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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024105050
(43)【公開日】2024-08-06
(54)【発明の名称】混注装置
(51)【国際特許分類】
   A61J 3/00 20060101AFI20240730BHJP
【FI】
A61J3/00 310C
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023009578
(22)【出願日】2023-01-25
(71)【出願人】
【識別番号】592246705
【氏名又は名称】株式会社湯山製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】藤原 義久
(72)【発明者】
【氏名】児島 皓仁
【テーマコード(参考)】
4C047
【Fターム(参考)】
4C047AA05
4C047HH03
4C047HH04
4C047HH05
4C047HH10
4C047JJ18
4C047JJ19
4C047JJ40
4C047KK08
4C047KK11
4C047KK24
4C047KK25
4C047KK27
4C047KK28
4C047KK31
4C047KK40
(57)【要約】
【課題】効率よく粉薬を輸液に溶解させる。
【解決手段】混注ユニット(40)は、注射器に収容された輸液の一部を、粉薬が収容されたバイアルに注入する動作と、輸液を注入したバイアルから、粉薬が溶解した輸液を、注射器を用いて抜取る動作と、バイアルに注入しなかった残余の輸液に、抜取った輸液を混合する動作と、を実行する。混注ユニット(40)は、混合された輸液の一部を薬剤容器に注入する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
注射器に収容された輸液の一部を、粉薬が収容された薬剤容器に注入する注入部と、
前記注入部が輸液を注入した薬剤容器から、粉薬が溶解した輸液を、注射器を用いて抜取る抜取部と、
前記注入部が前記薬剤容器に注入しなかった残余の輸液に、前記抜取部が抜取った輸液を混合する混合部と、を備え、
前記注入部は、混合された輸液の一部を前記薬剤容器に注入する、混注装置。
【請求項2】
前記抜取部が、前記注入部が輸液を注入した注射器と同一の注射器を用いて、前記注入部が輸液を注入した薬剤容器から、粉薬が溶解した輸液を抜取ることにより、前記混合部の動作が実現される、請求項1に記載の混注装置。
【請求項3】
前記注入部は、前記注射器の針の先端部が上方を向いて前記薬剤容器の栓に穿刺した状態で、前記注射器に収容された輸液を前記薬剤容器に注入する、請求項1又は2に記載の混注装置。
【請求項4】
前記注入部が前記薬剤容器に輸液を注入した後、前記栓が下方を向いた第1状態から水平面側を向く第2状態となるように、前記薬剤容器を傾ける傾斜部を備える、請求項3に記載の混注装置。
【請求項5】
前記傾斜部は、前記栓が前記第2状態よりも下方側を向いた第3状態となるように、前記薬剤容器を傾ける、請求項4に記載の混注装置。
【請求項6】
前記抜取部は、
前記注入部が輸液を注入した薬剤容器から、粉薬が溶解した輸液を抜取った後、所定時間経過後に、再度、当該薬剤容器から粉薬が溶解した輸液を抜取るか、
前記注入部が輸液を注入した薬剤容器から、注射器を用いて気体を抜取った後、所定時間経過後に、前記粉薬が溶解した輸液を抜取る、請求項1から5の何れか1項に記載の混注装置。
【請求項7】
薬剤容器に収容された薬剤を輸液容器に収容された輸液に混注する混注装置であって、
前記輸液容器に収容された輸液を抜取る注射器、前記輸液容器に液薬もしくは輸液を注入する注射器、前記薬剤容器に収容された液薬もしくは輸液を抜取る注射器、又は、前記薬剤容器に輸液を注入する注射器が、中口タイプの注射器であるか、横口タイプの注射器であるかを判定する第1判定部を備える、混注装置。
【請求項8】
前記注射器を保持する保持部を備え、
前記第1判定部は、前記保持部に保持された注射器が、中口タイプの注射器であるか、横口タイプの注射器であるかを判定する、請求項7に記載の混注装置。
【請求項9】
前記横口タイプの注射器が前記保持部に適切に装着されているかを判定する第2判定部を備える、請求項8に記載の混注装置。
【請求項10】
前記保持部は、前記混注装置に充填される前記注射器を保持可能な部材である、請求項8又は9に記載の混注装置。
【請求項11】
薬剤容器に収容された薬剤を輸液容器に収容された輸液に混注する混注装置であって、
前記輸液容器に収容された輸液を抜取る注射器、前記輸液容器に液薬もしくは輸液を注入する注射器、前記薬剤容器に収容された液薬もしくは輸液を抜取る注射器、又は、前記薬剤容器に輸液を注入する注射器に取付けられた針の種類に応じて、前記薬剤容器の栓もしくは前記輸液容器の栓への前記針の穿刺量、又は、前記薬剤容器の栓もしくは前記輸液容器の栓における前記針の穿刺位置を調整する調整部を備える、混注装置。
【請求項12】
前記針を検出する検出部と、
前記検出部の検出結果に基づき、前記針の種類を判別する判別部と、を備え、
前記調整部は、前記判別部が判別した前記針の種類に応じて、前記針の穿刺量又は前記針の穿刺位置を調整する、請求項11に記載の混注装置。
【請求項13】
前記針の種類は、前記針の先端部の傾斜角度が第1角度である第1針と、前記傾斜角度が前記第1角度よりも大きい第2角度である第2針と、を含み、
前記調整部は、前記針の種類が前記第2針である場合、前記第1針である場合よりも前記針の穿刺量を小さくする、請求項11又は12に記載の混注装置。
【請求項14】
薬剤容器に収容された薬剤を輸液容器に収容された輸液に混注する混注部を備え、
前記混注部は、互いに近接した位置と、互いに離反した位置と、の間で移動する一対の移動部を備え、
前記一対の移動部はそれぞれ、前記互いに近接した位置において、混注に用いる注射器の針を挟持する挟持部分と、前記挟持部分以外の非挟持部分と、を有し、
前記挟持部分は絶縁部材であり、前記非挟持部分の少なくとも一部は導電性部材を有する、混注装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、混注装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、混注装置の一例が開示されている。特許文献1の混注装置は、薬剤充填部及び混注処理部を備える。ユーザは、薬剤充填部の作業テーブル上に載置されたトレイの所定の位置に、薬剤容器、注射器を構成し得る各部材、及び輸液容器を載置した後、トレイを混注処理部に充填する。これにより、特許文献1の混注装置は、混注処理を開始できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-063313号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、粉薬を輸液に溶解させるときの具体的な手法については開示されていない。本発明の第1の態様は、効率よく粉薬を輸液に溶解させることを目的とする。
【0005】
また、特許文献1には、混注に使用する注射器の種類に応じた制御については開示されていない。本発明の第2の態様は、注射器の筒先の種類に応じた制御を行うことを目的とする。
【0006】
また、特許文献1には、混注に使用する注射器に取付けられた針の種類に応じた制御については開示されていない。本発明の第3の態様は、注射器に取付けられた針の種類に応じた混注動作を行うことを目的とする。
【0007】
また、特許文献1には、針を保持する機構については開示されていない。本発明の第4の態様は、針を保持する機構が液体によって汚染される可能性を低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様に係る混注装置は、注射器に収容された輸液の一部を、粉薬が収容された薬剤容器に注入する注入部と、前記注入部が輸液を注入した薬剤容器から、粉薬が溶解した輸液を、注射器を用いて抜取る抜取部と、前記注入部が前記薬剤容器に注入しなかった残余の輸液に、前記抜取部が抜取った輸液を混合する混合部と、前記注入部の動作と、前記抜取部の動作と、前記混合部の動作と、をこの順で複数回実行する動作制御部と、を備える。
【0009】
本発明の第2の態様に係る混注装置は、薬剤容器に収容された薬剤を輸液容器に収容された輸液に混注する混注装置であって、前記輸液容器に収容された輸液を抜取る注射器、前記輸液容器に液薬もしくは輸液を注入する注射器、前記薬剤容器に収容された液薬もしくは輸液を抜取る注射器、又は、前記薬剤容器に輸液を注入する注射器が、中口タイプの注射器であるか、横口タイプの注射器であるかを判定する第1判定部を備える。
【0010】
本発明の第3の態様に係る混注装置は、薬剤容器に収容された薬剤を輸液容器に収容された輸液に混注する混注装置であって、前記輸液容器に収容された輸液を抜取る注射器、前記輸液容器に液薬もしくは輸液を注入する注射器、前記薬剤容器に収容された液薬もしくは輸液を抜取る注射器、又は、前記薬剤容器に輸液を注入する注射器に取付けられた針の種類に応じて、前記薬剤容器の栓もしくは前記輸液容器の栓への前記針の穿刺量、又は、前記薬剤容器の栓もしくは前記輸液容器の栓における前記針の穿刺位置を調整する調整部を備える。
【0011】
本発明の第4の態様に係る混注装置は、薬剤容器に収容された薬剤を輸液容器に収容された輸液に混注する混注部を備え、前記混注部は、互いに近接した位置と、互いに離反した位置と、の間で移動する一対の移動部を備え、前記一対の移動部はそれぞれ、前記互いに近接した位置において、混注に用いる注射器の針を挟持する挟持部分と、前記挟持部分以外の非挟持部分と、を有し、前記挟持部分は絶縁部材を有し、前記非挟持部分の少なくとも一部は導電性部材を有する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の第1の態様によれば、効率よく粉薬を輸液に溶解させることができる。
【0013】
本発明の第2の態様によれば、注射器の筒先の種類に応じた制御を行うことができる。
【0014】
本発明の第3の態様によれば、注射器に取付けられた針の種類に応じた混注動作を行うことができる。
【0015】
本発明の第4の態様によれば、針を保持する機構が液体によって汚染される可能性を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】混注装置の全体構成の一例を示す斜視図である。
図2】混注装置を前方から見たときの、混注装置の概略的な内部構成の一例を示す斜視図である。
図3】混注装置を後方から見たときの、混注装置の概略的な内部構成の一例を示す斜視図である。
図4】混注装置の全体構成の一例を示すブロック図である。
図5】混注ユニットの構成の一例を示す斜視図である。
図6】移動部の構成の一例を示す模式図である。
図7】混注ユニットの概略的な構成の一例を示す正面図である。
図8】バイアルに収容された粉薬を輸液に混注するときの処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図9】粉薬を輸液に溶解するときの混注ユニットの動作例を示す模式図である。
図10】バイアルから、粉薬が溶解した輸液を抜取るときの混注ユニットの動作例を示す模式図である。
図11】バイアルから、粉薬が溶解した輸液を抜取るときの流れの一例を示す模式図である。
図12】バイアルに、輸液を注入するときの動作の一例を示す模式図である。
図13】針の穿刺状態、及び、針の穿刺により形成される貫通孔の一例を示す図である。
図14】栓における針の貫通範囲について説明するための図である。
図15】中口注射器及び横口注射器の一例を示す斜視図及び底面図である。
図16】注射器保持部の変形例を示す斜視図である。
図17】注射器に取り付けられる針の種類の一例を示す模式図である。
図18】針検出ユニットの一例を示す図である。
図19】針が第1針検出部及び第2針検出部の検出範囲を通過する状態の一例を示す図である。
図20】針の投影幅の一例を説明するための模式図である。
図21】注射器を連続して使用する場合の混注動作の一例を示す図である。
図22】注射器棚及びバイアル棚の全体構成の一例を示す斜視図である。
図23】第1搬送部側から見たときの1つの注射器棚及び1つのバイアル棚の構成の一例を示す図と、バイアル棚を説明するための図である。
図24】器材保持部に保持された注射器の筒先と、筒先検出部との位置関係の一例を示す模式図である。
図25】器材保持部の変形例を示す図である。
図26】第2搬送部の構成の一例を示す図である。
図27】輸液棚の構成の一例を示す斜視図である。
図28】第2搬送部の搬送方法の一例を説明するための図である。
図29】輸液容器の取出方法の一例について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態について、詳細に説明する。なお、各図面において、X軸およびY軸は、水平面(混注装置1の接地面)内における互いに垂直な2方向の軸である。X軸正方向を右方向、X軸負方向を左方向と称することもある。また、Y軸正方向を奥方向又は後方向、Y軸負方向を手前方向又は前方向と称することもある。Z軸はXY平面に対して鉛直に延びる軸であり、Z軸正方向を上方向、Z軸負方向を下方向と称することもある。
【0018】
〔混注装置の全体構成〕
図1は、混注装置1の全体構成の一例を示す斜視図である。図1に示すように、本実施形態に係る混注装置1は、注射器棚10、バイアル棚20、輸液棚30、印刷・鑑査ユニット50、輸液受入棚60、ゴミ箱部70、タッチパネル80、及びボタン90を備える。
【0019】
混注装置1は、調製及び投薬に関するデータ(以降、調製・投薬データと称する)に示された薬剤と注射器と輸液とを用いて、薬剤と輸液とを混合する混注処理(混注動作)を実行する装置である。混注動作に用いられる輸液は、例えば、食塩水(生理用食塩水)又はブドウ糖を含む液体であってよい。
【0020】
例えば、調製・投薬データに示された薬剤が液体状の薬剤(液薬)である場合、混注装置1は、注射器を用いて、当該薬剤を、当該薬剤が収容されたバイアル(薬剤容器の一例)から吸引し、当該注射器から輸液容器(輸液バッグ)に当該薬剤を注入する。調製・投薬データに示された薬剤が固体状の薬剤(粉薬)である場合、混注装置1は、注射器を用いて輸液容器から輸液を吸引して、当該バイアルに輸液を注入する。これにより、バイアルにおいて、固体状の薬剤を液体状にすることができる。その後、混注装置1は、注射器を用いて液体状の薬剤(薬剤が溶解した輸液)を輸液容器に注入する。混注装置1は、このようにして混注動作を実行する。混注動作には、注射器を用いてバイアルから薬剤を吸引して他のバイアルに注入する動作が含まれてもよい。これらの混注動作は、後述する混注ユニット40により実行される。
【0021】
混注装置1は、例えば、扉の開閉により、ユーザが注射器、バイアル及び輸液容器を混注装置1の内部に充填できる。後述の空気清浄部によって、混注装置1の内部を清浄な状態に保ち、混注処理時に薬剤及び輸液が汚染される可能性を低減している。また、混注装置1の内部を清浄な状態に保つために、混注装置1の内部は、陽圧に保たれている。
【0022】
また、上記調製・投薬データは、混注装置1の制御部140(図4参照)が混注処理を行うために必要とするデータである。上記調製・投薬データの少なくとも一部は、処方データに基づいて生成されてもよい。
【0023】
調製・投薬データには、例えば、混注に使用する薬剤の種類を示す情報、当該薬剤の処方量、注射器の種類を示す情報、輸液の種類を示す情報(輸液種類情報)、及び、輸液容器からの輸液の抜取量を示す情報が含まれる。また、調製・投薬データには、輸液容器の種類(例えば容量等の大きさ)を示す情報が含まれていてもよい。薬剤の種類を示す情報には、薬剤が粉薬か液薬かを示す情報が含まれていてもよい。注射器の種類を示す情報には、中口注射器か横口注射器かを示す情報、シリンジの大きさを示す情報、注射器に取付けられた針の種類を示す情報が含まれていてもよい。
【0024】
さらに、調製・投薬データには、例えば、薬剤が注入された輸液容器に関する情報が含まれる。当該情報としては、例えば、薬剤が処方された患者名等の処方属性情報、用法及び用量等の処方明細情報、処方の受付順を示すオーダー番号、及び、輸液種類情報(例:輸液名)等が挙げられる。
【0025】
上記に示した調製・投薬データはあくまで一例にすぎず、後述する情報のうち、混注に使用する情報は、調製・投薬データに含まれていてもよい。
【0026】
注射器棚10は、混注装置1に充填された注射器を保管可能な器材保管棚である。注射器棚10には、注射器側扉16が設けられている。ユーザは、注射器側扉16を開閉することにより、注射器を注射器棚10に保持させることができる。
【0027】
バイアル棚20は、混注装置1に充填されたバイアルを保管可能な器材保管棚である。バイアル棚20には、バイアル側扉27が設けられている。ユーザは、バイアル側扉27を開閉することにより、バイアルをバイアル棚20に保持させることができる。
【0028】
輸液棚30は、混注装置1に充填された輸液容器を保管可能な輸液保管棚である。輸液棚30には、輸液側扉34が設けられている。ユーザは、輸液側扉34を開閉することにより、輸液容器を輸液側扉34に保持させることができる。
【0029】
注射器側扉16、バイアル側扉27及び輸液側扉34はそれぞれ、注射器棚10、バイアル棚20又は輸液棚30へのユーザのアクセスを遮断可能な扉である。混注装置1では、注射器側扉16、バイアル側扉27及び輸液側扉34のうち、1つの扉のみがロックが解除された状態となるように、後述する制御部140によって制御される。
【0030】
印刷・鑑査ユニット50は、第2ラベルを印刷し、薬剤注入前又は薬剤注入後の輸液容器に貼付するユニットである。印刷・鑑査ユニット50は、不適情報ラベルを印刷し、薬剤注入後の輸液容器に貼付してもよい。また、印刷・鑑査ユニット50は、薬剤注入前後の輸液容器を計量するユニットでもある。
【0031】
輸液容器には、輸液容器を提供する製薬メーカーによって、例えば輸液の種類及び/又は輸液容器の種類が印刷された第1ラベルが予め貼付されている。第1ラベルは、輸液ラベルとも称される。一方、上述した、薬剤が注入された輸液容器に関する情報は、薬剤の注入対象である輸液容器に付与される情報であり、輸液容器に予め貼付された第1ラベルに含まれる情報とは異なる情報である。印刷・鑑査ユニット50は、この情報の内容をラベルに印刷し、第1ラベルとは異なる第2ラベルとして、輸液容器に貼付する。
【0032】
不適情報ラベルは、不適情報が印刷されたラベルである。不適情報ラベルは、例えば×印が印刷されたラベルであってよい。不適情報は、例えば、印刷・鑑査ユニット50が計量した重量が不適であることを示す情報、及び/又は、第2ラベルから読取った情報に調製・投薬データに示された薬剤の種類が含まれていないことを示す情報であってよい。上記重量が不適とは、例えば、輸液容器への薬剤の注入量(処方量)、又は、輸液容器からの輸液の抜取量が調製・投薬データに示された量に対応していないことを示す。上記重量が適であるかどうか、及び、上記第2ラベルから読取った情報に調製・投薬データに示された薬剤の種類が含まれているかどうかは、後述の制御部140が判定する。
【0033】
