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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024104997
(43)【公開日】2024-08-06
(54)【発明の名称】回転式アクチュエータ
(51)【国際特許分類】
   F16H 1/32 20060101AFI20240730BHJP
   H02K 7/116 20060101ALI20240730BHJP
【FI】
F16H1/32 Z
H02K7/116
F16H1/32 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023009483
(22)【出願日】2023-01-25
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110003214
【氏名又は名称】弁理士法人服部国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 祐里子
【テーマコード(参考)】
3J027
5H607
【Fターム(参考)】
3J027FA18
3J027FA37
3J027FB01
3J027GB03
3J027GC02
3J027GC22
3J027GD04
3J027GD08
3J027GD12
3J027GE11
5H607BB01
5H607BB14
5H607BB26
5H607CC01
5H607CC03
5H607CC09
5H607DD08
5H607DD19
5H607EE31
(57)【要約】
【課題】組み付け時のギアの変形を抑制可能な回転式アクチュエータを提供する。
【解決手段】アクチュエータ10は、モータ30と、減速機40と、ハウジング20と、を備える。減速機40は、筒部512および筒部512の径方向内側に形成されるギア歯部511を有するリングギア51を含み、モータ30の回転を減速して出力軸45から出力する。ハウジング20には、リングギア51の筒部512が圧入固定されている。リングギア51は、ギア歯部511よりも径方向外側に設けられる外側部分の少なくとも一部において、ギア歯部511よりも剛性が小さくなるように形成されている。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータ(30)と、
筒部(512)および前記筒部の径方向内側に形成されるギア歯部(511)を有する内歯ギア(51~55)を含み、前記モータの回転を減速して出力軸(45)から出力する減速機(40)と、
前記筒部が圧入固定されているハウジング(20)と、
を備え、
前記内歯ギアは、前記ギア歯部よりも径方向外側に設けられる外側部分の少なくとも一部において、前記ギア歯部よりも剛性が小さくなるように形成されている回転式アクチュエータ。
【請求項2】
前記内歯ギアは、径方向において前記ギア歯部と前記筒部との間に設けられているつなぎ部(516)を有し、
前記筒部と前記つなぎ部との内側の角R半径は、前記ギア歯部と前記つなぎ部との内側の角R半径より小さい請求項1に記載の回転式アクチュエータ。
【請求項3】
前記内歯ギアは、径方向において前記ギア歯部と前記筒部との間に設けられているつなぎ部(516)を有し、
前記筒部と前記つなぎ部との間の角部の板厚は、前記ギア歯部と前記つなぎ部との間の角部の板厚より小さい請求項1または2に記載の回転式アクチュエータ。
【請求項4】
前記内歯ギアは、径方向において前記ギア歯部と前記筒部との間に設けられているつなぎ部(516)を有し、
前記つなぎ部の径方向における中間位置よりも径方向外側には、溝部(520、521)が形成されている請求項1に記載の回転式アクチュエータ。
【請求項5】
前記内歯ギアは、径方向において前記ギア歯部と前記筒部との間に設けられているつなぎ部(516)を有し、
前記筒部および前記つなぎ部の板厚は、前記ギア歯部の歯底における板厚よりも小さい請求項1に記載の回転式アクチュエータ。
【請求項6】
前記筒部には、径方向外側に突出し、前記ハウジングに保持される圧入径部(514)が、周方向に離間して複数設けられており、
それぞれの前記圧入径部の周方向における両端部の外側には、スリット(525)が形成されている請求項1に記載の回転式アクチュエータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転式アクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、減速部を備える回転式アクチュエータが知られている。例えば特許文献1では、減速部は、リングギアを有しており、リングギアはフロントハウジングの筒部に埋設されたプレートの径内壁に圧入され、固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-169125号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、リングギアを圧入する際、筒部に径方向内側の力がかかることで、圧入代の分、ギア全体が径方向内側に倒れる。そのため、ギア歯形状が変形し、ギア効率が低下する虞がある。
