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特開2024-105047埋設物把持装置及びこれを備えた杭切断装置
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  • 特開-埋設物把持装置及びこれを備えた杭切断装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024105047
(43)【公開日】2024-08-06
(54)【発明の名称】埋設物把持装置及びこれを備えた杭切断装置
(51)【国際特許分類】
   E02D 9/02 20060101AFI20240730BHJP
【FI】
E02D9/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023009573
(22)【出願日】2023-01-25
(71)【出願人】
【識別番号】500109674
【氏名又は名称】株式会社大枝建機工業
(71)【出願人】
【識別番号】515166347
【氏名又は名称】川口 聖
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大枝 守
(72)【発明者】
【氏名】川口 聖
【テーマコード(参考)】
2D050
【Fターム(参考)】
2D050AA02
2D050DA03
2D050DB08
(57)【要約】
【課題】地中の埋設物を把持した際に、埋設物から力が加わっても、把持状態が解除されにくくすること。
【解決手段】埋設物把持装置2は、地中9の埋設物を中心軸に沿って通すように地中9に埋め込まれる筒体3と、筒体3に設けられ、埋設物から離れた非接触位置と埋設物に当たる接触位置とに切替え可能なシェル構造体4と、を備える。シェル構造体4は、シェル構造体4が非接触位置に切り替えられた状態において、上面視で円弧状に形成されたシェル部41と、上面視におけるシェル部41の弦42に平行に延びた回転軸で、シェル部41を筒体3に対して回転可能に支持する軸部43と、シェル構造体4が非接触位置に切り替えられた状態においてシェル部41の上端部に設けられ、軸部43の回転軸を中心に回転することでシェル構造体4が接触位置に切り替えられると、埋設物に当たる刃部44と、を有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地中の埋設物を中心軸に沿って通すように地中に埋め込まれる筒体と、
前記筒体に設けられ、前記埋設物から離れた非接触位置と前記埋設物に当たる接触位置とに切替え可能なシェル構造体と、
を備え、
前記シェル構造体は、
前記シェル構造体が非接触位置に切り替えられた状態において、上面視で円弧状に形成されたシェル部と、
上面視における前記シェル部の弦に平行でかつ前記筒体の中心軸に直交する方向に延びた回転軸で、前記シェル部を前記筒体に対して回転可能に支持する軸部と、
前記シェル構造体が非接触位置に切り替えられた状態において前記シェル部の上端部に設けられ、前記軸部の回転軸を中心に回転することで前記シェル構造体が接触位置に切り替えられると前記埋設物に当たる当接部と、
を有する、
埋設物把持装置。
【請求項2】
前記シェル部は、前記筒体の内部に配置されている、
請求項1に記載の埋設物把持装置。
【請求項3】
前記軸部は、前記シェル構造体が非接触位置に切り替えられた状態において、上面視で、前記シェル部の両端部に配置されている、
請求項1に記載の埋設物把持装置。
【請求項4】
前記シェル構造体は前記シェル部を2つ備え、
前記2つのシェル部の各々の当接部は互いに対向した位置に配置されている、
請求項1に記載の埋設物把持装置。
【請求項5】
前記シェル構造体を前記接触位置と前記非接触位置とに切り替える駆動機構を更に備え、
前記駆動機構は、
前記シェル部に連結された一端部から前記筒体に沿って延びたアームと、
前記アームの他端部に接続され、前記アームを動かす駆動部と、
を有し、
前記駆動部によって前記アームを上側に引き上げると、前記シェル構造体は前記接触位置に切り替えられる、
請求項1に記載の埋設物把持装置。
【請求項6】
前記筒体は、円筒状でありかつ下端に掘削ビットを有するケーシングチューブである、
請求項1に記載の埋設物把持装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の埋設物把持装置と、
