(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024105027
(43)【公開日】2024-08-06
(54)【発明の名称】プロテクタシステム、及び、回路体の製造方法
(51)【国際特許分類】
H02G 3/04 20060101AFI20240730BHJP
F16L 57/00 20060101ALI20240730BHJP
【FI】
H02G3/04 087
H02G3/04 075
F16L57/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023009538
(22)【出願日】2023-01-25
(71)【出願人】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹内 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】大塚 祐一郎
【テーマコード(参考)】
3H024
5G357
【Fターム(参考)】
3H024AA04
3H024AB02
3H024AC03
5G357DA06
5G357DC12
5G357DD02
5G357DE03
5G357DE08
5G357DG04
5G357DG05
(57)【要約】
【課題】複数の要求仕様に対応しながら汎用化・共通化を図ることが可能なプロテクタシステムを提供すること。
【解決手段】プロテクタシステムは、通電部品3の配索方向における長さが異なる複数種類の共用プロテクタ10A~10Cを備える。通電部品3の仕様に応じて選別される複数の共用プロテクタ10を連結して筒状のプロテクタ2が構成される。複数種類の共用プロテクタ10A~10Cの各々は、通電部品3を挿通可能な第1挿通路11aを内部に有する第1筒状部11と、第1挿通路11aよりも大径の第2挿通路12aを内部に有する第2筒状部12とを有する。選別される複数の共用プロテクタ10は、一の共用プロテクタ10の第1筒状部11の筒端部を他の共用プロテクタ10の第2筒状部12に収容して第1、第2挿通路11a,12aが連通した状態にて通電部品3の配索方向に並ぶように配置される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の仕様から選択される選択仕様の通電部品を内部に挿通可能な筒状のプロテクタを構成するためのプロテクタシステムであって、
前記プロテクタは、
前記通電部品の配索方向における長さが異なる複数種類の共用プロテクタの中から前記選択仕様に応じて選別されるとともに、前記配索方向に並ぶように配置される、複数の前記共用プロテクタを備え、
前記共用プロテクタの各々は、
前記通電部品を挿通可能な第1挿通路を内部に有する第1筒状部と、前記第1挿通路よりも大径の第2挿通路を内部に有する第2筒状部と、を有し、
前記選別される複数の前記共用プロテクタは、
一の前記共用プロテクタの前記第1筒状部の筒端部を他の前記共用プロテクタの前記第2筒状部に収容して、前記第1挿通路と前記第2挿通路とが連通した状態にて、前記通電部品の前記配索方向に並ぶように配置される、
プロテクタシステム。
【請求項2】
請求項1に記載のプロテクタシステムにおいて、
前記複数種類の前記共用プロテクタは、
前記通電部品の前記配索方向を変えるように屈曲した屈曲部を前記第1筒状部に有する前記共用プロテクタを、一の種類として含む、
プロテクタシステム。
【請求項3】
通電部品と、前記通電部品に装着される筒状のプロテクタと、を有する回路体を製造するための、回路体の製造方法であって、
複数の仕様から選択される選択仕様の前記通電部品を準備する工程と、
前記通電部品の配索方向における長さが異なる複数種類の共用プロテクタの中から、前記選択仕様に応じて、複数の前記共用プロテクタを選別する工程と、
前記選別された複数の前記共用プロテクタを、前記配索方向に並べるように配置しながら前記通電部品に装着して、前記プロテクタを構成するとともに前記通電部品を前記プロテクタの内部に挿通する工程と、を備え、
前記共用プロテクタの各々は、
前記通電部品を挿通可能な第1挿通路を内部に有する第1筒状部と、前記第1挿通路よりも大径の第2挿通路を内部に有する第2筒状部と、を有し、
前記選別される複数の前記共用プロテクタは、
