(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024105045
(43)【公開日】2024-08-06
(54)【発明の名称】弾性波装置
(51)【国際特許分類】
H03H 9/145 20060101AFI20240730BHJP
H03H 9/64 20060101ALI20240730BHJP
【FI】
H03H9/145 Z
H03H9/64 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023009570
(22)【出願日】2023-01-25
(71)【出願人】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001232
【氏名又は名称】弁理士法人大阪フロント特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡田 拓郎
(72)【発明者】
【氏名】中村 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】薮 拓也
【テーマコード(参考)】
5J097
【Fターム(参考)】
5J097AA14
5J097BB11
5J097DD01
5J097DD03
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5J097DD10
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5J097EE08
5J097KK03
5J097KK06
5J097KK09
5J097KK10
(57)【要約】 (修正有)
【課題】高調波歪を抑制する弾性波装置を提供する。
【解決手段】弾性波装置10は、圧電性基板2の圧電体層6上に、平面視で曲線状の形状を有する各々複数の電極指16A、16B、17A、17Bを有する複数の曲線状IDT電極を備える。電極指の曲線状の形状の部分の凸となっている方向が、曲線状の形状の部分の外側方向である。複数の曲線状IDT電極は、第1、第2のIDT電極8A、8Bを含み、複数の弾性波共振子は、第1のIDT電極を含む第1の弾性波共振子1Aと、第2のIDT電極を含む第2の弾性波共振子1Bとを含む。第1、第2の弾性波共振子は、他の弾性波共振子を介さずに接続され、第1、第2のIDT電極において、複数の電極指が並んでいる方向のうち一方を第1の方向D+とし、第1の方向D+と逆の方向を第2の方向D-としたときに、第1のIDT電極の外側方向が第1の方向であり、第2のIDT電極の外側方向が第2の方向である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電体層を有する圧電性基板と、
前記圧電性基板上に設けられており、それぞれ複数の電極指を有する複数のIDT電極と、
を備え、
前記複数のIDT電極が、前記複数の電極指の平面視における形状が曲線状の形状を有する、複数の曲線状IDT電極を含み、
前記曲線状IDT電極における前記電極指の前記曲線状の形状の部分の、前記複数の電極指が並んでいる方向において凸となっている方向が、前記曲線状の形状の部分の外側方向であり、
前記複数のIDT電極が第1のIDT電極及び第2のIDT電極を含み、前記第1のIDT電極及び前記第2のIDT電極がいずれも前記曲線状IDT電極であり、
それぞれ前記IDT電極を含む複数の弾性波共振子が構成されており、前記複数の弾性波共振子が、前記第1のIDT電極を含む第1の弾性波共振子と、前記第2のIDT電極を含む第2の弾性波共振子と、を含み、
前記第1の弾性波共振子及び前記第2の弾性波共振子が、他の前記弾性波共振子を介さずに接続されており、前記第1のIDT電極及び前記第2のIDT電極において、前記複数の電極指が並んでいる方向のうち一方を第1の方向とし、前記第1の方向と逆の方向を第2の方向としたときに、前記第1のIDT電極における前記外側方向が前記第1の方向であり、前記第2のIDT電極の前記外側方向が前記第2の方向である、弾性波装置。
【請求項2】
圧電体層を有する圧電性基板と、
前記圧電性基板上に設けられており、それぞれ複数の電極指を有する複数のIDT電極と、
を備え、
前記複数のIDT電極が、前記複数の電極指の平面視における形状が曲線状の形状を有する、複数の曲線状IDT電極を含み、
前記複数のIDT電極が第1のIDT電極及び第2のIDT電極を含み、前記第1のIDT電極及び前記第2のIDT電極がいずれも前記曲線状IDT電極であり、
それぞれ前記IDT電極を含む複数の弾性波共振子が構成されており、前記複数の弾性波共振子が、前記第1のIDT電極を含む第1の弾性波共振子と、前記第2のIDT電極を含む第2の弾性波共振子と、を含み、
前記第1の弾性波共振子及び前記第2の弾性波共振子が、他の前記弾性波共振子を介さずに接続されており、前記第1のIDT電極及び前記第2のIDT電極において、前記複数の電極指が並んでいる方向のうち一方を第1の方向とし、前記第1の方向と逆の方向を第2の方向としたときに、前記第1のIDT電極において、前記第1の方向に向かうにつれて前記電極指の長さが長くなっており、前記第2のIDT電極において、前記第2の方向に向かうにつれて前記電極指の長さが長くなっている、弾性波装置。
【請求項3】
圧電体層を有する圧電性基板と、
前記圧電性基板上に設けられており、それぞれ複数の電極指を有する複数のIDT電極と、
を備え、
前記複数のIDT電極が、前記複数の電極指の平面視における形状が曲線状の形状を有する、複数の曲線状IDT電極を含み、
前記曲線状IDT電極における前記電極指の前記曲線状の形状の部分の、前記複数の電極指が並んでいる方向において凸となっている方向が、前記曲線状の形状の部分の外側方向であり、
前記複数のIDT電極が第1のIDT電極及び第2のIDT電極を含み、前記第1のIDT電極及び前記第2のIDT電極がいずれも前記曲線状IDT電極であり、
前記第1のIDT電極及び前記第2のIDT電極において、前記複数の電極指が並んでいる方向のうち一方を第1の方向とし、前記第1の方向と逆の方向を第2の方向としたときに、前記第1のIDT電極が、前記外側方向が前記第1の方向である少なくとも1つの第1の領域と、前記外側方向が前記第2の方向である少なくとも1つの第2の領域と、を有し、前記第2のIDT電極が、少なくとも、前記外側方向が前記第2の方向である領域を有し、
それぞれ前記IDT電極を含む複数の弾性波共振子が構成されており、前記複数の弾性波共振子が、前記第1のIDT電極を含む第1の弾性波共振子と、前記第2のIDT電極を含む第2の弾性波共振子と、を含み、
前記第1の弾性波共振子及び前記第2の弾性波共振子が、他の前記弾性波共振子を介さずに接続されており、前記第1のIDT電極において、前記第1の領域の面積の合計が前記第2の領域の面積の合計よりも大きく、かつ前記第2のIDT電極において、前記外側方向が前記第2の方向である領域の面積の合計が、前記外側方向が前記第1の方向である領域の面積の合計よりも大きい、弾性波装置。
【請求項4】
圧電体層を有する圧電性基板と、
前記圧電性基板上に設けられており、それぞれ複数の電極指を有する複数のIDT電極と、
を備え、
前記複数のIDT電極が、前記複数の電極指の平面視における形状が曲線状の形状を有する、複数の曲線状IDT電極を含み、
前記曲線状IDT電極における前記電極指の前記曲線状の形状の部分の、前記複数の電極指が並んでいる方向において凸となっている方向が、前記曲線状の形状の部分の外側方向であり、
前記複数のIDT電極が第1のIDT電極及び第2のIDT電極を含み、前記第1のIDT電極及び前記第2のIDT電極がいずれも前記曲線状IDT電極であり、
前記第1のIDT電極及び前記第2のIDT電極において、前記複数の電極指が並んでいる方向のうち一方を第1の方向とし、前記第1の方向と逆の方向を第2の方向としたときに、前記第1のIDT電極が、前記外側方向が前記第1の方向である少なくとも1つの第1の領域と、前記外側方向が前記第2の方向である少なくとも1つの第2の領域と、を有し、前記第2のIDT電極が、少なくとも、前記外側方向が前記第2の方向である領域を有し、
それぞれ前記IDT電極を含む複数の弾性波共振子が構成されており、前記複数の弾性波共振子が、前記第1のIDT電極を含む第1の弾性波共振子と、前記第2のIDT電極を含む第2の弾性波共振子と、を含み、
前記第1の弾性波共振子及び前記第2の弾性波共振子が、他の前記弾性波共振子を介さずに接続されており、前記第1のIDT電極において、前記第1の領域の面積の合計が前記第2の領域の面積の合計よりも大きく、前記第1のIDT電極において、前記第1の方向及び前記第2の方向のうち一方に向かうにつれて前記電極指の長さが長くなっており、前記第2のIDT電極において、前記第1の方向及び前記第2の方向のうち他方に向かうにつれて前記電極指の長さが長くなっている、弾性波装置。
【請求項5】
前記複数の弾性波共振子が、前記第1の弾性波共振子及び前記第2の弾性波共振子の双方と、他の前記弾性波共振子を介さずに接続されている少なくとも1つの第3の弾性波共振子を含み、
前記複数のIDT電極が少なくとも1つの第3のIDT電極を含み、前記第3の弾性波共振子が前記第3のIDT電極を含み、前記第3のIDT電極が前記曲線状IDT電極であり、前記第3のIDT電極における前記外側方向が前記第1の方向及び前記第2の方向のうち一方であり、
前記第1のIDT電極、前記第2のIDT電極及び前記少なくとも1つの第3のIDT電極において、前記外側方向が前記第1の方向である前記IDT電極の個数の合計が、前記外側方向が前記第2の方向である前記IDT電極の個数の合計以上であり、
前記第1の弾性波共振子、前記第2の弾性波共振子及び前記少なくとも1つの第3の弾性波共振子のうち、前記第2の弾性波共振子の静電容量が最も小さい、請求項1に記載の弾性波装置。
【請求項6】
前記複数の弾性波共振子が、前記第1の弾性波共振子及び前記第2の弾性波共振子の双方と、他の前記弾性波共振子を介さずに接続されている少なくとも1つの第3の弾性波共振子を含み、
前記複数のIDT電極が少なくとも1つの第3のIDT電極を含み、前記第3の弾性波共振子が前記第3のIDT電極を含み、前記第3のIDT電極が前記曲線状IDT電極であり、前記第3のIDT電極における前記外側方向が前記第1の方向及び前記第2の方向のうち一方であり、
前記第1のIDT電極、前記第2のIDT電極及び前記少なくとも1つの第3のIDT電極において、前記外側方向が前記第1の方向である前記IDT電極の個数の合計が、前記外側方向が前記第2の方向である前記IDT電極の個数の合計以上であり、
前記第1のIDT電極、前記第2のIDT電極及び前記少なくとも1つの第3のIDT電極のうち、前記第2のIDT電極の前記複数の電極指の対数が最も多い、請求項1に記載の弾性波装置。
【請求項7】
前記曲線状IDT電極における前記電極指の前記曲線状の形状の部分の、前記複数の電極指が並んでいる方向において凸となっている方向が、前記曲線状の形状の部分の外側方向であり、
前記第1のIDT電極における前記外側方向が前記第1の方向及び前記第2の方向のうち一方であり、前記第2のIDT電極の前記外側方向が前記第1の方向及び前記第2の方向のうち他方である、請求項2に記載の弾性波装置。
【請求項8】
前記複数の弾性波共振子が、前記第1の弾性波共振子及び前記第2の弾性波共振子の双方と、他の前記弾性波共振子を介さずに接続されている少なくとも1つの第3の弾性波共振子を含み、
前記複数のIDT電極が少なくとも1つの第3のIDT電極を含み、前記第3の弾性波共振子が前記第3のIDT電極を含み、前記第3のIDT電極が前記曲線状IDT電極であり、前記第3のIDT電極において、前記第1の方向及び前記第2の方向のうち一方に向かうにつれて前記電極指の長さが長くなっており、
前記第1のIDT電極、前記第2のIDT電極及び前記少なくとも1つの第3のIDT電極において、前記第1の方向に向かうにつれて前記電極指が長くなっている前記IDT電極の個数の合計が、前記第2の方向に向かうにつれて前記電極指が長くなっている前記IDT電極の個数の合計以上であり、
前記第1の弾性波共振子、前記第2の弾性波共振子及び前記少なくとも1つの第3の弾性波共振子のうち、前記第2の弾性波共振子の静電容量が最も小さい、請求項2に記載の弾性波装置。
【請求項9】
前記複数の弾性波共振子が、前記第1の弾性波共振子及び前記第2の弾性波共振子の双方と、他の前記弾性波共振子を介さずに接続されている少なくとも1つの第3の弾性波共振子を含み、
前記複数のIDT電極が少なくとも1つの第3のIDT電極を含み、前記第3の弾性波共振子が前記第3のIDT電極を含み、前記第3のIDT電極が前記曲線状IDT電極であり、前記第3のIDT電極において、前記第1の方向及び前記第2の方向のうち一方に向かうにつれて前記電極指の長さが長くなっており、
前記第1のIDT電極、前記第2のIDT電極及び前記少なくとも1つの第3のIDT電極において、前記第1の方向に向かうにつれて前記電極指が長くなっている前記IDT電極の個数の合計が、前記第2の方向に向かうにつれて前記電極指が長くなっている前記IDT電極の個数の合計以上であり、
前記第1のIDT電極、前記第2のIDT電極及び前記少なくとも1つの第3のIDT電極のうち、前記第2のIDT電極の前記複数の電極指の対数が最も多い、請求項2に記載の弾性波装置。
【請求項10】
前記第1のIDT電極の形状及び前記第2のIDT電極の形状が線対称の関係である、請求項1または2に記載の弾性波装置。
【請求項11】
前記第1のIDT電極及び前記第2のIDT電極の形状が同じであり、
前記圧電性基板上において、前記第2のIDT電極の配置が、前記第1のIDT電極が180°回転した配置に相当する、請求項1または2に記載の弾性波装置。
【請求項12】
前記第1の弾性波共振子の静電容量及び前記第2の弾性波共振子の静電容量の差が、0.35pF以下である、請求項1または2に記載の弾性波装置。
【請求項13】
前記圧電体層の材料としてX伝搬の圧電体が用いられており、
前記第1の方向が、X伝搬の方向における正の方向及び負の方向のうち一方であり、前記第2の方向が、X伝搬の方向における正の方向及び負の方向のうち他方である、請求項1~4のいずれか1項に記載の弾性波装置。
【請求項14】
前記圧電性基板が支持基板を有し、
前記支持基板上に前記圧電体層が設けられている、請求項1~4のいずれか1項に記載の弾性波装置。
【請求項15】
前記圧電性基板が、前記支持基板及び前記圧電体層の間に設けられている中間層を有する、請求項14に記載の弾性波装置。
【請求項16】
前記圧電性基板において中空部が構成されており、前記支持基板の一部と、前記圧電体層の一部とが、前記中空部を挟み互いに対向している、請求項14に記載の弾性波装置。
【請求項17】
前記圧電性基板が前記圧電体層のみからなる、請求項1~4のいずれか1項に記載の弾性波装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の弾性波共振子を有する弾性波装置に関する。
【0002】
従来、弾性波装置が、携帯電話機のフィルタなどに広く用いられている。下記の特許文献1には、弾性波装置の一例が開示されている。この弾性波装置においては、圧電基板上にIDT(Interdigital Transducer)電極が設けられている。IDT電極においては、複数の電極指の形状は円弧の形状である。より具体的には、複数の電極指の形状は、複数の同心円におけるそれぞれの円弧に相当する形状である。特許文献1の弾性波装置においては、不要波の抑制が図られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】中国特許出願公開第113676149号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者らは、複数の電極指が曲線状とされた場合においては、高調波歪が生じ易いことを見出した。これに起因して、弾性波装置の電気的特性の劣化が生じるおそれがある。
【0005】
