(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024105011
(43)【公開日】2024-08-06
(54)【発明の名称】養殖対象生物肥育装置
(51)【国際特許分類】
A01K 63/04 20060101AFI20240730BHJP
【FI】
A01K63/04 Z
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023009503
(22)【出願日】2023-01-25
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-06-26
(71)【出願人】
【識別番号】515198500
【氏名又は名称】古川精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100146020
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 善光
(74)【代理人】
【識別番号】100062328
【弁理士】
【氏名又は名称】古田 剛啓
(72)【発明者】
【氏名】古川 敏也
【テーマコード(参考)】
2B104
【Fターム(参考)】
2B104AA26
2B104BA08
2B104CC10
2B104CG05
2B104DA01
2B104EB20
2B104FA03
(57)【要約】
【課題】海中で養殖している養殖対象生物を、海中の酸素の溶存を増加させ、かつ海中での餌の増加を可能とし成長を促進できる養殖対象生物肥育装置を提供することを課題とする。
【解決手段】養殖中の養殖対象生物より上方の海面に浮かぶ浮体に設置する養殖対象生物肥育装置であって、養殖対象生物肥育装置は、空気供給手段と、バッテリーと、制御部とを備える気泡発生手段と、前記気泡発生手段を内設した筐体と、筐体から海面上となる方向に突設されたホース取付手段に上端開口部を海面超の高さで上方に向けて取付られ、下端開口部近傍に浮き手段及び重錨手段を取り付けた、可撓性を有する大径の大径ホースと、空気供給手段の圧縮空気吐出口に上端開口部を接続され、金属製パイプを取付けた下端開口部を海中に垂下された前記大径ホース内に挿入された、可撓性を有する小径の小径ホースと、を備えた養殖対象生物肥育装置より課題解決できた。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
養殖中の養殖対象生物より上方の海面に浮かぶ浮体に設置する養殖対象生物肥育装置であって、
前記養殖対象生物肥育装置は、
空気供給手段と、前記空気供給手段に電力を供給するバッテリーと、前記空気供給手段を作動制御する制御部とを備える気泡発生手段と、
前記気泡発生手段を内設した筐体と、
前記筐体から海面上となる方向に突設されたホース取付手段に上端開口部を海面超の高さで上方に向けて取付られ、下端開口部を海底で横向きの姿勢にすることが可能な長さを有し、前記下端開口部近傍に浮き手段及び重錨手段を取り付けた、可撓性を有する大径の大径ホースと、
前記空気供給手段の圧縮空気吐出口に上端開口部を接続され、金属製パイプを取付けた下端開口部を海中に垂下された前記大径ホース内に挿入された、可撓性を有する小径の小径ホースと、を備え、
前記大径ホースの前記下端開口部近傍が海底で略水平方向の姿勢を維持可能となるように前記浮き手段の浮力と前記重錨手段の沈下力を設定し、
前記制御部により前記気泡発生手段を作動させることにより、前記小径ホースの前記金属製パイプから前記大径ホース内の海水中に気泡を発生させて上昇水流を引き起こし、海底の堆積物及び海水を前記大径ホースの前記上端開口部から噴出させることを特徴とする養殖対象生物肥育装置。
【請求項2】
前記バッテリーを充電する太陽光発電手段を前記筐体の上方に設置したことを特徴とする請求項1に記載の養殖対象生物肥育装置。
【請求項3】
前記ホース取付手段が、前記大径ホースの上端開口部の高さを、前記筐体に対して上下方向に可変可能な高さ方向調整手段を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の養殖対象生物肥育装置。
【請求項4】
