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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024105022
(43)【公開日】2024-08-06
(54)【発明の名称】糊付製本装置
(51)【国際特許分類】
   B42C 19/04 20060101AFI20240730BHJP
   B42C 9/00 20060101ALI20240730BHJP
【FI】
B42C19/04
B42C9/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023009526
(22)【出願日】2023-01-25
(71)【出願人】
【識別番号】523028644
【氏名又は名称】有限会社三谷機巧
(74)【代理人】
【識別番号】100124419
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 敬也
(74)【代理人】
【識別番号】100162293
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷 久生
(74)【代理人】
【識別番号】100126170
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 義之
(72)【発明者】
【氏名】三谷 慎護
(57)【要約】
【課題】二つ折りの用紙を糊付して製本する糊付製本に要する時間を短縮する技術を提供する。
【解決手段】二つ折りの用紙を糊付して製本する糊付製本装置10は、糊付部140と、圧ローラー部130と、圧着製本部160とを有している。糊付部140は、熱溶融性の糊剤を貯留する糊バット141と、糊バット141に貯留された溶融状態の糊剤が移送され、移送された糊剤を用紙に転着する糊転着ローラー145とを有している。圧ローラー部130は、糊転着ローラー145に向かって荷重が加えられるとともに、糊転着ローラー145との間に用紙の紙厚に応じたローラー間隔を空けて配置された圧ローラー138を有している。このように糊剤が転着された用紙は、圧着製本部160において、順次積層して圧着される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二つ折りの用紙を糊付して製本する糊付製本装置であって、
熱溶融性の糊剤を貯留する糊バットと、前記糊バットに貯留された溶融状態の前記糊剤が移送され、移送された前記糊剤を前記用紙に転着する糊転着ローラーと、を有する糊付部と、
前記糊転着ローラーから前記用紙に糊剤が転着されるように、前記糊転着ローラーに向かって荷重が加えられるとともに、前記糊転着ローラーとの間に前記用紙の紙厚に応じたローラー間隔を空けて配置された圧ローラーを有する圧ローラー部と、
前記糊剤が転着された用紙を順次積層して圧着する圧着製本部と、
を備える、
糊付製本装置。
【請求項2】
請求項1記載の糊付製本装置であって、
前記圧ローラー部は、軸芯を中心に回転自在なフレーム軸と、前記フレーム軸に固定的に取り付けられ、前記圧ローラーが取り付けられた圧ローラーフレームと、前記圧ローラーフレームに取り付けられ、前記糊転着ローラーと前記圧ローラーとの間に前記用紙を搬送する搬送ローラーとを有しており、
前記圧ローラーフレームには、前記圧ローラーに前記糊転着ローラーに向かる荷重を付加する荷重付加機構と、前記ローラー間隔を調整する間隔調整機構と、が取り付けられている、
糊付製本装置。
【請求項3】
前記間隔調整機構に、前記用紙の紙厚に応じたスペーサーを挟み込むことにより、前記ローラー間隔を拡大するように構成された、紙厚調整器が設けられている、請求項2記載の糊付製本装置。
【請求項4】
請求項2または3記載の糊付製本装置であって、さらに、
前記搬送経路上において前記用紙の紙厚を検出するように、前記用紙によって移動する紙厚検出部と、
前記紙厚検出部の移動を抑制するブレーキ部と、
前記紙厚検出部の移動を前記フレーム軸に伝達し、前記圧ローラーフレームを回転移動させる移動伝達部と、
を備える、
糊付製本装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、製本装置に関し、特に、二つ折りの用紙の外面に糊剤を塗布して用紙を接着する糊付製本装置に関する。
【背景技術】
【0002】
