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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024105031
(43)【公開日】2024-08-06
(54)【発明の名称】洗浄便座装置
(51)【国際特許分類】
   E03D 9/08 20060101AFI20240730BHJP
   B05B 1/02 20060101ALI20240730BHJP
【FI】
E03D9/08 F
B05B1/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023009547
(22)【出願日】2023-01-25
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】弁理士法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】砂山 雄太
【テーマコード(参考)】
2D038
4F033
【Fターム(参考)】
2D038JA06
2D038JF02
2D038JH12
2D038JH18
2D038JH19
4F033AA04
4F033BA04
4F033CA02
4F033DA01
4F033EA01
4F033JA03
4F033LA12
4F033LA13
4F033NA01
(57)【要約】
【課題】洗浄便座装置の大型化やコストアップを防止すると共に外部への液体の飛散を抑えて、使用者の臀部を適切に洗浄する。
【解決手段】洗浄便座装置は、供給される液圧に応じて便座の左右方向における噴角が変化するように液体を噴射する洗浄ノズルと、便座の前後方向における位置が変化するように洗浄ノズルを進退移動させる駆動部と、洗浄ノズルに供給される液圧を変更可能な液圧変更部と、使用者の臀部を洗浄する際、洗浄ノズルを進退移動させると共に洗浄ノズルの進出位置に基づいて液圧を変更させるように駆動部と液圧変更部とを制御する制御部と、を備える。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
供給される液圧に応じて便座の左右方向における噴角が変化するように液体を噴射する洗浄ノズルと、
前記便座の前後方向における位置が変化するように前記洗浄ノズルを進退移動させる駆動部と、
前記洗浄ノズルに供給される液圧を変更可能な液圧変更部と、
使用者の臀部を洗浄する際、前記洗浄ノズルを進退移動させると共に前記洗浄ノズルの進出位置に基づいて液圧を変更させるように前記駆動部と前記液圧変更部とを制御する制御部と、
を備える洗浄便座装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記洗浄ノズルから噴射された液体の前記左右方向における噴射幅が、前記便座の開口部の前記左右方向における開口幅に応じた幅となるように、前記進出位置に基づいて液圧を変更させる、
請求項1に記載の洗浄便座装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記便座の開口部において前記噴射幅が前記開口幅に対して左右両側に所定のマージンをもった小さな幅となるように、前記進出位置に基づいて液圧を変更させる、
請求項2に記載の洗浄便座装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記洗浄ノズルを所定の移動範囲内で進退移動させながら前記進出位置に基づいて液圧を連続的に変更させる、
