(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024105076
(43)【公開日】2024-08-06
(54)【発明の名称】二次電池の製造方法およびその利用
(51)【国際特許分類】
H01M 50/618 20210101AFI20240730BHJP
H01M 10/04 20060101ALI20240730BHJP
H01M 50/103 20210101ALI20240730BHJP
H01M 50/15 20210101ALI20240730BHJP
H01G 11/78 20130101ALI20240730BHJP
【FI】
H01M50/618
H01M10/04 Z
H01M50/103
H01M50/15
H01G11/78
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023009627
(22)【出願日】2023-01-25
(71)【出願人】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117606
【弁理士】
【氏名又は名称】安部 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【弁理士】
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100130605
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 浩治
(72)【発明者】
【氏名】米山 顕啓
【テーマコード(参考)】
5E078
5H011
5H023
5H028
【Fターム(参考)】
5E078AB02
5E078HA01
5E078HA21
5E078HA25
5H011AA03
5H011BB03
5H011KK01
5H023AA03
5H023AS02
5H023BB05
5H023BB10
5H028AA06
5H028AA07
5H028BB01
5H028BB03
5H028BB15
5H028HH01
5H028HH05
(57)【要約】
【課題】二次電池の寸法ばらつきを抑制できる技術を提供する。
【解決手段】ここに開示される製造方法は、内部に電極体20が収容された電池ケース10を組み立てる電池ケース組立工程と、組立後の電池ケース10の内部にガスを注入して電池ケース10を変形させるケース変形工程と、電池ケース10の内部に電解液を注入する注液工程と、注液後の電池ケース10を封止する封止工程とを包含する。そして、ケース変形工程は、第1側壁14に膨張面14aが形成され、かつ、基準部14cからの膨張量が最大膨張幅Hの1/2以上となる高膨張領域EAの面積が膨張面14aの総面積の1/3以上となるようにする。これによって、内部からの膨張による全体的な塑性変形が第1側壁14に生じるため、製造後の二次電池1の寸法ばらつきを抑制できる。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極及び負極を含む電極体と、電解液と、前記電極体及び前記電解液を収容する電池ケースとを備えた二次電池の製造方法であって、
前記電池ケースは、
長尺な矩形の板状部材である底部と、前記底部の長辺から上方に延在する一対の第1側壁と、前記底部の短辺から上方に延在する一対の第2側壁と、前記第1側壁と前記第2側壁の上端に囲まれた上面開口とを含む外装体と、
前記上面開口を封止し、電解液注液孔が設けられている封口板と
を含み、
ここで、以下の工程:
前記電極体を前記外装体の内部に配置した状態で前記上面開口を前記封口板で封止し、前記電池ケースを組み立てる電池ケース組立工程;
組立後の前記電池ケースの内部に、前記電解液注液孔を介してガスを注入して前記電池ケースを変形させるケース変形工程;
変形後の前記電池ケースの内部に、前記電解液注液孔を介して前記電解液を注入する注液工程;
注液後の前記電池ケースの前記電解液注液孔を封止する封止工程;
を包含し、
前記ケース変形工程において、
前記一対の第1側壁の少なくとも一方に、当該第1側壁の中央部が前記電極体から離間する第1の方向に向かって突出した膨張面が形成され、
前記膨張面の面内に、前記第1の方向における前記電極体からの突出量が最も多い部分である頂部と、前記突出量が最も少ない部分である基準部とが形成され、かつ、
前記第1の方向における前記基準部から前記頂部までの突出量を最大膨張幅Hとしたとき、前記基準部からの突出量が前記最大膨張幅Hの1/2以上となる領域である高膨張領域の正面視における面積が前記膨張面の総面積の1/3以上となるようにする、二次電池の製造方法。
【請求項2】
前記第1側壁は、高さが5cm以上であり、幅が20cm以上である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記ケース変形工程は、正面視における前記高膨張領域のアスペクト比が2以上となるように制御される、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記ケース変形工程は、前記第1側壁の長辺方向の中央を通過する上下方向に沿った断面において、前記封口板の下面から1cm下方に向かった領域における前記膨張面の傾斜角が5°以上となるように制御される、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項5】
前記ケース変形工程は、前記第1側壁の上下方向の中央を通過する長辺方向に沿った断面において、前記第1側壁と前記第2側壁との境界から2.3mm内方に向かった領域における前記膨張面の傾斜角が1°以上となるように制御される、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項6】
正極及び負極を含む電極体と、
電解液と、
前記電極体及び前記電解液を収容する電池ケースと、
を備えた二次電池であって、
前記電池ケースは、
長尺な矩形の板状部材である底部と、前記底部の長辺から上方に延在する一対の第1側壁と、前記底部の短辺から上方に延在する一対の第2側壁と、前記第1側壁と前記第2側壁の上端に囲まれた上面開口とを含む外装体と、
前記上面開口を封止する封口板と
を含み、
前記一対の第1側壁の少なくとも一方に、当該第1側壁の中央部が前記電極体から離間する第1の方向に向かって突出した膨張面が形成され、
前記膨張面の面内に、前記第1の方向における前記電極体からの突出量が最も多い部分である頂部と、前記突出量が最も少ない部分である基準部とが形成され、かつ、
前記第1の方向における前記基準部から前記頂部までの突出量を最大膨張幅Hとしたとき、前記基準部からの突出量が前記最大膨張幅Hの1/2以上となる領域である高膨張領域の正面視における面積が前記膨張面の総面積の1/3以上である、二次電池。
【請求項7】