輸液受入棚60は、第2ラベルが貼付された薬剤注入後の輸液容器を受入れるユニットである。輸液受入棚60には、輸液受入扉61が設けられている。ゴミ箱部70は、使用済みの注射器を受入れる箱である。タッチパネル80は、ユーザによる各種操作を受付ける操作部と、各種情報を表示する表示部と、の機能を有する。操作部と表示部とが別の部材として設けられていてもよい。また、表示部に代えて、各種情報を提示する提示部(例:スピーカ)が設けられてもよい。
【0034】
ボタン90は、注射器側扉16、バイアル側扉27、輸液側扉34及び輸液受入扉61のそれぞれについて、ロックを解除するために、ユーザ操作を受付けることが可能な機械的なボタンである。注射器側扉16、バイアル側扉27、輸液側扉34及び輸液受入扉61のそれぞれに対応して1つずつ設けられている。注射器側扉16、バイアル側扉27、輸液側扉34及び輸液受入扉61は閉鎖状態となると、ロック機構(不図示)によりロックされる。注射器側扉16、バイアル側扉27、輸液側扉34及び輸液受入扉61は、ユーザがボタン90を押下したときのみロックが解除された状態となる。但し、後述の制御部140は、何れかの扉のロックを解除して開放状態とすることが可能となった場合、閉鎖状態でありかつロックされた状態の扉に対応するボタン90に対するユーザ操作を受付けても無効とする。これにより、制御部140は、ロックが解除された扉以外の扉について、閉鎖状態でありかつロックされた状態を維持する。
【0035】
なお、制御部140は、後述の第1搬送部110又は第2搬送部120がアクセス中である注射器棚10、バイアル棚20、輸液棚30又は輸液受入棚60の扉に対応するボタン90を押してもロックを解除しない。
【0036】
また、注射器棚10、バイアル棚20、輸液棚30及び輸液受入棚60のそれぞれに対応して、発光部材(不図示)(例えばLED;Light Emitting Diode)が設けられてもよい。制御部140は、第1搬送部110又は第2搬送部120がアクセスする棚に対応する発光部材を点灯させてもよい。この場合、各扉のロック機構が必ずしも設けられていなくてもよい。
【0037】
〔混注装置の内部構成の概要〕
図2は、混注装置1を前方(手前側)から見たときの、混注装置1の概略的な内部構成の一例を示す斜視図である。図3は、混注装置1を後方(奥方向)から見たときの、混注装置1の概略的な内部構成の一例を示す斜視図である。
【0038】
図2及び図3に示すように、混注装置1は、上述した注射器棚10、バイアル棚20、輸液棚30、印刷・鑑査ユニット50、輸液受入棚60及びゴミ箱部70の他、混注ユニット40、第1搬送部110、第2搬送部120及び空気清浄部130を備える。
【0039】
混注ユニット40は、バイアル502に収容された薬剤(粉薬又は液薬)を、輸液容器503に収容された輸液に混注する混注部として機能する。本実施形態では、混注ユニット40は、注射器棚10及びバイアル棚20と、輸液棚30及び輸液受入棚60と、の間に位置している。
【0040】
混注ユニット40は、輸液容器503に、バイアル502に収容された液薬、又は、バイアル502に収容された、粉薬が溶解した輸液を、輸液容器503に注入する注入部として機能する。混注ユニット40は、輸液容器503に収容された輸液を、粉薬が収容されたバイアル502に注入する注入部として機能する。また、混注ユニット40は、輸液容器503から輸液を抜取る抜取部として機能する。混注ユニット40は、バイアル502から、液薬、又は、粉薬を溶解した輸液を抜取る抜取部として機能する。
【0041】
第1搬送部110は、調製・投薬データに示された注射器501を注射器棚10から混注ユニット40へ、又は、調製・投薬データに示された薬剤が収容されたバイアル502をバイアル棚20から混注ユニット40へと搬送する。調製・投薬データが入力されると、第1搬送部110は、注射器棚10に保管されている注射器501と、バイアル棚20に保管されているバイアル502とを、混注ユニット40へと搬送する。本実施形態では、第1搬送部110は、注射器棚10に保管されている注射器501の胴部の上部を掴み、注射器501を混注ユニット40に受渡す。同様に、第1搬送部110は、バイアル棚20に保管されているバイアル502の首部を掴み、バイアル502を混注ユニット40に受渡す。
【0042】
また、第1搬送部110は、注射器棚10に保管されている注射器501を混注ユニット40に搬送する前に、キャップ着脱部(不図示)に搬送する。これにより、第1搬送部110は、注射器501の針に取付けられた針キャップを外すことができると共に、針キャップが外された状態の注射器501を混注ユニット40に搬送できる。また、第1搬送部110は、混注処理後の注射器501及びバイアル502(不要になった注射器501及びバイアル502)をゴミ箱部70に搬送する。但し、バイアル502の種類によっては、第1搬送部110は、ゴミ箱部70に搬送しなくてもよい。
【0043】
なお、第1搬送部110は、注射器501及びバイアル502を搬送する、注射器501及びバイアル502共用の搬送部であるが、これに限れられない。注射器501を搬送する専用の搬送部、及びバイアル502を搬送する専用の搬送部がそれぞれ設けられていてもよい。
【0044】
第2搬送部120は、調製・投薬データに示された輸液容器503を、輸液棚30、混注ユニット40、印刷・鑑査ユニット50及び輸液受入棚60の間で搬送する。
【0045】
第2搬送部120は、輸液容器503を混注ユニット40へ搬送する。調製・投薬データが入力されると、第2搬送部120は、輸液棚30に保管されている輸液容器503を混注ユニット40へと搬送する。本実施形態では、第2搬送部120は、輸液棚30に保管されている輸液容器503の胴部を吸着し、混注ユニット40に受渡す。
【0046】
また、第2搬送部120は、輸液容器503を、混注ユニット40と印刷・鑑査ユニット50との間で搬送する。本実施形態では、例えば、第2搬送部120は、薬剤注入後の輸液容器503の胴部を吸着し、印刷・鑑査ユニット50に搬送する。また、第2搬送部120は、印刷・鑑査ユニット50によって第2ラベル又は不適情報ラベルが貼付された輸液容器503を、輸液受入棚60に受渡す。
【0047】
空気清浄部130は、混注装置1内の空気を清浄化して排気する。本実施形態では、混注装置1の上部に設けられている。空気清浄部130が清浄化した空気は、混注装置1の上部から底部へと流れる。空気清浄部130は、例えば、HEPA(High Efficiency Particulate Air)フィルタを有する。
【0048】
なお、混注装置1における各部材の配置態様は、上述した配置態様に限られない。また本実施形態では、注射器棚10、バイアル棚20及び輸液棚30がそれぞれ複数段設けられているが、それぞれ1段ずつ設けられる構成であってもよい。本実施形態では、輸液受入棚60は1段設けられているが、複数段設けられる構成であってもよい。また、混注装置1の側面(図2、紙面右側)に、注射器側扉16及び/又はバイアル側扉27が設けられていてもよい。この場合、混注装置1の側面側から、複数の注射器501又は複数のバイアル502が充填可能となる。なお、輸液棚30が注射器棚10及びバイアル棚20と同様の構成の場合、混注装置1の側面側(図2、紙面左側)に、輸液側扉34を設けてもよい。
【0049】
〔その他の構成〕
図4は、混注装置1の全体構成の一例を示すブロック図である。図4に示すように、制御部140及び記憶部200を備える。なお、図4では、混注装置1が備えるハード構成のうち、制御部140が制御し得る主たるハード構成のみを図示している。
【0050】
制御部140は、調製・投薬データに基づいて、混注装置1の動作を統括して制御する。
制御部140は、例えば、注射器搬送制御部141、バイアル搬送制御部142、第1搬送制御部143、混注ユニット制御部144、及び、第2搬送制御部145を備える。制御部140は、例えば、押込制御部147、シャッター制御部148、印刷・鑑査ユニット制御部149、タッチパネル制御部150、第1判定部151、第2判定部152、及び、判別部153を備える。
【0051】
注射器搬送制御部141は、注射器棚10において、注射器501の搬送に関連する部材の動作を制御する。バイアル搬送制御部142は、バイアル棚20において、バイアル502の搬送に関連する部材の動作を制御する。混注ユニット制御部144は、混注ユニット40が備える部材の動作を制御する。
【0052】
第1搬送制御部143は、第1搬送部110が備える部材の動作を制御する。第1搬送制御部143は、例えば、注射器棚10、バイアル棚20、混注ユニット40、ゴミ箱部70及びキャップ着脱部(不図示)の間における第1搬送部110の移動を制御する。第2搬送制御部145は、第2搬送部120が備える部材の動作を制御する。第2搬送制御部145は、例えば、輸液棚30、混注ユニット40、印刷・鑑査ユニット50及び輸液受入棚60との間における第2搬送部120の移動を制御する。
【0053】
押込制御部147は、輸液棚30において、輸液容器503の搬送に関連する部材の動作を制御する。シャッター制御部148は、シャッター37(図3参照)の移動を制御する。印刷・鑑査ユニット制御部149は、印刷・鑑査ユニット50が備える部材の動作を制御する。タッチパネル制御部150は、タッチパネル80を制御する。第1判定部151、第2判定部152、及び、判別部153については後述する。
【0054】
また、記憶部200には、制御部140が各種処理(例えば混注処理)を行うためのデータが記憶される。記憶部200には、例えば、調製・投薬データが記憶される。記憶部200に記憶される情報は、混注装置1の外部の記憶装置に記憶されてもよい。
【0055】
また、混注装置1は、注射器501の針キャップを着脱するキャップ着脱部を備える。注射器棚10に充填される注射器501には、注射器501の針に針キャップが取付けられている。キャップ着脱部は、混注ユニット40に搬送する前の注射器501の針に取付けられた針キャップを外し、当該針キャップを保持する。キャップ着脱部は、第1搬送部110がキャップ着脱部に注射器501を挿入したときに、注射器501の針に取付けられた針キャップを挟持することにより、注射器501から針キャップを外す。
【0056】
また、キャップ着脱部は、混注ユニット40において使用された注射器501の針に、保持している針キャップを取付ける。キャップ着脱部は、第1搬送部110がキャップ着脱部に注射器501を挿入し、注射器の針が針キャップに挿入された状態で、針キャップの挟持を解除する。これにより、キャップ着脱部は、針キャップを注射器501の針に取付ける。
【0057】
キャップ着脱部は、注射器501の針を挟持する一対の挟持部(爪部)を備えていてもよい。一対の挟持部は、第1搬送部110がキャップ着脱部に注射器501を挿入したときに、注射器501の針を挟持する。一対の挟持部は、キャップ着脱部における針キャップの保持位置と対向する位置に設けられている。第1搬送部110は、一対の挟持部が注射器501の針を挟持した状態で、針キャップの保持位置へと注射器501をさらに移動させる。
【0058】
一対の挟持部により注射器501の針を挟持することにより、注射器501の針の向きを、針キャップの保持位置の方向に向けることができる。そのため、混注動作により注射器501の針が曲がったとしても、注射器501の針を針キャップに挿入させることができる。
【0059】
〔混注ユニットの具体的構成〕
図5は、混注ユニット40の構成の一例を示す斜視図である。図5に示すように、混注ユニット40は、注射器保持部41と、バイアル保持部42と、輸液容器保持部43と、を備える。
【0060】
注射器保持部41は、第1搬送部110によって搬送された注射器501を保持する部材である。
【0061】
注射器501は、混注ユニット40において、輸液容器503に収容された輸液を抜取る注射器、又は、輸液容器503に液薬もしくは輸液を注入する注射器として用いられる。また、注射器501は、バイアル502に収容された液薬もしくは輸液を抜取る注射器、又は、バイアル502に輸液を注入する注射器として用いられる。バイアル502から抜取られる輸液、及び、輸液容器503に注入される輸液は、粉薬が溶解した輸液である。また、バイアル502に注入される輸液は、輸液容器503に収容された輸液(粉薬が溶解していない輸液)、又は、粉薬が溶解した輸液である。
【0062】
注射器501は、シリンジ5011、針5014及びプランジャ5015を備える。プランジャ5015は、シリンジ5011に対して出入りする押し子である。プランジャ5015がシリンジ5011に対して出入りすることにより、薬剤等をシリンジ5011内に引入れたり、シリンジ5011内の薬剤等を排出したりすることができる。シリンジ5011は、針5014が装着される針側端部5012と、針側端部5012と反対側の端部であって、プランジャ5015が出入りする側の端部であるフランジ5013と、を備える。
【0063】
注射器保持部41は、移動部411と、位置固定部412と、第1シリンジ保持部416と、プランジャ挟持部417と、を備える。なお、本明細書において、対象物を挟持するものとして説明する部材はあくまで一例であり、当該部材は対象物を保持できる部材であればよい。
【0064】
移動部411は、互いに近接した位置と、互いに離反した位置と、の間で移動する一対の移動部である。移動部411は、互いに近接した位置に位置したときに、針5014を挟持する。移動部411は、針5014を挟持して、針5014の先端を決まった位置に位置させる。これにより、混注動作時に、曲がっている針5014であっても、輸液容器503に設けられた栓の所望の位置(正しい位置)に穿刺できる。
【0065】
図6は、移動部411の構成の一例を示す模式図である。図6の符号1001及び符号1002は、移動部411の平面図である。図6の符号1003は、移動部411の側面図である。図6は、移動部411が針5014を挟持した状態を示している。
【0066】
図6に示すように、移動部411は、第1移動部411A及び第2移動部411Bを備える。第1移動部411A及び第2移動部411Bはそれぞれ、互いに近接した位置において針5014を挟持する挟持部分Pr11(点線の枠囲み部分)と、挟持部分Pr11以外の非挟持部分Pr12と、を有する。挟持部分Pr11は絶縁部材4111を有し、非挟持部分Pr12の少なくとも一部は導電性部材4112を有する。
【0067】
図6の符号1001に示すように、絶縁部材4111は、平面視において、第1移動部411A及び第2移動部411Bが互いに対向する領域に設けられていてもよい。本実施形態では、第1移動部411A及び第2移動部411Bは、導電性部材4112で構成されており、平面視において第1移動部411A及び第2移動部411Bが互いに対向する領域に絶縁部材4111が設けられている。絶縁部材4111は、例えばホワイトアルミナ溶射により設けられてもよい。図6の符号1002に示すように、絶縁部材4111は、平面視において、第1移動部411A及び第2移動部411Bの挟持部分Pr11にのみ(又は挟持部分Pr11及びその周辺領域にのみ)設けられていてもよい。
【0068】
第1移動部411Aにおける第2移動部411Bと対向する表面の全体、及び、第2移動部411Bにおける第1移動部411Aと対向する表面の全体に、絶縁部材4111が設けられていなくてよい。これらの表面に、絶縁部材4111と導電性部材4112との両方が含まれていてよい。少なくとも挟持部分Pr11が絶縁部材4111で構成されていればよい。
【0069】
本実施形態では、図6の符号1003に示すように、第1移動部411A及び第2移動部411Bは、互いに近接した状態において、L字状の隙間を形成する。この状態において、第1移動部411A及び第2移動部411Bが上下方向(Z軸方向)において互いに対向する対向領域Ar11は、非挟持部分Pr12の一部である。対向領域Ar11には、絶縁部材4111は設けられておらず、対向領域Ar11は導電性部材4112で構成されている。
【0070】
注射器501から液体(液薬又は輸液)が漏れて針5014に付着している場合、挟持部分Pr11において針5014を挟持したときに、液体は、挟持部分Pr11に付着する。その他、バイアル502の栓から漏れた液体が針5014に付着する場合、又は、針5014の先端部をバイアル502もしくは輸液容器503に挿入したときに、液体が針5014に付着する場合がある。このような場合にも、挟持部分Pr11において針5014を挟持したときに、液体は、挟持部分Pr11に付着する。
【0071】
挟持部分Pr11に付着した液体は、第1移動部411A及び第2移動部411Bの、導電性部材4112で構成されている表面まで移動する。そのため、第1移動部411A及び第2移動部411Bを互いに近接させた状態において、液体を介して第1移動部411A及び第2移動部411Bは導通する。制御部140は、この導通を検出することにより、移動部411に液体が付着した状態を検出できる。これにより、制御部140は、挟持部分Pr11に液体が付着している可能性が高いと判定できる。
【0072】
挟持部分Pr11に付着した液体は、特に対向領域Ar11に溜まりやすい。具体的には、図6の符号1003において、第1移動部411A及び第2移動部411Bの互いに対向する表面であり、かつ絶縁部材4111が設けられた表面は、混注ユニット40の回動時以外においては、垂直方向(±Z軸方向)を向いている。一方で、対向領域Ar11は、混注ユニット40の回動時以外においては、垂直方向を向いていない。そのため、上記互いに対向する表面に比べて、対向領域Ar11に液体が溜まりやすい。対向領域Ar11を導電性部材4112で構成することにより、制御部140は、挟持部分Pr11に液体が付着している可能性が高いことを精度よく判定できる。
【0073】
制御部140は、例えば、輸液容器503に液体を注入した後、次の混注動作で使用する注射器501の針5014を移動部411に保持させる前に、移動部411に電流を流すことにより、移動部411に液体が付着しているかを判定してもよい。制御部140が移動部411に液体が付着していると判定した場合、タッチパネル制御部150は、タッチパネル80に、移動部411に液体が付着していること、又は、移動部411(特に挟持部分Pr11及びその周辺領域)の清掃を行うこと、を報知してもよい。タッチパネル制御部150は、例えば、輸液容器503に液体を注入した後、次の混注動作で使用する注射器501の針5014を移動部411に保持させる前に、報知してもよい。
【0074】
前の混注動作で使用した液体が挟持部分Pr11に付着した状態で、移動部411が次の混注動作で使用する注射器501の針5014を保持した場合、液体が針5014に付着する虞がある。前の混注動作で使用した液体が付着した針5014を、次の混注動作で使用するバイアル502又は輸液容器503に挿入した場合、このバイアル502内の薬剤、又は、この輸液容器503内の輸液に、前の混注動作で使用した液体に混合してしまう。このような混合はコンタミネーションとも称される。上記のように、タッチパネル制御部150が、移動部411への液体の付着を検出した場合にその旨を報知することにより、コンタミネーションが発生する可能性を低減できる。
【0075】
このように、移動部411に液体が付着している場合であり、かつ、移動部411が互いに近接した位置に位置している場合には、液体を介して、移動部411のそれぞれが有する導電性部材4112が導通する。そのため、混注ユニット制御部144は、導通の有無に基づき、移動部411への液体の付着の有無の検出が可能となる。