一の前記共用プロテクタの前記第1筒状部の筒端部を他の前記共用プロテクタの前記第2筒状部に収容して前記第1挿通路と前記第2挿通路とが連通した状態にて、前記通電部品の前記配索方向に並ぶように配置される、
回路体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の仕様から選択される選択仕様の通電部品を内部に挿通可能な筒状のプロテクタを構成するためのプロテクタシステム、及び、通電部品とプロテクタとを有する回路体を製造するための回路体の製造方法、に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、バスバや電線等の通電部品を案内する経路(即ち、空洞及び空間等)を内部に有するプロテクタが提案されている。この種のプロテクタにバスバ等が収容された回路体は、一般に、回路体の用途に応じた各種の機器等に組み付けられる。例えば、従来のプロテクタの一つは、断面U字状の溝(みぞ)構造を有し、電線をこの溝の中に収容して保持するようになっている(例えば、特許文献1を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、回路体の仕様等に応じて、バスバ等の通電部品の形状(例えば、長さ)が異なる場合がある。プロテクタは一般に硬質の樹脂から構成されており、バスバ等の長さに応じてプロテクタの形状を変形することやプロテクタの一部を伸縮させることは困難である。そこで、複数の要求仕様に対応するために、回路体の仕様等に基づいて形状や構造などが異なる複数の種類(品番)のプロテクタを、あらかじめ準備することが考えられる。しかし、プロテクタの製造管理の複雑さ等の観点からは、プロテクタの汎用化・共通化を出来る限り図ることが望ましい。
【0005】
本発明の目的の一つは、複数の要求仕様に対応しながらプロテクタの汎用化・共通化を図ることが可能なプロテクタシステム、及び、そのプロテクタシステムから得られるプロテクタと通電部品とを用いた回路体の製造方法、を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述した目的を達成するために、本発明に係る「プロテクタシステム」及び「回路体の製造方法」は、以下を特徴としている。
【0007】
複数の仕様から選択される選択仕様の通電部品を内部に挿通可能な筒状のプロテクタを構成するためのプロテクタシステムであって、
前記プロテクタは、
前記通電部品の配索方向における長さが異なる複数種類の共用プロテクタの中から前記選択仕様に応じて選別されるとともに、前記配索方向に並ぶように配置される、複数の前記共用プロテクタを備え、
前記共用プロテクタの各々は、
前記通電部品を挿通可能な第1挿通路を内部に有する第1筒状部と、前記第1挿通路よりも大径の第2挿通路を内部に有する第2筒状部と、を有し、
前記選別される複数の前記共用プロテクタは、
一の前記共用プロテクタの前記第1筒状部の筒端部を他の前記共用プロテクタの前記第2筒状部に収容して、前記第1挿通路と前記第2挿通路とが連通した状態にて、前記通電部品の前記配索方向に並ぶように配置される、
プロテクタシステムであること。
【0008】
通電部品と、前記通電部品に装着される筒状のプロテクタと、を有する回路体を製造するための、回路体の製造方法であって、
複数の仕様から選択される選択仕様の前記通電部品を準備する工程と、
前記通電部品の配索方向における長さが異なる複数種類の共用プロテクタの中から、前記選択仕様に応じて、複数の前記共用プロテクタを選別する工程と、
前記選別された複数の前記共用プロテクタを、前記配索方向に並べるように配置しながら前記通電部品に装着して、前記プロテクタを構成するとともに前記通電部品を前記プロテクタの内部に挿通する工程と、を備え、
前記共用プロテクタの各々は、
前記通電部品を挿通可能な第1挿通路を内部に有する第1筒状部と、前記第1挿通路よりも大径の第2挿通路を内部に有する第2筒状部と、を有し、
前記選別される複数の前記共用プロテクタは、
一の前記共用プロテクタの前記第1筒状部の筒端部を他の前記共用プロテクタの前記第2筒状部に収容して前記第1挿通路と前記第2挿通路とが連通した状態にて、前記通電部品の前記配索方向に並ぶように配置される、
回路体の製造方法であること。
【発明の効果】
【0009】