前記第1側壁は、高さが5cm以上であり、幅が20cm以上である、請求項6に記載の二次電池。
【請求項8】
正面視における前記高膨張領域のアスペクト比が2以上である、請求項6または7に記載の二次電池。
【請求項9】
前記第1側壁の長辺方向の中央を通過する上下方向に沿った断面において、前記封口板の下面から1cm下方に向かった領域における前記膨張面の傾斜角が5°以上である、請求項6または7に記載の二次電池。
【請求項10】
前記第1側壁の上下方向の中央を通過する長辺方向に沿った断面において、前記第1側壁と前記第2側壁との境界から2.3mm内方に向かった領域における前記膨張面の傾斜角が1°以上である、請求項6または7に記載の二次電池。
【請求項11】
複数の単電池と、
前記複数の単電池の各々を電気的に接続する接続部材と
を備え、
前記複数の単電池の90%以上が請求項6または7に記載の二次電池である、組電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ここに開示される技術は、二次電池の製造方法、二次電池および組電池に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池等の二次電池は、様々な分野において広く用いられている。この二次電池は、例えば、電池ケース内に電極体と電解液とが収容された構成を有している。このとき、電解液の大部分は、電極体の内部に浸透している。また、二次電池の電池ケースには、電解液を注液するための電解液注液孔が設けられている。この電解液注液孔は、電解液の注液後に封止部材で封止される。
【0003】
特許文献1(国際公開第2018/155506号)には、この種の二次電池を複数個備えた電池モジュールが記載されている。具体的には、特許文献1に記載の電池モジュールは、一方向に積層され圧縮される複数の電池セル(二次電池)と、電池セルの側面に対向して複数の電池セルに挟持され、離散的に配置されるとともに構造変形して電池セルの側面に圧接する複数の押圧調整部を有するスペーサと、を備えている。これによって、電池セルの寸法誤差の累積を吸収し所定の寸法に収めることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載されたような寸法ばらつきをスペーサで吸収する技術では、吸収可能な寸法ばらつきの範囲に限界がある。このため、近年では、二次電池の寸法ばらつき自体を容易に抑制できる技術が要求されている。ここに開示される技術は、かかる課題を解決するためになされたものであり、二次電池の寸法ばらつきを抑制できる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を実現するべく、ここに開示される技術によって以下の構成の二次電池の製造方法(以下、単に「製造方法」ともいう)が提供される。
【0007】
ここに開示される製造方法は、正極及び負極を含む電極体と、電解液と、電極体及び電解液を収容する電池ケースとを備えた二次電池の製造方法である。この電池ケースは、長尺な矩形の板状部材である底部と、底部の長辺から上方に延在する一対の第1側壁と、底部の短辺から上方に延在する一対の第2側壁と、第1側壁と第2側壁の上端に囲まれた上面開口とを含む外装体と、上面開口を封止し、電解液注液孔が設けられている封口板とを含む。そして、ここに開示される製造方法は、以下の工程:電極体を外装体の内部に配置した状態で上面開口を封口板で封止し、電池ケースを組み立てる電池ケース組立工程;組立後の電池ケースの内部に、電解液注液孔を介してガスを注入して電池ケースを変形させるケース変形工程;変形後の電池ケースの内部に、電解液注液孔を介して電解液を注入する注液工程;注液後の電池ケースの電解液注液孔を封止する封止工程;を包含する。そして、ここに開示される製造方法では、ケース変形工程において、一対の第1側壁の少なくとも一方に、当該第1側壁の中央部が電極体から離間する第1の方向に向かって突出した膨張面が形成され、膨張面の面内に、第1の方向における電極体からの突出量が最も多い部分である頂部と、突出量が最も少ない部分である基準部とが形成され、かつ、第1の方向における基準部から頂部までの突出量を最大膨張幅Hとしたとき、基準部からの突出量が最大膨張幅Hの1/2以上となる領域である高膨張領域の正面視における面積が膨張面の総面積の1/3以上となるようにする。
【0008】
ここに開示される製造方法では、組立後の電池ケースの内部にガスを注入して電池ケースを変形させるケース変形工程を実施する。これによって、内部からの膨張による全体的な変形が電池ケースの第1側壁に生じるため、製造後の二次電池の寸法ばらつきを抑制できる。さらに、ここに開示される製造方法のケース変形工程は、基準面からの突出量が一定以上となる高膨張領域の面積が膨張面の総面積の1/3以上となるように制御される。これによって、第1側面の膨張が弾性範囲を超えて塑性変形となるため、ケース変形工程後の収縮による寸法ばらつきを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】一実施形態に係る二次電池の外観を模式的に示す斜視図である。
【
図2】
図1に示す二次電池の内部構造を模式的に示す縦断面図である。
【
図3】一実施形態に係る二次電池の外観を模式的に示す正面図である。
【
図6】一実施形態に係る製造方法を説明するフローチャートである。
【
図7】電池ケース組立工程における封口板と電極体との接続を説明する斜視図である。
【
図8】ケース変形工程における電池ケース内部へのガス注入を説明する縦断面図である。
【
図9】注液工程における電解液の注液を説明する縦断面図である。
【
図10】一実施形態に係る組電池の外観を模式的に示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、ここに開示される技術の一実施形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって、ここに開示される技術の実施に必要な事柄は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。ここに開示される技術は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。また、以下の図面においては、同じ作用を奏する部材・部位に同じ符号を付して説明している。さらに、各図における寸法関係(長さ、幅、厚み等)は実際の寸法関係を反映するものではない。
【0011】
本明細書において、「二次電池」とは、電解質を介して正極と負極との間を電荷担体が移動することによって充放電を繰り返し実施できる蓄電デバイス一般をいう。かかる「二次電池」は、リチウムイオン二次電池、ニッケル水素電池、ニッケルカドミウム電池等のいわゆる蓄電池の他、電気二重層キャパシタ等のキャパシタなどを包含する。すなわち、ここに開示される製造方法は、特定の種類の電池を製造する方法に限定されず、電池ケース内に電極体と電解液が収容された蓄電デバイス全般の製造に広く適用できる。