【0076】
また、挟持部分Pr11は絶縁部材4111を有している。そのため、移動部411が挟持部分Pr11において針5014を挟持しているときに、針5014を介して移動部411が導通する可能性を低減できる。従って、混注ユニット制御部144が、針5014を介した導通により、移動部411に液体が付着したと誤検出する可能性を低減できる。
【0077】
第1シリンジ保持部416は、第1搬送部110が注射器棚10から搬送してきた注射器501を、最初に保持する部材である。第1シリンジ保持部416は、第1シリンジ保持部416に挿入されたシリンジ5011(例:シリンジ5011の下部)の側面を挟持する。
【0078】
位置固定部412は、針側端部5012とフランジ5013とにおいて、注射器501の延伸方向における注射器501の位置を固定する部材である。本実施形態では、位置固定部412を構成する第2シリンジ保持部413と第3シリンジ保持部414との相対的な位置は、注射器501の延伸方向に沿って変更できる。第2シリンジ保持部413及び第3シリンジ保持部414は、第2シリンジ保持部413及び第3シリンジ保持部414の少なくとも何れか一方が注射器501の延伸方向に沿って移動可能なように取り付けられている。
【0079】
本実施形態では、位置固定部412によって注射器501が保持されるとき、第2シリンジ保持部413が針側端部5012の下側から当接し、かつ、第3シリンジ保持部414がフランジ5013の上側から当接する。これにより、位置固定部412は、注射器501の延伸方向に沿って注射器501を挟持できる。
【0080】
プランジャ挟持部417は、プランジャ5015を挟持する部材である。本実施形態では、プランジャ挟持部417は、プランジャ5015の先端部を挟持する。プランジャ挟持部417が、移動部411、位置固定部412及び第1シリンジ保持部416に対して上下方向に移動することにより、シリンジ5011に対してプランジャ5015を移動させることができる。
【0081】
バイアル保持部42は、輸液容器503に注入される薬剤を収容するバイアル502(第1搬送部110によって搬送されたバイアル502)を保持する部材である。バイアル保持部42は、輸液容器503に注入される、粉薬を溶解した輸液を収容するバイアル502を保持する部材でもある。本実施形態では、バイアル保持部42は、バイアル502の首部を挟持する。
【0082】
輸液容器保持部43は、輸液容器503(第2搬送部120によって搬送された輸液容器503)を保持する部材である。本実施形態では、輸液容器保持部43は、輸液容器503の首部を挟持する輸液挟持部431と、輸液容器503から輸液を抜取るとき、又は、輸液容器503に輸液を注入するときに輸液容器503が載置される載置台432と、を備える。
【0083】
図7は、混注ユニット40の概略的な構成の一例を示す正面図であり、混注ユニット40の動作例を説明するための図である。図5及び図7に示すように、本実施形態では、混注ユニット40は、輸液棚30の側壁に設けられている。具体的には、混注装置1において、混注ユニット40は、注射器保持部41、バイアル保持部42及び輸液容器保持部43が注射器棚10及びバイアル棚20の方向(+X軸方向)を向くように配置されている。
【0084】
また、図7に示すように、注射器保持部41は、上下方向に移動可能である。これにより、注射器保持部41が保持する注射器501の直下に位置するバイアル502又は輸液容器503に、針5014を穿刺できる。
【0085】
また、バイアル保持部42及び輸液容器保持部43は、混注装置1の前後方向(±Y軸方向)に移動可能である。本実施形態では、バイアル保持部42及び輸液容器保持部43は基部44に取り付けられており、基部44が混注装置1の前後方向に移動する。これにより、バイアル保持部42及び輸液容器保持部43は、図7の符号1011に示す位置と、図7の符号1012に示す位置との間で移動できる。図7の符号1011に示す位置は、針5014をバイアル502に穿刺するときの第1穿刺位置であり、図7の符号1012に示す位置は、針5014を輸液容器503に穿刺するときの第2穿刺位置である。従って、注射器保持部41に保持された注射器501の針5014を、バイアル保持部42に保持されたバイアル502の栓5021、又は、輸液容器保持部43に保持された輸液容器503の栓5035に穿刺できる。但し、基部44ではなく、注射器保持部41が混注装置1の前後方向に移動してもよい。
【0086】
また、図7の符号1012に示すように、混注ユニット40は、回転軸Ax周りに(Axを回転軸として)回転可能に設けられている。回転軸Axは、注射器保持部41、バイアル保持部42及び輸液容器保持部43が設けられた台座に対して垂直方向(±X軸方向)に延伸する軸である。
【0087】
図7の符号1011に示す第1穿刺位置において、混注ユニット40が回転軸Ax周りに回転することにより、バイアル502を注射器501よりも上側に移動させることができる。図7の符号1012に示す第2穿刺位置において、混注ユニット40が回転軸Ax周りに回転することにより、輸液容器503を注射器501よりも上側に移動させることができる。これらの状態において、混注ユニット40は、プランジャ5015を移動させることにより、注射器501とバイアル502又は輸液容器503との間で液体を出入れできる。
【0088】
<粉薬の混注処理例>
図8は、バイアル502に収容された粉薬を輸液に混注するときの処理の流れの一例を示すフローチャートである。本処理の前提として、混注に使用される注射器501、バイアル502及び輸液容器503は、混注ユニット40に保持されている。図9は、粉薬を輸液に溶解するときの混注ユニット40の動作例を示す模式図である。図10及び図11は、バイアル502から、粉薬が溶解した輸液を抜取るときの混注ユニット40の動作例を示す模式図である。
【0089】
図8に示すように、混注ユニット制御部144は、注射器保持部41を制御して、輸液容器503の栓5035に注射器501の針5014を穿刺した後、輸液容器503から輸液を抜取る(S1)。混注ユニット制御部144が輸液容器503から抜取る輸液の量は、上述した調製・投薬データに示された輸液の抜取量である。この抜取量は、規定量より多く設定されている場合がある。混注ユニット制御部144は、例えば規定量が5mLであれば、例えば10mLの輸液を輸液容器503から抜取る。
【0090】
規定量は、バイアル502に注入可能な輸液の量であり、粉薬が収容されたバイアル502の種類毎に決められている。バイアル502に輸液を注入すると、バイアル502の内圧が上昇する。内圧が上昇し続けると、栓5021に亀裂が生じ、栓5021から輸液が噴出す虞がある。規定量は、例えば実験等を経て、バイアル502から輸液又は気体を抜取って陰圧せずとも亀裂が生じない程度の量に決められていてもよい。記憶部200には、粉薬が収容されたバイアル502の種類と、バイアル502に注入可能な輸液の規定量と、が対応付けられて記憶されている。但し、全てのバイアル502に対して、規定量が一律に決められていてもよい。上述のバイアル502の種類を示す情報は、調製・投薬データに含まれている。
【0091】
その後、混注ユニット制御部144は、栓5035から注射器501の針5014を抜取り、基部44を移動させた後、栓5021に注射器501に取付けられた針5014を穿刺する。その後、混注ユニット制御部144は、バイアル502が注射器501の直上の位置となるまで、混注ユニット40をAx軸の周りに回転させる。
【0092】
混注ユニット制御部144は、プランジャ挟持部417を制御してプランジャ5015を移動させることにより、注射器501に収容された輸液の一部を、粉薬が収容されたバイアル502に注入する(S2)。プランジャ挟持部417は注入部の一例である。この注入により、バイアル502において、粉薬を輸液に溶解させることができる。
【0093】
混注ユニット制御部144は、注射器501に収容された輸液の一部として、例えば規定量の輸液(例えば10mLのうちの5mL)をバイアル502に注入する。この場合、輸液の注入に伴うバイアル502の内圧の上昇量を低減できる。この観点からいえば、混注ユニット制御部144は、規定量未満の輸液をバイアル502に注入してもよい。但し、規定量の輸液をバイアル502に注入した方が、粉薬を輸液に効率よく溶解させることができる。バイアル502への注入量を示す情報は、記憶部200に記憶されている。
【0094】
本実施形態では、プランジャ挟持部417は、図9の符号1021に示すように、注射器501に取付けられた針5014の先端部が上方を向いて栓5021に穿刺した状態で、注射器501に収容された輸液をバイアル502に注入(噴射)する。これにより、バイアル502に注入した輸液がバイアル502全体に行き渡りやすい。そのため、粉薬を効率良く輸液に溶解できる。
【0095】
次に、混注ユニット制御部144は、プランジャ挟持部417を制御してプランジャ5015を移動させることにより、S2で輸液を注入したバイアル502から、粉薬が溶解した輸液を、S2で輸液を注入した注射器501と同一の注射器501を用いて抜取る(S3)。プランジャ挟持部417は抜取部の一例である。
【0096】
上記の抜取りにより、注射器501の、バイアル502に注入されなかった残余の輸液に、S3で抜取った粉薬が溶解した輸液が混合される。プランジャ挟持部417は、バイアル502に注入されなかった残余の輸液に、S3で抜取った粉薬が溶解した輸液を混合する混合部の一例である。
【0097】
図9の符号1022は、プランジャ挟持部417によるバイアル502への輸液の注入の完了した状態を示す。混注ユニット制御部144は、この状態を維持したまま、図9の符号1023に示すように、バイアル502に収容された、粉薬が溶解した輸液を、当該注射器501の内部に引入れる。
【0098】
このように、残余の輸液が収容された注射器501を用いて、S2で輸液を注入したバイアル502から、粉薬が溶解した輸液を抜取ることにより、当該注射器501の内部において、残余の輸液と、粉薬が溶解した輸液とを混合できる。粉薬が溶解した輸液の抜取り動作によってこれらの2つの輸液を混合できるため、効率良い混合が可能となる。また、残余の輸液における粉薬の濃度は、バイアル502から抜取った輸液における粉薬の濃度よりも低い。従って、残余の輸液とバイアル502から抜取った輸液との混合によって、混合後の注射器501内の輸液の粉薬の濃度は、バイアル502から抜取った輸液の粉薬の濃度よりも低い。そのため、次の輸液の注入時において、低濃度の輸液で、バイアル502内の粉薬を溶解することになるため、効率良く粉薬を溶解できる。
【0099】
混注ユニット制御部144は、S2~S4の処理を所定回数実行したかを判定する(S5)。所定回数は、予め設定された規定回数-1を示す値である。規定回数を示す情報は、記憶部200に記憶されている。規定回数は、粉薬の種類に依らず一定の値であってもよいし、粉薬の種類毎に設定された値であってもよい。規定回数は2以上の値に設定されている。規定回数は、例えば実験等を経て、バイアル502に収容された粉薬が輸液に十分に溶解される回数に決められていてもよい。
【0100】
混注ユニット制御部144は、S2~S4の処理を所定回数実行していないと判定した場合(S5でNO)、S2の処理に戻り、所定回数に達するまでS2~S4の処理を実行する。2回目以降のS2の処理においては、混注ユニット40(プランジャ挟持部417)は、バイアル502に注入する輸液の一部として、粉薬が溶解した輸液(S4で混合された輸液の一部)をバイアル502に注入する。混注ユニット制御部144は、図9の符号1023及び符号1024に示すように、注射器501の針5014を栓5021に穿刺した状態を維持したまま、注射器501の内部に引入れた、粉薬が溶解した輸液を、バイアル502に注入する。また、2回目以降のS4の処理においては、注射器501内の残余の輸液は、粉薬が溶解した輸液である。また、2回目以降の輸液の注入量は、規定量よりも少なくてよい。
【0101】
混注ユニット制御部144は、S2~S4の処理を所定回数実行したと判定した場合(S5でYES)、バイアル502から抜取った、粉薬が溶解した輸液を、バイアル502に注入する(S6)。
【0102】
次に、混注ユニット制御部144は、混注ユニット40を回転させて、栓5021が下方を向いた第1状態から水平面側を向く第2状態となるように、バイアル502を傾ける(S7)。混注ユニット40は、傾斜部の一例である。本実施形態では、混注ユニット制御部144は、バイアル502の姿勢を、図10の符号1031に示すように、注射器501の直上にバイアル502が位置した第1状態から、図10の符号1032に示すようにバイアル502が傾いた第2状態へと変更する。
【0103】
混注ユニット制御部144は、第2状態においてプランジャ挟持部417を制御して、バイアル502から、粉薬が溶解した輸液を抜取る(S8)。これにより、注射器501内の残余の輸液に、S8で抜取った粉薬が溶解した輸液が混合される(S9)。
【0104】
栓5021が下方を向いている状態では、粉薬が溶解した輸液は、自重により、栓5021側に流れてくる。しかし、図10の符号1031に示すように、バイアル502の栓5021が鉛直下方向を向いている場合、底部5022に、粉薬が溶解した輸液が付着し、底部5022に液溜まりが生じる虞がある。特に、図10に示すように、底部5022の中央領域5022Aが角部5022Bよりも内側に突出している場合、角部5022Bにおける液体の接触面積が大きくなることから、底部5022に液溜まりが生じやすい。
【0105】
バイアル502から、粉薬を溶解した輸液を抜取るときに、バイアル502が第1状態よりも水平面側の第2状態となるように、バイアル502を傾けることにより、底部5022に付着した、粉薬が溶解した輸液が、自重により、栓5021側に流れやすくなる。
【0106】
第2状態とするときの傾斜角度を示す情報は、記憶部200に記憶されている。傾斜角度は、粉薬の種類に依らず一定の値であってもよいし、粉薬の種類毎に設定された値であってもよい。傾斜角度は、粉薬が溶解した輸液の流れやすさを考慮して、例えば実験等を経て決定されてもよい。後述する第3状態とするときの傾斜角度についても同様である。
【0107】
混注ユニット制御部144は、S8において、バイアル502から、粉薬が溶解した輸液を所定量抜取った後、所定時間が経過したかを判定する(S10)。混注ユニット制御部144は、所定時間が経過するまで待機する(S10でNOの場合)。混注ユニット制御部144は、所定時間が経過したと判定した場合(S10でYESの場合)、プランジャ挟持部417を制御して、バイアル502から再度、粉薬が溶解した輸液を抜取る(S12)。これにより、予め決められた抜取量の分、粉薬が溶解した輸液を、バイアル502から抜取ることができる。混注ユニット制御部144は、バイアル502から、粉薬が溶解した輸液を所定量抜取ってから、再度、粉薬が溶解した輸液を抜取るまでの間に、注射器501内の気体をバイアル502に注入する動作を行わない。
【0108】
バイアル502に輸液を注入した場合、粉薬の種類によっては泡が発生する。粉薬が溶解した輸液をバイアル502から抜取るためには、泡を液体に変えた方がよい。泡のままだと輸液を抜取りづらいためである。
【0109】
図11の符号1041に示すように泡が発生している状態において、混注ユニット制御部144は、粉薬が溶解した輸液を所定量抜取る処理(図8に示すS8の処理)を行うことにより、図11の符号1042に示すように輸液のみを抜取ることができる。そして、バイアル502から輸液のみを抜取ることにより、バイアル502の内部を陰圧できる。この陰圧により、図11の符号1043に示すように、輸液の注入により発生した泡を消滅させて液体に変えることができる。そのため、自然に泡が消失することを待機してから輸液を抜取るよりも早く、泡から液体に変わった輸液を抜取ることができる。
【0110】
所定量は、バイアル502に注入した輸液の量よりも少ない量に設定されている。泡となった輸液分を抜取らないようにするためである。また、所定量を示す情報及び所定時間を示す情報は、記憶部200に記憶されている。所定量及び所定時間は、粉薬の種類に依らず一定の値であってもよいし、粉薬の種類毎に設定された値であってもよい。また、所定量は、例えば、注入した輸液のうち泡になる割合を考慮するため、例えば実験等を経て決定されていてもよい。所定時間は、例えば、泡が液体に変わる時間を考慮するため、例えば実験等を経て決定されていてもよい。
【0111】
図11の符号1044に示すように、少なくとも輸液を抜取るときの針5014の先端部の位置は、栓5021と同等であってよい。針5014の先端部の開口のみが、栓5021からバイアル502の内部に存在する状態であればよい。これにより、バイアル502から、粉薬が溶解した輸液のほとんどを抜取ることが可能となる。栓5021の穿刺量は、混注に使用されるバイアル502の種類、注射器501の種類及び針5014の種類に基づき決定されていてもよい。
【0112】
S12に先立ち、混注ユニット制御部144は、混注ユニット40を回転させて、栓5021が第2状態よりも下方側を向いた第3状態となるように、バイアル502を傾ける(S11)。
【0113】
第2状態とした場合、バイアル502の肩部5023(図10の符号1032参照)に、粉薬が溶解した輸液が溜まる虞がある。そのため、第2状態のまま輸液を抜取ると、肩部5023に輸液が残ってしまう虞がある。上記のように、バイアル502の姿勢を第2状態から第3状態と変更することにより、第2状態とすることで肩部5023に滞留した輸液が、自重により、栓5021側に流れやすくなる。
【0114】
本実施形態では、混注ユニット制御部144は、バイアル502の姿勢を、第2状態から第1状態へと変更する。これにより、肩部5023に滞留した輸液のほとんどが、栓5021に流れやすくなる。
【0115】
(変形例)
・最初のS2の処理において、混注ユニット制御部144は、図12に示すように混注ユニット40の動作を制御してもよい。混注ユニット制御部144は、バイアル502に針5014を穿刺した後、混注ユニット40を回転させながら、注射器501内の輸液をバイアル502に注入してもよい。そして、混注ユニット制御部144は、バイアル502が注射器501の直上の位置となるまで、混注ユニット40を回転させる。このような動作制御を行うことにより、混注に要する時間を短縮できる。
【0116】
・混注ユニット制御部144は、バイアル502への輸液の注入中又は注入後に、混注ユニット40を回転させてもよい。バイアル502の直上に注射器501が位置しているときを0°と規定した場合、混注ユニット制御部144は、0°以上180°以下の範囲で、混注ユニット40を回転させてもよい。また、混注ユニット制御部144は、135°以上225°以下の範囲で、混注ユニット40を回転させてもよい。
【0117】
・S12の処理後、混注ユニット制御部144は、注射器保持部41を制御して、バイアル502から針5014を抜取る。針5014の抜取りは、例えば、バイアル502の直上に注射器501を位置させた後に行われる。
【0118】
混注ユニット制御部144は、針5014の抜取動作前に、プランジャ挟持部417を制御して、針5014の先端部をバイアル502内の気相に位置させた状態において、プランジャ5015を引いてもよい。その後、混注ユニット制御部144は、注射器保持部41を制御して、バイアル502から針5014を抜取ってもよい。