本発明のプロテクタシステム、及び、回路体の製造方法によれば、複数の仕様から選択された選択仕様の通電部品(例えば、バスバ)に装着されるプロテクタが、通電部品の配索方向における長さが異なる複数種類の共用プロテクタの中から、通電部品の選択仕様に応じて複数の共用プロテクタを選別して、選別された複数の共用プロテクタを配索方向に並べるように配置することで、構成される。これにより、通電部品の仕様ごとに専用のプロテクタを設計・製造する場合に比べ、プロテクタの汎用化・共通化を図ることができる。更に、共用プロテクタを製造するための金型の種類を少なくすることで、プロテクタの製造コストを低減することもできる。なお、通電部品の仕様に応じて、複数種類のうちの一の種類から複数の共用プロテクタが選別されてもよいし、複数種類のうちの一部の種類のみから共用プロテクタが選別されてもよい。
【0010】
更に、複数種類の共用プロテクタの各々が、通電部品を挿通可能な第1挿通路を内部に有する第1筒状部と、第1挿通路よりも大径の第2挿通路を内部に有する第2筒状部と、を有している。選別された共用プロテクタは、一の共用プロテクタの第1筒状部の筒端部を他の共用プロテクタの第2筒状部に収容して第1挿通路と第2挿通路とが連通した状態にて、通電部品の配索方向に並ぶように配置される。これにより、選択される共用プロテクタの種類や数によらず、共通した配置作業(即ち、第1筒状部の筒端部を第2筒状部に収容する作業)で、それぞれの共用プロテクタを配置することができる。よって、選別された共用プロテクタを配置する作業を単純化できることで、通電部品にプロテクタを装着する作業の作業性を向上できる。
【0011】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係る回路体を示す斜視図である。
【
図4】
図4は、
図3に示す回路体の前端部分の分解斜視図である。
【
図6】
図6は、
図5に示す回路体の後端部分の分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<実施形態>
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係る回路体1について説明する。回路体1は、
図1及び
図2等に示すように、プロテクタ2と、プロテクタ2の内部に挿通されるバスバ3,3Aと、を有する。
図1及び
図2等に示すように、バスバ3,3Aの外周を覆うようにバスバ3,3Aにプロテクタ2を組み付けることで、回路体1が得られる。回路体1は、例えば、電気自動車やハイブリッド自動車等の車両の駆動用電池パック内において、導電回路の一部として用いられ得る。
【0014】
以下、説明の便宜上、
図1及び
図2等に示すように、「前」、「後」、「左」、「右」、「上」及び「下」を定義する。「前後方向」、「左右方向」及び「上下方向」は、互いに直交している。前後方向は、プロテクタ2及びバスバ3,3A(ただし、後述する屈曲部14及び屈曲部4を除く)の延在方向と一致している。なお、これらの方向は、あくまで説明の便宜のために定めているに過ぎず、例えば、回路体1が用いられた駆動用電池パックが車両に搭載されるときの車両の前後方向、左右方向及び上下方向に必ずしも対応する必要はない。
【0015】
本実施形態に係るプロテクタシステムでは、複数の仕様から選択されるバスバ3又はバスバ3Aの仕様(選択仕様)に対応するように、プロテクタ2が構成される。
【0016】
具体的には、
図1に示すバスバ3に対しては、複数種類の共用プロテクタ10A~10Cから、バスバ3の選択仕様(前後方向の長さ)に応じて、5つの共用プロテクタ10A、2つの共用プロテクタ10B、及び、1つの共用プロテクタ10Cが選別され、前端側から後端側に向けて、共用プロテクタ10A,10A,10A,10B,10B,10A,10A,10Cが前後方向に順に連結されることで、プロテクタ2が構成される。
【0017】
これに対し、
図1に示すバスバ3より前後方向の長さが短い
図2に示すバスバ3Aに対しては、複数種類の共用プロテクタ10A~10Cから、バスバ3Aの選択仕様(前後方向の長さ)に応じて、2つの共用プロテクタ10A、2つの共用プロテクタ10B、及び、1つの共用プロテクタ10Cが選別され、前端側から後端側に向けて、共用プロテクタ10A,10A,10B,10B,10Cが前後方向に順に連結されることで、プロテクタ2が構成される。
【0018】
以下、回路体1を構成する各部品について順に説明する。
【0019】