【0012】
1.二次電池の構造
先ず、本実施形態に係る二次電池の構造を説明する。
図1は、本実施形態に係る二次電池の外観を模式的に示す斜視図である。
図2は、
図1に示す二次電池の内部構造を模式的に示す縦断面図である。
図3は、本実施形態に係る二次電池の外観を模式的に示す正面図である。また、
図4は、
図3中のIV-IV断面図である。
図5は、
図3中のV-V断面図である。なお、
図1~
図5中の符号Xは幅方向を示しており、符号Yは奥行方向を示しており、符号Zは高さ方向を示している。さらに、符号L、R、F、Rr、U、Dは、それぞれ、左方、右方、前方、後方、上方、下方を示している。但し、これらの方向は、説明の便宜上定めたものであり、使用中や製造中の二次電池の設置態様を限定することを意図したものではない。
【0013】
図1及び
図2に示すように、本実施形態に係る二次電池1は、電池ケース10と、電極体20と、電解液30とを備えている。以下、二次電池1を構成する各部材について具体的に説明する。
【0014】
(1)電池ケース
本実施形態における電池ケース10は、内部空間10aを有する箱状の容器である。この電池ケース10の内部空間10aには、電極体20と電解液30が収容される。
図1及び
図2に示すように、本実施形態に係る二次電池1は、扁平な直方体状の電池ケース10を備えている。また、電池ケース10は、一定以上の強度を有する金属製の部材であることが好ましい。電池ケース10の素材の一例として、アルミニウム、アルミニウム合金などが挙げられる。なお、ここに開示される技術を限定することを意図するものではないが、電池ケース10の内部容積は、500cm
3以上が好ましく、1000cm
3以上がより好ましい。このような大容量の二次電池1は、電解液30の必要量が多いため、ここに開示される技術の効果がより好適に発揮される。なお、電池ケース10の内部容積の上限は、特に限定されず、3000cm
3以下でもよく、1500cm
3以下でもよい。また、ここに開示される技術は、300cm
3以下(典型的には150cm
3以下)の小型電池にも適用できる。
【0015】
また、本実施形態における電池ケース10は、外装体12と封口板17を備えている。以下、各部材について説明する。
【0016】
(a)外装体
外装体12は、上面が開放された扁平な箱状体である。具体的には、外装体12は、長尺な矩形の板状部材である底部13と、底部13の長辺13a(幅方向Xに沿った辺)から上方Uに延在する一対の第1側壁14と、底部13の短辺13b(奥行方向Yに沿った辺)から上方Uに延在する一対の第2側壁15と、第1側壁14と第2側壁15の上端に囲まれた上面開口16とを備えている。換言すると、第1側壁14は、相対的に面積が大きい側壁である。一方、第2側壁15は、相対的に面積が小さい側壁である。かかる構成の外装体12を有する電池ケース10は、内圧が増加した際に第1側壁14が優先的に変形(膨張)する。これによって、後述するケース変形工程S20における変形位置や変形量を容易に制御できるため、二次電池1の寸法ばらつきを適切に抑制できる。
【0017】
また、外装体12の具体的な寸法は、ここに開示される技術の効果を著しく阻害しない限りにおいて適宜変更することができる。例えば、第1側壁14の高さ(高さ方向Zの寸法)は、5cm以上が好ましく、8cm以上がより好ましい。そして、第1側壁14の幅(幅方向Xの寸法)は、20cm以上が好ましく、25cm以上がより好ましい。このように、一定以上の高さと幅(すなわち、面積)を有する第1側壁14を形成することによって、ケース変形工程S20において第1側壁14をより変形させやすくなる。一方、第1側壁14の高さや幅の上限は、特に限定されない。例えば、第1側壁14の高さは、12cm以下でもよく、10cm以下でもよい。また、第1側壁14の幅は、35cm以下でもよく、30cm以下でもよい。なお、第1側壁14のアスペクト比(幅に対する高さの比率)は、2以上が好ましく、3以上がより好ましい。これによって、第1側壁14をさらに変形させやすくなる。一方、第1側壁14のアスペクト比の上限も特に限定されず、8以下でもよく、5以下でもよい。
【0018】
また、第2側壁15の幅(奥行方向Yの寸法)は、5cm以下が好ましく、4cm以下がより好ましい。このように、第2側壁15の幅を狭くすることによって、第2側壁15の変形を好適に抑制できる。一方、第2側壁15の幅の下限は、特に限定されず、1cm以上でもよく、3cm以上でもよい。なお、第2側壁15の高さ(高さ方向Zの寸法)は、上記第1側壁14と同じ高さに設定される。
【0019】
また、第1側壁14の厚み(奥行方向Yの寸法)は、3mm以下が好ましく、2mm以下がより好ましく、1.5mm以下がさらに好ましい。これによって、第1側壁14をより変形させやすくなる。一方、電池ケース10の強度を確保するという観点から、第1側壁14の厚みは、0.15mm以上が好ましく、0.2mm以上がより好ましい。一方、底部13や第2側壁15は、第1側壁14よりも厚い方が好ましい。これによって、第1側壁14をさらに変形させやすくなる。なお、底部13の具体的な厚みは、0.5mm以上が好ましく、1mm以上がより好ましい。これによって、底部13の変形を好適に抑制できる。一方、二次電池1の重量や材料コストを考慮すると、底部13の厚みは、4mm以下が好ましく、3mm以下がより好ましく、2.5mm以下がさらに好ましい。また、第2側壁15の厚み(幅方向Xの寸法)は、0.15mm以上が好ましく、0.2mm以上がより好ましい。これによって、第2側壁15の変形を抑制できる。一方、二次電池1の重量や材料コストを考慮すると、第2側壁15の厚みは、3mm以下が好ましく、2mm以下がより好ましく、1.5mm以下がさらに好ましい。
【0020】
(b)封口板
封口板17は、外装体12の上面開口16を封止する板状部材である。この封口板17には、電池ケース10の内部に電解液30を注液するための電解液注液孔17aが設けられている。製造後の二次電池1では、電解液注液孔17aは、封止部材18で封止されている。なお、封口板17も、第1側壁14よりも厚い方が好ましい。これによって、ケース変形工程S20における封口板17の変形を抑制できる。具体的には、封口板17の厚みは、1mm以上が好ましく、1.5mm以上がより好ましい。一方、二次電池1の重量や材料コストを考慮すると、封口板17の厚みは、5mm以下が好ましく、4mm以下がより好ましい。
【0021】