本発明の目的は、高調波歪を抑制することができる、弾性波装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る弾性波装置のある広い局面では、圧電体層を有する圧電性基板と、前記圧電性基板上に設けられており、それぞれ複数の電極指を有する複数のIDT電極とが備えられており、前記複数のIDT電極が、前記複数の電極指の平面視における形状が曲線状の形状を有する、複数の曲線状IDT電極を含み、前記曲線状IDT電極における前記電極指の前記曲線状の形状の部分の、前記複数の電極指が並んでいる方向において凸となっている方向が、前記曲線状の形状の部分の外側方向であり、前記複数のIDT電極が第1のIDT電極及び第2のIDT電極を含み、前記第1のIDT電極及び前記第2のIDT電極がいずれも前記曲線状IDT電極であり、それぞれ前記IDT電極を含む複数の弾性波共振子が構成されており、前記複数の弾性波共振子が、前記第1のIDT電極を含む第1の弾性波共振子と、前記第2のIDT電極を含む第2の弾性波共振子とを含み、前記第1の弾性波共振子及び前記第2の弾性波共振子が、他の前記弾性波共振子を介さずに接続されており、前記第1のIDT電極及び前記第2のIDT電極において、前記複数の電極指が並んでいる方向のうち一方を第1の方向とし、前記第1の方向と逆の方向を第2の方向としたときに、前記第1のIDT電極における前記外側方向が前記第1の方向であり、前記第2のIDT電極の前記外側方向が前記第2の方向である。
【0007】
本発明に係る弾性波装置の他の広い局面では、圧電体層を有する圧電性基板と、前記圧電性基板上に設けられており、それぞれ複数の電極指を有する複数のIDT電極とが備えられており、前記複数のIDT電極が、前記複数の電極指の平面視における形状が曲線状の形状を有する、複数の曲線状IDT電極を含み、前記複数のIDT電極が第1のIDT電極及び第2のIDT電極を含み、前記第1のIDT電極及び前記第2のIDT電極がいずれも前記曲線状IDT電極であり、それぞれ前記IDT電極を含む複数の弾性波共振子が構成されており、前記複数の弾性波共振子が、前記第1のIDT電極を含む第1の弾性波共振子と、前記第2のIDT電極を含む第2の弾性波共振子とを含み、前記第1の弾性波共振子及び前記第2の弾性波共振子が、他の前記弾性波共振子を介さずに接続されており、前記第1のIDT電極及び前記第2のIDT電極において、前記複数の電極指が並んでいる方向のうち一方を第1の方向とし、前記第1の方向と逆の方向を第2の方向としたときに、前記第1のIDT電極において、前記第1の方向に向かうにつれて前記電極指の長さが長くなっており、前記第2のIDT電極において、前記第2の方向に向かうにつれて前記電極指の長さが長くなっている。
【0008】
本発明に係る弾性波装置のさらに他の広い局面では、圧電体層を有する圧電性基板と、前記圧電性基板上に設けられており、それぞれ複数の電極指を有する複数のIDT電極とが備えられており、前記複数のIDT電極が、前記複数の電極指の平面視における形状が曲線状の形状を有する、複数の曲線状IDT電極を含み、前記曲線状IDT電極における前記電極指の前記曲線状の形状の部分の、前記複数の電極指が並んでいる方向において凸となっている方向が、前記曲線状の形状の部分の外側方向であり、前記複数のIDT電極が第1のIDT電極及び第2のIDT電極を含み、前記第1のIDT電極及び前記第2のIDT電極がいずれも前記曲線状IDT電極であり、前記第1のIDT電極及び前記第2のIDT電極において、前記複数の電極指が並んでいる方向のうち一方を第1の方向とし、前記第1の方向と逆の方向を第2の方向としたときに、前記第1のIDT電極が、前記外側方向が前記第1の方向である少なくとも1つの第1の領域と、前記外側方向が前記第2の方向である少なくとも1つの第2の領域とを有し、前記第2のIDT電極が、少なくとも、前記外側方向が前記第2の方向である領域を有し、それぞれ前記IDT電極を含む複数の弾性波共振子が構成されており、前記複数の弾性波共振子が、前記第1のIDT電極を含む第1の弾性波共振子と、前記第2のIDT電極を含む第2の弾性波共振子とを含み、前記第1の弾性波共振子及び前記第2の弾性波共振子が、他の前記弾性波共振子を介さずに接続されており、前記第1のIDT電極において、前記第1の領域の面積の合計が前記第2の領域の面積の合計よりも大きく、かつ前記第2のIDT電極において、前記外側方向が前記第2の方向である領域の面積の合計が、前記外側方向が前記第1の方向である領域の面積の合計よりも大きい。
【0009】
本発明に係る弾性波装置のさらに他の広い局面では、圧電体層を有する圧電性基板と、前記圧電性基板上に設けられており、それぞれ複数の電極指を有する複数のIDT電極とが備えられており、前記複数のIDT電極が、前記複数の電極指の平面視における形状が曲線状の形状を有する、複数の曲線状IDT電極を含み、前記曲線状IDT電極における前記電極指の前記曲線状の形状の部分の、前記複数の電極指が並んでいる方向において凸となっている方向が、前記曲線状の形状の部分の外側方向であり、前記複数のIDT電極が第1のIDT電極及び第2のIDT電極を含み、前記第1のIDT電極及び前記第2のIDT電極がいずれも前記曲線状IDT電極であり、前記第1のIDT電極及び前記第2のIDT電極において、前記複数の電極指が並んでいる方向のうち一方を第1の方向とし、前記第1の方向と逆の方向を第2の方向としたときに、前記第1のIDT電極が、前記外側方向が前記第1の方向である少なくとも1つの第1の領域と、前記外側方向が前記第2の方向である少なくとも1つの第2の領域とを有し、前記第2のIDT電極が、少なくとも、前記外側方向が前記第2の方向である領域を有し、それぞれ前記IDT電極を含む複数の弾性波共振子が構成されており、前記複数の弾性波共振子が、前記第1のIDT電極を含む第1の弾性波共振子と、前記第2のIDT電極を含む第2の弾性波共振子とを含み、前記第1の弾性波共振子及び前記第2の弾性波共振子が、他の前記弾性波共振子を介さずに接続されており、前記第1のIDT電極において、前記第1の領域の面積の合計が前記第2の領域の面積の合計よりも大きく、前記第1のIDT電極において、前記第1の方向及び前記第2の方向のうち一方に向かうにつれて前記電極指の長さが長くなっており、前記第2のIDT電極において、前記第1の方向及び前記第2の方向のうち他方に向かうにつれて前記電極指の長さが長くなっている。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る弾性波装置によれば、高調波歪を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る弾性波装置の模式的平面図である。
【
図2】
図1中のI-I線に沿う模式的断面図である。
【
図3】本発明の第1の実施形態における第1のIDT電極の構成を説明するための模式的平面図である。
【
図4】比較例の弾性波共振子の模式的平面図である。
【
図5】本発明の第1の実施形態及び比較例における二次高調波歪のレベルを示す図である。
【
図6】直線状IDT電極における2次歪電流の流れを説明するための模式的平面図である。
【
図7】本発明の第1の実施形態と同様に配置された2個の曲線状IDT電極における2次歪電流の流れを説明するための、模式的平面図である。
【
図8】本発明の第1の実施形態の変形例に係る弾性波装置の略図的平面図である。
【
図9】本発明の第1の実施形態の変形例と同様に配置された2個の曲線状IDT電極における2次歪電流の流れを説明するための、模式的平面図である。
【
図10】本発明の第2の実施形態における第1の弾性波共振子の構成を説明するための模式的平面図である。
【
図11】本発明の第2の実施形態に係る弾性波装置の略図的平面図である。
【
図12】本発明の第2の実施形態における第1のIDT電極の、角度θ
Cの絶対値|θ
C|と、デューティ比との関係を示す図である。
【
図13】本発明の第2の実施形態の第1の変形例における第1のIDT電極の構成を説明するための模式的平面図である。
【
図14】本発明の第2の実施形態の第2の変形例における第1のIDT電極の模式的平面図である。
【
図15】本発明の第2の実施形態の第2の変形例における第1のIDT電極の構成を説明するための模式的平面図である。
【
図16】本発明の第2の実施形態の第3の変形例に係る弾性波装置の模式的平面図である。
【
図17】本発明の第2の実施形態の第4の変形例に係る弾性波装置の模式的平面図である。
【
図18】本発明の第2の実施形態の第5の変形例に係る弾性波装置の略図的平面図である。
【
図19】本発明の第2の実施形態の第6の変形例に係る弾性波装置の略図的平面図である。
【
図20】本発明の第3の実施形態に係る弾性波装置の模式的平面図である。
【
図21】本発明の第4の実施形態に係る弾性波装置の模式的平面図である。
【
図22】本発明の第4の実施形態における第1のIDT電極の構成を説明するための模式的平面図である。
【
図23】本発明の第4の実施形態の変形例に係る弾性波装置の略図的平面図である。
【
図24】本発明の第5の実施形態に係る弾性波装置の模式的正面断面図である。
【
図25】本発明の第5の実施形態の第1の変形例に係る弾性波装置の模式的正面断面図である。
【
図26】本発明の第5の実施形態の第2の変形例に係る弾性波装置の模式的正面断面図である。
【
図27】本発明の第6の実施形態に係る弾性波装置の模式的正面断面図である。
【
図28】本発明の第7の実施形態に係る弾性波装置の模式的正面断面図である。
【
図29】本発明の第7の実施形態の第1の変形例に係る弾性波装置の模式的正面断面図である。
【
図30】本発明の第7の実施形態の第2の変形例に係る弾性波装置の模式的正面断面図である。
【
図31】本発明の第7の実施形態の第3の変形例に係る弾性波装置の模式的正面断面図である。
【
図32】本発明の第8の実施形態に係る弾性波装置の回路図である。
【
図33】本発明の第8の実施形態における、複数の並列腕共振子及び複数の直列腕共振子を示す略図的平面図である。
【
図34】本発明の第8の実施形態の第1の変形例における、並列腕共振子及び直列腕共振子を示す略図的平面図である。
【
図35】本発明の第8の実施形態の第2の変形例における、並列腕共振子及び直列腕共振子を示す略図的平面図である。
【
図36】本発明の第9の実施形態に係る弾性波装置の回路図である。
【
図37】本発明の第9の実施形態における、複数の直列腕共振子を示す略図的平面図である。
【
図38】本発明の第9の実施形態の変形例における、複数の直列腕共振子を示す略図的平面図である。
【
図39】本発明の第10の実施形態における、並列腕共振子及び複数の直列腕共振子を示す略図的平面図である。
【
図40】本発明の第11の実施形態における、並列腕共振子及び複数の直列腕共振子を示す略図的平面図である。
【
図41】本発明の第12の実施形態に係る弾性波装置の回路図である。
【
図42】本発明の第12の実施形態における複数の並列腕共振子及び複数の直列腕共振子を示す略図的平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しつつ、本発明の具体的な実施形態を説明することにより、本発明を明らかにする。
【0013】
なお、本明細書に記載の各実施形態は、例示的なものであり、異なる実施形態間において、構成の部分的な置換または組み合わせが可能であることを指摘しておく。
【0014】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る弾性波装置の模式的平面図である。
図2は、
図1中のI-I線に沿う模式的断面図である。なお、
図1においては、後述するバスバーと配線との境界を一点鎖線により示す。
図1以外の模式的平面図においても同様である。
【0015】
図1に示す弾性波装置10は、フィルタ装置の一部として用いられる。弾性波装置10は、第1の弾性波共振子1Aと、第2の弾性波共振子1Bとを有する。もっとも、本発明に係る弾性波装置はフィルタ装置であってもよい。本発明に係る弾性波装置は、少なくとも2つの弾性波共振子を有していればよい。
【0016】
図2に示すように、弾性波装置10は圧電性基板2を有する。圧電性基板2は、圧電体層6を含む積層基板である。すなわち、圧電性基板2は、圧電性を有する基板である。具体的には、圧電性基板2は、支持部材3と、圧電体層6とを有する。より具体的には、支持部材3は、支持基板4と、中間層5とを有する。中間層5は第1の層5a及び第2の層5bを含む。支持基板4上に第1の層5aが設けられている。第1の層5a上に第2の層5bが設けられている。第2の層5b上に圧電体層6が設けられている。なお、圧電性基板2の層構成は上記に限定されない。例えば、中間層5は単層の誘電体層であってもよい。あるいは、圧電性基板2は、圧電体層6のみからなる基板であってもよい。
【0017】
本実施形態では、支持基板4の材料としてシリコンが用いられている。第1の層5aの材料として窒化ケイ素が用いられている。第2の層5bの材料として酸化ケイ素が用いられている。圧電体層6の材料として回転YカットX伝搬のタンタル酸リチウムが用いられている。もっとも、圧電性基板2の各層の材料は上記に限定されない。
【0018】
圧電体層6は、第1の主面6a及び第2の主面6bを有する。第1の主面6a及び第2の主面6bは互いに対向している。第1の主面6a及び第2の主面6bのうち第2の主面6bが、支持基板4側に位置している。圧電体層6の第1の主面6aに、第1のIDT電極8Aが設けられている。これにより、第1の弾性波共振子1Aが構成されている。
【0019】
図1に戻り、第1のIDT電極8Aは1対のバスバーを有する。1対のバスバーは、具体的には、第1のバスバー14A及び第2のバスバー15Aである。第1のバスバー14A及び第2のバスバー15Aは互いに対向している。複数の第1の電極指16Aの一方端がそれぞれ、第1のバスバー14Aに接続されている。複数の第2の電極指17Aの一方端がそれぞれ、第2のバスバー15Aに接続されている。なお、複数の第1の電極指16A及び複数の第2の電極指17Aはそれぞれ、基端部及び先端部を含む。第1の電極指16Aの基端部は、第1のバスバー14Aに接続されている部分である。第2の電極指17Aの基端部は、第2のバスバー15Aに接続されている部分である。複数の第1の電極指16A及び複数の第2の電極指17Aは、互いに間挿し合っている。第1の電極指16A及び第2の電極指17Aは、互いに異なる電位に接続される。
【0020】
以下においては、第1の電極指16A及び第2の電極指17Aを、単に電極指と記載することがある。第1のバスバー14A及び第2のバスバー15Aを、単にバスバーと記載することがある。
【0021】
第1のIDT電極8Aの複数の第2の電極指17Aの先端を結ぶことにより形成される仮想線を第1の包絡線H1、複数の第1の電極指16Aの先端を結ぶことにより形成される仮想線を第2の包絡線H2とする。第1の包絡線H1及び第2の包絡線H2の間の領域が、第1のIDT電極8Aの交叉領域Fである。より具体的には、複数の電極指のうち、複数の電極指が並ぶ方向における一方端の電極指と、他方端の電極指と、第1の包絡線H1と、第2の包絡線H2とに囲まれた領域が、交叉領域Fである。よって、第1の包絡線H1は、交叉領域Fの第1のバスバー14A側の端縁部に相当する。第2の包絡線H2は、交叉領域Fの第2のバスバー15A側の端縁部に相当する。第1のIDT電極8Aに交流電圧を印加することにより、交叉領域Fにおいて弾性波が励振される。
【0022】
弾性波装置10における第1のIDT電極8Aにおいては、電極指ピッチは一定である。IDT電極の電極指ピッチとは、隣り合う第1の電極指16A及び第2の電極指17Aの中心間距離である。電極指ピッチをpとし、電極指ピッチpにより規定される波長をλとしたときに、波長λは、λ=2pである。
【0023】
図3は、第1の実施形態における第1のIDT電極の構成を説明するための模式的平面図である。
【0024】
第1のIDT電極8Aは、本発明における曲線状IDT電極である。曲線状IDT電極においては、複数の電極指の平面視における形状は、曲線状の形状を有する。本明細書において平面視とは、
図2における上方に相当する方向から見ることをいう。
図2においては、例えば、支持基板4側及び圧電体層6側のうち、圧電体層6側が上方である。
【0025】
図3に示すように、第1のIDT電極8Aにおいては、具体的には、複数の電極指の平面視における形状はそれぞれ、複数の同心円におけるそれぞれの円弧に相当する形状を含む。複数の電極指の形状における円弧を含む円の中心は一致している。該中心を定点Cとする。なお、本実施形態においては、複数の第1の電極指16Aの平面視における形状は、円弧の形状である。他方、複数の第2の電極指17Aの平面視における形状は、円弧の形状及び直線の形状を含む。具体的には、第2の包絡線H2及び第2のバスバー15Aの間の領域においては、複数の第2の電極指17Aの平面視における形状が直線状の形状を有する。該領域以外においては、複数の第2の電極指17Aの平面視における形状は、円弧の形状である。