まず、バスバ3について説明する。バスバ3及びバスバ3Aは、形状(典型的には、前後方向の長さ)が異なる複数の仕様から選択された選択仕様に対応するバスバである。バスバ3は、
図1に示すように、前後方向に長尺状に延びる矩形平板状の金属板である。ただし、バスバ3の後端部分には、後端に近づくにつれて上方に移動するように屈曲する屈曲部4が形成されている。バスバ3Aについても、同様である。
【0020】
次いで、プロテクタ2について説明する。樹脂製のプロテクタ2は、本発明の実施形態に係るプロテクタシステムにより、バスバ3又はバスバ3Aの選択仕様(即ち、前後方向の長さ)に対応するように構成される。具体的には、本実施形態に係るプロテクタシステムは、前後方向の長さが異なる複数種類(本例では、3種類)の共用プロテクタ10A~10Cを備える(
図1,2等参照)。共用プロテクタ10A~10Cの各々は、前後方向に延びる筒状の形状を有する。共用プロテクタ10Bは、共用プロテクタ10Aより前後方向の長さが長い。共用プロテクタ10Cは、共用プロテクタ10Aより前後方向の長さが長く、且つ、後端部分において、バスバ3の屈曲部4に対応して、後端に近づくにつれて上方に移動するように屈曲する屈曲部14を有している。以下、共用プロテクタ10A~10Cを区別する必要がない場合には、共用プロテクタ10A~10Cの各々を単に「共用プロテクタ10」と呼ぶこともある。
【0021】
プロテクタ2は、複数種類の共用プロテクタ10A~10Cから、バスバ3の選択仕様に応じて選別される複数の共用プロテクタ10を前後方向に並べて配置することで、構成される。複数の共用プロテクタは、任意の係合構造等を用いて互いに連結されてもよいし、単に並べて配置されるだけでもよい。具体的には、
図1に示すプロテクタ2については、バスバ3の選択仕様に応じて、5つの共用プロテクタ10A、2つの共用プロテクタ10B、及び、1つの共用プロテクタ10Cが選別されており、前端側から後端側に向けて、共用プロテクタ10A,10A,10A,10B,10B,10A,10A,10Cが前後方向に順に並べて配置されることで、プロテクタ2が構成されている。
【0022】
各共用プロテクタ10は、
図3及び
図5に示すように、第1筒状部11と、第1筒状部11の前側に連続する第2筒状部12と、を備える。第1筒状部11は、バスバ3を挿通可能な第1挿通路11aを内部に有し、第2筒状部12は、バスバ3を挿通可能であり且つ第1挿通路11aより大径の第2挿通路12aを内部に有する。共用プロテクタ10Bの第1筒状部11は、共用プロテクタ10Aの第1筒状部11より前後方向の長さが長い。共用プロテクタ10Cの第1筒状部11は、共用プロテクタ10Aの第1筒状部11より前後方向の長さが長く、且つ、第1筒状部11の後端部分において屈曲部14を有している。
【0023】
各共用プロテクタ10は、
図4及び
図6に示すように、前後方向に延びる上板部20と、前後方向に延びる下板部30とで構成される。上板部20及び下板部30の各々は、樹脂成形品である。上板部20及び下板部30が上下方向に互いに組み付けられることで、第1筒状部11及び第2筒状部12を備える共用プロテクタ10が構成される。
【0024】
上板部20は、第1筒状部11に対応する第1部分21と、第1部分21の前側に連続し且つ第2筒状部12に対応する第2部分22とで構成される。第1部分21及び第2部分22の各々は、前後方向に延びる平板状の天板部と、天板部の左右方向両側縁から下方に向けて突出し且つ前後方向に延びる左右一対の側板部と、で構成される。第2部分22は、第1部分21より上方向且つ左右方向に広がる形状を有している。具体的には、第2部分22の天板部は第1部分21の天板部より上側に位置し、第2部分22の一対の側板部は、第1部分21の一対の側板部より左右方向外側に位置している。第1部分21の一対の側板部の前後方向の1箇所又は複数個所には、係合部23(本例では、係止突起)がそれぞれ設けられている。係合部23は、下板部30の後述する被係合部33と係合する。共用プロテクタ10Cの上板部20は、
図6に示すように、第1部分21の後端部分において、屈曲部14に対応して、後端に近づくにつれて上方に移動するように屈曲する屈曲部24を有している。
【0025】
