(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024010502
(43)【公開日】2024-01-24
(54)【発明の名称】インク用包装容器
(51)【国際特許分類】
B43K 8/03 20060101AFI20240117BHJP
【FI】
B43K8/03
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022111877
(22)【出願日】2022-07-12
(71)【出願人】
【識別番号】000005957
【氏名又は名称】三菱鉛筆株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100193404
【弁理士】
【氏名又は名称】倉田 佳貴
(72)【発明者】
【氏名】小椋 孝介
(72)【発明者】
【氏名】小野寺 裕
【テーマコード(参考)】
2C350
【Fターム(参考)】
2C350GA04
2C350KC05
(57)【要約】
【課題】本発明では、長期保存に適した、筆記具用インク入りの新規なインク用包装容器を提供する。
【解決手段】水性筆記具用インクが充填されている、本発明のインク用包装容器は、
前記水性筆記具用インクが、水、色材、及び有機溶剤を含有しており、
前記インク用包装容器が、紙層、及び前記水性筆記具用インクと接している内側樹脂層をこの順で少なくとも有するインク収容部を少なくとも有し、
前記水性筆記具用インクと前記インク収容部との間に存在する空間に、空気を含んでおり、かつ
前記有機溶剤の溶解度パラメータが、前記内側樹脂層を構成する樹脂の溶解度パラメータよりも大きい。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水性筆記具用インクが充填されている、インク用包装容器であって、
前記水性筆記具用インクが、水、色材、及び有機溶剤を含有しており、
前記インク用包装容器が、紙層、及び前記水性筆記具用インクと接している内側樹脂層をこの順で少なくとも有するインク収容部を少なくとも有し、
前記水性筆記具用インクと前記インク収容部との間に存在する空間に、空気を含んでおり、かつ
前記有機溶剤の溶解度パラメータが、前記内側樹脂層を構成する樹脂の溶解度パラメータよりも大きい、
インク用包装容器。
【請求項2】
前記有機溶剤の溶解度パラメータが、9.5以上である、請求項1に記載のインク用包装容器。
【請求項3】
前記有機溶剤の含有率が、前記水性筆記具用インクの質量に対して、20質量%以下である、請求項1又は2に記載のインク用包装容器。
【請求項4】
前記有機溶剤の、20℃における水への溶解度が、10g/100ml以上である、請求項1又は2に記載のインク用包装容器。
【請求項5】
筆記具である、請求項1又は2に記載のインク用包装容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インク用包装容器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境問題に対する配慮の観点から、使い捨てを前提としたプラスチックの使用を抑制すべく、紙を基材として有する筆記具が提案されている。
【0003】
特許文献1では、紙基材の内層と、前記内層の外周面に形成され、金属層またはシリカ蒸着層である中間層とを備える紙基材積層体と、前記中間層の外周面に形成された、紙基材からなる外層とからなる少なくとも三層を有し、前記内層の紙基材の密度が0.8g/cm3以上であることを特徴とする塗布具用液体収容部材が開示されている。
【0004】
特許文献2では、紙を基材としてインク収容管を構成し、前記インク収容管の一端部を、筆記部材もしくは筆記部材を支持する中継部材に形成された接続部に結合させたことを特徴とする筆記具用インク収容部材が開示されている。
【0005】
特許文献3では、内部にもたれを持った刷毛と、この刷毛に供給するための塗料を収容するボトルと、このボトルに装着される蓋であって、中央部に前記もたれに連なる開口、およびこの開口に隣接した外部に配され塗料を貯留する容積を持つ塗料溜めが設けられたねじ込み式蓋と、前記塗料を前記ボトルから前記塗料溜めに供給するための弁とをそなえた塗料容器付刷毛式塗装器が開示されている。
【0006】
なお、特許文献4では、口栓付き紙容器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2021-16976号公報
【特許文献2】特開2020-172044号公報
【特許文献3】特開2000-51772号公報
