(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024105035
(43)【公開日】2024-08-06
(54)【発明の名称】トラップ装置
(51)【国際特許分類】
F16T 1/22 20060101AFI20240730BHJP
【FI】
F16T1/22 C
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023009552
(22)【出願日】2023-01-25
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-03-13
(71)【出願人】
【識別番号】000137889
【氏名又は名称】株式会社ミヤワキ
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100176304
【弁理士】
【氏名又は名称】福成 勉
(72)【発明者】
【氏名】吉川 成雄
(57)【要約】
【課題】製造コストの上昇を抑えながら使用期間の長短にかかわらず高いシール性を確保することができるトラップ装置を提供する。
【解決手段】トラップ装置1は、ケーシング10とフロート20とを備える。ケーシング10は、流体の流入部10b、復水の流出部10c、および流入部10bからの流体が導き入れられる収容室10aを有する。フロート20は、ケーシング10の収容室10aに対して、当該収容室10a内で上下動可能に収容されている。ケーシング10は、当該ケーシング10の底壁内面10fよりも上方に位置し、且つ、フロート20の下面と平行な平面で構成された弁座10iと、弁座10iに開口された弁孔10eとを更に有する。フロート20は、正六面体の外観形状を有するように形成され、側面と上面にリブを有する。弁孔10eは、フロート20の下面と弁座10iとの面接触により閉弁される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸気を含む流体から復水を排出するトラップ装置であって、
前記流体の流入部、前記復水の流出部、および前記流入部からの前記流体が導き入れられる収容室を有するケーシングと、
前記ケーシングの前記収容室に収容され、当該収容室内の前記復水の量に応じて上下動可能なフロートと、
を備え、
前記ケーシングは、前記流出部と前記収容室とを連通する連通路と、当該ケーシングの底壁内面よりも上方に位置し、且つ、前記フロートの下面と接触可能な弁座と、前記連通路における前記収容室側の端部であって、前記弁座に開口された弁孔とを更に有し、
前記フロートは、六面体の外観形状を有するように形成され、前記下面における前記弁座との接触領域を除く部分にリブを有し、
前記弁座は、前記フロートの下面と平行な平面で構成され、前記フロートの下面が面接触することで前記弁孔を閉弁する、
トラップ装置。
【請求項2】
前記フロートは、正六面体の外観形状を有する、
請求項1に記載のトラップ装置。
【請求項3】
前記フロートは、それぞれが六面体の外観形状を有し、互いに接合された複数のピースを有する、
請求項1または請求項2に記載のトラップ装置。
【請求項4】
前記リブは、前記複数のピースのそれぞれにおける、互いの接合面および前記下面の前記接触領域を除く部分に形成されており、各面における対角線に沿って延びるように形成されている、
請求項3に記載のトラップ装置。
【請求項5】
前記ケーシングにおける前記収容室は、前記フロートが上下動する上下方向に対して直交する方向での断面が、前記フロートの上下動を許容しつつ当該フロートの前記上下方向に対する傾きを抑制するように矩形状に形成されている、
請求項1または請求項2に記載のトラップ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸気が流通する配管設備から復水を排出するのに用いられるトラップ装置に関し、特にフロートにレバーが連結されていないレバーフリータイプのトラップ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
蒸気が流通する配管設備では、当該配管設備から復水(ドレン)を排出するのにスチームトラップ等のトラップ装置が設けられる。トラップ装置には、ケーシング内に収容されたフロートにレバーが連結されていないレバーフリータイプのものが含まれる(特許文献1等)。従来技術に係るトラップ装置について、
図8を用いて説明する。
【0003】