前記筒体の前記中心軸を中心に前記埋設物把持装置を回転させる回転装置と、
を備える、
杭切断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、埋設物把持装置及びこれを備えた杭切断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従前より、地中に埋め込まれた埋設物を持ち上げる装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の装置は、地中に埋め込まれた杭を切断し、切断した杭を地中から持ち上げて除去する切断除去装置である。
【0003】
特許文献1に記載の切断除去装置は、揺動体の下端にビット(第1ビット)が設けられている。揺動体に連結された揺動レバーが下降すると、揺動体の下端が既設杭に近付くように揺動体が回動し、ビットが既設杭に食い込む。この状態でケーシングを回転させることで、既設杭が切断される。
【0004】
切断後、ビットをそのままの位置に保ったまま、ケーシングが引き上げられる。これにより、切断された既設杭がビットに載ったまま、既設杭が持ち上げられ、地中から除去される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6972460号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の切断除去装置では、切断した既設杭を持ち上げる際、揺動体の下端が既設杭に近付くように揺動体が回動した状態で既設杭が載っているため、既設杭の荷重によって揺動体の下端が下方に押し下げられ、枢支ピンを中心に揺動体の下端が離れる方向に回転しやすい。したがって、地中で把持した既設杭がビットから外れる可能性があるという問題がある。
【0007】
本発明の目的は、地中の埋設物を把持した際に、埋設物から力が加わっても、把持状態が解除されにくい埋設物把持装置及びこれを備えた杭切断装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る一態様の埋設物把持装置は、地中の埋設物を中心軸に沿って通すように地中に埋め込まれる筒体と、前記筒体に設けられ、前記埋設物から離れた非接触位置と前記既設杭に当たる接触位置とに切替え可能なシェル構造体と、を備える。前記シェル構造体は、前記シェル構造体が非接触位置に切り替えられた状態において、上面視で円弧状に形成されたシェル部と、上面視における前記シェル部の弦に平行でかつ前記筒体の中心軸に直交する方向に延びた回転軸で、前記シェル部を前記筒体に対して回転可能に支持する軸部と、前記シェル構造体が非接触位置に切り替えられた状態において前記シェル部の上端部に設けられ、前記軸部の回転軸を中心に回転することで前記シェル構造体が接触位置に切り替えられると、前記既設杭に当たる当接部と、を有する。
【0009】
本発明に係る一態様の杭切断装置は、上記埋設物把持装置と、前記筒体の中心軸を回転軸にして前記埋設物把持を回転させる回転装置と、を備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る上記態様の埋設物把持装置及びこれを備えた杭切断装置は、中の埋設物を把持した際に、埋設物から力が加わっても、把持状態が解除されにくい、という利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】(A)から(D)は、本発明の実施形態に係る杭切断装置を用いて既設杭を切断し、切断した既設杭を引き上げる方法を説明する概略図である。
図2】埋設物把持装置において、シェル構造体が非接触位置に切り替えられた状態の模式断面図である。
図3】埋設物把持装置の中心軸に直交する断面での模式断面図である。
図4】埋設物把持装置において、シェル構造体が接触位置に切り替えられた状態の模式断面図である。
図5】一例の回転装置の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<実施形態>
以下、本実施形態に係る埋設物把持装置2及び杭切断装置1を、添付図面を参照して説明する。本明細書では、地面91に直交する方向を「上下方向」とし、上下方向に直交する方向を「径方向」として定義する。また、本実施形態では、地面91を水平面として説明するが、例えば、地面91は傾斜面であってもよい。また、本明細書において「平行」とは、2つの直線、辺、面等が延長しても交わらない場合だけでなく、2つの直線、辺、面等がなす角度が10°以内の範囲で交わる場合も含む。また、「直交」とは、2つの直線、辺、面等を延長して、90°に交差する場合だけでなく、2つの直線、辺、面等がなす角度が90°±10°以内の範囲で交わる場合も含む。
