(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024105019
(43)【公開日】2024-08-06
(54)【発明の名称】電池パックの製造方法及び電池パック
(51)【国際特許分類】
H01M 50/204 20210101AFI20240730BHJP
H01M 10/613 20140101ALI20240730BHJP
H01M 10/6551 20140101ALI20240730BHJP
H01M 10/625 20140101ALN20240730BHJP
【FI】
H01M50/204 401H
H01M10/613
H01M10/6551
H01M10/625
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023009523
(22)【出願日】2023-01-25
(71)【出願人】
【識別番号】507357232
【氏名又は名称】株式会社AESCジャパン
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(74)【代理人】
【識別番号】100127236
【弁理士】
【氏名又は名称】天城 聡
(72)【発明者】
【氏名】浦野 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】中村 幸晴
(72)【発明者】
【氏名】宇野 聖人
【テーマコード(参考)】
5H031
5H040
【Fターム(参考)】
5H031AA09
5H031CC01
5H031EE04
5H031KK01
5H040AA28
5H040AS07
5H040AT06
5H040LL06
5H040NN01
(57)【要約】
【課題】フィラーの非被覆領域を低減する。
【解決手段】電池パック10の製造方法は、収容体200の少なくとも一部分上に塗布フィラー150Aを塗布する工程と、塗布フィラー150Aを介して収容体200の少なくとも一部分上に電池モジュール100を搭載する工程と、を備えている。塗布フィラー150Aを塗布する工程において、塗布フィラー150Aは、交互に配置された複数の折り返し部を含むパターンを有している。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
収容体の少なくとも一部分上にフィラーを塗布する工程と、
前記フィラーを介して前記収容体の前記少なくとも一部分上に電池モジュールを搭載する工程と、
を備え、
前記フィラーを塗布する工程において、前記フィラーが、交互に配置された複数の折り返し部を含むパターンと、所定方向に並べられ隣り合うパターンの両端の少なくとも一方が互いにずれた複数のパターンと、の少なくとも一方を有する、電池パックの製造方法。
【請求項2】
収容体と、
フィラーを介して前記収容体の少なくとも一部分上に搭載された電池モジュールと、
を備え、
前記フィラーによって全周が囲まれた領域の面積が前記フィラーの全面積に対して30%未満である、電池パック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池パックの製造方法及び電池パックに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、複数の電池モジュールを備える様々な電池パックが開発されている。例えば特許文献1に記載の電池モジュールでは、電池モジュールが収容体に固定されている。この電池モジュールでは、電池モジュールと収容体との間に熱伝導部材が設けられている。熱伝導部材は、塗布によって形成されている。
【0003】
特許文献2には、電池セル同士を接着剤によって互いに接合する方法について記載されている。この方法において、接着剤は、電池セルの長手方向に平行なストライプパターン状に設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2017/47211号
【特許文献2】特開2006-172994号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば、特許文献1に記載されているように、電池モジュールと収容体との間に、塗布によって熱伝導部材等のフィラーが設けられることがある。塗布されたフィラーは、電池モジュールと収容体との圧縮によって横方向に延びる。しかしながら、フィラーが単に塗布されている場合、圧縮によって延びたフィラーが一部の領域で空気を取り囲み、フィラーの非被覆領域が形成されることがある。
【0006】
