(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024105028
(43)【公開日】2024-08-06
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
G09F 9/30 20060101AFI20240730BHJP
H01L 29/786 20060101ALI20240730BHJP
G02F 1/1368 20060101ALN20240730BHJP
【FI】
G09F9/30 338
H01L29/78 618B
H01L29/78 616V
H01L29/78 616T
G09F9/30 348A
G02F1/1368
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023009543
(22)【出願日】2023-01-25
(71)【出願人】
【識別番号】502356528
【氏名又は名称】株式会社ジャパンディスプレイ
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】弁理士法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】渡部 将弘
(72)【発明者】
【氏名】渡壁 創
(72)【発明者】
【氏名】津吹 将志
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 俊成
(72)【発明者】
【氏名】望月 真里奈
(72)【発明者】
【氏名】田丸 尊也
(72)【発明者】
【氏名】小野寺 涼
【テーマコード(参考)】
2H192
5C094
5F110
【Fターム(参考)】
2H192AA24
2H192BB12
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2H192CB54
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5F110NN73
(57)【要約】
【課題】半導体装置の電気特性を低下させることなくプロセスマージンを大きくすること。
【解決手段】半導体装置は、多結晶構造を含む酸化物半導体層と、前記酸化物半導体層と対向するゲート電極と、前記酸化物半導体層と前記ゲート電極との間のゲート絶縁層と、前記酸化物半導体層に接続された第1透明導電層と、前記第1透明導電層と同一層に設けられ、前記第1透明導電層から分離された第2透明導電層と、を含み、前記第1透明導電層の結晶性は、前記第2透明導電層の結晶性と異なる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多結晶構造を含む酸化物半導体層と、
前記酸化物半導体層と対向するゲート電極と、
前記酸化物半導体層と前記ゲート電極との間のゲート絶縁層と、
前記酸化物半導体層に接続された第1透明導電層と、
前記第1透明導電層と同一層に設けられ、前記第1透明導電層から分離された第2透明導電層と、を含み、
前記第1透明導電層の結晶性は、前記第2透明導電層の結晶性と異なる半導体装置。
【請求項2】
前記第1透明導電層及び前記第2透明導電層は、インジウム及び錫を含む、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記酸化物半導体層は、インジウムを含む2以上の金属を含み、
前記2以上の金属におけるインジウムの比率は50%以上である、請求項2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記ゲート電極、前記第1透明導電層、及び前記第2透明導電層は、前記酸化物半導体層の上方に設けられている、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記酸化物半導体層及び前記ゲート電極の上方に設けられ、第1開口が設けられた第1絶縁層と、
前記第1絶縁層の上方に設けられ、前記第1開口を介して前記酸化物半導体層に接続された金属層と、
前記第1絶縁層の上方に設けられた第2絶縁層と、をさらに含み、
前記第1絶縁層及び前記第2絶縁層には第2開口が設けられ、
前記第1透明導電層は、前記第2開口を介して前記酸化物半導体層に接続された、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記第1透明導電層及び前記第2透明導電層の下方において、前記第1透明導電層及び前記第2透明導電層の下面に接続された絶縁層をさらに含む、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項7】
多結晶構造を含む酸化物半導体層と、
前記酸化物半導体層と対向するゲート電極と、
前記酸化物半導体層と前記ゲート電極との間のゲート絶縁層と、
平面視における第1領域で前記酸化物半導体層に接続された第1透明導電層と、を含み、
前記第1領域における前記第1透明導電層の結晶性は、前記第1領域とは異なる第2領域における前記第1透明導電層の結晶性と異なる半導体装置。
【請求項8】
前記第1透明導電層は、インジウム及び錫を含む、請求項8に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記酸化物半導体層は、インジウムを含む2以上の金属を含み、
前記2以上の金属におけるインジウムの比率は50%以上である、請求項8に記載の半導体装置。
【請求項10】
前記ゲート電極及び前記第1透明導電層は、前記酸化物半導体層の上方に設けられている、請求項7に記載の半導体装置。
【請求項11】
前記酸化物半導体層及び前記ゲート電極の上方に設けられ、第1開口が設けられた第1絶縁層と、
前記第1絶縁層の上方に設けられ、前記第1開口を介して前記酸化物半導体層に接続された金属層と、
前記第1絶縁層の上方に設けられた第2絶縁層と、をさらに含み、
前記第1絶縁層及び前記第2絶縁層には第2開口が設けられ、
前記第1透明導電層は、前記第2開口を介して前記酸化物半導体層に接続された、請求項7に記載の半導体装置。
【請求項12】
前記第1領域における前記第1透明導電層と前記第2領域における前記第1透明導電層とは連続している、請求項7に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態の一つは、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、アモルファスシリコン、低温ポリシリコン、および単結晶シリコンに替わり、酸化物半導体がチャネルに用いられたトランジスタの開発が進められている(例えば、特許文献1及び2)。酸化物半導体がチャネルに用いられたトランジスタは、アモルファスシリコンがチャネルに用いられたトランジスタと同様に、単純な構造かつ低温プロセスで形成される。酸化物半導体がチャネルに用いられたトランジスタは、アモルファスシリコンがチャネルに用いられたトランジスタよりも高い移動度を有し、オフ電流が非常に低いことが知られている。
【0003】