また、本実施形態における封口板17には、ガス排出弁17bが形成されている。ガス排出弁17bは、封口板17の他の部分よりも厚みが薄くなるように形成された薄肉部である。このガス排出弁17bは、分解ガス等の発生によって電池ケース10の内圧が急激に上昇した場合に開裂する。これによって、充放電中の二次電池1の過剰な変形を防止できる。なお、ガス排出弁17bの厚みは、0.5mm以下が好ましく、0.3mm以下がより好ましい。これによって、充放電中の内圧上昇時にガス排出弁17bを適切に作動できる。一方、ガス排出弁17bの厚みの下限は、0.05mm以上が好ましく、0.1mm以上がより好ましい。これによって、ケース変形工程S20におけるガス排出弁17bの誤作動を抑制できる。
【0022】
また、封口板17には、一対の電極端子40が取り付けられている。各々の電極端子40は、複数の導電部材を組み合わせた構造体であり、高さ方向Zに沿って延びている。そして、電極端子40の下端部を構成する集電部材40aは、電池ケース10の内部で電極体20と接続されている。なお、
図4に示すように、本実施形態では、一対の電極端子40の各々が複数(
図4では3つ)の集電部材40aを有している。一方、電極端子40の上端部を構成する外部端子40bは、電池ケース10の外部に露出している。なお、電極端子40の構造は、一般的な二次電池で採用され得る構造を特に制限なく使用でき、ここに開示される技術を限定するものではないため詳細な説明を省略する。
【0023】
(2)電極体
上述の通り、電極体20は、電池ケース10の内部に収容されている。
図4に示すように、本実施形態では、電池ケース10の内部に複数(
図4では3つ)の電極体20が収容されている。但し、電極体20の数は、特に限定されず、1つでもよい。また、図示は省略するが、電極体20と外装体12との間には、絶縁シートが配置されている。これによって、電極体20と電池ケース10との導通を防止できる。
【0024】
電極体20は、正極と負極を含んでいる。本実施形態における電極体20は、扁平状の捲回電極体である。具体的には、電極体20は、長尺シート状の正極と負極とをセパレータを介して積層してなる積層体を捲回することによって形成される。なお、電極体20を構成する各部材(正極、負極およびセパレータ等)の素材は、一般的な二次電池で使用され得る材料を特に制限なく使用でき、ここに開示される技術を限定するものではないため詳細な説明を省略する。また、電極体20は、その捲回軸が外装体12の底部13の長辺13aに沿うように電池ケース10内に収容される。このため、本実施形態に係る二次電池1では、電極体20の扁平面20aと外装体12の第1側壁14とが対向している。
【0025】
なお、電極体20の寸法は、特に限定されず、電池性能と生産効率との関係を考慮した上で適宜調節される。具体的には、電極体20を小型化すると電池ケース10内の余剰空間(電池ケースの内部容積-電極体の体積)が増大するため、後述する注液工程S30における1回の注液量を増加できる。これによって、生産効率の向上に貢献できる。かかる観点から、電極体20の寸法は、電池ケース10内の余剰空間が50cm3以上(より好適には100cm3以上、さらに好適には150cm3以上)となるように設定することが好ましい。一方、電極体20を大型化すると、電池容量などの電池性能を向上させることができる。かかる観点から、電極体20の寸法は、電池ケース10内の余剰空間が250cm3以下(より好適には200cm3以下、さらに好適には170cm3以下)となるように設定することが好ましい。なお、ここに開示される製造方法では、ケース変形工程S20において電池ケース10を膨張させる。これによって、電池ケース10の内部容量が増加するため、電池ケース組立工程S10の直後の電池ケース10内の余剰空間が170cm3以下の場合であっても、高い生産効率を実現できる。
【0026】
(3)電解液
電解液30は、電極体20と共に電池ケース10の内部に収容されている。具体的には、電解液30は、電極体20の内部(正極と負極との極間)に浸透している。また、電解液30の一部は、余剰電解液32として電極体20の外部(電極体20と電池ケース10との間)に存在していてもよい。これによって、電極体20の内部で電解液30が分解された際に、余剰電解液32を電極体20の内部に供給できる。なお、電解液30の成分は、一般的な二次電池で使用され得るものを特に制限なく使用でき、ここに開示される技術を限定するものではないため詳細な説明を省略する。
【0027】
(4)第1側壁の形状
ここで、本実施形態では、後述するケース変形工程S20において電池ケース10を膨張させる。このため、
図3~
図4に示すように、製造後の二次電池1では、電池ケース10の第1側壁14に膨張面14aが形成される。この膨張面14aは、中央部が電極体20から離間する第1の方向(
図3中の奥行方向Yの外側)に向かって突出した第1側壁14である。詳しくは後述するが、このような膨張変形を製造工程中に生じさせることによって、製造後の二次電池1の寸法ばらつきを抑制できる。
【0028】
この膨張面14aの面内には、第1の方向(奥行方向Y)における電極体20(典型的には電極体20の扁平面20a)からの突出量が最も多い部分である頂部14bが形成される。一方、膨張面14aの面内には、第1の方向における電極体20からの突出量が最も少ない部分である基準部14cも形成される。
図3中の一点鎖線部に示すように、本実施形態における基準部14cは、第1側壁14の外周縁部に形成されている。この第1側壁14の外周縁部は、底部13、第2側壁15および封口板17の何れかと接続されているため、内圧上昇による膨張変形が生じにくい。このため、製造後の二次電池1では、第1側壁14の外周縁部に基準部14cが形成されやすい。一方、本実施形態に係る二次電池1では、第1側壁14の中央部付近に頂部14bが形成されている。第1側壁14の中央部付近は、外周縁部から最も離れた部分であるため、内圧上昇による膨張変形が生じやすい。このため、製造後の二次電池1では、第1側壁14の中央部付近に頂部14bが形成されやすい。
【0029】
そして、本明細書では、第1の方向(奥行方向Y)における基準部14cから頂部14bまでの突出量を「最大膨張幅H」という(
図4及び
図5参照)。この最大膨張幅Hは、1.2mm以上が好ましく、1.3mm以上がより好ましく、1.4mm以上がさらに好ましく、1.5mm以上が特に好ましい。これによって、電池ケース10の塑性変形を適切に生じさせることができるため、電池ケース10の収縮による寸法ばらつきをより好適に防止できる。一方、最大膨張幅Hは、2.0mm以下が好ましく、1.9mm以下がより好ましく、1.8mm以下がさらに好ましく、1.7mm以下が特に好ましい。これによって、過剰な変形による電池ケース10の強度低下を抑制できる。
【0030】
また、本明細書では、基準部14cからの突出量が最大膨張幅Hの1/2以上となる領域のことを「高膨張領域EA」という。詳しくは後述するが、本実施形態に係る製造方法では、内部からの膨張による全体的な変形を電池ケース10の第1側壁14に生じさせる。このため、製造後の二次電池1では、