【0026】
なお、第1のIDT電極8Aの複数の電極指の形状は上記に限定されない。第1のIDT電極8Aの複数の電極指の平面視における形状が、交叉領域Fにおいて、曲線状の形状を含んでいればよい。第1のIDT電極8Aの複数の電極指の平面視における形状は、例えば、楕円弧の形状であってもよく、あるいは、円弧及び楕円弧以外の曲線状の形状であってもよい。
【0027】
電極指の曲線状の形状の部分の、複数の電極指が並んでいる方向において凸となっている方向が、該曲線状の形状の部分の外側方向である。外側方向と逆の方向が内側方向である。そして、複数の電極指が並んでいる方向のうち一方を第1の方向D+としたときに、本実施形態では、
図1における右側の方向が第1の方向D+である。第1の方向D+と逆の方向を第2の方向D-としたときに、
図1における左側の方向が第2の方向D-である。第1の弾性波共振子1Aにおいて、第1のIDT電極8Aの複数の電極指の外側方向は、
図1における右側の方向である。よって、第1のIDT電極8Aの複数の電極指の外側方向は、第1の方向D+である。
【0028】
第1のIDT電極8Aにおいては、第1の包絡線H1及び第2の包絡線H2の間の、第1の方向D+と直交する方向における間隔が、第1の方向D+に向かうにつれて長くなっている。そして、第1のIDT電極8Aにおいては、第1の方向D+に向かうにつれて電極指の長さが長くなっている。
【0029】
本実施形態では、交叉領域Fは1つのみの曲線領域を含む。本明細書において曲線領域とは、複数の電極指の平面視における形状が、曲線状である領域をいう。弾性波装置10の第1のIDT電極8Aの曲線領域においては、平面視における複数の第1の電極指16A及び複数の第2の電極指17Aの形状がそれぞれ、単一の円弧の形状である。なお、例えば、曲線領域においては、平面視における各電極指の形状がそれぞれ、単一の楕円弧の形状であってもよい。曲線領域においては、平面視における全ての電極指における外側方向が一致している。もっとも、本発明においては、交叉領域Fが複数の曲線領域を含んでいてもよい。
【0030】
圧電性基板2上には、第1のIDT電極8A以外のIDT電極も設けられている。具体的には、本実施形態では、
図1に示すように、圧電性基板2上に第2のIDT電極8Bが設けられている。これにより、上記第2の弾性波共振子1Bが構成されている。第2のIDT電極8Bは曲線状IDT電極である。第2のIDT電極8Bの複数の電極指の外側方向は、
図1における左側の方向である。よって、第2のIDT電極8Bの複数の電極指の外側方向は、第2の方向D-である。第2のIDT電極8Bにおいては、第2の方向D-に向かうにつれて電極指の長さが長くなっている。
【0031】
なお、本実施形態においては、第1のIDT電極8A及び第2のIDT電極8Bの形状は同じである。もっとも、圧電性基板2上において、第2のIDT電極8Bの配置が、第1のIDT電極8Aが180°回転した配置に相当する。それによって、第1のIDT電極8Aにおける複数の電極指の外側方向と、第2のIDT電極8Bにおける複数の電極指の外側方向とが互いに異なっている。
【0032】
具体的には、第2のIDT電極8Bは、第1のバスバー14B及び第2のバスバー15B並びに複数の第1の電極指16B及び複数の第2の電極指17Bを有する。第2のIDT電極8Bにおける複数の第1の電極指16Bの形状は、第1のIDT電極8Aにおける複数の第2の電極指17Aの形状と同様の形状である。第2のIDT電極8Bにおける複数の第2の電極指17Bの形状は、第1のIDT電極8Aにおける複数の第1の電極指16Aの形状と同様である。なお、例えば、第1のIDT電極8Aの形状及び第2のIDT電極8Bの形状が線対称の関係であってもよい。
【0033】
このように、第1の弾性波共振子1A及び第2の弾性波共振子1Bにおける第1のIDT電極8A及び第2のIDT電極8Bにおいては、複数の電極指の平面視における形状は曲線状の形状を有する。それによって、第1の弾性波共振子1A及び第2の弾性波共振子1Bの不要波を分散させることができ、不要波を抑制することができる。
【0034】
上記のように、圧電体層6の材料として、YカットX伝搬の圧電体が用いられている。本実施形態においては、第1の方向D+は、X伝搬の方向における正の方向である。第2の方向D-は、X伝搬における負の方向である。もっとも、第1の方向D+及び第2の方向D-と、X伝搬の方向との関係は上記に限定されない。例えば、第1の方向D+が、X伝搬の方向における正の方向及び負の方向のうち一方であり、第2の方向D-が、X伝搬の方向における正の方向及び負の方向のうち他方であればよい。あるいは、第1の方向D+及び第2の方向D-と、X伝搬の方向とが交叉していてもよい。
【0035】
第1の弾性波共振子1Aは1対の反射器9A及び反射器9Bを有する。具体的には、反射器9A及び反射器9Bは、圧電体層6の第1の主面6aに設けられている。反射器9A及び反射器9Bは、第1のIDT電極8Aの複数の電極指が並んでいる方向において、第1のIDT電極8Aを挟み互いに対向している。
【0036】
反射器9A及び反射器9Bはそれぞれ、複数の反射器電極指9cを有する。より具体的には、第1のIDT電極8Aの複数の電極指、及び各反射器の複数の反射器電極指9cの平面視における形状はそれぞれ、複数の同心円におけるそれぞれの円弧に相当する形状である。よって、複数の反射器電極指9cの形状における円弧を含む円の中心は上記定点Cである。もっとも、複数の反射器電極指9cの形状は上記に限定されない。
【0037】
本実施形態の特徴は、第1の弾性波共振子1A及び第2の弾性波共振子1Bが、他の弾性波共振子を介さずに接続されており、第1のIDT電極8Aにおける外側方向が第1の方向D+であり、第2のIDT電極8Bの外側方向が第2の方向D-であることにある。それによって、高調波歪を抑制することができる。この効果を、本実施形態と比較例とを比較することにより、以下において具体的に示す。
【0038】
比較例は、
図4に示すように、第1のIDT電極8Aにおける複数の電極指の外側方向と、第2のIDT電極108Bにおける複数の電極指の外側方向とが同じである点において、第1の実施形態と異なる。第1の実施形態の構成を有する弾性波装置10と、比較例の弾性波装置100とを用意し、各弾性波装置の二次高調波歪(2HD)のレベルを測定した。具体的には、各弾性波装置の共振周波数の信号を入力し、共振周波数の2倍の周波数付近において2次高調波のレベルを測定した。当該比較に係る第1の実施形態の弾性波装置10における第1の弾性波共振子1Aの設計パラメータは、以下の通りである。
【0039】
第1のIDT電極8Aの電極指の対数;80対
第1の包絡線H1及び第2の包絡線H2がなす角の角度;9°
第1の包絡線H1が通る部分におけるデューティ比;0.5
波長λ;2.08μm
交叉領域Fの面積;5516μm2
【0040】
第1の実施形態の弾性波装置10における第2の弾性波共振子1B、並びに比較例の弾性波装置100における第1の弾性波共振子1A及び第2の弾性波共振子101Bの設計パラメータも上記と同様である。各弾性波共振子の共振周波数は1868MHzとした。
【0041】
図5は、第1の実施形態及び比較例における二次高調波歪のレベルを示す図である。
図5では、共振周波数をFrとしたときに2Fr±20[MHz]の範囲を示している。
【0042】
図5に示すように、第1の実施形態においては、2Fr±20[MHz]付近において、比較例よりも2次高調波歪を抑制できていることがわかる。この理由を以下において説明する。
【0043】
図1に戻り、弾性波装置10においては、第1の弾性波共振子1A及び第2の弾性波共振子1Bにおける第1のIDT電極8A及び第2のIDT電極8Bは、曲線状IDT電極である。これにより、弾性波装置10において不要波を抑制することができる。もっとも、本発明者らは、IDT電極の電極指の平面視における形状が直線状である場合と比較して、IDT電極が曲線状IDT電極である場合においては、高調波歪が生じ易いことを見出した。これに対して、第1の実施形態では、第1の弾性波共振子1A及び第2の弾性波共振子1Bが、他の弾性波共振子を介さず直接的に接続されており、かつ第1のIDT電極8Aにおける外側方向及び第2のIDT電極8Bの外側方向が互いに逆の方向である。それによって、2次高調波歪が抑制される。この詳細を以下において説明する。
【0044】
図6は、直線状IDT電極における2次歪電流の流れを説明するための模式的平面図である。
図7は、第1の実施形態と同様に配置された2個の曲線状IDT電極における2次歪電流の流れを説明するための、模式的平面図である。なお、本明細書において直線状IDT電極とは、電極指の平面視における形状が直線状であるIDT電極をいう。
【0045】
図6に示す直線状IDT電極118の複数の電極指は、第1の電極指116M、第2の電極指117L及び第2の電極指117Nを含む。
図6における左側から、第2の電極指117L、第1の電極指116M及び第2の電極指117Nがこの順序において連続して並んでいる。
図6においては、直線状IDT電極118に電圧が印加された際、第1の電極指116Mの電位が、第2の電極指117L及び第2の電極指117Nの電位よりも高いときの例を示す。第1の電極指116Mは第2の電極指117L及び第2の電極指117Nにより挟まれている。そのため、第1の電極指116Mを基準とした電界Eの方向は二方向となっている。
【0046】
ここで、高調波歪のうちの2次高調波歪には、機械的な歪と、電気的な歪とが寄与する。電気的な歪は2次歪電流I2eに起因する。2次歪電流I2eは電界Eの2乗に比例する。そのため、2次歪電流はI2eは、電界Eの方向によらず一定の方向に流れる。例えば、2次歪電流I2eは、第2の電極指117Lから第1の電極指116Mに流入している。同時に、2次歪電流I2eは、第1の電極指116Mから第2の電極指117Nに流出している。
【0047】
2次歪電流I2eの大きさは、電極指の長さに依存する。そして、直線状IDT電極118においては、複数の電極指の長さは同じである。そのため、第1の電極指116Mに流入する2次歪電流I2eの大きさと、第1の電極指116Mから流出する2次歪電流I2eの大きさとは同じである。よって、第1の電極指116Mに流入する2次歪電流I2eと、第1の電極指116Mから流出する2次歪電流I2eとにおいて、不整合は生じ難い。いわば、第1の電極指116Mにおいては、2次歪電流I2eはキャンセルされる。これにより、直線状IDT電極118の外部には、2次歪電流I2eに起因した電流の流出は生じ難い。他の電極指においても同様である。従って、直線状IDT電極118からは、2次高調波歪の信号は出力され難い。
【0048】
一方で、曲線状IDT電極からは、2次歪電流I2eに起因した電流の流出が生じ易い。すなわち、曲線状IDT電極からは、2次高調波歪の信号が出力され易い。
【0049】
より詳細には、
図7に示す曲線状IDT電極128Aにおいては、電極指間に流れる2次歪電流I
2eの大きさが一定ではない。具体的には、曲線状IDT電極128Aにおいては、
図7における右側に向かうにつれて、電極指の長さが長くなっている。例えば、
図7における左側から、第1の電極指126L、第2の電極指127M及び第1の電極指126Nがこの順序において連続して並んでいる。そして、第1の電極指126Lの長さよりも第2の電極指127Mの長さが長く、第2の電極指127Mの長さよりも第1の電極指126Nの長さが長い。
【0050】
上記のように、2次歪電流I2eの大きさは、電極指の長さに依存する。そのため、第2の電極指127Mから流出する2次歪電流I2eの大きさは、第2の電極指127Mに流入する2次歪電流I2eの大きさよりも大きい。これに起因して、曲線状IDT電極128Aの外部に、2次歪電流I2eに起因する、負の符号の電流が流出する。よって、曲線状IDT電極128Aからは、2次高調波歪の信号が出力され易い。
【0051】
例えば、フィルタ装置などに、曲線状IDT電極を有する弾性波共振子を用いた場合には、2次高調波歪の影響により、フィルタ特性が劣化するおそれがある。もっとも、本実施形態においては、曲線状IDT電極を有する弾性波共振子を用いた場合においても、2次高調波歪を抑制することができる。この詳細の説明を、
図7を用いてさらに続ける。
【0052】
曲線状IDT電極128Aは、配線129により、曲線状IDT電極128Bに直接的に接続されている。曲線状IDT電極128Bにおいては、
図7における左側に向かうにつれて、電極指の長さが長くなっている。例えば、
図7における左側から、第2の電極指127O、第1の電極指126P及び第2の電極指127Qがこの順序において連続して並んでいる。そして、第2の電極指127Oの長さよりも第1の電極指126Pの長さが短く、第1の電極指126Pの長さよりも第2の電極指127Qの長さが短い。
【0053】
曲線状IDT電極128Bにおいては、第1の電極指126Pから流出する2次歪電流I2eの大きさは、第1の電極指126Pに流入する2次歪電流I2eの大きさよりも小さい。これに起因して、曲線状IDT電極128Bの外部に、2次歪電流I2eに起因する、正の符号の電流が流出する。
【0054】
なお、上記のように、曲線状IDT電極128A及び曲線状IDT電極128Bは、配線129により直接的に接続されている。曲線状IDT電極128Aから配線129に、2次歪電流I2eに起因する、負の符号の電流が流出する。曲線状IDT電極128Bから配線129に、2次歪電流I2eに起因する、正の符号の電流が流出する。それによって、2次歪電流I2eに起因した電流を相殺させることができる。
【0055】
図1に示す第1の実施形態においても、
図7に示す例と同様に、2次歪電流I
2eに起因した電流を相殺させることができる。従って、高調波歪を抑制することができる。
【0056】
第1の弾性波共振子1Aの静電容量と、第2の弾性波共振子1Bの静電容量との差が、0.35pF以下であることが好ましい。この場合には、2次歪電流I2eに起因した電流をより確実に相殺させることができる。従って、高調波歪をより確実に抑制することができる。もっとも、第1の弾性波共振子1Aの静電容量と、第2の弾性波共振子1Bの静電容量との差は、特に限定されるものではない。
【0057】
以下において、第1の実施形態のさらなる詳細を説明する。なお、第1の弾性波共振子1A及び第2の弾性波共振子1Bは、外側方向が互いに逆の方向である点以外においては、同様の構成を有する。よって、第1の弾性波共振子1Aの構成の詳細を説明することとする。以下に示す第1の弾性波共振子1Aにおいて好ましい構成は、第2の弾性波共振子1Bにおいても好ましい構成である。
【0058】
図3に示すように、第1の実施形態では、X伝搬の方向に延び、定点Cを通る直線を基準線Nとする。なお、基準線Nの方向は上記に限定されない。基準線Nは、定点Cを必ずしも通らなくともよい。本発明においては、複数の基準線Nが定義されてもよい。
【0059】
上記のように、第1のIDT電極8Aの複数の電極指の平面視における形状は、円弧状である。複数の電極指の形状における弧を含む円または楕円の楕円係数をα2/α1としたときに、第1の実施形態における楕円係数α2/α1は1である。なお、複数の電極指の形状における弧を含む形状が楕円である場合、楕円係数α2/α1は1以外となる。α1は、該楕円の長軸及び短軸のうち、交叉領域Fを通る軸の方向に沿う寸法に相当する。α2は、該楕円の長軸及び短軸のうち、交叉領域Fを通らない軸の方向に沿う寸法に相当する。なお、rを任意の定数としたときに、XY平面における楕円係数の式として、(x/α1)2+(y/α2)2=r2と表わすことができる。
【0060】
第1のIDT電極8Aの各電極指は、平面視において、基端部及び先端部を接続している1対の端縁部を含む。そして、両端縁部は曲線状の形状を有する。本明細書においては、特に断りのない限り、電極指が延びる方向は以下の通りである。まず、電極指の任意の部分において、両端縁部を結ぶように、本発明における基準線Nと平行な仮想線を引いた場合、該仮想線上に位置する部分の重心を、該仮想線における代表点とする。電極指には、無数の仮想線を引くことができ、無数の代表点が存在する。これらの代表点同士を結んだ曲線の接線が延びる方向を、電極指が延びる方向とする。電極指における位置毎に、電極指が延びる方向は異なることとなる。例えば、交叉領域Fが複数の曲線領域を含み、かつ曲線領域毎に異なる基準線Nを有する場合には、仮想線を引く曲線領域の基準線Nを、該仮想線が延びる方向とすればよい。