【0005】
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、組み付け時のギアの変形を抑制可能な回転式アクチュエータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の回転式アクチュエータは、モータ(30)と、減速機(40)と、ハウジング(20)と、を備える。減速機は、筒部(512)および筒部の径方向内側に形成されるギア歯部(511)を有する内歯ギア(51~55)を含み、モータの回転を減速して出力軸(45)から出力する。ハウジングには、筒部が圧入固定されている。
【0007】
内歯ギアは、ギア歯部の径方向外側に設けられる外側部分の少なくとも一部において、ギア歯部よりも剛性が小さくなるように形成されている。これにより、組み付け時におけるギア歯部の変形を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態によるアクチュエータの断面図である。
図2】第1実施形態によるリングギアの平面図である。
図3図2のIII-III線断面図である。
図4】第1実施形態によるリアハウジングにリングギアを組み付けた状態を示す平面図である。
図5図4のV-V線断面図である。
図6図4のVI部を示す図である。
図7】第1実施形態によるリングギアの圧入前後を説明する模式図である。
図8】第2実施形態によるリングギアの断面図である。
図9】第2実施形態によるリングギアの圧入前後を説明する模式図である。
図10】第2実施形態によるリングギアの溝部のバリエーションを説明する図である。
図11】第3実施形態によるリングギアの断面図である。
図12】第3実施形態によるリングギアの圧入前後を説明する模式図である。
図13】第4実施形態によるリングギアの平面図である。
図14図13のXIV-XIV線断面図である。
図15】第4実施形態によるリングギアの圧入前後を説明する模式図である。
図16】第5実施形態によるリングギアの平面図である。
図17図14のXVII方向矢視図である。
図18】第5実施形態によるリングギアの圧入前後を説明する模式図である。
図19】参考例によるリングギアの圧入前後を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明による回転式アクチュエータを図面に基づいて説明する。以下、複数の実施形態において、実質的に同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。
【0010】
(第1実施形態)
第1実施形態による回転式アクチュエータを図1図7に示す。図1に示すように、回転式アクチュエータとしてのアクチュエータ10は、ハウジング20と、モータ30と、減速機40と、を備え、例えばシフトバイワイヤシステムの動力源として用いられる。
【0011】
ハウジング20は、フロントハウジング21、および、リアハウジング25を有する。フロントハウジング21は略カップ状に形成されており、金属プレート22がインサートされている。
【0012】
リアハウジング25は、略カップ状に形成されており、フロントハウジング21と開口部同士が向き合うように設けられている。リアハウジング25は、フロントハウジング21と反対側に突出する筒状突出部26を有する。リアハウジング25には、保持プレート27が埋設されている。
【0013】
リアハウジング25には、フランジ部251が形成されている。フランジ部251には、スクリュ29が挿通される孔部252が形成され、カラー253が設けられている。フロントハウジング21およびリアハウジング25は、ブラケット28とともにスクリュ29により締結されている。アクチュエータ10は、ブラケット28を用いて図示しない変速機のケースに固定される。
【0014】
モータ30は、ステータ31およびロータ34等を有し、ハウジング20に収容される。ステータ31は、複数枚の環状プレートが板厚方向に積層されており、圧入等により金属プレート22に固定されている。巻線33は、ステータ31に設けられている。
【0015】
ロータ34は、複数枚の環状プレートが板厚方向に積層されており、回転軸37の径方向外側に嵌合している。回転軸37は、回転軸心AX1周りに、軸受38、39により回転可能に支持されている。モータ側軸受38は、金属プレート22に設けられている。減速機側軸受39は、出力部材44に設けられている。
【0016】
減速機40は、リングギア51、偏心軸41、偏心ギア43、および、出力部材44を有する。リングギア51は、回転軸心AX1と同軸に配置され、リアハウジング25に固定されている。リングギア51は、略円環状に形成されており、径方向内側にギア歯部511が形成される内歯歯車である。リングギア51の詳細は、後述する。
