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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024105013
(43)【公開日】2024-08-06
(54)【発明の名称】積層体
(51)【国際特許分類】
   B32B 15/04 20060101AFI20240730BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20240730BHJP
   E04F 13/07 20060101ALI20240730BHJP
【FI】
B32B15/04 Z
B32B27/00 A
E04F13/07 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023009509
(22)【出願日】2023-01-25
(71)【出願人】
【識別番号】000235783
【氏名又は名称】尾池工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】廣田 真人
(72)【発明者】
【氏名】浅野 祐司
【テーマコード(参考)】
4F100
【Fターム(参考)】
4F100AA17B
4F100AA18B
4F100AA19B
4F100AA21B
4F100AA25B
4F100AA27B
4F100AA28B
4F100AB01A
4F100AB02A
4F100AB10A
4F100AB12A
4F100AB16A
4F100AB17A
4F100AB18A
4F100AB21A
4F100AB24A
4F100AB25A
4F100AB31A
4F100AB40A
4F100AK03B
4F100AK17B
4F100AT00C
4F100BA02
4F100BA03
4F100CA13B
4F100EH46B
4F100EH66A
4F100EJ86B
4F100GB07
4F100JL10B
4F100JN06B
4F100YY00B
(57)【要約】
【課題】室内装飾として一般的に用いられている白色系意匠を保持し、かつ、優れた遮熱効果を有する積層体を提供する。
【解決手段】金属層と、前記金属層の表面に塗布により形成された顔料層とが、この順に積層され、顔料層面の赤外線における9μmの正反射率が60%以上である、積層体。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属層と、前記金属層の表面に塗布により形成された顔料層とが、この順に積層され、顔料層面の赤外線における9μmの正反射率が60%以上である、積層体。
【請求項2】
前記金属層を構成する金属は、アルミニウム、金、銀、銅、白金、亜鉛、錫、ニッケル、鉄、チタンまたはインジウムのいずれか、または、これらを含む合金である、請求項1記載の積層体。
【請求項3】
前記顔料層は、白色の酸化金属粒子を含む、請求項1または2記載の積層体。
【請求項4】
前記酸化金属粒子は、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化スズ、酸化ジルコニウムまたは酸化セリウムのいずれか、または、これらを含む複合酸化物である、請求項3記載の積層体。
【請求項5】
前記顔料層は、オレフィン系樹脂またはフッ素樹脂を含む、請求項1または2記載の積層体。
【請求項6】
顔料層面の可視光領域における380~780nmの拡散反射率が75%以上である、請求項1または2記載の積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層体に関する。より詳細には、本発明は、室内装飾として一般的に用いられている白色系意匠を保持し、かつ、優れた遮熱効果を有する積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建築部材に使用される内装材は、装飾性を施したものに加え、抗菌性、耐摩耗性、防カビ性、防汚性など目的や用途に応じて機能が付与されている。また、昨今、省エネの観点から、室内装飾用の壁紙に遮熱効果を付与することが提案されている(たとえば特許文献1~2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-92934号公報