図3中の点線部に示すように、正面視において略楕円形の高膨張領域EAが形成される。そして、最も膨張した部分である頂部14bは、高膨張領域EAの中心付近に形成される。なお、高膨張領域EAのアスペクト比は、1.5以上が好ましく、1.6以上がより好ましく、1.8以上がさらに好ましく、2以上が特に好ましい。これによって、電池ケース10の塑性変形を適切に生じさせることができる。一方、高膨張領域EAのアスペクト比の上限は、特に限定されず、5以下でもよく、4以下でもよく、3以下でもよい。なお、本明細書における高膨張領域EAのアスペクト比は、高膨張領域EAの短軸長に対する長軸長の比率である。
【0031】
2.二次電池の製造方法
次に、上記構成の二次電池1を製造する方法について説明する。
図6は、本実施形態に係る製造方法を説明するフローチャートである。また、
図7は、電池ケース組立工程における封口板と電極体との接続を説明する斜視図である。
図8は、ケース変形工程における電池ケース内部へのガス注入を説明する斜視図である。
図9は、注液工程における電解液の注液を説明する斜視図である。
【0032】
図6に示すように、本実施形態に係る製造方法は、電池ケース組立工程S10と、ケース変形工程S20と、注液工程S30と、封止工程S40とを少なくとも備えている。以下、各工程について説明する。
【0033】
(1)電池ケース組立工程S10
本工程では、電極体20を外装体12の内部に配置した状態で上面開口16を封口板17で封止し、電池ケース10を組み立てる。本工程の具体的な手順の一例は、次の通りである。先ず、
図7に示すように、複数の電極体20の各々に電極端子40の集電部材40aを接続する。これによって、封口板17と電極体20とが一体化する。この状態で、上面開口16から外装体12の内部に電極体20を挿入する。そして、電極体20と封口板17をさらに下降させることによって、外装体12の上面開口16が封口板17で塞がれる。次に、外装体12の第1側壁14と第2側壁15の上端と封口板17の外周縁部とを接合する。これによって、内部空間10aに電極体20が収容された電池ケース10が構築される。なお、封口板17と外装体12との接合には、従来公知の接合手段を特に制限なく使用できる。かかる接合手段の好適例としては、レーザ溶接などが挙げられる。
【0034】
ここで、本工程に供給される外装体12や封口板17は、通常、製造公差に起因する寸法ばらつきを有している。また、本工程において各種部材を組み立てる際の外力や熱などによって、外装体12や封口板17が僅かに変形することもある。このため、本工程で構築された電池ケース10は、一定以上の寸法ばらつきを有している。そして、この電池ケース10の寸法ばらつきが大きくなりすぎると、組電池構築時の拘束圧が不均一になるため、電池性能が低下する原因になり得る。
【0035】
(2)ケース変形工程S20
本実施形態に係る製造方法では、上述の電池ケース10の寸法ばらつきを解消するため、ケース変形工程S20を実施する。このケース変形工程S20では、組立後の電池ケース10の内部に、電解液注液孔17aを介してガスを注入して電池ケース10を変形させる。これによって、電池ケース10の第1側壁14が膨張して膨張面14aが形成される。一例として、本工程では、
図8に示すようなガス供給手段Gが用いられる。ガス供給手段Gは、供給口G1とガス発生源G2とを備えている。供給口G1は、電解液注液孔17aに取り付けた際に電池ケース10内を密封できるように構成されている。一方、ガス発生源G2には、高圧ガスを生じさせる種々の機器(コンプレッサやガスボンベなど)が用いられる。そして、本工程では、電解液注液孔17aに供給口G1を取り付け、ガス発生源G2を稼働させる。これによって、ケース内圧が上昇して第1側壁14が全体的に膨張変形する。これによって、電池ケース組立工程S10で生じた寸法ばらつきを超える変形が電池ケース10に生じさせることができるため、製造後の二次電池1の形状を揃えることができる。
【0036】
しかしながら、本発明者の検討によると、本工程での変形量が少なすぎると、第1側壁14の変形量が弾性範囲を超えることができず、本工程が終了した後に電池ケース10が収縮することがある。この場合、電池ケース10はガス注入前の形状に戻るため、ガス注入前の電池ケース10の寸法ばらつきがそのまま残る。これに対して、本実施形態に係る製造方法では、第1側壁14の膨張が弾性範囲を超えて塑性変形となるように、ケース変形工程S20における電池ケース10の変形量を以下のように制御する。なお、以下のケース変形工程S20における変形量の制御は、例えば、電池ケース10内へ所定量のガスを注入した後に電池ケース10の形状を検知し、当該検知結果に基づいてガス注入量を調節するという手段で実施することができる。なお、検知した電池ケース10の変形量が所望の範囲を満たしている場合には、ガス注入量の調整を実施しなくてもよい。
【0037】
具体的には、本実施形態に係る製造方法では、高膨張領域EAの正面視における面積(
図3参照)が膨張面14aの総面積の1/3以上となるようにする。このように、一定以上の高膨張領域EAが形成されるように変形させると、第1側壁14の膨張が弾性範囲を超えて塑性変形になる。これによって、本工程の後に、電池ケース10の収縮による寸法ばらつきが生じることを防止できる。なお、膨張面14aの総面積に対する高膨張領域EAの面積の比率は、1/2以上であるとより好ましい。これによって、第1側壁14の塑性変形をより好適に生じさせることができる。一方、膨張面14aの総面積に対する高膨張領域EAの面積の比率の上限値は、特に限定されず、4/5以下でもよく、3/4以下でもよく、2/3以下でもよい。
【0038】
なお、ケース変形工程S20における変形量は、高さ方向Zに沿った膨張面14aの傾斜角θ1が一定以上になるように設定することが好ましい。これによって、第1側壁14の塑性変形をより適切に生じさせることができる。具体的には、
図4は、
図3中の第1側壁14の長辺方向(幅方向X)の中央を通過する上下方向(高さ方向Z)に沿った断面図である。この
図4を確認した際に、封口板17の下面17cから1cm下方に向かった領域における膨張面14aの傾斜角θ1が3°以上(より好適には4°以上、さらに好適には5°以上、特に好適には6°以上)であることが好ましい。このような傾斜角θ1が生じるように第1側壁14を膨張させることによって、ケース変形工程S20の後の電池ケース10の収縮をより好適に防止できる。一方、過剰な変形による電池ケース10の強度低下を抑制するという観点から、上記傾斜角θ1の上限値は、10°以下が好ましく、9°以下が好ましく、8°以下が好ましく、7°以下が好ましい。
【0039】
同様に、ケース変形工程S20における変形量は、幅方向Xに沿った膨張面14aの傾斜角θ2が一定以上になるように設定することが好ましい。これによって、第1側壁14の塑性変形をより適切に生じさせることができる。具体的には、