【特許文献4】特開2020-151832号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明では、長期保存に適した、筆記具用インク入りの新規なインク用包装容器を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、鋭意検討したところ、以下の手段により上記課題を解決できることを見出して、本発明を完成させた。すなわち、本発明は、下記のとおりである:
〈態様1〉水性筆記具用インクが充填されている、インク用包装容器であって、
前記水性筆記具用インクが、水、色材、及び有機溶剤を含有しており、
前記インク用包装容器が、紙層、及び前記水性筆記具用インクと接している内側樹脂層をこの順で少なくとも有するインク収容部を少なくとも有し、
前記水性筆記具用インクと前記インク収容部との間に存在する空間に、空気を含んでおり、かつ
前記有機溶剤の溶解度パラメータが、前記内側樹脂層を構成する樹脂の溶解度パラメータよりも大きい、
インク用包装容器。
〈態様2〉前記有機溶剤の溶解度パラメータが、9.5以上である、態様1に記載のインク用包装容器。
〈態様3〉前記有機溶剤の含有率が、前記水性筆記具用インクの質量に対して、20質量%以下である、態様1又は2に記載のインク用包装容器。
〈態様4〉前記有機溶剤の、20℃における水への溶解度が、10g/100ml以上である、態様1~3のいずれか一項に記載のインク用包装容器。
〈態様5〉筆記具である、態様1~4のいずれか一項に記載のインク用包装容器。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、長期保存に適した、筆記具用インク入りの新規なインク用包装容器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、筆記具である本発明のインク用包装容器の全体斜視図である。
図1(a)は、キャップ部を嵌着させた状態の斜視図であり、
図1(b)は、キャップ部を外した状態の斜視図であり、
図1(c)は、筆記部を外した状態の斜視図である。
【
図2】
図2は、本発明のインク用包装容器の全体図である。
図2(a)は、本発明のインク用包装容器の上面図である。
図2(b)は、本発明のインク用包装容器の正面図である。
図2(c)は、本発明のインク用包装容器の側面図である。
図2(d)は、本発明のインク用包装容器の側面断面図である。
【
図3】
図3は、本発明のインク用包装容器による筆記の説明図である。
【
図4】
図4は、本発明のインク用包装容器のインク収容部を得るためのカートンブランクスを示す図である。
【
図5】
図5は、本発明のインク用包装容器の筆記部の構造を示す図である。
図5(a)は、筆記部の上面図である。
図5(b)及び
図5(c)は、筆記部の斜視図である。
図5(d)は、筆記部の正面図である。
図5(e)は、筆記部の側面図である。
図5(f)は、
図5(a)の線f-fにおける筆記部の断面図である。
図5(g)は、筆記部の底面図である。
図5(h)は、
図5(a)の線h-hにおける筆記部の断面図である。
【
図6】
図6は、本発明のインク用包装容器のキャップ部、筆記部及び口栓部で構成されるアセンブリの構造を示す図である。
図6(a)は、アセンブリの上面図である。
図6(b)は、アセンブリの斜視図である。
図6(c)は、アセンブリの正面図である。
図6(d)は、アセンブリの側面図である。
図6(e)は、
図6(a)の線e-eにおけるアセンブリの断面図である。
図6(f)は、アセンブリの底面図である。
図6(g)は、
図6(a)の線g-gにおけるアセンブリの断面図である。
【
図7】
図7は、本発明のインク用包装容器の口栓部の構造を示す図である。
図7(a)は、口栓部の斜視図である。
図7(b)は、口栓部の上面図である。
図7(c)は、
図7(b)の線c-cにおける口栓部の断面図である。
図7(d)は、口栓部の正面図である。
図7(e)は、口栓部の側面図である。
図7(f)は、口栓部の底面図である。
図7(g)は、口栓部の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
《インク用包装容器》
水性筆記具用インクが充填されている、本発明のインク用包装容器は、
前記水性筆記具用インクが、水、色材、及び有機溶剤を含有しており、
前記インク用包装容器が、紙層、及び前記水性筆記具用インクと接している内側樹脂層をこの順で少なくとも有するインク収容部を少なくとも有し、
前記水性筆記具用インクと前記インク収容部との間に存在する空間に、空気を含んでおり、かつ
前記有機溶剤の溶解度パラメータが、前記内側樹脂層を構成する樹脂の溶解度パラメータよりも大きい。