【0013】
本実施形態に係る杭切断装置1は、図1に示すように、埋設物把持装置2と、埋設物把持装置2を回転させる回転装置6と、を備える。埋設物把持装置2は、地中9に埋め込まれた埋設物を把持し、地中に持ち上げるものであるが、本実施形態では、埋設物の一例として、杭(以下、「既設杭8」という)を挙げて説明する。
【0014】
(埋設物把持装置2)
埋設物把持装置2は、円筒状に形成されており、地中9に埋め込まれた既設杭8に対し、既設杭8を中心軸に沿って通すようにして、地中9に埋め込まれる。埋設物把持装置2は、図2に示すように、当接部44を有しており、既設杭8の側面に対して当接部44を当てることで、既設杭8を把持することができる。埋設物把持装置2は、筒体3と、複数のシェル構造体4と、駆動機構5と、を備える。
【0015】
既設杭8としては、例えば、PC杭、PHC杭、SC杭、PRC杭、鋼管杭等が挙げられる。本実施形態に係る埋設物把持装置2は、これらいずれの既設杭8に対しても適用可能である。本実施形態の既設杭8は、図3に示すように、中心軸方向に延びた複数の鉄筋81がコンクリートに埋設されたPC杭を一例に挙げて説明する。既設杭8の上端は、地面91よりも上方に位置していてもよいし、地面91よりも下方に位置してもよい。なお、複数の鉄筋81の配置は、その直径が、既設杭8の外径の70%以上90%以下であることが好ましい。
【0016】
筒体3は、複数のシェル構造体4を支持する。筒体3は、上下方向に中心軸を有する筒状に形成されている。筒体3の上下方向の両端面は開口面である。筒体3は、円筒であることが好ましい。筒体3の内径の最小値は、既設杭8の外径の最大値よりも大きい。筒体3の内径の最小値は、既設杭8の外径の最大値に対して、1.1倍以上1.3倍以下が好ましく、より好ましくは、1.15倍以上1.2倍以下である。
【0017】
筒体3の材料は、金属製であることが好ましい。筒体3の材料は、樹脂製であってもよい。筒体3の周壁の厚さとしては、例えば、40mm以上50mm以下が好ましく、より好ましくは、42mm以上48mm以下である。
【0018】
筒体3は、ケーシングチューブ31であることが好ましい。ケーシングチューブ31は、図2に示すように、複数の掘削ビット312を有する。複数の掘削ビット312は、円筒状の筒体本体311の下側の開口周縁に沿って一定の間隔をおいて配置されている。
【0019】
シェル構造体4は、筒体3に支持されている。シェル構造体4は、非接触位置(図2)と、接触位置(図4)とに切り替えることができる。非接触位置は、シェル構造体4が既設杭8から離れた位置を意味する。接触位置は、シェル構造体4の少なくとも一部が既設杭8に当たる位置を意味する。シェル構造体4は、シェル部41と、一対の軸部43と、当接部44と、を備える。
【0020】
シェル部41は、シェル構造体4の主体を構成する部分である。シェル部41は、図3に示すように、筒体3の内周面に沿って、筒体3の内部に配置されている。シェル部41は、シェル構造体4が非接触位置に切り替えられた状態において、図3に示すように、上面視で円弧状に形成されている。シェル部41は、本実施形態では、1/4円弧であるが、1/2円弧であってもよく、大きさは特に制限はない。シェル部41は、既設杭8から離れた位置に位置している。
【0021】
シェル部41は、上面視におけるシェル部41の弦42の中心に直交する直線に交差する部分からシェル部41の端部に近付くに従って、上下幅が小さくなるように形成されている。すなわち、図2に示すように、シェル部41は、シェル構造体4が非接触位置に切り替えられた状態において、周方向の中央部が最も上方に位置している。また、シェル部41は、図2に示すように、軸部43に沿って見て、外周面421が、軸部43を中心とする円弧状に形成されている。これによって、シェル構造体4が非接触位置と接触位置とに切り替えられても、シェル部41が筒体3の内周面に干渉しにくい。
【0022】
軸部43は、上面視におけるシェル部41の弦42に平行でかつ筒体3の中心軸に直交する方向に延びた回転軸で、シェル部41を筒体3に対して回転可能に支持する。軸部43は、図3に示すように、上面視においてシェル部41の両端部に設けられている。一対の軸部43は、一直線上に配置されており、当該直線は、軸部43の回転軸と重なる。一対の軸部43は、筒体3の軸受け32によって回転可能に支持されている。