図5は、
図3中の第1側壁14の上下方向(高さ方向Z)の中央を通過する長辺方向(幅方向X)に沿った断面図である。この
図5を確認した際に、第1側壁14と第2側壁15との境界から2.3mm内方に向かった領域における膨張面14aの傾斜角θ2が0.5°以上(より好適には1°以上、さらに好適には1.5°以上、特に好適には2°以上)であることが好ましい。このような傾斜角θ2が生じるように第1側壁14を膨張させることによって、ケース変形工程S20の後の電池ケース10の収縮をより好適に防止できる。一方、過剰な変形による電池ケース10の強度低下を抑制するという観点から、上記傾斜角θ2の上限値は、5°以下が好ましく、4.5°以下が好ましく、4°以下が好ましく、3.5°以下が好ましい。
【0040】
また、ケース変形工程S20の後の電池ケース10は内部容積が増加している。これによって、後述する注液工程S30における一回の注液量が増加するため、製造効率の大幅な向上にも貢献できる。この注液工程S30における注液量の増加を考慮すると、本工程は、内部容積の増加量が40cm3以上(より好適には70cm3以上、さらに好適には100cm3以上)になるように実施することが好ましい。これによって、製造効率の大幅な向上に貢献できる。また、このような大きな膨張を生じさせると、電池ケース10の塑性変形も生じやすくなるため、製造後の寸法ばらつきも好適に抑制できる。一方で、内部容積の増加量は、電池ケース10(ガス排出弁17b、封口板17と外装体12との接合部分など)の破損を防止できる範囲に設定されることが好ましい。具体的には、内部容積の増加量の上限値は、200cm3以下が好ましく、150cm3以下がより好ましく、120cm3以下が特に好ましい。
【0041】
なお、電池ケース10に供給されるガスの圧力は、0.03MPa以上が好ましく、0.05MPa以上がより好ましく、0.10MPa以上が特に好ましい。これによって、電池ケース10の塑性変形を適切に生じさせることができる。一方、ガス圧力の上限は、0.20MPa以下が好ましく、0.15MPa以下がより好ましく、0.12MPa以下が特に好ましい。これによって、電池ケース10の破損を抑制できる。また、ガス供給時間は、5sec以上が好ましく、10sec以上がより好ましく、12sec以上がさらに好ましい。これによって、電池ケース10の塑性変形を適切に生じさせることができる。一方で、製造時間の短縮の観点から、ガス供給時間は、30sec以下が好ましく、20sec以下がより好ましい。但し、これらのガスの圧力や供給時間は、電池ケース10の強度や内容量に応じて適宜変更されるものであり、ここに開示される技術を限定するものではない。本分野の一般的な当業者であれば、複数回の予備試験を行うことによって、高膨張領域EAの面積が膨張面14aの総面積の1/3以上となるガス供給条件を容易に解析することができる。また、本工程において使用されるガスは、製造後の二次電池1の性能を著しく阻害するものでなければ、特に限定されない。かかるガスの一例として、空気、ヘリウムガス、窒素ガス、アルゴンガスなどが挙げられる。また、水分の混入による性能低下を抑制するという観点から、電池ケース10供給前のガスに乾燥処理を実施することが好ましい。
【0042】
なお、上述した扁平な電池ケース10を使用すると、相対的に面積が広い第1側壁14が優先的に膨張するため、本工程における変形位置や変形量が管理できるようになる。なお、本発明者が実施した実験によると、変形後の膨張面14aでは、高さ方向Zにおける中央部分よりも若干上方の部分に頂部14bが形成されることが確認されている。具体的には、第1側壁14の高さ寸法を100%とした場合、第1側壁14の下端から50.5%~52.5%の範囲内(例えば51%程度の位置)に頂部14bが位置する膨張面14aが形成される。また、扁平な電池ケース10を膨張させると、相対的に面積が小さい第2側壁15が電池ケース10の内部に向かって僅かに窪むことも確認されている。
【0043】
(3)注液工程S30
本工程では、変形後の電池ケース10の内部に、電解液注液孔17aを介して電解液30を注入する。一例として、本工程では、次のような手順に従って電解液30が注液される。先ず、
図9に示すように、電解液注液孔17aに注液ノズルPを挿入する。そして、当該注液ノズルPから電池ケース10内に電解液30を注液する。このとき、電解液注液孔17aから電解液30が噴出しないように、電極体20の内部に電解液30を浸透させながら複数回に分けて電解液30を注液する。このとき、ケース変形工程S20において電池ケース10が膨張していると、一回の注液で供給可能な電解液量が増加する。この結果、本工程における電解液30の注液回数が少なくなるため、製造効率の大幅な改善に貢献することもできる。
【0044】
また、注液工程S30では、電池ケース10内の圧力を減少させる減圧処理を実施してもよい。これによって、電極体20の内部(正極と負極の極間)が負圧になる。この状態で電解液30を注液すると、負圧となった電極体20の内部に電解液30が吸引される。これによって、電解液30の浸透に要する時間を短縮できる。なお、本実施形態に係る製造方法における減圧処理は、
図9に示すような減圧チャンバーD内に電池ケース10を収容した状態で実施される。これによって、電池ケース10の内外の圧力差で電池ケース10が収縮することを抑制できるため、注液工程S30後の電池ケース10に寸法ばらつきが生じることを防止できる。
【0045】
なお、減圧処理における電池ケース10の内圧は、-50kPa以下が好ましく、-80kPa以下がより好ましい。これによって、電解液30の浸透時間を好適に短縮できる。一方、減圧チャンバーDの内部を減圧する場合、減圧処理中の圧力の下限値は、減圧チャンバーDが破損しない限りにおいて特に限定されない。例えば、減圧チャンバーDの内の圧力の下限値は、-100kPa以上でもよい。なお、減圧処理は、注液工程S30における必須処理ではない。例えば、電解液が浸透しやすい電極体(積層電極体など)を採用している場合には、減圧処理を行わない大気圧環境下で電解液を注液してもよい。
【0046】
(4)封止工程S40
本工程では、注液後の電池ケース10の電解液注液孔17aを封止する。これによって、密閉された電池ケース10内に電極体20と電解液30が収容された二次電池1(
図1参照)が構築される。なお、電解液注液孔17aを封止する封止部材18は、ここに開示される技術を限定するものではなく、従来公知の部材を特に制限なく使用できる。この封止部材18の一例として、ブラインドリベットなどが挙げられる。また、封止部材18で電解液注液孔17aを封止した後に、電池ケース10(封口板17)に封止部材18を溶接してもよい。これによって、封止部材18をより強固に固定できる。
【0047】
(5)まとめ