【0119】
上記状態においてプランジャ5015を引くことにより、バイアル502内の気体を注射器501内に移動させることができる。この移動により、バイアル502内及び注射器501内を陰圧することができる。注射器501内が陰圧となっているため、針5014を抜取っても針5014から輸液が垂れる可能性を低減できる。
【0120】
また、粉薬を溶解するためにバイアル502に注入した輸液の量よりも少ない量の輸液を、バイアル502から抜取る場合(端数採取とも称される)、輸液を抜取った後のバイアル502の内部は陽圧となっている。上記の動作により、バイアル502の内圧を低下させることができるため、バイアル502から輸液が噴出す可能性を低減できる。バイアル502から液薬を抜取る場合についても同様である。
【0121】
・混注ユニット制御部144は、S5以降の処理を行わなくてもよい。この場合、混注ユニット制御部144は、S5において、S2~S4の処理を規定回数実行したかを判定する。混注ユニット制御部144は、S2~S4の処理を規定回数実行した場合には、本フローを終了する。
【0122】
・バイアル502の姿勢を第1状態から第2状態に変更するタイミングは、例えば、最初に輸液をバイアル502に注入した後であってもよいし、その後に輸液をバイアル502に注入した後であってもよい。また、S6の処理前(最後に輸液をバイアル502に注入する前)であってもよい。バイアル502の姿勢を第2状態から第3状態に変更するタイミングは、例えば、S3の処理前であってもよいし、S8の処理前であってもよい。
【0123】
・混注ユニット制御部144は、バイアル502を傾ける処理(S7及びS11の処理)を行わなくてもよい。また、混注ユニット制御部144は、バイアル502に輸液を所定量注入してから所定時間経過後に、残余の輸液をバイアル502から抜取る処理(S8,S10及びS12の処理)を行わなくてもよい。混注ユニット制御部144は、例えば、輸液をバイアル502に注入したときに泡立ちが生じやすい粉薬に対してのみ、S8,S10及びS12の処理を行ってもよい。S8,S10及びS12の処理の要否を示す情報が、薬剤の種類を示す情報に対応付けて、記憶部200に記憶されていてもよい。
【0124】
・S8の処理において、混注ユニット制御部144は、バイアル502から輸液を所定量抜取る代わりに、バイアル502内の気体を抜取ってもよい。この場合、混注ユニット制御部144は、バイアル502内の気体を抜取った後、所定時間経過後に、バイアル502から輸液を抜取ってもよい。この場合であっても、バイアル502の内部を陰圧できるので、発生した泡を消滅させて液体に変えることができる。
【0125】
・S1で輸液容器503から規定量よりも多くの輸液を抜取っているが、これに限らず、注射器501に規定量よりも多くの輸液が予め収容されていてもよい。この場合、混注ユニット制御部144は、S1の処理を行わなくてもよい。
【0126】
・本実施形態では、バイアル502から輸液を抜取る動作を行うことにより、抜取った輸液を、注射器501内の残余の輸液と混合する動作が実行されている。しかし、抜取る動作と混合する動作とは、独立して行われてもよい。例えば、混注ユニット制御部144は、残余の輸液が収容された注射器501とは異なる注射器501を混注ユニット40に保持させて、当該注射器501によりバイアル502から輸液を抜取ってもよい。制御部140は、これらの2つの注射器501を保持する機構を制御して、一方の注射器501に収容された輸液と他方の注射器501に収容された輸液を1つの容器に注入することにより、これらの輸液を混合してもよい。2つの注射器501を保持する機構は、混合部の一例である。
【0127】
・本実施形態では、上記2つの動作と、注射器501内の輸液の一部をバイアル502に注入する動作とは、混注ユニット40により行われている。しかし、これらの動作は、互いに異なる部材により実現されてもよい。つまり、混注装置1は、上記注入の動作を行う注入部と、上記抜取りの動作を行う抜取部と、上記混合の動作を行う混合部と、を備えていてもよい。そして、混注ユニット制御部144が、これらの動作をこの順で複数回実行する動作制御部として機能してよい。
【0128】
・本実施形態では、上記3つの動作が複数回実行されるが、1回ずつの実行でもよい。この場合、混注ユニット制御部144は、S2~S4の処理を行うだけでもよい。
【0129】
(小括)
上述のように輸液の一部をバイアル502に注入することにより、バイアル502の内圧の上昇量を小さくできる。そのため、栓5021から輸液が噴出す可能性を低減できる。
【0130】
例えば、混注ユニット制御部144は、バイアル502内の気体を抜取ってから輸液を注入してもよい。このような制御が行われる場合であっても、抜取った輸液の一部(例:10mL中の5mL)しかバイアル502に注入しないため、バイアル502から抜取る気体の量も少ない量(例:5mL)で済む。抜取った輸液の全て(例:10mL)をバイアル502に注入するときのように、多くの気体(例:10mL)をバイアル502から抜取らなくてよい。従って、混注に要する時間を短縮できる。
【0131】
また、輸液の一部をバイアル502に注入する前にバイアル502の内部を陰圧しなくても、栓5021から輸液が噴出す可能性を低減できる。
【0132】
また、混注ユニット40は、混注ユニット制御部144の制御を受けて、注射器501に収容された輸液の一部をバイアル502に注入した後、バイアル502から輸液を抜取り、抜取った輸液と注射器501内の輸液とを混合する。混注ユニット40は、最初に、粉薬が溶解していない輸液の一部をバイアル502に注入し、その後は、注射器501内の残余の輸液と、バイアル502から抜取った粉薬が溶解した輸液とが混合した輸液の一部を、バイアル502に注入する。これにより、上述したように、低濃度の輸液でバイアル502内の粉薬を溶解できるため、効率良く粉薬を溶解できる。
【0133】
また、バイアル502への輸液の注入、バイアル502からの輸液の抜取り、及び、抜取った輸液と注射器501内の輸液との混合、という3つの動作をこの順で複数回実行することにより、バイアル502内の粉薬のほとんど採取できる。
【0134】
<穿刺位置の決定>
図13は、輸液容器503の栓5035(例:ゴム栓)の断面を概略的に示した図であり、針5014の穿刺状態、及び、針5014の穿刺により形成される貫通孔(針孔)PHの一例を示す図である。図13の符号1051は、先端部の傾斜角度がα1である針5014の穿刺状態を示し、符号1052は、先端部の傾斜角度がα2(>α1)である針5014の穿刺状態を示す。
【0135】
図13に示すように、針5014は、先端部において、頂部(尖端)5141と、開口を形成する傾斜面5142(カット面とも称される)と、傾斜面5142と反対側の位置において針5014の長手方向に略平行に延伸する延伸部分5143とを有する。上記傾斜角度は、傾斜面5142の垂線を含み、かつ、針5014の軸を含む平面で針5014を切断したときの針5014の断面における、傾斜面5142を示す線と延伸部分5143を示す線とのなす角である。
【0136】
図13の符号1051及び符号1052に示すように、針5014を栓5035に穿刺したとき、針5014を栓5035に対して垂直に穿刺しても、傾斜面5142の存在により、針5014は、傾斜面5142とは反対側(延伸部分5143側)に傾いて進む。
【0137】
また、針5014の先端部の傾斜角度が大きいほど、針の5014の進行方向(貫通方向)は、栓5035の穿刺面に対して垂直な方向からずれる。図13の符号1051及び符号1052に示すように、角度β2は、角度β1よりも大きい。角度β1は、上記傾斜角度がα1の針5014を穿刺したときの、栓5035の穿刺面における穿刺位置PPを通る垂線と針5014の進行方向とのなす角である。角度β2は、上記傾斜角度がα2の針5014を穿刺したときの、栓5035の穿刺面における穿刺位置PPを通る垂線と針5014の進行方向とのなす角である。これらの角度は、栓5035の穿刺面における穿刺位置PPを通る垂線からのずれ量の一例である。
【0138】
さらに、図13の符号1053に示すように、栓5035に針5014を複数回穿刺する場合、針5014が形成する貫通孔PH同士が連通する虞がある。貫通孔PH同士が連通した場合、貫通孔PH全体の大きさが大きくなる、又は、栓5035が削れる虞がある。栓5035が削れる現象をコアリングとも称する。貫通孔PH同士が連通しないようにするために穿刺位置PPを離す必要があるが、この場合、穿刺位置PPが少なくなり、穿刺回数が減少してしまう。
【0139】
図14は、栓5035における針5014の貫通範囲について説明するための図である。上述したように、傾斜面5142の向きにより針の5014の進行方向は異なるため、1つの穿刺位置PPからの針5014の進行方向は放射状に形成され得る。従って、図14の符号1061及び符号1062に示すように、針5014が貫通し得る貫通範囲PA1は、穿刺位置PPを中心として形成され得る。
【0140】
輸液容器503の種類毎に、穿刺不可範囲NGA以外の位置において、複数の穿刺動作のそれぞれに対する穿刺可能な位置(穿刺位置PP)が予め設定されている場合を考える。この場合、混注ユニット制御部144が混注ユニット40の動作を制御して、予め設定されている穿刺位置PPに一律に針5014を穿刺することにより、種々の問題が生じる虞がある。
【0141】
例えば、図14の符号1062に示すように、針5014が栓5035の側面から突抜ける、又は、針5014が栓5035を突抜けて、輸液容器503の首部の内側の壁に突刺さる虞がある。また、穿刺不可範囲NGAに貫通孔PHが形成される虞もある。さらに、貫通孔PH同士が連通する虞がある。また、貫通孔PH同士の連通を生じさせないように穿刺位置PPが規定されることにより、穿刺回数が減少する虞がある。
【0142】
従って、制御部140は、上記種々の問題が生じる可能性を低減するために、栓5035に穿刺する針5014の傾斜面5142の向きを考慮して穿刺位置を決定してもよい。
【0143】
この場合、輸液容器503の種類毎に、穿刺位置PPが予め設定される代わりに、穿刺不可範囲NGA以外の位置において、仮穿刺位置TPPが予め設定されている。仮穿刺位置TPPは、複数回の針5014の穿刺動作のそれぞれに対応した針5014の穿刺可能な位置を特定するための位置である。複数の仮穿刺位置TPPは、栓5035の穿刺面において、図14の符号1064に示すように貫通範囲PA2を規定することにより決められる。
【0144】
貫通範囲PA2は、図14の符号1063に示すように、針5014を、栓5035の穿刺面のある位置(穿刺位置PP)に1回穿刺したときに形成される、針5014の貫通範囲である。例えば、針5014の種類と、栓5035の穿刺面における穿刺位置PPを通る垂線からのずれ量とを対応付けた情報、及び、栓5035の厚みを示す情報から、貫通経路(貫通孔PH)の長さLe1を算出できる。
【0145】
貫通経路の長さLe1は、1回穿刺したときに一方向に形成される貫通経路の、栓5035を平面透視したときの、穿刺した箇所と突抜けた箇所との最大長さである。つまり、貫通経路の長さLe1は、栓5035の厚み方向の長さではなく、栓5035の穿刺面に水平な方向の長さである。また、上記ずれ量は、上述した角度β1、β2であってもよいし、上記垂線からの針5014の進行方向の傾きであってもよい。上記ずれ量は、例えば実験等を経て、針5014の種類毎に特定されている。
【0146】
貫通経路の長さLe1は、例えば、針5014の種類のそれぞれに対応する上記ずれ量のうち、最大のずれ量を用いて規定されていてよい。そして、貫通範囲PA2は、栓5035の穿刺面を平面視したときに、貫通経路の長さLe1を直径とし、かつ、仮穿刺位置TPPを中心とする円として規定される。
【0147】
上述したように、貫通範囲PA1は、針5014が進行し得る方向を全て網羅した、穿刺位置PPを中心とした範囲として設定される。一方、上記のように規定される貫通範囲PA2は、穿刺位置PPに対して1回穿刺したときに形成される貫通経路の長さLe1に基づき設定される。そのため、図14の符号1061及び符号1063に示すように、貫通範囲PA2は、貫通範囲PA1よりも小さく設定できる。
【0148】
従って、貫通範囲PA2を複数回の針5014の穿刺動作に対応して設定するときに、複数の貫通範囲PA2の位置を、貫通範囲PA2の何れもが栓5035の穿刺面内の穿刺不可範囲NGA以外の領域に位置するように設定できる。また、複数の貫通範囲PA2の位置を、貫通範囲PA2同士が重ならないように設定できる。そして、このように設定された複数の貫通範囲PA2のそれぞれの中心位置(貫通中心)に、仮穿刺位置TPPは設定される。
【0149】
仮穿刺位置TPPを設定するための処理は、例えば、制御部140が行ってもよいし、制御部140とは異なる制御装置で行われてもよい。仮穿刺位置TPPの情報は、輸液容器503の種類に対応付けて、記憶部200に記憶されている。
【0150】
ある薬剤についての混注動作を開始すると、制御部140は、注射器501に取付けられた針5014の種類と、この針5014の傾斜面5142の向きとを特定する。針5014の種類は、例えば後述する判別部153(図4参照)により判別されてもよい。傾斜面5142の向きは、例えば後述ずる針検出ユニット160(図18参照)により特定されてもよい。
【0151】
制御部140は、輸液容器503に対する針5014の穿刺回数を計数し、記憶部200に記憶している。また、記憶部200には、何回目の針5014の穿刺動作のときに、どの仮穿刺位置TPPを選択するかについての情報が記憶されている。そのため、制御部140は、穿刺回数に対応した仮穿刺位置TPPを特定できる。
【0152】
制御部140は、栓5035の穿刺面を平面視したときに、特定した仮穿刺位置TPPの方に延伸部分5143側が向くように、穿刺位置PPを決定する。具体的には、制御部140は、仮穿刺位置TPPの上に位置するときの針5014の傾斜面5142が向く方向に向かって、仮穿刺位置TPPから所定距離離れた位置を、穿刺位置PPとして決定する。
【0153】
所定距離は、穿刺した針5014が貫通範囲PA2内において貫通するように設定される。所定距離は、穿刺した針5014が貫通範囲PA2を超えて貫通するように設定されてもよい。但しこの場合、所定距離は、針5014が、隣接する貫通範囲PA2又は穿刺不可範囲NGAを貫通しないように、かつ、栓5035の側面を貫通しないように、設定される。
【0154】
所定距離は、図14の符号1063に示す長さLe11が、図14の符号1061に示す長さLe12よりも短くなるように、設定されていればよい。長さLe11は、栓5035の穿刺面を平面透視したときに、仮穿刺位置TPPと、栓5035の穿刺面とは反対側の面における針5014の中心位置CNとの長さである。長さLe12は、栓5035の穿刺面を平面透視したときに、穿刺位置PPと、栓5035の穿刺面とは反対側の面における針5014の中心位置CNとの長さである。
【0155】
このように、制御部140は、特定した傾斜面5142の向きを考慮して、仮穿刺位置TPPから所定距離離れた位置を、穿刺位置PPとして決定する。これにより、図14の符号1064に示すように、穿刺位置PPにおいて穿刺した針5014は、貫通範囲PA2内に示された矢印の方向に進行する。そのため、混注ユニット40は、貫通範囲PA1よりも小さい貫通範囲PA2と略同一の範囲において、針5014を穿刺できる。従って、上述のような種々の問題が生じる可能性を低減した状態で、針5014を複数回穿刺できる。また、比較的小さい栓5035への穿刺回数を増加させることができる。
【0156】
また上記では、輸液容器503への穿刺位置の決定方法について説明したが、当該決定方法は、バイアル502への穿刺位置の決定方法として採用されてもよい。
【0157】
<注射器保持部の変形例>
図15の符号1071は、シリンジ5011の筒先5017が中口タイプの中口注射器501Aの一例を示す斜視図及び底面図である。図15の符号1072は、シリンジ5011の筒先5017が横口タイプの横口注射器501Bの一例を示す斜視図及び底面図である。
【0158】
中口注射器501Aは、図15の符号1071に示すように、筒先5017がシリンジ5011の底部5018の中心に設けられた注射器である。横口注射器501Bは、図15の符号1072に示すように、筒先5017がシリンジ5011の底部5018の中心からずれた位置に設けられた注射器である。
【0159】
中口注射器501A及び横口注射器501Bの容量(太さ;注射器501の外径)は互いに異なっていてもよい。例えば、横口注射器501Bの容量(太さ)は、中口注射器501Aの容量(太さ)よりも大きくてもよい。
【0160】
図16は、注射器保持部41の変形例である注射器保持部41Aの一例を示す斜視図である。図16の符号1081及び符号1082は、注射器保持部41Aの斜視図である。図16の符号1083及び符号1084は、注射器保持部41Aを下から見たときの模式図である。図16の符号1081及び符号1083は、注射器保持部41Aに中口注射器501Aが装着された状態を示し、符号1082及び符号1084は、注射器保持部41Aに横口注射器501Bが装着された状態を示す。
【0161】
注射器保持部41Aは、板金418を備えている。また、注射器保持部41Aは、第1シリンジ保持部416に代えて、第1シリンジ保持部416A,416Bを備えている。図16では、第3シリンジ保持部414及びプランジャ挟持部417の図示は省略している。
【0162】
第1シリンジ保持部416A,416Bは、注射器501を挟持可能なように、互いに近づく方向に付勢されている。板金418は、第1シリンジ保持部416A,416Bが注射器501を保持したときに、挿入方向における注射器501の位置を規定する部材である。板金418には、挿入方向における注射器501の位置を規定するための切欠部418aが設けられている。ここでいう挿入方向は、水平面において、第1シリンジ保持部416A,416Bから離間した位置から、第1シリンジ保持部416A,416Bに向かう方向(-X軸方向)である。
【0163】
切欠部418aは、混注装置1で使用されるどの種類の注射器501が挿入されたとしても、筒先5017の位置が同一位置となるように形成されている。具体的には、切欠部418aは、混注装置1で使用される注射器501の種類に応じて設けられた、曲率の異なる部分を複数有する。
【0164】
本実施形態では、図16の符号1083及び符号1084に示すように、切欠部418aは、互いに曲率が異なる第1切欠部分418a1及び第2切欠部分418a2を備える。
【0165】
第1切欠部分418a1は、切欠部418aの中央部分(注射器501の挿入方向から見て奥側の部分)に設けられている。第1切欠部分418a1は、切欠部418aに中口注射器501Aが挿入されたときに、中口注射器501Aの一部と当接する。
【0166】
第2切欠部分418a2は、切欠部418aの中央部分以外の部分(注射器501の挿入方向から見て手前側の部分)に設けられている。第2切欠部分418a2は、切欠部418aに横口注射器501Bが挿入されたときに、横口注射器501Bの一部と当接する。
【0167】