写真等を印刷したアルバム、写真集、地図帳、あるいは、絵本等(以下、「本等」と総称する)を製本する際、印刷面が内方となるように二つ折りにされた用紙の外面に接着剤(糊剤)を塗布し、接着剤が塗布された用紙を順次積層して貼り合わせる糊付製本が行われる(例えば、特許文献1参照)。このような糊付製本に使用される接着剤としては、取り扱いの容易性や、労働環境の安全性の観点から、酢酸ビニルのエマルジョン等を用いた水性の接着剤が使用される。
【0003】
このように水性の接着剤を使用して糊付製本を行った場合、接着剤に含まれる水分が十分に除去されていないと接着剤が十分に固化せず、製本後の用紙が分離する虞がある。そこで、特許文献1では、接着剤の水分を吸収するため、印刷紙同士の間に厚紙を挟み込むことが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2010/143527号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1で提案されている方法によっては、接着剤に含まれる水分を十分に除去することが容易でない。そのため、通常、製本された本等を加圧保持して接着剤の固化を待つことが行われるが、接着剤の水分を十分に除去して、接着剤が十分に固化するまでには、長い時間を要する。
【0006】
本発明は、上述した従来の課題を解決するためになされたものであり、二つ折りの用紙を糊付して製本する糊付製本に要する時間を短縮する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の内、請求項1に記載の発明は、二つ折りの用紙を糊付して製本する糊付製本装置であって、熱溶融性の糊剤を貯留する糊バットと、前記糊バットに貯留された溶融状態の前記糊剤が移送され、移送された前記糊剤を前記用紙に転着する糊転着ローラーと、を有する糊付部と、前記糊転着ローラーから前記用紙に糊剤が転着されるように、前記糊転着ローラーに向かって荷重が加えられるとともに、前記糊転着ローラーとの間に前記用紙の紙厚に応じたローラー間隔を空けて配置された圧ローラーを有する圧ローラー部と、前記糊剤が転着された用紙を順次積層して圧着する圧着製本部と、を備えることを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1記載の糊付製本装置において、前記圧ローラー部が、軸芯を中心に回転自在なフレーム軸と、前記フレーム軸に固定的に取り付けられ、前記圧ローラーが取り付けられた圧ローラーフレームと、前記圧ローラーフレームに取り付けられ、前記糊転着ローラーと前記圧ローラーとの間に前記用紙を搬送する搬送ローラーとを有しており、前記圧ローラーフレームには、前記圧ローラーに前記糊転着ローラーに向かる荷重を付加する荷重付加機構と、前記ローラー間隔を調整する間隔調整機構と、が取り付けられていることを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項2記載の糊付製本装置において、前記間隔調整機構に、前記用紙の紙厚に応じたスペーサーを挟み込むことにより、前記ローラー間隔を拡大するように構成された、紙厚調整器が設けられていることを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項2または3記載の糊付製本装置において、さらに、前記搬送経路上において前記用紙の紙厚を検出するように、前記用紙によって移動する紙厚検出部と、前記紙厚検出部の移動を抑制するブレーキ部と、前記紙厚検出部の移動を前記フレーム軸に伝達し、前記圧ローラーフレームを回転移動させる移動伝達部と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係る糊付製本装置によれば、二つ折りの用紙の一方の外面に転着される糊剤として、熱溶融性の糊剤を使用することにより、圧着が終了した時点で糊剤が十分に固化するので、糊剤の固化を待つために製本後の用紙を加圧保持する作業を省略短縮することができる。そのため、二つ折りの用紙を糊付して製本する糊付製本に要する時間を短縮することができる。
【0012】
請求項2に係る糊付製本装置によれば、搬送ローラーと圧ローラーとが、圧ローラーフレームの回転移動に応じて一体的に移動するので、ローラー間隔の調整のために圧ローラーフレームが回転移動しても、圧ローラー部に到達した用紙を、より確実に糊転着ローラーと圧ローラーとの間まで搬送することができる。
【0013】
請求項3に係る糊付製本装置によれば、糊付製本される用紙の紙厚に応じてローラー間隔を適正に調整するより容易となる。
【0014】