本発明の目的の一例は、フィラーの非被覆領域を低減することにある。本発明の他の目的は、本明細書の記載から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、以下のとおりである。
[1]
収容体の少なくとも一部分上にフィラーを塗布する工程と、
前記フィラーを介して前記収容体の前記少なくとも一部分上に電池モジュールを搭載する工程と、
を備え、
前記フィラーを塗布する工程において、前記フィラーが、交互に配置された複数の折り返し部を含むパターンと、所定方向に並べられ隣り合うパターンの両端の少なくとも一方が互いにずれた複数のパターンと、の少なくとも一方を有する、電池パックの製造方法。
[2]
収容体と、
フィラーを介して前記収容体の少なくとも一部分上に搭載された電池モジュールと、
を備え、
前記フィラーによって全周が囲まれた領域の面積が前記フィラーの全面積に対して30%未満である、電池パック。
【発明の効果】
【0008】
本発明の上記態様によれば、フィラーの非被覆領域を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】実施形態に係る電池パックからアッパケースが取り外された状態の平面図である。
【
図3】実施形態に係る電池モジュールの平面図である。
【
図6】実施形態に係るフィラーの形成方法の第1例を説明するための図である。
【
図7】実施形態に係るフィラーの形成方法の第2例を説明するための図である。
【
図8】実施形態に係るフィラーの形成方法の第3例を説明するための図である。
【
図10】変形例に係るフィラーの形成方法の一例を説明するための図である。
【
図12】比較例に係るフィラーの形成方法の一例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態及び変形例について、図面を用いて説明する。すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0011】
図1は、実施形態に係る電池パック10の斜視図である。
図2は、実施形態に係る電池パック10からアッパケース220が取り外された状態の平面図である。
【0012】
実施形態において、電池パック10は、自動車に搭載されている。具体的には、電池パック10は、自動車の前輪及び後輪の間に搭載されている。以下、特に断りがない限り、電池パック10が自動車に搭載されているものとして説明する。ただし、電池パック10は、自動車以外の用途にも適用可能である。
【0013】
各図には、説明のため、X方向、Y方向及びZ方向が示されている。X方向は、電池パック10の前後方向を示している。Y方向は、X方向に直交している。Y方向は、電池パック10の左右方向を示している。Z方向は、X方向及びY方向の双方に直交している。Z方向は、電池パック10の上下方向を示している。X方向を指し示す矢印、Y方向を指し示す及びZ方向を指し示す矢印は、それぞれ、電池パック10の前方向、左方向及び上方向を示している。
図2において、Z方向を示す黒点付き白丸は、Z方向を指し示す矢印が紙面の奥から手前に向けて延びていることを示している。ただし、X方向、Y方向及びZ方向と、電池パック10の前後方向、左右方向及び上下方向と、の関係はこの例に限定されない。
【0014】
実施形態において、電池パック10の前後方向、左右方向及び上下方向は、電池パック10が搭載される自動車によって決定されている。X方向、Y方向及びZ方向は、それぞれ、自動車の前後方向、左右方向及び上下方向を示している。X方向を指し示す矢印、Y方向を指し示す矢印及びZ方向を指し示す矢印は、それぞれ、自動車の前方向、左方向及び上方向を示している。ただし、電池パック10の前後方向、左右方向及び上下方向と、自動車の前後方向、左右方向及び上下方向と、の関係はこの例に限定されない。
【0015】
以下、必要に応じて、Z方向に垂直な方向を水平方向という。
【0016】
電池パック10は、4つの電池モジュール100及び収容体200を備えている。4つの電池モジュール100は、X方向に並ぶ左側の一対の電池モジュール100と、X方向に並ぶ右側の一対の電池モジュール100と、を含んでいる。収容体200は、ロアケース210及びアッパケース220を有している。ロアケース210は、概して、例えば、トレイ又は本体部とも称されることがある。ロアケース210は、ロアプレート212及びサイドフレーム214を含んでいる。アッパケース220は、概して、例えば、カバー又は蓋部とも称されることがある。後述するように、各電池モジュール100は、複数の電池セル102を有している。
【0017】
サイドフレーム214の前方には、一対のターミナル104が設けられている。一対のターミナル104は、Y方向に略平行に並んでいる。各ターミナル104の前端部は、サイドフレーム214の前面から前方に向けて突出している。電気的な経路において、一対のターミナル104の間において、4つの電池モジュール100は直列に接続されている。