【0061】
図3に示すように、定点Cを通る直線と基準線Nとがなす角の角度をθ
Cとする。定点Cを通る直線は無数に存在するが、
図3においては、該直線の例を示している。本明細書においては、角度θ
Cの正の方向を、平面視したときの反時計回りの方向とする。より具体的には、第2のバスバー15A側から第1のバスバー14A側に向かう方向が上記正の方向である。
【0062】
第1のIDT電極8Aにおける交叉領域Fは、定点Cを通る無数の直線上に位置するそれぞれの部分を有する。
図3には、定点C及び交叉領域Fを通る無数の直線のうちの一例として、直線Mが示されている。例えば、交叉領域Fにおける直線M上に位置する部分において、弾性波が励振される。定点C及び交叉領域Fを通る、図示しない無数の直線上に位置する部分においてもそれぞれ、弾性波が励振される。すなわち、第1の弾性波共振子1Aは、直線M上に位置する励振部、及び他の図示しない無数の直線上に位置する励振部を有する。
【0063】
交叉領域Fにおいて弾性波が励振される方向は、以下の3種の方向のうちいずれかである。第1種目の方向としては、電極指が延びる方向と垂直な方向である。第2種目の方向としては、隣接する電極指間の最短距離を結ぶ方向である。第3種目の方向としては、電極指間に生じる電界ベクトルと平行な方向である。
【0064】
定点C及び交叉領域Fにおける励振部を通る直線、及び第1の電極指16Aまたは第2の電極指17Aの交点における弾性波の励振方向と、基準線Nとがなす角の角度を励振角度θC_propとする。なお、第1の実施形態においては、弾性波の励振方向は、上記第1種目の方向である。基準線Nが通る励振部においては、角度θC及び励振角度θC_propは0°である。
【0065】
楕円係数α2/α1が1のとき、すなわち電極指の形状が円弧である場合には、角度θC及び励振角度θC_propは等しくなる。他方、電極指の形状が円弧以外である場合には、角度θC及び励振角度θC_propは等しくはない。もっとも、角度θCと励振角度θC_propとは略一致している。このことから、角度θC及び励振角度θC_propの間には、作用及び効果を覆すような影響を及ぼす程の差はないことを指摘しておく。
【0066】
それぞれの励振部間においては、励振角度θC_propが互いに異なるため、弾性波の伝搬特性が互いに異なる。そのため、異なる励振部同士の間においては、不要波の周波数同士が互いに異なることとなる。それによって、通過帯域外の不要波及び横モードがそれぞれ分散される。従って、通過帯域外の不要波及び横モードを抑制することができる。本明細書において、弾性波共振子における通過帯域外とは、共振周波数よりも低域側、及び反共振周波数よりも高域側をいう。
【0067】
加えて、第1の包絡線H1が延びる方向は、基準線Nが延びる方向と交叉している。それによって、横モードを効果的に抑制することができる。
【0068】
なお、第1の実施形態では、全ての励振部の共振周波数同士または反共振周波数同士が略一致している。すなわち、交叉領域Fの全てにおいて、共振周波数または反共振周波数が略一致している。それによって、共振特性が劣化し難い。本明細書において、一方の周波数及び他方の周波数が略一致しているとは、双方の周波数の差の絶対値が、基準周波数に対して10%以下であることをいう。なお、基準周波数とは、励振角度θC_propが0°のときの周波数をいう。
【0069】
交叉領域Fの第1のバスバー14A側の端縁部としての第1の包絡線H1、及び定点Cを通る直線と、基準線Nとがなす角の角度θ
Cを交叉角度θ
C_AP1とする。交叉領域Fの第2のバスバー15A側の端縁部としての第2の包絡線H2、及び定点Cを通る直線と、基準線Nとがなす角の角度θ
Cを交叉角度θ
C_AP2とする。この場合、θ
C_AP2≦θ
C≦θ
C_AP1である。
図5に示した比較に係る弾性波装置10の第1の弾性波共振子1Aにおいては、交叉角度θ
C_AP1は9°である。交叉角度θ
C_AP2は0°である。
【0070】
図1に戻り、第1のIDT電極8Aは複数のオフセット電極を有する。複数のオフセット電極は、具体的には、複数の第1のオフセット電極18及び複数の第2のオフセット電極19である。複数の第1のオフセット電極18の一方端がそれぞれ、第1のバスバー14Aに接続されている。第1の電極指16A及び第1のオフセット電極18は、交互に並んでいる。複数の第2のオフセット電極19の一方端がそれぞれ、第2のバスバー15Aに接続されている。第2の電極指17A及び第2のオフセット電極19は交互に並んでいる。
【0071】
複数の第1の電極指16A及び複数の第2の電極指17Aと同様に、複数の第1のオフセット電極18及び複数の第2のオフセット電極19はそれぞれ、基端部及び先端部を含む。第1の電極指16A及び第1のオフセット電極18の基端部は、第1のバスバー14Aに接続されている部分である。第2の電極指17A及び第2のオフセット電極19の基端部は、第2のバスバー15Aに接続されている部分である。
【0072】
第1の電極指16Aの先端部と、第2のオフセット電極19の先端部とが、ギャップを隔てて対向している。一方で、第2の電極指17Aの先端部と、第1のオフセット電極18の先端部とが、ギャップを隔てて対向している。
【0073】
複数の第1のオフセット電極18の平面視における形状はそれぞれ、曲線状の形状を有する。より具体的には、複数の第1のオフセット電極18の平面視における形状はそれぞれ、複数の同心円におけるそれぞれの円弧に相当する形状である。複数の第1のオフセット電極18の形状における円弧を含む円の中心は、定点Cと一致している。他方、複数の第2のオフセット電極19の平面視における形状はそれぞれ、直線状の形状を有する。以下においては、第1のオフセット電極18及び第2のオフセット電極19を、単にオフセット電極と記載することがある。
【0074】
複数のオフセット電極は必ずしも設けられていなくともよい。もっとも、第1のIDT電極8Aは、複数の第1のオフセット電極18及び複数の第2のオフセット電極19を有することが好ましい。それによって、交叉領域Fから各バスバー側に向かい伝搬した主モードを、交叉領域F側に反射させることができる。これにより、主モードのロスを低減させることができ、主モードの特性を良好にすることができる。
【0075】
平面視における複数の第1のオフセット電極18の形状が、曲線状の形状を有することが好ましい。この場合には、第1のオフセット電極18の形状を、第1のオフセット電極18において反射される主モードの周波数と一致した条件の形状にすることができる。よって、主モードを反射する反射効率を高めることができる。従って、主モードの特性を効果的に良好にすることができる。
【0076】
なお、複数の第1のオフセット電極18の平面視における形状は、曲線状の形状を有していなくともよい。例えば、複数の第1のオフセット電極18の平面視における形状は直線状の形状を有していてもよい。この場合には、第1のオフセット電極18の先端部から第1のバスバー14Aまでの距離を短くすることができる。それによって、第1のIDT電極8Aの電気抵抗を低くすることができる。
【0077】
第1の実施形態では、複数の第1の電極指16A及び複数の第1のオフセット電極18が設けられている領域におけるメタライゼーション比としてのデューティ比は、第1のバスバー14A側に向かうにつれて小さくなっている。もっとも、上記のデューティ比は一定であってもよい。ここでは、交叉領域以外のデューティ比を示した。なお、本明細書においては、デューティ比は、特に断りのない場合には、IDT電極の交叉領域におけるデューティ比である。
【0078】
周波数に影響するデューティ比、電極指ピッチ、電極指の厚み、圧電体層6の厚み、圧電性基板2内の中間層5の厚みなどが、角度θCに応じて変化していることが好ましい。圧電性基板2上に、第1のIDT電極8Aを覆うように誘電体膜が設けられている場合、誘電体膜の厚みが、角度θCに応じて変化していてもよい。上記のパラメータのうち複数のパラメータを、角度θCに応じて変化させてもよい。これらのパラメータのうち少なくともいずれかが、交叉領域Fの全てにおいて、共振周波数または反共振周波数が略一致するように、角度θCに応じて変化していることが好ましい。これにより、共振特性が劣化し難い。
【0079】
同様に、反射器9A及び反射器9Bにおいても、デューティ比、反射器電極指9cの電極指ピッチ、反射器電極指9cの厚み、圧電体層6の厚み、圧電性基板2内の中間層5の厚みなどのパラメータが、角度θCに応じて変化していることが好ましい。なお、反射器電極指9cの電極指ピッチとは、隣り合う反射器電極指9c同士の中心間距離である。圧電性基板2上に、反射器9A及び反射器9Bを覆うように誘電体膜が設けられている場合には、誘電体膜の厚みが、角度θCに応じて変化していてもよい。上記のパラメータのうち複数のパラメータが、角度θCに応じて変化していてもよい。例えば、反射器9A及び反射器9Bが、第1のIDT電極8Aの一部である場合を仮定してもよい。この場合において、上記のパラメータのうち少なくともいずれかが、交叉領域Fの全てにおいて、共振周波数または反共振周波数が略一致する構成に相当するように、角度θCに応じて変化していることが好ましい。これにより、共振特性が劣化し難い。第2の弾性波共振子1Bにおいても同様である。
【0080】
平面視における、反射器9A及び反射器9Bの複数の反射器電極指9cの形状はそれぞれ、複数の同心円におけるそれぞれの円弧に相当する形状である。複数の反射器電極指9cの形状における円弧を含む円の中心は、定点Cと一致している。なお、各反射器の反射器電極指9cの電極指ピッチあるいはデューティ比などのパラメータは、第1のIDT電極8Aの交叉領域Fにおける電極指のパラメータと異なっていてもよい。第2の弾性波共振子1Bにおいても同様である。
【0081】
図2に示すように、第1の実施形態においては、圧電性基板2は、支持基板4、中間層5の第1の層5a及び第2の層5b、並びに圧電体層6の積層基板である。より詳細には、第1の実施形態における第1の層5aは高音速膜である。高音速膜は相対的に高音速な膜である。より具体的には、高音速膜を伝搬するバルク波の音速は、圧電体層6を伝搬する弾性波の音速よりも高い。他方、第2の層5bは低音速膜である。低音速膜は相対的に低音速な膜である。より具体的には、低音速膜を伝搬するバルク波の音速は、圧電体層6を伝搬するバルク波の音速よりも低い。
【0082】
第1の実施形態では、圧電性基板2において、高音速膜、低音速膜及び圧電体層6がこの順序で積層されている。それによって、弾性波を圧電体層6側に効果的に閉じ込めることができる。
【0083】
高音速膜の材料としては、例えば、窒化アルミニウム、タンタル酸リチウム、ニオブ酸リチウム、水晶などの圧電体、アルミナ、サファイア、マグネシア、窒化ケイ素、炭化ケイ素、ジルコニア、コージライト、ムライト、ステアタイト、フォルステライト、スピネル、サイアロンなどのセラミック、酸化アルミニウム、酸窒化ケイ素、DLC(ダイヤモンドライクカーボン)、ダイヤモンドなどの誘電体、もしくはシリコンなどの半導体、または上記材料を主成分とする材料を用いることもできる。なお、上記スピネルには、Mg、Fe、Zn、Mnなどから選ばれる1以上の元素と酸素とを含有するアルミニウム化合物が含まれる。上記スピネルの例としては、MgAl2O4、FeAl2O4、ZnAl2O4、MnAl2O4を挙げることができる。本明細書において主成分とは、占める割合が50重量%を超える成分をいう。上記主成分の材料は、単結晶、多結晶、及びアモルファスのうちいずれかの状態、もしくは、これらが混在した状態で存在していてもよい。
【0084】
低音速膜の材料としては、例えば、ガラス、酸化ケイ素、酸窒化ケイ素、酸化リチウム、酸化タンタル、もしくは酸化ケイ素にフッ素、炭素やホウ素を加えた化合物などの誘電体、または上記材料を主成分とする材料を用いることができる。
【0085】
圧電体層6の材料としては、例えば、タンタル酸リチウム、ニオブ酸リチウム、酸化亜鉛、窒化アルミニウム、水晶、またはPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)などを用いることもできる。圧電体層6の材料として、タンタル酸リチウムまたはニオブ酸リチウムが用いられることが好ましい。
【0086】
支持基板4の材料としては、例えば、窒化アルミニウム、タンタル酸リチウム、ニオブ酸リチウム、水晶などの圧電体、アルミナ、サファイア、マグネシア、窒化ケイ素、炭化ケイ素、ジルコニア、コージライト、ムライト、ステアタイト、フォルステライトなどのセラミック、ダイヤモンド、ガラスなどの誘電体、シリコン、窒化ガリウム、ガリウムヒ素などの半導体、もしくは樹脂、または上記材料を主成分とする材料を用いることができる。支持基板4の材料として、高抵抗シリコンが用いられることが好ましい。支持基板4の材料の体積抵抗率は、1000Ω・cm以上であることが望ましい。
【0087】
第1のIDT電極8A及び第2のIDT電極8Bの材料としては、例えばTi、Mo、Ru、W、Ru、Al、Pt、Ir、Cu、Cr及びScからなる群から選択された1種以上の金属が用いられてもよい。各反射器の材料として、第1のIDT電極8A及び第2のIDT電極8Bと同様の材料を用いることができる。第1のIDT電極8A、第2のIDT電極8B及び各反射器は、単層の金属膜からなっていてもよく、積層金属膜からなっていてもよい。
【0088】
図1に示すように、第1の弾性波共振子1Aにおける第2のバスバー15A、及び第2の弾性波共振子1Bにおける第1のバスバー14Bが直接的に接続されている。よって、第1の実施形態における第1の弾性波共振子1A及び第2の弾性波共振子1Bが、例えばフィルタ装置に用いられる場合、第1の弾性波共振子1A及び第2の弾性波共振子1Bは互いに直列に接続される。もっとも、第1の弾性波共振子1A及び第2の弾性波共振子1Bは、例えば、互いに並列に接続されてもよい。
【0089】
第1の弾性波共振子1A及び第2の弾性波共振子1Bがラダー型フィルタに用いられる場合、例えば、第1の弾性波共振子1A及び第2の弾性波共振子1Bのうち少なくとも一方が、直列腕共振子として用いられてもよい。あるいは、例えば、第1の弾性波共振子1A及び第2の弾性波共振子1Bのうち少なくとも一方が、並列腕共振子として用いられてもよい。
【0090】
なお、第1の弾性波共振子1A及び第2の弾性波共振子1Bは互いに並列に接続されていてもよい。この例を以下において示す。
【0091】
図8は、第1の実施形態の変形例に係る弾性波装置の略図的平面図である。
図9は、第1の実施形態の変形例と同様に配置された2個の曲線状IDT電極における2次歪電流の流れを説明するための、模式的平面図である。
図8においては、弾性波共振子の外周を示す図形に、2本の対角線を加えた略図により、弾性波共振子を示す。
図8以外の略図的平面図においても同様である。
【0092】
図8に示すように、第1の実施形態の変形例においては、第1の弾性波共振子1A及び第2の弾性波共振子1Dは互いに並列に接続されている。第1の弾性波共振子1A及び第2の弾性波共振子1Dは、他の弾性波共振子を介さずに接続されている。具体的には、第1の弾性波共振子1Aにおける第1のIDT電極の第1のバスバー、及び第2の弾性波共振子1Dにおける第2のIDT電極の第1のバスバーが、配線により接続されている。第1の弾性波共振子1Aにおける第1のIDT電極の第2のバスバー、及び第2の弾性波共振子1Dにおける第2のIDT電極の第2のバスバーが、配線により接続されている。
【0093】
第1の弾性波共振子1Aにおける第1のIDT電極の外側方向は、第1の方向D+である。第2の弾性波共振子1Dにおける第2のIDT電極の外側方向は、第2の方向D-である。第1のIDT電極の形状及び第2のIDT電極の形状は、線対称の関係である。
【0094】
図9に示す曲線状IDT電極128Aは、第1のIDT電極と同様に配置されている。曲線状IDT電極128Dは、第2のIDT電極と同様に配置されている。曲線状IDT電極128Aの形状及び曲線状IDT電極128Dの形状は、線対称の関係である。曲線状IDT電極128Aにおいては、第2の電極指127Mから第2のバスバー125A側に、2次歪電流I