図8に示すように、従来技術に係るトラップ装置9は、ケーシング90と、フロート91と、スクリーン93と、エアベント94とを備える。ケーシング90は、フロート91が矢印Cのように上下動可能な収容室90aを有する。ケーシング90には、蒸気や復水が流入される流入部90b、および復水が流出される流出部90cと、収容室90aに開口する弁孔90eとを有する。弁孔90eは、ケーシング90の側壁内面における下端部分から斜め上向きに突出形成されたパイプ状部分の先端部に開口されている。弁孔90eの周囲は、フロート91の外面91aと接触する弁座90iが設けられている。弁孔90eは、内部連通路90hにより流出路90cに接続されている。さらに、ケーシング90は、復水の量に応じてフロート91が下方に降下した際にフロート91を保持するバルブホルダ90jも有する。
【0004】
スクリーン93は、流入部90bと収容室90aとの間に設けられている。流入部90bから流入した蒸気や復水は、スクリーン93を介して収容室90aへと導かれる。エアベント94は、収容室90aと流出部90cとの間に設けられており、通気初期に収容室90a内の空気をベント室90dを介して流出部90cへと排出する機能を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、
図8を用いて説明した従来技術に係るトラップ装置9では、製造コストの上昇を抑えながらシール性を確保すること、および耐久性を確保することが困難である。即ち、従来術に係るトラップ装置9では、球形状のフロート91を採用しているため、弁孔90eを閉弁する際の弁座90iとフロート91の外面91aとの接触が線接触となっている。また、フロート91は、上下動に際して姿勢が拘束されず回転を伴う場合もある。このため、トラップ装置9では、高い真球度のフロート91を用いることがシール性確保の条件となり製造コストの上昇を招いてしまう。
【0007】
また、トラップ装置9では、フロート91が降下してきて弁座90iに接触する場合に、上述のようにフロート91の外面90aが弁座90iに対して線接触することとなるため、当該接触部分が磨滅し易い。フロート91の外面91aの一部が磨滅してしまった場合には、弁孔90eを完全に閉じることができず、耐久性という観点でも問題を生じる。
【0008】
本発明は、上記のような問題の解決を図ろうとなされたものであって、製造コストの上昇を抑えながら使用期間の長短にかかわらず高いシール性を確保することができるトラップ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様に係るトラップ装置は、蒸気を含む流体から復水を排出するトラップ装置であって、ケーシングとフロートとを備える。前記ケーシングは、前記流体の流入部、前記復水の流出部、および前記流入部からの前記流体が導き入れられる収容室を有する。前記フロートは、前記ケーシングの前記収容室に収容され、当該収容室内の前記復水の量に応じて上下動可能である。
【0010】
本態様に係るトラップ装置において、前記ケーシングは、前記流出部と前記収容室とを連通する連通路と、当該ケーシングの底壁内面よりも上方に位置し、且つ、前記フロートの下面と接触可能な弁座と、前記連通路における前記収容室側の端部であって、前記弁座に開口された弁孔とを更に有する。また、前記フロートは、六面体の外観形状を有するように形成され、前記下面における前記弁座との接触領域を除く部分にリブを有する。そして、前記弁座は、前記フロートの下面と平行な平面で構成され、前記フロートの下面が面接触することで前記弁孔を閉弁する。
【0011】
上記態様に係るトラップ装置では、六面体の外観形状を有するフロートを備えるとともに、底壁内面の他の部分よりも上方に位置する弁座、および弁座に開けられた弁孔を有するケーシングを備える。そして、弁座は、フロートの下面に対して平行な平面で形成されている。このため、上記態様に係るトラップ装置では、復水の量に応じてフロートが上下動の下限位置まで降下した際に、フロートの下面と弁座とが面接触することで弁孔が閉弁される。よって、上記態様に係るトラップ装置では、フロートの下面と弁座との平行度を確保するだけで高いシール性を確保することができ、従来技術に係るトラップ装置のように高い真球度が必要とされるフロートを備える場合に比べて、製造コストの抑制が可能である。
【0012】
また、上記態様に係るトラップ装置では、弁孔の閉弁に際してフロートの下面と弁座とが面接触するので、フロートの下面および弁座のそれぞれに入力される荷重が分散され、フロートの下面および弁座の磨滅を小さく抑えることができる。よって、上記態様に係るトラップ装置では、長期に使用しても高いシール性能を維持することができる。
【0013】