前記バッテリーの充電状況を監視可能な電圧測定手段を前記筐体に設置したことを特徴とする請求項1又は2に記載の養殖対象生物肥育装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、養殖対象生物である牡蠣や海苔等を生育している筏等の浮体の上に設置して牡蠣や海苔等の養殖対象生物の成長を促進させることができる養殖対象生物肥育装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、海面に浮遊する第1及び第2浮遊体と、前記第1及び第2浮遊体にそれぞれ搭載された第1及び第2巻上機と、前記第1及び第2浮遊体にそれぞれの一方の端部を接続し、前記第1及び第2浮遊体からそれぞれ鉛直下方に延伸して、それぞれの他方の端部を海底に固定した第1及び第2牽引手段と、前記第1及び第2牽引手段のそれぞれの中間位置に、互いの水平レベルが等しくなるよ に固定される第1及び第2貫通リングと、を更に備え、前記幹綱が前記第1及び第2貫通リングの内部を貫通し、両端が前記第1及び第2巻上機から牽引されて、前記中央部分が海面に平行に張られた養殖システムにおいて、前記第2浮遊体に取り付けられたポンプと、上部を前記ポンプに接続され、下部を前記複数の養殖篭の下方に配置されたパイプと、を更に備え、前記下部から吸い上げられた底層水に、酸素及びマイナスイオンを含む気泡が混合されて活性化底層水が調製され、前記活性化底層水が前記下部から海中に給水される養殖システムが開示されている。
【0003】
特許文献2には、二枚貝等の底棲生物の育成床となる複数の皿状容器を鉛直方向に階層し、当該階層育成床を鉛直方向に貫通する中央空洞及びこの空洞と通ずる各育成床間に水平方向の間隙を画成すると共に、前記中央部空洞上端に流出方向変更フィンを設けた養殖装置を富栄養化汚濁水域中に浸漬し、前記底棲生物を生きた活動状態にせしめ、その濾過食性状によって当該汚濁水中の粒状有機物を除去して水質及び底質を浄化し、階層育成床の下部に不浸透シートをスカート様に垂らして取り付け、不浸透シートにより形成された筒状水域内に上昇流が発生し、下層域の水が表層に対流するようにした二枚貝類の養殖兼富栄養化水域の水質及び底質浄化システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-7324号公報
【特許文献2】特許第5954629号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の発明は、養殖対象のへい死の一因となる貧酸素水塊が底層に滞留している対策として底層の水質改善をするために、海面に浮かぶ第2浮遊体付近にポンプや気泡発生装置を設置して、ポンプにより垂下させたパイプから取水し、気泡発生装置等により気泡やマイナスイオンを添加して、気泡をポンプから海底に向けて流下させ、海底近傍で水平方向に流動させるようにしているが、気泡は常に上昇する動きをするので、気泡が流下し海底近傍で直角に曲げた水平姿勢のパイプ内を流動しにくいので、海底近傍の水平方向のパイプの噴射口から気泡が噴出しにくいという問題があった。
【0006】
特許文献2の発明は、水中に酸素の溶存を増加させる技術であるが、養殖対象の酸素は確保可能であるが、養殖対象である牡蠣や海苔などへの餌の供給が不十分であるという問題があった。
【0007】
本発明はこうした問題に鑑み創案されたもので、海面近傍から海底近傍までにわたって海中の酸素の溶存を増加させ、かつ海中での餌の増加を可能とし成長を促進でき、海中で養殖する養殖対象生物の成長を促進できる養殖対象生物肥育装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の養殖対象生物肥育装置は、養殖中の養殖対象生物より上方の海面に浮かぶ浮体に設置する養殖対象生物肥育装置であって、前記養殖対象生物肥育装置は、空気供給手段と、前記空気供給手段に電力を供給するバッテリーと、前記空気供給手段を作動制御する制御部とを備える気泡発生手段と、前記気泡発生手段を内設した筐体と、前記筐体から海面上となる方向に突設されたホース取付手段に上端開口部を海面超の高さで上方に向けて取付られ、下端開口部を海底で横向きの姿勢にすることが可能な長さを有し、前記下端開口部近傍に浮き手段及び重錨手段を取り付けた、可撓性を有する大径の大径ホースと、