【0013】
インク用包装容器は、水性筆記具用インクとインク収容部との間に存在する空間に、空気を含んでいる。このような包装容器は、長期保存した結果、高温環境を経ることがある。また、一般に、液体を包装するための紙製の包装容器は、内容物の滲出を抑制する観点から、内容物側に樹脂層を有する。このとき、一般に有機溶剤を含有しているインクを包装容器に充填した場合には、この内容物側の樹脂層が劣化することがあった。また、この劣化により、インクの揮発抑制効果が損なわれ、インクの粘度に影響が出ることがあった。
【0014】
これに対し、本発明者らは、有機溶剤の溶解度パラメータが、内側樹脂層を構成する樹脂の溶解度パラメータよりも大きくなる組合せにより、高温環境における樹脂の劣化を抑制できることを見出した。
【0015】
以下では、本発明の各構成要素について説明する。
【0016】
〈水性筆記具用インク〉
本発明の水性筆記具用インクは、水、有機溶剤及び色材を含有している。
【0017】
本発明の水性筆記具用インクは、従来のインクに用いられる他の成分を含有していてよい。他の成分としては、例えば界面活性剤、固着性樹脂、pH調整剤、防腐剤等を用いることができる。
【0018】
本発明の水性筆記具用インクは、上記の材料を混合することにより得ることができる。
【0019】
(水)
水としては、例えば精製水、イオン交換水等を用いることができる。
【0020】
(有機溶剤)
有機溶剤は、溶解度パラメータ(SP値)が内側樹脂層を構成する樹脂の溶解度パラメータよりも大きい有機溶剤である。
【0021】
有機溶剤としては、例えば芳香族類、アルコール類、多価アルコール類、グリコールエーテル類、炭化水素類、エステル類等のうち、内側樹脂層を構成する樹脂のSP値よりも高いSP値を有するものを選択することができる。これらの溶剤は、単独で用いてもよく、又は組み合わせて用いてもよい。
【0022】
芳香族類としては、例えばエチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル、プロピレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、アルキルスルフォン酸フェニルエステル、フタル酸ブチル、フタル酸エチルヘキシル、フタル酸トリデシル、トリメリット酸エチルヘキシル、ジエチレングリコールジベンゾエート、ジプロピレングリコールジベンゾエート等を用いることができる。
【0023】
アルコール類としては、例えばメタノール(SP値:14.5~14.8)、エタノール(SP値:12.7)、ベンジルアルコール(SP値:12.1)、n-プロパノール、イソプロパノール(SP値:11.5)、n-ブタノール、イソブタノール、tert-ブチルアルコール、1-ペンタノール、イソアミルアルコール、sec-アミルアルコール、3-ペンタノール、tert-アミルアルコール、n-ヘキサノール、メチルアミルアルコール、2-エチルブタノール、n-ヘプタノール、2-ヘプタノール、3-ヘプタノール、n-オクタノール、2-オクタノール、2-エチルヘキサノール、3,5,5-トリメチルヘキサノール、ノナノール、n-デカノール、ウンデカノール、n-デカノール、トリメチルノニルアルコール、テトラデカノール、ヘプタデカノール、シクロヘキサノール、2-メチルシクロヘキサノール等を用いることができる。
【0024】
多価アルコール類としては、例えばエチレングリコール(SP値:14.2)、グリセリン(SP値:16.5)、ジエチレングリコール、3-メチル-1,3-ブタンジオール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、ヘキシレングリコール、オクチレングリコール等を用いることができる。
【0025】
グリコールエーテル類としては、例えば、メチルイソプロピルエーテル、エチルエーテル、エチルプロピルエーテル、エチルブチルエーテル、イソプロピルエーテル、ブチルエーテル、ヘキシルエーテル、2-エチルヘキシルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノ-2-エチルブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノブチルエーテル、3-メチル-3-メトキシ-1-ブタノール、3-メトキシ-1-ブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル(SP値:14.2)、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールターシャリーブチルエーテルジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、テトラプロピレングリコールモノブチルエーテル等を用いることができる。