以上の通り、本実施形態に係る製造方法では、組立後の電池ケース10の内部にガスを注入して電池ケース10を変形させるケース変形工程S20を実施する。これによって、内部からの膨張による全体的な変形が電池ケース10の第1側壁14に生じるため、製造後の二次電池1の寸法ばらつきを抑制できる。さらに、本実施形態におけるケース変形工程S20は、高膨張領域EAの面積が膨張面14aの総面積の1/3以上となるように電池ケース10内にガスを注入する。これによって、第1側壁14の膨張が弾性範囲を超えて塑性変形となるため、ケース変形工程S20後の収縮に起因する寸法ばらつきを防止することができる。
【0048】
3.組電池
次に、本実施形態に係る製造方法は、複数の二次電池を備えた組電池100の性能改善に貢献できる。
図10は、本実施形態に係る組電池の外観を模式的に示す斜視図である。以下、
図10を参照しながら具体的に説明する。
【0049】
図10に示すように、本実施形態に係る組電池100は、複数の単電池110を備えている。各々の単電池110は、電池ケース10の第1側壁14(
図1参照)が相互に対向するように配列される。また、隣接した2つの単電池110の間には、スペーサ120が配置されている。そして、この複数の単電池110は、一対の拘束板130に挟まれている。この一対の拘束板130は、配列方向(
図10中の奥行方向Y)に沿って延びる架橋部材140で接続されている。これによって、各々の単電池110は、所定の拘束圧で拘束される。また、
図10に示す組電池100は、複数の単電池110の各々を電気的に接続する接続部材150を備えている。この接続部材150は、隣接する単電池110の電極端子40を接続する。これによって、複数の単電池110を有する組電池100を1つの電池ユニットとして使用できる。
【0050】
そして、本実施形態に係る組電池100では、複数の単電池110の90%以上に、上記構成の二次電池1が使用されている。換言すると、本実施形態における単電池110の90%以上は、第1側壁14に膨張面14aが形成されており、当該膨張面14aの高膨張領域EAの面積が膨張面14aの総面積の1/3以上となった二次電池1である。これによって、組電池100を構築する単電池110の形状を揃えることができるため、当該単電池110の各々に均一な拘束圧を付与できる。この結果、本実施形態に係る組電池100は、電池ユニット全体として高い性能を発揮できる。なお、本実施形態に係る製造方法によると、組電池100を構成する複数の単電池110の全て(100%)に、上記構成の二次電池1を使用することもできる。かかる組電池100は、単電池110間の寸法ばらつきが殆ど生じていないため、特に高い電池性能を発揮できる。また、ここに開示される技術は、単電池110の個数が20個以上(より好適には40個以上、さらに好適には60個以上、特に好適には80個以上)である組電池100に特に好適に適用できる。ここに開示される技術によると、非常に多数の単電池110を備えた組電池100であっても、各々の単電池110の形状を容易に揃えることができる。
【0051】
4.他の実施形態
以上、ここに開示される製造方法の一実施形態について説明した。なお、ここに開示される製造方法は、上述の実施形態に限定されず、種々の事項を適宜変更できる。以下、上述の実施形態から変更可能な事項の一例について説明する。
【0052】
(1)乾燥工程
ここに開示される製造方法は、
図6に示される4つの工程S10~S40以外の工程を含んでいてもよい。例えば、電池ケース組立工程S10を実施した後から注液工程S30を開始するまでに、電池ケース内の電極体を乾燥させる乾燥工程を実施してもよい。これによって、電極体内に水分が侵入することによる性能低下(容量低下、出力低下等)を防止できる。なお、乾燥工程では、電池ケース内を減圧しながら加熱を行うことが好ましい。これによって、電極体の内部の水分を効率良く除去できる。例えば、乾燥工程における加熱温度は、80℃以上が好ましく、90℃以上がより好ましく、100℃以上が特に好ましい。これによって、電極体の内部の水分を好適に除去できる。また、加熱温度は、200℃以下が好ましく、150℃以下がより好ましく、120℃以下が特に好ましい。これによって、樹脂製の部材(セパレータ、絶縁フィルムなど)の劣化を抑制できる。また、乾燥工程中の電池ケース内の圧力は、-6pa~-10paまで減圧されていることが好ましい。これによって、蒸発した水分を容易に除去できる。
【0053】
なお、乾燥工程は、上述した通り、電池ケース組立工程S10を実施した後から注液工程S30を開始するまでの間であれば、特に制限なく実施することができる。電池ケース10の形状を維持することを考慮すると、乾燥工程は、ケース変形工程S20の前に実施することが好ましい。具体的には、乾燥工程では、減圧処理による圧力低下や水分の蒸発による圧力上昇などが生じ得るため、電池ケース10が変形する可能性がある。これに対して、乾燥工程の後にケース変形工程S20を実施すると、乾燥工程で生じた寸法ばらつきを超える変形を電池ケース10に生じさせることができるため、電池ケース10の形状を容易に揃えることができる。
【0054】
(2)初期充電工程
また、ここに開示される製造方法では、注液工程S30と封止工程S40との間に、初期充電工程を実施してもよい。この初期充電工程では、電解液注液孔17aを開放した状態で、電極端子40に外部充電装置を接続し、常温(例えば20℃~30℃程度)で所定の電圧まで充電する。これによって、電解液30の一部が分解して分解ガスが大量に発生する。この初期充電を封止工程S40の前に実施することによって、初期充電中にガス排出弁が作動することを防止できる。また、封止工程S40の後に初期充電を実施すると、分解ガスの発生による内圧上昇で電池ケース10の第1側壁14がさらに膨張する可能性がある。そして、このときのガス発生量にも個体差が存在するため、電解液注液孔17aを封止した状態で初期充電を実施すると、製造後の二次電池1の寸法ばらつきが生じる原因になり得る。かかる観点からも、初期充電工程は、電解液注液孔17aを封止する封止工程S40の前に実施することが好ましい。なお、初期充電工程における充電条件は、特に限定されず、製造対象(二次電池)の規格に応じて適宜変更できる。また、初期充電工程を実施した場合には、封止工程S40を実施する前に減圧処理を実施することが好ましい。これによって、初期充電工程で発生した分解ガスをより適切に排気できる。
【0055】
(3)リーク検査工程
