に沿って連続的に配置されている。但し、弾性体13bは、プッシャ治具13の周方向に沿って断続的に配置されていてもよい。
【0018】
一対の本体部材13aは、その径方向における内側部分に凹部13dを形成している。一対の本体部材13aは、この凹部13dが留め具13eによって締結されることにより、プッシャ治具13の本体部分を形成している。留め具13eは、例えばボルトおよびナットの組み合わせにより構成することができる。
【0019】
一対の本体部材13aの間には隙間Sが形成されている。そのため、
図2において白抜矢印Aで例示するように、プッシャ治具13に当該プッシャ治具13の軸方向に沿う外力が与えられると、一対の本体部材13a間の隙間Sが圧縮され、これに伴い、挟持部13c内のスペースが減少して、白抜矢印Bで例示するように弾性体13bが径方向外側に押し出されるように変形する。このように構成されるプッシャ治具13は、
図1に例示するようにプランジャ12の凹部12c内に嵌め込まれる。
【0020】
図1に例示するカートリッジ扉14は、カートリッジ11を保持する保持部の一例として機能する。
図3に例示するように、カートリッジ扉14は、一対の円弧状の扉体14aが回動軸14bにより回動可能に支持された構成であり、いわゆる観音開き式の扉構造となっている。カートリッジ扉14は、一対の扉体14aを閉塞状態で維持するクランプ14cを備えている。カートリッジ扉14は、少なくとも1つのクランプ14cを備える構成であればよいが、当該カートリッジ扉14の長手方向に沿って複数のクランプ14cを備える構成としてもよい。
【0021】
図1に例示するように、加圧シリンダ15は、プッシャ15aを備えている。加圧シリンダ15は、カートリッジ11の長手方向に沿ってプッシャ15aを往復移動可能に構成されている。プッシャ15aは、例えば気体や液体といった流動体ではなく、例えば金属材料などといった流動性を有さない非流動体として構成されており、プランジャ12をカートリッジ11の吐出口11b側に機械的あるいは物理的に押し込む押込部の一例として機能する。即ち、加圧シリンダ15は、プッシャ15aをカートリッジ11の吐出口11b側に移動させることにより、プッシャ治具13を介してプランジャ12をカートリッジ11の吐出口11b側に押し込む。これにより、プランジャ12がカートリッジ11内を当該カートリッジ11の吐出口11b側に向かって移動し、これに伴い、カートリッジ11内のゲル材Gがカートリッジ11の吐出口11b側に向けて加圧されて当該吐出口11bから吐出される。
【0022】
このとき、プッシャ治具13は、プッシャ15aとプランジャ12さらにはゲル材Gとの間において、上部ではプッシャ15aからの押圧力を受け、且つ、下部ではプランジャ12さらにはゲル材Gにより押さえられたような状態となる。そのため、プッシャ治具13には当該プッシャ治具13の軸方向に沿う外力が与えられる状態となり、これに伴い、弾性体13bが径方向外側に押し出されるように変形する。そして、径方向外側に押し出されるように変形する弾性体13bにより、プランジャ12の周壁部12bの外面がカートリッジ11の内面に押し付けられる。よって、プランジャ12の周壁部12bの外面とカートリッジ11の内面との密着度が増加する。このように、本開示に係る高粘度材料用加圧方法によれば、カートリッジ11内のゲル材Gをプランジャ12によりカートリッジ11の吐出口11b側に向けて加圧するとともに、プランジャ12の外面をプッシャ治具13によりカートリッジ11の内面に押し付ける。
【0023】
弾性体13bがプランジャ12の周壁部12bの外面をカートリッジ11の内面に押し付けることに伴い、カートリッジ11の周壁部には径方向外側に向かう外力が与えられることになり、従って、カートリッジ11の周壁部は径方向外側に拡大しようとすることになる。しかしながら、このように径方向外側に拡大しようとするカートリッジ11を保持するカートリッジ扉14は、一対の扉体14aがクランプ14cにより閉塞状態で強固に維持された状態となっている。そのため、カートリッジ扉14は、プッシャ治具13の弾性体13bが発生する押付力によりカートリッジ11が径方向外側に拡大することを抑制する。
【0024】
