(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024105070
(43)【公開日】2024-08-06
(54)【発明の名称】温度制御装置及び色測定システム
(51)【国際特許分類】
G01J 3/46 20060101AFI20240730BHJP
G01N 21/01 20060101ALI20240730BHJP
G01N 21/27 20060101ALI20240730BHJP
【FI】
G01J3/46 Z
G01N21/01 C
G01N21/27 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023009619
(22)【出願日】2023-01-25
(71)【出願人】
【識別番号】000006507
【氏名又は名称】横河電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100169823
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 雄郎
(74)【代理人】
【識別番号】100195534
【弁理士】
【氏名又は名称】内海 一成
(72)【発明者】
【氏名】堀越 久美子
(72)【発明者】
【氏名】西田 和史
【テーマコード(参考)】
2G020
2G059
【Fターム(参考)】
2G020AA08
2G020DA15
2G059AA02
2G059BB08
2G059DD13
2G059DD16
2G059EE02
2G059EE12
2G059EE13
2G059HH02
2G059NN02
2G059NN05
(57)【要約】
【課題】簡便な構成で測定対象の物体の表面の温度を安定させて物体の表面の可視光の反射スペクトルを安定に測定できる、温度制御装置及び色測定システムを提供する。
【解決手段】温度制御装置20は、色測定装置10によって色特性を測定する対象面81を有する測定対象物80を載置可能に構成される載置部41と、対象面81に吹き付けるガスを供給する配管46とを有するホルダ40と、ガスの温度を制御して供給するガス供給装置30とを備える。載置部41は、対象面81と色測定装置10との間に位置する空間44を、対象面81及び色測定装置10とともに区画する側壁45を有する。配管46の一端は、ガスが空間44の中で対象面81に向けて噴出されるように側壁45に位置する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
色測定装置によって色特性を測定する対象面を有する測定対象物を載置可能に構成される載置部と、前記対象面に吹き付けるガスを供給する配管とを有するホルダと、
前記ガスの温度を制御して供給するガス供給装置と
を備え、
前記載置部は、前記対象面と前記色測定装置との間に位置する空間を、前記対象面及び前記色測定装置とともに区画する側壁を有し、
前記配管の一端は、前記ガスが前記空間の中で前記対象面に向けて噴出されるように前記側壁に位置する、
温度制御装置。
【請求項2】
前記載置部は、前記測定対象物が前記載置部から所定距離だけ離れるように前記測定対象物を支持する突起を有する、請求項1に記載の温度制御装置。
【請求項3】
前記ホルダは、前記色測定装置を着脱可能に構成される、請求項1又は2に記載の温度制御装置。
【請求項4】
前記ホルダは、前記測定対象物を前記載置部と挟む位置に断熱部材を設置可能に構成される、請求項1又は2に記載の温度制御装置。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の温度制御装置と、前記温度制御装置で温度を制御した測定対象物の対象面の色特性を測定する色測定装置とを備える、色測定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、温度制御装置及び色測定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、所与の温度範囲内で物体の色特性を判定する色検知装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
物体の色特性の一つである物体の表面の可視光の反射スペクトルは、可視光を反射する表面の温度によって変化する。つまり、物体の表面の可視光の反射スペクトルの測定結果は、温度変化の影響を受ける。温度変化の影響を低減するために、特許文献1に記載されているように、測定環境温度を所与の温度範囲内に維持することが考えられる。
【0005】
しかし、測定環境温度を所与の温度範囲内に制御するために、例えば室内の温度を制御した測定室のような大掛かりな設備が必要となる。また、測定室内の温度を制御した場合であっても、例えば反射スペクトルの測定装置からの発熱によって測定対象の物体の表面の温度が安定しないことがある。