請求項1または2に記載の洗浄便座装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、洗浄便座装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の洗浄便座装置としては、使用者の臀部など広範囲を洗浄可能なものが提案されている。例えば、特許文献1の洗浄便座装置は、半球状の噴射部本体に多数の噴射口が放射状に設けられた噴射部本体と、便座の開口部の縁部に取り付けられた水切り部とを備え、噴射部本体から便座の開口部の開口全域に液体(洗浄水)を噴射することで使用者の臀部全体を洗浄する。この洗浄便座装置は、水切り部が取り付けられているため、噴射された液体が便器本体と便座との隙間から外部へ飛散するのを防止することができる。また、特許文献2の洗浄便座装置は、液体を噴出するノズルを前後および左右に移動させる駆動装置を備え、液体を噴出する際にノズルが円軌道や十字軌道などの所定軌道を描くように駆動装置を駆動することで、使用者の局部を中心とした広範囲を洗浄する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実用新案登録第3123696号公報
【特許文献2】特開2014-37735号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した特許文献1の洗浄便座装置では、液体の飛散を防止するための水切り部を取り付けるため、構成が複雑となりコストアップを招くだけでなく、水切り部に付着した汚物を除去するために清掃の手間が増えてしまう。また、特許文献2の洗浄便座装置では、ノズルを前後だけでなく左右にも移動させる駆動装置が必要となるため、構成が複雑となりコストアップを招くだけでなく、駆動装置を収容するために大型化にも繋がってしまう。
【0005】
本開示は、洗浄便座装置の大型化やコストアップを防止すると共に外部への液体の飛散を抑えて、使用者の臀部を適切に洗浄することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0007】
本開示の洗浄便座装置は、
供給される液圧に応じて便座の左右方向における噴角が変化するように液体を噴射する洗浄ノズルと、
前記便座の前後方向における位置が変化するように前記洗浄ノズルを進退移動させる駆動部と、
前記洗浄ノズルに供給される液圧を変更可能な液圧変更部と、
使用者の臀部を洗浄する際、前記洗浄ノズルを進退移動させると共に前記洗浄ノズルの進出位置に基づいて液圧を変更させるように前記駆動部と前記液圧変更部とを制御する制御部と、
を備えることを要旨とする。
【0008】
本開示の洗浄便座装置は、液圧に応じて便座の左右方向における噴角が変化するように液体を噴射する洗浄ノズルを備え、使用者の臀部を洗浄する際、便座の前後方向における位置が変化するように洗浄ノズルを進退移動させると共に洗浄ノズルの進出位置に基づいて液圧を変更させる。これにより、洗浄ノズルの進出位置に応じて必要な洗浄範囲で臀部を洗浄することができるから、洗浄ノズルを左右方向に移動させる駆動部や、液体の飛散を防止するための水切り部を不要とすることができる。したがって、洗浄便座装置の大型化やコストアップを防止すると共に外部への液体の飛散を抑えて、使用者の臀部を適切に洗浄することができる。
【0009】
本開示の洗浄便座装置において、前記制御部は、前記洗浄ノズルから噴射された液体の前記左右方向における噴射幅が、前記便座の開口部の前記左右方向における開口幅に応じた幅となるように、前記進出位置に基づいて液圧を変更させるものとしてもよい。こうすれば、便座の開口幅の広い箇所では噴射幅を広くし、便座の開口幅の狭い箇所では噴射幅を狭くするから、外部への液体の飛散を抑えつつ使用者の臀部をより適切に洗浄することができる。
【0010】
本開示の洗浄便座装置において、前記制御部は、前記便座の開口部において前記噴射幅が前記開口幅に対して左右両側に所定のマージンをもった小さな幅となるように、前記進出位置に基づいて液圧を変更させるものとしてもよい。こうすれば、臀部の洗浄範囲をできるだけ広げながら、外部への洗浄水の飛散を適切に抑えることができる。
【0011】
本開示の洗浄便座装置において、前記制御部は、前記洗浄ノズルを所定の移動範囲内で進退移動させながら前記進出位置に基づいて液圧を連続的に変更させるものとしてもよい。こうすれば、臀部の全体に満遍なく液体を噴射させることができるから、使用者の臀部をより適切に洗浄することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】洗浄便座装置10の斜視図である。
図2】洗浄便座装置10の概略構成図である。
図3】臀部洗浄ノズル33の斜視図である。