また、上記態様に係るトラップ装置では、フロートの外面の一部(弁座との接触領域を除く部分)にリブを設けているので、収容室に導入される蒸気などからの圧力に対してもフロートの変形や破損を抑制することができる。即ち、上記態様に係るトラップ装置では、外面が6つの平面で構成される六面体のフロートを採用することで上記のような効果を得ながら、フロートの変形や破損を抑制して正確な動作が確保される。
【0014】
上記態様に係るトラップ装置において、前記フロートは、正六面体の外観形状を有する、ことにしてもよい。
【0015】
上記態様に係るトラップ装置では、正六面体の外観形状を有するフロートを備えるので、上記従来技術に係るトラップ装置よりもフロートの上下方向および横方向(上下方向に直交する方向)の寸法を小さくすることができる。即ち、球形状のフロートと正六面体形状のフロートにおいて、体積および肉厚を同じであるとする場合には、正六面体形状のフロートの上下方向および横方向の寸法を球形状のフロートよりも約20%小さくなる。よって、上記態様に係るトラップ装置では、フロートのサイズ(上下方向の寸法および横方向の寸法)を従来技術のような球形状のフロートよりも小さくでき、これに伴ってケーシングのサイズも小さくすることができる。
【0016】
上記態様に係るトラップ装置において、前記フロートは、それぞれが六面体の外観形状を有し、互いに接合された複数のピースを有する、ことにしてもよい。
【0017】
上記態様に係るトラップ装置では、複数のピースを接合することにより形成されたフロートを採用するので、ピースの組み合わせ態様によって種々の六面体形状(正六面体、上下方向に長い六面体、上下方向に扁平な六面体など)を構成することができる。よって、上記のように複数のピースを接合することでフロートを構成する場合には、要求仕様に応じたトラップ装置を形成するのに優位である。
【0018】
また、上記態様に係るトラップ装置では、複数のピースを接合して1つのフロートが構成されるため、内部に各ピースの壁によって構成される仕切壁が形成される。よって、上記態様に係るトラップ装置では、フロートが更に高い剛性を有することで収容室に導入される蒸気の圧力に対する耐性を確保するのに更に優位である。
【0019】
上記態様に係るトラップ装置において、前記リブは、前記複数のピースのそれぞれにおける、互いの接合面および前記下面の前記接触領域を除く部分に形成されており、各面における対角線に沿って延びるように形成されている、ことにしてもよい。
【0020】
上記態様に係るトラップ装置では、フロートのリブが、各ピースの一部の面において対角線上に沿って延びるように形成されているので、リブが形成された各面で高い剛性を確保するのに優位である。即ち、ピースの各面において、当該面の外辺に沿うようにリブを形成する場合に比べて、上記態様のように対角線に沿って延びるようにリブを形成する場合には高い剛性を確保することができる。
【0021】
上記態様に係るトラップ装置において、前記ケーシングにおける前記収容室は、前記フロートが上下動する上下方向に対して直交する方向での断面が、前記フロートの上下動を許容しつつ当該フロートの前記上下方向に対する傾きを抑制するように矩形状に形成されている、ことにしてもよい。
【0022】
上記態様に係るトラップ装置では、ケーシングにおける収容室の上記直交する方向での断面がフロートの上下方向に対する傾きを抑制するように矩形状に形成されているので、収容室内の復水の量に応じてフロートが上下動する場合にもフロートの傾き(上下方向に対する傾き)が抑制される。よって、上記態様に係るトラップ装置では、復水の量に応じてフロートが上下動の下限まで降下した際に、下面を弁座に対して面接触させることができ確実に弁孔を閉弁することができる。
【発明の効果】
【0023】
上記の各態様に係るトラップ装置では、製造コストの上昇を抑えながら使用期間の長短にかかわらず高いシール性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】実施形態に係るトラップ装置の構成を示す断面図である。
【
図2】トラップ装置が備えるフロートの構成を示す展開斜視図である。
【
図3】(a)はフロートの側面を示す側面図、(b)はフロートの下面を示す下面図である。
【
図4】フロートを構成する複数のピースの内の1つの構成を示す断面図である。
【
図6】(a)は変形例1に係るトラップ装置が備えるフロートの構成、(b)は変形例2に係るトラップ装置が備えるフロートの構成を示す斜視図である。
【
図7】(a)は変形例3に係るトラップ装置が備えるフロートの下面、(b)は変形例4に係るトラップ装置が備えるフロートの下面を示す下面図である。