【0023】
上面視において、図3に示すように、同じシェル部41に含まれる軸受け32間の距離D1と、隣接するシェル部41の軸受け32の間の距離D2とは、同じであることが好ましい。また、同じシェル部41の一対の軸受け32を結ぶ直線L1と、隣接する他のシェル部41における対向する軸受け32とを結ぶ直線L2とは、直交することが好ましい。このようにすることで、シェル部41に加わった外力によって、ケーシングチューブ31が歪むことが軽減される。また、隣接するシェル部41の軸受け32の間の距離D2が、距離D1と同じであることで、隣接するシェル部41の軸受け32の間に、薬剤供給管や給水管等の配管や、配線ケーブル等を必要に応じて配置することができる。
【0024】
当接部44は、図2に示すように、シェル構造体4が非接触位置に切り替えられた状態において、シェル部41の上端部に設けられている。当接部44は、本実施形態では、複数の刃部である。複数の刃部は、図3に示すように、シェル部41の上端部の周方向の中央部を中心として、一定の範囲に配置されている。当接部44は、シェル構造体4の上端縁から突き出ており、シェル構造体4が接触位置に切り替えられると、既設杭8に当たる。接触位置に切り替えられたシェル構造体4は、最も接触位置側に位置する時に、当接部44の先端が既設杭8の鉄筋81よりも内側に位置することが好ましい。
【0025】
一対のシェル部41における当接部44は、図3に示すように、互いに対向する位置に配置されている。このため、シェル構造体4が接触位置に切り替えられると、当接部44は、既設杭8の中心に対して対称の位置に当たり得る。
【0026】
駆動機構5は、シェル構造体4を接触位置と非接触位置とに切り替える。駆動機構5は、各シェル構造体4に対して一対一で設けられている。駆動機構5は、図2に示すように、アーム51と、駆動部52(図1(D)参照)と、を備える。アーム51の第1端部512は、シェル構造体4に回転可能に接続されている。アーム51の第1端部512とシェル構造体4との回転軸は、シェル構造体4の軸部43の回転軸と平行である。アーム51は第1端部512から筒体3に沿って延びている。アーム51は、筒体3に形成された貫通孔33を通して、筒体3の内部から筒体3の外部に引き出される。アーム51の第2端部は駆動部52に接続されている。
【0027】
駆動部52は、アーム51をアーム51の長手方向に移動させる。駆動部52は、例えば、シリンダ装置、ソレノイド、直動式アクチュエータ等が挙げられる。シリンダ装置としては、油圧、電動、空圧のいずれであってもよいが、本実施形態では、油圧式シリンダが用いられる。駆動部52は、筒体3に取り付けられてもよいし、筒体3とは別の位置(例えば、地上)に配置されてもよい。駆動部52が筒体3に取り付けられる場合、筒体3の下端部に取り付けられてもよいし、筒体3の上下方向の中間部に取り付けられてもよい。
【0028】
駆動部52によってアーム51が下側に移動すると、図2に示すように、シェル構造体4が非接触位置に切り替えられる。この状態において、埋設物把持装置2は、中心軸に沿って既設杭8を通すようにして、地中9に埋め込むことができる。一方、駆動部52によってアーム51が上側に移動すると、図4に示すように、シェル構造体4の上端部が既設杭8に近付く向きに回転し、接触位置に切り替えられる。これによって、シェル構造体4の当接部44は、既設杭8の側面に当たる。この状態において、筒体3が、筒体3の中心軸を中心に回転すると、当接部44が既設杭8の側面のコンクリート部分をえぐりながら回転し、いずれ、既設杭8の内部の鉄筋81を切断する。これによって、既設杭8を切断することができる。
【0029】
(回転装置6)
回転装置6は、全周回転機、回転全周機、全周回転式掘削機、チュービング装置等とも称される。回転装置6は、埋設物把持装置2を、中心軸を回転軸として回転させることができれば、構造は特に制限はない。以下、回転装置6の一例を挙げる。
【0030】