図4】臀部洗浄ノズル33の噴角Dの一例を示す説明図である。
図5】臀部洗浄ノズル33の噴角Dの一例を示す説明図である。
図6】臀部洗浄処理の一例を示すフローチャートである。
図7】臀部洗浄位置と洗浄幅の一例を示す説明図である。
図8】臀部洗浄位置と洗浄幅の一例を示す説明図である。
図9】臀部洗浄位置と洗浄幅の一例を示す説明図である。
図10】臀部洗浄位置と進出位置Mと噴射口高さHと水圧Pと噴角Dと噴射幅Wの変化の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本開示の実施形態について図面を用いて説明する。図1は、洗浄便座装置10の斜視図である。図2は、洗浄便座装置10の概略構成図である。洗浄便座装置10は、図1に示すように、便器1の上面に配置される本体11と、本体11に対して開閉可能に支持された便座12および便蓋13と、使用者による各種操作が可能なリモコン14とを備える。また、洗浄便座装置10は、図2に示すように、洗浄水を供給する給水路20と、供給された洗浄水(液体)により使用者の局部洗浄や臀部洗浄を行う洗浄ユニット30と、洗浄便座装置10の全体を制御する制御部18とを備える。
【0014】
給水路20には、給水源からの水(洗浄水)の供給を司る止水電磁弁22と、洗浄水を加熱する熱交換器24と、熱交換器24を流通した洗浄水の供給先の切り替えと供給する洗浄水の水圧の調整とを行う切替弁26とを備える。給水路20には、図示は省略するが、洗浄水の温度を検出する水温センサや洗浄水の流量を検出する流量センサなどが設けられる。熱交換器24は、例えば1200W程度の定格出力を有するセラミックヒータ等を内蔵し、洗浄水を瞬間的に加熱可能な瞬間加熱式のユニットとして構成されている。切替弁26は、ステッピングモータの駆動により洗浄水の水圧調整と供給先の切り替えとを行うディスクバルブやロータリバルブなどとして構成されている。
【0015】
洗浄ユニット30は、局部洗浄を行う局部洗浄ノズル31と、局部洗浄ノズル31を進退移動させる駆動部32と、臀部洗浄を行う臀部洗浄ノズル33と、臀部洗浄ノズル33を進退移動させる駆動部34とを備える。なお、切替弁26は、洗浄水の供給先を局部洗浄ノズル31と臀部洗浄ノズル33のいずれかに切り替え可能であると共に、局部洗浄ノズル31に供給する洗浄水の水圧や臀部洗浄ノズル33に供給する洗浄水の水圧を調整可能である。
【0016】
局部洗浄ノズル31は、図示は省略するが、内部に洗浄水の流路が形成されると共に、先端部の上面に噴射口が形成された筒状部材である。駆動部32は、例えば、ピニオンギヤを回転させるモータと、ピニオンギヤに噛み合うと共に局部洗浄ノズル31に接続されピニオンギヤの回転に伴って移動可能なラック(フレキシブルラック)とを備え、モータの正回転または逆回転により局部洗浄ノズル31を進退移動させる。駆動部32は、局部洗浄ノズル31を、本体11内の待機位置と本体11外の噴射位置との間で、便座12の前後方向における位置が変化するように、進退移動させる。
【0017】
ここで、図3は、臀部洗浄ノズル33の斜視図である。図4図5は、臀部洗浄ノズル33の噴角Dの一例を示す説明図である。臀部洗浄ノズル33は、内部に洗浄水の流路が形成されると共に、上方および側方が開口するように切り欠かれた拡散部35が先端側に形成された筒状部材である。拡散部35は、内壁面として、後方側(基端側)の後壁面35aと、後壁面35aに対向する前方側(先端側)の前壁面35bと、後壁面35aの下端と前壁面35bの下端との間で軸方向に延びる底壁面35cとを有する。
【0018】
後壁面35aは、臀部洗浄ノズル33の軸方向に対して直交すると共に洗浄水の流路に連通した噴射口37が形成されている。前壁面35bは、軸方向における拡散部35の切欠幅が上方に向かうにつれて大きくなるように傾斜面状に形成されている。また、図示は省略するが、前壁面35bは、凹状に湾曲するように形成されている。こうして構成された臀部洗浄ノズル33は、噴射口37から噴射された洗浄水を拡散部35の前壁面35bで受けて扇状に拡散させながら噴射させる。拡散部35により扇状に拡散して噴射された洗浄水は、左右方向における噴角(噴射角度)Dが水圧によって変化する。水圧が低い場合には比較的狭い噴角D1で洗浄水が噴射され(図4参照)、水圧が高い場合には比較的広い噴角D2で洗浄水が噴射される(図5参照)。このように洗浄水の水圧によって噴角Dを変化させる洗浄ノズルは、例えば特許第3709433号公報に記載されているように周知の技術であるため、これ以上の詳細な説明は省略する。