【
図8】従来技術に係るトラップ装置の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下では、本発明の実施形態について、図面を参酌しながら説明する。なお、以下で説明の形態は、本発明を例示的に示すであって、本発明は、その本質的な構成を除き何ら以下の形態に限定を受けるものではない。
【0026】
また、以下の説明で用いる図において、Z方向は鉛直方向(上下方向)であり、X方向およびY方向は水平方向(横方向)を示す。
【0027】
[実施形態]
1.トラップ装置1の全体構成
実施形態に係るトラップ装置1は、蒸気を含む流体から復水を排出するトラップ装置である。トラップ装置1の全体構成について、
図1を用いて説明する。
【0028】
図1に示すように、トラップ装置1は、ケーシング10と、フロート20と、スクリーン30と、エアベント40と、エアベントプラグ50とを備える。ケーシング10は、流入部10bと、流出部10cと、収容室10aと、ベント室10dと、弁孔10eと、内部連通路(連通路)10hとを有する。流入部10bは、蒸気を含む流体が流入する部位であり、X方向左向きに開口されている。該開口にはスチーム配管等が接続される。流出部10cは、空気や復水が流出する部位であり、X方向右向きに開口されている。該開口にはドレン配管等が接続される。収容室10aは、流入部10bを通り導き入れられた流体(蒸気、復水)が収容される部位であって、流入部10bに連通されている。
【0029】
ベント室10dは、エアベント40の一部を収容する部位であって、流出部10cと連通されている。ベント室10dは、収容室10aの上方に形成されており、上部開口がエアベントプラグ50で塞がれている。内部連通路10hは、ケーシング10における側壁および底壁の一部に設けられており、ケーシング10の底壁から収容室10aに開口する弁孔10eと流出部10cとを連通する。
【0030】
なお、ケーシング10は、Z方向上部のボディ11とZ方向下部のボトムカバ12とを気密接合することで構成されている。このため、ボディ11とボトムカバ12との接合部分での収容室10aおよび内部連通路10hの気密性は確保されている。
【0031】
ケーシング10の底壁は、一部が他の部分よりもZ方向上方に隆起した部分を有する。該部分の上面は、Z方向に直交する方向に平面をもって形成されている。当該面が弁座10iである。即ち、弁座10iは、ケーシング10の底壁内面10fの他の部分よりもZ方向上方に位置する。弁孔10eは、弁座10iに設けられている。
【0032】
フロート20は、正六面体の外観形状を有する。フロート20は、収容室10aに対して矢印Aで示すように上下動可能に収容されている。フロート20の上下動の下限は、該フロート20の下面が弁座10iに面接触する位置である。なお、フロート20は、ケーシング10の側壁内面10gに対して僅かな隙間を空けて摺動するサイズ(Z方向に直交する横方向のサイズ)で形成されている。
【0033】
スクリーン30は、流体の導入経路における流入部10bと収容室10aとの間に設けられている。スクリーン30は、収容室10aへのゴミやスケールの侵入を抑制する。エアベント40は、通気初期の段階などにおいて、収容室10a内などに溜まった空気を流出部10cへと排出する。
【0034】
2.フロート20の詳細構成
フロート20の詳細構成について、
図2および
図3を用いて説明する。
【0035】
図2に示すように、フロート20は、それぞれが正六面体の外観形状を有し、互いに接合(矢印B1,B2)された8つのピース201~208によって構成されている。
図2および
図3(a)に示すように、8つのピース201~208のそれぞれは、一部の外面にリブ201r、202r、203r、204r、205r、206r、207r、208rが形成されている。リブ201r,202r,203r,204r,205r,206r,207r,208rは、これらが形成された外面の他の部分よりも外方に突出するように形成されている。
【0036】
なお、8つのピース201~208では、互いの接合に係る接合面201b,202c,203a,204b,205c,208cにはリブは形成されていない。また、
図3(a),(b)に示すように、フロート20の下面20bを構成するピース203,204,207,208の各下面203b,204c,207b,208dにもリブは形成されていない。これにより、フロート20の下面20bと弁座10iとの面接触が可能となる。
【0037】
図2および