【0017】
偏心軸41は、軸心が、回転軸心AX1に対して偏心する偏心軸心AX2となるように、回転軸37と一体に設けられている。偏心ギア43は、リングギア51のギア歯部511と噛み合う外歯部431を有する平歯ギアであって、偏心軸41に設けられた軸受48により支持されている。これにより、偏心ギア43は、偏心軸心AX2まわりに自転しつつ、回転軸心AX1まわりに公転する遊星運動可能に設けられている。遊星運動時の偏心ギア43の自転速度は、回転軸37の回転速度に対して変速される。偏心ギア43には、係合突起435が形成されている。
【0018】
出力部材44は、回転軸心AX1と同軸に配置され、リアハウジング25に設けられた軸受49により回転可能に支持されている。出力部材44には、係合突起435と対応する係合孔445が形成されている。出力部材44の係合孔445に、偏心ギア43の係合突起435が挿入されることで、偏心ギア43の偏心軸心AX2まわりの回転が、出力部材44に伝達される。出力部材44には、出力軸45が嵌合している。出力軸45は、出力部材44と一体に回転する。
【0019】
アクチュエータ10では、巻線33の通電相が切り替えられることにより回転磁界が発生し、この回転磁界により生じる磁気的吸引力または反発力を受けてロータ34が回転する。ロータ34と共に回転軸37および偏心軸41が回転すると、偏心ギア43が遊星運動することでロータ34の回転に対し減速された回転が、出力軸45から出力される。
【0020】
フロントハウジング21には、基板80が固定されている。基板80には、回転角センサ81が実装されている。回転角センサ81は、ロータと一体になって回転するマグネット84と対向する位置に設けられており、マグネット84の回転磁界を検出することで、ロータ34の回転角度を検出する。
【0021】
図2および図3に示すように、リングギア51は、ギア歯部511、筒部512、および、つなぎ部516等を有し、例えば金属等により一体に形成されている。筒部512およびつなぎ部516は、例えば薄板をプレス加工することにより形成されている。つなぎ部516は、筒部512から径方向内側に延びて形成されており、径方向内側の端部には、ギア歯部511が設けられている。ギア歯部511は、つなぎ部516の内周側にて軸方向側に立ち上がるように形成されており、リングギア51は、断面視略J字状に形成されている。
【0022】
筒部512には、折り畳み部513、および、圧入径部514が形成されている。折り畳み部513は、径方向外側に突出するように折り曲げられ、軸方向視U字状に形成されている。折り畳み部513は、周方向において等間隔で複数箇所に形成されている。折り畳み部513が保持プレート27に形成された切欠271(図4参照)に挿入されることで、リングギア51の周方向位置がリアハウジング25に対して位置決めされる。圧入径部514は、折り畳み部513の間の中間部において、傾斜位置SLから先端側が径方向外側に突出して形成されている。本実施形態では、折り畳み部513および圧入径部514がそれぞれ6箇所に形成されているが、折り畳み部513および圧入径部514の数は問わない。
【0023】
本実施形態では、リングギア51は、リアハウジング25に圧入固定されている。ここで、圧入を行う際、図4および図5にブロック矢印で示すように、圧入径部514には、径方向内側に力がかかる。図6では圧入代分の変形を破線の矢印で示しており、圧入代分の周方向の変形は、折り畳み部513にて吸収される。また、図19に示す参考例のように、圧入代の分、リングギア91全体が径方向内側に倒れると、ギア歯部911の形状が変形し、ギア効率が低下する。また、ギア歯部911が径方向内側に倒れることで、ギア歯クリアランスが小さくなると、ギアロックが発生する虞がある。
【0024】
そこで本実施形態では、図3および図7に示すように、筒部512およびつなぎ部516において、ギア歯部511よりも剛性が小さい箇所を形成することで、圧入時の圧入代分の変形を筒部512およびつなぎ部516で吸収し、ギア歯部511が変形しないように構成している。なお、図3および図7では、リアハウジング25およびリングギア51を模式的に記載している。
【0025】
具体的には、つなぎ部516の径方向内側の角部をギア歯側角部517、つなぎ部516の径方向外側における角部を筒部側角部518とすると、筒部側角部518の内側角R半径R2が、ギア歯側角部517の内側角R半径R1より小さくなるように形成している。また本実施形態では、筒部側角部518の板厚PT2は、ギア歯側角部517の板厚PT1より小さい。すなわち、R2<R1、かつ、PT2<PT1である。なお、板厚PT1は、ギア歯側角部517の外側角部と内側角Rの中心点とを結んだ長さとし、板厚TP2は筒部側角部518の外側角Rの中心点と内側角Rの中心点とを結んだ長さとする。ギア歯側角部517の外側がR形状に形成されている場合、板厚PT1は、外側角Rの中心点と内側角Rの中心点とを結んだ長さとすればよい。