請求項4に係る糊付製本装置によれば、一冊に厚さの異なる用紙を含む本等を連続して糊付製本することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】糊付製本装置の主要な構成を示す部分構成図である。
図2】荷重付加機構および間隔調整機構の構成を示す説明図である。
図3】間隔調整機構により圧ローラーと糊転着ローラーとの間隔が調整される様子を示す説明図である。
図4】厚口用紙対応機構の構成および動作を示す説明図である。
図5】厚口用紙対応機構の構成を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための形態を以下の順序で説明する。
A.糊付製本装置の主要な構成:
B.糊付製本装置の動作の概略:
C.荷重付加機構および間隔調整機構:
D.厚口用紙対応機構:
【0017】
A.糊付製本装置の主要な構成:
図1は、本発明の一実施形態としての糊付製本装置10(以下、単に「製本装置10」とも呼ぶ)の主要な構成を示す部分構成図である。図1の製本装置10は、製本装置10の筐体を構成するフレーム板11と、用紙載置部110、ドラム部120、圧ローラー部130、糊付部140、用紙送出部150および圧着製本部160とを有している。なお、図1では、図1の紙面に垂直な方向(横方向)に並列された一対のフレーム板11のうち、図1の紙面に対して手前側(左側)に位置するフレーム板11の右側(図1の紙面に対して奥側)の端面から見た様子を示している。
【0018】
用紙載置部110は、糊付される二つ折りの用紙PSTが積層して載置される用紙載置板111と、用紙PSTの折曲端(図1における右側端)が突き当てられる突当部材112と、用紙PSTを突当部材112の方向に押し当てる押当部材113と、押当部材113を用紙載置板111に固定する固定部材114と、用紙載置板111に積層載置された用紙PSTを吸着する用紙吸着部115とを有している。
【0019】
ドラム部120は、メインドラム121と、メインドラム121の外周部に配置された2本の送りローラー122,123と、リミットスイッチ124と、クランプ爪125とを有している。2本の送りローラー122,123は、それぞれ、メインドラム121の外周に向かって付勢された状態で、メインドラム121の径方向に移動可能に配置されている。リミットスイッチ124は、送りローラー122のメインドラム121の径方向への移動を検出するように配置されている。
【0020】
圧ローラー部130は、横方向に配列された一対の圧ローラーフレーム131と、フレーム軸132と、メインドラム121の回転に同期して回転する2つの駆動ローラー133,134と、2つの駆動ローラー133,134のそれぞれに対向して配置された2つの送りローラー135,136と、用紙ガイド137と、圧ローラー138とを有している。圧ローラーフレーム131には、圧ローラー138よりも後方に向かって、ネジ穴131aおよび貫通穴131bが形成されている。
【0021】
フレーム軸132は、図示しない軸受を介してフレーム板11に取り付けられており、その軸芯を中心に自在に回転する。圧ローラーフレーム131は、このフレーム軸132に固定的に取り付けられており、フレーム軸132の回転に伴って、回転移動する。
【0022】
駆動ローラー133,134、送りローラー135,136、用紙ガイド137、圧ローラー138および用紙ガイド137は、圧ローラーフレーム131に取り付けられており、圧ローラーフレーム131が回転移動することにより位置が変化する。また、送りローラー135,136は、それぞれ対向する駆動ローラー133,134に向かって付勢された状態で、対向方向に移動可能に配置される。
【0023】
糊付部140は、メインドラム121の下方に配置され、熱溶融性の糊剤(ホットメルト)を貯留する糊バット141と、糊バット141の下部に設けられ、糊バット141に貯留された糊剤を溶融するためのバットヒーター142と、糊ローラー143と、糊調整ローラー144と、糊転着ローラー145と、ガイド爪146とを有している。なお、糊ローラー143と、糊調整ローラー144と、糊転着ローラー145とは、いずれも、メインドラム121の回転に同期して回転する。
【0024】
糊ローラー143は、その下端が糊バット141に溶融状態で貯留された糊剤に浸漬されており、糊ローラー143の回転に伴って糊バット141から糊剤がすくい上げられる。糊調整ローラー144は、糊ローラー143および糊転着ローラー145との間隔が適宜調整可能となるように配置されており、糊転着ローラー145に付着する糊剤の付着量を調整する。また、糊ローラー143および糊転着ローラー145には、熱溶融性の糊剤の固化を抑制するため、ヒーター(図示しない)が設けられている。