図3(a)に示すように、各ピース201~208のリブ201r,202r,203r,204r,205r,206r,207r,208rは、これらが形成された四角形の外面201a,202a,202b,204a,205a,205b,206a,206b,206c,207a,208a,208bの対向線上に沿って延びるようにX字形状をもって形成されている。
【0038】
ここで、ピース201~208同士の接合方法については特に限定はないが、例えば溶接や接着剤などで行うことができる。
【0039】
8つのピース201~208を接合することによって構成されたフロート20は、正六面体(立方体)の外観形状を有し、X方向の寸法W1とY方向の寸法W2とが等しく、Z方向の寸法W3が寸法W1,W2よりもリブの厚み分だけ小さいサイズを有する。即ち、
図3(a),(b)に示すように、フロート20のZ方向の寸法W3は、下面20bにリブを設けていない分だけ横方向(X方向、Y方向)の寸法W1,W2よりも小さい。本明細書では、このように下面20bにリブを設けないことでZ方向の寸法W3が寸法W1,W2よりも小さい場合にもフロート20が正六面体の外観形状を有するとする。
【0040】
3.各ピース201~208のリブ
各ピース201~208におけるリブ201r,202r,203r,204r,205r,206r,207r,208rの構成について、
図4を用いて説明する。なお、
図4では、8つのピース201~208の内の1つのピース206だけを抜き出して図示している。図示を省略する他のピース201~205,207,208についても基本的に同様の構成を有する。また、
図4に示すピース206の断面は正確な断面線での断面を示すものではなく、模式的なものである。
【0041】
図4に示すように、ピース206は、正六面体の本体と、一部の外面206a,206cに形成されたリブ206rとを有する。本体は、外部から隔絶された中空部206fを有する。リブ206rは、外面206a,206cの一部が増肉されることにより形成されている。
【0042】
なお、ピース206において、リブ206rが形成されていない部分の肉厚をT1、リブ206rが形成された部分の肉厚をT2とするとき、次の関係を満たす。
1.5≦(T2/T1)≦2.5・・(1)
【0043】
4.ケーシング10における収容室10aの形状および寸法
ケーシング10における収容室10aの形状および寸法について、
図5を用いて説明する。
【0044】
図5に示すように、ケーシング10における収容室10aは、X方向の寸法がW4、Y方向の寸法がW5の矩形状に形成されている。本実施形態では、X方向の寸法W4とY方向の寸法W5とが等しく、収容室10aにおける横断面が正方形となっている。
【0045】
寸法W4,W5は、
図3(b)に示した寸法W1,W2よりも大きく設定されており、収容室10a内の復水の量に応じたフロート20の上下動を許容するサイズとなっている。その一方、寸法W4,W5は、フロート20が上下動する際にZ方向(
図1などを参照。)に対するフロート20の傾きを抑制可能となるように設定されている。
【0046】
例えば、寸法W4,W5は、寸法W1,W2よりも1mm~10mm程度大きく設定されている。
【0047】
5.効果
本実施形態に係るトラップ装置1では、六面体の外観形状を有するフロート20を備えるとともに、底壁内面10fの他の部分よりもZ方向上方に位置する弁座10i、および弁座10iに開けられた弁孔10eを有するケーシング10を備える。そして、弁座10iは、フロート20の下面20bに対して平行な平面で形成されている。このため、トラップ装置1では、復水の量に応じてフロート20が上下動の下限位置まで降下した際に、フロート20の下面20bと弁座10iとが面接触することで弁孔10eが閉弁される。よって、トラップ装置1では、フロート20の下面20bと弁座10iとの平行度を確保するだけで高いシール性を確保することができ、従来技術に係るトラップ装置9のように高い真球度が必要とされるフロート91を備える場合に比べて、製造コストの抑制が可能である。
【0048】
また、トラップ装置1では、弁孔10eの閉弁に際してフロート20の下面20bと弁座10iとが面接触するので、フロート20の下面20bおよび弁座10iのそれぞれに入力される荷重が面が拡がる方向に分散され、フロート20の下面20bおよび弁座10iの磨滅を小さく抑えることができる。よって、トラップ装置1では、長期に使用しても高いシール性能を維持することができる。
【0049】