第1シリンジ保持部416A,416Bは、第1搬送部110が注射器棚10から搬送してきた注射器501を挟持したときに、注射器501を切欠部418aに当接する位置において固定する。
【0168】
図16の符号1083及び符号1084に示すように、第1シリンジ保持部416Aは、第1保持部分416A1及び第2保持部分416A2を備える。第1保持部分416A1は、第1シリンジ保持部416Aの先端側の部分であり、第2保持部分416A2は、第1シリンジ保持部416Aにおける注射器保持部41Aの基部419側の部分である。
【0169】
本実施形態では、図16の符号1083に示すように、第1シリンジ保持部416Aは、中口注射器501Aを挟持するとき、第1保持部分416A1及び第2保持部分416A2により中口注射器501Aを挟込む。図16の符号1084に示すように、第1シリンジ保持部416Aは、横口注射器501Bを挟持するとき、第1保持部分416A1により横口注射器501Bを板金418側へと押込む。
【0170】
図示しないが、第1シリンジ保持部416Bもまた、第1保持部分及び第2保持部分を備える。第1シリンジ保持部416Bの第1保持部分及び第2保持部分もまた、第1保持部分416A1及び第2保持部分416A2と同様に、中口注射器501A及び横口注射器501Bを挟持する。
【0171】
このようにして、中口注射器501Aを第1切欠部分418a1に当接させることができると共に、横口注射器501Bを第2切欠部分418a2に当接させることができる。従って、注射器保持部41Aが中口注射器501A及び横口注射器501Bの何れを保持する場合であっても、挿入方向における筒先5017(注射器501に取付けられた針5014)の位置を同一位置にすることができる。
【0172】
注射器保持部41Aではなく注射器保持部41が、互いに種類の異なる注射器501を保持してもよい。この場合、混注装置1は、注射器保持部41がどの種類の注射器501を保持した場合であっても、挿入方向における注射器501の位置が同一位置となるように、注射器501の位置を調節する調節機構を備えていてもよい。調節機構は、第1搬送部110であってもよい。混注装置1は、例えば、注射器保持部41が注射器501を保持したときに、水平面上の同一位置において注射器501の筒先5017又は針5014を検出する検出部を備えていてもよい。
【0173】
<針の種類に応じた制御>
図17は、注射器501に取り付けられる針5014の種類の一例を示す図である。図17は、針5014の先端部の一例を示す模式図である。図17に示すように、針5014の種類としては、例えば、レギュラーベベル5014Aと、ショートベベル5014Bとが挙げられる。レギュラーベベル5014Aとショートベベル5014Bとは、先端部における傾斜角度と、針5014の長手方向における開口の長さとが異なる。
【0174】
レギュラーベベル5014Aの先端部の傾斜角度は第1角度α11(例:12°)であり、ショートベベル5014Bの先端部の傾斜角度は、第1角度α11よりも大きい第2角度α12(例:18°)である。レギュラーベベル5014Aは、上記傾斜角度が第1角度α11である第1針の一例であり、ショートベベル5014Bは、上記傾斜角度が第2角度α12である第2針の一例である。
【0175】
混注ユニット制御部144は、注射器保持部41を制御して、注射器501に取付けられた針5014の種類に応じて、栓5021又は栓5035への針5014の穿刺量を調整してもよい。混注ユニット制御部144は、注射器保持部41を制御して、注射器501に取付けられた針5014の種類に応じて、栓5021又は栓5035における針5014の穿刺位置を調整してもよい。注射器保持部41は調整部の一例である。この調整により、混注ユニット40は、注射器501に取付けられた針5014の種類に応じた混注動作を行うことが可能となる。
【0176】
記憶部200には、例えば、針5014の種類と、針5014の穿刺前の位置から栓5021又は栓5035の位置までの移動距離とが対応付けられた情報が記憶されている。混注ユニット制御部144は、当該情報を参照することにより、針5014の種類(針5014の開口の長さ)に応じて穿刺量を調整できる。
【0177】
例えば、混注ユニット制御部144は、針5014の種類がショートベベル5014Bである場合には、レギュラーベベル5014Aである場合よりも穿刺量を小さくしてもよい。これにより、レギュラーベベル5014Aであってもショートベベル5014Bであっても、図11の符号1044に示すように、開口のみが栓5021からバイアル502の内部に存在する状態とすることができる。そのため、レギュラーベベル5014Aであってもショートベベル5014Bであっても、バイアル502内の液体をより多く抜取ることができる。
【0178】
針5014の種類がレギュラーベベル5014Aである場合に、ショートベベル5014Bである場合よりも穿刺量を小さくする処理は、バイアル502内の液体を全量抜取る場合(全量採取とも称される)に行われてもよい。バイアル502からの液薬、又は、粉薬を溶解した輸液の抜取量は、記憶部200に記憶されている。
【0179】
また、上述したように、栓における針5014の進行方向及び貫通範囲は、上記傾斜角度と、栓の厚みとによって異なる。混注ユニット制御部144は、針5014の種類に応じた傾斜角度と、栓の厚みとに基づき、上記進行方向及び貫通範囲を考慮して、針5014の穿刺位置を算出できる。傾斜角度を示す情報は、針5014の種類毎に記憶部200に記憶されている。
【0180】
混注装置1は、図4に示すように、針5014を検出する針検出ユニット160(検出部)を備える。制御部140は、針検出ユニット160の検出結果に基づき、針5014の種類を判別する判別部153を備える。これにより、混注装置1は、針5014の種類を自動で判別し、その判別結果に基づき混注動作を行うことができる。
【0181】
針検出ユニット160は、第1搬送部110が混注ユニット40に搬送する途中に設けられていてよい。針検出ユニット160は、例えば、平面視において、注射器棚10と混注ユニット40との間に設けられていてよい。針検出ユニット160は、例えば、針5014において反射した光を受光する受光部を備える光センサであってもよい。光センサは、光を出射する出射部を備えていてもよい。その他の検出部についても、光センサで実現されていてもよい。また、混注装置1は、針検出ユニット160に代えて、注射器501に取付けられた針5014を撮像する撮像部を備えていてもよい。
【0182】
図18は、針検出ユニット160の一例を示す図である。図18の符号1091は針検出ユニット160の正面図であり、符号1092は針検出ユニット160の側面図である。本実施形態では、図18に示すように、針検出ユニット160は、第1針検出部161と、第2針検出部162と、第3針検出部163と、長孔164とを備える。第1針検出部161は第1発光部161a及び第1受光部161bを備え、第2針検出部162は第2発光部162a及び第2受光部162bを備え、第3針検出部163は第3発光部163a及び第3受光部163bを備える。
【0183】
第1針検出部161及び第2針検出部162は、第1搬送部110により針5014が移動方向R21に移動されるときに、針5014の先端部を検出する。第1針検出部161が出射する第1光L1と、第2針検出部162が出射する第2光L2とが略直交するように、第1針検出部161及び第2針検出部162は設けられている。第3針検出部163は、第1搬送部110により長孔164に挿入された針5014の先端部を検出する。針5014は、第3針検出部163の検出位置まで、針検出ユニット160に挿入される。
【0184】
第1搬送部110は、針5014が長孔164に挿入された状態において、引抜方向R11に第1距離、針5014を移動させる。第1距離は、第3針検出部163の検出位置から、針5014の種類を判別可能な針5014の先端部を第1針検出部161及び第2針検出部162が検出できる位置までの距離である。第1距離を示す情報は、記憶部200に記憶されている。
【0185】
本実施形態では、判別部153は、注射器501に取付けられた針5014がレギュラーベベル5014Aかショートベベル5014Bかを判別する。第1搬送部110は、図17に示す針5014の検出範囲DAを検出できる位置まで、長孔164から針5014を引抜く。
【0186】
その後、第1搬送部110は、針5014を移動方向R21に、第2距離移動させる。第2距離は、針5014が第1針検出部161及び第2針検出部162の検出範囲を通過する距離である。第2距離を示す情報は、記憶部200に記憶されている。第1搬送部110が等速で針5014を移動させる範囲内に検出範囲が設けられるように、第1針検出部161及び第2針検出部162が設けられる。
【0187】
図19は、針5014が第1針検出部161及び第2針検出部162の検出範囲を通過する状態の一例を示す図である。図19の符号2001は、第1針検出部161及び第2針検出部162の検出範囲を通過したときに、第1針検出部161側から見たときの針5014である。図19の符号2002は、第1針検出部161及び第2針検出部162の検出範囲を通過したときに、第2針検出部162側から見たときの針5014である。
【0188】
上述のように、検出範囲において針5014は等速で移動する。そのため、制御部140は、第1針検出部161の検出時間×針5014の移動速度により、第1幅W11を算出できる。また、制御部140は、第2針検出部162の検出時間×針5014の移動速度を算出することにより、第2幅W12を算出できる。
【0189】
第1針検出部161及び第2針検出部162が、図17に示す針5014の検出位置DP1において、針5014を検出する場合を考える。この場合、第1針検出部161及び第2針検出部162は、レギュラーベベル5014Aについては、傾斜面5142を含む位置においてレギュラーベベル5014Aを検出する。第1針検出部161及び第2針検出部162は、ショートベベル5014Bについては、傾斜面5142を含まない位置においてショートベベル5014Bを検出する。
【0190】
傾斜面5142を含まない位置は、レギュラーベベル5014A及びショートベベル5014B共通の外径となる位置であり、第1幅W11及び第2幅W12が最大となる位置である。そのため、レギュラーベベル5014Aの第1幅W11及び第2幅W12の少なくとも何れかは、最大値(傾斜面5142を含まない位置における注射器501の外径)よりも小さい値となる一方、ショートベベル5014Bの第1幅W11及び第2幅W12は最大値となる。
【0191】
従ってこの場合、判別部153は、第1幅W11及び第2幅W12の少なくとも何れかが最大値未満である場合に、針5014がレギュラーベベル5014Aと判別する。判別部153は、第1幅W11及び第2幅W12の両方とも最大値である場合に、針5014がショートベベル5014Bと判別する。閾値は最大値ではなく、最大値未満の値であってもよく、2種類の針5014を判別できる値であればよい。
【0192】
一方、第1針検出部161及び第2針検出部162が、図17に示す針5014の検出位置DP2において、針5014を検出する場合を考える。この場合、判別部153は、第1幅W11及び第2幅W12を、特定した針5014の傾斜面5142の向きに対応する閾値と比較することにより、針5014の種類を判別してもよい。
【0193】
図20は、時刻T1~T3において針5014が移動するときに検出される、針5014の投影幅の一例を説明するための模式図である。図20の符号2011及び符号2012は、レギュラーベベル5014Aの投影幅の一例を説明するための模式図である。図20の符号2013及び符号2014は、ショートベベル5014Bの投影幅を説明するための模式図である。投影幅は、針5014が検出される時間において形成される。
【0194】
図20に示すように、レギュラーベベル5014Aであってもショートベベル5014Bであっても、傾斜面5142の向きによって第1針検出部161及び第2針検出部162による針5014の検出時間が異なる。また、傾斜面5142の向きが同一であっても、針5014がレギュラーベベル5014Aかショートベベル5014Bかによって、第1針検出部161及び第2針検出部162による針5014の検出時間が異なる。
【0195】
従って、制御部140は、第1針検出部161及び第2針検出部162による針5014の検出時間に基づき、傾斜面5142の向きを特定できる。そして、判別部153は、特定した傾斜面5142の向きに対応する閾値と、第1針検出部161の検出結果に基づき算出した第1幅W11、又は、第2針検出部162の検出結果に基づき算出した第2幅W12とを比較する。これにより、判別部153は、針5014がレギュラーベベル5014Aかショートベベル5014Bかを判別する。
【0196】
閾値として、第1針検出部161用の閾値と、第2針検出部162用の閾値とが、記憶部200に記憶されている。閾値は、例えば実験等を経て、針5014がレギュラーベベル5014Aかショートベベル5014Bかを判別できるように設定されていればよい。
【0197】
また、判別部153は、第1幅W11及び第2幅W12の合計値と、閾値とを比較することにより、針5014がレギュラーベベル5014Aかショートベベル5014Bかを判別してもよい。傾斜面5142がどの向きを向いていたとしても、レギュラーベベル5014Aとショートベベル5014Bとにおいて、合計値の差は、第1幅W11同士の差又は第2幅W12同士の差よりも大きくなる。従って、判別部153は、傾斜面5142の向きを考慮しない場合であっても、針5014がレギュラーベベル5014Aかショートベベル5014Bかを判別できる。
【0198】
上記では、混注ユニット制御部144は、判別部153の判別結果に基づき、栓5021又は栓5035における針5014の穿刺量又は穿刺位置を調整する。これに限らず、タッチパネル80が、注射器501に取付けられた針5014の種類の入力を受付けてもよい。この場合、混注ユニット制御部144は、入力された針5014の種類に応じて、栓5021又は栓5035における針5014の穿刺量又は穿刺位置を調整してもよい。
【0199】
針5014の種類の入力は、注射器501の充填時に行われてもよい。この場合、制御部140は、器材保持部11を識別する情報と、器材保持部11に保持された注射器501の種類を示す情報と、注射器501に取付けられた針5014の種類を示す情報とを対応付けて、記憶部200に記憶してもよい。また、針5014の種類の入力は、混注ユニット40による混注動作前に行われてもよい。
【0200】
また、上記では、針5014の種類として、レギュラーベベル5014A及びショートベベル5014Bを例示したが、これに限らず、針5014の種類は、針5014の先端部における傾斜角度、又は、針5014の長手方向における開口の長さであってもよい。
【0201】
<同一の注射器を用いた混注動作例1>
同種の薬剤を用いた混注動作が連続する場合、同一の注射器501を使いまわいしてもよい。また、同種の薬剤で、かつ、輸液に溶解したときの濃度が同じ薬剤を用いた混注動作が連続する場合、同一の注射器501を使いまわいしてもよい。この場合、使用する注射器501の数を低減できるので、混注に要する費用を低減できる。
【0202】
針5014には、バイアル502及び輸液容器503に穿刺可能な上限穿刺回数が、予め設定されている。上限穿刺回数を示す情報は、記憶部200に記憶されている。上限穿刺回数は、針5014の種類に依らず一定の値であってもよいし、針5014の種類毎に設定された値であってもよい。
【0203】
混注ユニット制御部144は、処方データに基づき、同種の薬剤を用いた混注動作が連続するように、混注の順序を決定する。混注ユニット制御部144は、混注に使用される薬剤の種類等に基づき、1回の混注動作における穿刺回数を特定する。例えば、粉薬の場合、1回の混注動作において、栓5035には少なくとも2回穿刺される。1回の混注動作における穿刺回数は、栓5021への穿刺回数と栓5035への穿刺回数との合計値である。薬剤の種類毎に、1回の混注動作における穿刺回数を示す情報は、記憶部200に記憶されていてもよい。
【0204】
混注ユニット制御部144は、ある回の混注動作を終えた時点までの累計穿刺回数を上限穿刺回数から減算することにより、ある回の混注動作を終えた時点での残穿刺回数を算出する。混注ユニット制御部144は、次の回の混注動作における穿刺回数が、残穿刺回数を超えると判定した場合、混注ユニット40に制御して、その前の回までは、注射器501を変えずに連続して混注動作を行う。これにより、同一の注射器501を使いまわすと共に、上限穿刺回数を超えることにより混注動作が中断する可能性を低減できる。
【0205】
<同一の注射器を用いた混注動作例2>
同一の注射器501を連続して使用する場合、混注ユニット制御部144は、図21に示すような動作を制御してもよい。図21は、同一の注射器501を連続して使用する場合の混注動作の一例を示す図である。図21の符号2021は、ある回の混注動作の一例を示し、図21の符号2022は、その次の回の混注動作の一例を示す。本混注動作においては、型崩れしにくい輸液容器503(例:通称プラボトル)が用いられる。
【0206】
図21の符号2021に示すように、ある回の混注動作において、混注ユニット制御部144は、混注ユニット40を制御して、注射器501の針5014をバイアル502の栓5021に穿刺し、液薬(又は粉薬が溶解した輸液)を抜取る。その後、混注ユニット制御部144は、抜取った液薬を輸液容器503に注入した後、プランジャ5015を上下に振動させる(フラッシュ動作)。その後、混注ユニット制御部144は、輸液容器503から気体を抜取る。例えば輸液容器503に注入した液薬の量に相当する量の気体を抜取る。これにより、輸液容器503の内部を陰圧できる。
【0207】
図21の符号2022の状態ST1に示すように、次の回の混注動作において、混注ユニット制御部144は、バイアル502に針5014を穿刺する前に、プランジャ5015を引く。これにより、注射器501内に針5014の開口付近の液薬を、注射器501内に引入れる。
【0208】
その後、状態ST2において、混注ユニット制御部144は、プランジャ5015を押出して、注射器501内の気体を所定量(例:1mL)となるまで排出する。バイアル502を陽圧しないためには、バイアル502に気体を注入しない方がよいが、注射器501内の気体を全て排出した場合、注射器501内の液薬が噴出す虞がある。そのため、注射器501内の液薬が噴出させず、かつ、バイアル502をできるだけ陽圧しないように、若干の量の気体を注射器501内に残している。
【0209】
その後、状態ST3において、混注ユニット制御部144は、栓5021に針5014を穿刺し、注射器501内の残余の気体をバイアル502に排出した後、バイアル502内の液薬を抜取る。残余の気体の量が小さいため、バイアルの内圧の上昇量を低減できる。その後、混注ユニット制御部144は、抜取った液薬を、輸液容器503に注入する。
【0210】
注射器501内に気体が収容された状態でバイアル502から液薬を抜取った場合、気体の膨張により、プランジャ5015の引き量と、その引き量に応じて抜取り可能な液薬の量が一致しない虞がある。そのため、抜取量の精度が悪化する虞がある。また、注射器501内の気体の量の分、液薬の抜取量が少なくなる虞がある。図21の符号2022に示すように、次の回の混注動作においては、注射器501内からバイアル502内に気体を排出してから、注射器501内に液薬を収容することにより、上記のような問題が生じる可能性を低減できる。