2eに起因する、負の符号の電流が流出する。一方で、曲線状IDT電極128Dにおいては、第2の電極指127Pから第2のバスバー125D側に、2次歪電流I
2eに起因する、正の符号の電流が流出する。それによって、2次歪電流I
2eに起因した電流を相殺させることができる。
【0095】
第1の実施形態の変形例においても、
図9に示す例と同様に、2次歪電流I
2eに起因した電流を相殺させることができる。従って、高調波歪を抑制することができる。
【0096】
図10は、第2の実施形態における第1の弾性波共振子の構成を説明するための模式的平面図である。
図11は、第2の実施形態に係る弾性波装置の略図的平面図である。
【0097】
図10に示すように、本実施形態は、第1の弾性波共振子21Aにおける第1のIDT電極28A及び各反射器の形状において、第1の実施形態と異なる。
図11に示すように、本実施形態は、第2の弾性波共振子21Bにおける第2のIDT電極及び各反射器の形状においても、第1の実施形態と異なる。上記の点以外においては、本実施形態の弾性波装置は第1の実施形態の弾性波装置10と同様の構成を有する。
【0098】
図10に戻り、第1のIDT電極28Aにおいては、第1の包絡線H1及び第2の包絡線H2は、交叉領域Fの中央を通る対称軸に対して線対称に配置されている。複数の第1の電極指26A及び複数の第2の電極指27Aの平面視における形状は、円弧の形状である。複数の第2のオフセット電極29の平面視における形状も円弧状である。第1のIDT電極28Aにおいては、交叉角度θ
C_AP1及び交叉角度θ
C_AP2の絶対値は同じである。よって、角度θ
Cの絶対値は、0°≦|θ
C|≦|θ
C_AP1|=|θ
C_AP2|である。
【0099】
図11に示す第2の弾性波共振子21Bにおける、第2のIDT電極の形状は、第1のIDT電極28Aの形状と線対称の形状である。本実施形態においても、第1の実施形態と同様に、第1の弾性波共振子21A及び第2の弾性波共振子21Bが、他の弾性波共振子を介さずに接続されている。そして、第1のIDT電極28Aにおける外側方向が第1の方向D+であり、第2のIDT電極の外側方向が第2の方向D-である。それによって、高調波歪を抑制することができる。
【0100】
第1のIDT電極28Aにおいて、第1の方向D+に向かうにつれて電極指の長さが長くなっており、第2のIDT電極において、第2の方向D-に向かうにつれて電極指の長さが長くなっている。それによって、高調波歪をより確実に抑制することができる。
【0101】
以下において、第1の弾性波共振子21Aの設計パラメータの一例を示す。本実施形態においては、第2の弾性波共振子21Bの設計パラメータも第1の弾性波共振子21Aの設計パラメータと同様である。
【0102】
支持基板4;材料…Si、面方位…(111)、オイラー角(φ,θ,ψ)におけるψ…73°
第1の層5a;材料…SiN、厚み…0.15λ
第2の層5b;材料…SiO2、厚み…0.15λ
圧電体層6;材料…回転Yカット55°X伝搬のLiTaO3、厚み…0.2λ
第1のIDT電極28A;材料…Al、厚み…0.05λ、
第1のIDT電極28Aの電極指の対数;60対
電極指の形状における楕円係数α2/α1;1
交叉角度θC_AP1;10°
交叉角度θC_AP2;-10°
波長λ;2μm
デューティ比;角度θCが0°である励振部において0.5
【0103】
本実施形態では、交叉領域Fにおける全ての励振部の共振周波数同士または反共振周波数同士が略一致するように、複数の励振部間において、デューティ比が互いに異ならされている。すなわち、デューティ比が角度θ
Cに応じて変化している。なお、角度θ
Cの絶対値|θ
C|が同じ励振部間においては、デューティ比は同じである。第1のIDT電極28Aが上記のように構成されているため、第1の弾性波共振子21Aにおける共振特性が劣化し難い。本実施形態における、角度θ
Cの絶対値|θ
C|及びデューティ比の関係を、
図12により示す。
【0104】
図12は、第2の実施形態における第1のIDT電極の、角度θ
Cの絶対値|θ
C|と、デューティ比との関係を示す図である。
【0105】
本実施形態では、角度θCが0°である場合に、デューティ比が最大値とされている。そして、角度θCの絶対値|θC|が大きいほど、デューティ比が小さい。これにより、交叉領域Fの全体において、共振周波数または反共振周波数が略一致している。
【0106】
以下において、第1のIDT電極及び各反射器の形状のみが第2の実施形態と異なる、第2の実施形態の第1の変形例及び第2の変形例を示す。第1の変形例及び第2の変形例においても、第2の実施形態と同様に、高調波歪の劣化を抑制することができる。
【0107】
図13に示す第1の変形例における第1のIDT電極28Cの複数の電極指の平面視における形状は、楕円弧の形状である。具体的には、第1のIDT電極28Cの複数の電極指の平面視における形状はそれぞれ、定点が同じ位置である複数の楕円におけるそれぞれの楕円弧に相当する形状である。なお、焦点A及び焦点Bの中点が定点Cである。複数の電極指の平面視における形状の楕円係数α1/α2は、1以外である。
【0108】
図14に示す第2の変形例における第1のIDT電極28Eにおいては、第1の包絡線H1及び第2の包絡線H2は平行に延びている。基準線Nは、第1の包絡線H1及び第2の包絡線H2と平行に延びている。そのため、第1のIDT電極28Eにおいては、第1の包絡線H1及び第2の包絡線H2の間の、第1の方向D+と直交する方向における間隔は一定である。
【0109】
もっとも、
図15において強調して示すように、第1のIDT電極28Eでは、第1の方向D+に向かうにつれて、電極指の曲線状の形状における曲率が大きくなっている。そのため、第1の方向D+に向かうにつれて、電極指の長さが長くなっている。
【0110】
なお、第2のIDT電極も、第1の変形例または第2の変形例における第1のIDT電極のいずれかの構成と同様の構成を有していてもよい。本発明では、例えば、第1のIDT電極が、第1の実施形態、第2の実施形態、第1の変形例または第2の変形例のいずれかの構成を有していてもよい。これらのいずれかの場合において、第2のIDT電極が、第1の実施形態、第2の実施形態、第1の変形例または第2の変形例における第1のIDT電極のいずれかの構成と同様の構成を有していてもよい。この例を、第2の実施形態の第3~第5の変形例により示す。第3~第5の変形例においても、第2の実施形態と同様に、高調波歪を抑制することができる。
【0111】
図16に示す第3の変形例においては、第1の弾性波共振子21E及び第2の弾性波共振子21Fは、第2の変形例における第1の弾性波共振子21Eと同様に構成されている。もっとも、第1の弾性波共振子21Eにおける第1のIDT電極28E及び各反射器の形状、並びに第2の弾性波共振子21Fにおける第2のIDT電極28F及び各反射器の形状は、線対称の関係である。
【0112】
図17に示す第4の変形例においても、第1の弾性波共振子21E及び第2の弾性波共振子21Fは、第2の変形例における第1の弾性波共振子21Eと同様に構成されている。もっとも、第1のIDT電極28Eの形状及び第2のIDT電極28Fの形状が線対称の関係ではない点において、第3の変形例と異なる。より具体的には、第1のIDT電極28Eと、第2のIDT電極28Fとの間において、電極指の幅、及び交叉領域の面積が互いに異なる。なお、第1のIDT電極28Eと、第2のIDT電極28Fとの間において、電極指の対数などが互いに異なっていてもよい。
【0113】
第4の変形例においては、第3の変形例と同様に、第1のIDT電極28Eにおける複数の電極指の外側方向は、第1の方向D+である。第1のIDT電極28Eにおいて、第1の方向D+に向かうにつれて電極指の長さが長くなっている。第2のIDT電極28Fにおける複数の電極指の外側方向は、第2の方向D-である。第2のIDT電極28Fにおいて、第2の方向D-に向かうにつれて電極指の長さが長くなっている。
【0114】
図18に示す第5の変形例においては、第1の弾性波共振子1Aにおける第1のIDT電極は、第1の実施形態と同様に構成されている。第2の弾性波共振子21Bにおける第2のIDT電極は、第2の実施形態と同様に構成されている。第1の弾性波共振子1Aの第1のIDT電極における複数の電極指の外側方向は、第1の方向D+である。第1のIDT電極において、第1の方向D+に向かうにつれて電極指の長さが長くなっている。第2の弾性波共振子21Bの第2のIDT電極における複数の電極指の外側方向は、第2の方向D-である。第2のIDT電極において、第2の方向D-に向かうにつれて電極指の長さが長くなっている。
【0115】
図11に示すように、第2の実施形態においては、第1の弾性波共振子21Aにおける基準線Nと、第2の弾性波共振子21Bにおける基準線Nとの双方は、第1の方向D+及び第2の方向D-と平行に延びている。もっとも、これに限定されるものではない。
【0116】
例えば、
図19に示す第2の実施形態の第6の変形例においては、第1の弾性波共振子21Aにおける基準線Nが延びる方向は、第1の方向D+及び第2の方向D-と交叉している。他方、第2の弾性波共振子21Bにおける基準線Nは、第1の方向D+及び第2の方向D-と平行に延びている。
【0117】
もっとも、第1の弾性波共振子21Aの第1のIDT電極における複数の電極指の外側方向の、第1の方向D+及び第2の方向D-と平行な方向の成分は、第1の方向D+である。第1のIDT電極において、第1の方向D+に向かうにつれて電極指の長さが長くなっている。第2の弾性波共振子21Bの第2のIDT電極における複数の電極指の外側方向は、第1の方向D+及び第2の方向D-のうち、第2の方向D-である。第2のIDT電極において、第2の方向D-に向かうにつれて電極指の長さが長くなっている。それによって、第2の実施形態と同様に、高調波歪を抑制することができる。つまり、第1の弾性波共振子21A及び第2の弾性波共振子21Bにおいて、外側方向が互いに180°逆の方向であることには限られず、外側方向の第1の方向D+及び第2の方向D-と平行な方向の成分が、互いに逆の方向である限り、本発明に含まれる。
【0118】
図20は、第3の実施形態に係る弾性波装置の模式的平面図である。
【0119】
本実施形態は、第2の弾性波共振子31Bにおける、第2のIDT電極38B及び各反射器の形状及び配置において第2の実施形態と異なる。上記の点以外においては、本実施形態の弾性波装置は第2の実施形態の弾性波装置と同様の構成を有する。
【0120】
第2のIDT電極38Bでは、複数の電極指の外側方向は第1の方向D+である。第2のIDT電極38Bにおいては、第1の包絡線H1及び第2の包絡線H2の間の、第1の方向D+と直交する方向における間隔が、第1の方向D+に向かうにつれて短くなっている。そして、第2のIDT電極38Bにおいては、第1の方向D+に向かうにつれて電極指の長さが短くなっている。すなわち、第2のIDT電極38Bにおいては、第2の方向D-に向かうにつれて電極指の長さが長くなっている。
【0121】
一方で、第1のIDT電極28Aにおいては、第2の実施形態と同様に、複数の電極指の外側方向は第1の方向D+である。第1のIDT電極28Aにおいては、第1の方向D+に向かうにつれて電極指の長さが長くなっている。この場合においても、第1のIDT電極28A及び第2のIDT電極38Bから流出する、2次歪電流I2eに起因した電流を相殺させることができる。従って、高調波歪を抑制することができる。
【0122】
このように、第1のIDT電極28A及び第2のIDT電極38Bの複数の電極指の外側方向は、同じ方向であってもよい。この場合、第1のIDT電極28A及び第2のIDT電極38Bにおいて、電極指が長くなっている方向が、互いに逆の方向であればよい。
【0123】
図21は、第4の実施形態に係る弾性波装置の模式的平面図である。
図22は、第4の実施形態における第1のIDT電極の構成を説明するための模式的平面図である。
【0124】
図21に示すように、本実施形態は、第1の弾性波共振子41Aにおける、第1のIDT電極48A及び各反射器の形状及び配置において第1の実施形態と異なる。上記の点以外においては、本実施形態の弾性波装置は第1の実施形態の弾性波装置10と同様の構成を有する。
【0125】
図22に示すように、第1のIDT電極48Aの交叉領域Fは、複数の曲線領域を含む。具体的には、複数の曲線領域は、第1の曲線領域W1及び第2の曲線領域W2である。第1の曲線領域W1は第1の包絡線H1を含む。第2の曲線領域W2は第2の包絡線H2を含む。第1の曲線領域W1及び第2の曲線領域W2の境界線Oは直線状である。
【0126】
より具体的には、第1のIDT電極48Aの、複数の第1の電極指46A及び複数の第2の電極指47Aの平面視における形状はそれぞれ、変曲点を有する。本明細書において変曲点は、互いに異なる曲線同士が接続されている点、または曲線と直線とが接続されている点である。変曲点において、互いに異なる曲線同士が接続されている場合、電極指の外側方向が、変曲点を境界として異なっている。
【0127】
本実施形態においては、
図22における左方向が外側方向である部分と、右方向が外側方向である部分とが、変曲点において接続されている。このように、本実施形態では、変曲点を境界として、2つの曲線状の形状が、互いに反転している。各反射器においても同様である。第1のIDT電極48Aにおける複数の電極指の変曲点を結んだ直線が、第1の曲線領域W1及び第2の曲線領域W2の境界線Oである。
【0128】
各曲線領域においては、平面視における複数の電極指の形状がそれぞれ、単一の円弧の形状または楕円弧の形状である。もっとも、本実施形態の第1のIDT電極48Aでは、各曲線領域において、平面視における複数の電極指の形状は単一の楕円弧である。よって、第1のIDT電極48Aにおける複数の電極指の平面視における形状はそれぞれ、2つの楕円弧が接続された形状である。
【0129】
第1の曲線領域W1においては、平面視したときの、複数の電極指の形状におけるそれぞれの楕円弧は、定点が同じ位置である複数の楕円におけるそれぞれの楕円弧に相当する形状である。これらの楕円の共通の定点を1つ目の定点C1と定義することができる。なお、この定点C1は、焦点A1及び焦点B1の中点である。
【0130】
第2の曲線領域W2においても、平面視したときの、複数の電極指の形状におけるそれぞれの楕円弧も、定点が同じ位置である複数の楕円におけるそれぞれの楕円弧に相当する形状である。これらの楕円の共通の定点を2つ目の定点C2と定義することができる。なお、この定点C2は、焦点A2及び焦点B2の中点である。すなわち、本実施形態では、2つの定点が定義される。定点C1及び定点C2は、第1のIDT電極48Aを挟み互いに対向している。
【0131】
このように、第1のIDT電極48Aにおける複数の電極指の形状がそれぞれ、交叉領域Fにおいて、外側方向が異なる少なくとも2つの曲線状の部分を含んでいてもよい。そして、平面視における複数の電極指の形状がそれぞれ、交叉領域Fにおいて、少なくとも1つの変曲点を有していてもよい。
【0132】
第1のIDT電極48Aにおいては、2本の基準線N1及び基準線N2が定義される。具体的には、基準線N1は、第1の包絡線H1が延長された直線であり、かつ定点C1を通る直線である。基準線N2は、第2の包絡線H2が延長された直線であり、かつ定点C2を通る直線である。
【0133】
第1の曲線領域W1における定点C1、及び第1の曲線領域W1を通る直線と、基準線N1とがなす角の角度が、第1の曲線領域W1における角度θ
Cである。
図22中の直線M1は、定点C1及び第1の曲線領域W1を通る直線の一例である。他方、第2の曲線領域W2における定点C2、及び第2の曲線領域W2を通る直線と、基準線N2とがなす角の角度が、第2の曲線領域W2における角度θ
Cである。
図22中の直線M2は、定点C2及び第2の曲線領域W2を通る直線の一例である。
【0134】
図21に戻り、第1の曲線領域W1の面積は、第2の曲線領域W2の面積よりも大きい。この場合、第1のIDT電極48Aでは、2次歪電流I
2eに起因した電流の方向において、第1の曲線領域W1が支配的になる。そして、第1の曲線領域W1においては、外側方向は第1の方向D+である。第1の曲線領域W1においては、第1の方向D+に向かうにつれて電極指の長さが長くなっている。そのため、1本の第2の電極指47Aを基準としたときに、第2の電極指47Aから流出する2次歪電流I