また、トラップ装置1では、フロート20の外面の一部(下面20bを除く部分)にリブ201r,202r,203r,204r,205r,206r,207r,208rを設けているので、収容室10aに導入される蒸気などからの圧力に対してもフロート20の変形や破損を抑制することができる。即ち、トラップ装置1では、外面が6つの平面で構成される六面体のフロート20を採用することで上記のような効果を得ながら、フロート20の変形や破損を抑制して正確な動作が確保される。
【0050】
また、トラップ装置1では、正六面体の外観形状を有するフロート20を備えるので、上記従来技術に係るトラップ装置9よりもフロート20の上下方向(Z方向)および横方向(X方向、Y方向)の寸法W1,W2,W3を小さくすることができる。即ち、球形状のフロート91と正六面体形状のフロート20において、体積が同じであるとし、フロート91の外径をD、フロート20の一辺の長さをXとするとき、次の関係を満たす。
(4π/3)×(D/2)3=X3・・(2)
【0051】
上記数式3より、DとXとの関係は次のようになる。
0.806D=X・・(3)
【0052】
上記数式3より、フロート91の肉厚とフロート20の肉厚とが等しいとする場合に、同じ容積の内空間を確保するには、正六面体形状のフロート20の一辺の寸法W1,W2,W3(Xに相当)を球形状のフロート91の外形寸法Dよりも約20%小さくできる。よって、トラップ装置1では、フロート20のサイズ(上下方向の寸法W3および横方向の寸法W1,W2)を従来技術のような球形状のフロート92の外形寸法Dよりも小さくでき、これに伴ってケーシング10のサイズ(
図5のW4,W5およびZ方向の寸法)も小さくすることができる。
【0053】
また、トラップ装置1では、複数のピース201~208を接合することにより形成されたフロート20を採用するので、ピース201~208の組み合わせ態様によって種々の六面体形状(正六面体、上下方向に長い六面体、上下方向に扁平な六面体など)を構成することができる。よって、上記のように複数のピース201~208を接合することでフロート20を構成する場合には、要求仕様に応じたトラップ装置を形成するのに優位である。
【0054】
また、トラップ装置1では、複数のピース201~208を接合して1つのフロート20が構成されるため、内部に各ピース201~208の壁によって構成される仕切壁が形成される。よって、トラップ装置1では、フロート20が更に高い剛性を有することで収容室10aに導入される蒸気の圧力に対する耐性を確保するのに更に優位である。
【0055】
また、トラップ装置1では、フロート20のリブが、各ピース201~208の一部の面において対角線に沿って延びるように形成されたX字形状をもって形成されているので、リブ201r,202r,203r,204r,205r,206r,207r,208rが形成された各面で高い剛性を確保するのに優位である。即ち、ピース201~208の各面において、当該面の外辺に沿うようにリブを形成する場合に比べて、本実施形態のようにX字形状(対角線に沿う形状)でリブ201r,202r,203r,204r,205r,206r,207r,208rを形成する場合には高い剛性を確保することができる。ただし、各ピース201~208に形成するリブの形態については、これに限定されない。
【0056】
また、トラップ装置1では、ケーシング10における収容室10aのZ方向に直交する方向での断面(
図5に示す断面)がフロート20のZ方向に対する傾きを抑制するように矩形状に形成されているので、収容室10a内の復水の量に応じてフロート20が上下動する場合にもフロート20の傾き(Z方向に対する傾き)が抑制される。よって、トラップ装置1では、復水の量に応じてフロート20が上下動の下限まで降下した際に、下面20bを弁座10iに対して面接触させることができ確実に弁孔10eを閉弁することができる。
【0057】
以上のように、本実施形態に係るトラップ装置1では、製造コストの上昇を抑えながら使用期間の長短にかかわらず高いシール性を確保することができる。
【0058】
[変形例1]
変形例1に係るトラップ装置について、
図6(a)を用いて説明する。なお、
図6(a)では、上記実施形態との主な差異点であるフロート21だけを抜き出して図示している。図示を省略する部分については、上記実施形態と同様である。
【0059】
図6(a)に示すように、本変形例では、Z方向に長い六面体の外観形状を有するフロート21が採用される。フロート21は、X方向に2列、Y方向に2列、Z方向に3列の合計12個のピース211~220を接合することで構成されている。各ピース211~220の外面の一部には、上記実施形態と同様のリブが形成されている。
【0060】