【0006】
簡便な構成で測定対象の物体の表面の温度を安定させて物体の表面の可視光の反射スペクトルを安定に測定することが求められる。
【0007】
本開示は、上述の点に鑑みてなされたものであり、簡便な構成で測定対象の物体の表面の温度を安定させて物体の表面の可視光の反射スペクトルを安定に測定できる、温度制御装置及び色測定システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)幾つかの実施形態に係る温度制御装置は、色測定装置によって色特性を測定する対象面を有する測定対象物を載置可能に構成される載置部と、前記対象面に吹き付けるガスを供給する配管とを有するホルダと、前記ガスの温度を制御して供給するガス供給装置とを備える。前記載置部は、前記対象面と前記色測定装置との間に位置する空間を、前記対象面及び前記色測定装置とともに区画する側壁を有する。前記配管の一端は、前記ガスが前記空間の中で前記対象面に向けて噴出されるように前記側壁に位置する。
【0009】
温度制御装置は、ガスの温度を制御して測定対象物の対象面に吹き付けることによって、簡便な構成で測定対象物の対象面の温度を安定させることができる。その結果、色測定装置が対象面の温度変化の影響を受けずに対象面の可視光の反射スペクトルを安定に測定できる。つまり、色測定装置による対象面の可視光の反射スペクトルの測定精度が高められる。
【0010】
(2)上記(1)に記載の温度制御装置において、前記載置部は、前記測定対象物が前記載置部から所定距離だけ離れるように前記測定対象物を支持する突起を有してよい。
【0011】
測定対象物が載置部から所定距離だけ離れることによって、空間に供給されたガスが測定対象物と載置部とが所定距離だけ離れることによって生じた隙間を通って対象面の中央から周囲へ向けて対象面に沿って流れて空間の外へ流出する。測定対象物と載置部との間の隙間は、空間から流出するガスの流れを安定にする。ガスの流れの安定によってガスが対象面に均一に触れる。ガスが対象面に均一に触れることによって、対象面の温度が均一になる。その結果、色測定装置による対象面の可視光の反射スペクトルの測定精度が高められる。
【0012】
(3)上記(1)又は(2)に記載の温度制御装置において、前記ホルダは、前記色測定装置を着脱可能に構成されてよい。
【0013】
ホルダが色測定装置を着脱可能に構成されることによって、複数の色測定装置のそれぞれの校正が色測定装置の交換だけで簡便に実行される。
【0014】
(4)上記(1)から(3)までのいずれか1つに記載の温度制御装置において、前記ホルダは、前記測定対象物を前記載置部と挟む位置に断熱部材を設置可能に構成されてよい。
【0015】
測定対象物が載置部と断熱部材とで挟まれることによって、対象面から放出される熱の影響、又は、対象面に伝導する熱の影響が低減する。その結果、測定対象物がホルダに長時間にわたって載置される場合に、測定対象物の対象面を所定温度に制御するためのエネルギー効率が向上する。
【0016】
(5)幾つかの実施形態に係る色測定システムは、上記(1)から(4)までのいずれか1つに記載の温度制御装置と、前記温度制御装置で温度を制御した測定対象物の対象面の色特性を測定する色測定装置とを備える。
【0017】
測定対象物の対象面の温度が温度制御装置によって制御されることによって、色測定システムの全体を均一な温度の環境に設置しなくても、色測定装置による対象面の可視光の反射スペクトルの測定精度が高められる。
【発明の効果】
【0018】
本開示によれば、簡便な構成で測定対象の物体の表面の温度を安定させて物体の表面の可視光の反射スペクトルを安定に測定できる、温度制御装置及び色測定システムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】比較例に係る色測定システムを示す模式図である。
【
図2】一実施形態に係る色測定システムの構成例を示す平面図である。
【
図4】一実施形態に係る温度制御装置の構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(比較例)
物体の表面の可視光の反射スペクトルは、可視光を反射する表面の温度によって変化する。つまり、物体の表面の可視光の反射スペクトルの測定結果は、温度変化の影響を受ける。温度変化の影響を低減して可視光の反射スペクトルを安定に測定することが求められる。特に、リファレンスデータとして可視光の反射スペクトルを測定する場合に、安定に測定することが重要である。安定な測定は、測定精度の向上につながる。
【0021】
温度変化の影響を低減して可視光の反射スペクトルを安定に測定するために、測定装置が設置されている測定環境温度を制御することが考えられる。