回転装置6は、図5に示すように、地面91上に脚部62によって支持されるベースフレーム61と、ベースフレーム61の上方に変位機構69を構成する複数の昇降シリンダ63を介して昇降変位可能に設けられた昇降フレーム64及びチャックフレーム65とを備える。ベースフレーム61、昇降フレーム64、及びチャックフレーム65の各中央部には、筒体3及び既設杭8が通る空間部66が上下に貫通している。回転装置6は、空間部66の周囲に、筒体3の外周面を把持するためのチャック機構67と、チャック機構67を軸回転させるための回転機構68と、チャック機構67を筒体3の中心軸方向に沿って往復変位させるための変位機構69とを備える。
【0031】
昇降フレーム64には、モータ70及び減速機71よりなる回転機構68が設けられ、空間部66を囲むようにコーン72が取り付けられている。コーン72はベアリングを介して軸回転可能に組み付けられている。モータ70の回転は減速機71から図示しないギヤ群を介してコーン72に伝達される。コーン72の内周面には複数のテーパ溝73が形成されており、各テーパ溝73にくさび形をした複数のチャック74を対応して設けることでチャック機構67が構成されている。
【0032】
各チャック74は、チャックフレーム65にベアリングを介して設けられた回転体に吊り下げられ、チャックシリンダのロッドの伸縮により相対的に上下動するもので、これより筒体3とコーン72との間にチャック74の差し込みと引き抜きとが行われ、筒体3を把持状態にしたり解除状態にしたりする。
【0033】
ベースフレーム61には、筒体3の外周を締め付けて把持する帯状のサブチャック75が設けられており、このサブチャック75と、サブチャック75を開閉させるサブチャックシリンダ78とでサブチャック機構76が構成されている。
【0034】
このように構成された回転装置6は、埋設物把持装置2の中心軸を回転軸として、埋設物把持装置2を回転させることができる。図1(B)に示すように、シェル構造体4が接触位置に切り替えられた状態において、埋設物把持装置2を回転させると、既設杭8を切断することができる。この後、図1(C)に示すように、シェル構造体4が接触位置を保ったまま、回転装置6及び/又はクレーン100によって、埋設物把持装置2を上昇させることで、埋設物把持装置2と一緒に、切断した既設杭82を上昇させることができる。これによって、地中から切断した既設杭82を撤去することができる。
【0035】
図3に示すように、上面視において、シェル部41の回転軸が既設杭8に重なっているため、シェル構造体4を接触位置に切り替え、既設杭8を切断した後には、図4に示すように、シェル部41の上に切断した既設杭82が載る。切断した既設杭82からシェル部41に加わる力を、軸部43で受けることができるため、切断した既設杭82からシェル部41に加わる力によってシェル部41が開く方向に回転しにくい。この結果、切断した既設杭82を持ち上げる際、既設杭82から力が加わっても、把持状態が解除されにくい。
【0036】
<変形例>
上記実施形態は、本発明の様々な実施形態の一つに過ぎない。実施形態は、本発明の目的を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。以下、実施形態の変形例を列挙する。以下に説明する変形例は、適宜組み合わせて適用可能である。
【0037】
上記実施形態では、埋設物把持装置2は、既設杭8を切断する用途に用いられたが、切断することなく、既設杭8を掴んだ状態で埋設物把持装置2を上昇させることで、既設杭8を持ち上げることもできる。また、既設杭8を掴んだ状態にして、既設杭8に対して固定された埋設物把持装置2に別の装置を取り付け、当該装置によって他の作業を行ってもよい。
【0038】
上記実施形態では、埋設物把持装置2とケーシングチューブ31とを兼用したが、例えば、既設杭8とケーシングチューブ31との間に、埋設物把持装置2を挿し入れて、既設杭8を切断してもよい。
【0039】
上記実施形態では、シェル部41は筒体3の内部に配置されたが、シェル部41は筒体3の外面に沿って配置されてもよい。この場合であっても、シェル構造体4が接触位置に切り替えられると、当接部44が既設杭8に接触することができる。
【0040】
上記実施形態では、アーム51の大部分は、筒体3の外側を通るように構成されたが、例えば、アーム51は、筒体3の内側を通るように構成されてもよい。
【0041】
上記実施形態では、地中に埋め込まれた埋設物として、既設杭82を挙げて説明したが、埋設物としては、既設杭82に限らない。例えば、地中に埋め込まれたフロア等のコンクリート構造体に対して、筒体3によって穴開けし、穴開け時に切断した部分に対して、下方にシェル構造体4を位置させる。そして、シェル構造体4を接触位置に切り替え、接触位置に切り替えたシェル構造体4によって、穴開け時に切断した部分を、持ち上げて地中から除去してもよい。すなわち、埋設物把持装置2は、地中の障害物の撤去についても適用できる。