近年、表示装置の画素サイズ縮小化が進められている。画素サイズの縮小化に伴い、配線幅やトランジスタサイズの縮小化が検討されている。しかし、これらの縮小化には限界があり、画素回路を構成する金属層及び半導体層の配置に起因して開口率が小さくなっている。そこで、トランジスタサイズが小さくても、画素回路の駆動に十分な特性を得ることができる、酸化物半導体層がチャネルに用いられたトランジスタを画素回路のトランジスタに用いる開発が進められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014-146819号公報
【特許文献2】特開2015-159315号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
低温ポリシリコンがチャネルとして用いられたトランジスタでは、シリコン層と、画素電極として用いられる透明導電層(例えば、酸化インジウム及び酸化スズの混合物(ITO))と、を直接コンタクトさせることができない。そのため、シリコン層と透明導電層との間に金属層の台座を設ける必要がある。このような台座が画素の表示領域に配置されると、画素の開口率が低下するという問題がある。このようなコンタクト構造に関する技術思想は、酸化物半導体がチャネルとして用いられたトランジスタにも共通する技術思想であり、透明導電層を金属層の台座の上に形成する構成が一般的に使用されていた。さらに、酸化物半導体層がチャネルとして用いられたトランジスタであっても、ソース領域及びドレイン領域の酸化物半導体層に透明導電層が直接接する構造では、製造プロセスによっては酸化物半導体層と透明導電層との間のコンタクト抵抗が高くなってしまう場合があった。
【0006】
本発明の実施形態の一つは、半導体装置の電気特性を低下させることなくプロセスマージンを大きくすることを課題の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態に係る半導体装置は、多結晶構造を含む酸化物半導体層と、前記酸化物半導体層と対向するゲート電極と、前記酸化物半導体層と前記ゲート電極との間のゲート絶縁層と、前記酸化物半導体層に接続された第1透明導電層と、前記第1透明導電層と同一層に設けられ、前記第1透明導電層から分離された第2透明導電層と、を含み、前記第1透明導電層の結晶性は、前記第2透明導電層の結晶性と異なる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施形態に係る表示装置の概要を示す断面図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る表示装置の概要を示す平面図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る表示装置において、各層のレイアウトを説明する平面図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る表示装置において、各層のレイアウトを説明する平面図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係る表示装置において、各層のレイアウトを説明する平面図である。
【
図6】本発明の一実施形態に係る表示装置において、各層のレイアウトを説明する平面図である。
【
図7】本発明の一実施形態に係る表示装置において、各層のレイアウトを説明する平面図である。
【
図8】本発明の一実施形態に係る表示装置において、各層のレイアウトを説明する平面図である。
【
図9】本発明の一実施形態に係る表示装置において、各層のレイアウトを説明する平面図である。
【
図10】本発明の一実施形態に係る表示装置において、各層のレイアウトを説明する平面図である。
【
図11】本発明の一実施形態に係る表示装置において、各層のレイアウトを説明する平面図である。
【
図12】本発明の一実施形態に係る表示装置において、各層のレイアウトを説明する平面図である。
【
図13】本発明の一実施形態に係る表示装置において、各層のレイアウトを説明する平面図である。
【
図14】本発明の一実施形態に係る半導体装置において、透明導電層の結晶性を示す断面図である。
【
図15】本発明の一実施形態に係る表示装置の概要を示す平面図である。
【
図16】本発明の一実施形態に係る表示装置の回路構成を示すブロック図である。
【
図17】本発明の一実施形態に係る表示装置の画素回路を示す回路図である。
【
図18】本発明の一実施形態に係る半導体装置の電気特性を示す図である。
【
図19】本発明の一実施形態に係る半導体装置における酸化物半導体層と透明導電層とのコンタクト抵抗値を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明の各実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。以下の開示はあくまで一例にすぎない。当業者が、発明の主旨を保ちつつ、実施形態の構成を適宜変更することによって容易に想到し得る構成は、当然に本発明の範囲に含有される。図面は説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合がある。しかし、図示された形状はあくまで一例であって、本発明の解釈を限定しない。本明細書と各図において、既出の図に関して前述した構成と同様の構成には、同一の符号の後にアルファベットを付して、詳細な説明を適宜省略することがある。
【0010】
本発明の各実施の形態において、基板から酸化物半導体層に向かう方向を上又は上方という。逆に、酸化物半導体層から基板に向かう方向を下又は下方という。このように、説明の便宜上、上方又は下方という語句を用いて説明するが、例えば、基板と酸化物半導体層との上下関係が図示と異なる向きに配置されてもよい。以下の説明で、例えば基板上の酸化物半導体層という表現は、上記のように基板と酸化物半導体層との上下関係を説明しているに過ぎず、基板と酸化物半導体層との間に他の部材が配置されていてもよい。上方又は下方は、複数の層が積層された構造における積層順を意味するものであり、トランジスタの上方の画素電極と表現する場合、平面視でトランジスタと画素電極とが重ならない位置関係であってもよい。一方、トランジスタの鉛直上方の画素電極と表現する場合は、平面視でトランジスタと画素電極とが重なる位置関係を意味する。
【0011】
「表示装置」とは、電気光学層を用いて映像を表示する構造体を指す。例えば、表示装置という用語は、電気光学層を含む表示パネルを指す場合もあり、又は表示セルに対して他の光学部材(例えば、偏光部材、バックライト、タッチパネル等)を装着した構造体を指す場合もある。「電気光学層」には、技術的な矛盾が生じない限り、液晶層、エレクトロルミネセンス(EL)層、エレクトロクロミック(EC)層、電気泳動層が含まれ得る。したがって、後述する実施形態について、表示装置として、液晶層を含む液晶表示装置を例示して説明するが、本実施形態における構造は、上述した他の電気光学層を含む表示装置へ適用することができる。
【0012】