図1に示されるように、比較例に係る色測定システム90は、色測定装置91と、色測定装置91を収容する測定室97とを備える。測定室97は、室内の温度を所定範囲内に制御する温度制御装置98を備える。色測定装置91は、測定対象物96に測定光94を照射する照射部92と、測定光94が測定対象物96で反射した反射光95を検出する検出部93とを備える。
【0022】
比較例に係る色測定システム90において、測定対象物96の温度は、原則として測定室97の環境温度で安定する。測定対象物96の温度の安定によって、測定対象物96の表面の可視光の反射スペクトルの測定結果が安定する。しかし、測定室97の設置に費やされるコスト及び測定室97の中の温度制御に費やされるコストが増大する。
【0023】
色測定装置91が測定室97の中でしか使用できないとすれば、色測定装置91を他の場所に移動させて使用することが難しくなる。つまり、色測定装置91の利便性が低下する。
【0024】
測定室97の環境温度が安定している場合であっても、色測定装置91において測定光94を照射する照射部92等が発熱することがある。照射部92から測定対象物96に測定光94を照射するために、測定対象物96と照射部92との間に遮蔽物が存在しない。したがって、照射部92から測定対象物96に対する輻射によって測定対象物96の温度が変化することがある。測定対象物96の温度の変化によって、測定対象物96の表面の可視光の反射スペクトルの測定結果が変化する。つまり、色測定装置91の影響によって測定結果が安定しないことがある。
【0025】
以上述べてきたように、比較例に係る色測定システム90において、測定室97の設置等のコスト、又は、測定室97の中であっても色測定装置91に存在する発熱部分からの輻射の影響が問題となることがある。
【0026】
そこで、本開示は、
図2~
図4を参照して、色測定装置10が発熱部分を含むとしても簡便な構成で測定対象物80の対象面81の可視光の反射スペクトルを安定に測定できる温度制御装置20及び色測定システム1について説明する。
【0027】
(色測定システム1の構成例)
図2及び
図3に示されるように、本開示の一実施形態に係る色測定システム1は、測定対象物80の対象面81の色特性を測定する色測定装置10と、測定対象物80の対象面81の温度を制御する温度制御装置20とを備える。温度制御装置20は、測定対象物80を保持するホルダ40と、ガス供給装置30とを備える。温度制御装置20は、測定対象物80の対象面81に所定温度のガスを吹き付けることによって、対象面81の温度を所定温度に制御するように構成される。ガス供給装置30は、温度を所定温度に制御したガスをホルダ40に供給する。
【0028】
<色測定装置10>
色測定装置10は、測定対象物80の対象面81の色を測定する。具体的に、色測定装置10は、対象面81の可視光の反射スペクトルを測定する。可視光の波長範囲の下限は例えば360nm~400nmであるとする。可視光の波長範囲の上限は例えば760~830nmであるとする。色測定装置10は、照射部11と、検出部12と、制御部13とを備える。
【0029】
照射部11は、対象面81に少なくとも可視光の範囲の波長の成分を含む測定光を照射する。照射部11は、例えばランプ又はLED(Light Emitting Diode)等の光源を含んでよい。
【0030】
検出部12は、測定光が対象面81で反射された光である反射光のスペクトルを検出する。検出部12は、反射光に含まれる各波長成分の強度を検出するように、分光器と検出素子とを組み合わせて構成されてよい。分光器は、モノクロメータ等を含んでよい。検出素子は、PD(Photo Diode)又はフォトトランジスタ等を含んでよい。
【0031】
制御部13は、測定光及び反射光のそれぞれのスペクトルを取得する。制御部13は、照射部11又は検出部12の少なくとも一方を制御してよい。制御部13は、測定光のスペクトルと反射光のスペクトルとの差に基づいて、対象面81の反射スペクトルを算出する。制御部13は、例えばCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサ又はFPGA(Field Programmable Gate Array)等の専用回路を含んで構成されてよい。制御部13は、色測定装置10の種々の機能を実現するプログラムを実行するように構成されてよい。
【0032】
制御部13は、記憶部を備えてよい。記憶部は、制御部13の動作に用いられる各種情報、又は、制御部13の機能を実現するためのプログラム等を格納してよい。記憶部は、制御部13のワークメモリとして機能してよい。記憶部は、例えば半導体メモリ等で構成されてよい。記憶部は、制御部13と別体で構成されてもよい。
【0033】