【0026】
筒部側角部518の内側角R半径R2を、ギア歯側角部517の内側角R半径R1より小さくすることで、リングギア51をフロントハウジング21に圧入するとき、図7中の矢印Aで示すように、筒部側角部518の径方向外側だけを径方向内側に変形させ、圧入代分を吸収する。これにより、ギア歯部511の変形を抑制することができる。
【0027】
以上説明したように、本実施形態のアクチュエータ10は、モータ30と、減速機40と、ハウジング20と、を備える。減速機40は、筒部512および筒部512の径方向内側に形成されるギア歯部511を有するリングギア51を含み、モータ30の回転を減速して出力軸45から出力する。ハウジング20には、リングギア51の筒部512が圧入固定されている。詳細には、筒部512は、リアハウジング25に圧入固定されている。
【0028】
リングギア51は、筒部512およびギア歯部511が一体に形成されており、ギア歯部511よりも径方向外側に設けられる外側部分の少なくとも一部において、当該ギア歯部511よりも剛性が小さくなるように形成されている。本実施形態では、筒部512およびつなぎ部516が「外側部分」に対応している。これにより、圧入代分の変寸をギア歯部511ではない外側部分で吸収するので、組み付け時のギア歯部511の変形を防ぐことができ、ギア効率の低下が抑制される。
【0029】
本実施形態では、リングギア51は、径方向においてギア歯部511と筒部512との間に設けられているつなぎ部516を有する。筒部512とつなぎ部516との内側の角R半径は、ギア歯部511とつなぎ部516との内側の角R半径より小さい。具体的には、筒部側角部518の内側角R半径R2は、ギア歯側角部517の内側角R半径R1より小さい。また、筒部側角部518の板厚PT2は、ギア歯側角部517の板厚PT1より小さい。このように構成することで、筒部側角部518の剛性がギア歯部511側よりも相対的に小さくなり、組み付け時のギア歯部511の変形を適切に防ぐことができる。
【0030】
(第2実施形態、第3実施形態)
第2実施形態を図8図10、第3実施形態を図11および図12に示す。図8および図11は、図3に対応する断面図である。本実施形態では、ギア歯側角部517の内側角R半径R1と筒部側角部518の角R半径R2とが等しく、板厚PT1、PT2も等しいものとする。
【0031】
図8に示すように、第2実施形態のリングギア52では、つなぎ部516の内側面519に溝部520が環状に形成されている。溝部520は、ギア歯部511の径方向外側の壁と筒部512の径方向内側の壁との中間位置に形成されている。なお、溝部520の位置は、圧入時にギア歯部511側が変形しない程度の中間位置からのズレは許容されるものとする。また、溝部520を、ギア歯部511と筒部512の中間位置よりも径方向外側の範囲Rgに形成してもよい。
【0032】
図9に示すように、リングギア52をフロントハウジング21に圧入するとき、溝部520より径方向外側だけを径方向内側に変形させ、圧入代分を吸収する。これにより、ギア歯部511の変形を抑制可能である。
【0033】
溝部520の形状は、図8に示すように底部が鋭角であってもよいし、図10に示すように底部がR形状であってもよく、圧入時に溝部520よりも径方向外側だけを径方向内側に変形可能であれば、形状は問わない。第3実施形態も同様である。
【0034】
図11に示すように、第3実施形態のリングギア53では、溝部521が筒部側角部518の内側に形成されている。図12に示すように、溝部521を筒部512の根本に形成することで、リングギア52をフロントハウジング21に圧入するとき、筒部512だけを径方向内側に変形させ、圧入代分を吸収する。これにより、ギア歯部511の変形を抑制することができる。
【0035】
第2実施形態および第3実施形態では、つなぎ部516の径方向における中間位置よりも径方向外側に、溝部520、521が形成されている。すなわち、溝部520、521が形成される箇所の剛性がギア歯部511より小さいので、圧入代分の変寸をギア歯部511の径方向外側で吸収できる。これにより、組み付け時のギア歯部511の変形を適切に抑制することができる。また上記実施形態と同様の効果を奏する。
【0036】
(第4実施形態)
第4実施形態を図13図15に示す。図13および図14に示すように、本実施形態のリングギア54では、ギア歯部511の歯底における板厚PT11が、筒部512の板厚PT12およびつなぎ部516の板厚PT16よりも大きい。すなわち、PT11>PT12、かつ、PT11>PT16であり、本実施形態では、PT11>PT12=PT16である。なお、板厚PT11、PT12は、リングギア54における径方向の長さであり、板厚PT16は軸方向の長さである。
【0037】