本明細書において「αはA、B又はCを含む」、「αはA,B及びCのいずれかを含む」、「αはA,B及びCからなる群から選択される一つを含む」、といった表現は、特に明示が無い限り、αがA~Cの複数の組み合わせを含む場合を排除しない。さらに、これらの表現は、αが他の要素を含む場合も排除しない。
【0013】
なお、以下の各実施形態は、技術的な矛盾を生じない限り、互いに組み合わせることができる。
【0014】
[1.第1実施形態]
[1-1.表示装置10の構成]
図1~
図14を用いて、本発明の一実施形態に係る表示装置10の構成について説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る表示装置の概要を示す断面図である。
図2は、本発明の一実施形態に係る表示装置の概要を示す平面図である。
図3~
図13は、本発明の一実施形態に係る表示装置において、各層のレイアウトを説明する平面図である。
図14は、本発明の一実施形態に係る半導体装置において、透明導電層の結晶性を示す断面図である。
図1の断面図は、表示装置10の層構造を説明するための断面図であって、厳密には
図2の平面図と一致していない場合もある。
【0015】
図1に示すように、表示装置10は基板SUBの上方に設けられている。表示装置10は、トランジスタTr1、トランジスタTr2、配線W、画素電極PTCO、共通補助電極CMTL、及び共通電極CTCOを有する。TCOはTransparent Conductive Oxide(透明導電性酸化物)の略称である。トランジスタTr1は表示装置10の画素回路に含まれる半導体装置である。トランジスタTr2は周辺回路に含まれる半導体装置である。詳細は後述するが、周辺回路は画素回路を駆動する回路である。以下の説明において、「半導体装置」は、トランジスタTr1の構成のみを含んでもよく、トランジスタTr1及びTr2の両方の構成を含んでもよい。
【0016】
[1-2.トランジスタTr1の構成]
トランジスタTr1は、酸化物半導体層OS(OS1、OS2)、ゲート絶縁層GI1、ゲート電極GL1、接続電極ZTCO、及び配線XTCOを有する。ゲート電極GL1は酸化物半導体層OSに対向する。ゲート絶縁層GI1は酸化物半導体層OSとゲート電極GL1との間に設けられている。本実施形態では、ゲート電極GL1よりも基板SUB側に酸化物半導体層OSが設けられたトップゲート型トランジスタが例示されているが、ゲート電極GL1と酸化物半導体層OSとの位置関係が逆であるボトムゲート型トランジスタが用いられてもよい。
【0017】
酸化物半導体層OSは、多結晶構造を含む。酸化物半導体層OSは、酸化物半導体層OS1、OS2を含む。酸化物半導体層OS1は、平面視でゲート電極GL1と重なる領域の酸化物半導体層である。酸化物半導体層OS1は、半導体層として機能し、ゲート電極GL1に供給される電圧に応じて導通状態と非導通状態とに切り替えられる。つまり、酸化物半導体層OS1はトランジスタTr1のチャネルとして機能する。酸化物半導体層OS2は導電層として機能する。酸化物半導体層OS1、OS2は同じ酸化物半導体層から形成された層である。例えば、酸化物半導体層OS2は、酸化物半導体層OS1と同じ物性の層に対して不純物を注入することで低抵抗化された酸化物半導体層である。
【0018】
ゲート電極GL1の上方に絶縁層IL2が設けられている。絶縁層IL2の上方に配線W1が設けられている。配線W1は、絶縁層IL2及びゲート絶縁層GI1に設けられた開口WCONを介して酸化物半導体層OS2に接続されている。配線W1は金属層である。配線W1には、画素の階調に関連するデータ信号が伝達される。絶縁層IL2及び配線W1の上方に絶縁層IL3が設けられている。接続電極ZTCO及び配線XTCOは、絶縁層IL3の上方において、絶縁層IL3の上面と接している。換言すると、絶縁層IL3は、接続電極ZTCO及び配線XTCOの下方において、接続電極ZTCO及び配線XTCOの下面と接している。
【0019】
接続電極ZTCOは、絶縁層IL3、IL2、及びゲート絶縁層GI1に設けられた開口ZCONを介して酸化物半導体層OS2に接続されている。接続電極ZTCOは開口ZCONの底部において酸化物半導体層OS2と接している。配線XTCOは、絶縁層IL3に設けられた開口XCONを介して配線W1に接続されている。接続電極ZTCO及び配線XTCOは、透明導電層である。上記のように、ゲート電極GL1、接続電極ZTCO、及び配線XTCOは、酸化物半導体層OSの上方に設けられている。
【0020】
接続電極ZTCOを「第1透明導電層」という場合がある。配線XTCOを「第2透明導電層」という場合がある。配線XTCOは、接続電極ZTCOと同一層に設けられ、接続電極ZTCOから分離されている。接続電極ZTCOの材料は配線XTCOの材料と同一であるが、接続電極ZTCOの一部の結晶性は、配線XTCOの結晶性と異なる。例えば、接続電極ZTCO及び配線XTCOがいずれも同一プロセスで形成されたITOであっても、接続電極ZTCOとして用いられるITOの一部の結晶性は、配線XTCOとして用いられるITOの結晶性と異なる。結晶性が異なるとは、結晶構造が異なること、結晶構造が同じであっても格子定数等のパラメータが異なることなどを含む。結晶性が異なる透明導電層を光学顕微鏡で観察すると、これらの透明導電層の色が異なる。つまり、これらの透明導電層の屈折率が異なる。
【0021】
絶縁層IL2を「第1絶縁層」という場合がある。絶縁層IL3を「第2絶縁層」という場合がある。開口WCONを「第1開口」という場合がある。開口ZCONを「第2開口」という場合がある。上記のように、絶縁層IL2は酸化物半導体層OS及びゲート電極GL1の上方に設けられている。
【0022】
詳細は後述するが、接続電極ZTCOは、平面視で第1領域及び第2領域に区分される。第1領域は、接続電極ZTCOが酸化物半導体層OSと接する領域を含む。第2領域は第1領域以外の領域である。第1領域における接続電極ZTCOの結晶性は、第2領域における接続電極ZTCOの結晶性と異なる。
【0023】
例えばITO層などの透明導電層をシリコン層などの半導体層に接するように形成すると、ITO成膜時のプロセスガスや酸素イオンによって半導体層の表面が酸化する。半導体層の表面に形成された酸化層は高抵抗であるため、半導体層と透明導電層と間のコンタクト抵抗が高くなる。その結果、半導体層と透明導電層との電気的接触に不良が生じる。
【0024】
一方、上記の接続電極ZTCOを多結晶構造を含む酸化物半導体層OSに接するように形成した場合、酸化物半導体層OSの表面に上記のような高抵抗な酸化層は形成されない。
【0025】
上記の理由は、以下のように推測される。上記のような酸化物半導体層OSに接するように接続電極ZTCOを形成すると、酸化物半導体層OSの上方に形成される接続電極ZTCOは、酸化物半導体層OSの結晶構造を反映して成膜直後に結晶化する。例えば、当該酸化物半導体層OS以外の箇所に成膜した場合は接続電極ZTCOが結晶化しない成膜条件で当該接続電極ZTCOを成膜した場合であっても、酸化物半導体層OSと接する領域に形成される接続電極ZTCOは結晶化する。このように、接続電極ZTCOが成膜時に結晶化することで、当該酸化物半導体層OSの表面のうち接続電極ZTCOと接する部分において酸化物半導体層OSが還元されると考えられる。その結果、酸化物半導体層OSの表面におけるキャリア濃度が増加し、酸化物半導体層OSと接続電極ZTCOとのコンタクト抵抗が低減したと考えられる。