【特許文献2】特開2016-75078号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のシートは、室内側から順に、表面保護層、意匠層、赤外線反射層が積層されている。しかしながら、室内で発生した熱エネルギーに起因する赤外線は、赤外線反射層以外の意匠層、表面保護層のそれぞれにおいて吸収される。そのため、特許文献1に記載のシートは、遮熱効果が劣る。また、特許文献1の特許請求の範囲には、測定波長2400nmの赤外線反射率が28%以上あれば遮熱性能が得られると記載されている。そもそも、赤外線反射率の下限が28%であるということは、極端な例を示せば、赤外線の72%は反射されない可能性があることを示しており、赤外線反射性能が効率的であるとは言えない。また、特許文献1では他の懸念も指摘できる。ここで、ウィーンの式を参照する。ウィーンの式は、発熱体から放射される電磁波のピーク波長λmと発熱体の温度の関係を近似的に示したものであり、発熱体の温度をT℃とし、以下の式(λm=2896/(T+273)μm)で示される。特許文献1に示された測定波長2400nmはウィーンの式によれば、その温度は934℃になる。しかしながら、このような高温の発熱体は、一般的な生活環境において存在する事は稀である。従って、特許文献1は、現実の環境に則さない。一方、特許文献2に記載の遮蔽材は、室外からの熱線カットには有効である。赤外線反射層の室内側にプリント層と内装材とが積層されているため、特許文献1のシートと同様に、室内で発生した熱エネルギーに起因する赤外線を吸収する。その結果、特許文献2の遮蔽材は、室内における遮熱効果が低い。
【0005】
本発明は、このような従来の課題に鑑みてなされたものであり、室内装飾として一般的に用いられている白色系意匠を保持し、かつ、優れた遮熱効果を有する積層体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する本発明は、以下の構成を主に備える。
【0007】
(1)金属層と、前記金属層の表面に塗布により形成された顔料層とが、この順に積層され、顔料層面の赤外線における9μmの正反射率が60%以上である、積層体。
【0008】
このような構成によれば、積層体は、室内装飾として一般的に用いられている白色系意匠を保持し、かつ、優れた遮熱効果を有する。ここで、たとえば室内で用いられる暖房(ホットカーペット、床暖房、エアコン、オイルヒーター、石油ファンヒーター、ガスファンヒーター、壁面暖房、パネルヒーター等の発熱体)の温度は、およそ30~70℃、すなわちその時のピーク波長は、9.56~8.44μmである。ここで赤外線の温度放射強度と波長の関係に言及すると、ある波長における温度放射強度曲線はその波長を頂点として頂点付近では極めて緩やかに放射強度が減少する特徴がある。故に一般的な生活環境における温度領域(0℃~100℃)に対するピーク波長は10.61μm~7.76μmであるが、9μmを前記波長領域の代替値として使用してもその放射強度差は誤差程度と言え、さらに言及すれば簡便的かつ実効的である。したがって、積層体は、顔料層面の赤外線における9μmでの正反射率が60%以上であることにより、充分な遮熱効果が得られる。
【0009】
(2)前記金属層を構成する金属は、アルミニウム、金、銀、銅、白金、亜鉛、錫、ニッケル、鉄、チタンまたはインジウムのいずれか、または、これらを含む合金である、(1)記載の積層体。
【0010】
このような構成によれば、これらの金属は、極めて高い赤外線反射性能を有し、遮熱効果を示す。そのため、積層体は、赤外線領域で高い反射性能を有し、壁または天井への赤外線の吸収を抑制し、エネルギーロスを減らすことができる。なお、ここで示す赤外線は、その波長が、0.8~20μmの範囲である。
【0011】
(3)前記顔料層は、白色の酸化金属粒子を含む、(1)または(2)記載の積層体。
【0012】
このような構成によれば、酸化金属粒子は、可視光領域では散乱して白色に見える。その結果、積層体は、金属層の意匠感が抑えられ、かつ、赤外線の反射性能が優れる。
【0013】