なお、プッシャ治具13の弾性体13bが発生する押付力は、カートリッジ11の周壁部を介してカートリッジ扉14の扉体14aにも径方向外側つまり開方向側へ向かう外力として作用し得る。そのため、扉体14aが僅かに開くことに伴い、特にプッシャ治具13よりも上側および下側においては、カートリッジ11の外面と扉体14aの内面との間に隙間が発生し得る場合も想定される。しかしながら、そのような場合であっても、一対の扉体14aがクランプ14cにより閉塞状態で強固に維持された状態となっているため、カートリッジ11の外面と扉体14aの内面との間に形成される隙間は、例えば0.1~0.15mm(ミリメートル)といった僅かな隙間に抑えることができる。
【0025】
図1に例示するように、中継部16は、第1経路16aおよび第2経路16bを備えている。第1経路16aおよび第2経路16bは、それぞれの中間部分において交差しており、四方に延伸する一体的な流路を形成している。第1経路16aの一端部、この場合、図面において上側の端部には入口部16cが設けられている。第1経路16aの他端部、この場合、図面において下側の端部にはエア抜き部16dが設けられている。第2経路16bの一端部、この場合、図面において左側の端部には出口部16eが設けられている。第2経路16bの他端部、この場合、図面において右側の端部には圧力センサ16fが設けられている。
【0026】
入口部16cには、カートリッジ11の吐出口11bが接続されている。入口部16cは、カートリッジ11の吐出口11bに接続される接続部の一例として機能する。エア抜き部16dには、図示しないエア抜き用の弁および吸引ポンプが接続されている。カートリッジ11の吐出口11bから入口部16cを介して流入するゲル材Gには空気が含まれている場合がある。ゲル材Gに空気が含まれている場合、あるいは、空気が含まれている可能性が高い場合には、図示しないエア抜き用の弁を開き、且つ、図示しない吸引ポンプを駆動することにより、空気が含まれているゲル材G、あるいは、空気が含まれている可能性が高いゲル材Gをエア抜き部16dから吸引して除去することができる。
【0027】
図示しないエア抜き用の弁が閉じられた状態では、カートリッジ11の吐出口11bから入口部16cを介して第1経路16a内に流入したゲル材Gは、さらに第2経路16b内を流れて出口部16eから切替弁17に供給される。圧力センサ16fは、第1経路16a内および第2経路16b内を流れるゲル材Gの圧力を検知可能に構成されている。圧力センサ16fは、例えばゲル材Gなどといった流動体に与えられている圧力を検知可能な周知のセンサにより構成することができる。
【0028】
切替弁17は、第1経路17a、第2経路17b、第3経路17c、切替部17dを備えている。第1経路17aの一端部、この場合、図面において左側の端部は、切替部17dに接続されている。第1経路17aの他端部、この場合、図面において右側の端部は、中継部16の出口部16eに接続されている。第2経路17bの一端部、この場合、図面において上側の端部は、図示しないディスペンサに接続されている。第2経路17bの他端部、この場合、図面において下側の端部は、切替部17dに接続されている。図示しないディスペンサは、例えばゲル材Gなどといった流動体を吐出可能な吐出ノズルなどを備えた周知の構成である。
【0029】
第3経路17cの一端部、この場合、図面において左側の端部は、この場合、開放されている。なお、第3経路17cの一端部には、
図1に例示する中継部16とは異なる他の中継部16の出口部16eを接続することが可能である。即ち、切替弁17には、複数、この場合、少なくとも2つのカートリッジ11を接続可能である。第3経路17cの他端部、この場合、図面において右側の端部は、切替部17dに接続されている。切替部17dは、切替弁17を、第1状態および第2状態に切り替え可能に構成されている。第1状態は、
図1に例示するように第1経路17aと第2経路17bとが接続された状態である。第2状態は、第3経路17cと第2経路17bとが接続された状態である。
【0030】
加圧装置10は、さらにネジ治具18を備えている。