【0026】
接続電極ZTCOの上方に絶縁層IL4が設けられている。絶縁層IL4は、絶縁層IL4よりも下層に設けられた構造体によって形成された段差を緩和する。絶縁層IL4を平坦化膜という場合がある。絶縁層IL4の上方に画素電極PTCOが設けられている。画素電極PTCOは絶縁層IL4に設けられた開口PCONを介して接続電極ZTCOに接続されている。接続電極ZTCOと画素電極PTCOとが接する領域をコンタクト領域CON2という。平面視で、コンタクト領域CON2はゲート電極GL1と重なる。画素電極PTCOは、透明導電層である。
【0027】
画素電極PTCOの上方に絶縁層IL5が設けられている。絶縁層IL5の上方に共通補助電極CMTL及び共通電極CTCOが設けられている。つまり、画素電極PTCOは、絶縁層IL5を介して共通電極CTCOと対向している。共通電極CTCOは、開口PCONにおいて共通補助電極CMTLに接続されている。詳細は後述するが、共通補助電極CMTLと共通電極CTCOとは、それぞれ異なる平面パターンを有する。共通補助電極CMTLは金属層である。共通電極CTCOは透明導電層である。共通補助電極CMTLの電気抵抗は共通電極CTCOの電気抵抗よりも低抵抗である。共通補助電極CMTLは遮光層としても機能する。例えば、共通補助電極CMTLが隣接する画素からの光を遮光することで、混色の発生が抑制される。共通電極CTCOの上方にスペーサSPが設けられている。
【0028】
スペーサSPは一部の画素に対して設けられている。例えば、スペーサSPは、青色画素、赤色画素、緑色画素のいずれか1の画素に対して設けられていてもよい。ただし、スペーサSPは全ての画素に設けられていてもよい。スペーサSPの高さは、セルギャップの半分の高さである。対向基板にもスペーサが設けられており、対向基板のスペーサと上記のスペーサSPとは平面視で重なる。
【0029】
トランジスタTr1と基板SUBとの間に遮光層LSが設けられている。本実施形態では、遮光層LSとして、遮光層LS1、LS2が設けられている。ただし、遮光層LSは遮光層LS1のみ又はLS2のみで形成されていてもよい。平面視で、遮光層LSは、ゲート電極GL1と酸化物半導体層OSとが重なる領域に設けられている。つまり、平面視で、遮光層LSは酸化物半導体層OS1と重なる領域に設けられている。遮光層LSは、基板SUB側から入射した光が酸化物半導体層OS1に到達することを抑制する。遮光層LSとして導電層が用いられる場合、遮光層LSに電圧を印加して酸化物半導体層OS1を制御してもよい。遮光層LSに電圧が印加される場合、遮光層LSとゲート電極GL1とは、画素回路の周辺領域で接続されていてもよい。平面視で、上記のコンタクト領域CON1は遮光層LSと重ならない領域に設けられている。
【0030】
本実施形態では、酸化物半導体層OSが絶縁層IL1と接する構成を例示したが、この構成に限定されない。例えば、酸化物半導体層OSと絶縁層IL1との間に金属酸化物層が設けられてもよい。例えば、当該金属酸化物層として、アルミニウムを主成分とする金属酸化物が用いられてもよい。具体的には、当該金属酸化物層として、酸化アルミニウムが用いられてもよい。この場合、金属酸化物層は絶縁層IL1と同じ領域に設けられていてもよく、酸化物半導体層OSと同じパターンに加工されていてもよい。
【0031】
[1-3.トランジスタTr2の構成]
トランジスタTr2は、p型のトランジスタTr2-1及びn型のトランジスタTr2-2を有する。
【0032】
p型のトランジスタTr2-1及びn型のトランジスタTr2-2は、いずれもゲート電極GL2、ゲート絶縁層GI2、半導体層S(S1~S3)を有する。ゲート電極GL2は半導体層Sに対向する。ゲート絶縁層GI2は半導体層Sとゲート電極GL2との間に設けられている。本実施形態では、半導体層Sよりも基板SUB側にゲート電極GL2が設けられたボトムゲート型トランジスタが例示されているが、半導体層Sとゲート電極GL2との位置関係が逆であるトップゲート型トランジスタが用いられてもよい。
【0033】
p型のトランジスタTr2-1の半導体層Sは、半導体層S1、S2を含む。n型のトランジスタTr2-2の半導体層Sは、半導体層S1、S2、S3を含む。半導体層S1は、平面視でゲート電極GL2と重なる領域の半導体層である。半導体層S1はトランジスタTr2-1及びTr2-2のチャネルとして機能する。半導体層S2は導電層として機能する。半導体層S3は、半導体層S2よりも高抵抗な導電層として機能する。半導体層S3は、半導体層S1に向かって侵入するホットキャリアを減衰させることで、ホットキャリア劣化を抑制する。
【0034】
半導体層Sの上方に絶縁層IL1及びゲート絶縁層GI1が設けられている。トランジスタTr2において、ゲート絶縁層GI1は単に層間膜として機能する。これらの絶縁層の上方に配線W2が設けられている。配線W2は、絶縁層IL1及びゲート絶縁層GI1に設けられた開口を介して半導体層S2に接続されている。配線W2の上方に絶縁層IL2が設けられている。絶縁層IL2の上方に配線W1が設けられている。配線W1は、絶縁層IL2に設けられた開口を介して配線W2に接続されている。配線W1の上方に絶縁層IL3が設けられている。絶縁層IL3の上方に配線XTCOが設けられている。配線XTCOは、絶縁層IL3に設けられた開口を介して配線W1に接続されている。
【0035】
ゲート電極GL2と遮光層LS2とは同一層である。配線W2とゲート電極GL1とは同一層である。同一層とは、1つの層がパターニングされることによって、複数の部材が形成されていることを意味する。
【0036】
[1-4.表示装置10の平面レイアウト]
図2~
図13を用いて、表示装置10の画素の平面レイアウトを説明する。
図2では、画素電極PTCO、共通補助電極CMTL、共通電極CTCO、及びスペーサSPは省略されている。画素電極PTCO、共通補助電極CMTL、及び共通電極CTCOの平面レイアウトは、それぞれ
図11~
図13に示されている。
【0037】
図2及び
図3に示すように、遮光層LSはD1方向に延びている。画素によって遮光層LSの形状が異なる。本実施形態では、D1方向に延びる遮光層LSの一部から、D2方向に突出する突出部PJTが設けられている。
図5に示すように、遮光層LSは、平面視でゲート電極GL1と酸化物半導体層OSとが重なる領域を含む領域に設けられている。なお、ゲート電極GL1を「ゲート線」ということもできる。
【0038】
図2、
図4、及び
図5に示すように、酸化物半導体層OSはD2方向に延びている。ゲート電極GL1は、酸化物半導体層OSと交差するようにD1方向に延びている。ゲート電極GL1のパターンは遮光層LSのパターンの内側に設けられている。換言すると、酸化物半導体層OSは、ゲート電極GL1に交差する長尺状(長手を有する形状)に形成されている。
【0039】
図2、