【0019】
駆動部34は、駆動部32と同様にモータとラックとを備え、モータの正回転または逆回転により臀部洗浄ノズル33を進退移動させる。駆動部34は、臀部洗浄ノズル33を、本体11内の待機位置と本体11外の噴射位置との間で、便座12の前後方向における位置が変化するように、進退移動させる。また、臀部洗浄ノズル33は、待機位置から進出するにつれて、噴射口37の位置が下方に移動するように、進退移動する。このため、臀部洗浄ノズル33は、前方への進出量が増えるにつれて、噴射口37が便座12から離間することになる。
【0020】
リモコン14には、図2に示すように、局部洗浄を指示する局部洗浄スイッチ14aや臀部洗浄を指示する臀部洗浄スイッチ14b、洗浄の停止を指示する停止スイッチ14c、洗浄水の温度を調整する温度調整スイッチ14d、洗浄水の洗浄強さ(水圧)を調整する水勢調整スイッチ14eなどが設けられている。
【0021】
制御部18は、図示は省略するが、CPUを中心とするマイクロコンピュータとして構成されており、CPUの他にROMやRAM,タイマ,入出力ポートなどを備える。制御部18には、図2に示すように、リモコン14からの操作信号や便座12への使用者の着座を検知する着座検知センサ16からの検知信号の他、洗浄水の温度を検出する温度センサからの検出信号などが入力ポートを介して入力される。また、制御部18からは、止水電磁弁22への駆動信号や熱交換器24の温水ヒータへの駆動信号,切替弁26への駆動信号,洗浄ユニット30の駆動部32,34への駆動信号などが出力ポートを介して出力される。なお、制御部18は、洗浄ユニット30の駆動部32,34の各モータの回転量や図示しない位置センサなどから、局部洗浄ノズル31や臀部洗浄ノズル33の進出位置M(進出量,進退位置)を検出可能である。
【0022】
次に、こうして構成された洗浄便座装置10の制御部18により実行される処理について説明する。例えば、制御部18は、リモコン14から局部洗浄スイッチ14aの操作信号が入力されると、局部洗浄処理を実行する。局部洗浄処理では、制御部18は、駆動部32により局部洗浄ノズル31を待機位置から噴射位置まで前進させ、局部洗浄ノズル31が噴射位置に到達すると、止水電磁弁22を開弁し切替弁26の供給先を切り替えて洗浄水を局部洗浄ノズル31に供給させて、使用者の局部に向けた洗浄水の噴射を開始させる。また、制御部18は、リモコン14から停止スイッチ14cの操作信号が入力されると、止水電磁弁22を閉弁して局部洗浄ノズル31からの洗浄水の噴射を停止させ、駆動部32により局部洗浄ノズル31を待機位置まで後進させて、局部洗浄処理を終了する。
【0023】
また、制御部18は、リモコン14から臀部洗浄スイッチ14bの操作信号が入力されると、図6に示す臀部洗浄処理を実行する。臀部洗浄処理では、制御部18は、まず、駆動部34により臀部洗浄ノズル33を待機位置から前進させ(S100)、進退方向における所定の移動範囲の後端位置に臀部洗浄ノズル33(拡散部35)が到達するのを待つ(S110)。所定の移動範囲は、臀部洗浄を行う際に、臀部洗浄ノズル33が洗浄水を噴射しながら往復移動する範囲として定められている。
【0024】
制御部18は、移動範囲の後端位置に臀部洗浄ノズル33が到達したと判定すると、止水電磁弁22を開弁し切替弁26の供給先を切り替えて洗浄水を臀部洗浄ノズル33に供給させ、臀部洗浄ノズル33から使用者の臀部に向けた洗浄水の噴射を開始させる(S120)。また、制御部18は、臀部洗浄ノズル33の進出位置Mを取得し(S130)、進出位置Mに応じた噴角Dとするような水圧Pに変更しながら臀部洗浄ノズル33から洗浄水を噴射させる(S140)。そして、制御部18は、臀部洗浄ノズル33が移動範囲の前端位置に到達したか否かを判定し(S150)、前端位置に到達していないと判定すると、S130に戻る。即ち制御部18は、S130~S150では、臀部洗浄ノズル33を前進させながら、その進出位置Mに応じた噴角Dで臀部洗浄ノズル33が洗浄水を噴射するように水圧Pを変更させる。