図4に例示するように、ネジ治具18は、所定の厚さ寸法、この場合、少なくとも吐出口11bの突出量よりも若干短い寸法を有する概ね円板状に形成されている。ネジ治具18は、その中央部にネジ孔部18aを備えている。ネジ孔部18aは、ネジ治具18を軸方向に沿って貫通している。ネジ治具18は、ネジ孔部18a内に吐出口11bをねじ込ませることにより、カートリッジ11の吐出部11b側の端部に取り付けられる。カートリッジ11の吐出部11b側の端部に取り付けられたネジ治具18は、カートリッジ11の吐出口11b側の端部において、プランジャ12が加圧シリンダ15により押し込まれることにより発生する圧力を受ける受圧部の一例として機能する。
図4においては、ネジ治具18が受ける圧力を白抜矢印により概念的に例示している。
【0031】
ネジ治具18は、ネジ孔部18a内にねじ込まれた吐出口11bの外周面を支持することにより、カートリッジ11の吐出口11bを中継部16の入口部16cに密着させる機能も有している。即ち、中継部16の入口部16cの外面は、先端側に向かうほど細くなる形状、いわゆるテーパ形状に形成されている。そのため、プランジャ12が加圧シリンダ15により押し込まれることに伴い、カートリッジ11には下方側に向かう力が作用し、従って、吐出口11bは、より入口部16c側に押し込まれる。このとき、吐出口11bの外面は、ネジ治具18により径方向外側から押さえられている。そのため、吐出口11bの径方向外側への拡大がネジ治具18により抑制されるため、吐出口11bを入口部16cに一層密着させることができる。
【0032】
以上のように構成される加圧装置10は、図示しない安全筐体の内部に収容された状態で使用するとよい。詳細な図示は省略するが、安全筐体は、開閉可能な安全扉を備えており、作業者は、この安全扉を開くことにより、安全筐体内の加圧装置10に対し例えばメンテナンス作業などといった各種の作業を行うことができる。メンテナンス作業は、例えばカートリッジ11の交換作業などである。安全扉の開閉は、安全筐体に備えられている開閉ボタンを操作することにより行うことができる。
【0033】
次に、上述した加圧装置10におけるカートリッジ11の交換作業の一例について説明する。以下、説明の便宜上、加圧装置10から取り外されるカートリッジ11を「使用済カートリッジ11」と称し、加圧装置10に新たに取り付けられるカートリッジ11を「使用前カートリッジ11」と称する。カートリッジ11の交換は、その使用目的や使用状況などといった種々の条件にもよるが、例えば20分に1回程の頻度で必要となる場合がある作業である。
【0034】
図5に例示するように、ステップA1では、作業者は、使用前カートリッジ11から図示しないキャップを外す。図示しないキャップは、使用前カートリッジ11の吐出口11bを覆い、当該吐出口11bを保護するものである。ステップA2では、作業者は、使用前カートリッジ11の吐出口11bにネジ治具18を取り付ける。ステップA3では、プッシャ治具13を使用前カートリッジ11の開放口11aから挿入してプランジャ12の凹部12c内に嵌め込む。なお、プランジャ12は、使用前カートリッジ11内に予め収容されているものとする。即ち、プランジャ12は、使用前カートリッジ11の開放口11aから内部のゲル材Gが漏出することを阻止する機能も有している。ステップA1~A3の作業は、加圧装置10の駆動を停止しなくても行うことができる作業、いわゆる「外段取り作業」と定義することができる。ステップA2,A3は、その実施順を入れ替えてもよい。
【0035】
次に、
図6に例示するように、ステップB1では、作業者は、安全筐体の開閉ボタンを操作して安全扉を開く。ステップB2では、作業者は、クランプ14cによるロック状態を解除し、カートリッジ扉14の一対の扉体14aを開いて使用済カートリッジ11を取り外す。このとき、
図6の円Z内に例示するように、中継部16の入口部16cからは、ゲル材Gが角状に延び出る場合がある。そのため、作業者は、例えばヘラHなどといった工具類を用いて、角状に延び出たゲル材Gを擦り切るようにして除去するとよい。
【0036】