前記空気供給手段の圧縮空気吐出口に上端開口部を接続され、金属製パイプを取付けた下端開口部を海中に垂下された前記大径ホース内に挿入された、可撓性を有する小径の小径ホースと、を備え、前記大径ホースの前記下端開口部近傍が海底で略水平方向の姿勢を維持可能となるように前記浮き手段の浮力と前記重錨手段の沈下力を設定し、前記制御部により前記気泡発生手段を作動させることにより、前記小径ホースの前記金属製パイプから前記大径ホース内の海水中に気泡を発生させて上昇水流を引き起こし、海底の堆積物及び海水を前記大径ホースの前記上端開口部から噴出させることを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の養殖対象生物肥育装置は、請求項1において、前記バッテリーを充電する太陽光発電手段を前記筐体の上方に設置したことを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の養殖対象生物肥育装置は、請求項1又は2において、前記ホース取付手段が、前記大径ホースの上端開口部の高さを、前記筐体に対して上下方向に可変可能な高さ方向調整手段を有することを特徴とする。
【0011】
請求項4に記載の養殖対象生物肥育装置は、請求項1又は2において、前記バッテリーの充電状況を監視可能な電圧測定手段を前記筐体に設置したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
前記養殖対象生物肥育装置は、海底近傍に豊富に含まれている窒素やリンなどの栄養塩、及び、植物プラントンのタネを海面まで吸い上げることによって、吸い上げた海水は海中に還流され、光の届く水深で植物プラントンを増加させて、養殖対象生物の餌を増加させることができ、養殖対象生物の成長を促進させることができる。
【0013】
バッテリーへの電力供給源を太陽光発電手段としたので、海上であっても気泡発生手段を作動させるに必要な電力を確保できる。
【0014】
養殖対象生物として例えば牡蠣や海苔があるが、海中に垂下させた重量によって筏等の浮体の海面に対する上下方向の高さが変わるので、前記大径ホースの上端開口部は海面より高い高さでなければ前記上端開口部から海面近傍の海水が流入してきて海底近傍の海水の吸い上げが困難になるが、前記大径ホースの上端開口部の海面に対する上下方向の距離を調整できるので、大径ホースの上端開口部を筏等の浮体の浮沈状況に応じて可変させることができ海水を上端開口部から流入をさせずに噴水のように噴出できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の養殖対象生物肥育装置を牡蠣の筏の上に設置したときの使用状態を、筐体内やホース内を見えるようにして記載した説明図である。
【
図3】
図2において気泡発生手段を作動させたときに海水の流れの説明図である。
【
図4】本発明の養殖対象生物肥育装置を2台ほど牡蠣の筏の上に設置した状態で気泡発生手段を作動させたときの海水の流れを、筐体内やホース内を見えるように記載して説明した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の養殖対象生物肥育装置1は、
図1~
図4に示すように、海で養殖する牡蠣や海苔等の養殖対象生物への海底41の栄養塩や植物性プランクトンを供給して成長を促進する装置である。例えば、牡蠣や海苔等の養殖対象生物の養殖場の海域の底泥には溶存有機物が生物・化学的に分解されて窒素、リンの栄養塩となり堆積している。堆積している堆積物45は粒子の集合体であるので柔らかく粒子間には間隙水が存在しており、前記栄養塩の濃度は海水中より高濃度である。よって、海底41に沈下した重さがある物は前記柔らかい堆積物45の中に埋まった状態になる。
【0017】
また、通常は海中を遊泳して光合成色素を持ち色素で太陽光を吸収し光エネルギーを使って無機物から有機物を合成する生物である植物性プランクトンが海底41に沈降して太陽光が届きにくい環境になると、つまり環境が増殖に不適になると植物性プランクトンは休眠期細胞(タネ)を形成して底泥上で過ごしている。
【0018】