【0025】
なお、糊ローラー143および糊転着ローラー145は、外周部に表面加工を行わない金属部材とするとともに、糊調整ローラー144は、外周部にフッ素樹脂等の非粘着性の樹脂を被覆した金属部材とするのが好ましい。このようにすれば、糊バット141からの糊剤のすくい上げをより容易とするとともに、糊調整ローラー144から糊転着ローラー145への糊剤の移送をより容易とすることができる。
【0026】
用紙送出部150は、バキュームローラー151と、リミットスイッチ152と、横方向に配列された一対のサイドローラー153と、横方向に配列された一対のストッパー154とを有している。なお、図1では、図示の便宜上、一対のサイドローラー153およびストッパー154のうち、右側(図1の紙面に対して奥側)のサイドローラー153およびストッパー154のみを図示している。バキュームローラー151は、前後方向に移動可能に配置されており、バキュームローラー151の前後方向への移動は、リミットスイッチ152により検出される。
【0027】
サイドローラー153は、前後方向に延びる軸を中心に回転するように構成されており、左右2つのサイドローラー153の間隔は、用紙の横方向の長さ(横幅)に設定される。また、ストッパー154は、下方が内側に折り曲げられた板状の部材であり、左右2つのストッパー154の間隔は、用紙の横幅よりもやや短めに設定される。
【0028】
圧着製本部160は、前後方向に延びるレール161と、前方圧着板162と、前方圧着板162をレール161から立ち上がるように保持するとともに、前方圧着板162に後方に向かう荷重を与える前方プレス部163と、後方圧着板164と、後方圧着板164が固定され、図示しない支点を中心に揺動可能に配置された後方プレス板165と、後方プレス板165よりも後方に配置されたプレスカム166およびカムフォロアー167を有している。カムフォロアー167は、図示しない接続部材を介して後方プレス板165に接続されている。
【0029】
B.糊付製本装置の動作の概略:
用紙載置板111に積層載置された用紙PSTのうち最も下方に位置する用紙は、用紙吸着部115により吸着される。そして、用紙吸着部115が、二点鎖線で示すように動作することにより、用紙の折曲端がメインドラム121に向かって引き出される。
【0030】
メインドラム121に向かって引き出された用紙は、クランプ爪125が二点鎖線で示すように動作することにより、メインドラム121の外周部に保持される。そして、メインドラム121が回転することにより、メインドラム121の外周部に保持された用紙は、折曲端が略下方に向くように方向が転換され、点線で示す搬送経路PFLに沿って、圧ローラー部130に送り出される。なお、以上の説明から判るように、メインドラム121の外周部も、用紙が搬送される経路となっている。
【0031】
このとき、メインドラム121の外周部に保持された用紙により、送りローラー122がメインドラム121の径方向(すなわち、用紙の厚さ方向)に移動する。この送りローラー122の用紙の厚さ方向(以下、「紙厚方向」とも呼ぶ)への移動がリミットスイッチ124により検出されることにより、糊付された用紙の数をカウントすることができる。
【0032】
圧ローラー部130に到達した用紙は、メインドラム121の回転に同期して駆動ローラー133,134が回転することにより、駆動ローラー133,134と、それぞれ対向する送りローラー135,136とに挟まれて下方に搬送され、圧ローラー138と糊転着ローラー145との間に搬送される。
【0033】
なお、上述の通り、駆動ローラー133,134および送りローラー135,136(併せて、「搬送ローラー」とも呼ぶ)と、圧ローラー138とは、いずれも圧ローラーフレーム131に取り付けられている。そのため、搬送ローラー133,134,135,136と圧ローラー138とは、圧ローラーフレーム131の回転移動に応じて一体的に移動するので、圧ローラー部130に到着した用紙は、圧ローラーフレーム131の回転移動状態によらず、適正に圧ローラー138と糊転着ローラー145との間に搬送される。
【0034】
圧ローラー138と糊転着ローラー145との間に到達した用紙には、圧ローラー138と糊転着ローラー145との間に用紙の厚さに応じた適宜の間隔を設けるとともに、圧ローラー138に糊転着ローラー145方向への適宜の荷重を加えることにより、糊転着ローラー145に付着した糊剤が転着される。なお、圧ローラー138と糊転着ローラー145との間隔(ローラー間隔)を調整する機構(間隔調整機構)、および、圧ローラー138に糊転着ローラー145方向への荷重を付加する機構(荷重付加機構)については、後述する。