【0018】
ロアケース210及びアッパケース220は、シール材230を介して互いに取り付けられている。ロアケース210、アッパケース220及びシール材230は、収容空間250を形成している。収容空間250には、4つの電池モジュール100が収容されている。
【0019】
ロアプレート212は、収容空間250の底部を画定している。サイドフレーム214は、収容空間250の側方部を画定している。具体的には、Z方向から見て、サイドフレーム214は、ロアプレート212の最外周に沿って設けられている。アッパケース220は、収容空間250の頂部を画定している。
【0020】
シール材230は、例えば、ゴム等の弾性材である。Z方向から見て、シール材230は、サイドフレーム214の全周に亘って設けられている。これによって、Z方向から見て、シール材230は、収容空間250を囲んでいる。したがって、シール材230によって収容空間250を収容体200の外部の空間から封止することができる。
【0021】
電池モジュール100の数及び配置は、実施形態に係る例に限定されない。例えば、電池モジュール100の数は2つのみ、3つのみ又は5つ以上であってもよい。
【0022】
図3は、実施形態に係る電池モジュール100の平面図である。
図4は、
図3のA-A断面図である。
図5は、実施形態に係るフィラー150の平面図である。
図4において、X方向を示すX付き白丸は、X方向を指し示す矢印が紙面の手前から奥に向けて延びていることを示している。
【0023】
図4に示すように、電池モジュール100は、セル積層体102G及び収容ケース110を有している。
【0024】
セル積層体102Gは、複数の電池セル102を含んでいる。
図4に示す例において、複数の電池セル102は、Y方向に略平行に積層されている。例えば、セル積層体102Gでは、並列に接続された複数の電池セル102を含む電池セル群が複数直列に接続されている。或いは、単一の電池セル102が複数直列に接続されていてもよい。
【0025】
収容ケース110は、セル積層体102Gを収容している。収容ケース110は、レフトカバー112、ライトカバー114、ロアカバー116、アッパカバー118、不図示のフロントカバー及び不図示のリアカバーを含んでいる。レフトカバー112は、セル積層体102Gの左側面を覆っている。ライトカバー114は、セル積層体102Gの右側面を覆っている。ロアカバー116は、熱伝導性接着剤116aを介してセル積層体102Gの下面を覆っている。アッパカバー118は、セル積層体102Gの上面を覆っている。不図示のフロントカバーは、セル積層体102Gの前面を覆っている。不図示のリアカバーは、セル積層体102Gの後面を覆っている。
【0026】
ロアプレート212は、アッパ冷却プレート212a及びロア冷却プレート212bを含んでいる。アッパ冷却プレート212a及びロア冷却プレート212bは、例えば、金属からなっている。具体的には、アッパ冷却プレート212a及びロア冷却プレート212bは、例えば、アルミニウムを主成分として含んでいる。アッパ冷却プレート212a及びロア冷却プレート212bは、Z方向に重なっている。アッパ冷却プレート212aの下面及びロア冷却プレート212bの上面の間の領域では、冷媒212cが流れている。冷媒212cは、例えば水等の液体である。
【0027】
ロアケース210は、支持フレーム216を含んでいる。Z方向から見て、支持フレーム216は、セル積層体102Gの少なくとも一部分を囲む囲繞体となっている。支持フレーム216は、アッパ冷却プレート212aの上面に設けられている。以下、必要に応じて、支持フレーム216のセル積層体102Gの左側に位置する部分をレフト支持部216aという。以下、必要に応じて、支持フレーム216のセル積層体102Gの右側に位置する部分をライト支持部216bという。
【0028】
レフトカバー112の左外側面にはレフト突起122が設けられている。レフト突起122は、レフトカバー112の左方に向けて突出している。レフト突起122は、レフト支持部216aの上面に配置されている。レフト突起122及びレフト支持部216aは、複数のレフトボルト162によって互いに締結されている。
図3に示すように、複数のレフトボルト162は、X方向に略平行に並んでいる。ただし、レフトボルト162の数及び配置は、
図3に示す例に限定されない。例えば、単一のレフトボルト162のみによってレフト突起122及びレフト支持部216aは互いに締結されていてもよい。
【0029】