【0211】
〔注射器棚の具体的構成〕
図22は、注射器棚10及びバイアル棚20の全体構成の一例を示す斜視図である。図23の符号2031は、第1搬送部110側から見たときの1つの注射器棚10及び1つのバイアル棚20の構成の一例を示す図である。図23の符号2032は、バイアル棚20を説明するための図である。
【0212】
図22に示すように、注射器棚10は、複数の器材保持部11と、器材搬送部12と、対象物検出部13と、注射器検出部14と、針検出部15と、シリンジ検出部17と、を備える。なお、図22に示す器材搬送部12の取付部1211にも器材保持部11が取り付けられているが、その図示は省略している。
【0213】
混注処理に先立ち、注射器棚10には、ユーザにより注射器501が充填されている。注射器501は、針5014に針キャップ5016が取付けられた状態で注射器棚10に充填される。
【0214】
本実施形態では、各注射器棚10を規定する板状部材171には、複数の孔172が形成されている。これにより、例えば、空気清浄部130(図2参照)が清浄化した空気を、混注装置1の上部から底部へと、効率良く流すことが可能となる。
【0215】
複数の器材保持部11は、混注装置1に充填される注射器501を保持可能な部材(保持部)である。本実施形態では、1つの器材保持部11に1つの注射器501が保持されるが、1つの器材保持部11に複数の注射器501が保持されてもよい。本実施形態では、図23に示すように、器材保持部11は、フリーローラ1111と、器材挟持部1112と、を備える。
【0216】
器材挟持部1112は、注射器501を挟持する。本実施形態では、器材挟持部1112は、注射器501のフランジ5013を挟持する。器材挟持部1112は、器材保持部11に注射器501が保持されたときに、注射器501が板状部材171に触れない程度の高さに設けられている。一対の器材挟持部1112は、注射器501を挟持可能なように、互いに近づく方向に付勢されている。
【0217】
器材挟持部1112の先端部の下には、上下方向に延伸する回転軸を有し、XY平面上においてに回転可能なフリーローラ1111が設けられている。フリーローラ1111は、器材挟持部1112により挟持されたシリンジ5011の、フランジ5013近傍を保持する。
【0218】
器材搬送部12は、作業領域Ar1に、複数の器材保持部11のうちの少なくとも1つを搬送する部材である。本実施形態では、器材搬送部12は、複数の器材保持部11が接続された無端状の回転部材(回転ベルト)である。そのため本実施形態では、器材搬送部12は、器材保持部11を1つずつ作業領域Ar1に搬送する。但し、器材搬送部12は、複数の器材保持部11を一度に作業領域Ar1に搬送する搬送部であってもよい。
【0219】
作業領域Ar1は、複数の器材保持部11のうちの少なくとも1つに対してユーザが注射器501を保持させる領域である。また作業領域Ar1は、複数の器材保持部11のうちの少なくとも1つの器材保持部11に保持された注射器501をユーザが取外す領域である。本実施形態では、作業領域Ar1は、1つの器材保持部11に対してユーザが注射器501を保持させると共に、1つの器材保持部11に保持された注射器501をユーザが取外す領域である。
【0220】
なお、作業領域Ar1は、複数の器材保持部11のうちの少なくとも1つに対してユーザが注射器501を保持させる領域としてのみ機能してもよい。この場合、器材保持部11に保持された注射器501をユーザが取外す領域は、作業領域Ar1とは別の位置に設けられていてもよい。また、作業領域Ar1は、器材保持部11に保持された注射器501をユーザが取外す領域としてのみ機能してもよい。この場合、ユーザが注射器501を器材保持部11に保持させる領域は、作業領域Ar1とは別の位置に設けられていてもよい。
【0221】
また本実施形態では、器材搬送部12は、対象物検出部13が、対象物(例:ユーザの手)を検出後、対象物を検出しなくなったというユーザの動作検出を契機として、作業領域Ar1に位置する器材保持部11に代えて、別の器材保持部11を搬送する。この場合、ユーザの手が作業領域Ar1に挿入され、ユーザが注射器501を器材保持部11に保持させた後、ユーザの手が作業領域Ar1から離れたときに、器材搬送部12は作業領域Ar1に別の器材保持部11を搬送する。また、器材搬送部12は、ユーザの動作検出に加え、注射器検出部14が器材保持部11に保持された注射器501を検出したこと、又は、注射器検出部14が器材保持部11に保持された注射器501が検出できなくなったことを契機として、作業領域Ar1に別の器材保持部11を搬送してもよい。
【0222】
なお、器材搬送部12は、ユーザの搬送指示を契機として、作業領域Ar1に位置する器材保持部11に代えて、別の器材保持部11を搬送してもよい。この場合、注射器搬送制御部141は、例えばタッチパネル80を介してユーザの搬送指示を受付けてよい。
【0223】
器材搬送部12は、例えば反時計回りに回転することにより、作業領域Ar1に位置する器材保持部11を変更する。この搬送動作により、作業領域Ar1において注射器501が保持された器材保持部11に代えて、注射器501が保持されていない別の器材保持部11を、作業領域Ar1に搬送できる。
【0224】
対象物検出部13は、作業領域Ar1に挿入された対象物を検出する部材である。本実施形態では、対象物検出部13は、作業領域Ar1に挿入された状態のユーザの手又は腕を検出する。
【0225】
注射器検出部14は、作業領域Ar1に位置する器材保持部11に保持された注射器501を検出する部材である。本実施形態では、注射器検出部14は、器材保持部11に注射器501が保持されている場合、シリンジ5011を検出する。
【0226】
針検出部15は、作業領域Ar1に位置する器材保持部11に保持された注射器501の針5014を検出する検出部である。本実施形態では、針検出部15は、針5014に取付けられた針キャップ5016を検出する。針検出部15が注射器検出部として機能してもよい。この場合、注射器検出部14は設けられていなくてもよい。
【0227】
シリンジ検出部17は、シリンジ5011の太さを検出可能な部材である。シリンジ検出部17は、器材搬送部12による搬送中のシリンジ5011を検出可能な位置に設けられている。シリンジ検出部17は、例えば、搬送中のシリンジ5011を検出し続ける。
【0228】
また、図4に示すように、注射器棚10には、作業領域Ar1に位置する器材保持部11に保持されたシリンジ5011の筒先を検出する筒先検出部18が設けられていてもよい。筒先検出部18は、器材保持部11に保持された注射器501の筒先5017を検出可能なように、例えば、注射器検出部14の下方位置に設けられてもよい。
【0229】
図24は、器材保持部11に保持された注射器501の筒先5017と、筒先検出部18との位置関係の一例を示す模式図である。図24は、作業領域Ar1において器材保持部11に保持された注射器501を下方から見たときの模式図である。
【0230】
図24に示すように、筒先検出部18は、第1筒先検出部181と、第2筒先検出部182と、第3筒先検出部183と、を含んでいてもよい。図24では、第1筒先検出部181側が奥方向(+Y軸方向)であり、第3筒先検出部183側に注射器側扉16が備えられている。
【0231】
図24の符号2041に示すように、第2筒先検出部182は、器材保持部11に中口注射器501Aが保持された場合に、中口注射器501Aの筒先5017で反射した光L11を検出する。図24の符号2042及び符号2043に示すように、第1筒先検出部181及び第3筒先検出部183は、器材保持部11に横口注射器501Bが保持された場合に、横口注射器501Bの筒先5017で反射した光L11を検出する。第2筒先検出部182は、横口注射器501Bが、図24の符号2042及び符号2043に示す状態から軸の周りに90度回転した状態で、器材保持部11に保持された場合には、横口注射器501Bの筒先5017で反射した光L11を検出する。
【0232】
図24の符号2044は、横口注射器501Bが、図24の符号2042及び符号2043に示す状態から軸の周りに90度回転した状態で、器材保持部11に保持された場合の上記位置関係の一例を示している。図24の符号2044は、横口注射器501Bを下方から見たときに、筒先5017がシリンジ5011の底部5018の中心より第2筒先検出部182側に位置する場合を示している。横口注射器501Bが、図24の符号2042及び符号2043に示す状態から軸の周りに90度回転した状態として、横口注射器501Bを下方から見たときに、筒先5017が底部5018の中心より第2筒先検出部182から離れた位置に位置する場合もある。
【0233】
<注射器の種類判定>
図4に示すように、制御部140は、混注に使用する注射器501が、中口注射器501Aであるか、横口注射器501Bであるかを判定する第1判定部151を備えてもよい。
【0234】
第1判定部151による判定により、制御部140は、例えば、注射器501の種類(筒先5017の種類)に応じて、混注動作における注射器501とバイアル502又は輸液容器503との位置関係を調整できる。
【0235】
器材保持部11のように、保持状態の注射器501について軸周りの回転を許容している構成の場合、横口注射器501Bについては、筒先5017の位置が定まらない。そのため、例えば、混注に使用する注射器501が横口注射器501Bであると判定された場合、制御部140は、検出した筒先5017又は針5014の位置に基づき、上記位置関係を調整してもよい。
【0236】
この場合、混注装置1は、筒先5017の位置を調整する調整機構を備えていてもよい。また、上記位置関係は予め決められており、上記位置関係を示す情報は記憶部200に記憶されていてもよい。そのため、制御部140は、検出した筒先5017又は針5014の位置と、上記位置関係を示す情報とに基づき、調整機構を制御して、筒先5017又は針5014の位置を調整してもよい。
【0237】
調整機構は基部44であってもよいし、器材保持部11に設けられていてもよい。調整機構が器材保持部11に設けられる場合、調整機構は、器材保持部11に保持された注射器501を軸周りに回転させることにより、筒先5017又は針5014の位置を調整してもよい。
【0238】
また、第1判定部151による判定により、制御部140は、例えば、ある薬剤を輸液に混注するときに使用する注射器501が、その使用に適切な注射器501であるかを判定できる。そして、注射器搬送制御部141は、第1搬送部110が注射器501を取出す取出位置に、混注に使用する注射器501として適切な注射器501を搬送できる。制御部140は、各器材保持部11を識別する情報(例えば番号)と、器材保持部11に保持された注射器501の種類を示す情報とを対応付けて、記憶部200に記憶することにより、上記適切な注射器501の搬送を実現できる。
【0239】
また、制御部140が、混注に使用する注射器501が適切な注射器501でないと判定した場合に、混注に使用する注射器501として適切な注射器501が器材保持部11に保持されていないと判定した場合を考える。この場合、タッチパネル制御部150は、タッチパネル80を介して、混注に使用する注射器501として適切な注射器501が器材保持部11に保持されていないことを報知できる。
【0240】
第1判定部151は、器材保持部11に保持された注射器501の種類について、針検出部15、筒先検出部18、又は、シリンジ検出部17の検出結果に基づき、判定してもよい。これにより、器材保持部11に保持された注射器501の種類を判別できる。
【0241】
例えば、第1判定部151は、第1筒先検出部181、第2筒先検出部182及び第3筒先検出部183の検出結果に基づき、器材保持部11に保持された注射器501が、中口注射器501Aか横口注射器501Bかを判定してもよい。
【0242】
上述したように、図24の符号2042に示す状態で器材保持部11に横口注射器501Bが保持された場合、第1筒先検出部181が光L11を検出する。図24の符号2043に示す状態で器材保持部11に横口注射器501Bが保持された場合、第3筒先検出部183が光L11を検出する。従って、第1筒先検出部181又は第3筒先検出部183が光L11を検出した場合、第1判定部151は、器材保持部11に保持された注射器501が横口注射器501Bであると判定する。
【0243】
一方、上述したように、図24の符号2041に示す状態で器材保持部11に中口注射器501Aが保持された場合、第2筒先検出部182が光L11を検出する。また、図24の符号2044に示す状態で器材保持部11に横口注射器501Bが保持された場合も、第2筒先検出部182が光L11を検出する。従って、第2筒先検出部182が光L11を検出した場合、器材保持部11に保持された注射器501は、中口注射器501Aである場合も、横口注射器501Bである場合もあり得る。
【0244】
但し、第2筒先検出部182が出射した光が中口注射器501Aで反射して第2筒先検出部182に戻ってくるまでの第1時間と、横口注射器501Bで反射して第2筒先検出部182に戻ってくるまでの第2時間と、は互いに異なる。
【0245】
図24の符号2044に示す状態で横口注射器501Bが器材保持部11に保持されている場合、横口注射器501Bの筒先5017と第2筒先検出部182との距離は、器材保持部11に保持されたときの中口注射器501Aの筒先5017と第2筒先検出部182との距離よりも短い。そのため、図24の符号2044に示す状態で横口注射器501Bが器材保持部11に保持されている場合、上記第2時間は、上記第1時間よりも短い。
【0246】
一方、横口注射器501Bを下方から見たときに、筒先5017が底部5018の中心より第2筒先検出部182から離れた位置に位置する状態で、横口注射器501Bが器材保持部11に保持されている場合を考える。この場合、横口注射器501Bの筒先5017と第2筒先検出部182との距離は、器材保持部11に保持されたときの中口注射器501Aの筒先5017と第2筒先検出部182との距離よりも長い。そのため、筒先5017が底部5018の中心より第2筒先検出部182から離れた位置に位置する状態で、横口注射器501Bが器材保持部11に保持されている場合、上記第2時間は、上記第1時間よりも長い。
【0247】
従って、第2筒先検出部182が光L11を検出した場合、出射した光が注射器501で反射して第2筒先検出部182に戻ってくるまでの時間に基づき、第1判定部151は、器材保持部11に保持された注射器501が中口注射器501Aか横口注射器501Bかを判定できる。
【0248】
具体的には、制御部140は、第2筒先検出部182が出射した光が注射器501で反射して第2筒先検出部182に戻ってくるまでの時間を計測する。第2筒先検出部182が光L11を検出した場合、第1判定部151は、計測した時間が第1閾値T11と第2閾値T12との間であるかを判定することにより、器材保持部11に保持された注射器501が中口注射器501Aか横口注射器501Bかを判定する。
【0249】
具体的には、第1判定部151は、計測した時間が第1閾値T11と第2閾値T12との間であると判定した場合(T11≦計測した時間≦T12の場合)、器材保持部11に保持された注射器501が中口注射器501Aであると判定する。一方、第1判定部151は、計測した時間が第1閾値T11未満、又は、第2閾値T12より大きいと判定した場合(計測した時間<T11、又は、T12<計測した時間の場合)、器材保持部11に保持された注射器501が横口注射器501Bであると判定する。
【0250】
第1閾値T11及び第2閾値T12を示す情報は、記憶部200に記憶されている。第1閾値T11及び第2閾値T12は、例えば実験等を経て、第2筒先検出部182が光L11を検出した場合に、器材保持部11に保持された注射器501が中口注射器501Aか横口注射器501Bかを判定できるように決められていればよい。
【0251】
また、筒先検出部18のように、3つの針検出部15を設けてもよい。この場合、第1判定部151は、3つの針検出部15の検出結果に基づき、器材保持部11に保持された注射器501が、中口注射器501Aか横口注射器501Bかを判定してもよい。
【0252】
また例えば、記憶部200には、シリンジ検出部17の前方における器材搬送部12の速度を示す情報、及び、混注において使用され得る各種シリンジ5011の太さを示す情報が記憶されている。制御部140は、シリンジ検出部17によるシリンジ5011の検出時間及び器材搬送部12の速度に基づき、シリンジ検出部17の前方を通過したシリンジ5011の太さを算出する。これにより、制御部140は、シリンジ検出部17の前方を通過したシリンジ5011の太さ(器材保持部11に保持された注射器501の種類)を特定できる。
【0253】
上述のように、混注装置1において使用される中口注射器501A及び横口注射器501Bの太さは、互いに異なっていてもよい。この場合、第1判定部151は、シリンジ検出部17の前方を通過したシリンジ5011の太さによって、器材保持部11に保持された注射器501が、中口注射器501Aか横口注射器501Bかを判定できる。
【0254】
また例えば、混注装置1は、器材保持部11に保持された注射器501を撮像するカメラを備えていてもよい。この場合、記憶部200には、例えば、中口注射器501Aの画像及び横口注射器501Bの画像が記憶されている。第1判定部151は、カメラが撮像した画像と、記憶部200に記憶された画像とにより、器材保持部11に保持された注射器501が、中口注射器501Aか横口注射器501Bかを判定してもよい。
【0255】
本実施形態では、第1判定部151は、器材保持部11に保持された注射器501が、中口注射器501Aか横口注射器501Bかを判定する。これにより、混注ユニット40による混注動作の開始前(混注動作の待機時)に注射器501の種類を判別できる。そのため、例えば、混注動作時に注射器501の種類を判別し、その位置を調整する場合に比べ、混注に要する時間を短縮できる。
【0256】
但し、これに限らず、第1判定部151は、例えば、注射器保持部41(保持部)に保持された注射器501が中口注射器501Aか横口注射器501Bかを判定してもよい。この場合、第1判定部151による判定のために、混注ユニット40に保持された注射器501のシリンジ5011、針5014又は筒先5017を検出可能な位置に、シリンジ5011、針5014又は筒先5017を検出する検出部が設けられる。
【0257】
<注射器の装着適否判定>
図4に示すように、制御部140は、横口注射器501Bが器材保持部11に適切に装着されているかを判定する第2判定部152を備えてもよい。これにより、適切に横口注射器501Bが装着されていない場合に、タッチパネル制御部150は、タッチパネル80を介して、横口注射器501Bが適切に装着されていないことを報知できる。そのため、ユーザは、横口注射器501Bを適切に装着しなおすことができる。
【0258】
図25は、器材保持部11の変形例である器材保持部11Aを示す図である。図25の符号2051は器材保持部11Aの斜視図であり、図25の符号2052は器材保持部11Aの底面図である。図25では、器材保持部11Aに横口注射器501Bが装着されている例を示している。図25の符号2053は、横口注射器501Bの回転について説明するための図である。