本変形例に係るトラップ装置でも、上記実施形態に係るトラップ装置1と同様の効果を得ることができる。
【0061】
なお、
図6(a)に示すようなフロート21とは別に、Z方向に扁平なフロート(Z方向の高さがX方向およびY方向の寸法よりも低いフロート)を採用することもできる。
【0062】
[変形例2]
変形例2に係るトラップ装置について、
図6(b)を用いて説明する。なお、
図6(b)では、上記実施形態との主な差異点であるフロート23だけを抜き出して図示している。図示を省略する部分については、上記実施形態と同様である。
【0063】
図6(b)に示すように、本変形例では、1つのピース231だけでフロート23が構成されている。ピース231の上面および側面には、上記実施形態と同様のリブが形成されている。
【0064】
本変形例に係るトラップ装置でも、上記実施形態に係るトラップ装置1と同様の効果を得ることができる。
【0065】
なお、
図6(b)に示すような正六面体の外観形状を有するフロート23とは別に、Z方向に長いフロートやZ方向に扁平なフロートを1つのピースをもって構成することもできる。
【0066】
[変形例3]
変形例3に係るトラップ装置について、
図7(a)を用いて説明する。なお、
図7(a)では、上記実施形態との主な差異点であるフロート24の下面24bだけを図示している。図示を省略する部分については、上記実施形態と同様である。
【0067】
図7(a)に示すように、本変形例では、ピース243,244,247,248の下面によって構成されるフロート24の下面24bにリブ243r,244r,247r,248rが形成されている。リブ243r,244r,247r,248rのそれぞれは、第1要素243r1,244r1,247r1,248r1と第2要素243r2,244r2,247r2,248r2との組み合わせによって構成されている。フロート24の下面24bに形成されたリブ243r,244r,247r,248rは、ケーシング10の弁座10iに干渉しない位置に配置されている。即ち、フロート24が上下動の下限まで降下した際に、フロート24の下面24bにおけるリブ243r,244r,247r,248rが形成されていない平面部分が弁座10iに面接触する。これにより、フロート24の剛性を更に高めながら、弁孔10eのシール性を高く維持することができる。
【0068】
なお、本変形例に係るトラップ装置でも、上記実施形態に係るトラップ装置1と同様の効果を得ることができる。
【0069】
[変形例4]
変形例4に係るトラップ装置について、
図7(b)を用いて説明する。なお、
図7(b)では、上記実施形態との主な差異点であるフロート25の下面25bだけを図示している。図示を省略する部分については、上記実施形態と同様である。
【0070】
図7(b)に示すように、本変形例でも、上記変形例3と同様に、ピース253,254,257,258の下面によって構成されるフロート25の下面25bにリブ253r,254r,257r,258rが形成されている。また、詳細な図示を省略しているが、ケーシング10は、4つの弁座10i1,10i2,10i3,10i4と4つの弁孔10e1,10e2,10e3,10e4を有する。X方向およびY方向において、弁座10i1,10i2,10i3,10i4および弁孔10e1,10e2,10e3,10e4は、ピース253,254,257,258の下面の略中心位置に対応する位置に配されている。
【0071】
各ピース253,254,257,258の各下面におけるリブ253r,254r,257r,258rは、弁座10i1,10i2,10i3,10i4が接触する部分の周囲に放射状に形成されている。
【0072】
本変形例に係るトラップ装置でも、上記変形例3に係るトラップ装置と同様に、フロート25の剛性を更に高めながら、弁孔10e1,10e2,10e3,10e4のシール性を高く維持することができる。
【0073】
なお、本変形例に係るトラップ装置でも、上記実施形態に係るトラップ装置1と同様の効果を得ることができる。
【0074】
[その他の変形例]
上記実施形態に係るトラップ装置1や各変形例1~4に係るトラップ装置では、スクリーン30およびエアベント40、さらにはエアベントプラグ50を備えることとしたが、本発明では、スクリーン30、エアベント40、およびエアベントプラグ50は必須の構成ではない。
【0075】
上記実施形態に係るトラップ装置1や各変形例1~4に係るトラップ装置では、外面の一部にX字形状のリブ201r,202r,203r,204r,205r,206r,207r,208r,243r,244r,247r,248r,253r,254r,257r,258rを有するフロート20,21,23,24,25を採用することとしたが、本発明では、リブの形状はX字形状に限定されるものではない。例えば、フロートの外面における外辺に沿う直線状のリブや、平面視円形のリブなどを採用することもできる。