下板部30は、第1筒状部11に対応する第1部分31と、第1部分31の前側に連続し且つ第2筒状部12に対応する第2部分32とで構成される。第1部分31及び第2部分32の各々は、前後方向に延びる平板状の天板部と、天板部の左右方向両側縁から上方に向けて突出し且つ前後方向に延びる左右一対の側板部と、で構成される。第2部分32は、第1部分31より下方向且つ左右方向に広がる形状を有している。具体的には、第2部分32の天板部は第1部分31の天板部より下側に位置し、第2部分32の一対の側板部は、第1部分31の一対の側板部より左右方向外側に位置している。第1部分31の一対の側板部の前後方向の1箇所又は複数個所には、上板部20の係合部23に対応して、被係合部33(本例では、係止孔)がそれぞれ設けられている。共用プロテクタ10Cの下板部30は、
図6に示すように、第1部分31の後端部分において、屈曲部14に対応して、後端に近づくにつれて上方に移動するように屈曲する屈曲部34を有している。
【0026】
以下、
図1に示すプロテクタ2を構成する複数の共用プロテクタ10のバスバ3への組付け手順について説明する。まず、形状(典型的には、前後方向の長さ)が異なる複数の仕様から選択された選択仕様に対応する
図1に示すバスバ3が準備される。次いで、本発明の実施形態に係るプロテクタシステムにより、複数種類の共用プロテクタ10A~10Cから、バスバ3の選択仕様に応じて、
図1に示すプロテクタ2を構成する複数の共用プロテクタ10が選別される。この選別は、あらかじめ製造された複数種類の共用プロテクタ10A~10Cのストックの中から必要な共用プロテクタ10を選んで用いること(即ち、在庫あり方式)や、複数種類の共用プロテクタ10A~10Cの中から必要な共用プロテクタ10だけを選んで製造すること(即ち、在庫なし方式)により、行われ得る。そして、選別された複数の共用プロテクタ10が、前端側から後端側に向けて、前後方向に隣接する2つの共用プロテクタ10同士が前後方向に順次配置されながら、バスバ3に組み付けられていく。
【0027】
前後方向に隣接する2つの共用プロテクタ10に着目すると、まず、前側の共用プロテクタ10がバスバ3に組み付けられる。具体的には、
図4に示すように、前側の共用プロテクタ10の上板部20及び下板部30が、バスバ3の前後方向の対応する前側組付箇所を上下方向に挟むように、且つ、上板部20の一対の側板部が下板部30の一対の側板部の左右方向内側に位置して上板部20及び下板部30の対応する係合部23及び被係合部33同士が互いに係合するように、上下方向に互いに組み付けられる。これにより、前側の共用プロテクタ10のバスバ3への組み付けが完了する。この状態では、
図3及び
図7に示すように、バスバ3の上記前側組付箇所が、前側の共用プロテクタ10が有する第1筒状部11及び第2筒状部12の内部にそれぞれ画成された第1挿通路11a及び第2挿通路12aに挿通されている。
【0028】
次いで、後側の共用プロテクタ10がバスバ3に組み付けられる。具体的には、
図4に示すように、後側の共用プロテクタ10の上板部20及び下板部30が、バスバ3の上記前側組付箇所より後側の後側組付箇所を上下方向に挟むように、且つ、バスバ3に組み付けられている前側の共用プロテクタ10の第1筒状部11の後端部を上板部20の第2部分22及び下板部30の第2部分32で上下方向に挟むように、且つ、上板部20の一対の側板部が下板部30の一対の側板部の左右方向内側に位置して上板部20及び下板部30の対応する係合部23及び被係合部33同士が互いに係合するように、上下方向に互いに組み付けられる。これにより、後側の共用プロテクタ10のバスバ3への組み付けが完了する。この状態では、
図3及び
図7に示すように、バスバ3の上記後側組付箇所が、後側の共用プロテクタ10が有する第1筒状部11及び第2筒状部12の内部にそれぞれ画成された第1挿通路11a及び第2挿通路12aに挿通されている。更に、
図7及び
図8に示すように、前側の共用プロテクタ10の第1筒状部11の後端部が後側の共用プロテクタ10の第2筒状部12に収容されて、前側の共用プロテクタ10の第1挿通路11aと後側の共用プロテクタ10の第2挿通路12aとが前後方向に連通した状態で、前側の共用プロテクタ10と後側の共用プロテクタ10とが前後方向に並んでいる。以上より、前後方向に隣接する2つの共用プロテクタ10のバスバ3への組み付けが完了する。
【0029】
以上に説明した、前後方向に隣接する2つの共用プロテクタ10のバスバ3への組み付け手順を、