【0026】
炭化水素類としては、例えばヘキサン(SP値:7.3)、イソヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン等の直鎖炭化水素類、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等の環状炭化水素類を用いることができる。
【0027】
エステル類としては、例えばプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールジアセテート、3-メチル-3-メトキシブチルアセテート、プロピレングリコールエチルエーテルアセテート、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、ギ酸ブチル、ギ酸イソブチル、ギ酸イソアミル、酢酸エチル(SP値:9.0)、酢酸プロピル、酢酸ブチル(SP値:8.5)、酢酸イソプロピル、酢酸イソブチル、酢酸イソアミル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、プロピオン酸イソブチル、プロピオン酸イソアミル、酪酸メチル、酪酸エチル、酪酸プロピル、イソ酪酸メチル、イソ酪酸エチル、イソ酪酸プロピル、吉草酸メチル、吉草酸エチル、吉草酸プロピル、イソ吉草酸メチル、イソ吉草酸エチル、イソ吉草酸プロピル、トリメチル酢酸メチル、トリメチル酢酸エチル、トリメチル酢酸プロピル、カプロン酸メチル、カプロン酸エチル、カプロン酸プロピル、カプリル酸メチル、カプリル酸エチル、カプリル酸プロピル、ラウリン酸メチル、ラウリン酸エチル、オレイン酸メチル、オレイン酸エチル、カプリル酸トリグリセライド、クエン酸トリブチルアセテート、オキシステアリン酸オクチル、プロピレングリコールモノリシノレート、2-ヒドロキシイソ酪酸メチル、3-メトキシブチルアセテート等を用いることができる。
【0028】
有機溶剤のSP値は、内側樹脂層のSP値に応じて選択してよく、例えば8以上、9以上、9.5以上、10以上、11以上、12以上、13以上、又は14以上であってよく、また20以下、19以下、18以下、又は17以下であってよい。有機溶剤の炭素数が少ないほど、SP値が大きくなる傾向にある。
【0029】
ここで、SP値は、「Hildebrand溶解度パラメータ」として当業者に知られているSP値であり、このSP値に関しては、データ集等の公知の文献を参照することができる。
【0030】
上記のSP値を得る観点から、有機溶剤としては、アルコール類、多価アルコール類、特にこれらの有機溶剤のうちの炭素数が8以下、7以下、6以下、5以下、4以下、又は3以下のものを用いることが好ましい。
【0031】
有機溶剤の含有率は、水性インク組成物の質量全体を基準として、1質量%以上、2質量%以上、又は3質量%以上であってよく、また20質量%以下、15質量%以下、12質量%以下、10質量%以下、又は9質量%以下であってよい。
【0032】
有機溶剤の、20℃における水への溶解度は、10g/100ml以上であることが、内側樹脂層を構成する樹脂の劣化を抑制する観点から好ましい。
【0033】
(色材)
色材としては、染料、顔料、又は染料と顔料との混合物等、従来のインクに用いることができる種々の着色材を使用することができる。これらの着色材は、単独で用いてもよく、又は混合して用いてもよい。
【0034】
染料としては、水に溶解又は分散する全ての染料を用いることができ、例えば、エオシン、フオキシン、ウォーターイエロー#6-C、アシッドレッド、ウォーターブルー#105、ブリリアントブルーFCF、ニグロシンNB等の酸性染料;ダイレクトブラック154,ダイレクトスカイブルー5B、バイオレットBB等の直接染料;ローダミン、メチルバイオレット等の塩基性染料などが挙げられる。
【0035】
顔料としては、酸化チタン等の従来公知の無機系及び有機系顔料、顔料又は染料を含有した樹脂粒子顔料、樹脂エマルションを染料又は顔料で着色した疑似顔料、白色系プラスチック顔料、光輝性顔料、シリカや雲母を基材とし表層に酸化鉄や酸化チタンなどを多層コーティングした顔料、熱変色性顔料、光変色性粒子等を制限なく使用することができる。
【0036】
無機系顔料としては、例えば、カーボンブラック、チタンブラック、亜鉛華、べんがら、アルミニウム、酸化クロム、鉄黒、コバルトブルー、酸化鉄黄、ビリジアン、硫化亜鉛、リトポン、カドミウムエロー、朱、カドミウムレッド、黄鉛、モリブデードオレンジ、ジンククロメート、ストロンチウムクロメート、ホワイトカーボン、クレー、タルク、群青、沈降性硫酸バリウム、バライト粉、炭酸カルシウム、鉛白、紺白、紺青、マンガンバイオレット、アルミニウム粉、真鍮粉等を用いることができる。