【0025】
また、制御部18は、S150で臀部洗浄ノズル33が移動範囲の前端位置に到達したと判定すると、臀部洗浄ノズル33の前進を停止して後進を開始させる(S160)。また、制御部18は、前進時と同様に、臀部洗浄ノズル33の進出位置Mを取得し(S170)、進出位置Mに応じた噴角Dとするような水圧Pに変更しながら臀部洗浄ノズル33から洗浄水を噴射させる(S180)。そして、制御部18は、臀部洗浄ノズル33が移動範囲の後端位置に到達したか否かを判定し(S190)、後端位置に到達していないと判定すると、S170に戻る。即ち制御部18は、S170~S190では、臀部洗浄ノズル33を後進させながら、その進出位置Mに応じた噴角Dで臀部洗浄ノズル33が洗浄水を噴射するように水圧Pを変更させる。
【0026】
そして、制御部18は、S190で臀部洗浄ノズル33が移動範囲の後端位置に到達したと判定すると、臀部洗浄ノズル33の後進を停止して前進を開始させて(S200)、S130に戻る。このように、臀部洗浄処理では、臀部洗浄ノズル33を所定の移動範囲内を、一定の速度で往復移動(前進および後進)させながら、洗浄水を噴射させ続ける。なお、制御部18は、リモコン14から停止スイッチ14cの操作信号が入力されると、止水電磁弁22を閉弁して臀部洗浄ノズル33からの洗浄水の噴射を停止させ、駆動部34により臀部洗浄ノズル33を待機位置まで後進させて、臀部洗浄処理を終了する。
【0027】
ここで、図7図9は、臀部洗浄位置と洗浄幅の一例を示す説明図である。図7図9では、臀部洗浄範囲に含まれる3つの臀部洗浄位置a~cを例示し、各洗浄位置における噴射範囲(洗浄範囲)を矩形状の領域で示し、黒塗りの領域が噴射中の領域である。また、図10は、臀部洗浄位置と進出位置Mと噴射口高さHと水圧Pと噴角Dと噴射幅Wの変化の一例を示す説明図である。
【0028】
臀部洗浄位置aは、臀部洗浄範囲の後端であり、臀部洗浄ノズル33が上述した所定の移動範囲の後端位置で洗浄水を噴射した際に臀部洗浄が行われる位置である。なお、移動範囲の後端位置は、臀部洗浄ノズル33が進出位置Maとなる位置であり、噴射口高さHは高さHaとなる(図10参照)。また、臀部洗浄位置aでは、便座12の開口部12aにおける噴射幅(洗浄幅)Waが、開口部12aの開口幅に対して左右両側にマージンαずつ小さな幅となるように(図7参照)、臀部洗浄処理(S140,S180)が行われる。即ち、制御部18は、便座12の開口部12aにおいて噴射幅Waとなるような噴角Daで臀部洗浄ノズル33に洗浄水を噴射させるため、水圧Paの洗浄水が臀部洗浄ノズル33に供給されるように切替弁26を制御する(図10参照)。
【0029】
臀部洗浄位置bは、臀部洗浄範囲の略中央であり、臀部洗浄ノズル33が所定の移動範囲の略中央位置で洗浄水を噴射した際に臀部洗浄が行われる位置である。なお、移動範囲の中央位置は、臀部洗浄ノズル33が進出位置Mbとなる位置であり、噴射口高さHは高さHbとなり高さHaよりも低い(図10参照)。また、臀部洗浄位置bでは、便座12の開口部12aにおける噴射幅Wbが、開口部12aの開口幅に対して左右両側にマージンαずつ小さな幅となるように(図8参照)、臀部洗浄処理が行われる。即ち、制御部18は、便座12の開口部12aにおいて噴射幅Wbとなるような噴角Dbで臀部洗浄ノズル33に洗浄水を噴射させるため、水圧Pbの洗浄水が臀部洗浄ノズル33に供給されるように切替弁26を制御する(図10参照)。なお、水圧Pb、噴角Db、噴射幅Wbは、それぞれ水圧Pa、噴角Da、噴射幅Waよりも大きな値である。
【0030】