本実施形態では、歯底を含めたギア歯部511の全体の板厚を、筒部512およびつなぎ部516の板厚よりも大きくすることで、ギア歯部511の剛性を相対的に高く形成している。図15に示すように、リングギア54を圧入するとき、圧入代分の変形は、ギア歯部511に対して剛性の低い筒部512およびつなぎ部516で吸収される。これにより、ギア歯部511の変形を抑制することができる。
【0038】
本実施形態では、筒部512およびつなぎ部516の板厚は、ギア歯部511の歯底における板厚よりも小さい。すなわち、筒部512およびつなぎ部516の剛性は全体的にギア歯部511よりも小さいので、圧入時において、圧入代分の変寸をギア歯部511の径方向外側で吸収できる。これにより、組み付け時のギア歯部511の変形を適切に抑制することができる。また上記実施形態と同様の効果を奏する。
【0039】
(第5実施形態)
第5実施形態を図16図18に示す。図16および図17に示すように、本実施形態のリングギア55の筒部512には、スリット525が形成されている。スリット525は、周方向において、それぞれの圧入径部514と折り畳み部513との間に形成される。本実施形態では、スリット525は、圧入径部514の両端に形成されている。本実施形態では、圧入径部514が6箇所に形成されており、スリット525は12箇所に形成されている。
【0040】
スリット525は、筒部512において、つなぎ部516が形成される側と反対側の端部に開口し、軸方向、すなわち圧入方向に沿って形成されている。スリット525は、圧入径部514が径方向外側に傾斜する傾斜位置SLと同様かそれ以上の深さに形成されている。
【0041】
本実施形態では、図18に示すように、筒部512にスリット525を形成することで、圧入径部514が形成されているスリット525間が傾斜することで圧入代分を吸収する。これにより、ギア歯部511の変形を抑制することができる。
【0042】
本実施形態では、筒部512には、根本側より先端側が径方向外側に突出し、リアハウジング25に保持されている圧入径部514が、周方向に離間して複数設けられている。それぞれの圧入径部514の周方向における両端部の外側には、スリット525が形成されている。ここで、「圧入径部514の周方向における両端部の外側」とは、本実施形態では、圧入径部514の両端部と折り畳み部513との間の範囲である。これにより、圧入代分の変寸を圧入径部514で吸収できるので、組み付け時のギア歯部511の変形を適切に抑制することができる。また上記実施形態と同様の効果を奏する。
【0043】
実施形態では、リングギア51~55が「内歯ギア」、ギア歯側角部517が「ギア歯部とつなぎ部との間の角部」、筒部側角部518が「筒部とつなぎ部との間の角部」に対応し、ギア歯側角部517の内側角R半径R1が「ギア歯部とつなぎ部との内側の角R半径」、筒部側角部518の内側の角R半径R2が「筒部とつなぎ部との内側の角R半径」に対応する。
【0044】
(他の実施形態)
第1実施形態では、プレス加工により筒部512およびつなぎ部516を形成しているため、筒部側角部518は、内側角R半径R2および板厚PT2がギア歯側角部517よりも小さい。すなわち、R2<R1、かつ、PT2<PT1である。他の実施形態では、例えば、R2<R1であれば、板厚PT1、PT2は等しくてもよい。また、PT1<PT2であれば、内側角R半径R1、R2は等しくてもよい。
【0045】
上記実施形態では、リングギアは断面視略J字状に形成されており、第2実施形態では、つなぎ部の中間位置に溝部が形成されている。他の実施形態では、リングギアが断面視略L字状に形成されている場合、ギア歯部の歯底をつなぎ部の先端と捉え、歯底と筒部の根本までの中間位置よりも径方向外側に溝部を形成するようにしてもよい。また、例えば、内側角R半径を異ならせ、溝部を形成する、といった具合に複数の実施形態を組み合わせてもよい。また、ギア歯部の径方向外側にて圧入代分の変寸が吸収できるように剛性の小さい箇所が形成されていれば、上記実施形態とは異なる構成であってもよい。
【0046】
上記実施形態では、内歯ギアがリングギアであって、減速機は内歯ギアと偏心ギアから構成されている。他の実施形態では、減速機は、内歯ギアを有していればよく、例えばプラネタリギアを用いた遊星歯車機構等、ギア構成は異なっていてもよい。以上、本発明は、上記実施形態になんら限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の形態で実施可能である。
【符号の説明】
【0047】
10・・・アクチュエータ(回転式アクチュエータ)
20・・・ハウジング
21・・・フロントハウジング 25・・・リアハウジング
30・・・モータ
40・・・減速機 45・・・出力軸
51~55・・・リングギア(内歯ギア)
511・・・ギア歯部 512・・・筒部
514・・・圧入径部 516・・・つなぎ部
520、521・・・溝部
525・・・スリット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19