ライトカバー114の右外側面にはライト突起124が設けられている。ライト突起124は、ライトカバー114の右方に向けて突出している。ライト突起124は、ライト支持部216bの上面に配置されている。ライト突起124及びライト支持部216bは、複数のライトボルト164によって互いに締結されている。
図3に示すように、複数のライトボルト164は、X方向に略平行に並んでいる。ただし、ライトボルト164の数及び配置は、
図3に示す例に限定されない。例えば、単一のライトボルト164のみによってライト突起124及びライト支持部216bは互いに締結されていてもよい。
【0030】
電池モジュール100は、フィラー150を介してロアプレート212上に搭載されている。フィラー150は、ロアカバー116の下面及びアッパ冷却プレート212aの上面の間に配置されている。フィラー150は、ロアカバー116の下面及びアッパ冷却プレート212aの上面によってZ方向に圧縮されている。
【0031】
実施形態において、フィラー150は、熱伝導性接着剤である。フィラー150としては、変性シリコーン系の塗布フィラー、ウレタン系の塗布フィラー、アクリル系の塗布フィラー等が例示される。したがって、ロアカバー116の下面及びアッパ冷却プレート212aの上面は、フィラー150を介して物理的に接合されている。このため、フィラー150が設けられていない場合と比較して、ロアカバー116及びアッパ冷却プレート212aが互いにずれにくくすることができる。さらに、ロアカバー116の下面及びアッパ冷却プレート212aの上面は、フィラー150を介して熱的に結合されている。このため、フィラー150が設けられていない場合と比較して、電池モジュール100において発生した熱が、熱伝導性接着剤116a、ロアカバー116及びフィラー150を介してロアケース210に逃げやすくすることができる。
【0032】
図5に示すように、Z方向から見て、フィラー150のパターンは、後述する
図6~
図8によって例示される略ジグザグパターン等の略ジグザグパターンに塗布されたフィラーをZ方向に圧縮して水平方向に延ばすことで形成されている。略ジグザグパターンに塗布されたフィラーは、ロアカバー116の下面及びアッパ冷却プレート212aの上面によってZ方向に圧縮されている。
【0033】
図5に示すように、フィラー150は、少なくとも1つの非被覆領域152を有することがある。非被覆領域152には、フィラー150が存在していない。Z方向から見て、非被覆領域152の全周は、フィラー150によって囲まれている。非被覆領域152は、Z方向の圧縮によって水平方向に延びたフィラーが空気を取り囲むことで形成されている。非被覆領域152の面積は、可能な限り小さいことが望ましい。非被覆領域152の面積が大きくなるほど、ロアカバー116の下面及びアッパ冷却プレート212aの上面の接合の低下や、ロアカバー116の下面及びアッパ冷却プレート212aの間の熱伝導の低下等の、電池パック10の性能の低下を引き起こし得る。しかしながら、実施形態においては、Z方向から見て、フィラー150の全面積に対する非被覆領域152の面積を比較的小さくすることができる。具体的には、Z方向から見て、非被覆領域152の面積は、フィラー150の全面積に対して30%未満、好ましくは20%以下、より好ましくは15%以下、さらにより好ましくは10%以下となっている。非被覆領域152の面積の下限は、特に限定されないが、ゼロであることが最も好ましい。
【0034】
図6は、実施形態に係るフィラー150の形成方法の第1例を説明するための図である。この第1例では、以下のようにして、フィラー150が形成されている。
【0035】
まず、不図示のノズルから塗布フィラー150Aをアッパ冷却プレート212aの上面に塗布する。Z方向から見て、塗布フィラー150Aは、略ジグザグパターンを有している。実施形態において、塗布フィラー150Aは、セル積層体102GのY方向の中心に対してY方向の一方の側の領域と、セル積層体102GのY方向の中心に対してY方向の他方の側の領域と、の間で交互に折り返されている。ただし、塗布フィラー150Aの折り返し形状は、複数の電池セル102の積層方向と無関係に決定してもよい。
【0036】
図6に示す例において、塗布フィラー150Aのパターンは、複数のレフト折り返し部152A、複数のライト折り返し部154A及び複数の延在部156Aを有している。複数のレフト折り返し部152A及び複数のライト折り返し部154Aは、交互に配置されている。
図6に示す例において、各レフト折り返し部152Aは、X方向に対して略平行に延在している。よって、各レフト折り返し部152AがX方向に対して斜めに延在している場合と比較して、セル積層体102Gの最も左側に位置する電池セル102と、レフト折り返し部152Aと、をZ方向に重ねやすくすることができる。したがって、