【0035】
図1に示すように、搬送経路PFLの駆動ローラー133,134側に用紙ガイド137を設けることにより、駆動ローラー133,134への用紙の巻き込みが抑制される。同様に、搬送経路PFLの糊転着ローラー145側にガイド爪146を設けることにより、糊転着ローラー145への用紙の巻き込みが抑制される。
【0036】
圧ローラー138と糊転着ローラー145との間で前方側に糊剤が転着された用紙は、その糊剤が転着されていない後方の面において、バキュームローラー151により吸着される。そして、バキュームローラー151が回転することにより、糊剤が転着された用紙は、下方に送り出される。
【0037】
なお、上述の通り、バキュームローラー151の前後方向への移動をリミットスイッチ152によって検出することにより、用紙が搬送経路PFLに沿って適正に搬送されているか否かを検出することができる。そして、用紙が搬送経路PFLに沿って適正に搬送されていない場合、異常が発生したものと判断して製本装置10を停止することができる。
【0038】
バキュームローラー151から下方に送り出された用紙は、左右方向に配列されたサイドローラー153によってさらに下方に送られ、用紙の折曲端がレール161に到達する。そして、内方に折り曲げられたストッパー154の下端が用紙に食い込むことにより、用紙の上方への移動が抑制され、用紙の折曲端がレール161に接触した状態が維持される。
【0039】
圧着製本部160では、プレスカム166の回転に伴って、カムフォロアー167および後方プレス板165が揺動して、後方圧着板164が前方圧着板162に押しつけられる。これにより、圧着製本部160に到達した用紙は、その糊剤が転着された面が既に圧着製本された用紙に押しつけられ、用紙載置板111に積層載置された用紙PSTは、その積層順に圧着製本され、一体に糊付製本される。
【0040】
なお、図示を省略しているが、製本装置10には、圧ローラー部130の圧ローラー138を糊付部140の糊転着ローラー145から離間させるように圧ローラーフレーム131を回転させる電磁的な回転機構(例えば、ソレノイド)が取り付けられている。そのため、ドラム部120のリミットスイッチ124を用いてカウントされる用紙の数が所定の数(1、あるいは、一冊の用紙数の倍数+1)、すなわち、用紙載置部110から供給された用紙が製本される用紙の最初の1枚である場合に、電磁的な回転機構を作動させることにより、用紙の搬送経路を糊転着ローラー145から十分に離し、最初の1枚に糊付されないようにすることができる。
【0041】
このように、本実施形態の製本装置10では、二つ折りの用紙の一方の外面に糊剤を転着(塗布)し、糊剤が転着された用紙を順に圧着することにより、二つ折りの用紙の糊付製本が行われる。そして、熱溶融性の糊剤を使用することにより、圧着が終了した時点で糊剤が十分に固化するため、糊剤の固化を待つために製本を行った後に加圧保持する作業を省略短縮することができる。そのため、本実施形態の製本装置10によれば、二つ折りの用紙を糊付して製本する糊付製本に要する時間を短縮することができる。
【0042】
なお、圧着が終了した時点において、糊剤をより確実に固化させるため、圧着時に用紙に接触する後方圧着板164は、アルミ等の熱伝導性の高い金属で形成するのが好ましく、さらに好ましくは、前方圧着板162も、アルミ等の熱伝導性の高い金属で形成される。
【0043】
C.荷重付加機構および間隔調整機構:
図2は、圧ローラー138に糊転着ローラー145方向への荷重を付加する荷重付加機構210、および、ローラー間隔、すなわち、圧ローラー138と糊転着ローラー145との間隔を調整する間隔調整機構220の構成を示す説明図であり、荷重付加機構210および間隔調整機構220に関連する部分を略上方から見た様子を示している。
【0044】
図2に示すように、荷重付加機構210は、ボールジョイント211と、ボールジョイント211に螺子止めされた荷重調整シャフト212と、荷重調整シャフト212を挿通した荷重付加バネ213と、荷重調整シャフト212のボールジョイント211側端部に設けられたネジと螺合する荷重調整ナット214とを有している。
【0045】
間隔調整機構220は、一対の中継リンク221と、中継リンク221を差し渡すように配置された中継ロッド222と、中継ロッド222に取り付けられたボールジョイント223と、ボールジョイント223に螺子止めされたセンターシャフト224と、調整ナット225と、調整ナット225を固定する固定ナット226と、紙厚調整器230(詳細については後述する)とを有している。