色測定装置10は、インタフェースを更に備えてよい。インタフェースは、例えば、有線又は無線によって外部装置と通信する通信インタフェースを含んでよい。インタフェースは、表示デバイスを備えてもよい。表示デバイスは、例えば液晶ディスプレイ等の種々のディスプレイを含んでよい。インタフェースは、スピーカ等の音声出力デバイスを備えてもよい。インタフェースは、ユーザからの入力を受け付ける入力デバイスを含んでもよい。入力デバイスは、例えば、キーボード又は物理キーを含んでもよいし、タッチパネル若しくはタッチセンサ又はマウス等のポインティングデバイスを含んでもよい。
【0034】
<ホルダ40>
ホルダ40は、載置部41と、縁部42とを備える。載置部41は、ホルダ40から見てZ軸の負の方向に位置する色測定装置10に測定対象物80の対象面81が対向するように、測定対象物80を載置可能に構成される。縁部42は、測定対象物80が縁部42に突き当てられることによって、載置部41の上で測定対象物80のX軸及びY軸のそれぞれの方向に沿った位置が限定されるように構成される。縁部42は、測定対象物80がZ軸方向の平面視において矩形状である場合に、測定対象物80の角だけが突き当てられるように構成されてよい。縁部42は、測定対象物80が突き当てられる部分以外において、例えばスポンジ等の弾性材料を含んで構成されてよい。
【0035】
載置部41は、Z軸の正の方向に突出する突起43を有する。突起43が測定対象物80の対象面81を支持することによって、載置部41と対象面81との間に、突起43の高さに対応する距離の隙間が生じる。言い換えれば、突起43は、測定対象物80が載置部41から所定距離だけ離れるように測定対象物80を支持する。
【0036】
載置部41は、測定対象物80が載置されたときに、色測定装置10から到来する測定光及び色測定装置10に向かう反射光を遮らないように構成される。具体的に、載置部41の中に、測定光及び反射光が通過できる空間44が区画されている。言い換えれば、空間44の存在によって、色測定装置10に対して対象面81が露出する。ホルダ40は、空間44を区画する側壁45を備える。側壁45の形状は、Z軸方向の平面視において円形状であるとする。側壁45の形状は、Z軸方向の平面視において円形状に限られず他の種々の形状であってもよい。
【0037】
ホルダ40は、ガス供給装置30と空間44とをつなぐ配管46を備える。配管46の空間44の側の一端は、ガスが空間44の中で対象面81に向けて噴出されるように側壁45に位置する。言い換えれば、配管46は、両端に開口を有する。配管46の空間44の側の開口は、側壁45に位置する。ガス供給装置30から供給されるガスは、配管46を通って側壁45に位置する配管46の開口から空間44に噴出される。
【0038】
ホルダ40は、配管46の開口の近傍に位置する温度測定部47を備える。温度測定部47は、配管46の開口から空間44に噴出されるガスの温度を測定する。温度測定部47は、例えばサーミスタ又は熱電対等の温度センサを含んで構成されてよい。温度測定部47は、ガスの温度の測定結果、又は、ガスの温度に対応する電気信号をガス供給装置30に出力する。
【0039】
ガス供給装置30から配管46を通って空間44に供給されるガスは、流入ガス48として破線の矢印で示されている。空間44に供給された流入ガス48は、空間44の中を満たす。空間44は、ガスによって空間44の外よりも陽圧になる。その結果、空間44に流入したガスは、測定対象物80と載置部41及び縁部42との隙間を通って空間44の外へ流出する。空間44から外へ流出するガスは、流出ガス49として破線の矢印で示されている。
【0040】
空間44に流入した流入ガス48の少なくとも一部は、流出ガス49として空間44の外へ流出するまでの間において、測定対象物80の対象面81に吹き付けられ、対象面81に沿って流れる。また、流出ガス49は、載置部41と対象面81との間の隙間を通って測定対象物80の中央から外に向かって測定対象物80の周囲全体を通り、空間44の外へ流出する。ホルダ40の載置部41、突起43及び側壁45は、流出ガス49が測定対象物80の周囲をまんべんなく流れるように構成されてよい。
【0041】
色測定装置10は、ホルダ40に取り付けられてよい。つまり、ホルダ40は、色測定装置10を着脱可能に構成されてよい。
【0042】
<ガス供給装置30>
図4に示されるように、温度制御装置20は、ガス供給装置30と、ホルダ40とを備える。ガス供給装置30は、レギュレータ31と、冷却部32と、加熱部33と、制御部34とを備え、温度を所定温度に制御したガスを、配管46を通じてホルダ40に供給する。ガス供給装置30は、ガスとして、大気、又は、乾燥空気若しくは窒素ガス等の種々のガスを供給してよい。
【0043】
レギュレータ31は、ガスの流量を調整する。冷却部32は、ガスを冷却する。冷却部32は、例えばボルテックスクーラー等を含んで構成されてよい。加熱部33は、ガスを加熱する。加熱部33は、例えばヒーター等を含んで構成されてよい。ガス供給装置30において、レギュレータ31によって流量を調整されたガスが冷却部32によって冷却された後に加熱部33によって加熱される。ガスが冷却後に加熱されることによって、ガスの温度は、色測定システム1が設置されている場所の温度と同程度の温度に調整される。また、レギュレータ31によってガスの流量が一定に維持されることによって、ガスの温度が安定して調整される。