図6に示す例では、各レフト折り返し部152AがX方向に対して斜めに延在している場合と比較して、セル積層体102Gの最も左側に位置する電池セル102を冷却しやすくすることができる。ただし、各レフト折り返し部152Aは、X方向に対して斜めに延在していてもよい。ライト折り返し部154Aについても同様である。
図6に示す例において、各延在部156Aは、各レフト折り返し部152A及び各ライト折り返し部154Aの間で略直線状に延在している。具体的には、Z方向から見て、各延在部156Aは、Y方向に対して斜めになっている。
【0037】
実施形態では、塗布フィラー150Aを略ジグザグパターンに沿って連続的に塗布することができる。例えば、塗布フィラー150Aをストライプパターンに塗布する場合、ノズルをストライプパターンの異なるライン間で移動させる間、塗布フィラー150Aの塗布を中断する必要がある。これに対して、実施形態では、塗布フィラー150Aの塗布の中断の必要がない。したがって、実施形態では、塗布フィラー150Aをストライプパターンに塗布する場合と比較して、塗布フィラー150Aを塗布するためのタクトタイムを短くすることができる。
【0038】
さらに、実施形態では、塗布フィラー150Aをストライプパターンに塗布する場合と比較して、塗布フィラー150Aの量を略ジグザグパターンの全体に亘って均一にしやすくすることができる。具体的には、ノズルからは、塗布フィラー150Aの射出の開始直後と、塗布フィラー150Aの射出の終了直前と、において、他の期間よりも多量の塗布フィラー150Aが射出されやすい。塗布フィラー150Aをストライプパターンに塗布する場合、上述したように、ノズルをストライプパターンの異なるライン間で移動させる間、塗布フィラー150Aの塗布を中断する必要がある。したがって、ストライプパターンの各ラインの両端における塗布フィラー150Aの量がストライプパターンの各ラインの両端の間における塗布フィラー150Aの量よりも多くなりやすくなる。これに対して、実施形態では、上述したように、塗布フィラー150Aの塗布の中断の必要がない。したがって、実施形態では、塗布フィラー150Aをストライプパターンに塗布する場合と比較して、塗布フィラー150Aの量を略ジグザグパターンの全体に亘って均一にしやすくすることができる。
【0039】
次いで、塗布フィラー150Aを介してアッパ冷却プレート212aの上面上に電池モジュール100を搭載する。次いで、レフト突起122及びレフト支持部216aをレフトボルト162によって互いに締結する。同様に、ライト突起124及びライト支持部216bをライトボルト164によって互いに締結する。これによって、塗布フィラー150Aは、cの下面及びアッパ冷却プレート212aの上面によってZ方向に圧縮される。このため、塗布フィラー150Aは、水平方向に延びる。
【0040】
図6に示すように、Z方向から見て、塗布フィラー150Aのパターンは、複数のライト開口152aA及び複数のレフト開口154aAを画定している。各ライト開口152aAは、X方向に隣り合うライト折り返し部154Aの間に位置している。各レフト開口154aAは、X方向に隣り合うレフト折り返し部152Aの間に位置している。
【0041】
Z方向の圧縮によって塗布フィラー150Aが水平方向に延びる場合、各レフト折り返し部152A及び各延在部156Aの各レフト折り返し部152Aの周辺部分は、主に、ライト開口152aAに向けて延びる。一方、各ライト折り返し部154A及び各延在部156Aの各ライト折り返し部154Aの周辺部分は、主に、レフト開口154aAに向けて延びる。したがって、実施形態では、塗布フィラー150Aのパターンがライト開口152aA及びレフト開口154aAにおいて開口されずに閉じている場合と比較して、水平方向に延びた塗布フィラー150Aが空気を取り囲む可能性を低減することができる。このため、実施形態では、塗布フィラー150Aのパターンがライト開口152aA及びレフト開口154aAにおいて開口されずに閉じている場合と比較して、非被覆領域152の面積を小さく、又はゼロにすることができる。
【0042】
レフト折り返し部152Aを介してX方向に隣り合う延在部156AのX方向の間隔は、レフト折り返し部152Aからライト折り返し部154Aに向かうにつれてかけて広がっている。同様に、ライト折り返し部154Aを介してX方向に隣り合う延在部156AのX方向の間隔は、ライト折り返し部154Aからレフト折り返し部152Aに向かうにつれて広がっている。言い換えると、Z方向から見て、レフト折り返し部152A及び延在部156Aのなす角度が90°より大きくなっている。ライト折り返し部154A及び延在部156Aのなす角度についても同様である。