臀部洗浄位置cは、臀部洗浄範囲の前端であり、臀部洗浄ノズル33が所定の移動範囲の前端位置で洗浄水を噴射した際に臀部洗浄が行われる位置である。なお、移動範囲の前端位置は、臀部洗浄ノズル33が進出位置Mcとなる位置であり、噴射口高さHは高さHcとなり高さHa,Hbよりも低い(図10参照)。また、臀部洗浄位置cでは、便座12の開口部12aにおける噴射幅Wcが、開口部12aの開口幅に対して左右両側にマージンαずつ小さな幅となるように(図9参照)、臀部洗浄処理が行われる。即ち、制御部18は、便座12の開口部12aにおいて噴射幅Wcとなるような噴角Dcで臀部洗浄ノズル33に洗浄水を噴射させるため、水圧Pcの洗浄水が臀部洗浄ノズル33に供給されるように切替弁26を制御する(図10参照)。なお、水圧Pc、噴角Dc、噴射幅Wcは、それぞれ水圧Pb、噴角Db、噴射幅Wbよりも小さな値である。また、水圧Pc、噴角Dcは、水圧Pa、噴角Daよりも小さな値であるが、噴射幅Wcは、噴射幅Waよりも大きな値となる。これは、噴角Dcが噴角Daより小さくても高さHcが高さHaよりも低いため、開口部12aに洗浄水が到達した際に噴射幅Wがより広がることによる。
【0031】
また、制御部18は、臀部洗浄位置a,b,c以外の位置においても、開口部12aの開口幅に対して左右両側にマージンαずつ小さくなるような噴射幅W(噴角D)で臀部洗浄ノズル33に洗浄水を噴射させる。即ち、制御部18は、臀部洗浄ノズル33の各進出位置に応じた噴射幅W(噴角D)とするため、線形的に変化するように水圧Pを変更する(図10参照)。なお、臀部洗浄位置cは、開口部12aの前端近傍の位置であるため使用者の太股の裏側の部分にも洗浄水が噴射されることがあるが、本実施形態では、そのような部分も臀部洗浄の範囲に含める。勿論、臀部洗浄位置a~cは一例であり、臀部洗浄位置cがより後方側の位置でもよいし、臀部洗浄位置aがより前方側の位置でもよい。
【0032】
以上説明した洗浄便座装置10では、左右方向の噴角Dが水圧Pに応じて変化する臀部洗浄ノズル33を備え、臀部洗浄ノズル33を進退移動させると共に臀部洗浄ノズル33の進出位置Mに基づいて水圧Pを変更させる。ここで、一定の洗浄範囲で洗浄水を噴射させながら臀部洗浄ノズル33を進退移動させた場合、開口幅の広い臀部洗浄位置で噴射幅Wが足りなくなったり、逆に開口幅の狭い臀部洗浄位置で便器1と便座12との隙間から洗浄水が外部へ飛散したりすることがある。本実施形態では、進出位置Mに基づいて水圧Pを変更させて噴射幅Wを変化させることで、臀部洗浄ノズル33の進出位置Mに応じて必要な洗浄範囲で臀部を洗浄することができる。このため、臀部洗浄ノズル33を左右方向に移動させる駆動部や、便器1と便座12との隙間などから外部への洗浄水の飛散を防止するための水切り部を不要とすることができる。したがって、洗浄便座装置10の大型化やコストアップを防止すると共に外部への洗浄水の飛散を抑えて、使用者の臀部を適切に洗浄することができる。
【0033】
また、制御部18は、洗浄水の噴射幅Wが、便座12の開口部12aの左右方向における開口幅に応じた幅となるように、進出位置Mに基づいて水圧Pを変更させる。このため、開口幅の広い箇所では噴射幅Wを広くし、開口幅の狭い箇所では噴射幅Wを狭くするから、外部への洗浄水の飛散を抑えつつ使用者の臀部をより適切に洗浄することができる。
【0034】
また、制御部18は、噴射幅Wが開口部12aの開口幅に対して左右両側に所定のマージンαをもった小さな幅となるように水圧Pを変更させるから、臀部の洗浄範囲をできるだけ広げながら外部への洗浄水の飛散を適切に抑えることができる。
【0035】
また、制御部18は、所定の移動範囲内で臀部洗浄ノズル33を進退移動させながら進出位置Mに基づいて水圧Pを連続的に変更させる。このため、臀部の全体に満遍なく洗浄水を噴射させることができるから、使用者の臀部をより適切に洗浄することができる。
【0036】
上述した実施形態では、所定の移動範囲内で臀部洗浄ノズル33を進退移動させながら洗浄水を噴射させたが、これに限られず、臀部洗浄ノズル33を停止させた状態で洗浄水を噴射させてもよく、臀部洗浄ノズル33を複数の噴射位置に順に移動させて停止させた状態で洗浄水を噴射させることで臀部洗浄を行ってもよい。そのようにする場合、複数の噴射位置(停止位置)毎に水圧Pが定められていればよい。また、進出位置Mに基づいて水圧Pを連続的に変更させるもの、即ち進出位置Mに基づいて噴射幅W(噴角D)を変更させたが、これに限られない。例えば、所定の移動範囲内の全ての範囲あるいは一部の範囲を進退移動中に、水圧Pを変更することなく一定の水圧Pとして、開口部12aに収まるような一定の噴射幅W(噴角D)で噴射させてもよい。なお、一定の水圧Pとする範囲では、進出位置M毎に噴射幅Wが開口幅に対して異なるマージンをもつことになる。