【0037】
有機系顔料としては、アゾレーキ、不溶性アゾ顔料、キレートアゾ顔料、フタロシアニン顔料、ペリレン及びペリノン顔料、ニトロソ顔料などが挙げられる。このような有機系顔料としては、例えばC.I.ピグメントブルー17、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー17、C.I.ピグメントブルー27、C.I.ピグメントレッド5、C.I.ピグメントレッド22、C.I.ピグメントレッド38、C.I.ピグメントレッド48、C.I.ピグメントレッド49、C.I.ピグメントレッド53、C.I.ピグメントレッド57、C.I.ピグメントレッド81、C.I.ピグメントレッド104、C.I.ピグメントレッド146、C.I.ピグメントレッド245、C.I.ピグメントイエロー1、C.I.ピグメントイエロー3、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー13、C.I.ピグメントイエロー14、C.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー34、C.I.ピグメントイエロー55、C.I.ピグメントイエロー74、C.I.ピグメントイエロー95、C.I.ピグメントイエロー166、C.I.ピグメントイエロー167、C.I.ピグメントオレンジ5、C.I.ピグメントオレンジ13、C.I.ピグメントオレンジ16、C.I.ピグメントバイオレット1、C.I.ピグメントバイオレット3、C.I.ピグメントバイオレット19、C.I.ピグメントバイオレット23、C.I.ピグメントバイオレット50、C.I.ピグメントグリーン7等が挙げられる。
【0038】
熱変色性顔料としては、発色剤として機能するロイコ色素と、該ロイコ色素を発色させる能力を有する成分となる顕色剤及び上記ロイコ色素と顕色剤の呈色において変色温度をコントロールすることができる変色温度調整剤を少なくとも含む熱変色性組成物を、所定の平均粒子径(例えば、0.1~6μm)となるように、マイクロカプセル化することにより製造された熱変色性顔料などを挙げることができる。この平均粒子径は、例えば0.1μm以上、0.2μm以上、0.3μm以上、0.5μm以上、0.7μm以上、又は0.9μm以上であってよく、また6μm以下、5μm以下、4μm以下、3μm以下、2μm以下、又は1μm以下であってよい。
【0039】
光変色性粒子としては、例えば、少なくともフォトクロミック色素(化合物)、蛍光色素などの光変色性物質から選択される1種以上と、テルペンフェノール樹脂などの樹脂とにより構成される光変色性粒子を用いることができる。また、光変色性粒子としては、少なくともフォトクロミック色素(化合物)、蛍光色素などの光変色性物質から選択される1種以上と、有機溶媒と、酸化防止剤、光安定剤、増感剤などの添加剤とを含む光変色性組成物を、所定の平均粒子径(例えば、0.1~6μm)となるように、マイクロカプセル化することにより製造された光変色性粒子などを挙げることができる。
【0040】
この光変色性粒子は、上記の光変色性物質を好適に用いることにより、例えば、室内照明環境(室内での白熱灯、蛍光灯、ランプ、白色LEDなどから選ばれる照明器具)において無色であり、紫外線照射環境(200~400nm波長の照射、紫外線を含む太陽光での照射環境)で発色する性質を有するものとすることができる。
【0041】
本発明(実施例等含む)において、「平均粒子径」は、測定の対象となる粒子の大きさによって適宜選択され、概ね1μm未満の粒子の場合は、動的光散乱法により測定した散乱強度分布において、体積基準により算出されたヒストグラム平均粒子径(D50)の値であり、1μm以上の粒子の場合は、レーザー回折法において体積基準により算出されたメジアン径(D50)の値である。平均粒子径の測定は、粒度分析計〔マイクロトラックHRA9320-X100(日機装社)〕を用いて行うことができる。
【0042】
上記熱変色性顔料及び上記光変色性粒子のマイクロカプセル化法としては、例えば、界面重合法、界面重縮合法、insitu重合法、液中硬化被覆法、水溶液からの相分離法、有機溶媒からの相分離法、融解分散冷却法、気中懸濁被覆法、スプレードライニング法などを挙げることができ、用途に応じて適宜選択することができる。
【0043】
例えば、水溶液からの相分離法では、以下の工程を含む方法、特に以下の工程をこの順で行うことを含む方法により、熱変色性マイクロカプセル顔料を製造することができる:
(1)ロイコ色素、顕色剤、及び変色温度調整剤を加熱溶融すること、
(2)加熱溶融させたロイコ色素、顕色剤、及び変色温度調整剤を乳化剤溶液に投入し、加熱攪拌して油滴状に分散させて分散液を作製すること、
(3)カプセル膜剤として、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アミノ樹脂等の壁膜を形成できる樹脂原料、例えば、アミノ樹脂溶液、具体的には、メチロールメラミン水溶液、尿素溶液、ベンゾグアナミン溶液などのアミノ樹脂溶液を、上記の分散液に徐々に投入し、この樹脂原料を反応させて、カプセル膜を生じさせることにより、熱変色性マイクロカプセル顔料を得ること、並びに
(4)熱変色性マイクロカプセル顔料を含むこの分散液を濾過すること。
【0044】
この熱変色性顔料では、ロイコ色素、顕色剤及び変色温度調整剤の種類、量などを好適に組み合わせることにより、各色の発色温度、消色温度を好適な温度に設定することができる。
【0045】
これらの色材は、単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。また、これらの色材のうち、水に分散する顔料や、樹脂粒子顔料、疑似顔料、白色系プラスチック顔料、多層コーティングした顔料、熱変色性顔料、光変色性粒子等の平均粒子径は、ボール径、インク組成・粘度などにより変動するが、平均粒子径が0.02~6μmのものが望ましい。この平均粒子径は、例えば0.02μm以上、0.05μm以上、0.07μm以上、0.10μm以上、0.20μm以上、0.30μm以上、0.50μm以上、0.70μm以上、又は0.90μm以上であってよく、また6μm以下、5μm以下、4μm以下、3μm以下、2μm以下、又は1μm以下であってよい。
【0046】
これらの色材の含有量は、インクの描線濃度に応じて適宜増減することが可能であるが、水性インク組成物全量に対して、0.1質量%以上、0.3質量%以上、0.5質量%以上、0.7質量%以上、0.9質量%以上、又は1.0質量%以上であってよく、また40質量%以下、35質量%以下、30質量%以下、25質量%以下、20質量%以下、15質量%以下、又は10質量%以下であることが好ましい。
【0047】
(固着性樹脂成分)
固着性樹脂成分としては、必要に応じて、粘度調整、並びに、固着力向上の点で用いる樹脂である。固着用樹脂としては、例えば水溶性樹脂及び樹脂エマルション等を用いることができる。これらの固着性樹脂を、単独で用いてもよく、又は混合させて用いてもよい。
【0048】
水溶性樹脂としては、例えば、ポリアクリル酸、水溶性スチレン-アクリル樹脂、水溶性スチレン-マレイン酸樹脂、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、水溶性マレイン酸樹脂、水溶性スチレン樹脂、水溶性エステル-アクリル樹脂、エチレン-マレイン酸共重合体、ポリエチレンオキサイド、水溶性ウレタン樹脂等の分子内に疎水部を持つ水溶性樹脂を用いることができる。
【0049】
樹脂エマルジョンとしては、例えばポリオレフィン系エマルジョン、アクリル系エマルジョン、酢酸ビニル系エマルジョン、ウレタン系エマルジョン、スチレン-ブタジエンエマルジョン、スチレンアクリロニトリルエマルジョンなどから選ばれる少なくとも1種を用いることができる。
【0050】
固着性樹脂成分の含有率は、筆記具用インクの質量に対して、3質量%以上、4質量%以上、5質量%以上、又は6質量%以上であることが、筆記具用インクの固着性を得る観点から好ましく、20質量%以下、15質量%以下、又は12質量%以下であることが、筆記具用インクの粘度を適切なものとする観点から好ましい。
【0051】
(他の成分)
他の成分としては、例えば界面活性剤、pH調整剤、粘度調整剤、防腐剤等を用いることができる。
【0052】
〈包装容器〉
本発明において、包装容器は、上記の筆記具用インクが収容されている包装容器である。この包装容器は、インク収容部のみで構成されていてもよく、他の部材を有していてもよい。
【0053】
また、本発明の包装容器は、筆記具の形態であってよい。この場合、他の部材としては、例えば筆記部等であってよい。筆記具である本発明の包装容器の一態様を、図面を参照しながら説明する。
【0054】
〈筆記具〉
図1及び2に示すように、本発明の包装容器100は、インク収容部10、筆記部20、キャップ部30、及び口栓部40を有していてよい。
【0055】
この態様の包装容器100によれば、
図3に示すように、筆記面200に筆記部20を押し当てた状態で筆記を行うことができる。