【0043】
一例において、Z方向から見て、レフト折り返し部152A及び延在部156Aのなす角度は、90°より大きく、好ましくは92°以上である。ライト折り返し部154A及び延在部156Aのなす角度についても同様である。この場合、レフト折り返し部152A及び延在部156Aのなす角度と、ライト折り返し部154A及び延在部156Aのなす角度と、が90°以下である場合と比較して、レフト折り返し部152A及びライト折り返し部154Aから広がったフィラーがX方向に隣り合う延在部156Aの間で空気を取り囲みにくくすることができる。
【0044】
一例において、Z方向から見て、レフト折り返し部152A及び延在部156Aのなす角度は、110°以下、好ましくは100°以下である。ライト折り返し部154A及び延在部156Aのなす角度についても同様である。この場合、レフト折り返し部152A及び延在部156Aのなす角度と、ライト折り返し部154A及び延在部156Aのなす角度と、が上述の上限値より大きい場合と比較して、X方向に隣り合う延在部156Aの間の全体に亘ってフィラーが延びやすくすることができる。
【0045】
セル積層体102Gは、自動車等の車両に用いられ、比較的高重量となっている。よって、セル積層体102Gの重量によって、ロアカバー116はアッパ冷却プレート212aに向けて凸に撓むことがある。ロアカバー116の撓みを抑制すべくロアカバー116のZ方向の厚みを厚くすると、電池パック10の重量増加につながる。よって、ロアカバー116のZ方向の厚みを厚くするよりも、ロアカバー116の一定の撓みを許容してもよい。ロアカバー116の撓みの最大値は、例えば、0.1mm以上1.0mm以下である。ロアカバー116の撓みの最大値がこの範囲である場合、電池モジュール100の重量及び大きさに応じて、アッパ冷却プレート212aの材質、厚み、固定方法等の条件を調整することで、塗布フィラー150Aの厚みを均一にしやすくすることができる。ロアカバー116が撓む場合、アッパ冷却プレート212aもロアカバー116と同様に撓んでもよい。ロアカバー116及びアッパ冷却プレート212aの双方が略同一形状に撓む場合、ロアカバー116及びアッパ冷却プレート212aの間のフィラー150の厚みを均一にしやすくすることができる。
【0046】
図7は、実施形態に係るフィラー150の形成方法の第2例を説明するための図である。
図7を用いて説明する第2例は、以下の点を除いて、
図6を用いて説明した第1例と同様である。
【0047】
Z方向から見て、
図7に示す塗布フィラー150Bのパターンは、複数のレフト折り返し部152B、複数のライト折り返し部154B及び複数の延在部156Bを有している。
図7に示すように、Z方向から見て、各延在部156Bは、各レフト折り返し部152B及び各ライト折り返し部154Bの間で湾曲していてもよい。
【0048】
図8は、実施形態に係るフィラー150の形成方法の第3例を説明するための図である。
図8を用いて説明する第3例は、以下の点を除いて、
図6を用いて説明した第1例と同様である。
【0049】
Z方向から見て、
図8に示す塗布フィラー150Cのパターンは、複数のレフト折り返し部152C、複数のライト折り返し部154C及び複数の延在部156Cを有している。
図8に示すように、Z方向から見て、レフト折り返し部152Cからライト折り返し部154Cに向けて延在する延在部156Cは、Y方向に略平行になっていてもよい。
図8に示す例において、Z方向から見て、ライト折り返し部154Cからレフト折り返し部152Cに向けて延在するライト折り返し部154Cは、Y方向に対して斜めになっている。
【0050】
図9は、変形例に係るフィラー150Vの平面図である。
図10は、変形例に係るフィラー150Vの形成方法の一例を説明するための図である。
【0051】
実施形態と同様にして、フィラー150Vのパターンは、
図10によって例示される変形ストライプパターンに塗布されたフィラーをZ方向に圧縮して水平方向に延ばすことで形成されている。
【0052】
図10に示す例では、塗布フィラー150VAからなる複数の略線パターンがX方向に対して略方向に略等間隔に並べられている。各線パターンは、Y平行に対して略平行に延在している。各線パターンのY方向の長さは、互いに略等しくなっている。X方向に隣り合う線パターンのY方向の中心は、Y方向に互いにずれている。よって、X方向に隣り合う線パターンのY方向の両端は、Y方向に互いにずれている。各線パターンのY方向の両端部のX方向の幅は、各線パターンのY方向の両端部の間の部分のX方向の幅より広くなっている。これは、上述したように、不図示のノズルから塗布フィラー150VAを射出して各線パターンを形成する際に、塗布フィラー150VAの射出の開始直後と、塗布フィラー150VAの射出の終了直前と、において、他の期間よりも多量の塗布フィラー150VAが射出されやすいためである。よって、各線パターンのY方向の両端部のZ方向の厚みは、各線パターンのY方向の両端部の間の部分のZ方向の厚みより厚くなっていることもある。