【0046】
また、製本装置10は、荷重付加機構210および間隔調整機構220に関連する部材として、横方向に配列した一対のフレーム板11を差し渡すように設けられた、丸棒状の差渡ロッド201を有している。
【0047】
荷重付加機構210を構成するボールジョイント211は、圧ローラーフレーム131に設けられた貫通穴131b(図1参照)を用いて圧ローラーフレーム131に螺子止めされている。このボールジョイント211に螺子止めされた荷重調整シャフト212の、ボールジョイント211と反対側の端部は、差渡ロッド201に設けられた図示しない穴を通して、差渡ロッド201の後方に突出するように配置される。
【0048】
そして、図2に示すように、荷重付加バネ213を、差渡ロッド201と荷重調整ナット214との間に配置することにより、荷重調整ナット214を回してその位置を調整して、圧ローラー138に付加される糊転着ローラー145方向への荷重を調整することができる。
【0049】
間隔調整機構220を構成する中継リンク221は、圧ローラーフレーム131に設けられたネジ穴131aおよび貫通穴131b(いずれも図1参照)を用いて圧ローラーフレーム131に螺子止めされている。中継リンク221とセンターシャフト224とは、中継リンク221に取り付けられた中継ロッド222と、中継ロッド222の横方向中央部に取り付けられたボールジョイント223とを介して固定されている。
【0050】
センターシャフト224のボールジョイント223と反対側の端部は、紙厚調整器230および差渡ロッド201のそれぞれに設けられた図示しない穴を通して、差渡ロッド201の後方に突出するように配置されている。
【0051】
そして、差渡ロッド201の後方に突出したセンターシャフト224の端部に設けられたネジに螺合する調整ナット225を回転させることにより、センターシャフト224、ボールジョイント223、中継ロッド222および中継リンク221が略前後方向に移動し、圧ローラーフレーム131がフレーム軸132を中心に回転移動することにより、ローラー間隔が調整される。
【0052】
このように、ローラー間隔は、調整ナット225を回転させることにより調整することが可能である。しかしながら、調整ナット225を用いてローラー間隔を調整するのは必ずしも容易でないため、糊付製本される用紙の厚さ(紙厚)が変わるたびに、ローラー間隔を適正に調整することは、必ずしも容易でない。そこで、本実施形態の製本装置10(図1参照)では、間隔調整機構220に紙厚に応じてローラー間隔を調整する紙厚調整器230を設けている。
【0053】
図3は、紙厚調整器230を用いて、圧ローラー138と糊転着ローラー145との間隔が調整される様子を示す説明図であり、紙厚調整器230および間隔調整機構220に関連する部分を、左側のフレーム板11の右側端面から見た様子を示している。
【0054】
紙厚調整器230は、差渡ロッド201(図2参照)に取り付けられるロッド取付部231と、外殻部232と、蓋部材233と、紙厚調整レバー234と、押出部235と、押出部回転軸236を有している。
【0055】
ロッド取付部231には、ロッド穴231aが設けられており、ロッド穴231aに差渡ロッド201を挿通することにより、前後方向における紙厚調整器230の位置が固定される。
【0056】
ロッド取付部231の後方側に取り付けられた外殻部232は、上方から見て略コの字型の部材である。この外殻部232と、外殻部232の後方側に取り付けられた蓋部材233とで囲まれる領域に、紙厚調整レバー234と押出部235とが収容される。
【0057】
押出部235は、押出部回転軸236を中心に回転移動可能に構成されており、図3(a)に示す状態から、紙厚調整レバー234の上部を前方に押し出すことにより、図3(b)に示すように、押出部235の下部が後方に移動するように、押出部235が回転移動する。これにより、センターシャフト224に取り付けられた調整ナット225が後方に押し出され、圧ローラー138と糊転着ローラー145との間隔が拡大される。
【0058】
この状態で、紙厚調整レバー234と蓋部材233との間に紙厚に応じた厚さのスペーサーSPCを挿入することにより、圧ローラー138と糊転着ローラー145との間隔を、紙厚に応じた適正な間隔に設定することができる。
【0059】