ここに開示される製造方法では、ケース変形工程S20を実施した後から封止工程S40を開始するまでの間(好適にはケース変形工程S20の直後)に、リーク検査工程を実施することが好ましい。これによって、ケース変形工程S20による電池ケース(ガス排出弁、封口板と外装体との接合部分など)の破損を検出できる。リーク検査工程の具体的な手順の一例として、以下の手順が挙げられる。リーク検査工程では、最初に、電池ケース内にリーク検査用の検査ガス(例えば、ヘリウムガス)を充填する。そして、検査ガスを検知する検査装置を用いることにより、電池ケース内からの検査ガスの漏出を検査する。これによって、電池ケースの破損の有無や破損位置を検査できる。なお、リーク検査工程は、上述したケース変形工程S20に包含させることもできる。具体的には、ケース変形工程S20は、電池ケース内に注入するガスに検査ガスを使用し、検査装置で検査ガスの漏出を検査しながら電池ケースを変形させてもよい。これによって、破損の有無を確認しながら、電池ケースを膨張させることができる。
【0056】
(4)膨張面の形成対象
図4及び
図5に示すように、上述の実施形態に係る二次電池1では、一対の第1側壁14の両方に膨張面14aが形成されている。しかし、ここに開示される技術における膨張面は、一対の第1側壁の何れか一方のみに形成されていてもよい。例えば、ケース変形工程S20において、板状の変形規制部材を第1側壁の一方に押し当てた状態で電池ケース内にガスを注入すれば、一対の第1側壁の片方のみに膨張面を形成できる。かかる態様によると、奥行方向Yにおける電池ケースの寸法増大を抑制しつつ、変形対象の第1側壁に適切な塑性変形を生じさせることができる。一方、電池ケース10の内部容積増加による製造効率の改善を考慮すると、上述の実施形態のように、第1側壁14の両方に膨張面14aを形成した方が好ましい。
【0057】
以上、ここに開示される技術の実施形態について説明した。しかし、上述の説明は例示にすぎず、請求の範囲を限定するものではない。請求の範囲に記載の技術には、上述の説明にて例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
【0058】
すなわち、ここに開示される技術は、以下の[項目1]~[項目8]に記載の技術を包含する。
【0059】
[項目1]
正極及び負極を含む電極体と、電解液と、前記電極体及び前記電解液を収容する電池ケースとを備えた二次電池の製造方法であって、
前記電池ケースは、
長尺な矩形の板状部材である底部と、前記底部の長辺から上方に延在する一対の第1側壁と、前記底部の短辺から上方に延在する一対の第2側壁と、前記第1側壁と前記第2側壁の上端に囲まれた上面開口とを含む外装体と、
前記上面開口を封止し、電解液注液孔が設けられている封口板と
を含み、
ここで、以下の工程:
前記電極体を前記外装体の内部に配置した状態で前記上面開口を前記封口板で封止し、前記電池ケースを組み立てる電池ケース組立工程;
組立後の前記電池ケースの内部に、前記電解液注液孔を介してガスを注入して前記電池ケースを変形させるケース変形工程;
変形後の前記電池ケースの内部に、前記電解液注液孔を介して前記電解液を注入する注液工程;
注液後の前記電池ケースの前記電解液注液孔を封止する封止工程;
を包含し、
前記ケース変形工程において、
前記一対の第1側壁の少なくとも一方に、当該第1側壁の中央部が前記電極体から離間する第1の方向に向かって突出した膨張面が形成され、
前記膨張面の面内に、前記第1の方向における前記電極体からの突出量が最も多い部分である頂部と、前記突出量が最も少ない部分である基準部とが形成され、かつ、
前記第1の方向における前記基準部から前記頂部までの突出量を最大膨張幅Hとしたとき、前記基準部からの突出量が前記最大膨張幅Hの1/2以上となる領域である高膨張領域の正面視における面積が前記膨張面の総面積の1/3以上となるようにする、二次電池の製造方法。
【0060】
[項目2]
前記第1側壁は、高さが5cm以上であり、幅が20cm以上である、項目1に記載の製造方法。
【0061】
[項目3]
前記ケース変形工程は、正面視における前記高膨張領域のアスペクト比が2以上となるように制御される、項目1または2に記載の製造方法。
【0062】
[項目4]
前記ケース変形工程は、前記第1側壁の長辺方向の中央を通過する上下方向に沿った断面において、前記封口板の下面から1cm下方に向かった領域における前記膨張面の傾斜角が5°以上となるように制御される、項目1~3のいずれか一項に記載の製造方法。
【0063】
[項目5]
前記ケース変形工程は、前記第1側壁の上下方向の中央を通過する長辺方向に沿った断面において、前記第1側壁と前記第2側壁との境界から2.3mm内方に向かった領域における前記膨張面の傾斜角が1°以上となるように制御される、項目1~4のいずれか一項に記載の製造方法。
【0064】
[項目6]
正極及び負極を含む電極体と、
電解液と、
前記電極体及び前記電解液を収容する電池ケースと、
を備えた二次電池であって、
前記電池ケースは、
長尺な矩形の板状部材である底部と、前記底部の長辺から上方に延在する一対の第1側壁と、前記底部の短辺から上方に延在する一対の第2側壁と、前記第1側壁と前記第2側壁の上端に囲まれた上面開口とを含む外装体と、
前記上面開口を封止する封口板と
を含み、
前記一対の第1側壁の少なくとも一方に、当該第1側壁の中央部が前記電極体から離間する第1の方向に向かって突出した膨張面が形成され、
前記膨張面の面内に、前記第1の方向における前記電極体からの突出量が最も多い部分である頂部と、前記突出量が最も少ない部分である基準部とが形成され、かつ、
前記第1の方向における前記基準部から前記頂部までの突出量を最大膨張幅Hとしたとき、前記基準部からの突出量が前記最大膨張幅Hの1/2以上となる領域である高膨張領域の正面視における面積が前記膨張面の総面積の1/3以上である、二次電池。
【0065】
[項目7]
前記第1側壁は、高さが5cm以上であり、幅が20cm以上である、項目6に記載の二次電池。
【0066】
[項目8]
正面視における前記高膨張領域のアスペクト比が2以上である、項目6または7に記載の二次電池。
【0067】
[項目9]
前記第1側壁の長辺方向の中央を通過する上下方向に沿った断面において、前記封口板の下面から1cm下方に向かった領域における前記膨張面の傾斜角が5°以上である、項目6~8のいずれか一項に記載の二次電池。
【0068】
[項目10]
前記第1側壁の上下方向の中央を通過する長辺方向に沿った断面において、前記第1側壁と前記第2側壁との境界から2.3mm内方に向かった領域における前記膨張面の傾斜角が1°以上である、項目6~9のいずれか一項に記載の二次電池。
【0069】
[項目11]
複数の単電池と、
前記複数の単電池の各々を電気的に接続する接続部材と
を備え、
前記複数の単電池の90%以上が項目6~10のいずれか一項に記載の二次電池である、組電池。
【符号の説明】
【0070】
1 二次電池
10 電池ケース
10a 内部空間
12 外装体
13 底部
14 第1側壁
14a 膨張面
14b 頂部
14c 基準部
15 第2側壁
16 上面開口
17 封口板
17a 電解液注液孔
17b ガス排出弁
18 封止部材
20 電極体
30 電解液
32 余剰電解液
40 電極端子
40a 集電部材
40b 外部端子
EA 高膨張領域
H 最大膨張幅