ステップB3では、作業者は、プッシャ治具13およびネジ治具18を装着した使用前カートリッジ11をカートリッジ扉14の一対の扉体14a内に収容する。ステップB4では、作業者は、カートリッジ扉14の一対の扉体14aを閉じてクランプ14cによりロックする。ステップB5では、作業者は、安全筐体の開閉ボタンを操作して安全扉を閉じる。ステップB6では、作業者は、図示しないエア抜き用の弁を駆動してエア抜き部16dからエア抜き、つまり、空気が含まれているゲル材Gあるいは空気が含まれている可能性が高いゲル材Gを除去する。
【0037】
なお、ステップB6のエア抜きは、必要に応じて実施すればよい。即ち、加圧装置10に新たに取り付けられた使用前カートリッジ11からゲル材Gが吐出され始めた段階つまり使用初期段階においては、吐出されるゲル材Gに空気が含まれている可能性が高い。そのため、ステップB6のエア抜きは、新たに取り付けられた使用前カートリッジ11の使用初期段階において実施し、使用初期段階以降、例えば2回目以降の使用時にはステップB6のエア抜きを実施しないようにしてもよい。ステップB1~B5の作業は、加圧装置10の駆動を停止しないと行うことができない作業、いわゆる「内段取り作業」と定義することができる。また、ステップB6のエア抜きも、いわゆる「内段取り作業」と定義することができる。
【0038】
以上に例示した「外段取り作業(ステップA1~A3)」および「内段取り作業(ステップB1~B5、必要に応じてステップB6)」により、加圧装置10のカートリッジ11を交換することができる。そして、加圧シリンダ15を駆動することにより、カートリッジ11内のゲル材Gを図示しないディスペンサに供給することができる。
【0039】
次に、使用済カートリッジ11の廃棄作業の一例について説明する。
図7に例示するように、ステップC1では、作業者は、加圧装置10から取り外した使用済カートリッジ11内からプッシャ治具13を取り外す。取り外したプッシャ治具13は、再使用可能である。ステップC2では、作業者は、使用済カートリッジ11からネジ治具18を取り外す。ステップC3では、作業者は、使用済カートリッジ11に図示しないキャップを取り付けて廃棄する。ステップC1~C3の作業は、加圧装置10の駆動を停止しなくても行うことができる作業、いわゆる「外段取り作業」と定義することができる。ステップC1,C2は、その実施順を入れ替えてもよい。
【0040】
本開示に係る高粘度材料用加圧装置10によれば、ゲル材Gを収容したカートリッジ11と、カートリッジ11内のゲル材Gをカートリッジ11の吐出口11b側に向けて加圧するプランジャ12と、プランジャ12の外面をカートリッジ11の内面に押し付けるプッシャ治具13と、を備えている。この構成例、および、当該高粘度材料用加圧装置10により実現される高粘度材料用加圧方法によれば、プランジャ12の周壁部12bの外面とカートリッジ11の内面との密着度をプッシャ治具13により増加させることができ、カートリッジ11内のゲル材Gに空気が混入してしまうことを抑制することができる。また、従来構成に比べ、空気の使用量の増大という問題も払拭することができる。
【0041】
加圧装置10によれば、カートリッジ11を保持するカートリッジ扉14を備え、当該カートリッジ扉14は、プッシャ治具13が発生する押付力によりカートリッジ11が拡大することを抑制する。この構成例によれば、プッシャ治具13からの押付力によるカートリッジ11の拡大や変形を抑制することができ、カートリッジ11内のゲル材Gへの空気の混入を一層抑制することができる。また、カートリッジ扉14は、いわゆる観音開き式の扉構造であるため、カートリッジ扉14の開閉作業、ひいては、カートリッジ11の交換作業を容易に行うことができる。また、カートリッジ扉14は、カートリッジ11の長手方向全体にわたって当該カートリッジ11を保持している。そのため、径方向外側への押付力を発生するプッシャ治具13がカートリッジ11の長手方向におけるどの位置に移動したとしても、当該プッシャ治具13が発生する径方向外側への押付力に対しカートリッジ11の側周部をカートリッジ扉14により外方から押さえることができ、カートリッジ11の耐久性を高めることができる。
【0042】