【0044】
制御部34は、レギュレータ31、冷却部32及び加熱部33を制御する。制御部34は、プロセッサ又は専用回路を含んで構成されてよい。制御部34は、ホルダ40の温度測定部47から配管46の開口から空間44に噴出されるガスの温度の測定結果を取得する。制御部34は、温度測定部47によるガスの温度の測定結果に基づいて、配管46の開口から空間44に噴出されるガスの温度が所定温度に調整されるように、レギュレータ31、冷却部32及び加熱部33を制御する。つまり、制御部34は、温度測定部47による、配管46の開口から空間44に噴出されるガスの温度の測定結果を、レギュレータ31、冷却部32及び加熱部33の制御にフィードバックする。配管46の開口から空間44に噴出されるガスの温度の測定結果がガス供給装置30におけるガスの温度調整にフィードバックされることによって、配管46の開口から空間44に噴出されるガスの温度に対する、配管46又はガス供給装置30等の影響が低減する。
【0045】
ガス供給装置30は、配管46の開口から空間44に噴出されるガスの温度を所定温度に制御できれば、冷却部32又は加熱部33の一方を備えなくてもよい。つまり、ガス供給装置30は、加熱部33によるガスの加熱だけで配管46の開口から空間44に噴出されるガスの温度を所定温度に制御してよい。また、ガス供給装置30は、冷却部32によるガスの冷却だけで配管46の開口から空間44に噴出されるガスの温度を所定温度に制御してよい。ガス供給装置30は、配管46の開口から空間44に噴出されるガスの温度を、ガスの流量にかかわらず所定温度に維持できれば、レギュレータ31を備えなくてもよい。
【0046】
<筐体70>
色測定システム1は、筐体70を更に備えてもよい。筐体70は、色測定装置10及び温度制御装置20を支持するように構成されてよい。筐体70は、色測定装置10を着脱可能に構成されてよい。
【0047】
(色測定システム1の動作例)
上述してきたように、色測定システム1は、測定対象物80の対象面81の可視光の反射スペクトルを測定する色測定装置10と、測定対象物80の対象面81の温度を所定温度に維持するための温度制御装置20とを備える。色測定システム1において、温度制御装置20は、色測定装置10による測定対象物80の対象面81の可視光の反射スペクトルの測定結果を安定させるために、ホルダ40に載置された測定対象物80の対象面81の温度を制御して安定させる。温度制御装置20は、測定対象物80の対象面81の温度が所定温度で安定するように、対象面81の温度を制御する。色測定装置10は、ホルダ40に載置された測定対象物80の対象面81の可視光の反射スペクトルを、対象面81の温度が所定温度で安定した状態で測定する。
【0048】
具体的に、温度制御装置20は、温度を所定温度に制御したガスをガス供給装置30から供給して、ホルダ40に載置されている測定対象物80の対象面81に吹き付けることによって、対象面81の温度を所定温度に制御する。ホルダ40は、対象面81の温度が所定温度に維持されるように、測定対象物80を保持する機構として載置部41を有し、所定温度のガスを対象面81に吹き付ける機構として配管46を有する。また、ホルダ40は、配管46の開口の近傍に位置する温度測定部47を有し、配管46の開口から対象面81に吹き付けられるガスの温度を温度測定部47で測定して測定結果をガス供給装置30に出力する。ガス供給装置30は、レギュレータ31、冷却部32及び加熱部33によってガスの流量及び温度を制御できる。ガス供給装置30の制御部34は、温度測定部47から取得したガスの温度の測定結果に基づいて、ガスの温度が所定温度になるようにレギュレータ31、冷却部32及び加熱部33を制御する。つまり、制御部34は、ガスの温度の測定結果をレギュレータ31、冷却部32及び加熱部33の制御にフィードバックする。
【0049】
ホルダ40は、対象面81に吹き付けられるガスが対象面81に沿って流れ、対象面81の各部に均一に触れるように、対象面81の中央に吹き付けられるガスが対象面81の周囲に向けてまんべんなく流れて空間44から流出する構造を有する。具体的に、ホルダ40は、測定対象物80を載置可能に構成される載置部41に突起43を有する。突起43によって、測定対象物80の対象面81と載置部41の面との間に隙間が形成される。対象面81に吹き付けられたガスは、対象面81と載置部41の面との間の隙間を通って対象面81の周囲に向けて流れ、空間44から流出する。
【0050】