このように、本実施形態の製本装置10では、間隔調整機構220に、スペーサーSPCを挟み込むことによりローラー間隔を拡大するように構成された紙厚調整器230を設けることにより、製本される用紙の厚さに応じてローラー間隔を適正に設定することが容易となる。
【0060】
D.厚口用紙対応機構:
上述の通り、本実施形態の製本装置10では、間隔調整機構220に紙厚調整器230を設けることにより、製本される用紙の厚さに応じてローラー間隔を適正に設定することが容易となる。
【0061】
しかしながら、本等の表紙には、通常、中身よりも厚い用紙(厚口用紙)が使用されるため、複数冊の糊付製本を連続して行う場合、中身となる用紙の厚さに応じてローラー間隔を適正に調整しても、表紙等の厚口用紙に対しては、ローラー間隔は適正に調整されない。そこで、本実施形態の製本装置10では、間隔調整機構220に加えて、厚口用紙を含む本等を連続して糊付製本することを可能とする厚口用紙対応機構300を設けている。
【0062】
図4は、厚口用紙対応機構300の構成および動作を示す説明図であり、図5は、厚口用紙対応機構300の構成を示す説明図である。図4および図5は、横方向に配列された一対の厚口用紙対応機構のうち、右側に配置された厚口用紙対応機構300に関連する部分を図示している。
【0063】
厚口用紙対応機構300は、メインドラム121に巻き付けられた用紙の厚さに応じて回転移動する紙厚検出部310と、紙厚検出部310の回転移動を抑制するブレーキ部320と、紙厚検出部310の移動をフレーム軸132に伝達して圧ローラーフレーム131を回転移動させる移動伝達部330とを有している。
【0064】
紙厚検出部310は、紙厚フォロアー311と、2つのリンクプレート312,313と、2つのリンクプレート312,313を回転自在に保持する軸受314と、を有している。2つのリンクプレート312,313は、いずれも軸受314に対して固定的に取り付けられており、軸受314の軸芯を中心に同様に回転移動する。
【0065】
図4に示すように、メインドラム121の外周に配置された紙厚フォロアー311は、リンクプレート312の一端に回転自在に取り付けられている。これにより、メインドラム121に厚口用紙が保持されている場合、紙厚フォロアー311がメインドラム121の径方向に押し出される。そして、紙厚フォロアー311が押し出されることにより、2つのリンクプレート312,313が回転移動する。
【0066】
ブレーキ部320は、クランプカム321と、クランプカム321をメインドラム121の回転に同期して回転させる回転シャフト322と、カムフォロアー323と、一端にカムフォロアー323が回転自在に取り付けられたアーム324と、アーム324の後方端部においてアーム324を回転自在に保持するアーム保持部325と、アーム324の前方端部を下方から支持するアーム支持部326と、外方(右方向)端部に大径部が設けられたブレーキシャフト327と、ブレーキシャフト327の大径部とアーム324との間に配置された加圧バネ328と、ブレーキ板329とを有している。
【0067】
クランプカム321は、円柱状のシャフト接続部321aと、シャフト接続部321aの内方(左方向)に設けられ、シャフト接続部321aよりも大径のカム部321bとを有している。カム部321bには、内方から外方に向かって延びた凸部321cが設けられている。なお、カム部321bに設けられた凸部321cは、最長の用紙が紙厚フォロアー311の位置を通過した後にクランプカム321の位置に到達し、当該用紙が圧ローラー138の位置を通過した後にクランプカム321の位置から外れるように形成される。
【0068】
アーム324に取り付けられたカムフォロアー323は、クランプカム321が有するカム部321bの外方に接触するように配置されており、クランプカム321がメインドラム121の回転に同期して回転することにより、カムフォロアー323およびアーム324が、アーム324の回転軸を中心に回転揺動する。
【0069】
そして、図5に示すように、クランプカム321の凸部321cがカムフォロアー323の配置された部分に位置している状態では、アーム324が外方に向かって回転移動することにより、加圧バネ328によりブレーキシャフト327が外方に押される。
【0070】
このようにブレーキシャフト327が外方に押されることにより、リンクプレート313がブレーキシャフト327とブレーキ板329とに挟まれ、リンクプレート313(リンクプレート312も同様)の回転移動が抑制される。そして、リンクプレート313の回転移動が抑制されることにより、紙厚フォロアー311およびリンクプレート312,313の位置は、用紙が圧ローラー138の位置を通過するまで、用紙が紙厚フォロアー311の位置を通過している時点と同じ状態に維持される。