(4)前記酸化金属粒子は、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化スズ、酸化ジルコニウムまたは酸化セリウムのいずれか、または、これらを含む複合酸化物である、(3)記載の積層体。
【0014】
このような構成によれば、酸化金属粒子は、赤外線を透過または反射し、吸収が少ない。その結果、積層体は、赤外線反射性能がより優れる。
【0015】
(5)前記顔料層は、オレフィン系樹脂またはフッ素樹脂を含む、(1)~(4)のいずれかに記載の積層体。
【0016】
このような構成によれば、オレフィン系樹脂およびフッ素樹脂は、赤外線を吸収しにくく、特に9μm付近の赤外線を透過する。そのため、積層体は、赤外線反射性能が優れる。
【0017】
(6)顔料層面の可視光領域における380~780nmの拡散反射率が75%以上である、(1)~(5)のいずれかに記載の積層体。
【0018】
このような構成によれば、積層体の顔料層は、可視光領域では散乱して白色に見える。そのため、積層体は、金属層の意匠感が抑制され得る。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、室内装飾として一般的に用いられている白色系意匠を保持し、かつ、優れた遮熱効果を有する積層体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
<積層体>
本発明の一実施形態の積層体は、金属層と、金属層の表面に塗布により形成された顔料層とが、この順に積層された積層体である。積層体は、顔料層面の赤外線における9μmの正反射率が60%以上である。以下、それぞれについて説明する。
【0021】
(基材)
基材は特に限定されない。一例を挙げると、基材は、紙、不織布(樹脂繊維不織布)、高分子樹脂フィルム、壁紙、金属箔等である。また、石膏ボード等の壁の構造体や躯体であるコンクリート等の支持体等を基材として用いることもできる。
【0022】
・高分子樹脂フィルム
高分子樹脂フィルムは特に限定されない。一例を挙げると、高分子樹脂フィルムを形成する樹脂は、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリイミド、ナイロン、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリビニルアルコール、エチレン-ビニルアルコール共重合体等の水酸基含有重合体等である。また、高分子樹脂フィルムは、高分子樹脂フィルムに、エンボス加工を施したものや、顔料を練り込んだマットフィルム、サンドマット加工を施したフィルムであってもよい。
【0023】
高分子樹脂フィルムの厚みは特に限定されない。一例を挙げると、高分子樹脂フィルムの厚みは、4μm以上であることが好ましく、6μm以上であることがより好ましい。また、高分子樹脂フィルムの厚みは、100μm以下であることが好ましく、50μm以下であることがより好ましい。高分子樹脂フィルムの厚みが上記範囲内であることにより、高分子樹脂フィルムは、金属層、顔料層への加工適性や、内装材としての施工性が優れる。4μm以下の場合、金属層、顔料層のハンドリング性低下の問題があり、また、100μm以上の場合、金属層、顔料層への加工コストの問題、シートの剛性が強くなる、シートの重量が増える等の施工性の問題が発生する。
【0024】
・金属層
金属層を構成する金属は、アルミニウム、金、銀、銅、白金、亜鉛、錫、ニッケル、鉄、チタンまたはインジウムのいずれか、または、これらを含む合金が好ましい。これらの金属は、真空蒸着の加工適性があり、極めて高い赤外線反射性能を有し、遮熱効果が得られる。そのため、積層体は、赤外線領域で高い反射性能を有し、壁または天井への赤外線の吸収を抑制し、熱エネルギーの輻射を減らすことができる。なお、本実施形態において、高分子樹脂フィルムの代わりに金属箔を用いてもよい。この場合、金属箔は、金属層の機能を果たすように、表面に白色塗料を塗布しても良い。金属箔は、銅箔、アルミニウム箔、ニッケル箔、鉄箔、SUS箔、チタン箔、スズ箔、亜鉛箔、金箔、銀箔、白金箔、インジウム箔、またはそれらを含む合金箔等である。
【0025】