図1に示すプロテクタ2を構成する複数の共用プロテクタ10に対して、前端側から後端側に向けて順に繰り返し適用していくことで、
図1に示す複数の共用プロテクタ10により構成されるプロテクタ2のバスバ3への組み付けが完了し、
図1に示す回路体1が得られる。
【0030】
図1に示すプロテクタ2のバスバ3への組付完了状態では、バスバ3の前端部3aが、プロテクタ2の前端開口(即ち、最前に位置する共用プロテクタ10Aの前端開口)から前方に突出し且つ外部に露出し、バスバ3の後端部3bが、プロテクタ2の後端開口(即ち、最後尾に位置する共用プロテクタ10Cの後端開口)から後方に突出し且つ外部に露出し、且つ、バスバ3の屈曲部4が、最後尾に位置する共用プロテクタ10Cの屈曲部24,34(
図6参照)により構成された屈曲部14の内部に画成された屈曲路に収容されている。
【0031】
以上のように、
図1に示すバスバ3に対しては、本実施形態に係るプロテクタシステムでは、複数種類の共用プロテクタ10A~10Cから、バスバ3の選択仕様(前後方向の長さ)に応じて、5つの共用プロテクタ10A、2つの共用プロテクタ10B、及び、1つの共用プロテクタ10Cが選別され、前端側から後端側に向けて、共用プロテクタ10A,10A,10A,10B,10B,10A,10A,10Cが前後方向に順に配置されることで、プロテクタ2が構成される。なお、本例では、共用プロテクタ10A,10A,10A,10B,10B,10A,10A,10Cは、共用プロテクタ10同士を連結するための係合構造等を有していない。しかし、必要に応じて、そのような係合構造等を共用プロテクタ10が有してもよい。
【0032】
次いで、
図2に示すバスバ3Aに対しては、複数種類の共用プロテクタ10A~10Cから、バスバ3Aの選択仕様(前後方向の長さ)に応じて、2つの共用プロテクタ10A、2つの共用プロテクタ10B、及び、1つの共用プロテクタ10Cが選別され、前端側から後端側に向けて、共用プロテクタ10A,10A,10B,10B,10Cが前後方向に順に配置されることで、プロテクタ2が構成される。選別される共用プロテクタ10が異なる点を除き、
図2に示すプロテクタ2を構成する手順等は、上述した
図1に示すプロテクタ2を構成する手順と同様である。
【0033】
このように、本実施形態に係るプロテクタシステムでは、前後方向の長さが異なる複数種類の共用プロテクタ10A~10Cから、選択されるバスバ3の選択仕様(前後方向の長さ)毎に異なる組み合わせの複数の共用プロテクタ10を選別し、選別された複数の共用プロテクタ10を前後方向に配置することで、バスバ3の選択仕様に対応するプロテクタ2が構成される。
【0034】
<作用・効果>
本実施形態に係るプロテクタシステム、及び、回路体1の製造方法によれば、複数の仕様から選択された選択仕様のバスバ3に装着されるプロテクタ2が、バスバ3の配索方向(前後方向)における長さが異なる複数種類の共用プロテクタ10A~10Cの中から、バスバ3の選択仕様に応じて複数の共用プロテクタ10を選別して、選別された複数の共用プロテクタ10を配索方向に並べて配置することで、構成される。バスバ3Aに装着されるプロテクタ2についても、同様である。これにより、バスバの仕様ごとに専用のプロテクタを設計・製造する場合に比べ、プロテクタ2の汎用化・共通化を図ることができる。
【0035】
更に、複数種類の共用プロテクタ10A~10Cの各々が、バスバ3を挿通可能な第1挿通路11aを内部に有する第1筒状部11と、第1挿通路11aよりも大径の第2挿通路12aを内部に有する第2筒状部12と、を有している。選別された共用プロテクタ10は、一の共用プロテクタ10の第1筒状部11の筒端部を他の共用プロテクタ10の第2筒状部12に収容して第1挿通路11aと第2挿通路12aとが連通した状態にて、バスバ3の配索方向に並ぶように配置される。これにより、選別される共用プロテクタ10の種類や数によらず、共通した配置作業(即ち、第1筒状部11の筒端部を第2筒状部12に収容する作業)で、それぞれの共用プロテクタ10を配置することができる。バスバ3Aに装着されるプロテクタ2についても、同様である。よって、選択された共用プロテクタ10を配置する作業を単純化できることで、バスバ3,3Aにプロテクタ2を装着する作業の作業性を向上できる。
【0036】