2eの大きさは、第2の電極指47Aに流入する2次歪電流I
2eの大きさよりも大きい。よって、第2の電極指47Aから第2のバスバー15A側に、2次歪電流I
2eに起因する、負の符号の電流が流出する。
【0135】
一方で、第2のIDT電極8Bは、第1の実施形態と同様に構成されている。具体的には、第2のIDT電極8Bにおいては、外側方向は第2の方向D-である。第2のIDT電極8Bにおいては、第2の方向D-に向かうにつれて電極指の長さが長くなっている。よって、第1の電極指16Bから第1のバスバー14B側に、2次歪電流I2eに起因する、正の符号の電流が流出する。
【0136】
なお、本実施形態では、第1のIDT電極48Aの第2のバスバー15Aと、第2のIDT電極8Bの第1のバスバー14Bとが直接的に接続されている。これらにより、第1のIDT電極48A及び第2のIDT電極8Bから流出する、2次歪電流I2eに起因した電流を相殺させることができる。従って、高調波歪を抑制することができる。
【0137】
本実施形態では、第2のIDT電極8Bの交叉領域は、1つのみの曲線領域を含む。よって、第2のIDT電極8Bにおいては、外側方向が第1の方向D+である領域の面積は0である。従って、外側方向が第2の方向D-である領域の面積の合計が、外側方向が第1の方向D+である領域の面積の合計よりも大きい。
【0138】
もっとも、第2のIDT電極8Bの交叉領域は、複数の曲線領域を含んでいてもよい。この場合においても、外側方向が第2の方向D-である領域の面積の合計が、外側方向が第1の方向D+である領域の面積の合計よりも大きければよい。それによって、第1のIDT電極48A及び第2のIDT電極8Bから流出する、2次歪電流I2eに起因した電流を相殺させることができる。
【0139】
あるいは、第1のIDT電極48A及び第2のIDT電極8Bにおいて、電極指が長くなっている方向が、互いに逆の方向であればよい。例えば、第1のIDT電極48Aにおいて、第1の曲線領域W1の面積が第2の曲線領域W2の面積よりも大きく、第1の方向D+及び第2の方向D-のうち一方に向かうにつれて電極指の長さが長い。この場合に、第2のIDT電極8Bにおいて、第1の方向D+及び第2の方向D-のうち他方に向かうにつれて電極指の長さが長くなっていればよい。それによって、第1のIDT電極48A及び第2のIDT電極8Bから流出する、2次歪電流I2eに起因した電流を相殺させることができる。
【0140】
以下において、第1のIDT電極及び第2のIDT電極並びに各反射器の形状のみが第4の実施形態と異なる、第4の実施形態の変形例を示す。
【0141】
図23に示す第4の実施形態の変形例においては、第1のIDT電極48Cの交叉領域は、第1の曲線領域W1と、第2の曲線領域W2と、第3の曲線領域W3とを含む。第1の曲線領域W1、第2の曲線領域W2及び第3の曲線領域W3は、第1のバスバー14A及び第2のバスバー15Aが互いに対向する方向において並んでいる。より具体的には、第1の曲線領域W1及び第3の曲線領域W3は、第2の曲線領域W2を挟み互いに対向している。
【0142】
第1の曲線領域W1及び第3の曲線領域W3においては、複数の電極指の外側方向は第1の方向D+である。第2の曲線領域W2においては、複数の電極指の外側方向は第2の方向D-である。第1の曲線領域W1及び第3の曲線領域W3の面積の合計は、第2の曲線領域W2の面積よりも大きい。第1のIDT電極48Cでは、第1の方向D+に向かうにつれて電極指の長さが長くなっている。
【0143】
ここで、複数の電極指の外側方向が第1の方向D+である領域を第1の領域、複数の電極指の外側方向が第2の方向D-である領域を第2の領域としたときに、第1の曲線領域W1及び第3の曲線領域W3は、第1の領域である。第2の曲線領域W2は、第2の領域である。第1のIDT電極48Cにおいては、第1の領域の面積の合計が第2の領域の面積の合計よりも大きい。この場合には、第1のIDT電極48Cでは、2次歪電流I2eに起因した電流の方向において、第1の領域が支配的になる。よって、第4の実施形態と同様に、第2の電極指47Aから第2のバスバー15A側に、2次歪電流I2eに起因する、負の符号の電流が流出する。
【0144】
一方で、第2のIDT電極28Bは、第2の実施形態と同様に構成されている。具体的には、第2のIDT電極28Bにおいては、外側方向は第2の方向D-である。第2のIDT電極28Bにおいては、第2の方向D-に向かうにつれて電極指の長さが長くなっている。よって、第1の電極指26Bから第1のバスバー14B側に、2次歪電流I2eに起因する、正の符号の電流が流出する。それによって、第1のIDT電極48C及び第2のIDT電極28Bから流出する、2次歪電流I2eに起因した電流を相殺させることができる。従って、高調波歪を抑制することができる。
【0145】
ところで、圧電性基板の積層構造は、
図2に示す構成には限定されない。第5の実施形態により、弾性波装置が、第1の実施形態とは異なる圧電性基板を有する例を示す。
【0146】
図24は、第5の実施形態に係る弾性波装置の模式的正面断面図である。
【0147】
本実施形態は、圧電性基板52の積層構造において第1の実施形態と異なる。
図24においては、第1のIDT電極8Aが示されている。もっとも、図示しないが、圧電性基板52上には、第1の実施形態と同様の第2のIDT電極8Bも設けられている。上記の点以外においては、本実施形態の弾性波装置は第1の実施形態の弾性波装置10と同様の構成を有する。
【0148】
圧電性基板52は、支持基板4と、中間層55と、圧電体層6とを有する。支持基板4上に中間層55が設けられている。中間層55上に圧電体層6が設けられている。本実施形態においては、中間層55は枠状の形状を有する。すなわち、中間層55は貫通孔を有する。支持基板4は、中間層55の貫通孔の一方を塞いでいる。圧電体層6は中間層55の貫通孔の他方を塞いでいる。これにより、圧電性基板52において中空部52cが構成されている。圧電体層6の一部及び支持基板4の一部は、中空部52cを挟み互いに対向している。
【0149】
本実施形態においては、主モードを圧電体層6側に反射させることができる。よって、弾性波のエネルギーを圧電体層6側に効果的に閉じ込めることができる。加えて、第1の実施形態と同様に、高調波歪を抑制することができる。
【0150】
以下において、圧電性基板の積層構造のみが第5の実施形態と異なる、第5の実施形態の第1の変形例及び第2の変形例を示す。第1の変形例及び第2の変形例においても、第5の実施形態と同様に、高調波歪を抑制することができ、かつ弾性波のエネルギーを圧電体層6側に効果的に閉じ込めることができる。
【0151】
図25に示す第1の変形例においては、圧電性基板52Aは、支持基板4と、音響反射膜57と、中間層55Aと、圧電体層6とを有する。支持基板4上に音響反射膜57が設けられている。音響反射膜57上に中間層55Aが設けられている。中間層55A上に圧電体層6が設けられている。中間層55Aは低音速膜である。
【0152】
音響反射膜57は複数の音響インピーダンス層の積層体である。具体的には、音響反射膜57は、複数の低音響インピーダンス層と、複数の高音響インピーダンス層とを有する。高音響インピーダンス層は、相対的に音響インピーダンスが高い層である。音響反射膜57の複数の高音響インピーダンス層は、より具体的には、高音響インピーダンス層57a、高音響インピーダンス層57c及び高音響インピーダンス層57eである。一方で、低音響インピーダンス層は、相対的に音響インピーダンスが低い層である。音響反射膜57の複数の低音響インピーダンス層は、より具体的には、低音響インピーダンス層57b及び低音響インピーダンス層57dである。低音響インピーダンス層及び高音響インピーダンス層は交互に積層されている。なお、高音響インピーダンス層57aが、音響反射膜57において最も圧電体層6側に位置する層である。
【0153】
音響反射膜57は、低音響インピーダンス層を2層有し、高音響インピーダンス層を3層有する。もっとも、音響反射膜57は、低音響インピーダンス層及び高音響インピーダンス層をそれぞれ少なくとも1層ずつ有していればよい。
【0154】
低音響インピーダンス層の材料としては、例えば、酸化ケイ素またはアルミニウムなどを用いることができる。高音響インピーダンス層の材料としては、例えば、白金またはタングステンなどの金属や、窒化アルミニウムまたは窒化ケイ素などの誘電体を用いることができる。なお、中間層55Aの材料は、低音響インピーダンス層の材料と同じであってもよい。
【0155】
図26に示す第2の変形例においては、圧電性基板52Bは、支持基板54と、圧電体層6とを有する。支持基板54上に直接的に圧電体層6が設けられている。より具体的には、支持基板54は凹部を有する。支持基板54上に、凹部を塞ぐように、圧電体層6が設けられている。これにより、圧電性基板52Bに中空部が設けられている。中空部は、平面視において、第1のIDT電極8Aの少なくとも一部と重なっている。
【0156】
図27は、第6の実施形態に係る弾性波装置の模式的正面断面図である。
【0157】
本実施形態は、第1のIDT電極8Aが保護膜69に埋め込まれている点において、第1の実施形態と異なる。図示しないが、
図1に示した第2のIDT電極8Bが保護膜69に埋め込まれている点においても、第1の実施形態と異なる。上記の点以外においては、本実施形態の弾性波装置は第1の実施形態の弾性波装置10と同様の構成を有する。
【0158】
具体的には、圧電体層6上に、第1のIDT電極8Aを覆うように、保護膜69が設けられている。保護膜69の厚みは、第1のIDT電極8Aの厚みよりも厚い。第1のIDT電極8Aは保護膜69に埋め込まれている。これにより、第1のIDT電極8Aが破損し難い。同様に、第2のIDT電極8Bも破損し難い。
【0159】
保護膜69は第1の保護層69a及び第2の保護層69bを有する。第1の保護層69aに第1のIDT電極8A及び第2のIDT電極8Bが埋め込まれている。第1の保護層69a上に第2の保護層69bが設けられている。それによって、保護膜69により複数の効果を得ることができる。具体的には、本実施形態においては、第1の保護層69aの材料として、酸化ケイ素が用いられている。これにより、弾性波装置における周波数温度係数(TCF)の絶対値を小さくすることができる。よって、弾性波装置の温度特性を改善することができる。第2の保護層69bには、窒化ケイ素が用いられている。これにより、弾性波装置の耐湿性を高めることができる。
【0160】
加えて、本実施形態においても、第1のIDT電極8A及び第2のIDT電極8Bが第1の実施形態と同様に構成され、配置されている。それによって、高調波歪を抑制することができる。
【0161】
なお、第1の保護層69a及び第2の保護層69bの材料は上記に限定されない。保護膜69は単層であってもよく、3層以上の積層体であってもよい。
【0162】
図28は、第7の実施形態に係る弾性波装置の模式的正面断面図である。
【0163】
本実施形態は、圧電体層6の第1の主面6a及び第2の主面6bの双方に第1のIDT電極8Aが設けられている点において第1の実施形態と異なる。図示しないが、圧電体層6の第1の主面6a及び第2の主面6bの双方に、
図1に示した第2のIDT電極8Bが設けられている点においても、第1の実施形態と異なる。なお、第2の主面6bに設けられた第1のIDT電極8A及び第2のIDT電極8Bは、中間層5における第2の層5bに埋め込まれている。上記の点以外においては、本実施形態の弾性波装置は第1の実施形態の弾性波装置10と同様の構成を有する。
【0164】
圧電体層6の第1の主面6aに設けられた第1のIDT電極8A及び第2の主面6bに設けられた第1のIDT電極8Aは、圧電体層6を挟み互いに対向している。圧電体層6の第1の主面6aに設けられた第2のIDT電極8B及び第2の主面6bに設けられた第2のIDT電極8Bは、圧電体層6を挟み互いに対向している。
【0165】
本実施形態の弾性波装置においては、第1の主面6a上において、第1のIDT電極8A及び第2のIDT電極8Bが第1の実施形態と同様に構成されている。そして、他の弾性波共振子の機能電極を介さず、第1のIDT電極8A及び第2のIDT電極8Bが接続されている。第2の主面6b上においても、同様である。それによって、第1の実施形態と同様に、高調波歪を抑制することができる。
【0166】
なお、圧電体層6の第1の主面6a及び第2の主面6bに設けられた第1のIDT電極8Aは、例えば、設計パラメータが互いに異なっていてもよい。第1の主面6a及び第2の主面6bに設けられた第2のIDT電極8Bは、例えば、設計パラメータが互いに異なっていてもよい。
【0167】
以下において、圧電体層の第2の主面に設けられた電極の構成、及び圧電性基板の積層構造のうち少なくとも一方のみが第7の実施形態と異なる、第7の実施形態の第1~第3の変形例を示す。第1~第3の変形例においても、第7の実施形態と同様に、高調波歪を抑制することができる。
【0168】
図29に示す第1の変形例においては、圧電性基板52が、第5の実施形態と同様に構成されている。具体的には、圧電性基板52が、支持基板4、中間層55及び圧電体層6を有する。圧電体層6の第2の主面6bに設けられた第1のIDT電極8Aは、中空部52c内に位置している。図示しないが、同様に、第2の主面6bに設けられた第2のIDT電極8Bも、中空部52c内に位置している。
【0169】
図30に示す第2の変形例においては、圧電体層6の第2の主面6bに、板状の電極78が設けられている。第1のIDT電極8A及び電極78は、圧電体層6を挟み互いに対向している。なお、第2の主面6bには第2のIDT電極8Bと対向するように、他の電極78も設けられている。各電極78は第2の層5bに埋め込まれている。
【0170】
図31に示す第3の変形例においては、圧電性基板52が第1の変形例と同様に構成されており、かつ圧電体層6の第2の主面6bに、第2の変形例と同様の電極78が設けられている。電極78は、中空部52c内に位置している。
【0171】
第5~第7の実施形態及び各変形例においては、第1のIDT電極及び第2のIDT電極が第1の実施形態と同様の構成、及び配置である場合の例を示した。もっとも、第5~第7の実施形態及び各変形例の圧電性基板は、複数のIDT電極の構成及び配置が、第1の実施形態以外の本発明の構成及び配置とされている場合においても、採用することができる。
【0172】
本発明に係る弾性波装置はフィルタ装置であってもよい。この例を以下において示す。
【0173】
図32は、第8の実施形態に係る弾性波装置の回路図である。
【0174】
本実施形態の弾性波装置80はラダー型フィルタである。弾性波装置80は、第1の信号端子82及び第2の信号端子83と、複数の直列腕共振子及び複数の並列腕共振子とを有する。弾性波装置80においては、全ての直列腕共振子及び全ての並列腕共振子は弾性波共振子である。圧電性基板上に複数のIDT電極が設けられていることにより、複数の弾性波共振子が構成されている。
【0175】
第1の信号端子82はアンテナ端子である。アンテナ端子はアンテナに接続される。もっとも、第1の信号端子82は、必ずしもアンテナ端子ではなくともよい。第1の信号端子82及び第2の信号端子83は、例えば、電極パッドとして構成されていてもよく、配線として構成されていてもよい。
【0176】
本実施形態の複数の直列腕共振子は、具体的には、直列腕共振子S1、直列腕共振子S2、直列腕共振子S3及び直列腕共振子S4である。複数の直列腕共振子は、第1の信号端子82及び第2の信号端子83の間に、互いに直列に接続されている。複数の並列腕共振子は、具体的には、並列腕共振子P1a、並列腕共振子P1b、並列腕共振子P2及び並列腕共振子P3である。
【0177】
直列腕共振子S1及び直列腕共振子S2の間の接続点とグラウンド電位との間に、並列腕共振子P1a及び並列腕共振子P1bが互いに直列に接続されている。直列腕共振子S2及び直列腕共振子S3の間の接続点とグラウンド電位との間に、並列腕共振子P2が接続されている。直列腕共振子S3及び直列腕共振子S4の間の接続点とグラウンド電位との間に、並列腕共振子P3が接続されている。なお、弾性波装置80の回路構成は上記に限定されない。弾性波装置80は、例えば、縦結合共振子型弾性波フィルタを含んでいてもよい。
【0178】
図33は、第8の実施形態における、複数の並列腕共振子及び複数の直列腕共振子を示す略図的平面図である。