金属層を形成する方法は特に限定されない。一例を挙げると、金属がアルミニウムである場合、アルミニウム蒸着膜は、基材上に物理的気相成長法(Physical V apor Deposition、PVD)と総称される真空蒸着法やスパッタリング法により金属薄膜層を形成することで得られる。他の金属の場合も同様である。
【0026】
真空蒸着法による金属層の厚みは特に限定されない。一例を挙げると、金属層の厚みは、5nm以上であることが好ましく、10nm以上であることがより好ましい。また、金属層の厚みは、200nm以下であることが好ましく100nm以下であることがより好ましい。金属層の厚みが上記範囲内であることにより、金属層は、充分な赤外線反射性能が得られやすく、かつ、生産性が優れる。尚、金属層に金属箔を用いる場合、金属箔の厚みは、ハンドリング性やコストの兼ね合いで、適宜選択し得る。
【0027】
・顔料層
顔料層は、白色塗料が塗布された層であり、金属層上に形成されている。
【0028】
白色塗料は特に限定されない。一例を挙げると、白色塗料は、白色の酸化金属粒子を含むことが好ましい。酸化金属粒子は、可視光領域では散乱して白色に見えることで金属層の意匠感を抑え、かつ、赤外線の吸収が少ない特性の材料を用いることで、赤外線における金属層の反射性能の保持に寄与する。
【0029】
酸化金属粒子は赤外線吸収能が低い特性を有する。一例を挙げると、酸化金属粒子は、酸化金属粒子は、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化スズ、酸化ジルコニウムまたは酸化セリウムのいずれか、またはこれらを含む複合酸化物であることが好ましい。これらの酸化金属粒子は、赤外線を透過または反射し、赤外線の吸収が少ない。そのため、得られる積層体は、赤外線反射性能がより優れる。
【0030】
酸化金属粒子の大きさは特に限定されない。一例を挙げると、酸化金属粒子の平均粒子径は、0.1μm以上であることが好ましく、0.2μm以上であることがより好ましい。また、酸化金属粒子の平均粒子径は、20μm以下であることが好ましく、10μm以下であることがより好ましい。酸化金属粒子の平均粒子径が上記範囲内であることにより、白色塗料は、適度な分散性、塗工性が得られ、かつ、その塗工品は金属層の隠蔽性や意匠性が優れる。
【0031】
白色塗料における酸化金属粒子の含有量は特に限定されない。一例を挙げると、酸化金属粒子の含有量は、白色塗料中、40質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましい。また、酸化金属粒子の含有量は、白色塗料中、85質量%以下であることが好ましく、75質量%以下であることがより好ましい。酸化金属粒子の含有量が上記範囲内であることにより、積層体は、白色の意匠付与と赤外線反射性能とを両立しやすい。
【0032】
顔料層は、オレフィン系樹脂またはフッ素樹脂を含むことが好ましい。白色塗料における樹脂がオレフィン系樹脂またはフッ素樹脂を主体としたものである場合、白色塗料は、赤外線の吸収性能に影響しない程度で、以下の樹脂を添加してもよい。一例を挙げると、樹脂は、エチレンビニルアルコール、ポリビニルアルコール、セルロースアセテートブチレート、その他のセルロース誘導体、ポリビニルブチラール、ポリエチレングリコール、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリビニルブチラール、アクリル酸共重合体、変性ナイロン、ポリビニルピロリドン、ポリウレタン、ポリエステル、ポリエーテル、アルキッド、エチレン酢酸ビニル、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体、セルロースナノファイバー等である。
【0033】
白色塗料は、赤外線の反射性能に影響が出ない程度に、各種添加剤を添加できる。一例を挙げると、添加剤は、発泡剤、発泡助剤、防かび剤、難燃剤、架橋助剤、分散剤、滑剤等である。
【0034】
白色塗料の調製方法は特に限定されない。一例を挙げると、白色塗料は、樹脂に所定量の酸化金属粒子および溶媒を添加し、攪拌機で均一に分散されるまで攪拌し、調製し得る。
【0035】
溶媒は特に限定されない。一例を挙げると、溶媒は、水系または溶剤系の溶媒である。
【0036】