【0056】
(インク収容部)
インク収容部は、インクを収容している部材である。
【0057】
インク収容部は、紙層、及び水性筆記具用インクと接触している内側樹脂層を少なくとも有する。
【0058】
インク収容部は、紙層及び内側樹脂層を少なくとも有する積層体で構成されている。インク収容部は、例えば、上記の積層体で構成されている
図4に示すようなカートンブランクス10aを、
図4における実線を山折りとし、破線を谷折りとして筒状に成形し、そして端部を接着させることによりを製造することができる。具体的な製造方法については、特許文献3の記載を参照することができる。
【0059】
(インク収容部:紙層)
紙層としては、紙容器において一般に使用される紙層を用いることができる。
【0060】
(インク収容部:内側樹脂層)
内側樹脂層は、水性筆記具用インクと接触している樹脂製の層である。
【0061】
内側樹脂層を構成する樹脂としては、例えば例えばポリオレフィン系樹脂、ケトン樹脂、スルホアミド樹脂、マレイン酸樹脂、テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、エステルガム、キシレン樹脂、アルキッド樹脂、フェノール樹脂、ロジン、ポリビニルピロリドン、ポリビニルブチラール、ポリビニルアルコール、(メタ)アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、メラミン系樹脂、セルロース系樹脂等、及びこれらの誘導体等のうち、有機溶剤のSP値よりも低いSP値を有するものを選択することができる。
【0062】
内側樹脂層を構成する樹脂としては、中でも、(メタ)アクリル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂等を用いることが好ましい。これらの樹脂は、SP値が比較的低く、筆記具用インクに用いる有機溶剤の自由度を高めることができる。
【0063】
(メタ)アクリル系樹脂としては、例えばアクリル酸エチル(SP値:9.5)、アクリル酸ブチル(SP値:9.0)、アクリル酸メチル(SP値:10.0)、メタクリル酸イソブチル(SP値:7.2)、メタクリル酸イソボルニル(SP値:8.1)、メタクリル酸エチル(SP値:9.0)、メタクリル酸ステアリル(SP値:7.8)、メタクリル酸ブチル(SP値:8.8)、メタクリル酸メチル(SP値:9.5)、メタクリル酸ラウリル(SP値:8.2)、メタクリル樹脂(SP値:9.1)等を用いることができる。
【0064】
ポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン(SP値:7.9)、ポリプロピレン(SP値:9.1)等を用いることができる。
【0065】
したがって、有機溶媒として、アルコール類、例えばメタノール(SP値:14.5~14.8)、エタノール(SP値:12.7)、ベンジルアルコール(SP値:12.1);多価アルコール類、例えばエチレングリコール(SP値:14.2);又はグリコールエーテル類、プロピレングリコールモノメチルエーテル(SP値:14.2)を使用する場合、組み合わせる内側樹脂層を構成する樹脂としては、(メタ)アクリル系樹脂、例えばメタクリル樹脂(SP値:9.1)、又はポリオレフィン系樹脂、例えばポリエチレン(SP値:7.9)、ポリプロピレン(SP値:9.1)を用いることができる。
【0066】
また、比較的SP値が大きい有機溶媒、例えばグリセリン(SP値:16.5)を使用する場合、組み合わせる内側樹脂層を構成する樹脂としては、セルロース(SP値:15.6)を用いることもできる。
【0067】
内側樹脂層を構成する樹脂のSP値は、有機溶剤のSP値との関係で選択することができ、例えば20以下、18以下、16以下、14以下、12以下、10以下、9.5以下、又は9.5未満であってよい。
【0068】
内側樹脂層の水性筆記具用インクと接触している面の、ISO 25178に準拠して測定した算術平均粗さSaは、50μm以下、40μm以下、30μm以下、20μm以下、又は10μm以下であってよく、また1μm以上、3μm以上、又は5μm以上であってよい。
【0069】
(インク収容部:他の層)
他の層としては、バリア層、接着層等を用いることができる。
【0070】
バリア層としては、アルミニウム箔等の金属箔層、酸化アルミニウム蒸着膜等の金属蒸着層、シリカ層等を用いることができる。これらの層は、紙層又は内側樹脂層に別体で積層させてもよく、又は紙層又は内側樹脂層にあらかじめ積層されていてもよい。
【0071】
接着層としては、例えばドライラミネート接着剤等を用いることができる。
【0072】