【0179】
本実施形態においては、2組の第1の弾性波共振子21A及び第2の弾性波共振子21Bが設けられている。具体的には、
図32に示す直列腕共振子S1が
図33に示す第1の弾性波共振子21Aである。直列腕共振子S2が第2の弾性波共振子21Bである。これらの第1の弾性波共振子21A及び第2の弾性波共振子21Bは、第2の実施形態と同様の構成を有する。よって、直列腕共振子S1における第1のIDT電極、及び直列腕共振子S2における第2のIDT電極から流出する、2次歪電流I
2eに起因した電流を相殺させることができる。従って、高調波歪を抑制することができる。
【0180】
一方で、
図32に示す並列腕共振子P1bが
図33に示す第1の弾性波共振子21Aである。並列腕共振子P1aが第2の弾性波共振子21Bである。これらの第1の弾性波共振子21A及び第2の弾性波共振子21Bは、第2の実施形態と同様の構成を有する。よって、高調波歪を抑制することができる。
【0181】
なお、図示しないが、直列腕共振子S3におけるIDT電極は、直線状IDT電極である。
【0182】
フィルタ装置である弾性波装置は、少なくとも1組の第1の弾性波共振子及び第2の弾性波共振子を有していればよい。第1の弾性波共振子及び第2の弾性波共振子は、第2の実施形態以外の、本発明における第1の弾性波共振子及び第2の弾性波共振子の構成を有していてもよい。
【0183】
第1の弾性波共振子及び第2の弾性波共振子の回路上の配置は上記に限定されない。以下において、第1の弾性波共振子及び第2の弾性波共振子の配置のみが第8の実施形態と異なる、第8の実施形態の第1の変形例及び第2の変形例を示す。第1の変形例及び第2の変形例においても、第8の実施形態と同様に、高調波歪を抑制することができる。
【0184】
図34に示す第1の変形例においては、直列腕共振子S2が第1の弾性波共振子21Aであり、並列腕共振子P2が第2の弾性波共振子21Bである。
図35に示す第2の変形例においては、並列腕共振子P2が第1の弾性波共振子21Aであり、直列腕共振子S2が第2の弾性波共振子21Bである。
【0185】
図36は、第9の実施形態に係る弾性波装置の回路図である。
図37は、第9の実施形態における、複数の直列腕共振子を示す略図的平面図である。
【0186】
図36及び
図37に示すように、本実施形態は、回路構成において第8の実施形態と異なる。なお、本実施形態の弾性波装置はラダー型フィルタである。本実施形態は、第3の弾性波共振子1Cを有する点においても、第8の実施形態と異なる。本実施形態は、第1の弾性波共振子1Aの構成においても第8の実施形態と異なる。さらに、本実施形態は、第1の弾性波共振子1A及び第2の弾性波共振子21Bの配置においても第8の実施形態と異なる。上記の点以外においては、本実施形態の弾性波装置は第8の実施形態の弾性波装置と同様の構成を有する。
【0187】
図36に示すように、本実施形態の複数の直列腕共振子は、具体的には、直列腕共振子S11、直列腕共振子S12a、直列腕共振子S12b、直列腕共振子S12c及び直列腕共振子S13である。複数の直列腕共振子は、第1の信号端子82及び第2の信号端子83の間に、互いに直列に接続されている。複数の並列腕共振子は、具体的には、並列腕共振子P11及び並列腕共振子P12である。
【0188】
直列腕共振子S11及び直列腕共振子S12aの間の接続点とグラウンド電位との間に、並列腕共振子P11が接続されている。直列腕共振子S12c及び直列腕共振子S13の間の接続点とグラウンド電位との間に、並列腕共振子P12が接続されている。
【0189】
図36に示す直列腕共振子S12aが
図37に示す第1の弾性波共振子1Aである。直列腕共振子S12bが第2の弾性波共振子21Bである。第1の弾性波共振子1Aは、第1の実施形態と同様の構成を有する。他方、第2の弾性波共振子21Bは、第2の実施形態と同様の構成を有する。
【0190】
直列腕共振子S12cは、第3の弾性波共振子1Cである。第3の弾性波共振子1Cは、第1の実施形態における第1の弾性波共振子1Aと同様の構成を有する。具体的には、第3の弾性波共振子1Cは、第3のIDT電極と、1対の反射器とを有する。第3のIDT電極は曲線状IDT電極である。第3のIDT電極の複数の電極指の外側方向は、第1の方向D+である。第3のIDT電極においては、第1の方向D+に向かうにつれて電極指の長さが長くなっている。
【0191】
本実施形態においては、第2の弾性波共振子21Bにおける第2のIDT電極、及び第1の弾性波共振子1Aにおける第2のIDT電極から流出する、2次歪電流I2eに起因した電流を相殺させることができる。さらに、第2の弾性波共振子21Bにおける第2のIDT電極、及び第3の弾性波共振子1Cにおける第3のIDT電極から流出する、2次歪電流I2eに起因した電流を相殺させることもできる。よって、高調波歪を効果的に抑制することができる。
【0192】
なお、第3の弾性波共振子は、本発明における第1の弾性波共振子のいずれかの構成と同様に構成されていればよい。例えば、
図38に示す第9の実施形態の変形例においては、第3の弾性波共振子21Cは、第2の実施形態における第1の弾性波共振子21Aと同様に構成されている。よって、第3のIDT電極は、第2の実施形態における第1のIDT電極と同様に構成されている。本変形例における第1の弾性波共振子21Aも、第2の実施形態と同様に構成されている。この場合においても、高調波歪を効果的に抑制することができる。
【0193】
図39は、第10の実施形態における、並列腕共振子及び複数の直列腕共振子を示す略図的平面図である。
図39中の矢印は、各IDT電極から出力される2次歪電流I
2eに起因する電流の大きさの、大小関係の指標である。後述する他の略図的平面図においても同様である。
【0194】
本実施形態は、第1の弾性波共振子及び第2の弾性波共振子の配置及び構成において、第8の実施形態と異なる。本実施形態は、第3の弾性波共振子を有する点においても第8の実施形態と異なる。上記の点以外においては、本実施形態の弾性波装置は第8の実施形態の弾性波装置と同様の構成を有する。なお、本実施形態における回路構成及び第8の実施形態における回路構成は同じである。そのため、本実施形態の説明には、第8の実施形態の説明に用いた符号を援用することとする。
【0195】
本実施形態においては、
図32に示す直列腕共振子S2が第1の弾性波共振子1Aである。直列腕共振子S3が第2の弾性波共振子1Bである。これらの第1の弾性波共振子1A及び第2の弾性波共振子1Bは、第1の実施形態と同様の構成を有する。並列腕共振子P2が第3の弾性波共振子1Cである。第3の弾性波共振子1Cは、第1の弾性波共振子1A及び第2の弾性波共振子1Bの双方と、他の弾性波共振子を介さずに接続されている。第3の弾性波共振子1Cは、第1の実施形態における第1の弾性波共振子1Aと同様の構成を有する。
【0196】
第1の弾性波共振子における第1のIDT電極、及び第3の弾性波共振子における第3のIDT電極の複数の電極指の外側方向は、第1の方向D+である。他方、第2の弾性波共振子における第2のIDT電極の複数の電極指の外側方向は、第2の方向D-である。よって、第1のIDT電極、第2のIDT電極及び第3のIDT電極において、外側方向が第1の方向D+であるIDT電極の個数の合計は、外側方向が第2の方向D-であるIDT電極の個数の合計よりも多い。そのため、2次歪電流I2eに起因する、負の符号の電流が第2のバスバー側に出力されるIDT電極の個数の合計が、2次歪電流I2eに起因する、正の符号の電流が第1のバスバー側に出力されるIDT電極の個数の合計よりも多い。
【0197】
もっとも、本実施形態においては、第1の弾性波共振子1A、第2の弾性波共振子1B及び第3の弾性波共振子1Cのうち、第2の弾性波共振子1Bの静電容量が最も小さい。弾性波共振子の静電容量が小さい場合には、電極指1本辺りに加わる電圧が大きい。よって、第1のIDT電極、第2のIDT電極及び第3のIDT電極のうち、第2のIDT電極から出力される2次歪電流I2eに起因した電流の大きさが最も大きい。これにより、第1のIDT電極、第2のIDT電極及び第3のIDT電極から流出する、2次歪電流I2eに起因した電流をより確実に相殺させることができる。従って、高調波歪をより確実に抑制することができる。
【0198】
このように、3個の弾性波共振子において、総合的に高調波歪を抑制できるように構成されていてもよい。なお、外側方向が第1の方向D+であるIDT電極の個数の合計は、外側方向が第2の方向D-であるIDT電極の個数の合計以上であればよい。
【0199】
本実施形態においては、第3の弾性波共振子は1つのみ設けられている。もっとも、弾性波装置の構成は、複数の第3の弾性波共振子が設けられた構成であってもよい。すなわち、本発明では、複数のIDT電極が少なくとも1つの第3のIDT電極を含む構成であってもよい。この場合、いずれの第3の弾性波共振子も、第1の弾性波共振子及び第2の弾性波共振子の双方と、他の弾性波共振子を介さずに接続されていればよい。
【0200】
複数の第3のIDT電極が設けられている場合、各第3のIDT電極における外側方向が、第1の方向D+及び第2の方向D-のうち一方であればよい。これにより、第1のIDT電極、第2のIDT電極及び少なくとも1つの第3のIDT電極において、外側方向が第1の方向D+であるIDT電極の個数の合計が、外側方向が第2の方向D-であるIDT電極の個数の合計以上とされていればよい。そして、第1の弾性波共振子、第2の弾性波共振子及び少なくとも1つの第3の弾性波共振子のうち、第2の弾性波共振子の静電容量が最も小さければよい。
【0201】
図39に示す第3の弾性波共振子1Cにおける第3のIDT電極においては、第1の方向D+に向かうにつれて電極指の長さが長くなっている。なお、複数の第3のIDT電極が設けられている場合、各第3のIDT電極において、第1の方向D+及び第2の方向D-のうち一方に向かうにつれて電極指の長さが長くなっていればよい。これにより、第1のIDT電極、第2のIDT電極及び少なくとも1つの第3のIDT電極において、第1の方向D+に向かうにつれて電極指が長くなっているIDT電極の個数の合計が、第2の方向D-に向かうにつれて電極指が長くなっているIDT電極の個数の合計以上であればよい。そして、第1の弾性波共振子1A、第2の弾性波共振子1B及び少なくとも1つの第3の弾性波共振子1Cのうち、第2の弾性波共振子1Bの静電容量が最も小さければよい。この場合においても、高調波歪をより確実に抑制することができる。
【0202】
第10の実施形態及び上記に示した例においては、第1のIDT電極、第2のIDT電極及び第3のIDT電極において、電極指の対数の関係は特に限定されない。もっとも、第1のIDT電極、第2のIDT電極及び第3のIDT電極の電極指の対数がそれぞれ、第1のIDT電極、第2のIDT電極及び第3のIDT電極のうち、電極指の対数が最も多いIDT電極における電極指の対数の80%以上であることが好ましい。この場合には、高調波歪をより一層確実に抑制することができる。
【0203】
図40は、第11の実施形態における、並列腕共振子及び複数の直列腕共振子を示す略図的平面図である。
【0204】
本実施形態は、第1の弾性波共振子1A、第2の弾性波共振子1B及び第3の弾性波共振子1Cの静電容量の関係、及び電極指の対数の関係において、第10の実施形態と異なる。上記の点以外においては、本実施形態の弾性波装置は第10の実施形態の弾性波装置と同様の構成を有する。なお、本実施形態における回路構成は、第8の実施形態及び第10の実施形態における回路構成と同じである。そのため、本実施形態の説明には、第8の実施形態の説明に用いた符号を援用することとする。
【0205】
第1の弾性波共振子1Aは第1のIDT電極を有する。第2の弾性波共振子1Bは第2のIDT電極を有する。第3の弾性波共振子1Cは第3のIDT電極を有する。第1のIDT電極、第2のIDT電極及び第3のIDT電極においては、第10の実施形態と同様に、外側方向が第1の方向D+であるIDT電極の個数の合計は、外側方向が第2の方向D-であるIDT電極の個数の合計よりも多い。
【0206】
そして、本実施形態においては、第1のIDT電極、第2のIDT電極及び第3のIDT電極のうち、第2のIDT電極の電極指の対数が最も多い。2次歪電流I2eに起因した電流は、各電極指から出力される。そのため、IDT電極の電極指の対数が多い場合には、出力される2次歪電流I2eに起因した電流の大きさが大きい。よって、第1のIDT電極、第2のIDT電極及び第3のIDT電極のうち、第2のIDT電極から出力される2次歪電流I2eに起因した電流の大きさが最も大きい。これにより、第1のIDT電極、第2のIDT電極及び第3のIDT電極から流出する、2次歪電流I2eに起因した電流をより確実に相殺させることができる。従って、高調波歪をより確実に抑制することができる。
【0207】
なお、弾性波装置の構成は、複数のIDT電極が少なくとも1つの第3のIDT電極を含む構成であってもよい。この場合、いずれの第3の弾性波共振子1Cも、第1の弾性波共振子1A及び第2の弾性波共振子1Bの双方と、他の弾性波共振子を介さずに接続されていればよい。
【0208】
複数の第3のIDT電極が設けられている場合、各第3のIDT電極における外側方向が、第1の方向D+及び第2の方向D-のうち一方であればよい。これにより、第1のIDT電極、第2のIDT電極及び少なくとも1つの第3のIDT電極において、外側方向が第1の方向D+であるIDT電極の個数の合計が、外側方向が第2の方向D-であるIDT電極の個数の合計以上とされていればよい。そして、第1のIDT電極、第2のIDT電極及び少なくとも1つの第3のIDT電極のうち、第2のIDT電極の電極指の対数が最も多ければよい。
【0209】
図40に示す第3の弾性波共振子1Cにおける第3のIDT電極においては、第1の方向D+に向かうにつれて電極指の長さが長くなっている。なお、複数の第3のIDT電極が設けられている場合、各第3のIDT電極において、第1の方向D+及び第2の方向D-のうち一方に向かうにつれて電極指の長さが長くなっていればよい。これにより、第1のIDT電極、第2のIDT電極及び少なくとも1つの第3のIDT電極において、第1の方向D+に向かうにつれて電極指が長くなっているIDT電極の個数の合計が、第2の方向D-に向かうにつれて電極指が長くなっているIDT電極の個数の合計以上であればよい。そして、第1のIDT電極、第2のIDT電極及び少なくとも1つの第3のIDT電極のうち、第2のIDT電極の電極指の対数が最も多ければよい。この場合においても、高調波歪をより確実に抑制することができる。
【0210】
第11の実施形態及び上記に示した例においては、第1の弾性波共振子1A、第2の弾性波共振子1B及び第3の弾性波共振子1Cにおいて、静電容量の関係は特に限定されない。もっとも、第1の弾性波共振子1A、第2の弾性波共振子1B及び第3の弾性波共振子1Cの静電容量がそれぞれ、第1の弾性波共振子1A、第2の弾性波共振子1B及び第3の弾性波共振子1Cのうち、静電容量が最も大きい弾性波共振子における静電容量の80%以上であることが好ましい。この場合には、高調波歪をより一層確実に抑制することができる。
【0211】
図41は、第12の実施形態に係る弾性波装置の回路図である。
図42は、第12の実施形態における複数の並列腕共振子及び複数の直列腕共振子を示す略図的平面図である。
【0212】
図41及び
図42に示すように、本実施形態は、回路構成において第8の実施形態と異なる。本実施形態の説明には、本実施形態及び第8の実施形態の回路構成が同じである部分においては、第8の実施形態の説明に用いた符号を援用する。本実施形態の回路構成は、直列腕共振子S1及び直列腕共振子S2の間の接続点とグラウンド電位との間に、1つの並列腕共振子P21が接続されている点のみにおいて、第8の実施形態と異なる。本実施形態は、全ての弾性波共振子が第1の弾性波共振子1A、第2の弾性波共振子1B及び第3の弾性波共振子1Cのうちいずれかである点においても、第8の実施形態と異なる。上記の点以外においては、本実施形態の弾性波装置は第8の実施形態の弾性波装置と同様の構成を有する。
【0213】
図41に示す直列腕共振子S1は、
図42に示す第1の弾性波共振子1Aである。並列腕共振子P21は第2の弾性波共振子1Bである。直列腕共振子S2は第3の弾性波共振子1Cである。並列腕共振子P2は第1の弾性波共振子1Aである。直列腕共振子S3は第2の弾性波共振子1Bである。並列腕共振子P3は第3の弾性波共振子1Cである。直列腕共振子S4は第1の弾性波共振子1Aである。