本発明の発明者は、養殖されている養殖対象生物60の下方の海底41に存在する栄養塩や植物性プランクトンの休眠期細胞に着目して、牡蠣や海苔等の養殖対象生物60の養殖への、海底41の底泥である堆積物45に存在する栄養塩や植物性プランクトンの活用を考えて本発明を想到した。
【0019】
本発明の養殖対象生物肥育装置1は、
図1~
図4に示すように、養殖中の養殖対象生物60より上方の海面40に浮かぶ浮体50に設置する養殖対象生物肥育装置1であって、前記養殖対象生物肥育装置1は、空気供給手段5と、前記空気供給手段5に電力を供給するバッテリー6と、前記空気供給手段5を作動制御する制御部7とを備える気泡発生手段2と、前記気泡発生手段2を内設した筐体8と、前記筐体8から海面40上となる方向に突設されたホース取付手段9に上端開口部31を海面40超の高さで上方に向けて取付られ、下端開口部32を海底41で横向きの姿勢にすることが可能な長さを有し、前記下端開口部32近傍に浮き手段10及び重錨手段11を取り付けた、可撓性を有する大径の大径ホース3と、前記空気供給手段5の圧縮空気吐出口に上端開口部21を接続され、金属製パイプ12を取付けた下端開口部22を海中に垂下された前記大径ホース3内に挿入された、可撓性を有する小径の小径ホース4と、を備え、前記大径ホース3の前記下端開口部32近傍が海底41で略水平方向の姿勢を維持可能となるように前記浮き手段10の浮力と前記重錨手段11の沈下力を設定し、前記制御部7により前記気泡発生手段2を作動させることにより、前記小径ホース4の前記金属製パイプ12から前記大径ホース3内の海水中に気泡80を発生させて上昇水流81を引き起こし、海底41の堆積物及び海水を前記大径ホース3の前記上端開口部31から噴出させる装置である。
【0020】
前記養殖対象生物肥育装置は、
図1又は
図4に示すように、例えば、牡蠣等の養殖対象生物を生育させる場合は、牡蠣を垂下させた浮体50である筏の上に設置し、筏の大きさによって設置台数は1つの筏に対して1台から数台設置する。そして、前記養殖対象生物肥育装置1は浮体50である筏の中央部や端部等、前記筏の形態などを考慮して養殖対象生物に餌を与える効果が最も高い部位に設置する。
【0021】
前記養殖対象生物肥育装置1の筐体8内には気泡発生手段2が内設されており、前記気泡発生手段2は、圧縮空気を送風する空気供給手段5と、前記空気供給手段5に電力を供給するバッテリ6ーと、前記空気供給手段5を作動制御する制御部7とを備える。前記制御部7は前記空気供給手段5の作動制御をする。
【0022】
そして、前記養殖対象生物肥育装置1は、海上で使用するので商用電源は使えないため太陽光発電手段20を設ける。前記太陽光発電手段20は前記筐体8の上方に設置され、前記バッテリー6は日中に前記太陽光発電手段20により発電された電力の供給を受け蓄電し、前記空気供給手段5等に電力を供給する。
【0023】
前記空気供給手段5は、例えばエアーコンプレッサー、送風機、ブロア等の気流を発生させるものであればいずれでもよい。前記空気供給手段5は前記バッテリー6からの電力で作動するが、前記バッテリー6の蓄電量が限られていることから、前記制御部7により作動時間を予めタイマー設定して作動させることもできる。
【0024】
そして、前記バッテリー6の充電状況を監視可能な電圧測定手段(図示なし)を前記筐体8に設置している。前記バッテリー6の残量を監視する前記電圧測定手段により前記気泡発生手段2の作動に必要な蓄電量がないと検知されたときは、予めタイマー(図示なし)で設定した作動時間帯であっても前記気泡発生手段2を作動させないように前記制御部7は制御する。また、前記電圧測定手段は携帯情報端末や設置型情報端末と無線で接続され、養殖場から離れた遠隔地で監視することもできる。
【0025】
前記バッテリー6は、前記太陽光発電手段20、前記制御部7、前記空気送給手段5、前記タイマー、及び、前記電圧測定手段と電力送電可能な電線で接続されており、前記制御部7は、前記空気送給手段5、前記タイマー、及び、前記電圧測定手段と制御線で接続されている。
【0026】
前記大径ホース3は、可撓性を有する大径のホースであり、上端開口部31を海面40より高い高さで上方に向け、海中に垂下させた状態で下端部開口部32が海底41に横たわることが可能な長さを有する。前記上端開口部31を海面40より高い高さにするのは、上端開口部31の高さが大径ホース3内に海水が流入可能な高さになると海底41の堆積物及び海水を吸い上げることが困難になるからである。前記上端開口部31の高さは、前記上端開口部31から噴水82のように噴射される海水が空中から落下する海面40の規模に応じて設定する。