図6、及び
図7に示すように、開口WCONは、酸化物半導体層OSのパターンの上端付近において、配線W1(W1-1、W1-2)と重なる領域に設けられている。酸化物半導体層OSのパターンのメイン部分は、隣接する配線W1(W1-1、W1-2)の間においてD2方向に延びている。酸化物半導体層OSのパターンの残りの部分は、当該メイン部分から開口WCONの領域に向かってD1方向及びD2方向に対して斜めの方向に延びている。
【0040】
図2及び
図7に示すように、複数の配線W1がD2方向に延びている。隣接する配線W1をそれぞれ区別して説明する必要がある場合、隣接する配線W1を配線W1-1及び配線W1-2という。この場合、酸化物半導体層OSのメイン部分は、配線W1-1と配線W1-2との間において、D2方向に延び、ゲート電極GL1と交差するということができる。上記の構成を換言すると、酸化物半導体層OSは、D2方向に長尺状に設けられており、酸化物半導体層OSの長手方向の一方の端部で配線W1-1に接続されている。
【0041】
図2、
図8、及び
図9に示すように、開口ZCONは酸化物半導体層OSのパターンの下端付近に設けられている。開口ZCONは、酸化物半導体層OSのパターンと重なる領域、かつ、ゲート電極GL1とは重ならない領域に設けられている。開口ZCONは、接続電極ZTCOと重なる領域に設けられている。接続電極ZTCOは、配線W1-1と配線W1-2との間において、ゲート電極GL1及び酸化物半導体層OSと重なる。よって、接続電極ZTCOは、ゲート電極GL1とは重ならない開口ZCONにおいて酸化物半導体層OSと接する。
【0042】
上記の構成を換言すると、酸化物半導体層OSは、酸化物半導体層OSの長手方向の他方の端部で接続電極ZTCOに接続されている。接続電極ZTCOは、酸化物半導体層OSと同様にD2方向に延在する長尺状に形成されている。D1方向において、接続電極ZTCOの幅は酸化物半導体層OSの幅よりも小さい。
【0043】
図2、
図7、及び
図8に示すように、酸化物半導体層OSは、ゲート電極GL1に対して、開口ZCONとは反対側で配線W1と接する。開口ZCONは遮光層LSと重ならない。
【0044】
図2、
図10、及び
図11に示すように、開口PCONは接続電極ZTCOのパターンの上端付近に設けられている。開口PCONは、ゲート電極GL1のパターン及び接続電極ZTCOのパターンと重なる領域に設けられている。開口PCONは、画素電極PTCOと重なる領域に設けられている。画素電極PTCOは、配線W1-1と配線W1-2との間において、ゲート電極GL1、酸化物半導体層OS、及び接続電極ZTCOと重なる。よって、画素電極PTCOは、ゲート電極GL1と重なる開口PCONにおいて接続電極ZTCOと接する。
【0045】
画素電極PTCOは、下記の透光領域に延在している。上記の構成を換言すると、画素電極PTCOは、酸化物半導体層OS及び配線W1-1と同様にD2方向に延在する長尺状に形成されている。D1方向において、開口PCONが設けられた部分における画素電極PTCOの幅は酸化物半導体層OSの幅よりも大きい。
【0046】
図11に示すように、接続電極ZTCOは、配線W1-1に沿って延在する長尺状に形成されている。D1方向において、コンタクト領域CON2を構成する開口PCONの幅は、接続電極ZTCOの幅より大きい。平面視で接続電極ZTCOの全体が画素電極PTCOに重なる。
【0047】
図11に示すように、画素電極PTCOはD2方向に並んでいる。D2方向に隣接する画素のうち、一方の画素を「第1画素」といい、他方の画素を「第2画素」という場合がある。例えば、第1画素は、
図11においてD2方向に並んだ画素電極PTCOのうち、上の画素電極PTCOに対応する画素であり、第2画素は、D2方向に並んだ画素電極PTCOのうち、下の画素電極PTCOに対応する画素である。この場合、第1画素及び第2画素には、配線W1-1から画素信号が供給される。
【0048】
また、画素電極PTCOはD1方向に並んでいる。上記の第1画素に対してD1方向に隣接する画素を「第3画素」といい、第2画素に対してD1方向に隣接する画素を「第4画素」という。第3画素と第4画素とはD2方向に隣接している。第3画素及び第4画素には、配線W1-1に隣り合う配線W1-2から画素信号が供給される。
【0049】
上記のように、第1画素、第2画素、第3画素、及び第4画素の各々は、トランジスタTr1(画素トランジスタ)と、接続電極ZTCOと、画素電極PTCOと、を有する。
【0050】
トランジスタTr1は、酸化物半導体層OS、酸化物半導体層OSに対向するゲート電極GL1、及び酸化物半導体層OSとゲート電極GL1との間のゲート絶縁層GI1を備えている。接続電極ZTCOは、平面視で、ゲート電極GL1及び酸化物半導体層OSと重なり、ゲート電極GL1とは重ならない開口ZCONにおいて、酸化物半導体層OSと接する。画素電極PTCOは、平面視で、ゲート電極GL1、酸化物半導体層OS、及び接続電極ZTCOと重なり、ゲート電極GL1と重なる開口PCONにおいて、接続電極ZTCOに接続されている。
【0051】
図11の上側の設けられた第1画素の画素電極PTCOは、平面視で、当該第1画素の酸化物半導体層OS及び第1画素の下側に設けられた第2画素の酸化物半導体層OSに重なる。また、第1画素の画素電極PTCOは、平面視で、第4画素の酸化物半導体層OSとも重なる。
【0052】
図12に示すように、共通補助電極CMTLは、画素領域の周囲を囲むように格子状に設けられている。つまり、共通補助電極CMTLは複数の画素に対して共通に設けられている。換言すると、共通補助電極CMTLは開口OPを有する。開口OPは、画素電極PTCOを露出するように設けられている。開口OPのパターンは画素電極PTCOのパターンの内側に設けられている。開口OPが設けられた領域が表示領域に相当する。つまり、開口ZCONは表示領域に含まれている。表示領域とは、ユーザが画素からの光を視認できる領域を意味する。例えば、金属層によって遮光され、ユーザが光を視認できない領域は表示領域には含まれない。つまり、上記の表示領域を「透光領域(又は、開口領域)」という場合がある。
【0053】
図13に示すように、共通電極CTCOは、複数の画素に対して共通に設けられている。上記開口OPに対応した領域にスリットSLが設けられている。スリットSLは、湾曲した形状(縦に長いS字形状)を有している。スリットSLの先端は、当該先端の延伸方向に直交する幅が小さくなる形状を有している。
図1及び
図13を参照すると、共通電極CTCOは、画素電極PTCOと対向する位置にスリットSLを有している。
【0054】
[1-5.接続電極ZTCO及び配線XTCOの結晶性]
図14を用いて、接続電極ZTCO及び配線XTCOの結晶性について説明する。
図14は、
図1に示されたトランジスタTr1の一部を抜粋して拡大した断面図である。
図14において、接続電極ZTCOは2種類のハッチングで表示されている。異なるハッチングは、異なる結晶性を意味する。