【0214】
本実施形態においては、それぞれ第1の弾性波共振子1A、第2の弾性波共振子1B及び第3の弾性波共振子1Cを含む3組の弾性波共振子群が配置されている。なお、上記3組の弾性波共振子群において、一部の弾性波共振子は重複している。より詳細には、上記3組の弾性波共振子群のうち1組目は、直列腕共振子S1、直列腕共振子S2及び並列腕共振子P21である。2組目は、直列腕共振子S2、直列腕共振子S3及び並列腕共振子P2である。3組目は、直列腕共振子S3、直列腕共振子S4及び並列腕共振子P3である。
【0215】
上記3組の弾性波共振子群のいずれにおいても、第3の弾性波共振子1Cは、第1の弾性波共振子1A及び第2の弾性波共振子1Bの双方と、他の弾性波共振子を介さずに接続されている。そして、これらの第1の弾性波共振子1A、第2の弾性波共振子1B及び第3の弾性波共振子1Cにおける外側方向の関係、及び静電容量の関係は第8の実施形態と同様である。
【0216】
なお、
図42中の矢印を、ハッチングを付して示している。同じハッチングが付された矢印は、同じ弾性波共振子群における各IDT電極から出力される、2次歪電流I
2eに起因する電流の大きさの大小関係を示している。
図42に示すように、各弾性波共振子群において、第8の実施形態と同様に、上記電流が相殺されることがわかる。従って、各弾性波共振子群において、高調波歪を抑制することができる。
【0217】
これらのように、本実施形態においては、フィルタ装置としての弾性波装置全体として、総合的に高調波歪を抑制することができる。なお、上記3組の弾性波共振子群の第1の弾性波共振子1A、第2の弾性波共振子1B及び第3の弾性波共振子1Cにおいて、第9の実施形態と同様の電極指の対数の関係であってもよい。この場合においても、弾性波装置全体として、総合的に高調波歪を抑制することができる。
【0218】
以下において、本発明に係る弾性波装置の形態の例をまとめて記載する。
【0219】
<1>圧電体層を有する圧電性基板と、前記圧電性基板上に設けられており、それぞれ複数の電極指を有する複数のIDT電極と、を備え、前記複数のIDT電極が、前記複数の電極指の平面視における形状が曲線状の形状を有する、複数の曲線状IDT電極を含み、前記曲線状IDT電極における前記電極指の前記曲線状の形状の部分の、前記複数の電極指が並んでいる方向において凸となっている方向が、前記曲線状の形状の部分の外側方向であり、前記複数のIDT電極が第1のIDT電極及び第2のIDT電極を含み、前記第1のIDT電極及び前記第2のIDT電極がいずれも前記曲線状IDT電極であり、それぞれ前記IDT電極を含む複数の弾性波共振子が構成されており、前記複数の弾性波共振子が、前記第1のIDT電極を含む第1の弾性波共振子と、前記第2のIDT電極を含む第2の弾性波共振子と、を含み、前記第1の弾性波共振子及び前記第2の弾性波共振子が、他の前記弾性波共振子を介さずに接続されており、前記第1のIDT電極及び前記第2のIDT電極において、前記複数の電極指が並んでいる方向のうち一方を第1の方向とし、前記第1の方向と逆の方向を第2の方向としたときに、前記第1のIDT電極における前記外側方向が前記第1の方向であり、前記第2のIDT電極の前記外側方向が前記第2の方向である、弾性波装置。
【0220】
<2>圧電体層を有する圧電性基板と、前記圧電性基板上に設けられており、それぞれ複数の電極指を有する複数のIDT電極と、を備え、前記複数のIDT電極が、前記複数の電極指の平面視における形状が曲線状の形状を有する、複数の曲線状IDT電極を含み、前記複数のIDT電極が第1のIDT電極及び第2のIDT電極を含み、前記第1のIDT電極及び前記第2のIDT電極がいずれも前記曲線状IDT電極であり、それぞれ前記IDT電極を含む複数の弾性波共振子が構成されており、前記複数の弾性波共振子が、前記第1のIDT電極を含む第1の弾性波共振子と、前記第2のIDT電極を含む第2の弾性波共振子と、を含み、前記第1の弾性波共振子及び前記第2の弾性波共振子が、他の前記弾性波共振子を介さずに接続されており、前記第1のIDT電極及び前記第2のIDT電極において、前記複数の電極指が並んでいる方向のうち一方を第1の方向とし、前記第1の方向と逆の方向を第2の方向としたときに、前記第1のIDT電極において、前記第1の方向に向かうにつれて前記電極指の長さが長くなっており、前記第2のIDT電極において、前記第2の方向に向かうにつれて前記電極指の長さが長くなっている、弾性波装置。
【0221】
<3>圧電体層を有する圧電性基板と、前記圧電性基板上に設けられており、それぞれ複数の電極指を有する複数のIDT電極と、を備え、前記複数のIDT電極が、前記複数の電極指の平面視における形状が曲線状の形状を有する、複数の曲線状IDT電極を含み、前記曲線状IDT電極における前記電極指の前記曲線状の形状の部分の、前記複数の電極指が並んでいる方向において凸となっている方向が、前記曲線状の形状の部分の外側方向であり、前記複数のIDT電極が第1のIDT電極及び第2のIDT電極を含み、前記第1のIDT電極及び前記第2のIDT電極がいずれも前記曲線状IDT電極であり、前記第1のIDT電極及び前記第2のIDT電極において、前記複数の電極指が並んでいる方向のうち一方を第1の方向とし、前記第1の方向と逆の方向を第2の方向としたときに、前記第1のIDT電極が、前記外側方向が前記第1の方向である少なくとも1つの第1の領域と、前記外側方向が前記第2の方向である少なくとも1つの第2の領域と、を有し、前記第2のIDT電極が、少なくとも、前記外側方向が前記第2の方向である領域を有し、それぞれ前記IDT電極を含む複数の弾性波共振子が構成されており、前記複数の弾性波共振子が、前記第1のIDT電極を含む第1の弾性波共振子と、前記第2のIDT電極を含む第2の弾性波共振子と、を含み、前記第1の弾性波共振子及び前記第2の弾性波共振子が、他の前記弾性波共振子を介さずに接続されており、前記第1のIDT電極において、前記第1の領域の面積の合計が前記第2の領域の面積の合計よりも大きく、かつ前記第2のIDT電極において、前記外側方向が前記第2の方向である領域の面積の合計が、前記外側方向が前記第1の方向である領域の面積の合計よりも大きい、弾性波装置。
【0222】
<4>圧電体層を有する圧電性基板と、前記圧電性基板上に設けられており、それぞれ複数の電極指を有する複数のIDT電極と、を備え、前記複数のIDT電極が、前記複数の電極指の平面視における形状が曲線状の形状を有する、複数の曲線状IDT電極を含み、前記曲線状IDT電極における前記電極指の前記曲線状の形状の部分の、前記複数の電極指が並んでいる方向において凸となっている方向が、前記曲線状の形状の部分の外側方向であり、前記複数のIDT電極が第1のIDT電極及び第2のIDT電極を含み、前記第1のIDT電極及び前記第2のIDT電極がいずれも前記曲線状IDT電極であり、前記第1のIDT電極及び前記第2のIDT電極において、前記複数の電極指が並んでいる方向のうち一方を第1の方向とし、前記第1の方向と逆の方向を第2の方向としたときに、前記第1のIDT電極が、前記外側方向が前記第1の方向である少なくとも1つの第1の領域と、前記外側方向が前記第2の方向である少なくとも1つの第2の領域と、を有し、前記第2のIDT電極が、少なくとも、前記外側方向が前記第2の方向である領域を有し、それぞれ前記IDT電極を含む複数の弾性波共振子が構成されており、前記複数の弾性波共振子が、前記第1のIDT電極を含む第1の弾性波共振子と、前記第2のIDT電極を含む第2の弾性波共振子と、を含み、前記第1の弾性波共振子及び前記第2の弾性波共振子が、他の前記弾性波共振子を介さずに接続されており、前記第1のIDT電極において、前記第1の領域の面積の合計が前記第2の領域の面積の合計よりも大きく、前記第1のIDT電極において、前記第1の方向及び前記第2の方向のうち一方に向かうにつれて前記電極指の長さが長くなっており、前記第2のIDT電極において、前記第1の方向及び前記第2の方向のうち他方に向かうにつれて前記電極指の長さが長くなっている、弾性波装置。
【0223】
<5>前記複数の弾性波共振子が、前記第1の弾性波共振子及び前記第2の弾性波共振子の双方と、他の前記弾性波共振子を介さずに接続されている少なくとも1つの第3の弾性波共振子を含み、前記複数のIDT電極が少なくとも1つの第3のIDT電極を含み、前記第3の弾性波共振子が前記第3のIDT電極を含み、前記第3のIDT電極が前記曲線状IDT電極であり、前記第3のIDT電極における前記外側方向が前記第1の方向及び前記第2の方向のうち一方であり、前記第1のIDT電極、前記第2のIDT電極及び前記少なくとも1つの第3のIDT電極において、前記外側方向が前記第1の方向である前記IDT電極の個数の合計が、前記外側方向が前記第2の方向である前記IDT電極の個数の合計以上であり、前記第1の弾性波共振子、前記第2の弾性波共振子及び前記少なくとも1つの第3の弾性波共振子のうち、前記第2の弾性波共振子の静電容量が最も小さい、<1>に記載の弾性波装置。
【0224】
<6>前記複数の弾性波共振子が、前記第1の弾性波共振子及び前記第2の弾性波共振子の双方と、他の前記弾性波共振子を介さずに接続されている少なくとも1つの第3の弾性波共振子を含み、前記複数のIDT電極が少なくとも1つの第3のIDT電極を含み、前記第3の弾性波共振子が前記第3のIDT電極を含み、前記第3のIDT電極が前記曲線状IDT電極であり、前記第3のIDT電極における前記外側方向が前記第1の方向及び前記第2の方向のうち一方であり、前記第1のIDT電極、前記第2のIDT電極及び前記少なくとも1つの第3のIDT電極において、前記外側方向が前記第1の方向である前記IDT電極の個数の合計が、前記外側方向が前記第2の方向である前記IDT電極の個数の合計以上であり、前記第1のIDT電極、前記第2のIDT電極及び前記少なくとも1つの第3のIDT電極のうち、前記第2のIDT電極の前記複数の電極指の対数が最も多い、<1>に記載の弾性波装置。
【0225】
<7>前記曲線状IDT電極における前記電極指の前記曲線状の形状の部分の、前記複数の電極指が並んでいる方向において凸となっている方向が、前記曲線状の形状の部分の外側方向であり、前記第1のIDT電極における前記外側方向が前記第1の方向及び前記第2の方向のうち一方であり、前記第2のIDT電極の前記外側方向が前記第1の方向及び前記第2の方向のうち他方である、<2>に記載の弾性波装置。
【0226】
<8>前記複数の弾性波共振子が、前記第1の弾性波共振子及び前記第2の弾性波共振子の双方と、他の前記弾性波共振子を介さずに接続されている少なくとも1つの第3の弾性波共振子を含み、前記複数のIDT電極が少なくとも1つの第3のIDT電極を含み、前記第3の弾性波共振子が前記第3のIDT電極を含み、前記第3のIDT電極が前記曲線状IDT電極であり、前記第3のIDT電極において、前記第1の方向及び前記第2の方向のうち一方に向かうにつれて前記電極指の長さが長くなっており、前記第1のIDT電極、前記第2のIDT電極及び前記少なくとも1つの第3のIDT電極において、前記第1の方向に向かうにつれて前記電極指が長くなっている前記IDT電極の個数の合計が、前記第2の方向に向かうにつれて前記電極指が長くなっている前記IDT電極の個数の合計以上であり、前記第1の弾性波共振子、前記第2の弾性波共振子及び前記少なくとも1つの第3の弾性波共振子のうち、前記第2の弾性波共振子の静電容量が最も小さい、<2>に記載の弾性波装置。
【0227】
<9>前記複数の弾性波共振子が、前記第1の弾性波共振子及び前記第2の弾性波共振子の双方と、他の前記弾性波共振子を介さずに接続されている少なくとも1つの第3の弾性波共振子を含み、前記複数のIDT電極が少なくとも1つの第3のIDT電極を含み、前記第3の弾性波共振子が前記第3のIDT電極を含み、前記第3のIDT電極が前記曲線状IDT電極であり、前記第3のIDT電極において、前記第1の方向及び前記第2の方向のうち一方に向かうにつれて前記電極指の長さが長くなっており、前記第1のIDT電極、前記第2のIDT電極及び前記少なくとも1つの第3のIDT電極において、前記第1の方向に向かうにつれて前記電極指が長くなっている前記IDT電極の個数の合計が、前記第2の方向に向かうにつれて前記電極指が長くなっている前記IDT電極の個数の合計以上であり、前記第1のIDT電極、前記第2のIDT電極及び前記少なくとも1つの第3のIDT電極のうち、前記第2のIDT電極の前記複数の電極指の対数が最も多い、<2>に記載の弾性波装置。
【0228】
<10>前記第1のIDT電極の形状及び前記第2のIDT電極の形状が線対称の関係である、<1>、<2>または<7>のいずれか1つに記載の弾性波装置。
【0229】
<11>前記第1のIDT電極及び前記第2のIDT電極の形状が同じであり、前記圧電性基板上において、前記第2のIDT電極の配置が、前記第1のIDT電極が180°回転した配置に相当する、<1>、<2>または<7>のいずれか1つに記載の弾性波装置。
【0230】
<12>前記第1の弾性波共振子の静電容量及び前記第2の弾性波共振子の静電容量の差が、0.35pF以下である、<1>、<2>、<6>、<7>または<9>~<11>のいずれか1つに記載の弾性波装置。
【0231】
<13>前記圧電体層の材料としてX伝搬の圧電体が用いられており、前記第1の方向が、X伝搬の方向における正の方向及び負の方向のうち一方であり、前記第2の方向が、X伝搬の方向における正の方向及び負の方向のうち他方である、<1>~<12>のいずれか1つに記載の弾性波装置。
【0232】
<14>前記圧電性基板が支持基板を有し、前記支持基板上に前記圧電体層が設けられている、<1>~<13>のいずれか1つに記載の弾性波装置。
【0233】
<15>前記圧電性基板が、前記支持基板及び前記圧電体層の間に設けられている中間層を有する、<14>に記載の弾性波装置。
【0234】
<16>前記圧電性基板において中空部が構成されており、前記支持基板の一部と、前記圧電体層の一部とが、前記中空部を挟み互いに対向している、<14>に記載の弾性波装置。
【0235】
<17>前記圧電性基板が前記圧電体層のみからなる、<1>~<13>のいずれか1つに記載の弾性波装置。
【符号の説明】
【0236】
1A~1C…第1~第3の弾性波共振子
1D…第2の弾性波共振子
2…圧電性基板
3…支持部材
4…支持基板
5…中間層
5a,5b…第1,第2の層
6…圧電体層
6a,6b…第1,第2の主面
8A,8B…第1,第2のIDT電極
9A,9B…反射器
9c…反射器電極指
10…弾性波装置
14A,14B…第1のバスバー
15A,15B…第2のバスバー
16A,16B…第1の電極指
17A,17B…第2の電極指
18,19…第1,第2のオフセット電極
21A~21C…第1~第3の弾性波共振子
21E,21F…第1,第2の弾性波共振子
26A,26B…第1の電極指
27A…第2の電極指
28A,28B…第1,第2のIDT電極
28C…第1のIDT電極
28E,28F…第1,第2のIDT電極
29…第2のオフセット電極
31B…第2の弾性波共振子
38B…第2のIDT電極
41A…第1の弾性波共振子
46A,47A…第1,第2の電極指
48A,48C…第1のIDT電極
52,52A,52B…圧電性基板
52c…中空部
54…支持基板
55,55A…中間層
57…音響反射膜
57a…高音響インピーダンス層
57b…低音響インピーダンス層
57c…高音響インピーダンス層
57d…低音響インピーダンス層
57e…高音響インピーダンス層
69…保護膜
69a,69b…第1,第2の保護層
78…電極
80…弾性波装置
82,83…第1,第2の信号端子
100…弾性波装置
101B…第2の弾性波共振子
108B…第2のIDT電極
116M…第1の電極指
117L,117N…第2の電極指
118…直線状IDT電極
125A,125D…第2のバスバー
126L,126N,126P…第1の電極指
127M,127O~127Q…第2の電極指
128A,128B,128D…曲線状IDT電極
129…配線
178A…曲線状IDT電極
C,C1,C2…定点
F…交叉領域
N,N1,N2…基準線
P1a,P1b,P2,P3,P11,P12,P21…並列腕共振子
S1~S4,S11,S12a~S12c,S13…直列腕共振子
W1~W3…第1~第3の曲線領域