(筆記部)
図5に示すように、筆記部20は、インク供給部22、及び接合部24を有していてよい。
【0073】
インク供給部は、接合部に接合されており、かつインク収容部から、例えば毛細管現象により、インクを供給できる構造を有していてよい。インク供給部としては、例えば一般的な筆記具に使用される芯、例えば繊維芯及びプラスチック芯等を、接合部に嵌合できる形状に成形したものが挙げられる。
【0074】
繊維芯は、天然繊維、獣毛繊維、ポリアセタール系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリビニル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリフェニレン系樹脂などの1種又は2種以上の組合せからなる平行繊維束、フェルト等の繊維束を加工又はこれらの繊維束を樹脂加工した芯である。
【0075】
プラスチック芯は、棒状の樹脂の長軸方向に、インクをインク収容部から供給するためのインク溝が形成されている芯である。この棒状樹脂は、繊維芯に関して挙げた樹脂で構成されていてよい。
【0076】
接合部は、筆記部を口栓部に接合させるための部分である。これにより、筆記部のみを口栓部から取り外すことができる。この態様によれば、筆記部が摩耗したときには、筆記部のみを新しいものに交換することができ、かつ容器内のインクを使い切った際には、インクが充填された新たなインク収容部を取り付けることにより、筆記部を再利用し、かつインク収容部も繰り返し使用することができる。
【0077】
(キャップ部)
キャップ部は、筆記部を隠蔽するための部材である。
図6に示すように、キャップ部30は、口栓部40の外接合部46に接合させるための接合部32、又は、図示しないが、筆記部に接合させるための構造を有していてよい。
【0078】
接合部は、キャップ部を口栓部の外接合部に接合させるための部分である。この接合部は、嵌合又は螺合等による接合を可能とする部分であってよい。
【0079】
(口栓部)
口栓部は、インク収容部に結合されていてよい。
図7に示すように、口栓部40は、一の部材で構成されていてよく、また開口部42、内接合部44、及び外接合部46を有していてよい。
【0080】
開口部は、インク収容部から筆記部のインク供給部にインクを供給するための部分である。この開口部を通じて、インク収容部にインクを補充することも、他の容器にインクを流し込むこともできる。
【0081】
内接合部は、筆記部を口栓部に接合させるための部分である。外接合部は、キャップ部を口栓部に接合させるための部分である。これらの接合部は、嵌合又は螺合等による接合を可能とする部分であってよい。
【実施例0082】
実施例及び比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明は、これらに限定されるものではない。
【0083】
《包装容器の作製》
表1に示す材料を、表1に示す量で混合させて、実施例1~5及び比較例1~3の筆記具用インクを作製した。
【0084】
各成分の詳細は以下のとおりである:
酸化チタン:酸化チタン、CR-95、石原産業株式会社
CB:カーボンブラック、MCF88、三菱化学株式会社
青色染料:フタロシアニンブルー5187、大日精化工業株式会社
赤色染料:FUJI RED 2510、富士色素株式会社
桃色染料:桃色、NKW3207E、日本蛍光株式会社
スチレンアクリル:ジョンクリル63J、BASF社
フッ素系:フタージェント251、ネオス社
PE:ポリエチレン
PP:ポリプロピレン
PGM: プロピレングリコールモノメチルエーテル
【0085】
作製した各インクを、それぞれ紙製の包装容器に充填して、実施例1~6及び比較例1~2の包装容器を作製した。包装容器の内側樹脂層を構成する樹脂は、表1に記載しているものを用いた。
【0086】
また、表1におけるSP値は、公知の文献を参照したものである。
【0087】
《内側樹脂層の剥がれの評価》
得られた内側樹脂層を温度50℃、湿度30%の環境で1週間静置し、室温に戻した後、容器の内側樹脂層の状態を目視により観察した。内側樹脂層の膨潤(劣化)による剥がれの状態の評価を、以下の評価基準で行った。:
A:変化がなかった。
B:僅かに剥がれている箇所があった。
C:明らかに剥がれが生じていた。
【0088】
実施例及び比較例の構成及び評価結果を表1に示す。
【0089】
【0090】
有機溶剤の溶解度パラメータが、内側樹脂層を構成する樹脂の溶解度パラメータよりも大きい、筆記具用インクを充填している実施例1~5の包装容器は、内側樹脂層の膨潤が抑制されていることから、長期保存に適していることが理解できよう。