【0042】
本明細書において「端部」及び「端」などのように、「…部」の有無で区別した表現が用いられている。例えば、「端」は埋設物の末の部分を意味するが、「端部」は「端」を含む一定の範囲を持つ域を意味する。端を含む一定の範囲内にある点であれば、いずれも、「端部」であるとする。他の「…部」を伴った表現についても同様である。
【0043】
<まとめ>
以上説明したように、第1の態様に係る埋設物把持装置2は、地中9の埋設物を中心軸に沿って通すように地中9に埋め込まれる筒体3と、筒体3に設けられ、埋設物から離れた非接触位置と埋設物に当たる接触位置とに切替え可能なシェル構造体4と、を備える。シェル構造体4は、シェル構造体4が非接触位置に切り替えられた状態において、上面視で円弧状に形成されたシェル部41と、上面視におけるシェル部41の弦42に平行でかつ筒体3の中心軸に直交する方向に延びた回転軸で、シェル部41を筒体3に対して回転可能に支持する軸部43と、シェル構造体4が非接触位置に切り替えられた状態においてシェル部41の上端部に設けられ、シェル構造体4が接触位置に切り替えられると、埋設物に当たる当接部44と、を有する。
【0044】
この態様によれば、シェル構造体4を接触位置に切り替えることで、当接部44を既設杭8に当てることができ、埋設物を掴むことができる。このとき、当接部44はシェル部41の上端部に設けられているため、埋設物からシェル部41に対して上方に力が加わったり、埋設物からシェル部41に対して下方に力が加わったりしても、シェル部41が非接触位置に向かって動きにくい。したがって、本実施形態に係る埋設物把持装置2によれば、地中の埋設物を把持した際に、埋設物から力が加わっても、把持状態が解除されにくい。
【0045】
第2の態様に係る埋設物把持装置2では、第1の態様において、シェル部41は、筒体3の内部に配置されている。この態様によれば、非接触位置と接触位置とに切替えられるシェル構造体4を設計しやすい。
【0046】
第3の態様に係る埋設物把持装置2では、第1又は第2の態様において、軸部43は、シェル構造体4が非接触位置に切り替えられた状態において、上面視で、シェル部41の両端部に配置されている。この態様によれば、シェル構造体4の動きを安定させやすい。
【0047】
第4の態様に係る埋設物把持装置2では、第1~3のいずれか1つの態様において、シェル構造体4はシェル部41を2つ備え、2つのシェル部41の各々の当接部44は互いに対向した位置に配置されている。この態様によれば、当接部44が埋設物をより強く掴むことができる。
【0048】
第5の態様に係る埋設物把持装置2では、第1~4のいずれか1つの態様において、シェル構造体4を接触位置と非接触位置とに切り替える駆動機構5を更に備える。駆動機構5は、シェル部41に連結された一端部から筒体3に沿って延びたアーム51と、アーム51の他端部に接続され、アーム51を動かす駆動部52と、を有する。駆動部52によってアーム51を上側に引き上げると、シェル構造体4は接触位置に切り替えられる。この態様によれば、アーム51を介して動力をシェル構造体4に加える際、アーム51が座屈しにくい。
【0049】
第6の態様に係る埋設物把持装置2では、第1~5のいずれか1つの態様において、筒体3は、円筒状でありかつ下端に掘削ビット312を有するケーシングチューブ31である。この態様によれば、掘削した後にケーシングチューブ31を地中9から引き抜くことなく、埋設物を掴む動作に移ることができる。
【0050】
第7の態様に係る杭切断装置1は、第1~6のいずれか1つの態様の埋設物把持装置2と、筒体3の中心軸を回転軸にして埋設物把持装置2を回転させる回転装置6と、を備える。この態様によれば、埋設物把持装置2の筒体3を、筒体3の内部に既設杭8を通すように地中に埋め込み、シェル構造体4を接触位置に切り替えた状態で、回転装置6によって埋設物把持装置2を回転させることで、既設杭8を切断することができる。
【符号の説明】
【0051】
1 杭切断装置
2 埋設物把持装置
3 筒体
31 ケーシングチューブ
312 掘削ビット
4 シェル構造体
41 シェル部
43 軸部
44 当接部
5 駆動機構
51 アーム
6 回転装置
8 既設杭(埋設物)
図1
図2
図3
図4
図5