対象面81と載置部41の面との間に隙間が無い場合、陽圧になった空間44からガスが流出するために、測定対象物80が載置部41から不規則に動くことがある。測定対象物80が不規則に動いた場合、ガスの流れが不均一になる。本実施形態において、対象面81と載置部41の面との間に隙間が生じることによって、空間44からガスが流出する経路が確保される。ガスが流出する経路の確保によって、ガスの流れが均一になる。ガスが対象面81の各部に均一に触れることによって、対象面81の各部の温度が所定温度に維持される。また、ガスが対象面81に沿って流れることによって、対象面81と空間44を介して対向する色測定装置10からの輻射がガスの流れによって遮られる。色測定装置10からの輻射の影響が低減することによって、対象面81の温度が安定する。
【0051】
<色測定装置10の交換>
色測定装置10がホルダ40又は筐体70に着脱可能に構成される場合、複数の色測定装置10のそれぞれの校正が色測定装置10の交換だけで簡便に実行される。仮に、色測定システム1の全体が測定室等の温度が制御された環境に設置されている場合、色測定装置10を交換するたびに環境温度又は色測定装置10の温度の安定を待って校正を実行する必要がある。一方で、本実施形態に係る色測定システム1によれば、測定対象物80の対象面81に対する環境温度又は色測定装置10の温度の影響が低減される。温度の影響の低減によって、色測定装置10を交換したときの温度の安定を待つ時間が短縮される。その結果、複数の色測定装置10のそれぞれの校正が簡便に実行される。
【0052】
また、測定対象物80として色測定装置10の校正サンプルをホルダ40に載置したままで、色測定装置10が着脱可能に構成されてもよい。この場合、測定対象物80の対象面81の温度が安定したままで色測定装置10が交換される。その結果、色測定装置10を交換したときの温度の安定を待つ時間がより一層短縮される。その結果、複数の色測定装置10のそれぞれの校正が簡便に実行される。
【0053】
ホルダ40は、測定対象物80が載置部41に載置された状態で対象面81の反対側の面を覆う断熱部材を更に備えてもよい。断熱部材は、測定対象物80が載置部41に載置された状態で、ホルダ40に着脱可能に構成されてよい。言い換えれば、ホルダ40は、測定対象物80が載置部41に載置された状態で、測定対象物80を載置部41とともに挟むように断熱部材を設置可能に構成されてよい。対象面81の反対側の面が断熱部材で覆われることによって、対象面81から測定対象物80の内部を通じて対象面81の反対側の面に放出される熱の影響、又は、対象面81の反対側の面から測定対象物80の内部を通じて対象面81に伝導する熱の影響が低減する。したがって、測定対象物80がホルダ40に長時間にわたって載置される場合に、測定対象物80の対象面81を所定温度に制御するためのエネルギー効率が向上する。
【0054】
(小括)
以上述べてきたように、本実施形態に係る色測定システム1において、温度制御装置20は、色測定装置10の測定対象とする測定対象物80の対象面81の温度を均一に制御できる。その結果、対象面81の温度の目的の温度への制御が達成される。また、温度制御装置20は、色測定システム1の全体を均一な温度の環境に設置しなくても、対象面81の温度の均一な制御を実現できる。また、温度制御装置20は、温度を制御したガスを測定対象物80と色測定装置10との間の空間44に供給することによって、色測定装置10から測定対象物80の対象面81への輻射の影響を低減できる。その結果、温度制御装置20は、簡便な構成で測定対象物80の対象面81の温度を安定させることができる。そして、色測定装置10が測定対象物80の対象面81の温度変化の影響を受けずに測定対象物80の対象面81の可視光の反射スペクトルを安定に測定できる。つまり、色測定装置10による対象面81の可視光の反射スペクトルの測定精度が高められる。
【0055】
以上、本開示に係る実施形態について、図面を参照して説明してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限定されるものではなく、本開示の趣旨を逸脱しない範囲においての種々の変更も含まれる。
【0056】
本開示において、X軸、Y軸、及びZ軸は、説明の便宜上設けられたものであり、互いに入れ替えられてよい。本開示に係る構成は、X軸、Y軸、及びZ軸によって構成される直交座標系を用いて説明されてきた。本開示に係る各構成の位置関係は、直交関係にあると限定されるものではない。
【符号の説明】
【0057】
1 色測定システム
10 色測定装置(11:照射部:12:検出部、13:制御部)
20 温度制御装置
30 ガス制御装置(31:レギュレータ、32:冷却部、33:加熱部、34:制御部)
40 ホルダ(41:載置部、42:縁部、43:突起、44:空間、45:側壁、46:配管、47:温度測定部、48:流入ガス、49:流出ガス)
70 筐体
80 測定対象物(81:対象面)