【0037】
実施形態では、噴射幅Wが開口幅に対して左右両側に所定のマージンαをもった小さな幅となるように、進出位置Mに基づいて水圧Pを変更させたが、これに限られない。例えば、臀部洗浄位置(進出位置M)によって異なるマージンをもつように水圧Pを変更させてもよい。例えば、臀部洗浄位置aと臀部洗浄位置bとの間など、噴射口高さHが比較的高く洗浄水の跳ね返りの勢いが強い範囲では、比較的大きなマージンとし、臀部洗浄位置bと臀部洗浄位置cとの間など、噴射口高さが比較的低く洗浄水の跳ね返りの勢いが弱い範囲では、比較的小さなマージンとするものなどでもよい。こうすれば、洗浄水の飛散のおそれの多い範囲では外部への洗浄水の飛散をより抑制しつつ、洗浄水の飛散のおそれの少ない範囲では臀部の洗浄範囲を広げることができる。
【0038】
実施形態では、噴射幅Wが開口部12aの開口幅に応じた幅となるようにしたが、これに限られず、臀部洗浄ノズル33の進出位置Mに基づいて水圧Pを変更させればよい。例えば、臀部洗浄位置aと臀部洗浄位置bとの間など、洗浄の必要性が比較的高い局部周辺の範囲では、できるだけ広範囲に洗浄するように水圧Pを変更し、臀部洗浄位置bと臀部洗浄位置cとの間など、洗浄の必要性が比較的低い太股やその付け根周辺の範囲では、外部への飛散を抑えるように狭い範囲に洗浄するように水圧Pを変更してもよい。
【0039】
実施形態では、局部洗浄ノズル31と臀部洗浄ノズル33とを別々に備えたが、これに限られず、局部洗浄ノズル31と臀部洗浄ノズル33とを1つにまとめた洗浄ノズルとして構成してもよい。また、そのように構成した洗浄ノズルとは別に、ビデ洗浄を行うビデ洗浄ノズルを備えてもよい。
【0040】
実施形態の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した本開示の主要な要素との対応関係について説明する。臀部洗浄ノズル33が「洗浄ノズル」に相当し、駆動部34が「駆動部」に相当し、切替弁26が「液圧変更部」に相当し、制御部18が「制御部」に相当する。
【0041】
本明細書では、出願当初の請求項4において「請求項1または2に記載の洗浄便座装置」を「請求項1ないし3のいずれか1項に記載の洗浄便座装置」に変更した技術思想も開示されている。
【0042】
なお、実施形態の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した本開示の主要な要素との対応関係は、実施形態が課題を解決するための手段の欄に記載した本開示を実施するための形態を具体的に説明するための一例であることから、課題を解決するための手段の欄に記載した本開示の要素を限定するものではない。即ち、課題を解決するための手段の欄に記載した本開示についての解釈はその欄の記載に基づいて行われるべきものであり、実施形態は課題を解決するための手段の欄に記載した本開示の具体的な一例に過ぎないものである。
【0043】
以上、本開示を実施するための形態について実施形態を用いて説明したが、本開示はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本開示は、洗浄便座装置の製造産業などに利用可能である。
【符号の説明】
【0045】
1 便器、10 洗浄便座装置、11 本体、12 便座、12a 開口部、13 便蓋、14 リモコン(リモートコントロール装置)、14a 局部洗浄スイッチ、14b 臀部洗浄スイッチ、14c 停止スイッチ、14d 温度調整スイッチ、14e 水勢調整スイッチ、16 着座検知センサ、18 制御部、20 給水路、22 止水電磁弁、24 熱交換器、26 切替弁、30 洗浄ユニット、31 局部洗浄ノズル、32 駆動部、33 臀部洗浄ノズル、34 駆動部、35 拡散部(切欠部)、35a 後壁面、35b 前壁面、35c 底壁面、37 噴射口。
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