【0027】
また、養殖対象生物60である牡蠣の成長とともに垂下した牡蠣の全重量が重くなって筏が徐々に沈むので、前記大径ホース3の上端開口部31の高さが海面40より低くなって海水が前記大径ホース3内に逆流するのを防ぐために、前記大径ホース3の上端開口部31の高さを、前記筐体8に対して上下方向に可変可能なホース取付手段9を備えている。
【0028】
前記ホース取付手段9は、前記筐体8の側壁に固定され、例えば側面視で縦構成体部と横構成体部の略L字型の形状を有し、前記筐体8に固定された前記縦構成体部が、スライド手段の上下方向のスライドによる高さ変更手段、又は、高さ方向に所定の間隔で設けた穴にピン等の嵌挿係止体の上下方向で異なる穴への嵌挿による高さ変更手段であり、前記横構成体は前記大径ホース3の上端開口部31を上向き状態で固定する構造を有する。これにより、前記大径ホース3を海面40より高い高さから海中に垂下させることができ、上端開口部31から海水が逆流しないようにできる。
【0029】
前記大径ホース3の下端開口部32の近傍には、前記下端開口部32の近傍の部位が海底41で略水平方向の姿勢を維持可能に浮力と沈下力のバランスを設定した浮き手段10及び重錨手段11とを取り付けている。これにより、前記大径ホース3を海底41に向けて沈下させたときに、前記大径ホース3の下端開口部32を横向き状態にして海底41の底泥の堆積物45の中に前記下端開口部32の開口面積の略半分を埋没させることができる。
【0030】
前記底泥の前記堆積物45の中には、牡蠣や海苔等の養殖対象生物60の生育を促進させる、濃度の高い窒素、リンの栄養塩が堆積しており、前記堆積物45の上や前記堆積物45の間隙水の中には植物性プランクトンの休眠期細胞(タネ)が過ごしているから、海底の底泥である堆積物45の中に前記下端開口部32の略半分を埋没させることにより、前記栄養塩及び植物性プランクトンの休眠期細胞(タネ)を海面40上に吸い上げることができる。
【0031】
そのため、前記浮き手段10として例えば浮きの浮力と、前記重錨手段11として例えば錘の重さからくる沈下力のバランスが重要になり、前記大径ホース3の下端部を海底41まで沈下させ、海底41では下端開口部32の近傍部分を横向きの姿勢にするようにする必要があるため、海底41の堆積物45の柔らかさに応じて浮力と沈下力とを調整する。
【0032】
次に、前記小径ホース4は、前記空気供給手段5の圧縮空気吐出口に上端開口部21を接続され、金属製パイプ12を取付けた下端開口部22を海中に垂下された前記大径ホース3内に挿入された、可撓性を有する小径の小径ホース4である。
【0033】
前記金属製パイプ12は、噴射する気泡80によって前記下端開口部22が上方に曲がらないようにする重さを有し、かつ海水で腐食させない加工が施工される。前記空気供給手段5からの圧縮空気は、前記上端開口部21から流入し前記下端開口部22から前記大径ホース3内に気泡80となって噴射される。この噴射により、前記大径ホース3内に上昇の水流を引き起こすことができる。
【0034】
次に作動について説明する。前記制御部7により前記空気供給手段5を作動させると、前記空気供給手段5である例えばエアーコンプレッサーから送風された気流が前記小径ホース4内に前記上端開口部21から流入し、前記小径ホース4内を流動し、海中に沈下され海水が満ちている前記大径ホース3内に挿入した下端開口部22に取り付けた金属製パイプ12から気泡80を多数噴射する。
【0035】
この噴射された多数の気泡80は噴射直後から上方に素早く上昇するため、
図3又は
図4に示すように、前記大径ホース3内の海水が前記気泡80の上昇によって上昇流81となり、前記大径ホース3の下端開口部32から吸い込まれた海底41の堆積物及び海水が上端開口部31から勢いよく噴水82のように上方に向けて噴出される。
【0036】
そして、
図3又は
図4に示すように、前記大径ホース3の上端開口部31から噴出された海水が周囲の海域に落下し、海面に落下したときに気泡Wを多く発生させるので海中の酸素含有量を増加させることができ、さらに落下した海水が海中の方向Kに向かって流下しつつ海流の流れにのって横方向に拡散する。