【0259】
図25の符号2051及び符号2052に示すように、器材保持部11Aは、器材保持部11Aに保持された注射器501の位置を固定する固定部材19を備える。固定部材19は、器材保持部11Aに保持された横口注射器501Bが、横口注射器501Bの軸周りに回転しないように、横口注射器501Bを固定する。
【0260】
本実施形態では、固定部材19は、シリンジ5011が挿入される第1挿入部191と、筒先5017が挿入される第2挿入部192とを備える。
【0261】
第1挿入部191は、中口注射器501A及び横口注射器501Bの挿入が可能な形状及び大きさを有する。具体的には、第1挿入部191の形状及び大きさは、中口注射器501Aが挿入されたときでも、横口注射器501Bが挿入されたときでも、筒先5017(針キャップ5016)が第2挿入部192に挿入されるように規定されている。
【0262】
第2挿入部192は、第1挿入部191に挿入された中口注射器501A及び横口注射器501Bの筒先5017が挿入可能であり、かつ第1挿入部191に挿入された横口注射器501Bが軸周りに回転することを規制可能な形状及び大きさを有する。図25の符号2052に示すように、第2挿入部192は、器材保持部11Aへの注射器501の挿入方向に延伸する溝形状であってよい。
【0263】
器材保持部11Aに横口注射器501Bが適切な向きで保持されたとき、図25の符号2052で示すように、横口注射器501Bの筒先5017が第2挿入部192に挿入される。器材保持部11Aに横口注射器501Bが適切な向きで保持されるとは、横口注射器501Bを軸の周りに回転させることなく、横口注射器501Bを混注動作において用いることができることを意味する。但し、横口注射器501Bが適切な向きと180度反対の向きで器材保持部11Aに保持されたときも、図25の符号2052で示すように、横口注射器501Bの筒先5017が第2挿入部192に挿入される。
【0264】
従って、第2挿入部192を備える固定部材19を用いることにより、横口注射器501Bの筒先5017は、図24の符号2042,2043の何れかに示す位置に位置する。これは、横口注射器501Bが固定部材19に挿入された場合、筒先5017が、例えば図24の符号2042、2043の状態から90度回転した位置に位置しないことを意味する。
【0265】
器材保持部11Aに横口注射器501Bが適切な向きで保持されたとき、筒先5017の挿入方向と軸方向とが直交する方向において、横口注射器501Bの筒先5017の位置が中口注射器501Aの筒先5017の位置と略同一となる場合を考える。この場合、例えば、針検出部15は、第2挿入部192に挿入された中口注射器501Aの針キャップ5016と、適切な向きで第2挿入部192に挿入された横口注射器501Bの針キャップ5016と、を検出可能である。針検出部15は、このように挿入された中口注射器501A及び横口注射器501Bの針キャップ5016を検出可能な位置に配置される。
【0266】
針検出部15が注射器501の針キャップ5016で反射した光を検出したとき、固定部材19に挿入された注射器501が横口注射器501Bである場合には、第2判定部152は、横口注射器501Bが器材保持部11Aに適切に保持されていると判定する。注射器501が中口注射器501Aか横口注射器501Bかの判定は、上述したように、例えばシリンジ検出部17を用いて行われてもよい。
【0267】
また、第2判定部152は、針検出部15の検出結果に基づき、横口注射器501Bが器材保持部11に適切に装着されているかを判定しなくてもよい。例えば、第2判定部152は、筒先検出部18の検出結果、又は、筒先5017もしくは針キャップ5016を撮像するカメラの撮像結果に基づき、上記の判定を行ってもよい。この場合、器材保持部11Aに横口注射器501Bが適切な向きで保持されたとき、筒先5017の挿入方向と軸方向とが直交する方向において、横口注射器501Bの筒先5017の位置が中口注射器501Aの筒先5017の位置と略同一でなくてよい。
【0268】
筒先検出部18を用いる場合、混注装置1は、第1筒先検出部181及び第3筒先検出部183の何れか一方を備えていなくてもよい。例えば、横口注射器501Bが器材保持部11Aに適切に装着されているときに第1筒先検出部181が光L11を検出できるように、第1筒先検出部181が配置されている場合、混注装置1は、第3筒先検出部183を備えていなくてよい。
【0269】
横口注射器501Bが適切な向きで器材保持部11Aに保持されている場合、第1筒先検出部181は光L11を検出する。そのため、第2判定部152は、第1筒先検出部181が光L11を検出した場合に、横口注射器501Bが器材保持部11に適切に装着されていると判定する。一方、器材保持部11Aが注射器501を保持しているにもかかわらず、第1筒先検出部181及び第2筒先検出部182の何れも光L11を検出しない場合、第2判定部152は、横口注射器501Bが器材保持部11に適切に装着されていないと判定する。
【0270】
図25の符号2053に示すように、横口注射器501Bが軸方向に回転する場合、横口注射器501Bが装着された向きによって、針キャップ5016(横口注射器501Bの先端部)の位置は異なる。そのため、横口注射器501Bが装着された向きが適切な向きではない場合、混注動作時に、バイアル502又は輸液容器503への針5014の穿刺位置がずれてしまい、液薬又は輸液を抜取ることができない虞がある。第2判定部152による判定により、横口注射器501Bの向きが適切な向きとなるように、横口注射器501Bを器材保持部11Aに保持させることができる。そのため、穿刺位置のずれが発生する可能性を低減できる。つまり、横口注射器501Bの向きが適切ではない状態で混注動作が行われる可能性を低減できる。
【0271】
また、固定部材19は、器材保持部11Aに保持された横口注射器501Bの先端部の位置を規制する。これにより、器材保持部11Aは、横口注射器501Bの先端部の位置が一定の範囲となる姿勢で、充填された横口注射器501Bを保持できる。また、器材保持部11Aを用いることにより、第2判定部152は、横口注射器501Bの先端部の検出結果に基づき、横口注射器501Bが器材保持部11Aに適切に装着されているかを判定できる。そのため、混注装置1は、横口注射器501Bの軸方向の回転による横口注射器501Bの位置ずれを検出する検出部を備えなくてよく、当該検出部の動作時間分の処理時間を短縮できる。
【0272】
器材保持部11Aが固定部材19と針検出部15又は筒先検出部18とを備えているため、第2判定部152の処理は、器材保持部11Aが横口注射器501Bを保持している間に行われる。これに限らず、第2判定部152の処理は、混注動作前に行われればよい。そのため、固定部材19、及び、横口注射器501Bの先端部を検出する検出部は、例えば混注ユニット40に設けられていてもよい。
【0273】
<注射器の充填又は回収支援>
上述したように、注射器棚10のそれぞれに対応して、発光部材が設けられていてもよい。この場合、制御部140は、1つの注射器棚10に設けられた全ての器材保持部11に、注射器501が保持されている場合に、当該注射器棚10に対応する発光部材を点灯させてもよい。また、制御部140は、1つの注射器棚10に設けられた全ての器材保持部11に注射器501が保持されていない場合に(例えば、器材保持部11に保持された注射器501が全て取り外された場合に)、当該注射器棚10に対応する発光部材を点灯させてよい。
【0274】
これにより、ユーザは、全ての器材保持部11における注射器501の保持状態を視認することなく、注射器501の充填完了又は回収完了のタイミングを認識できる。そのため、注射器501の充填完了又は回収完了のタイミングでユーザに注射器側扉16を閉じてもらうことができる。
【0275】
第1搬送部110は、注射器側扉16がロック状態の注射器棚10からのみ、注射器501を取出すことができる。そのため、第1搬送部110は、注射器側扉16が閉じられてロックされない限り、当該注射器側扉16が設けられた注射器棚10から、注射器501を取出すことができない。上記のように、発光部材を介して、上記のタイミングで注射器側扉16を閉じるための報知を行うことにより、第1搬送部110の待機時間を低減させることが可能となる。
【0276】
制御部140は、器材保持部11の位置を管理している。制御部140は、例えば、作業領域Ar1に位置する器材保持部11を管理している。制御部140は、注射器検出部14の検出結果により、作業領域Ar1に位置する器材保持部11が注射器501を保持しているかを判定できる。制御部140は、各器材保持部11を識別する情報と、注射器501の保持有無を示す情報とを対応付けて、記憶部200に記憶することにより、全ての器材保持部11に注射器501が保持されているかどうかを判定できる。
【0277】
また、制御部140は、取出対象である注射器501を第1搬送部110に取出させるときに、当該注射器501が保持された注射器棚10の注射器側扉16が開放状態である場合に、当該注射器棚10に対応する発光部材を点灯させてもよい。これにより、第1搬送部110の待機時間を低減させることが可能となる。
【0278】
<器材保持部の搬送制御>
制御部140は、最後に注射器501を保持した器材保持部11(当該器材保持部11を識別する情報)を管理してもよい。注射器搬送制御部141は、器材保持部11の搬送方向後ろ側において、最後に注射器501を保持した器材保持部11に最も近く、かつ注射器501を保持していない器材保持部11(空きの器材保持部11)を、作業領域Ar1に搬送する。ユーザが注射器501の充填完了後に注射器側扉16を一旦閉じた後、再度の注射器501の充填のために、当該注射器側扉16を開いたときに、上述した空きの器材保持部11を、作業領域Ar1に搬送してもよい。
【0279】
これにより、器材保持部11の使用頻度が偏る可能性を低減できる。また、同時期に充填した注射器501を、注射器棚10において纏めて管理できる。さらに、搬送方向において、最後に注射器501を保持した器材保持部11に最も近い空きの器材保持部11を、作業領域Ar1に搬送するため、注射器501の充填操作の待機時間を低減できる。
【0280】
〔バイアル棚の具体的構成〕
図22及び図23の符号2031に示すように、バイアル棚20は、複数の器材保持部21と、器材搬送部22と、対象物検出部23と、バイアル検出部24と、を備える。また、図23の符号2031に示すように、第1読取部25と、ローラ駆動部26と、を備える。なお、図22に示す器材搬送部22の取付部221にも器材保持部21が取り付けられているが、その図示は省略している。
【0281】
混注処理に先立ち、バイアル棚20には、ユーザによりバイアル502が充填されている。バイアル502には、開口を塞ぐ栓(ゴム栓)5021(図5参照)と栓5021に被せられた蓋とが設けられている。バイアル502は、当該蓋をとった状態でバイアル棚20に充填される。また、注射器棚10と同様、各バイアル棚20を規定する板状部材171には、複数の孔172が形成されている。
【0282】
器材保持部21は、バイアル502を保持可能な部材である。本実施形態では、1つの器材保持部21に1つのバイアル502が保持されるが、1つの器材保持部21に複数のバイアル502が保持されてもよい。
【0283】
本実施形態では、図23に示すように、器材保持部21は、フリーローラ211と、器材挟持部212と、駆動ローラ213と、第1マグネットギア214と、を備える。
【0284】
器材挟持部212は、バイアル502を挟持する。本実施形態では、器材挟持部212は、バイアル502の首部を挟持する。器材挟持部212は、器材保持部21にバイアル502が保持されたときに、バイアル502が板状部材171に触れない程度の高さに設けられている。
【0285】
一対の器材挟持部212は、バイアル502を挟持可能なように、互いに近づく方向に付勢されている。器材挟持部212の先端部には、上下方向に延伸する回転軸を有し、XY平面上においてに回転可能なフリーローラ211が設けられている。図23の符号2032に示すように、フリーローラ211は、器材挟持部212が軸支されている側であって、フリーローラ211の中央部と対向する位置に設けられた駆動ローラ213と共に、バイアル502の首部を3点で支持する。これにより、器材挟持部212は、バイアル502を保持する。バイアル502を保持した状態で駆動ローラ213が回転すると、バイアル502も回転する。この回転に伴い、フリーローラ211も回転する。
【0286】
駆動ローラ213の上部には、第1マグネットギア214が設けられている。駆動ローラ213と第1マグネットギア214とは、上下方向に延伸する共通の回転軸に接続されており、XY平面上において回転可能である。ローラ駆動部26が備える第2マグネットギア261の回転に伴い第1マグネットギア214が回転することにより、駆動ローラ213も回転する。
【0287】
器材搬送部22は、作業領域Ar2に、複数の器材保持部21のうちの少なくとも1つを搬送する部材である。本実施形態では、器材搬送部22は、複数の器材保持部21が接続された無端状の回転部材である。そのため、本実施形態では、器材搬送部22は、器材保持部21を1つずつ作業領域Ar2に搬送する。但し、器材搬送部22は、複数の器材保持部21を一度に作業領域Ar2に搬送する搬送部であってもよい。
【0288】
作業領域Ar2は、作業領域Ar1と同様、複数の器材保持部21のうちの少なくとも1つに対してユーザがバイアル502を保持させる領域である。また作業領域Ar2は、複数の器材保持部21のうちの少なくとも1つの器材保持部21に保持されたバイアル502をユーザが取外す領域である。また、作業領域Ar2は、作業領域Ar1と同様、バイアル502を保持させる領域としてのみ機能する領域、又は、バイアル502を取外す領域としてのみ機能する領域であってもよい。
【0289】
本実施形態では、器材搬送部22は、器材搬送部12と同様の機能を有する。具体的には、器材搬送部22は、対象物検出部23が、対象物(例:ユーザの手)を検出後、対象物を検出しなくなったというユーザの動作検出を契機として、作業領域Ar2に位置する器材保持部21に代えて、別の器材保持部21を搬送する。また、器材搬送部12は、ユーザの動作検出に加え、バイアル検出部24が器材保持部21に保持されたバイアル502を検出したこと、又は、バイアル検出部24が器材保持部21に保持されたバイアル502が検出できなくなったことを契機として、作業領域Ar2に別の器材保持部11を搬送してもよい。器材搬送部12は、例えば反時計回りに回転することにより、作業領域Ar2に位置する器材保持部21を変更する。
【0290】
また、バイアル搬送制御部142は、注射器搬送制御部141と同様、例えばユーザの搬送指示を契機として、作業領域Ar2に位置する器材保持部21に代えて、別の器材保持部21を搬送してもよい。
【0291】
対象物検出部23は、作業領域Ar2に挿入された対象物を検出する部材である。本実施形態では、対象物検出部23は、作業領域Ar2に挿入された状態のユーザの手又は腕を検出する。バイアル検出部24は、作業領域Ar2に位置する器材保持部21に保持されたバイアル502を検出する。
【0292】
第1読取部25は、器材搬送部22が複数の器材保持部21を搬送する搬送経路の一部において、バイアル502の表面に示された、バイアル502に収容された薬剤の種類を示す種類情報を読取る部材である。バイアル502には、種類情報が記録されたバーコードが付されていてよい。この場合、第1読取部25は、バーコードリーダであってよい。図23の符号2031に示すように、第1読取部25は、取出位置PO11に搬送されたバイアル502のバーコードを読取可能な位置に配置されている。取出位置PO11は、第1搬送部110がバイアル502を取出す位置である。
【0293】
ローラ駆動部26は、器材保持部21の駆動ローラ213を回転させるために、ローラ駆動部26に取付けられた第2マグネットギア261を回転させるモータである。バイアル搬送制御部142がローラ駆動部26を駆動させると、第2マグネットギア261も回転する。第2マグネットギア261の回転に連動して、第1マグネットギア214が回転する。第1マグネットギア214の回転に連動して、第1マグネットギア214と共通の回転軸に接続された駆動ローラ213が回転することにより、駆動ローラ213に当接しているバイアル502が回転する。このようにバイアル502が回転することにより、バイアル502の表面のどの位置にバーコードが付されている場合であっても、第1読取部25はバーコードを読取ることができる。
【0294】
<バイアルの回収に伴う動作例1>
制御部140は、例えばタッチパネル80を介して、バイアル502の回収指示を受付けてもよい。バイアル搬送制御部142は、回収指示を受付けた場合、器材搬送部22を制御して、回収対象のバイアル502を保管するバイアル棚20において、当該バイアル502を作業領域Ar2に搬送させる。回収対象のバイアル502が複数個保管されている場合、バイアル搬送制御部142は、器材搬送部22を制御して、器材保持部21への保持順番が遅いバイアル502を保持する器材保持部21を優先的に、作業領域Ar2に搬送してもよい。この場合、記憶部200には、器材保持部21の位置(器材保持部21を識別する情報)に対応付けて、バイアル502の保持順番を示す情報が記憶されている。
【0295】
<バイアルの回収に伴う動作例2>
バイアル502の種類によっては、他のバイアル502と分別して捨てる必要があるバイアル502(以下、分別バイアルと称する)も存在する。分別バイアルについては、混注動作が完了した後に、第1搬送部110がゴミ箱部70に搬送しなくてもよい。この場合、タッチパネル制御部150は、混注に使用したバイアル502が分別バイアルであること、又は、バイアル502を混注装置1から取出すことを、タッチパネル80を介して報知してもよい。これにより、分別バイアルを、ゴミ箱部70に捨てず、ユーザに混注装置1から取出させることができる。
【0296】
また、ゴミ箱部70は、分別バイアル専用の分別用ごみ箱部と、分別バイアル以外のバイアル502(以下、通常バイアルと称する)専用の通常用ごみ箱部とを有していてもよい。第1搬送制御部143は、第1搬送部110を制御して、混注に使用したバイアル502が分別バイアルである場合、バイアル502を分別用ごみ箱部に搬送してもよい。第1搬送制御部143は、混注に使用したバイアル502が通常バイアルである場合、バイアル502を通常用ごみ箱部に搬送してもよい。本動作においては、バイアル502の種類を示す情報に、通常バイアル又は分別バイアルを示す情報が含まれていてもよい。
【0297】
<バイアルの充填又は回収支援/器材保持部の搬送制御>
上述したように、バイアル棚20のそれぞれに対応して、発光部材が設けられていてもよい。この場合、制御部140は、1つのバイアル棚20に設けられた全ての器材保持部21に、バイアル502が保持されている場合に、当該バイアル棚20に対応する発光部材を点灯させてよい。また、制御部140は、1つのバイアル棚20に設けられた全ての器材保持部21にバイアル502が保持されていない場合に(例えば、器材保持部21に保持されたバイアル502が全て取り外された場合に)、当該バイアル棚20に対応する発光部材を点灯させてよい。具体的な説明については、上記「注射器の充填又は回収支援」での説明において、注射器棚10に関する用語をバイアル棚20に関する用語を読み替えればよいため、割愛する。