更に、複数種類の共用プロテクタ10A~10Cは、バスバ3の配索方向を変えるように屈曲した屈曲部14を第1筒状部11に有する共用プロテクタ10Cを、一の種類として含む。よって、バスバ3の配索方向がバスバ3の途中で変化するようなバスバ3に対応したプロテクタ2を構成することができる。
【0037】
<他の形態>
なお、本発明は上記各実施形態に限定されることはなく、本発明の範囲内において種々の変形例を採用することができる。例えば、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0038】
例えば、
図1及び
図2に示した例では、複数の仕様から屈曲部4を有するバスバ3,3Aが選択されていることに対応して、プロテクタ2を構成する複数の共用プロテクタ10の一部として、屈曲部4に対応した屈曲部14を有する共用プロテクタ10Cが含まれている。これに対し、複数の仕様から屈曲部4を有さない(即ち、前後方向に亘って直線状に延びる)バスバ3が選択される場合、プロテクタ2を構成する複数の共用プロテクタ10の一部として、共用プロテクタ10Cが含まれず、共用プロテクタ10A及び10Bの何れか一方又は双方のみから、プロテクタ2を構成する複数の共用プロテクタ10が選別される。
【0039】
更に、
図1及び
図2に示した例では、複数の仕様から選択されるバスバ3に応じて、3種類の共用プロテクタ10A~10Cから、プロテクタ2を構成する複数の共用プロテクタ10が選別されている。これに対し、3種類以外の複数種類(2種類、又は、4種類以上)の共用プロテクタ10から、プロテクタ2を構成する複数の共用プロテクタ10が選別されてもよい。複数種類のうちの一の種類のみからプロテクタ2を構成する複数の共用プロテクタ10が選別されてもよいし、複数種類のうちの一部の複数種類のみからプロテクタ2を構成する複数の共用プロテクタ10が選別されてもよい。
【0040】
更に、
図1及び
図2に示した例では、バスバ3,3Aは、仕様の違いとして、前後方向(配索方向)の長さが異なっている。しかし、バスバの「複数の仕様」には、配索方向における長さだけでなく、バスバの厚さや形状等の他のパラメータが含まれてもよい。
【0041】
ここで、上述した本発明に係るプロテクタシステム及び回路体の製造方法の実施形態の特徴をそれぞれ以下[1]~[3]に簡潔に纏めて列記する。
【0042】
[1]
複数の仕様から選択される選択仕様の通電部品(3)を内部に挿通可能な筒状のプロテクタ(2)を構成するためのプロテクタシステムであって、
前記プロテクタは、
前記通電部品(3)の配索方向における長さが異なる複数種類の共用プロテクタ(10A~10C)の中から前記選択仕様に応じて選別されるとともに、前記配索方向に並ぶように配置される、複数の前記共用プロテクタ(10)を備え、
前記共用プロテクタ(10A~10C)の各々は、
前記通電部品(3)を挿通可能な第1挿通路(11a)を内部に有する第1筒状部(11)と、前記第1挿通路(11a)よりも大径の第2挿通路(12a)を内部に有する第2筒状部(12)と、を有し、
前記選別される複数の前記共用プロテクタ(10)は、
一の前記共用プロテクタ(10)の前記第1筒状部(11)の筒端部を他の前記共用プロテクタ(10)の前記第2筒状部(12)に収容して、前記第1挿通路(11a)と前記第2挿通路(12a)とが連通した状態にて、前記通電部品(3)の前記配索方向に並ぶように配置される、
プロテクタシステム。
【0043】
上記[1]の構成のプロテクタシステムによれば、複数の仕様から選択された選択仕様の通電部品(例えば、バスバ)に装着されるプロテクタが、通電部品の配索方向における長さが異なる複数種類の共用プロテクタの中から、通電部品の選択仕様に応じて複数の共用プロテクタを選別して、選別された複数の共用プロテクタを配索方向に並べるように配置することで、構成される。これにより、通電部品の仕様ごとに専用のプロテクタを設計・製造する場合に比べ、プロテクタの汎用化・共通化を図ることができる。なお、通電部品の仕様に応じて、複数種類のうちの一の種類から複数の共用プロテクタが選別されてもよいし、複数種類のうちの一部の種類のみから共用プロテクタが選別されてもよい。
【0044】