【0037】
植物性プランクトンの休眠期細胞(タネ)は太陽光が届く海面40近くの海中で活性化する。これにより養殖対象生物60である牡蠣全体に、酸素が供給され、窒素やリンの前記栄養塩及び、海面40近くで太陽光が届くようになって無機物から有機物を合成し増殖するようになった植物性プランクトンを供給されるようになるので、浮体50の下方で養殖する養殖対象生物60の肥育をすることができる。
【符号の説明】
【0038】
1 養殖対象生物肥育装置
2 気泡発生手段
3 大径ホース
4 小径ホース
5 空気供給手段
6 バッテリー
7 制御部
8 筐体
9 ホース取付手段
10 浮き手段
11 重錨手段
12 金属製パイプ
20 太陽光発電手段
21 上端開口部
22 下端開口部
31 上端開口部
32 下端開口部
40 海面
41 海底
45 堆積物
50 浮体
60 養殖対象生物
80 気泡
81 上昇流
82 噴水
W 気泡
【手続補正書】
【提出日】2023-05-12
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0008
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0008】
請求項1に記載の養殖対象生物肥育装置は、養殖中の養殖対象生物より上方の海面に浮かぶ浮体に設置する養殖対象生物肥育装置であって、前記養殖対象生物肥育装置は、空気供給手段と、前記空気供給手段に電力を供給するバッテリーと、前記空気供給手段を作動制御する制御部とを備える気泡発生手段と、前記気泡発生手段を内設した筐体と、前記筐体から海面上となる方向に突設されたホース取付手段に上端開口部を海面超の高さで上方に向けて取付られ、下端開口部を海底で横向きの姿勢にすることが可能な長さを有し、前記下端開口部近傍に浮き手段及び重錨手段を取り付けた、可撓性を有する大径の大径ホースと、前記空気供給手段の圧縮空気吐出口に上端開口部を接続され、金属製パイプを取付けた下端開口部を海中に垂下された前記大径ホース内に挿入された、可撓性を有する小径の小径ホースと、を備え、前記大径ホースの前記下端開口部近傍を、海底で略水平方向の姿勢を維持状態で前記下端開口部の開口面積の略半分を埋没させることができるように前記浮き手段の浮力と前記重錨手段の沈下力を設定し、前記制御部により前記気泡発生手段を作動させることにより、前記小径ホースの前記金属製パイプから前記大径ホース内の海水中に気泡を発生させて上昇水流を引き起こし、海底の堆積物及び海水を前記大径ホースの前記上端開口部から噴出させることを特徴とする。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項1
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項1】
養殖中の養殖対象生物より上方の海面に浮かぶ浮体に設置する養殖対象生物肥育装置であって、
前記養殖対象生物肥育装置は、
空気供給手段と、前記空気供給手段に電力を供給するバッテリーと、前記空気供給手段を作動制御する制御部とを備える気泡発生手段と、
前記気泡発生手段を内設した筐体と、
前記筐体から海面上となる方向に突設されたホース取付手段に上端開口部を海面超の高さで上方に向けて取付られ、下端開口部を海底で横向きの姿勢にすることが可能な長さを有し、前記下端開口部近傍に浮き手段及び重錨手段を取り付けた、可撓性を有する大径の大径ホースと、
前記空気供給手段の圧縮空気吐出口に上端開口部を接続され、金属製パイプを取付けた下端開口部を海中に垂下された前記大径ホース内に挿入された、可撓性を有する小径の小径ホースと、を備え、
前記大径ホースの前記下端開口部近傍を、海底で略水平方向の姿勢を維持状態で前記下端開口部の開口面積の略半分を埋没させることができるように前記浮き手段の浮力と前記重錨手段の沈下力を設定し、
前記制御部により前記気泡発生手段を作動させることにより、前記小径ホースの前記金属製パイプから前記大径ホース内の海水中に気泡を発生させて上昇水流を引き起こし、海底の堆積物及び海水を前記大径ホースの前記上端開口部から噴出させることを特徴とする養殖対象生物肥育装置。