【0053】
図11は、比較例に係るフィラー150Kの平面図である。
図12は、比較例に係るフィラー150Kの形成方法の一例を説明するための図である。比較例は、以下の点を除いて、変形例と同様である。
【0054】
図12に示すように、塗布フィラー150KAは、単純なストライプパターンに形成されている。X方向に隣り合う線パターンのY方向の中心は、Y方向に互いに揃っている。よって、X方向に隣り合う線パターンのY方向の両端は、Y方向に互いに揃っている。
【0055】
変形例及び比較例を比較する。
【0056】
比較例では、塗布フィラー150KAがZ方向に圧縮された場合、各線パターンのY方向の両端部のフィラーが、各線パターンのY方向の両端部の間のフィラーよりも、水平方向に延びやすくなっている。これは、上述したように、各線パターンのY方向の両端部におけるフィラーの単位面積当たりの量が、各線パターンのY方向の両端部の間におけるフィラーの単位面積当たりの量より多いためである。よって、比較例では、
図11に示すように、各線パターンのY方向の両端部から水平方向に延びたフィラーがX方向に隣り合う線パターンの間の空気を取り囲みやすく、非被覆領域152Kが形成されやすくなっている。
【0057】
これに対して、変形例では、
図10に示すように、X方向に隣り合う線パターンのY方向の両端部がY方向に互いにずれている。よって、各線パターンのY方向の両端部からフィラーが水平方向に延びても、変形例では、比較例と比較して、各線パターンのY方向の両端部から水平方向に延びたフィラーがX方向に隣り合う線パターンの間の空気を取り囲みにくくなっている。よって、変形例では、比較例よりも、非被覆領域を低減することができる。
【0058】
変形例では、
図10に示すように、X方向に隣り合う線パターンのY方向の両端がY方向に互いにずれている。しかしながら、X方向に隣り合う線パターンのY方向の両端の一方のみがY方向に互いにずれていてもよい。この例において、X方向に隣り合う線パターンのY方向の両端の他方は、Y方向に互いに揃っていてもよい。この例においても、比較例よりも、非被覆領域を低減することができる。
【0059】
以上、図面を参照して本発明の実施形態及び変形例について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【0060】
例えば、塗布フィラーは、一部の領域では実施形態において説明した方法で形成し、他の一部の領域では変形例において説明した方法で形成してもよい。
【実施例0061】
本発明の一態様を実施例1及び比較例1に基づいて説明する。本発明は、以下の実施例1に限定されるものではない。
【0062】
(実施例1)
変性シリコーン系の塗布フィラーをノズルからプレートに塗布した。塗布フィラーは、
図6を用いて説明した例と同様にして、略ジグザグパターンとした。塗布フィラーのパターンの各折り返し部の長さは、25mmとした。塗布フィラーの各延在部の長さは、300mmとした。各延在部及び各折り返し部がなす角度は、93°とした。塗布フィラーのパターンは、左側で10回、右側で10回折り返した。
【0063】
次いで、塗布フィラーをプレートに垂直な方向に圧縮した。
図5を用いて説明したように、塗布フィラーの圧縮によって、フィラーが水平方向に延びた。実施形態において説明した非被覆領域の面積は、フィラーの全面積に対して10%であった。
【0064】
(比較例1)
比較例1は、以下の点を除いて、実施例1と同様とした。
【0065】
塗布フィラーは、単純なストライプパターンとした。ストライプパターンに含まれる複数の線パターンは、実施例1における略ジグザグパターンの複数の延在部の配列方向に対して平行に延在している。複数の線パターンのピッチは、30mmとした。各線パターンの長さは、30350mmとした。
【0066】
次いで、塗布フィラーをプレートに垂直な方向に圧縮した。
図11を用いて説明したように、塗布フィラーの圧縮によって、フィラーが水平方向に延びた。実施形態において説明した非被覆領域の面積は、フィラーの全面積に対して30%であった。
【0067】
実施例1及び比較例1の比較より、塗布フィラーを略ジグザグパターンに形成した場合、塗布フィラーを単純なストライプパターンに形成した場合よりも、フィラーの非被覆領域の面積を小さくすることができるといえる。