図14は、第1領域AR1及び第2領域AR2に区分されている。第1領域AR1は、平面視において接続電極ZTCOが酸化物半導体層OSに接続された領域を含む。第2領域AR2は、第1領域AR1とは異なる領域である。第1領域AR1は、平面視において接続電極ZTCOが酸化物半導体層OSに接続された領域のみを指してもよく、当該領域よりも外側に広がりを持った領域を指してもよい。
【0055】
図14に示すように、接続電極ZTCOは領域によって異なる結晶性を有している。具体的には、第1領域AR1における接続電極ZTCOの結晶性は、第2領域AR2における接続電極ZTCOの結晶性とは異なる。第2領域AR2における接続電極ZTCOの結晶性は、配線XTCOの結晶性と同じである。
【0056】
接続電極ZTCO及び配線XTCOとしてITOなどの透明導電層が用いられる場合、当該透明導電層を基板全面に成膜した後にパターニングするため、当該透明導電層は結晶化しない条件で成膜される。このような条件で透明導電層を成膜しても、酸化物半導体層OSが多結晶であるため、酸化物半導体層OSと接する領域の透明導電層は、酸化物半導体層OSの結晶構造を反映して成膜直後に結晶化する。その結果、透明導電層を成膜した直後の状態において、第1領域AR1における透明導電層は結晶状態であり、第2領域AR2における透明導電層は非結晶状態である。
【0057】
上記のようにパターニングされた後に、透明導電層の低抵抗化のために、透明導電層は熱処理によって結晶化される。この結晶化によって、第2領域AR2における接続電極ZTCO及び配線XTCOは非結晶状態から結晶状態に変化する。一方、第1領域AR1における接続電極ZTCOは、既に結晶状態であるため、熱処理の前後において結晶状態は変化しない。
【0058】
上記のように、第1領域AR1における接続電極ZTCOは、酸化物半導体層OSの結晶構造を反映して結晶化するのに対して、第2領域における接続電極ZTCO及び配線XTCOは、熱処理によって結晶化する。したがって、
図14に示すように、第1領域AR1における接続電極ZTCOの結晶性は、第2領域AR2における接続電極ZTCO及び配線XTCOの各々の結晶性とは異なる。接続電極ZTCOは、同一の透明導電層をパターニングすることで形成されたパターンである。したがって、第1領域AR1における接続電極ZTCOと第2領域AR2における接続電極ZTCOとは連続している。
【0059】
[1-6.表示装置10の各部材の材質]
基板SUBとして、ガラス基板、石英基板、およびサファイア基板など、透光性を有し、可撓性を有しない剛性基板を用いることができる。一方、基板SUBが可撓性を有する必要がある場合は、基板SUBとしてポリイミド基板、アクリル基板、シロキサン基板、またはフッ素樹脂基板など、樹脂を含み、可撓性を有するフレキシブル基板を用いることができる。基板SUBの耐熱性を向上させるために、上記の樹脂に不純物が導入されてもよい。
【0060】
ゲート電極GL1、GL2、配線W1、W2、遮光層LS、及び共通補助電極CMTLとして、一般的な金属材料を用いることができる。例えば、これらの電極等の部材として、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、クロム(Cr)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、モリブデン(Mo)、ハフニウム(Hf)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、ビスマス(Bi)、及び銀(Ag)、又は、これらの合金若しくは化合物が用いられる。上記の電極等の部材として、上記の材料が単層で用いられてもよく、積層で用いられてもよい。
【0061】
例えば、ゲート電極GL1として、Ti/Al/Tiの積層構造が用いられる。本実施形態において、上記の積層構造を有するゲート電極GL1のパターン端部の断面形状は順テーパ形状である。
【0062】
ゲート絶縁層GI1、GI2及び絶縁層IL1~IL5として、一般的な絶縁層性材料を用いることができる。例えば、ゲート絶縁層GI1、GI2及び絶縁層IL1~IL3、IL5として、酸化シリコン(SiOx)、酸化窒化シリコン(SiOxNy)、窒化シリコン(SiNx)、窒化酸化シリコン(SiNxOy)、酸化アルミニウム(AlOx)、酸化窒化アルミニウム(AlOxNy)、窒化酸化アルミニウム(AlNxOy)、窒化アルミニウム(AlNx)などの無機絶縁層を用いることができる。これらの絶縁層として、欠陥が少ない絶縁層を用いることができる。絶縁層IL4として、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、又はシロキサン樹脂などの有機絶縁材料を用いることができる。ゲート絶縁層GI1、GI2及び絶縁層IL1~IL3、IL5として、上記の有機絶縁材料が用いられてもよい。上記の絶縁層等の部材として、上記の材料が単層で用いられてもよく、積層で用いられてもよい。
【0063】
上記の絶縁層の一例として、ゲート絶縁層GI1として厚さが100nmのSiOxが用いられる。絶縁層IL1として総厚さが300nm~700nmのSiOx/SiNx/SiOxが用いられる。ゲート絶縁層GI2として総厚さが60~150nmのSiOx/SiNxが用いられる。絶縁層IL2として総厚さが300nm~500nmのSiOx/SiNx/SiOxが用いられる。絶縁層IL3として総厚さが200nm~500nmのSiOx(単層)、SiNx(単層)、又はこれらの積層が用いられる。絶縁層IL4として厚さが2μm~4μmの有機層が用いられる。絶縁層IL5として厚さが50nm~150nmのSiNx(単層)が用いられる。
【0064】
上記のSiOxNy及びAlOxNyは、酸素(O)よりも少ない比率(x>y)の窒素(N)を含有するシリコン化合物及びアルミニウム化合物である。SiNxOy及びAlNxOyは、窒素よりも少ない比率(x>y)の酸素を含有するシリコン化合物及びアルミニウム化合物である。
【0065】
酸化物半導体層OSとして、半導体の特性を有する金属酸化物を用いることができる。例えば、酸化物半導体層OSとして、インジウム(In)、ガリウム(Ga)、亜鉛(Zn)、及び酸素(O)を含む酸化物半導体を用いることができる。例えば、酸化物半導体層OSとして、In:Ga:Zn:O=1:1:1:4の組成比を有する酸化物半導体を用いることができる。ただし、本実施形態で使用されるIn、Ga、Zn、及びOを含む酸化物半導体は上記の組成に限定されず、上記とは異なる組成の酸化物半導体が用いられてもよい。例えば、移動度を向上させるためにInの比率が上記より大きい酸化物半導体層が用いられてもよい。一方、バンドギャップを大きくし、光照射による影響を小さくするためにGaの比率が上記より大きい酸化物半導体層が用いられてもよい。
【0066】
例えば、Inの比率が上記より大きい酸化物半導体層OSとして、インジウム(In)を含む2以上の金属を含む酸化物半導体が用いられてもよい。この場合、酸化物半導体層OSにおいて、全金属元素に対するインジウム元素の比率が原子比率で50%以上であってもよい。酸化物半導体層OSとして、インジウムに加えて、ガリウム(Ga)、亜鉛(Zn)、アルミニウム(Al)、ハフニウム(Hf)、イットリウム(Y)、ジルコニア(Zr)、ランタノイドが用いられてもよい。酸化物半導体層OSとして、上記以外の元素が用いられてもよい。