白色塗料における溶媒の含有量は特に限定されない。一例を挙げると、溶媒の含有量は、白色塗料中、40質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましい。また、溶媒の含有量は、白色塗料中、95質量%以下であることが好ましく、90質量%以下であることがより好ましい。溶媒の含有量が上記範囲内であることにより、白色塗料は、塗工時の膜厚ムラを抑え、積層体に対して均一な外観を施すことができる。
【0037】
白色塗料を塗工して顔料層を形成する方法は特に限定されない。一例を挙げると、塗工方法は、ブレードコート法、グラビアコート法、グラビアオフセットコート法、バーコート法、ロールコート法、ナイフコート法、エアナイフコート法、コンマコート法、Uコンマコート法、AKKUコート法、スムージングコート法、マイクログラビアコート法、リバースロールコート法、4本ロールコート法、5本ロールコート、ディップコート法、カーテンコート法、スライドコート法、ダイコート法、スプレーコート法等である。
【0038】
顔料層の厚みは特に限定されない。一例を挙げると、顔料層の厚みは1μm以上であることが好ましい。また、顔料層の厚みは、20μm以下であることが好ましい。顔料層の厚みは、酸化金属粒子径に応じて変化する。顔料層の厚みが上記範囲内であることにより、積層体は、白色の意匠を付与し得ると共に、金属層の保護膜としての性能を発揮し得る。また、顔料層は、隠蔽性に優れ、かつ、赤外線の反射性能が優れる。
【0039】
本実施形態の積層体は、優れた遮熱効果を実現した内装材を提供できる。特に、顔料層は、可視光領域では散乱して白色に見えることで金属層の意匠感を抑え、かつ、赤外線における金属層の反射性能の保持に寄与することができ、熱エネルギーを有効的に利用することができる。その結果、積層体は、室内の温度環境の改善に寄与する。より具体的には、積層体を室内の壁面、および天井に施工することにより、積層体は、暖房等の発熱体から発生する赤外線を壁面、および天井で反射させることができ、所望する室内の温度を施工以前と比較してより少ないエネルギー量で維持できる。
【0040】
また、本実施形態の積層体は、顔料層面の赤外線における9μmの正反射率が60%以上である。顔料層面の赤外線における9μmの正反射率は、65%以上であることがより好ましい。室内で用いられる暖房としては、たとえば、ホットカーペット、床暖房、エアコン、オイルヒーター、石油ファンヒーター、ガスファンヒーター、壁面暖房、パネルヒーター、等の発熱体がある。それらの発熱体の温度は、およそ30~70℃であり、その時のピーク波長は、9.56~8.44μmであるが代替値として9μmを使うことができる。したがって、積層体は、顔料層面の赤外線における9μmでの正反射率が60%以上あれば、充分な遮熱効果が得られる。本実施形態において、顔料層面の赤外線における9μmの正反射率は、フーリエ変換赤外分光光度計(FT-IR、装置名:FT-720、(株)堀場製作所製)を用いて測定し得る。
【0041】
また、積層体は、顔料層面の可視光領域における380~780nmでの拡散反射率が75%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましい。これにより、顔料層が可視光領域では散乱して白色に見えることにより、金属層の意匠感を抑制した積層体を得ることが出来る。本実施形態において、顔料層面の拡散反射率は、分光測色計(装置名:CM-3600A、コニカミノルタセンシング(株)製)の測定条件設定(反射/透過:反射、正反射光処理:SCI+SCE、測定径:LAV(25.4mm)、UV条件:100%Full、UVカット:0(None))にて測定し得る。
【実施例0042】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明する。本発明は、これら実施例に何ら限定されない。なお、特に制限のない限り、「%」は「質量%」を意味し、「部」は「質量部」を意味する。以下の実施例、比較例で使用した材料は次の通りである。表中の各成分および合計に関する欄の数値の単位は「質量%」である。
【0043】
(実施例1~3)