【0071】
移動伝達部330は、リンクプレート313に取り付けられ、図示しない雌ネジが形成されたネジ取付部331と、ネジ取付部331の雌ネジと螺合された調整螺子332と、リンクプレート333,334と、リンクプレート334の端部に取り付けられた回転自在な伝達ローラー335と、伝達ローラー335に一端が接触し、他端がフレーム軸132に固定されたリンクプレート336とを有している。
【0072】
用紙が紙厚フォロアー311の位置を通過することにより、図4(b)の矢印に示すように、紙厚検出部310のリンクプレート312,313が回転移動することにより、リンクプレート313に取り付けられたネジ取付部331と、ネジ取付部331の雌ネジと螺合された調整螺子332は、略前方に移動する。
【0073】
調整螺子332によって、リンクプレート333,334が押されることにより、リンクプレート336の後方端部が押し上げられる。これにより、フレーム軸132が回転駆動され、圧ローラー138と糊転着ローラー145との間隔が拡大するように、圧ローラーフレーム131が回転駆動される。
【0074】
そして、用紙が圧ローラー138の位置を通過して、カム部321bに設けられた凸部321cがクランプカム321の位置から外れると、リンクプレート312,313の回転動作が自在となるので、圧ローラー138と糊転着ローラー145との間隔は、間隔調整機構200(図2,3参照)で設定された状態に復帰する。
【0075】
このように、本実施形態の製本装置10では、厚口用紙が糊付される際において、圧ローラー138と糊転着ローラー145との間隔が拡大されるので、厚口用紙を含む本等を連続して糊付製本することが可能となる。また、一般的には、一冊に厚さの異なる用紙を含む本等を連続して糊付製本することが可能となる。
【0076】
本発明は上記実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明の糊付製本装置は、上述の通り優れた効果を奏するものであるから、二つ折りの用紙を糊付製本することに好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0078】
10‥糊付製本装置(製本装置)
11‥フレーム板
110‥用紙載置部
111‥用紙載置板
112‥突当部材
113‥押当部材
114‥固定部材
115‥用紙吸着部
120‥ドラム部
121‥メインドラム
122,123‥送りローラー
124‥リミットスイッチ
125‥クランプ爪
130‥圧ローラー部
131‥圧ローラーフレーム
131a‥ネジ穴
131b‥貫通穴
132‥フレーム軸
133,134‥駆動ローラー
135,136‥送りローラー
137‥用紙ガイド
138‥圧ローラー
140‥糊付部
141‥糊バット
142‥バットヒーター
143‥糊ローラー
144‥糊調整ローラー
145‥糊転着ローラー
146‥ガイド爪
150‥用紙送出部
151‥バキュームローラー
152‥リミットスイッチ
153‥サイドローラー
154‥ストッパー
160‥圧着製本部
161‥レール
162‥前方圧着板
163‥前方プレス部
164‥後方圧着板
165‥後方プレス板
166‥プレスカム
167‥カムフォロアー
200‥間隔調整機構
201‥差渡ロッド
210‥荷重付加機構
211‥ボールジョイント
212‥荷重調整シャフト
213‥荷重付加バネ
214‥荷重調整ナット
220‥間隔調整機構
221‥中継リンク
222‥中継ロッド
223‥ボールジョイント
224‥センターシャフト
225‥調整ナット
226‥固定ナット
230‥紙厚調整器
231‥ロッド取付部
231a‥ロッド穴
232‥外殻部
233‥蓋部材
234‥紙厚調整レバー
235‥押出部
236‥押出部回転軸
300‥厚口用紙対応機構
310‥紙厚検出部
311‥紙厚フォロアー
312,313‥リンクプレート
314‥軸受
320‥ブレーキ部
321‥クランプカム
321a‥シャフト接続部
321b‥カム部
321c‥凸部
322‥回転シャフト
323‥カムフォロアー
324‥アーム
325‥アーム保持部
326‥アーム支持部
327‥ブレーキシャフト
328‥加圧バネ
329‥ブレーキ板
330‥移動伝達部
331‥ネジ取付部
332‥調整螺子
333,334‥リンクプレート
334‥リンクプレート
335‥伝達ローラー
336‥リンクプレート
PFL‥搬送経路
PST‥用紙
SPC‥スペーサー
図1
図2
図3
図4
図5