【0076】
また、上記実施形態に係るトラップ装置1や各変形例1~4に係るトラップ装置では、各ピース201~208,211~220,231,243,244,247,248,253,254,257,258の具体的な形成方法については言及しなかったが、種々の方法で形成することができる。例えば、金属板材同士を溶接や接着剤などを接合することで形成してもよいし、AM法(Aditive Manufacturing法)を用いて形成してもよい。
【0077】
また、上記実施形態に係るトラップ装置1や各変形例1~4に係るトラップ装置では、弁孔10e,10e1~10e4と流出部10cとを内部連通路10hで繋ぐこととしたが、本発明では必ずしもこれに限定されない。例えば、ケーシング10の外に配設されたパイプなどで弁孔と流出部とを繋いでもよい。
【符号の説明】
【0078】
1 トラップ装置
10 ケーシング
10a 収容室
10e 弁孔
10g 側壁内面
10h 内部連通路(連通路)
10i 弁座
20,21,23,24,25 フロート
20b,24b,25b 下面
201~208,211~220,231,243,244,247,248,253,254,257,258 ピース
201r,202r,203r,204r,205r,206r,207r,208r,243r,244r,247r,248r,253r,254r,257r,258r リブ
【手続補正書】
【提出日】2023-11-15
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸気を含む流体から復水を排出するトラップ装置であって、
前記流体の流入部、前記復水の流出部、および前記流入部からの前記流体が導き入れられる収容室を有するケーシングと、
前記ケーシングの前記収容室に収容され、当該収容室内の前記復水の量に応じて上下動可能なフロートと、
を備え、
前記ケーシングは、前記流出部と前記収容室とを連通する連通路と、当該ケーシングの底壁内面よりも上方に位置し、且つ、前記フロートの下面と接触可能な弁座と、前記連通路における前記収容室側の端部であって、前記弁座に開口された弁孔とを更に有し、
前記フロートは、六面体の外観形状を有するように形成され、前記下面における前記弁座との接触領域を除く部分にリブを有し、
前記フロートの前記接触領域は、平面で構成されており、
前記弁座は、前記フロートの前記接触領域と平行な平面で構成され、前記フロートの前記接触領域との平面同士の面接触により前記弁孔を閉弁する、
トラップ装置。
【請求項2】
前記フロートは、正六面体の外観形状を有する、
請求項1に記載のトラップ装置。
【請求項3】
前記フロートは、それぞれが六面体の外観形状を有し、互いに接合された複数のピースを有する、
請求項1または請求項2に記載のトラップ装置。
【請求項4】
前記リブは、前記複数のピースのそれぞれにおける、互いの接合面および前記下面の前記接触領域を除く部分に形成されており、各面における対角線に沿って延びるように形成されている、
請求項3に記載のトラップ装置。
【請求項5】
前記ケーシングにおける前記収容室は、前記フロートが上下動する上下方向に対して直交する方向での断面が、前記フロートの上下動を許容しつつ当該フロートの前記上下方向に対する傾きを抑制するように矩形状に形成されている、
請求項1または請求項2に記載のトラップ装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0010
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0010】
本態様に係るトラップ装置において、前記ケーシングは、前記流出部と前記収容室とを連通する連通路と、当該ケーシングの底壁内面よりも上方に位置し、且つ、前記フロートの下面と接触可能な弁座と、前記連通路における前記収容室側の端部であって、前記弁座に開口された弁孔とを更に有する。また、前記フロートは、六面体の外観形状を有するように形成され、前記下面における前記弁座との接触領域を除く部分にリブを有する。前記フロートの前記接触領域は、平面で構成されている。そして、前記弁座は、前記フロートの前記接触領域と平行な平面で構成され、前記フロートの前記接触領域との平面同士の面接触により閉弁する。
【手続補正3】
【補正対象書類名】図面
【補正方法】変更
【補正の内容】