【0067】
酸化物半導体層OSとして、In、Ga、Zn、及びOを含む酸化物半導体に他の元素が添加されていてもよく、例えばAl、Snなどの金属元素が添加されていてもよい。上記の酸化物半導体以外にもIn、Gaを含む酸化物半導体(IGO)、In、Znを含む酸化物半導体(IZO)、In、Sn、Znを含む酸化物半導体(ITZO)、及びIn、Wを含む酸化物半導体などが酸化物半導体層OSとして用いられてもよい。
【0068】
インジウム元素の比率が大きい場合、酸化物半導体層OSが結晶化しやすい。上記のように、酸化物半導体層OSにおいて、全金属元素に対するインジウム元素の比率が50%以上である材料を用いることで、多結晶構造を有する酸化物半導体層OSを得ることができる。インジウム以外の金属元素として、ガリウムを含むことが好ましい。ガリウムは、インジウムと同じ第13族元素に属する。そのため、酸化物半導体層OSの結晶性がガリウムによって阻害されることなく、酸化物半導体層OSは多結晶構造を有する。
【0069】
酸化物半導体層OSの詳細な製造方法は後述するが、酸化物半導体層OSは、スパッタリング法を用いて形成することができる。スパッタリング法によって形成される酸化物半導体層OSの組成は、スパッタリングターゲットの組成に依存する。酸化物半導体層OSが多結晶構造を有する場合であっても、スパッタリングターゲットの組成と酸化物半導体層OSの組成とは略一致する。この場合、酸化物半導体層OSの金属元素の組成は、スパッタリングターゲットの金属元素の組成に基づき特定することができる。
【0070】
酸化物半導体層OSが多結晶構造を有する場合、X線回折(X-ray Diffraction:XRD)法を用いて、酸化物半導体層の組成を特定してもよい。具体的には、XRD法によって取得された酸化物半導体層の結晶構造及び格子定数に基づき、酸化物半導体層の金属元素の組成を特定することができる。さらに、酸化物半導体層OSの金属元素の組成は、蛍光X線分析又は電子プローブマイクロアナライザ(Electron Probe Micro Analyzer:EPMA)分析などを用いて特定することもできる。ただし、酸化物半導体層OSに含まれる酸素元素は、スパッタリングのプロセス条件などにより変化するため、この限りではない。
【0071】
上述のように、酸化物半導体層OSは多結晶構造を有している。多結晶構造を有する酸化物半導体は、Poly-OS(Poly-crystalline Oxide Semiconductor)技術を用いて作製することができる。以下では、アモルファス構造を有する酸化物半導体と区別するとき、多結晶構造を有する酸化物半導体をPoly-OSとして説明する場合がある。
【0072】
上記のように、接続電極ZTCO、配線XTCO、画素電極PTCO、及び共通電極CTCOとして、透明導電層が用いられる。当該透明導電層として、ITO及び酸化インジウム及び酸化亜鉛の混合物(IZO)を用いることができる。当該透明導電層として、上記以外の材料が用いられてもよい。
【0073】
上記のように、酸化物半導体層OSと絶縁層IL1との間に金属酸化物層が設けられる場合、当該金属酸化物層として、アルミニウムを主成分とする金属酸化物が用いられる。例えば、金属酸化物層として、酸化アルミニウム(AlOx)、酸化窒化アルミニウム(AlOxNy)、窒化酸化アルミニウム(AlNxOy)、窒化アルミニウム(AlNx)などの無機絶縁層が用いられる。「アルミニウムを主成分とする金属酸化物層」は、金属酸化物層に含まれるアルミニウムの比率が、金属酸化物層全体の1%以上であることを意味する。金属酸化物層に含まれるアルミニウムの比率は、金属酸化物層全体の5%以上70%以下、10%以上60%以下、又は30%以上50%以下であってもよい。上記の比率は、質量比であってもよく、重量比であってもよい。
【0074】
以上のように、本実施形態に係るトランジスタTr1によると、多結晶構造を含む酸化物半導体層OSと透明導電層である接続電極ZTCOとを直接接触させることで両者間の導通を確保することができる。したがって、酸化物半導体層OSと接続電極ZTCOとの間に金属層を設ける必要がない。また、詳細は後述するが、本実施形態に係るトランジスタTr1によると、酸化物半導体層OSと接続電極ZTCOとのコンタクト抵抗を低減することができる。したがって、トランジスタTr1の電気特性を低下させることなくプロセスマージンを大きくすることができる。
【0075】
この構成によって、開口ZCONにおいて光が遮られないため、開口率の低下を抑制することができる。酸化物半導体層は透光性を有している。したがって、本実施形態において、画素領域の開口領域に酸化物半導体層が設けられているが、バックライトからの光は当該酸化物半導体層を通過する。このため、酸化物半導体層が開口領域に設けられていることによる当該開口領域の透過率の低下は可及的低減される。酸化物半導体層OSは、透光性を有するため、シリコン層とは異なり透過光にムラを生じさせにくい。表示領域に酸化物半導体層OSが設けられていることで、表示ムラの発生を抑制することができる。
【0076】
[2.第2実施形態]
図15~
図17を用いて、上記の第1実施形態で説明した表示装置の全体構成について説明する。
【0077】
[2-1.表示装置20の概要]
図15は、本発明の一実施形態に係る表示装置の概要を示す平面図である。
図15に示すように、表示装置20は、アレイ基板300、シール部400、対向基板500、フレキシブルプリント回路基板600(FPC600)、およびICチップ700を有する。アレイ基板300および対向基板500はシール部400によって貼り合わせられている。シール部400に囲まれた液晶領域22には、複数の画素回路310がマトリクス状に配置されている。液晶領域22は、後述する液晶素子410と平面視で重なる領域である。液晶領域22は、表示に寄与する領域である。液晶領域22を「表示領域」という場合がある。上記のトランジスタTr1は液晶領域22(表示領域)に設けられる。
【0078】
シール部400が設けられたシール領域24は、液晶領域22の周囲の領域である。FPC600は端子領域26に設けられている。端子領域26はアレイ基板300が対向基板500から露出された領域であり、シール領域24の外側に設けられている。なお、シール領域24の外側とは、シール部400が設けられた領域及びシール部400によって囲まれた領域の外側を意味する。ICチップ700はFPC600上に設けられている。ICチップ700は各画素回路310を駆動させるための信号を供給する。シール領域24又はシール領域24と端子領域26とを合わせた領域は、液晶領域22(表示領域)を包囲する領域である。これらの領域を「額縁領域」という場合がある。上記のトランジスタTr2は当該額縁領域に設けられる。
【0079】
[2-2.表示装置20の回路構成]
図16は、本発明の一実施形態に係る表示装置の回路構成を示すブロック図である。