更に、複数種類の共用プロテクタの各々が、通電部品を挿通可能な第1挿通路を内部に有する第1筒状部と、第1挿通路よりも大径の第2挿通路を内部に有する第2筒状部と、を有している。選別された共用プロテクタは、一の共用プロテクタの第1筒状部の筒端部を他の共用プロテクタの第2筒状部に収容して第1挿通路と第2挿通路とが連通した状態にて、通電部品の配索方向に並ぶように配置される。これにより、選択される共用プロテクタの種類や数によらず、共通した配置作業(即ち、第1筒状部の筒端部を第2筒状部に収容する作業)で、それぞれの共用プロテクタを配置することができる。よって、選別された共用プロテクタを配置する作業を単純化できることで、通電部品にプロテクタを装着する作業の作業性を向上できる。
【0045】
[2]
上記[1]に記載のプロテクタシステムにおいて、
前記複数種類の前記共用プロテクタ(10A~10C)は、
前記通電部品(3)の前記配索方向を変えるように屈曲した屈曲部(14)を前記第1筒状部(11)に有する前記共用プロテクタ(10C)を、一の種類として含む、
プロテクタシステム。
【0046】
上記[2]の構成のプロテクタシステムによれば、複数種類の共用プロテクタは、通電部品の配索方向を変えるように屈曲した屈曲部を第1筒状部に有する共用プロテクタを、一の種類として含む。よって、通電部品の配索方向が通電部品の途中で変化するような通電部品に対応したプロテクタを構成することができる。
【0047】
[3]
通電部品(3)と、前記通電部品(3)に装着される筒状のプロテクタ(2)と、を有する回路体(1)を製造するための、回路体(1)の製造方法であって、
複数の仕様から選択される選択仕様の前記通電部品(3)を準備する工程と、
前記通電部品(3)の配索方向における長さが異なる複数種類の共用プロテクタ(10A~10C)の中から、前記選択仕様に応じて、複数の前記共用プロテクタ(10)を選別する工程と、
前記選別された複数の前記共用プロテクタ(10)を、前記配索方向に並べるように配置しながら前記通電部品(3)に装着して、前記プロテクタ(2)を構成するとともに前記通電部品(3)を前記プロテクタ(2)の内部に挿通する工程と、を備え、
前記共用プロテクタ(10A~10C)の各々は、
前記通電部品(3)を挿通可能な第1挿通路(11a)を内部に有する第1筒状部(11)と、前記第1挿通路(11a)よりも大径の第2挿通路(12a)を内部に有する第2筒状部(12)と、を有し、
前記選別される複数の前記共用プロテクタ(10)は、
一の前記共用プロテクタ(10)の前記第1筒状部(11)の筒端部を他の前記共用プロテクタ(10)の前記第2筒状部(12)に収容して前記第1挿通路(11a)と前記第2挿通路(12a)とが連通した状態にて、前記通電部品(3)の前記配索方向に並ぶように配置される、
回路体(1)の製造方法。
【0048】
上記[3]の構成の回路体の製造方法によれば、複数の仕様から選択された選択仕様の通電部品(例えば、バスバ)に装着されるプロテクタが、通電部品の配索方向における長さが異なる複数種類の共用プロテクタの中から、通電部品の選択仕様に応じて複数の共用プロテクタを選別して、選別された複数の共用プロテクタを配索方向に並べるように配置することで、構成される。これにより、通電部品の仕様ごとに専用のプロテクタを設計・製造する場合に比べ、プロテクタの汎用化・共通化を図ることができる。なお、通電部品の仕様に応じて、複数種類のうちの一の種類から複数の共用プロテクタが選別されてもよいし、複数種類のうちの一部の種類のみから共用プロテクタが選別されてもよい。
【0049】
更に、複数種類の共用プロテクタの各々が、通電部品を挿通可能な第1挿通路を内部に有する第1筒状部と、第1挿通路よりも大径の第2挿通路を内部に有する第2筒状部と、を有している。選別された共用プロテクタは、一の共用プロテクタの第1筒状部の筒端部を他の共用プロテクタの第2筒状部に収容して第1挿通路と第2挿通路とが連通した状態にて、通電部品の配索方向に並ぶように配置される。これにより、選択される共用プロテクタの種類や数によらず、共通した配置作業(即ち、第1筒状部の筒端部を第2筒状部に収容する作業)で、それぞれの共用プロテクタを配置することができる。よって、選別された共用プロテクタを配置する作業を単純化できることで、通電部品にプロテクタを装着する作業の作業性を向上できる。
【符号の説明】
【0050】
1 回路体
2 プロテクタ
3 バスバ(通電部品)
10 共用プロテクタ
10A~10C 複数種類の共用プロテクタ
11 第1筒状部
11a 第1挿通路
12 第2筒状部
12a 第2挿通路
14 屈曲部