【0298】
また、バイアル搬送制御部142は、器材保持部21の搬送方向において、最後にバイアル502を保持した器材保持部21に最も近く、かつバイアル502を保持していない器材保持部21(空きの器材保持部21)を、作業領域Ar2に搬送してもよい。具体的な説明については、上記「器材保持部の搬送制御」での説明において、注射器棚10に関する用語をバイアル棚20に関する用語を読み替えればよいため、割愛する。
【0299】
〔第2搬送部の具体的構成〕
図26は、第2搬送部120の構成の一例を示す図である。図26の符号2061に示すように、第2搬送部120は、吸着部121と、第3読取部122と、を備える。
【0300】
吸着部121は、輸液容器503の胴部5031を吸着する部材である。吸着部121は輸液容器503を保持する保持部材の一例であり、第2搬送部120が輸液容器503を保持できれば、当該保持部材は吸着部121でなくてもよい。第2搬送制御部145は、吸着部121における空気圧を制御することにより、輸液容器503を脱着する。
【0301】
本実施形態では、吸着部121は、第2搬送部120における輸液容器503と対向する位置において、上下方向に沿って3つ設けられている。3つの吸着部121は、主吸着部121Aと、2つの副吸着部121Bとを含む。吸着部121は、主吸着部121Aを複数備えていてもよいし、副吸着部121Bを1つのみ備えていても3つ以上備えていてもよい。
【0302】
主吸着部121Aは、第2搬送部120が輸液容器503を保持するときに、輸液容器503を吸着するために常時使用されるものである。主吸着部121Aは、混注装置1に保管され得る、大きさが互いに異なる複数種類の輸液容器503の全てと対向可能な位置に設けられている。2つの副吸着部121Bは、輸液容器503の上下方向の大きさに応じて、主吸着部121Aと共に輸液容器503を吸着する。従って、2つの副吸着部121Bの少なくとも何れかは、輸液容器503の大きさによっては、輸液容器503を吸着しない場合がある。
【0303】
輸液容器503の種類(大きさ)と、輸液容器503を吸着するために使用する吸着部121とは予め決められており、これらを対応付けた情報は記憶部200に記憶されている。そのため、第2搬送制御部145は、調製・投薬データに基づき、混注に使用する輸液容器503の種類を特定することにより、当該輸液容器503を吸着するために使用する吸着部121を特定できる。また、第2搬送部120が輸液容器503を保持するときに、主吸着部121Aが常時使用されるように、輸液容器503の吸着場所(例:輸液棚30及び混注ユニット40)と第2搬送部120との位置関係が予め決められている。
【0304】
図26の符号2062に示すように、主吸着部121Aは、輸液容器503を吸着する方向に伸縮し、かつ撓う部材である。本実施形態では、主吸着部121Aは、蛇腹構造を有する。副吸着部121Bは、輸液容器503を吸着する方向に伸縮し、かつ撓う部材でなくてよい。また、主吸着部121Aの、吸着する方向における長さは、副吸着部121Bの長さよりも大きい。
【0305】
第2搬送部120は、輸液容器503を吸着するとき、輸液容器503の保管場所へと近づいていく。このとき、副吸着部121Bよりも先に主吸着部121Aが、輸液容器503に当接する。主吸着部121Aは伸縮しかつ撓う部材であるため、主吸着部121Aは、輸液容器503の表面がどのような向きを向いていたとしても、その向きに吸着口(吸引口)を追従させることができる。そのため、輸液容器503の向きに依らず、輸液容器503の表面を吸着できる。そして、輸液容器503の表面が第2搬送部120に対して斜めを向いている場合、主吸着部121Aが撓みがなくなる状態に戻ろうとすることで、輸液容器503の表面(最も大きい面)を第2搬送部120に向けることができる。
【0306】
一方で、主吸着部121Aが上記のような部材であるため、主吸着部121Aは副吸着部121Bよりも撓みやすい。又は、主吸着部121Aの吸着力は副吸着部121Bよりも弱い。そのため、主吸着部121Aのみの吸着では、搬送中に輸液容器503が落下する可能性がある。また、第2搬送部120の加減速時に輸液容器503がふらつくため、ふらつきが収まるまで輸液容器503を搬送先に受渡すことができない虞がある。
【0307】
本実施形態では、主吸着部121Aが輸液容器503の表面に当接した後も、第2搬送部120は輸液容器503側へと移動する。このとき、主吸着部121Aは縮み、副吸着部121Bが輸液容器503に当接する。副吸着部121Bは、主吸着部121Aのように、吸着口を輸液容器503の向きに追従させることはできないが、主吸着部121Aにより輸液容器503がある程度固定されているため、輸液容器503を吸着できる。
【0308】
副吸着部121Bは、主吸着部121Aよりも撓みにくい。又は、副吸着部121Bの吸着力は主吸着部121Aよりも強い。そのため、搬送中に輸液容器503が落下する可能性を低減できる。また、第2搬送部120の加減速により輸液容器503がふらつく可能性を低減できる。
【0309】
第3読取部122は、輸液容器503の胴部5031に貼付された第1ラベルに含まれる情報を読取る。第1ラベルに含まれる情報がバーコードに含まれている場合、第3読取部122は、バーコードリーダにより実現されてもよい。
【0310】
〔輸液棚の構成〕
図27は、輸液棚30の構成の一例を示す斜視図である。図27に示すように、輸液棚30は、押込部31と、押込搬送部35と、レール部36と、を備える。また、図3に示すように、シャッター37を備える。
【0311】
混注処理に先立ち、輸液棚30には、ユーザにより輸液容器503が充填されている。また、注射器棚10及びバイアル棚20と同様、各輸液棚30を規定する板状部材301には、複数の孔302が形成されている。
【0312】
レール部36は、輸液棚30の内部に設けられ、輸液側扉34(図1参照)側から混注装置1の奥方向(すなわち+Y軸方向)へ延伸する部材である。レール部36において、輸液側扉34側に位置する端部を扉側端部361、混注装置1の奥側に位置する端部を奥側端部362と称することもできる。輸液容器503は、扉側端部361からレール部36に充填され、奥側端部362から第2搬送部120により取出される。レール部36には、少なくとも1つの輸液容器503を吊下げ可能である。本実施形態では、一対のレール部36の間に、輸液容器503の首部が吊下げ可能である。具体的には、一対のレール部36の間に、輸液容器503の首部5033の一部であるフランジ5034(首部5033及びフランジ5034は図26参照)が吊下げ可能である。
【0313】
本実施形態では、各輸液棚30には、レール部36が3つずつ設けられている。但し、各輸液棚30に設けられるレール部36の数は3つに限定されない。また本実施形態では、レール部36のそれぞれには、同種の輸液容器503(輸液容器に503に収容される輸液の種類、及び輸液容器503の大きさが同一の輸液容器)が充填される。そして、輸液棚30毎に、充填されるべき輸液容器503が定められている。但し、レール部36のそれぞれに異種の輸液容器503が充填されてもよい。
【0314】
押込部31は、レール部36に沿って移動可能であり、レール部36に吊下げられた輸液容器503を、扉側端部361から奥側端部362へ押込む部材である。本実施形態では、押込部31は、押込搬送部35に接続されている。押込搬送部35は、レール部36に沿って設けられている。押込搬送部35は、押込制御部147の制御を受けて動作することにより、レール部36に沿って押込部31を移動させることが可能である。押込搬送部35は、例えば無端状の回転部材であってよい。押込部31の移動によりレール部36に吊下げられた輸液容器503を押込むことが可能なように、押込部31の大きさ、及び、レール部36と押込搬送部35との位置関係が規定されている。
【0315】
押込部31は、輸液側扉34のロックが解除されている状態、又は輸液側扉34が開放状態のとき、扉側端部361側で、かつ輸液容器503の充填(レール部36への吊下げ)の邪魔とならない位置PO31に位置している。押込制御部147は、例えば輸液棚30のボタン90(図1参照)が押下されたときに(輸液側扉34のロックが解除されたときに)、押込搬送部35を制御することにより、押込部31を位置PO31に移動させてよい。
【0316】
押込部31は、輸液側扉34がロックされた状態となったことを契機として、レール部36に吊下げられた輸液容器503を、扉側端部361から奥側端部362へ押込む。本実施形態では、輸液側扉34が閉鎖状態となった後ロックされた状態となったときに、押込制御部147は、押込搬送部35を制御することにより、押込部31を位置PO31から奥側端部362へ移動させる。輸液棚30を構成する壁部の奥側端部362には、奥側端部362に存在する輸液容器503を検出する検出部(不図示)が設けられている。押込制御部147は、当該検出部が輸液容器503を検出するまで、押込部31を奥側端部362側へと移動させる。
【0317】
また、レール部36に複数の輸液容器503が吊下げられた状態において、第2搬送部120が奥側端部362に位置する輸液容器503を取出した場合を考える。第2搬送部120が当該輸液容器503を取出した後、押込部31は、レール部36に吊下げられた残余の輸液容器503を、扉側端部361から奥側端部362へ押込む。本実施形態では、第2搬送部120が奥側端部362に位置する輸液容器503を取出したときに、押込制御部147は、押込搬送部35を制御することにより、押込部31を奥側端部362へ更に移動させる。
【0318】
シャッター37は、輸液側扉34が開いている輸液棚30の奥側に位置して、ユーザが輸液側扉34側から輸液棚30内に手を入れても第2搬送部120に触れることがないように、奥側端部362とその奥方向(+Y軸方向)側の領域とを遮断するものである。シャッター37は、シャッター制御部148により上下方向に移動可能に制御される。
【0319】
シャッター37は、例えば、輸液側扉34が開けられると、当該輸液側扉34に対応する輸液棚30の奥側に位置するようにシャッター制御部148により制御される。例えば、シャッター制御部148は、ボタン90へのユーザ操作を受付けた場合に、当該ボタン90に対応する輸液棚30の奥側端部362と対向する位置に、シャッター37を移動させる。
【0320】
また、シャッター37は、第2搬送部120が輸液容器503を取出すとき、当該輸液容器503が保管された輸液棚30以外の輸液棚30に移動する。例えば、シャッター制御部148は、第2搬送部120が取出対象とする輸液容器503が保持されている輸液棚30と対向する位置にシャッター37が位置している場合、シャッター37を別の輸液棚30と対向する位置に移動させる。記憶部200には、例えば、輸液種類情報に対応付けて、輸液棚30における輸液容器503の保管位置を示す情報が記憶されている。
【0321】
<第2搬送部の搬送方法>
図28は、第2搬送部120の搬送方法の一例を説明するための図である。本実施形態では、輸液棚30が2つ設けられた構成であるが、輸液棚30が3つ以上設けられていてもよい。例えば、輸液棚30が上下方向に3つ設けられた場合、第2搬送部120は、以下のように制御されてもよい。
【0322】
図28は、第2搬送部120の搬送方法の一例を説明するための図である。図28では、上段の輸液棚30を第1輸液棚30Aと称し、中段の輸液棚30を第2輸液棚30Bと称し、下段の輸液棚30を第3輸液棚30Cと称する。
【0323】
図28の符号2071に示すように、シャッター37が、何れかの輸液棚30の奥側端部362と対向する位置に位置するとき、第2搬送部120は、それ以外の輸液棚30にアクセスできる。本例では、シャッター37が第2輸液棚30Bと対向する位置に位置するとき、第2搬送部120は、第1輸液棚30A及び第3輸液棚30Cにアクセスできる。
【0324】
図28の符号2072に示すように、第2搬送部120が第2輸液棚30Bに入込んでいる状態において、シャッター制御部148は、第3輸液棚30Cを塞いでいるシャッター37を移動させない。この状態においては、シャッター37が第1輸液棚30Aを塞いでいる場合も、シャッター制御部148は、シャッター37を移動させない。
【0325】
一方、図28の符号2073に示すように、第2搬送部120が第1輸液棚30Aに入込んでいる状態においては、シャッター制御部148は、第2輸液棚30Bと対向する位置と、第3輸液棚30Cと対向する位置との間で、シャッター37を移動させてもよい。
【0326】
そのため、シャッター制御部148は、第2搬送部120が第1輸液棚30Aに入込んでいる状態であっても、第2輸液棚30B又は第3輸液棚30Cと対向する位置にシャッター37を位置させることができる。従って、制御部140が、第2輸液棚30B又は第3輸液棚30Cの輸液側扉34のロックを解除できるため、ユーザは、第2輸液棚30B又は第3輸液棚30Cにアクセスできる。
きる。
【0327】
また、第2搬送部120が第3輸液棚30Cに入込んでいる状態においては、シャッター制御部148は、第1輸液棚30Aと対向する位置と、第2輸液棚30Bと対向する位置との間で、シャッター37を移動させてもよい。従って、第2搬送部120が第3輸液棚30Cに入込んでいる状態であっても、上記と同様、ユーザは、第1輸液棚30A又は第2輸液棚30Bにアクセスできる。
【0328】
第2搬送部120が何れかの輸液棚30に入り込んでいる状態においては、シャッター制御部148がシャッター37を移動させない場合、第2搬送部120が輸液棚30から離れるまで、ユーザがアクセスしたい輸液棚30にアクセスできない虞がある。上記のように、第2搬送部120が輸液棚30に入込んでいる状態であっても、その位置によってはシャッター37を移動できるようにすることにより、ユーザがアクセスしたい輸液棚30にアクセスすることも可能となる。そのため、輸液棚30にアクセスするユーザの待機時間を低減させる可能性を高めることができる。
【0329】
<輸液容器の取出方法>
図29は、輸液容器503の取出方法の一例について説明するための図である。図29に示すように、輸液棚30はストッパー38を備えていてもよい。ストッパー38は、奥側端部362に位置する輸液容器503の向きを規制する部材である。輸液容器503がストッパー38に当接することにより、レール部36は、輸液容器503の表面が吸着部121の延伸方向に対して略垂直となるように、輸液容器503を保持できる。ストッパー38は、奥側端部362に位置する輸液容器503の、奥方向への移動を妨げる部材として機能してもよい。
【0330】
ストッパー38の位置、形状及び大きさは、奥側端部362に位置する輸液容器503の一部が当接し、かつ、第2搬送部120による輸液容器503の取出しの妨げにならないように規定されている。本実施形態では、ストッパー38は、奥側端部362において、輸液棚30の底部を規定する板状部材301に設けられている。また、輸液容器503を取出しやすいように、ストッパー38の先端部は奥方向に傾斜している。
【0331】
第2搬送部120が輸液容器503を吸着し、輸液棚30から輸液容器503を取出すとき、第2搬送制御部145は、図29の経路C1に示すように、第2搬送部120を略垂直に移動させた後、奥方向に略平行に移動させてもよい。その後、第2搬送制御部145は、第2搬送部120を、奥方向かつ斜め上方向に移動させる。第2搬送部120が略垂直に移動するとき、奥方向と略平行に移動するとき、斜め上方向に移動するときの、それぞれの移動距離は、例えば、レール部36とストッパー38との位置関係から予め設定されている。
【0332】
上記のような第2搬送部120の移動制御により、輸液棚30の高さを大きくせずとも(輸液棚30の省スペース化を図りつつ)、輸液容器503の取出しをスムーズに行うことが可能となる。
【0333】
〔電源オフ時の制御〕
制御部140は、第1搬送部110が搬送中の注射器501又はバイアル502の種類を揮発性メモリに記憶している。そのため、第1搬送部110が注射器501又はバイアル502を搬送中に停電等で混注装置1の電源がオフになった場合、制御部140は、第1搬送部110が保持している器材が、注射器501かバイアル502かを管理できなくなる虞がある。そのため、制御部140は、電源復旧後に、電源がオフになったときに第1搬送部110が保持していた器材を、第1搬送部110から取外して、混注動作のやり直しが可能な状態とする。
【0334】
混注装置1は、例えば、第1搬送部110が搬送中の注射器501及びバイアル502を撮像するカメラを備えていてもよい。制御部140は、電源復旧後に、カメラが混注装置1の動作中に撮像した画像に基づき、第1搬送部110による搬送中の器材が注射器501かバイアル502かを判定してもよい。制御部140は、例えば、画像に映る器材のシルエット画像と、記憶部200に記憶されている注射器501及びバイアル502のシルエット画像とを比較することにより、上記の判定を行う。第1搬送部110が搬送中の器材を検出し、制御部140が上記の判定を行うことが可能であれば、搬送中の器材を検出する部材はカメラ以外の部材であってもよい。
【0335】
電源復旧後に、制御部140が、搬送中の器材が注射器501であると判定した場合、タッチパネル制御部150は、タッチパネル80に、混注装置1から注射器501を取出すことを促す報知画像を表示する。第1搬送部110が搬送中の注射器501に取付けられた針には針キャップが装着されておらず、針がむき出しとなっているためである。一方、制御部140が、搬送中の器材がバイアル502であると判定した場合には、第1搬送制御部143は、バイアル502をゴミ箱部70に搬送する。
【0336】
また、制御部140は、第2搬送部120が搬送中の輸液容器503の種類を揮発性メモリに記憶している。そのため、第2搬送部120が輸液容器503を搬送中に停電等で混注装置1の電源がオフになった場合、制御部140は、第2搬送部120が保持している輸液容器503の種類を管理できなくなる虞がある。そのため、制御部140は、電源復旧後に、電源がオフになったときに混注ユニット40が保持していた輸液容器503を、混注ユニット40から取外して、混注動作のやり直しが可能な状態とする。
【0337】
第2搬送制御部145は、電源復旧後に、混注ユニット40に保持された輸液容器503と対向する位置に第2搬送部120を搬送してもよい。そして、制御部140は、第3読取部122に、輸液容器503に貼付された第1ラベルの情報を読取らせることにより、輸液容器503の種類(大きさ)を特定してもよい。
【0338】
上述したように、輸液容器503の種類と、輸液容器503を吸着するために使用する吸着部121とを対応付けた情報が、記憶部200に記憶されている。そのため、制御部140は、混注ユニット40に保持された輸液容器503の種類を特定することにより、当該輸液容器503を吸着するために使用する吸着部121を特定する。これにより、第2搬送部120が当該輸液容器503を輸液受入棚60に搬送できるため、ユーザは、輸液受入棚60に保管された当該輸液容器503を取出すことができる。
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