加圧装置10によれば、カートリッジ11の吐出口11b側において、プランジャ12が発生する圧力を受けるネジ治具18を備えている。この構成例によれば、プランジャ12から受ける圧力によるカートリッジ11の特に吐出口11b部分の変形を抑制することができ、吐出口11bからゲル材Gが良好に流出される状態を維持することができる。また、このようなネジ治具18によりカートリッジ11の吐出口11bと中継部16の入口部16cとの密着度を増加させることができ、吐出口11bと入口部16cとの接続部分からゲル材Gが漏出してしまうことを抑制することができる。
【0043】
加圧装置10によれば、流動性を有さない非流動体として構成されている加圧シリンダ15のプッシャ15aによりプランジャ12をカートリッジ11の吐出口11b側に押し込む構成となっている。即ち、本開示に係る加圧装置10によれば、従来構成のような圧縮空気ではなく、非流動体であるプッシャ15aが発生する押圧力によりカートリッジ11内のゲル材Gを加圧する構成としたため、カートリッジ11内のゲル材Gへの空気の混入を一層抑制することができる。
【0044】
なお、本開示は、上述した一実施形態に限定されず、その要旨を逸脱しない範囲において、適宜、変形や拡張を行うことができる。例えば、加圧シリンダ15がプッシャ15aにより発生する押圧力は、例えば0.35Mpa(メガパスカル)を想定しているが、当該押圧力は、例えばカートリッジ11の大きさやゲル材Gの粘度などに応じて適宜変更して実施することができる。
【0045】
加圧シリンダ15は、例えば、油圧によりプッシャ15aを往復移動させる構成としてもよいし、圧縮空気によりプッシャ15aを往復移動させる構成としてもよいし、その他の圧力伝達媒体によりプッシャ15aを往復移動させる構成としてもよい。なお、圧縮空気によりプッシャ15aを往復移動させる構成であっても、カートリッジ11内のゲル材Gを加圧する押圧力を発生する構成要素は、あくまでも非流動体であるプッシャ15aであるから、カートリッジ11内のゲル材Gへの空気の混入を十分に抑制することが可能である。
【0046】
加圧装置10は、例えば加圧シリンダ15内にオートスイッチを備えた構成としてもよい。オートスイッチは、磁石と当該磁石の磁力を検知する磁気検知センサとの組み合わせにより構成されたものである。このようなオートスイッチを加圧シリンダ15に設けることにより、プッシャ15aの移動量に基づいてカートリッジ11内のゲル材Gの残量を精度良く検出することができる。
【0047】
なお、本開示は、実施例に準拠して記述されたが、本開示は当該実施例や構造に限定されるものではないと理解される。本開示は、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態、さらには、それらに一要素のみ、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範疇や思想範囲に入るものである。
【0048】
また、本開示に記載の制御部およびその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサおよびメモリを構成することにより提供された専用コンピュータにより実現されても良い。或いは、本開示に記載の制御部およびその手法は、一つ以上の専用ハードウェア論理回路によりプロセッサを構成することにより提供された専用コンピュータにより実現されても良い。若しくは、本開示に記載の制御部およびその手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサおよびメモリと一つ以上のハードウェア論理回路により構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより実現されても良い。又、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記憶媒体に記憶されていても良い。
【符号の説明】
【0049】
図面において、10は高粘度材料用加圧装置、11はカートリッジ、11bはカートリッジの吐出口、12はプランジャ(加圧部)、13はプッシャ治具(押付部)、14はカートリッジ扉(保持部)、15aはプッシャ(押込部)、16cは入口部(接続部)、18はネジ治具(受圧部)を示す。