平均厚さが50μmであるポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上に、高周波誘導加熱・真空蒸着法によって、平均蒸着厚さが50nmのアルミニウム蒸着膜を形成した。続いて、ポリオレフィン系樹脂液(三菱ケミカル(株)製 サーフレン P-1000)に固形分中の酸化亜鉛粒子(平均粒子径:0.4μm)濃度が、それぞれ44%、52%、75%になるように添加して得られた白色塗料をメイヤーバーコーター#20でアルミニウム蒸着膜上へ塗工し、100℃以上120℃以下で乾燥して、積層体を形成した。
【0044】
(実施例4~7)
固形分中の酸化アルミニウム粒子(平均粒子径:3.4μm)濃度が、それぞれ44%、52%、75%、85%となるように添加した以外は、実施例1と同様にして、積層体を形成した。
【0045】
(実施例8~11)
固形分中の酸化マグネシウム粒子(平均粒子径:3.0μm)濃度が、それぞれ44%、52%、75%、85%になるように添加した以外は、実施例1と同様にして、積層体を形成した。
【0046】
(実施例12、13)
固形分中の酸化チタニウム粒子(平均粒子径:2.8μm)濃度が、それぞれ44%、52%になるように添加した以外は、実施例1と同様にして、積層体を形成した。
【0047】
(実施例14、15)
固形分中のスズ酸亜鉛粒子(平均粒子径:1.9μm)濃度が、それぞれ44%、52%になるように添加した以外は、実施例1と同様にして、積層体を形成した。
【0048】
(実施例16)
固形分中の酸化ジルコニウム粒子(平均粒子径:5.0μm)濃度が、それぞれ44%になるように添加した以外は、実施例1と同様にして、積層体を形成した。
【0049】
(実施例17~20)
固形分中の酸化セリウム粒子(平均粒子径:0.4μm)濃度が、それぞれ44%、52%、75%、85%になるように添加した以外は、実施例1と同様にして、積層体を形成した。
【0050】
(比較例1)
市販の白色壁紙(リンテックサインシステム(株)製 デジタルプリント壁紙 プリンテリアPRSO400Fフラット)を用いた。
【0051】
(比較例2)
平均厚さが50μmのPETフィルム上に、高周波誘導加熱・真空蒸着法によって、平均蒸着厚みが50nmのアルミニウム蒸着膜を形成した。
【0052】
(比較例3)
比較例2において得られたアルミ蒸着膜上へ、アクリル系樹脂液(大日精化工業(株)製 VMALメヂウム)をメイヤーバーコーター#20でアルミニウム蒸着膜上へ塗工し、100℃以上120℃以下で乾燥して、トップ層(厚み3.0μm)付きアルミ蒸着フィルムを形成した。
【0053】
(比較例4)
アクリル系樹脂液の代わりにポリオレフィン系樹脂液(三菱ケミカル(株)製 サーフレン P-1000)を使用した以外は、比較例3と同様にして、トップ層(厚み3.0μm)付きアルミ蒸着フィルムを形成した。
【0054】
(比較例5~7)
アクリル系樹脂液に固形分中の酸化亜鉛粒子(平均粒子径:0.4μm)濃度が、それぞれ44%、52%、64%になるように添加した以外は、比較例3と同様にして、積層体を形成した。
【0055】
(比較例8~10)
アクリル系樹脂液に固形分中の酸化チタン粒子(平均粒子径:2.8μm)濃度が、それぞれ44%、52%、64%になるように添加した以外は、比較例3と同様にして、積層体を形成した。
【0056】
得られた積層体について、以下の方法により、赤外線における9μmの正反射率、可視光領域における380~780nmの拡散反射率を測定した。結果を表1に示す。
【0057】
<赤外線反射率>
フーリエ変換赤外分光光度計(FT-IR、装置名:FT-720、(株)堀場製作所製)を用いて、顔料層面の赤外線における9μmの正反射率を求めた。
【0058】
<可視光拡散反射率>
分光測色計(装置名:CM-3600A、コニカミノルタセンシング(株)製)の測定条件設定…反射/透過:反射、正反射光処理:SCI+SCE、測定径:LAV(25.4mm)、UV条件:100%Full、UVカット:0(None)にて測定し、顔料層面の拡散反射光(SCE)を求めた。
【0059】
【表1】
【0060】
表1に示されるように、実施例1~20の積層体は、顔料層面の赤外線における9μmの正反射率が60%以上であった。そのため、これらの積層体は、白色系意匠を維持しつつ、優れた遮熱効果を実現した内装材を有すると考えられた。