図16に示すように、画素回路310が配置された液晶領域22に対してD1方向(列方向)に隣接する位置にはソースドライバ回路320が設けられており、液晶領域22に対してD2方向(行方向)に隣接する位置にはゲートドライバ回路330が設けられている。ソースドライバ回路320及びゲートドライバ回路330は、上記のシール領域24に設けられている。ただし、ソースドライバ回路320及びゲートドライバ回路330が設けられる領域はシール領域24に限定されず、画素回路310が設けられた領域の外側であれば、どの領域でもよい。
【0080】
ソースドライバ回路320からソース配線321がD1方向に延びており、D1方向に配列された複数の画素回路310に接続されている。ゲートドライバ回路330からゲート配線331がD2方向に延びており、D2方向に配列された複数の画素回路310に接続されている。
【0081】
端子領域26には端子部333が設けられている。端子部333とソースドライバ回路320とは接続配線341で接続されている。同様に、端子部333とゲートドライバ回路330とは接続配線341で接続されている。FPC600が端子部333に接続されることで、FPC600が接続された外部機器と表示装置20とが接続され、外部機器からの信号によって表示装置20に設けられた各画素回路310が駆動する。
【0082】
第1実施形態に示すトランジスタTr1は、画素回路310に用いられる。第1実施形態に示すトランジスタTr2は、ソースドライバ回路320及びゲートドライバ回路330に含まれるトランジスタに適用される。
【0083】
[2-3.表示装置20の画素回路310]
図17は、本発明の一実施形態に係る表示装置の画素回路を示す回路図である。
図17に示すように、画素回路310はトランジスタ800、保持容量890、及び液晶素子410などの素子を含む。保持容量890の一方の電極は画素電極PTCOであり、他方の電極は共通電極CTCOである。同様に、液晶素子410の一方の電極は画素電極PTCOであり、他方の電極は共通電極CTCOである。トランジスタ800は第1ゲート電極810、第1ソース電極830、及び第1ドレイン電極840を有する。第1ゲート電極810はゲート配線331に接続されている。第1ソース電極830はソース配線321に接続されている。第1ドレイン電極840は保持容量890及び液晶素子410に接続されている。第1実施形態に示すトランジスタTr1は、
図17に示すトランジスタ800に適用される。本実施形態では、説明の便宜上、830をソース電極といい、840をドレイン電極というが、それぞれの電極のソースとしての機能とドレインとしての機能とが入れ替わってもよい。
【実施例0084】
[3.トランジスタTr1の電気特性]
図18を用いて、トランジスタTr1の電気特性について説明する。
図18は、本発明の一実施形態に係る半導体装置の電気特性を示す図である。
図18には、従来のトランジスタ(Conv.)及び第1実施形態に係るトランジスタTr1(Poly-OS)のそれぞれの電気特性が示されている。従来のトランジスタは、第1実施形態のトランジスタTr1と同じ構造であり、酸化物半導体層OSとして非結晶状態の酸化物半導体層が用いられている。したがって、従来のトランジスタにおいて、接続電極ZTCOとして用いられるITOの結晶状態は場所によって違いがない。
【0085】
図18に示す電気特性の測定条件は以下の通りである。
・チャネル領域CHのサイズ:W/L=2.0μm/2.5μm
・ソース・ドレイン間電圧:0.1V、10V
・ゲート電圧:-15V~+20V
・測定環境:室温、暗室
・測定点数:30点
【0086】
図18に示すように、従来のトランジスタでは複数のトランジスタにおいて、オン電流の異常値が確認される。異常値が確認されるトランジスタでは、オン電流が飽和し、ゲート電圧を大きくしてもオン電流が大きくならない。つまり、トランジスタの電流パスに高抵抗箇所が存在していると考えられる。一方、第1実施形態に係るトランジスタTr1において、オン電流の異常値は確認されない。
【0087】
[4.コンタクト抵抗]
図19は、本発明の一実施形態に係る半導体装置における酸化物半導体層と透明導電層とのコンタクト抵抗値を示す図である。
図19は、従来のトランジスタ(Conv.)及び第1実施形態に係るトランジスタTr1(Poly-OS)の各々の基板に設けられたコンタクト抵抗測定用のテストパターン(TEG)の測定結果である。
【0088】
図19は、上記のコンタクト抵抗を示す箱ひげ図である。
図19では、測定されたコンタクト抵抗値における最大値(ひげの上端)、最小値(ひげの下端)、データの中央50%の分布(箱の上端から下端まで)、平均値(×印)、及び中央値(上の箱と下の箱の境界)が示されている。
【0089】
図19に示すように、従来のトランジスタでは、ほとんどのTEGにおいて、酸化物半導体層OSと接続電極ZTCOとのコンタクト抵抗値が100kΩを超えている。一方、第1実施形態に係るトランジスタ1では、全てのTEGにおいて、当該コンタクト抵抗が100Ω~200Ωの範囲に収まっている。
【0090】
以上のように、本実施形態に係るトランジスタTr1では、酸化物半導体層OSと接続電極ZTCOとのコンタクト抵抗が非常に低いため、オン電流の飽和がない、正常な電気特性を得ることが判明した。
【0091】
本発明の実施形態として上述した各実施形態は、相互に矛盾しない限りにおいて、適宜組み合わせて実施することができる。また、各実施形態の半導体装置を基にして、当業者が適宜構成要素の追加、削除もしくは設計変更を行ったもの、又は、工程の追加、省略もしくは条件変更を行ったものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に含まれる。
【0092】
上述した各実施形態の態様によりもたらされる作用効果とは異なる他の作用効果であっても、本明細書の記載から明らかなもの、又は、当業者において容易に予測し得るものについては、当然に本発明によりもたらされるものと解される。
10:表示装置、 20:表示装置、 22:液晶領域、 24:シール領域、 26:端子領域、 300:アレイ基板、 310:画素回路、 320:ソースドライバ回路、 321:ソース配線、 330:ゲートドライバ回路、 331:ゲート配線、 333:端子部、 341:接続配線、 400:シール部、 410:液晶素子、 500:対向基板、 600:フレキシブルプリント回路基板(FPC)、 700:チップ、 800:トランジスタ、 810:第1ゲート電極、 830:第1ソース電極、 840:第1ドレイン電極、 890:保持容量、 AR1:第1領域、 AR2:第2領域、 CH:・チャネル領域、 CMTL:共通補助電極、 CON1、CON2:コンタクト領域、 CTCO:共通電極、 GI1、GI2:ゲート絶縁層、 GL1、GL2:ゲート電極、 IL1~IL5:絶縁層、 LS:遮光層、 OP:開口、 OS:酸化物半導体層、 PCON、WCON、XCON、ZCON:開口、 PJT:突出部、 PTCO:画素電極、 S:半導体層、 SL:スリット、 SP:スペーサ、 SUB:基板、 Tr1、Tr2:トランジスタ、 W、XTCO:配線、 ZTCO:接続電極